(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012178
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】検査室機器、検査室試料取扱システム、ならびに検査室機器の使用および/または検査室試料取扱システムの使用
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
G01N35/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023115417
(22)【出願日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】22184966.4
(32)【優先日】2022-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルトゥール トロップマン
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】検査室試料容器から検査室キャップを除去したときに試料の残留物が飛散することを防ぐ。
【解決手段】検査室試料取扱システムにおいて使用するための検査室機器であって、検査室試料を含む検査室試料容器から除去された検査室キャップ(150)をキャッチするように設計されているキャップ廃棄物処理キャッチャ(2)と、キャップ(150)によってキャッチャ(2)に放出された試料の残留物(153)を引き寄せる電場(4)を発生させるように設計されている電場発生器とを備える検査室機器。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査室試料取扱システム(100)において使用するための検査室機器(1)であって、
検査室試料(152)を含む検査室試料容器(151)から除去された検査室キャップ(150)をキャッチするように設計されているキャップ廃棄物処理キャッチャ(2)と、
前記キャップ(150)によって前記キャッチャ(2)に放出された前記試料(152)の残留物(153)を引き寄せる電場(4)を発生させるように設計されている電場発生器(3)と
を備える、検査室機器(1)。
【請求項2】
特に水性の検査室液体試料取扱システム(100’)における使用のための検査室機器(1)であって、
前記キャッチャ(2)が、特に水性の検査室液体試料(152’)を含む、特に水性の検査室液体試料容器(151’)から除去された前記キャップ(150)をキャッチするように設計されており、
前記発生器(3)が、前記キャップ(150)によって前記キャッチャ(2)に放出された前記試料(152’)の、特に水性の、液体残留物(153’)を引き寄せる前記場(4)を発生させるように設計されている、請求項1に記載の検査室機器(1)。
【請求項3】
前記発生器(3)が、静電気発生器(3’)を備え、特に前記静電気発生器(3’)であり、前記発生器(3)が、前記残留物(153)を静電気的に引き寄せる静電場(4’)を発生させるように設計されている、請求項1または2に記載の検査室機器(1)。
【請求項4】
前記発生器(3)の少なくとも一部(5)、特に前記発生器(3)の、帯電するように設計されている少なくとも1つの電極(5’)が、前記キャッチャ(2)の表面(2S)、特に内部表面に配置されており、および/または
前記発生器(3)が、前記キャッチャ(2)の表面(2S)、特に内部表面において電荷(6)を生じるように設計されており、および/または
前記発生器(3)が、少なくとも前記キャッチャ(2)の表面(2S)、特に内部表面において前記場(4)を発生させるように設計されており、および/または
前記発生器(3)が、前記キャッチャ(2)の表面(2S)、特に内部表面に前記残留物(153)を引き寄せる前記場(4)を発生させるように設計されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の検査室機器(1)。
【請求項5】
検査室液体試料取扱システム(100’)における使用のための検査室機器(1)であって、
前記キャッチャ(2)が、表面(2S)、特に内部表面を備え、
前記表面(2S)が、検査室液体試料(152’)の少なくとも1つの衝突する液滴(153’’)に曝されるように設計されており、前記液滴(153’’)の跳ね返りエネルギーを削減するために、前記表面(2S)上に衝突された前記液滴(153’’)内で不均一な流速を創出するように不均一にパターン化されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の検査室機器(1)。
【請求項6】
前記表面(2S)が不均一にパターン化されたぬれ性(7a、7b)を含む、請求項5に記載の検査室機器(1)。
【請求項7】
前記キャッチャ(2)が、低粘着性の基板(8)、特に疎水性の基板(8)を備え、前記基板(8)が、少なくとも1つの低粘着性のパターン(9)、特に親水性のパターン(9)を含む、請求項6に記載の検査室機器(1)。
【請求項8】
前記表面(2S)が、衝突する前記液滴(153’’)の並進移動(TM)を、少なくとも部分的に、前記表面(2S)上に衝突された前記液滴(153’’)の、偏向(DF)、転動(RL)、および/または回転(RO)、特に回転運動(GY)に変換するように不均一にパターン化されている、請求項5から7のいずれか一項に記載の検査室機器(1)。
【請求項9】
前記キャッチャ(2)が、入力端部(2IE)と、反対側の端部(2OE)、特に出力端部とを備え、
前記表面(2S)が、前記並進移動(TM)を、少なくとも部分的に、前記入力端部(2IE)から前記反対側の端部(2OE)への方向(DI)での前記偏向(DF)に変換するように不均一にパターン化されている、請求項8に記載の検査室機器(1)。
【請求項10】
不均一にパターン化された前記表面(2S)が、少なくとも1つのパターン(10)、特にいくつかのパターン(10)を備え、前記パターン(10)には各々、回転対称性(RS)があり鏡面対称性(MS)がなく、および/または鏡面対称性(MS)があり回転対称性(RS)がなく、および/または回転対称性(RS)も鏡面対称性(MS)もない、請求項5から9のいずれか一項に記載の検査室機器(1)。
【請求項11】
前記パターン(10)が、少なくとも1つの弓形(11)、特に開放された円弧(11’)、ならびに/または特に開放されたおよび/もしくはアルキメデスの螺旋状の部分(11’’)、特に螺旋(11’’’)を形成するアルキメデスの螺旋状の部分を備える、請求項10に記載の検査室機器(1)。
【請求項12】
前記キャッチャ(2)が、キャップ廃棄物処理シュート(2’)を備え、特に前記キャップ廃棄物処理シュート(2’)であり、特に前記シュート(2’)が、前記キャップ(150)および/または前記残留物(153)を、別の方向へ、特にキャップ廃棄物処理区画(19)に導くように設計されている、請求項1から11のいずれか一項に記載の検査室機器(1)。
【請求項13】
検査室試料(152)を含む検査室試料容器(151)から検査室キャップ(150)を除去するように設計されているデキャッパ(101)と、
請求項1から12のいずれか一項に記載の検査室機器(1)と
を備える、検査室試料取扱システム(100)。
【請求項14】
前記デキャッパ(101)が、除去された前記キャップ(150)を前記キャッチャ(2)に落とすように設計されている、請求項13に記載の検査室試料取扱システム(1)。
【請求項15】
検査室試料(152)を含む検査室試料容器(151)から除去された検査室キャップ(150)をキャッチするための、および、前記キャップ(150)によって放出された前記試料(152)の残留物(153)を前記キャッチャ(2)に引き寄せる電場(4)を発生させるための、請求項1から14のいずれか一項に記載の、検査室試料取扱システム(100)における検査室機器(1)の使用および/または検査室試料取扱システム(100)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査室試料取扱システムにおいて使用するための検査室機器、そのような検査室機器を備える検査室試料取扱システム、ならびに特にそのような検査室試料取扱システムにおけるそのような検査室機器の使用および/またはそのような検査室試料取扱システムの使用に関する。
【発明の概要】
【0002】
本発明の目的は、改善された特性を有する検査室機器を提供することである。本発明のさらなる目的は、そのような検査室機器を備える検査室試料取扱システム、ならびに特にそのような検査室試料取扱システムにおけるそのような検査室機器の使用および/またはそのような検査室試料取扱システムの使用を提供することである。
【0003】
この目的は、独立請求項において定義される検査室機器および使用によって解決される。好ましい実施形態は、従属請求項において定義される。
【0004】
本発明は、検査室試料取扱システムにおいて使用するための検査室機器に関する。本機器は、キャップ廃棄物処理キャッチャと電場発生器とを備える。キャッチャは、検査室試料を含む検査室試料容器から除去された検査室キャップをキャッチするように設計されている。発生器は、キャップによってキャッチャに放出された試料の残留物を、特に電気的に引き寄せる電場を発生させるように設計されている。
【0005】
特に自動化された、容器からのキャップの除去またはデキャッピング工程の特に後に、キャップは、特に重力によりキャッチャに落とされおよび/または落下する場合がある。デキャッピング工程の前に容器が傾けられていた場合、キャップ、特にキャップの内面は、試料により汚染され、汚され、覆われ、または特に湿らされる場合がある。特に剛体もしくは固体であるキャッチャの表面上へとキャップが衝突する間に、および/またはその衝突により、キャップは、無秩序および制御不能に回転する場合がある。それによってこの回転は、試料の残留物、特に少なくとも1つの小さな特にミクロの液滴が、キャップから放出または脱離されることにつながり得る。
【0006】
このこと、特に発生器は、キャップがキャッチされたときに、残留物が、特にキャッチャからもしくはキャッチャの外へ、特に制御不能に、こぼれもしくは飛び散ることを削減または軽減し、あるいは防止または回避することができる。これにより、容器および/もしくは試料ならびに/または他の検査室試料容器および/もしくは他の検査室試料の汚染、特に相互汚染を削減または防止することができる。したがって、検査室機器の特性が改善され、この検査室機器は、そのような電場発生器がない検査室機器に比べて、検査室環境における問題を少ししか引き起こさず、または全く引き起こさない場合がある。
【0007】
特に「分析前(pre-analytical)」という用語は、「取扱い(handling)」という用語に対して同義的に使用されてもよい。
【0008】
「有する」という用語は、「備える」という用語に対して同義的に使用されてもよい。
【0009】
「構成されている」または「適合されている」という用語は、「設計されている」という用語に対して同義的に使用されてもよい。
【0010】
容器は、ガラス、プラスチック、または他の任意の特にある程度固い材料で作成され得る。追加的または代替的に、容器は管として設計されていてもよい。追加的または代替的に、容器は、特に上面または上端部に開口部を備えてもよい。特に開口部は、容器の壁の端部および/または外周によって画定されていてもよい。追加的または代替的に、容器または容器の開口部は、特にキャップによって開けられまたは閉められてもよい。
【0011】
キャップは、容器とは別のものであってもよい。追加的または代替的に、キャップは、ゴムおよび/またはプラスチックを備えてもよく、あるいは完全にゴムおよび/またはプラスチックから成ってもよい。追加的または代替的に、キャップは、特に断面が円形である円筒形状を備えてもよい。追加的または代替的に、キャップは、蓋、特に剛体の蓋として設計されていてもよく、または箔(foil)、特に柔軟な箔として設計されていてもよい。
【0012】
容器および/またはキャップは、互いを十分に固定して取り付ける手段を備えてもよく/備え、例えばねじ、錠、および/または接着剤が使用されてもよい。
【0013】
「キャップ受容部(cap receiver)」という用語は、「キャッチャ(catcher)」という用語に対して同義的に使用されてもよい。
【0014】
発生器(generator)は、キャッチャとは別のものであってもよい。
【0015】
「生成する(produce)」または「生じる(develop)」という用語は、「発生させる(generate)」という用語に対して同義的に使用されてもよい。
【0016】
「捕捉する(capture)」、「閉じ込める(confine)」、または「保持する(retain)」という用語は、「引き寄せる(attract)」という用語に対して同義的に使用されてもよい。
【0017】
「液滴(droplet)」という用語は、「残留物(residue)」という用語に対して同義的に使用されてもよい。
【0018】
「移された(transmitted)」または「脱離された(detached)」という用語は、「放出された(released)」という用語に対して同義的に使用されてもよい。
【0019】
「~から(from)」という用語は、「~によって(by)」という用語に対して同義的に使用されてもよい。
【0020】
「~に向かって(towards)」または「~へと(into)」という用語は、「~に(to)」という用語に対して同義的に使用されてもよい。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、検査室機器は、特に水性の検査室液体試料取扱システムにおける使用のためのものである。キャッチャは、特に水性の検査室液体試料を含む特に水性の検査室液体試料容器から除去されたキャップをキャッチするように設計されている。発生器は、キャップによってキャッチャに放出された試料の特に水性の液体残留物を引き寄せる場を発生させるように設計されている。特に試料は、生体液体または生体流体、特に血液試料、尿試料、排泄物、組織液、もしくはリンパ液であってもよい。追加的または代替的に、「流体」という用語は、「液体」という用語に対して同義的に使用されてもよい。追加的または代替的に、「含水の(hydrous)」という用語は、「水性の(aqueous)」という用語に対して同義的に使用されてもよい。
【0022】
特に発生器は、特に場を発生させるために、特に電気的に駆動されるように設計されていてもよい。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、発生器は、静電気発生器を備え、特に静電気発生器である。発生器は、残留物を静電気的に引き寄せる静電場を発生させるように設計されている。これにより、特に帯電しておらずもしくは電気的に中性であり、および/または水性である残留物に、とりわけよく電気的な極性を与えることができ、ならびに/あるいは特にそうして、残留物をとりわけよく引き寄せることができる。特に静電気発生器は、特に摩擦帯電を用いた摩擦機であってもよく、特に静電誘導を用いた誘導起電機であってもよい。追加的または代替的に、静電気発生器は、特に静電場を発生させるために、特に電気的な電荷を生じるように設計されていてもよい。
【0024】
特に発生器は、少なくとも1つの電極を備えてもよい。電極は、特に場を発生させるために、特に電気的に帯電するように設計されていてもよい。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、発生器の少なくとも一部、特に発生器の特に場を発生させるために特に電気的に帯電するように設計されている少なくとも1つの電極は、キャッチャの特に内部の表面に配置されている。追加的または代替的に、発生器は、キャッチャの特に内部表面において特に場を発生させるために特に電気的な電荷を生じるように設計されている。追加的または代替的に、発生器は、少なくともキャッチャの特に内部表面において場を発生させるように設計されている。追加的または代替的に、発生器は、キャッチャの特に内部表面に残留物を引き寄せる場を発生させるように設計されている。これにより、キャッチャから残留物がこぼれることを、とりわけよく削減または防止することができる。特に配置は、空間的な配置であってもよい。追加的または代替的に、「内側(inside)」または「内の(internal)」という用語は、「内部(inner)」という用語に対して同義的に使用されてもよい。追加的または代替的に、表面は平坦であってもよい。追加的または代替的に、キャッチャは、キャッチャの特に内部表面によってキャップをキャッチするように設計されていてもよい。
【0026】
特に、キャッチャの特に内部表面は、少なくとも部分的にまたは完全に、導電性のある特に金属の材料から成ってもよい。
【0027】
残留物に曝されるように設計されているキャッチャの特に内部表面の少なくとも一部は、疎水性であってもよい。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、検査室機器は、検査室液体試料取扱システムにおける使用のためのものである。キャッチャは、特に内部表面を備える。表面の特に少なくとも一部は、検査室液体試料の少なくとも1つの衝突する液滴に曝されるように設計されており、特に表面から液滴の跳ね返りエネルギーを削減するために、表面上に衝突された液滴内で不均一な流速、特に分布を創出するように、特に位相幾何学的に(topologically)不均一にパターン化されている。これにより、液滴の力の伝達を制御または調整することができる。これにより、キャッチャから残留物がこぼれることを、とりわけよく削減または防止することができる。特に表面は平坦であってもよい。追加的または代替的に、「~と接触し(in contact with)」という語句は、「~に曝され(exposed to)」という語句に対して同義的に使用されてもよい。追加的または代替的に、「当たること(impinging)」という用語は、「衝突(impacting)」という用語に対して同義的に使用されてもよい。追加的または代替的に、「生み出す(create)」という用語は、「創出する(originate)」という用語に対して同義的に使用されてもよい。追加的または代替的に、「~に沿って(along)」という用語は、「~上に(on)」という用語に対して同義的に使用されてもよい。追加的または代替的に、キャッチャは、検査室液体試料を含む検査室液体試料容器から除去されたキャップをキャッチするように設計されていてもよい。
【0029】
これらの特徴は特に単体で、特にそれ自体の発明であってもよい。言い換えれば、
検査室液体試料取扱システムにおいて使用するための検査室装置であって、
内部表面を備え、
その表面の特に少なくとも一部が、検査室液体試料の少なくとも1つの衝突する液滴に曝されるように設計されており、液滴の跳ね返りエネルギーを削減するために、表面上に衝突された液滴内で不均一な流速を創出するように不均一にパターン化されている、検査室装置。
【0030】
特に装置は、キャップ廃棄物処理キャッチャであってもよい。キャッチャは、表面を備えてもよく、キャッチャの表面によって、検査室液体試料を含む検査室液体試料容器から除去された検査室キャップをキャッチするように設計されていてもよい。特に液滴は、キャップによって放出されてもよい。追加的または代替的に、装置は、電場発生器を伴わなくてもよい。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、表面は、不均一にパターン化された特に化学的なぬれ性を含む。これにより、不均一な流速をとりわけよく創出することができる。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、キャッチャまたは装置は、接着性の低い特に疎水性の基板を備え、この基板は、少なくとも1つの接着性の高い特に親水性のパターンを含む。これにより、表面の不均一にパターン化されたぬれ性がとりわけよく可能になる。特に基板は少なくとも部分的にまたは完全に、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリメトキシシラン(PFOTS)で表面改質され、パターン化的にUVライトに曝されたアルミナから成ってもよい。追加的または代替的に、疎水性は超疎水性であってもよく、および/または親水性は超親水性であってもよい。追加的または代替的に、疎水性および/または親水性は、静的にならびに/または動的に特に前進しおよび/もしくは後退する水接触角の測定によって決定されてもよい。特に疎水性は、接触角が最小120°(度)、特に最小150°であることを意味してもよい。追加的または代替的に、親水性は、接触角が最大60°、特に最大30°、特に最大15°であることを意味してもよい。
【0033】
特に表面は、不均一にパターン化されるように、化学的および/もしくは物理的に処理され、ならびに/または構造化されてもよい。特に化学的に処理された表面は、巨視的に滑らかな表面であってもよい。追加的または代替的に、物理的に処理された表面は、微細構造化され、特にナノ構造化されていてもよい。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、表面は、衝突する液滴の並進移動を、少なくとも部分的にまたは完全に、表面上に衝突された液滴の、偏向(deflection)、転動(rolling)、および/または回転(rotation)、特に回転運動(gyration)に変換するように不均一にパターン化されている。これにより、液滴の跳ね返りエネルギーをとりわけよく削減することができる。追加的または代替的に、表面の不均一さおよび衝突後の拡張する液滴の過剰な表面エネルギーから創出され、またはその表面エネルギーによって誘導され、特に液滴または液体膜の引込みの間に蓄積された非対称の接着力またはピン止め力の相乗効果によって、このこと、特に回転運動または角運動量が可能にされまたは形成されてもよい。特に「並進モーション(translational motion)」という語句は、「並進移動(translation)」という用語に対して同義的に使用されてもよい。追加的または代替的に、「偏向された並進モーション(deflected translational motion)」という語句は、「偏向(deflection)」という用語に対して同義的に使用されてもよい。追加的または代替的に、「回転運動モーション(gyration motion)」という語句は、「回転運動(gyration)」という用語に対して同義的に使用されてもよい。追加的または代替的に、液滴は、右回転の高粘着性のパターン上の衝突によって時計回りに旋回してもよく、または左回転の高粘着性のパターン上の衝突によって反時計回りに旋回してもよい。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、キャッチャまたは装置は、入力端部と、反対側の端部、特に出力端部とを備える。表面は、並進移動を、少なくとも部分的にまたは完全に、入力端部から反対側の端部への方向での偏向に変換するように不均一にパターン化されている。これにより、残留物が望ましくない方向にこぼれることを削減または防止することができる。特に「入口(entrance)」という用語は、「入力(input)」という用語に対して同義的に使用されてもよい。追加的または代替的に、「出口(exit)」という用語は、「出力(output)」という用語に対して同義的に使用されてもよい。追加的または代替的に、反対側の端部は、入力端部の特に垂直方向で下方に配置されていてもよい。これにより、残留物および/またはキャップが、特に入力端部から反対側の端部に、特に重力によって下にまたは下向きに滑ることがさらに可能になる場合がある。追加的または代替的に、キャップ廃棄物処理区画、特にバケツは、反対側の端部に配置されていてもよい。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、不均一にパターン化された表面は、少なくとも1つの、特にいくつかのパターンを備え、パターンには各々、回転対称性があり鏡面対称性がなく、および/または鏡面対称性があり回転対称性がなく、および/または回転対称性も鏡面対称性もない。回転対称性があり鏡面対称性がないことは、回転運動を可能にする。追加的または代替的に、鏡面対称性があり回転対称性がないことは、偏向および転動を可能にする。追加的または代替的に、回転対称性も鏡面対称性もないことは、回転運動、偏向、および転動を可能にする。特に「非対称の(asymmetric)」という用語は、「回転対称性も鏡面対称性もない(no rotation symmetry and no mirror symmetry)」という語句に対して同義的に使用されてもよい。追加的または代替的に、回転対称性は、表面の表面平面に対して直交する回転軸を中心にするものであってもよい。追加的または代替的に、鏡面対称性は、表面の表面平面に対して直交する鏡面を中心にするものであってもよい。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、パターンは、少なくとも1つの弓形、特に開放された円弧、ならびに/または特に開放されたおよび/もしくはアルキメデスの螺旋状の部分を備えて、特に螺旋を形成するアルキメデスの螺旋状の部分を備える。特にパターンは、2から10個の、特に4個の弓形を備える。追加的または代替的に、螺旋を形成する開放された円弧により、回転対称性があり鏡面対称性がないことが可能になる場合がある。追加的または代替的に、「風車(pinwheel)」という用語は、「螺旋(spiral)」という用語に対して同義的に使用されてもよい。追加的または代替的に、少なくとも1つの円弧、特に複数の円弧は、入力端部に対して開いておりおよび/もしくは凹状であり、ならびに/または反対側の端部に対して閉じておりおよび/もしくは凸状であってもよい。これにより、鏡面対称性があり回転対称性がないことが可能になる場合がある。追加的または代替的に、開放された円弧は半円であってもよい。追加的または代替的に、開放されたおよびアルキメデスの螺旋状の部分により、回転対称性も鏡面対称性もないことが可能になる場合がある。追加的または代替的に、弓形は弓形形状であってもよく、および/または螺旋状の部分は螺旋状の部分の形状であってもよい。追加的または代替的に、「デザイン(design)」という用語は、「形状(shape)」という用語に対して同義的に使用されてもよい。
【0038】
特に不均一にパターン化された表面は、少なくとも1つの、特にいくつかのパターンを備えてもよく、パターンは各々、特に直径が最小1mm(ミリメートル)および/もしくは最大20mmの延長部または大きさを含む。これにより、パターン延長部を、特に衝突されおよび/または最大拡張された液滴の直径と同等にし、特に等しくすることができる場合がある。
【0039】
キャッチャは、キャップキャッチングのまたはキャップ入力の区域もしくは領域を備えてもよく、キャッチャのキャッチング区域の中にまたはキャッチャのキャッチング区域によって、キャップをキャッチするように設計されている。発生器は、少なくともキャッチング区域中に場を発生させるように設計されていてもよい。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、キャッチャは、キャップ廃棄物処理シュートを備え、特にキャップ廃棄物処理シュートである。特にシュートは、キャップおよび/または残留物を、別の方向へ、特にキャップ廃棄物処理区画特にバケツに導くように設計されている。特に、「じょうご(funnel)」または「ダクト(duct)」という用語は、「シュート(chute)」という用語に対して同義的に使用されてもよい。追加的または代替的に、「運搬する(convey)」または「通す(pass)」という用語は、「導く(guide)」という用語に対して同義的に使用されてもよい。追加的または代替的に、シュートの開口部は、キャッチング区域を備えてもよく、特にキャッチング区域であってもよい。
【0041】
本発明は、検査室試料取扱システムにさらに関する。本システムは、デキャッパと、本発明によるまたは上記で説明された検査室機器とを備える。デキャッパは、検査室試料を含む検査室試料容器から検査室キャップを除去するように設計されている。これにより、容器または容器の開口部を開けることができ、特にこのことは試料についてのいくつかの種類の計測および/または分析によって求められる場合がある。特にデキャッパは、キャッチャとは別のものであってもよい。追加的または代替的に、デキャッパは、キャップ把持部と、容器保持部とを備えてもよい。把持部は、キャップをつかむように設計されていてもよい。保持部は、容器を保持するように設計されていてもよい。把持部および保持部は、特につかんでいるキャップを特に保持している容器から除去するように、互いに相対的に、移動可能であり、特に転置可能であり、および/または回転可能であってもよい。特にキャップの除去の後に、容器の開口部が、特に容器の台の特に垂直方向で上方にある場合があるように、特に把持部は、保持部の特に垂直方向で上方に配置されていてもよい。これにより、試料が容器の中に留まることができる場合がある。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、デキャッパは、除去されたキャップをキャッチャに落とすように設計されている。特に、特にデキャッパによるキャップの放出後に、キャップが特に重力によって落下し得るように、特に、デキャッパ、特にデキャッパの把持部は、キャッチャの特に垂直方向で上方に配置されていてもよい。
【0043】
本発明は、検査室試料を含む検査室試料容器から除去された検査室キャップをキャッチし、キャップによってキャッチャに放出された試料の残留物をキャッチャに引き寄せる電場を発生させるための、本発明によるまたは上記で説明された、検査室試料取扱システムにおける検査室機器の使用、および/もしくは検査室試料取扱システムの使用にさらに関する。
【0044】
追加的または代替的に、本発明は、不均一にパターン化された表面の特に少なくとも一部を、検査室液体試料の少なくとも1つの衝突する液滴に曝して、液滴の跳ね返りエネルギーを削減するために、表面上に衝突された液滴内で不均一な流速を創出するための、本発明によるまたは上記で説明された検査室液体試料取扱システムにおける検査室装置の使用にさらに関する。
【0045】
以下では、本発明の実施形態が図面を参照して詳細に説明される。図面の全体を通して、同じ要素は同じ参照番号で記される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】検査室試料を含む検査室試料容器から検査室キャップを除去する、本発明による検査室試料取扱システムのデキャッパと、本発明によるシステムの使用とを示す図である。
【
図2】キャップ廃棄物処理キャッチャおよび電場発生器を含み、もしくはキャップ廃棄物処理キャッチャおよび電場発生器である、本発明による検査室機器または検査室装置を備える
図1のシステムを示し、あるいは不均一にパターン化された表面を備えるキャッチャまたは装置と、除去したキャップをキャッチャに落とすデキャッパと、使用とを示す図である。
【
図3】除去され落とされたキャップをキャッチする
図2のキャッチャと、
図2の発生器によって発生して、キャップによってキャッチャに放出された試料の残留物を引き寄せる電場と、本発明によるキャッチャの使用とを示す図である。
【
図4】回転対称性があり鏡面対称性がない螺旋を形成する弓形を備える、
図2のキャッチャまたは装置の異なって不均一にパターン化された表面上に、衝突し衝突された試料の液滴と、本発明によるキャッチャまたは装置の使用とを示す図である。
【
図5】鏡面対称性があり回転対称性がない少なくとも1つの弓形を備える、
図2のキャッチャまたは装置の表面上に、衝突された試料の液滴と、本発明によるキャッチャまたは装置の使用とを示す図である。
【
図6】回転対称性も鏡面対称性もない少なくとも1つのアルキメデスの螺旋状の部分を備える、
図2のキャッチャまたは装置の異なって不均一にパターン化された表面上に、衝突された試料の液滴と、本発明によるキャッチャまたは装置の使用とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1および
図2は、特に液体の、特に水性の検査室試料取扱システム100、100’と、システム100の使用とを示している。システム100は、デキャッパ101および検査室機器1または検査室装置20を備える。
【0048】
デキャッパ101は、特に液体の、特に水性の検査室試料152、152’を含む特に液体の、特に水性の検査室試料容器151、151’から、検査室キャップ150を、特に自動的に除去するように設計されており、特に除去する。
【0049】
特に液体の、特に水性の検査室試料取扱システム100、100’における使用のための検査室機器1は、
図3~
図6に示すようなキャップ廃棄物処理キャッチャ2と、電場発生器3とを備える。
【0050】
デキャッパ101は、除去されたキャップ150をキャッチャ2に、特に自動的に落とすように設計されており、特に落とす。
【0051】
キャッチャ2は、特に液体の、特に水性の検査室試料152、152’を含む特に液体の、特に水性の検査室試料容器151、151’から除去された検査室キャップ150をキャッチするように設計されており、特にキャッチする。
【0052】
発生器3は、キャップ150によってキャッチャ2に放出された試料152、152’の特に液体の、特に水性の残留物153、153’を引き寄せる電場4を、特に自動的に発生させるように設計されており、特に発生させ、そうして引き寄せる。
【0053】
詳細には、発生器3は、静電気発生器3’を備え、特に静電気発生器3’である。発生器3は、残留物153を静電気的に引き寄せる静電場4’を発生させるように設計されている。
【0054】
さらに、発生器3の少なくとも一部5、特に発生器3の、帯電するように設計されており特に帯電している少なくとも1つの電極5’は、キャッチャ2の特に内部の表面2Sに配置されている。
【0055】
追加的または代替的に、発生器3は、キャッチャ2の表面2S、特に内部表面2Sにおいて電荷6を、特に自動的に生じるように設計されており、特に生じる。
【0056】
追加的または代替的に、発生器3は、少なくともキャッチャ2の表面2S、特に内部表面2Sにおいて場4を発生させるように設計されている。
【0057】
追加的または代替的に、発生器3は、キャッチャ2の表面2S、特に内部表面2Sに残留物153を引き寄せる場4を発生させるように設計されている。
【0058】
図示の実施形態では、電荷6は正電荷である。代替的な実施形態では、電荷は負電荷であってもよい。
【0059】
さらに、キャッチャ2は、キャッチャ2の表面2Sによってキャップ150をキャッチするように設計されている。
【0060】
さらに、検査室液体試料取扱システム100’における使用のためのキャッチャ2または装置20は、表面2S、特に内部表面2Sを備える。表面2Sは、検査室液体試料152’の少なくとも1つの衝突する液滴153’’に曝されるように設計されており、液滴153’’の跳ね返りエネルギーを削減するために、表面2S上に衝突された液滴153’’内で不均一な流速を創出するように不均一にパターン化されており、特に曝され、そうして創出し、そうして削減する。
【0061】
詳細には、表面2Sは、不均一にパターン化されたぬれ性7a、7bを備えている。
【0062】
詳細には、キャッチャ2または装置20は、低粘着性の、特に疎水性の基板8を備え、基板8は、少なくとも1つの高粘着性の、特に親水性のパターン9を含む。
【0063】
さらに、表面2Sは、衝突する液滴153’’の並進移動TMを、少なくとも部分的に、表面2S上に衝突された液滴153’’の、偏向DF、転動RL、および/または回転RO、特に回転運動GYに変換するように不均一にパターン化されており、特に変換する。
【0064】
詳細には、キャッチャ2または装置20は、入力端部2IEと、反対側の端部、特に出力端部2OEとを備える。表面2Sは、並進移動TMを、少なくとも部分的に、入力端部2IEから反対側の端部2OEへの方向DIでの偏向DFに変換するように不均一にパターン化されている。
【0065】
さらに、不均一にパターン化された表面2Sは、少なくとも1つの、特にいくつかのパターン10を備え、パターン10には各々、回転対称性RSがあり鏡面対称性MSがなく、および/または鏡面対称性MSがあり回転対称性RSがなく、および/または回転対称性RSも鏡面対称性MSもない。
【0066】
詳細には、パターン10は、少なくとも1つの弓形11、特に開放された円弧11’、ならびに/または特に開放されたおよび/もしくはアルキメデスの螺旋状の部分11’’を備えて、特に螺旋11’’’を形成するアルキメデスの螺旋状の部分を備える。
【0067】
図4では、回転対称性RSがあり鏡面対称性MSがない螺旋11’’’を形成する開放された円弧11’を含む少なくとも1つの高粘着性のパターン9、10を備える低粘着性の基板8上で、衝突する液滴153’’の並進移動TMが、衝突された液滴153’’の回転運動GYに変換されている。特に拡張段階の間、並進運動エネルギーは、液滴153’’の表面エネルギーに変換される。液体または液滴153’’は、最大拡張に到達し、円形の膜を形成した後、特に低粘着性の基板8上では高粘着性のパターン9、10上よりも速く、不均一に後退し、そうして回転し、特に回転運動する。言い換えれば、表面エネルギーは、回転の運動エネルギーに変換される。
【0068】
図5では、鏡面対称性MSがあり回転対称性RSがなく、入力端部2IEに対して開いており、および/または反対側の端部2OEに対して閉じている円弧11’を含む少なくとも1つの高粘着性のパターン9、10を備える低粘着性の基板8上で、衝突する液滴153’’の並進移動TMが、衝突された液滴153’’の偏向DFおよび転動RLに変換されている。
【0069】
図6では、回転対称性RSも鏡面対称性MSもない開口のアルキメデスの螺旋状の部分11’’を含む少なくとも1つの高粘着性のパターン9、10を備える低粘着性の基板8上で、衝突する液滴153’’の並進移動TMが、衝突された液滴153’’の偏向DF、転動RL、および/または回転運動GYに変換されている。
【0070】
さらに、キャッチャ2は、キャップ廃棄物処理シュート2’を備え、特にキャップ廃棄物処理シュート2’である。特にシュート2’は、キャップ150および/または残留物153を、別の方向へ、特にキャップ廃棄物処理区画19に導くように設計されており、特に導く。
【0071】
図示され上記で説明された実施形態が明らかにするように、本発明は、改善された特性を有する検査室機器を提供する。さらに、本発明は、そのような検査室機器を備える検査室試料取扱システム、ならびに特にそのような検査室試料取扱システムにおけるそのような検査室機器の使用および/またはそのような検査室試料取扱システムの使用を提供する。
【外国語明細書】