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特開2024-121785ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121785
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/03 20060101AFI20240830BHJP
   C08G 63/183 20060101ALI20240830BHJP
   C07C 69/82 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
C07C67/03
C08G63/183
C07C69/82 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024005760
(22)【出願日】2024-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2023028023
(32)【優先日】2023-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】灘波 朋也
(72)【発明者】
【氏名】松本 麻由美
(72)【発明者】
【氏名】原田 恭佑
(72)【発明者】
【氏名】坂本 純
【テーマコード(参考)】
4H006
4J029
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB46
4H006AC48
4H006AC91
4H006AD15
4H006BC10
4H006BC31
4H006BC51
4H006BD60
4H006BJ50
4H006KA03
4H006KC30
4J029AA03
4J029AB01
4J029AC01
4J029AE03
4J029BA03
4J029CB06A
4J029HA02
4J029HB02
4J029KA02
(57)【要約】
【課題】本発明は、ポリエステル組成物を化学的に分解する条件を検討し、新たに用いる石油原料や触媒を最小限用いるか、もしくは用いることなく、均一な単量体BHET組成物の製造方法を提供するものである。
【達成手段】以下(i)、(ii)の工程を有し、(i)、(ii)の順で行うビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)組成物の製造方法によって達成される。
(i)ポリエステル組成物の添加量100重量部に対して、グリコール化合物を15重量部以上62重量部以下の範囲で添加し、190℃以上240℃以下の範囲で第一解重合反応を行い、第一解重合反応液を得る工程
(ii)第一解重合反応に供したポリエステル組成物の添加量100重量部に対して、145重量部以上のグリコール化合物を前記第一解重合反応液に添加し、190℃以上240℃以下の範囲で第二解重合反応を行い、BHETを含む第二解重合解重合反応液を得る工程
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下(i)、(ii)の工程を有し、(i)、(ii)の順で行うビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)組成物の製造方法。
(i)ポリエステル組成物の添加量100重量部に対して、グリコール化合物を15重量部以上62重量部以下の範囲で添加し、190℃以上240℃以下の範囲で第一解重合反応を行い、第一解重合反応液を得る工程
(ii)第一解重合反応に供したポリエステル組成物100重量部に対して、145重量部以上のグリコール化合物を前記第一解重合反応液に添加し、190℃以上240℃以下の範囲で第二解重合反応を行い、BHETを含む第二解重合反応液を得る工程
【請求項2】
請求項1における(ii)の工程における解重合反応温度が、190℃以上220℃以下である請求項1に記載のBHET組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の第二解重合反応液と、水および/またはアルコールを混合し、BHET組成物を沈殿させる工程を含む請求項1記載のBHET組成物の製造方法。
【請求項4】
BHET組成物を沈殿させる工程において、(iii)(iv)を満たす請求項3記載のBHET組成物の製造方法。
(iii)70℃ ≦ 第二解重合反応液の温度 ≦ 190℃
(iv)0℃ ≦ 水および/またはアルコールの温度 ≦ 70℃
【請求項5】
請求項1に記載の第二解重合反応液から得たBHET組成物を溶媒に溶解し、次いで晶析する工程を含む請求項1に記載のBHET組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載のポリエステル組成物が、使用済みポリエステル製品および/またはポリエステル製品製造工程において発生した屑由来のポリエステル組成物である請求項1に記載のBHET組成物の製造方法。
【請求項7】
グリコール化合物がエチレングリコールである請求項1に記載のBHET組成物の製造方法。
【請求項8】
得られるBHET組成物のGPC測定における分子量分布において、ピークトップ分子量が210.0以上260.0以下の範囲である請求項1に記載のBHET組成物の製造方法。
【請求項9】
得られるBHET組成物のGPC測定における分子量分布分散度が1.0以上1.5以下の範囲である、請求項1に記載のBHET組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載のBHET組成物を重縮合して得られるポリエステル樹脂組成物。
【請求項11】
請求項10に記載のポリエステル樹脂組成物を含むポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケミカルリサイクルにおけるビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(以下BHETと記す。)組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルは機械特性、熱特性、耐薬品性、電気特性、成形性に優れ、様々な用途に用いられている。ポリエステルの中でも、特にポリエチレンテレフタレート(以降PETと記す。)は、透明性や加工性に優れていることから、光学用フィルムや離型用フィルムなど高品位性が求められる用途に幅広く使われているが、離型用フィルムのような工程用フィルムでは使用後廃棄となることから、近年環境負荷低減が求められている。
【0003】
環境負荷の低減として、廃棄となるポリエステル樹脂を燃焼させ熱エネルギーを得るサーマルリサイクルがあるが、サーマルリサイクルを行うと、二酸化炭素の発生があること、またポリエステル原料が損失することから、ポリエステルを再生産するためには新たに石油原料を使用する必要がある。
【0004】
新たに石油原料を用いないリサイクルには、ポリエステルを化学的に原料や中間体に分解し、再度重合を行うことでポリエステルへと再生するケミカルリサイクルという方法があるが、ケミカルリサイクルはポリエステルを分解する際に多量の溶媒やエネルギーを使用するため、環境への負荷が増加する。
【0005】
これらの課題に対して、特許文献1および2では、高純度のケミカルリサイクルPETに関する技術が開示されている。また特許文献3では、異物混入が少なく、熱安定性の高いリサイクルポリエステルの製造方法に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-169623号
【特許文献2】特開2008-88096号
【特許文献3】特開2022-47520号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および2では、ペットボトルからリサイクルされたBHETやPETの製造方法、また組成物が開示されている。しかしながら、これらの製造方法ではポリエステルを化学的に分解するにあたって多量の触媒の添加を必要としているため、触媒の添加やその除去による環境への負荷が課題となる。また、特許文献3では、ポリエステル原料からリサイクルされたPETの製造方法、また組成物が開示されている。しかしながら、この製造方法ではポリエステルを化学的に分解するにあたって、新たに石油原料を用いて製造したPETの低重合体の添加を必要としているため、環境への負荷が課題となる。
【0008】
本発明の目的は、ポリエステル組成物を化学的に分解する条件を検討し、新たに用いる石油原料や触媒を最小限、もしくは全く用いることのない、均一なBHET組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明のBHET組成物の製造方法に到達した。
【0010】
本発明の目的は以下の手段によって達成される。
【0011】
(1)以下(i)、(ii)の工程を有し、(i)、(ii)の順で行うビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)組成物の製造方法。
(i)ポリエステル組成物の添加量100重量部に対して、グリコール化合物を15重量部以上62重量部以下の範囲で添加し、190℃以上240℃以下の範囲で第一解重合反応を行い、第一解重合反応液を得る工程。
(ii)第一解重合反応に供したポリエステル組成物の添加量100重量部に対して、145重量部以上のグリコール化合物を前記第二解重合反応液に添加し、190℃以上240℃以下の範囲で第二解重合反応を行い、BHETを含む第二解重合反応液を得る工程。
(2)請求項1における(ii)の工程における解重合反応温度が、190℃以上220℃以下である請求項1に記載のBHET組成物の製造方法。
(3)(1)に記載の第二解重合反応液と、水および/またはアルコールを混合し、BHET組成物を沈殿させる工程を含む(1)に記載のBHET組成物の製造方法。
(4)BHET組成物を沈殿させる工程において、(iii)(iv)を満たす(3)記載のBHET組成物の製造方法。
(iii)70℃ ≦ 第二解重合反応液の温度 ≦ 190℃
(iv)0℃ ≦ 水および/またはアルコールの温度 ≦ 70℃
(5)(1)に記載の第二解重合反応液から得たBHET組成物を溶媒に溶解し、次いで晶析する工程を含む(1)に記載のBHET組成物の製造方法。
(6)(1)に記載のポリエステル組成物が、使用済みポリエステル製品および/またはポリエステル製品製造工程において発生した屑由来のポリエステル組成物である(1)に記載のBHET組成物の製造方法。
(7)グリコール化合物がエチレングリコールである(1)に記載のBHET組成物の製造方法。
(8)得られるBHET組成物のGPC測定における分子量分布において、ピークトップ分子量が210.0以上260.0以下の範囲である(1)に記載のBHET組成物の製造方法。
(9)得られるBHET組成物のGPC測定における分子量分布分散度が1.0以上1.5以下の範囲である、(1)に記載のBHET組成物の製造方法。
(10)(1)に記載のBHET組成物を重縮合して得られるポリエステル樹脂組成物。
(11)(10)に記載のポリエステル樹脂組成物を含むポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、新たに用いる石油原料や触媒を最小限用いる、もしくは用いることのないBHET組成物の製造方法を提供することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明のBHET組成物の製造方法では、BHET組成物を得るために、以下(i)、(ii)の工程を有し、(i)、(ii)の順で行うことが必要である。
(i)ポリエステル組成物の添加量100重量部に対して、グリコール化合物を15重量部以上62重量部以下の範囲で添加し、190℃以上240℃以下の範囲で第一解重合反応を行い、第一解重合反応液を得る工程。
(ii)第一解重合反応に供したポリエステル組成物の添加量100重量部に対して、145重量部以上のグリコール化合物を前記第一解重合反応液に添加し、190℃以上240℃以下の範囲で第二解重合反応を行い、BHETを含む第二解重合反応液を得る工程。
【0015】
本発明に用いるポリエステル組成物には、ペットボトルやポリエステルフィルム、衣服、容器などの使用済みポリエステルや、成形加工工程において発生した屑などを用いることが好ましく、特にBHET組成物を得るために大部分がPETからなるポリエステル組成物が好ましいが、本発明の効果を損ねない範囲で共重合成分などPET以外の成分を含んでいても良い。例えば、ペットボトルなどの使用済みポリエステルにはイソフタル酸由来の基を含むことがあるが、問題なくBHET組成物を得ることができる。
【0016】
本発明における解重合反応とは、グリコール化合物の存在下でポリエステル組成物を加熱、撹拌することでグリコリシス反応をおこない、最終的にBHET組成物が得られるまで分解させる反応のことを指す。
【0017】
本発明における工程(i)では、ポリエステル組成物の分解効率の観点から、ポリエステル組成物の添加量100重量部に対して、グリコール化合物を15重量部以上62重量部以下の範囲で添加して第一解重合反応を行い、第一解重合反応液を得ることが必要である。さらに下限としては25重量部以上であることが好ましい。また、上限としては、40重量部以下であることが好ましい。グリコール化合物の添加量が上記範囲未満である場合、ポリエステル組成物に対するグリコール化合物の量が少なく、反応容器内の撹拌を十分に行うことができないため、解重合反応が均一に進行せず、また局所的な加熱が発生し、ポリエステル組成物が熱分解し、BHET組成物の品位低下を引き起こす。また、グリコール化合物の添加量が上記範囲を超える場合、グリコール化合物の多量の蒸発が発生し反応温度が十分に上がらず、解重合反応速度の低下を引き起こし、反応時間が延長する。
【0018】
本発明における工程(i)では、190℃以上240℃以下の範囲で第一解重合反応を行うことが必要である。さらに下限としては200℃以上であることが好ましく、220℃以上であることがより好ましい。第一解重合反応の温度が上記範囲未満である場合、解重合反応にかかる時間が大幅に長くなってしまう。また、上記範囲を超える場合、熱分解が進行し、BHETの品位が悪化する。
【0019】
本発明における工程(ii)では、ポリエステル組成物の解重合反応効率の観点から、第一解重合反応に供したポリエステル組成物の添加量100重量部に対して、145重量部以上のグリコール化合物を前記第一解重合反応液に添加して第二解重合反応を行うことが必要である。さらに下限としては290重量部以上であることが好ましい。また上限としては635重量部以下であることが好ましい。グリコール化合物の添加量が145重量部未満である場合、ポリエステル組成物の解重合反応が十分に進行せず、得られるBHET量が減少してしまう。また、グリコール化合物の添加量が635重量部を超える場合、反応に必要十分なグリコール量を大きく超えてしまう点や、反応時間が長くなることによってBHET組成物が劣化する点、反応に用いる反応器が大きくなる点などから、環境負荷やコストが大きくなり、品位が悪化するため、本発明の効果を妨げるものではないが、適当ではない。
【0020】
本発明における工程(ii)では、190℃以上240℃以下の範囲で第二解重合反応を行うことが必要である。さらに下限としては200℃以上であることが好ましい。また、上限としては220℃以下であることが好ましい。第二解重合反応の温度が190℃未満である場合、解重合反応にかかる時間が大幅に長くなってしまう。240℃を超える場合、BHET組成物の品位が悪化する上、均一なBHET組成物が得られなくなる。
【0021】
本発明の工程(i)および(ii)においては、解重合反応触媒やポリエステル組成物の低重合体の添加を必要としないが、本発明の効果を妨げない範囲で従来公知の解重合反応触媒やポリエステル組成物の低重合体を添加することができる。
【0022】
本発明において、解重合反応触媒を使用する場合は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化マグネシウムなどの金属の水酸化物、また酢酸マグネシウムや酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸リチウムなどの酢酸金属塩などを用いることができるが、特にこれに限定されるものではない。
【0023】
また、上記ポリエステル組成物の低重合体とは、テレフタル酸やイソフタル酸、テレフタル酸ジメチルやイソフタル酸ジメチルなどのジカルボン酸化合物と、エチレングリコールなどのグリコール化合物をエステル化反応もしくはエステル交換反応して得られるものや、ポリエステル組成物を解重合反応させた際に得られるものなどのこと指すが、特にこれに限定されるものではない。ただし、エステル化反応やエステル交換反応で得られる低重合体は、新たに原料を用いて製造されるものであるため、環境負荷の観点からポリエステル組成物を解重合反応させた際に得られる低重合体を用いることが好ましい。
【0024】
また、本発明において第二解重合反応液からBHET組成物を得る方法は特に限定されるものではないが、例えば第二解重合反応液に含まれるグリコール化合物を蒸発させ濃縮する方法、第二解重合反応液の温度を下げ、結晶化させて取り出す方法、第二解重合液に含まれるグリコール化合物とは異なる溶媒を添加して再沈殿する方法などが挙げられる。
【0025】
本発明における晶析とは、第二解重合反応液から得たBHET組成物に対し、溶媒を添加して溶解させ、該溶液の温度を徐々に下げてBHET組成物を再結晶化させる工程であり、BHET組成物の純度をより高める事ができる。また、再結晶化前の溶液をフィルター等でろ過したり、遠心分離して不純物を取り除くことも好ましい。
【0026】
第二解重合反応液の温度を下げ、結晶化させて取り出す方法や、第二解重合反応液に含まれるグリコール化合物とは異なる溶媒を添加して再沈殿する方法としては、第二解重合反応液と、水および/またはアルコールを混合し、BHET組成物を沈殿させる工程を設けることが好ましい。BHET組成物が沈殿することで、第二解重合反応液中に含まれる過剰なグリコール化合物とBHET組成物を分離することが可能となる。
【0027】
さらに、上記BHET組成物を沈殿させる工程において、(iii)(iv)を満たすことが好ましい。
(iii)70℃ ≦ 第二解重合反応液の温度 ≦ 190℃
(iv)0℃ ≦ 水および/またはアルコールの温度 ≦ 70℃
【0028】
第二解重合反応液の温度としては70℃以上190℃以下であることが好ましく、より好ましくは70℃以上150℃以下である。上記範囲を満たすことで、混合する水および/またはアルコールの蒸発を起こすことなく、効率的に沈殿を生じさせることができる。
【0029】
また、水および/またはアルコールの温度としては、0℃以上70℃以下であることが好ましく、より好ましくは4℃以上30℃以下、さらに好ましくは4℃以上10℃以下である。上記範囲を満たすことで、混合する水および/またはアルコールの蒸発を起こすことなく、効率的に沈殿を生じさせることができる。
【0030】
本発明の工程(ii)において第二解重合反応液を得た後、均一なBHET組成物を得るために晶析を行うことが好ましい。この晶析工程は、上記BHET組成物を沈殿させ、グリコール化合物と分離した後に実施しても構わない。
【0031】
晶析工程において、用いる溶媒の種類は特に限定されないが、コストやBHETの溶解度の観点から、水やエチレングリコールであることが好ましい。また、用いる溶媒の量は、BHET組成物が80℃程度の温度で再結晶しなければ問題はなく、特に限定されるものではないが、工程(i)で添加したポリエステル組成物100重量部を基準として、500重量部以上であることが好ましい。また、溶媒に溶解させる温度についても特に限定されるものではないが、BHET組成物を溶解させるため、80℃以上であることが好ましい。
【0032】
本発明に用いるグリコール化合物は、効率的にBHET組成物を得るためにエチレングリコールであることが好ましいが、発明の効果を損ねない範囲で他のグリコール化合物を含んでいてもよい。
【0033】
本発明の製造方法で得られるBHET組成物は、GPC測定における分子量分布において、ピークトップ分子量が210以上260以下の範囲であることが好ましい。さらに下限としては250以上であることがより好ましく、上限としては、257以下であることがより好ましい。
【0034】
また、本発明の製造方法で得られるBHET組成物は、GPC測定における分子量分布分散度が1.0以上1.5以下の範囲であることが好ましい。さらに上限としては1.3以下であることがより好ましい。
【0035】
なお、本発明におけるGPC測定は、Waters社の「Waters Alliance e2695」のGPC装置とRI検出器を用いて測定を行った。測定における移動相には、トリフルオロ酢酸ナトリウムを420mg/kgの濃度でヘキサフルオロイソプロパノールに溶解させた溶液を用いた。標準試料にはPMMAスタンダードサンプルを2点と、分子量254のBHET試薬を用いて検量線を作成し、測定対象のBHET組成物を2.5mg/3mlの濃度で移動相溶液に溶解させた試料溶液を調製し、分析を行う。
【0036】
本発明の(i)および(ii)の工程を(i)、(ii)の順で行って得られたBHET組成物を重縮合反応することでポリエステル樹脂組成物とすることができる。
【0037】
本発明における重縮合反応とは、BHET組成物を加熱、減圧しながら撹拌し、BHET組成物からエチレングリコールを脱離させ、最終的にポリエステル樹脂組成物を得る工程を指す。重縮合における反応触媒には従来公知の触媒を用いることができ、必要に応じて酸化防止剤や着色防止剤、リン化合物、顔料、染料、粒子などを添加することもできる。また、本発明の効果を損ねない範囲で、その他ジカルボン酸成分やジオール成分、さらにはヒドロキシカルボン酸などを複数種類用いて共重合しても構わない。
【0038】
本発明で得られるポリエステル樹脂組成物を成形することで繊維、フィルム、シート、容器、ボトルなどに好適に用いることができる。その中でも本発明の製造方法で得られたBHET組成物を用いてなるポリエステル樹脂組成物は色調、透明性が優れていることからポリエステルフィルムに適しており、特に工程離型用二軸延伸ポリエステルフィルムに好適に使用することができる。該用途のフィルムは離型後に不要となり、リサイクルの元原料として活用することが好適であり、さらに該用途へリサイクルすることがサーキュラーエコノミーの観点から好ましい。このような工程用離型フィルムとしては、具体的には積層セラミックコンデンサー(MLCC)製造用離型フィルム、ドライフィルムレジスト用フィルム、偏光板離型用フィルム、光学離型用フィルムが挙げられ、本発明で得られるポリエステル樹脂組成物を好適に使用することができる。
【0039】
本発明のポリエステルフィルムにおいて、本発明で得られるポリエステル樹脂組成物は、全体重量の3重量%以上であることが好ましく、より好ましくは10重量%以上、さらには20重量%以上であることが好ましい。また上限については特に制限されるものではない。
【0040】
本発明のポリエステルフィルムに用いられる樹脂組成物において、本発明で得られるポリエステル樹脂組成物以外の成分は特に制限されるものではなく、バージン原料から得られたポリエステル樹脂組成物、その他ケミカルリサイクルで得られたポリエステル樹脂組成物、マテリアルリサイクルで得られたポリエステル樹脂組成物、共重合ポリエステル樹脂組成物など従来公知の樹脂組成物を用いることができる。また、本発明のポリエステルフィルムは、単層フィルム、2層以上を積層した積層フィルムのいずれであってもよく、延伸形態も未延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムなど特に制限されるものではないが、機械強度の点から二軸延伸フィルムであることが好ましい。
【0041】
本発明のポリエステルフィルムにおけるフィルムのキャスト方法は特に限定されるものではないが、ポリエステル樹脂組成物を押出機内で加熱溶融し、口金から冷却したキャストドラム上に押し出してシート状に加工する手法(溶融キャスト法)、ポリエステル樹脂を溶媒に溶解させ、その溶液を口金からキャストドラム、エンドレスベルト等の支持体上に押し出して膜状とし、次いでかかる膜層から溶媒を乾燥除去させてシート状に加工する方法(溶液キャスト法)等も使用することができ、また積層フィルムの場合は、積層する各層のポリエステル樹脂を別の押出機に投入し溶融してから合流させ、口金から冷却したキャストドラム上に共押出してシート状に加工する方法(共押出し法により溶融製膜する方法)を好ましく用いることができる。
【0042】
以下に本発明の具体的な製造方法を例示するが、これに限定されるものではない。
【0043】
(i)PETボトルやPETフィルム屑などの回収PET原料100重量部と、その重量に対して、エチレングリコールを15~62重量部添加し、190℃~240℃の温度範囲で第一解重合反応を行い、第一解重合反応液を得る。(ii)回収PET原料とエチレングリコールが均一に溶解したところで、すでに添加されている回収PET原料100重量部に対してエチレングリコールを145重量部以上添加し、190℃~240℃の温度範囲で第二解重合反応を行って第二解重合反応液を得る。
【0044】
得られた第二解重合反応液を徐々に降温し、結晶化したBHET組成物と解重合反応液に含まれるエチレングリコールをろ過などで分離して固形分としてBHET組成物を得る。得られたBHET組成物に500~1000重量部の水を加え、80℃~100℃の温度範囲でBHET組成物を水に溶解させる。BHET組成物水溶液に含まれる異物などをろ過などで取り除き、BHET組成物水溶液を冷却してBHET組成物を結晶化させ、ろ過などで固形分として湿潤したBHET組成物の結晶を得る。得られた湿潤したBHET組成物の結晶を乾燥し、BHET組成物を得る。
【0045】
得られたBHET組成物を重合反応槽に添加、200℃~250℃程度の温度範囲で溶融し、例えば三酸化アンチモンのような重合反応触媒を添加してから、装置内温度を徐々に270℃~300℃程度の温度まで昇温しながら装置内圧力を1Torr以下まで減圧する。重合反応の進行に従って反応物の粘度が上昇し、反応物の撹拌トルク増加値が重合終了目標値に到達した時点で反応を終了し、重合反応槽からポリエステルを水槽へ吐出する。吐出されたポリエステルは水槽で急冷され、カッターでチップ化してポリエステル樹脂組成物を得る。
【0046】
得られたポリエステル樹脂組成物を含む各種ポリエステル樹脂組成物を、各層に対応する押出機にそれぞれ投入し、加熱溶融押出する。合流ブロックを用いて積層し、口金から表面温度10~60℃に冷却したキャストドラム上に共押出し、静電気により密着冷却固化させ、未延伸フィルムを作成する。このとき、押出機で溶融したポリエステル樹脂は、フィルターにより濾過することが好ましい。ごく小さな異物もフィルム中にて粗大な突起や欠点となるため、フィルターには5μm以上の異物を95%以上捕集する高精度のものを用いることが有効である。
【0047】
次にこの未延伸フィルムを70~140℃の温度に加熱されたロール群に導き、長手方向(縦方向、すなわちシートの進行方向)に3~4倍延伸し、20~50℃の温度のロール群で冷却する。続いて、シートの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、80~240℃の温度に加熱された雰囲気中で、長手方向に直角な方向(幅方向)に3~4倍に延伸する。また、延伸後に、長手及び/幅方向に0.1~5%の弛緩処理を施してもよい。なお、二軸延伸する方法としては、上述のように長手方向と幅方向の延伸を分離して行う逐次二軸延伸方法のほかに、長手方向と幅方向の延伸を同時に行う同時二軸延伸方法のどちらであっても構わない。
【実施例0048】
以下実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の物性値は以下の方法で測定した。
【0049】
(1)BHET組成物の収率
解重合反応および晶析などを行って得られたBHET組成物を、70℃高真空で8時間以上真空乾燥を行い、粉体状のBHET組成物の重量を計量し、解重合反応に用いたポリエステル組成物が全てBHETに分解した場合の理論重量を100%として収率を計算した。収率が低い場合、重縮合などによってポリエステル樹脂組成物を得るために新たに石油原料を追加する必要があり、環境負荷となるため、下記基準に従い評価し、◎と○を合格とした。
◎:90%以上
○:80%以上
△:80%未満。
【0050】
(2)BHET組成物の分子量分布測定
BHET組成物の分子量分布測定には、解重合反応および晶析などを行って得られたBHET組成物に対して、70℃高真空で8時間以上真空乾燥を行って得られた、粉体状のBHET組成物を用いた。測定はWaters社の「Waters Alliance e2695」のGPC装置とRI検出器を用いて行った。測定における移動相には、トリフルオロ酢酸ナトリウムを420mg/kgの濃度でヘキサフルオロイソプロパノールに溶解させた溶液を用いた。標準試料にはPMMAスタンダードサンプルを2点と、分子量254のBHET試薬を用いて検量線を作成し、測定対象のBHET組成物を2.5mg/3mlの濃度で移動相溶液に溶解させた試料溶液を調製し、分析を行った。
【0051】
解析にはWaters社のGPCシステムを用い、ピークトップ分子量(Mp)と分子量分布分散度(Mw/Mn)を算出した。なお、Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量を指す。
【0052】
(3)ポリエステル樹脂組成物のヘイズ値
ポリエステル樹脂組成物チップ2gをo-クロロフェノール20mlに溶解させ、光路長20mmの石英セルおよびヘイズメーター(スガ試験機社製 HGM-2DP型)を用い、積分球式光電光度法によって溶液のヘイズ値を測定した。ヘイズ値が小さいほど濁りが少なく良好な品位となる。
【0053】
(4)ポリエステル樹脂組成物の色調
ポリエステル樹脂組成物チップを色差計(スガ試験機社製 SMカラーコンピュータ型式SM-T45)を用いて、ハンター値(b値)として測定した。この数値が小さいほど黄みが少なく、良好な色調となる。
【0054】
(5)ポリエステルフィルムの透明性
透明性は、厚み25μmに成形したフィルムのヘイズ(%)により評価した。フィルムヘイズの測定は、常態(温度23℃、相対湿度65%)において、ポリエステルフィルムを1時間放置した後、日本電色工業(株)製濁度計「NDH5000」を用いて行った。3回測定した平均値を、その積層ポリエステルフィルムのフィルムヘイズとした。フィルムヘイズについて、下記基準に従い評価し、◎と○を合格とした。
◎:1.0未満
○:1.0以上~2.0未満
△:2.0以上。
【0055】
(6)ポリエステルフィルムの色調
測定対象のポリエステルフィルムを任意の点において、100mm×100mmの寸法でサンプルを切り出し、分光測色計コニカミノルタ(株)製CM-3600dを用い、フィルム平面の法線と入射光の成す角が0°となるようにサンプルをセットし、サンプル上の任意の箇所の色度b*を、測定径φ25.4mmのターゲットマスク条件下で、透過光にて測定した。その後測定箇所の中心から30mm以上あけるようにサンプルを移動させて同様の測定を4回繰り返した(任意の5点において測定を行った)。色度b*について、下記基準に従い評価し、◎と○を合格とした。
◎:1.5未満
○:1.5以上~3.0未満
△:3.0以上。
【0056】
(7)BHETの異物評価
BHET組成物に含まれる異物について、BHET組成物10gをo-クロロフェノール30mlに溶解させ、55Φの5Cろ紙を用いて濾過し、ろ紙上に残った異物の個数をカウントした。解重合反応に触媒を用いる場合、BHET組成物中に異物が発生する場合があり、品位が悪化するため、下記基準に従い評価し、◎と○を合格とした。
◎:0個
○:1個以上10個未満
△:10個以上。
【0057】
(参考例)
本発明の実施例として挙げる解重合反応には、以下3種類のポリエステル組成物を用いた。
ポリエステル組成物A:リサイクルPET組成物
ポリエステル組成物B:バージンPET組成物
ポリエステル組成物C:リサイクルPETボトル組成物
【0058】
なお、ポリエステル組成物AはPET組成物からなるポリエステルフィルム屑をマテリアルリサイクルして再度ポリエステルフィルムとしたフィルム屑であり、ポリエステル組成物Bはバージン原料であるテレフタル酸とエチレングリコールを常法にてエステル化反応、重縮合反応して得られたPET組成物であり、ポリエステル組成物Cはイソフタル酸由来の基を含有するPETボトル組成物である。
【0059】
(実施例1)
ポリエステル組成物Aを100重量部と、その重量に対して、エチレングリコールを35重量部添加し、200℃から230℃まで徐々に昇温しながら、ポリエステル組成物Aとエチレングリコールが均一に溶解したところを終点として、第一解重合反応を行い、第一解重合反応液を得た。次いで得られた第一解重合反応液の温度を200℃に保ちながらエチレングリコールを580重量部添加し、添加完了から30分経過したところを終点として、第二解重合反応を行い、第二解重合反応液を得た。
【0060】
得られた第二解重合反応液を25℃まで徐々に降温し、結晶化したBHET組成物と解重合反応液に含まれるエチレングリコールをろ過で分離し、固形分としてBHET組成物を得た。得られたBHET組成物に700重量部の水を加え、100℃でBHET組成物を水に溶解させた。BHET組成物の水溶液に含まれる不溶物について、5Bのろ紙を用いたろ過で取り除き、次いでろ過した水溶液を冷却してBHET組成物を結晶化させ、5Bのろ紙を用いたろ過で固形分として湿潤したBHET組成物の結晶を得た。得られた湿潤したBHET組成物の結晶を乾燥し、BHET組成物を得た。収率は96%であった。
【0061】
得られたBHET組成物の分子量分布を測定したところ、Mpは255、分散度は1.03と均一なBHET組成物として問題のない範囲であった。
【0062】
(実施例2~7、比較例1~4)
第一解重合反応および第二解重合反応に用いるエチレングリコールの添加量を変更する以外は実施例1と同様にしてBHET組成物を得た。
【0063】
実施例2および3は、第二解重合反応に用いるエチレングリコールの添加量を減量したところ、BHET収率が若干下がったが、均一なBHET組成物が得られた。
【0064】
実施例4は、第一解重合反応に用いるエチレングリコールの添加量を増量し、第二解重合反応に用いるエチレングリコールの添加量を減量したところ、第一解重合反応の反応時間が若干伸び、収率が若干下がったが、均一なBHET組成物が得られた。
【0065】
実施例5は、第一解重合反応および第二解重合に用いるエチレングリコールの添加量を増量したところ、反応時間が若干伸びたが、均一なBHET組成物が得られた。
【0066】
実施例6は、第一解重合反応および第二解重合に用いるエチレングリコールの添加量を減量したところ、収率が若干下がったが、均一なBHET組成物が得られた。
【0067】
実施例7は、第一解重合反応に用いるエチレングリコールの添加量を減量し、第二解重合反応に用いるエチレングリコールの添加量を増量したところ、均一なBHET組成物が得られた。
【0068】
比較例1および2は、実施例1において第一解重合反応に用いるエチレングリコールの添加量を本発明の範囲外まで減量したところ、解重合反応が進行せず、ポリエステル組成物Aとエチレングリコールが均一な溶液状態にならなかったため、BHET組成物を得ることができなかった。
【0069】
比較例3および4は、実施例1において第一解重合反応に用いるエチレングリコールの添加量を本発明の範囲外まで増量したところ、解重合反応が十分に進行せず、ポリエステル組成物Aとエチレングリコールが均一な溶液状態にならず、終点の判定ができなかったため、BHET組成物を得ることができなかった。
【0070】
(比較例5)
ポリエステル組成物Aを100重量部と、その重量に対して、エチレングリコールを615重量部添加し、200℃から230℃まで徐々に昇温しながら、第一解重合反応を行ったが、解重合反応が十分に進行せず、ポリエステル組成物Aとエチレングリコールが均一な溶液状態にならず、終点の判定ができなかったため、BHET組成物を得ることができなかった。
【0071】
(比較例6~8)
比較例6および7は、実施例1において第二解重合反応に用いるエチレングリコールの添加量を表1に記載の通り本発明の範囲外まで減量したところ、BHET組成物は得られたものの、解重合反応が十分に進行せず、晶析の水に溶解させる工程にて多量の溶け残りが発生し、収率が大幅に低下した。また、得られたBHET組成物の分子量分布を測定したところ、Mp273であり、均一なBHET組成物は得られなかった。
【0072】
比較例8は、実施例1において第二解重合反応を行わなかったところ、BHET組成物は得られたものの、解重合反応が十分に進行せず、晶析の水に溶解させる工程にて多量の溶け残りが発生し、収率が大幅に低下した。また、得られたBHET組成物の分子量分布を測定したところ、Mp276であり、均一なBHET組成物は得られなかった。
【0073】
(実施例8)
晶析工程における溶媒をエチレングリコールに変更した以外は実施例1と同様にしてBHET組成物を得たところ、問題なく均一なBHET組成物であった。
【0074】
(実施例9、10)
第一解重合反応に用いるポリエステル組成物を変更した以外は実施例1と同様にしてBHET組成物を得た。
【0075】
実施例9は、ポリエステルBを用いたところ、問題なく均一なBHET組成物が得られた。
【0076】
実施例10は、ポリエステルCを用いたところ、問題なく均一なBHET組成物が得られた。
【0077】
(実施例11)
第一解重合反応に、解重合反応触媒として水酸化ナトリウム(NaOH)を添加する以外は実施例1と同様にしてBHET組成物を得たところ、若干の異物が発生したが、問題なく均一なBHET組成物であった。
【0078】
(実施例12)
第一解重合反応に、実施例1の方法で得られたBHET組成物を10重量部添加する以外は実施例1と同様にしてBHET組成物を得たところ、問題なく均一なBHET組成物であった。
【0079】
(実施例13)
晶析を行わない以外は実施例1と同様にしてBHET組成物を得たところ、分子量分布におけるMpが若干上がったが問題のない範囲であり、均一なBHET組成物であった。
【0080】
(比較例9)
ポリエステル組成物Aを100重量部と、その重量に対して、エチレングリコールを615重量部、NaOHを1重量部添加し、200℃から230℃まで徐々に昇温しながら、ポリエステル組成物Aとエチレングリコールが均一に溶解したところを終点として、第一解重合反応を行い、第一解重合反応液を得た。
【0081】
得られた第一解重合反応液を25℃まで徐々に降温し、結晶化したBHET組成物と解重合反応液に含まれるエチレングリコールをろ過で分離し、固形分としてBHET組成物を得た。得られたBHET組成物に700重量部の水を加え、100℃でBHET組成物を水に溶解させた。BHET組成物の水溶液に含まれる不溶物について、5Bのろ紙を用いたろ過で取り除き、次いでろ過した水溶液を冷却してBHET組成物を結晶化させ、5Bのろ紙を用いたろ過で固形分として湿潤したBHET組成物の結晶を得た。得られた湿潤したBHET組成物の結晶を乾燥し、BHET組成物を得た。収率は90%であった。
【0082】
得られたBHET組成物の分子量分布を測定したところ、Mpは257、分散度は1.08であったが、多量の異物が発生した。
【0083】
(比較例10)
第一解重合反応の反応温度を180℃に変更する以外は実施例1と同様の反応条件で第一解重合反応を行ったところ、解重合反応が進行せず、BHET組成物が得られなかった。
【0084】
(実施例14、15)
第二解重合反応の反応温度を表1の通り変更する以外は実施例1と同様にしてBHET組成物を得たところ、問題なく均一なBHET組成物であった。
【0085】
(実施例16)
第二解重合に用いるエチレングリコールの添加量を本発明の好ましい範囲を超える650重量部に変更した以外は実施例1と同様にしてBHET組成物を得たところ、問題なく均一なBHET組成物であった。
【0086】
(実施例17、18)
第一解重合反応の反応温度を変更する以外は、実施例1と同様にしてBHET組成物を得た。
【0087】
実施例17は、第一解重合反応の反応温度が低く、解重合時間が長時間化し、収率が若干低下したが、問題なく均一なBHET組成物であった。
【0088】
実施例18は、問題なく均一なBHET組成物であった。
【0089】
(実施例19)
ポリエステル組成物Aを100重量部と、その重量に対して、エチレングリコールを35重量部添加し、200℃から230℃まで徐々に昇温しながら、ポリエステル組成物Aとエチレングリコールが均一に溶解したところを終点として、第一解重合反応を行い、第一解重合反応液を得た。次いで得られた第一解重合反応液の温度を200℃に保ちながらエチレングリコールを580重量部添加し、添加完了から30分経過したところを終点として、第二解重合反応を行い、第二解重合反応液を得た。
【0090】
得られた第二解重合反応液を120℃まで徐々に降温し、4℃に冷却した1500重量部の水と混合した。その後、固液分離することで固形分としてBHET組成物を得た。得られたBHET組成物に700重量部の水を加え、100℃でBHET組成物を水に溶解させた。BHET組成物の水溶液に含まれる不溶物について、5Bのろ紙を用いたろ過で取り除き、次いでろ過した水溶液を冷却してBHET組成物を結晶化させ、5Bのろ紙を用いたろ過で固形分として湿潤したBHET組成物の結晶を得た。得られた湿潤したBHET組成物の結晶を乾燥し、BHET組成物を得た。収率は96%であった。
【0091】
得られたBHET組成物の分子量分布を測定したところ、Mpは255、分散度は1.03と均一なBHET組成物として問題のない範囲であった。
【0092】
(実施例20)
ポリエステル組成物Aを100重量部と、その重量に対して、エチレングリコールを35重量部添加し、200℃から230℃まで徐々に昇温しながら、ポリエステル組成物Aとエチレングリコールが均一に溶解したところを終点として、第一解重合反応を行い、第一解重合反応液を得た。次いで得られた第一解重合反応液の温度を200℃に保ちながらエチレングリコールを580重量部添加し、添加完了から30分経過したところを終点として、第二解重合反応を行い、第二解重合反応液を得た。
【0093】
得られた200℃の第二解重合反応液を、80℃、1500重量部の水と混合した。その後、固液分離することで固形分としてBHET組成物を得た。得られたBHET組成物に700重量部の水を加え、100℃でBHET組成物を水に溶解させた。BHET組成物の水溶液に含まれる不溶物について、5Bのろ紙を用いたろ過で取り除き、次いでろ過した水溶液を冷却してBHET組成物を結晶化させ、5Bのろ紙を用いたろ過で固形分として湿潤したBHET組成物の結晶を得た。得られた湿潤したBHET組成物の結晶を乾燥し、BHET組成物を得た。収率は82%であった。
【0094】
得られたBHET組成物の分子量分布を測定したところ、Mpは255、分散度は1.03と均一なBHET組成物として問題のない範囲であった。
【0095】
(実施例21)
ポリエステル組成物Aを100重量部と、その重量に対して、エチレングリコールを35重量部添加し、200℃から230℃まで徐々に昇温しながら、ポリエステル組成物Aとエチレングリコールが均一に溶解したところを終点として、第一解重合反応を行い、第一解重合反応液を得た。次いで得られた第一解重合反応液の温度を200℃に保ちながらエチレングリコールを580重量部添加し、添加完了から30分経過したところを終点として、第二解重合反応を行い、第二解重合反応液を得た。
【0096】
得られた第二解重合反応液を50℃まで徐々に降温し、4℃に冷却した1500重量部の水と混合した。その後、固液分離することで固形分としてBHET組成物を得た。得られたBHET組成物に700重量部の水を加え、100℃でBHET組成物を水に溶解させた。BHET組成物の水溶液に含まれる不溶物について、5Bのろ紙を用いたろ過で取り除き、次いでろ過した水溶液を冷却してBHET組成物を結晶化させ、5Bのろ紙を用いたろ過で固形分として湿潤したBHET組成物の結晶を得た。得られた湿潤したBHET組成物の結晶を乾燥し、BHET組成物を得た。収率は92%であった。
【0097】
得られたBHET組成物の分子量分布を測定したところ、Mpは255、分散度は1.03と均一なBHET組成物として問題のない範囲であった。
【0098】
(実施例22)
ポリエステル組成物Aを100重量部と、その重量に対して、エチレングリコールを35重量部添加し、200℃から230℃まで徐々に昇温しながら、ポリエステル組成物Aとエチレングリコールが均一に溶解したところを終点として、第一解重合反応を行い、第一解重合反応液を得た。次いで得られた第一解重合反応液の温度を200℃に保ちながらエチレングリコールを580重量部添加し、添加完了から30分経過したところを終点として、第二解重合反応を行い、第二解重合反応液を得た。
【0099】
得られた第二解重合反応液を120℃まで徐々に降温し、1500重量部の氷と混合した。氷がすべて溶解した後、固液分離することで固形分としてBHET組成物を得た。得られたBHET組成物に700重量部の水を加え、100℃でBHET組成物を水に溶解させた。BHET組成物の水溶液に含まれる不溶物について、5Bのろ紙を用いたろ過で取り除き、次いでろ過した水溶液を冷却してBHET組成物を結晶化させ、5Bのろ紙を用いたろ過で固形分として湿潤したBHET組成物の結晶を得た。得られた湿潤したBHET組成物の結晶を乾燥し、BHET組成物を得た。収率は90%であった。
【0100】
得られたBHET組成物の分子量分布を測定したところ、Mpは255、分散度は1.03と均一なBHET組成物として問題のない範囲であった。
【0101】
(ポリエステル樹脂組成物の評価)
実施例1~22および比較例1~10で得られたBHET組成物を以下に示す方法で重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂組成物を得て、評価を行った。
【0102】
解重合反応によって得られたBHET組成物を全量重合反応槽に添加し、200℃で溶融したところに、重縮合反応触媒として三酸化アンチモンを得られるポリエステル樹脂組成物を100wt%とした場合の添加量として0.01wt%添加したのち、装置内温度を徐々に290℃まで昇温しながら装置内圧力を1Torr以下まで減圧した。重合反応の進行に従って反応物の粘度が上昇し、反応物の撹拌トルク増加値が重合終了目標値に到達した時点で反応を終了し、重合反応槽からポリエステルを水槽へ吐出した。吐出されたポリエステルは水槽で急冷され、カッターでチップ化してポリエステル樹脂組成物を得た。
【0103】
実施例1~12および14、17、19~22のBHET組成物を用いて得られたポリエステル樹脂組成物は、溶液ヘイズ、色調b値ともに良好であった一方、実施例13、15、16、18のBHET組成物を用いて得られたポリエステル樹脂組成物は、溶液ヘイズ、色調b値が若干高い数値を示したものの、本発明のポリエステル樹脂組成物として問題のない範囲であった。
【0104】
比較例1~5および10ではBHET組成物が得られず、比較例6~8ではBHET組成物を得ることはできたものの収率が低く、重縮合を行うことができなかった。また、比較例9で得られたBHET組成物を用いて重縮合反応を行うことができたが、樹脂組成物の溶液ヘイズおよび色調b値が大きく悪化した。
【0105】
(ポリエステルフィルムの評価)
実施例23および比較例11で得られたポリエステル樹脂組成物を以下に示す方法でポリエステルフィルムを得て、評価を行った。
【0106】
第1層および第3層を構成する樹脂として、実施例23または比較例11で得られたポリエステル樹脂組成物を90重量部、ポリエステル組成物B(バージンPET組成物)を10重量部となるようにブレンドし、160℃で2時間減圧乾燥した後、第1層および第3層用の押出機に投入した。また、第2層を構成する樹脂として、実施例23または比較例11で得られたポリエステル樹脂組成物を80重量部、ポリエステル組成物B(バージンPET)を20重量部となるようにブレンドし、160℃で2時間減圧乾燥した後、第2層用の押出機に投入した。押出機内でそれぞれの原料を280℃で溶融させ、積層用合流ブロックで合流積層し、第1層、第2層および第3層の順番で3層積層とした。その後、口金から表面温度25℃のキャスティングドラム上に共押出しし、静電気により密着冷却固化させ、3層構成を持つ積層未延伸シートを作成した。続いて、該シートを加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度で長手方向(縦方向、すなわちシートの進行方向)に3.3倍延伸を行った後、25℃のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の110℃の加熱ゾーンで長手方向に直角な方向(幅方向)に3.5倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで230℃の温度で10秒間熱固定を施した。次いで、冷却ゾーンで均一に徐冷後、テンタークリップが把持していたフィルム両端部を切り取り、これを巻き取って厚み25μmのポリエステルフィルムを得た。
【0107】
実施例1~12および14、17、19~22のBHET組成物からなるポリエステル樹脂組成物を用いたポリエステルフィルムは、透明性、色調ともに良好であった一方、実施例13、15、16、18のBHET組成物からなるポリエステル樹脂組成物を用いたポリエステルフィルムは、透明性、色調が若干悪化したものの、光学用ポリエステルフィルムとして問題のない範囲であった。
【0108】
比較例9のBHET組成物からなるポリエステル樹脂組成物を用いたポリエステルフィルムは、透明性、色調が大きく悪化した。
【0109】
【表1-1】
【0110】
【表1-2】
【0111】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0112】
このようにして得られたBHET組成物、ポリエステル樹脂組成物、ポリエステルフィルムは、光学用途、農業用資材、園芸用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品、自動車用部品、電気・電子部品またはその他の用途として有用であり、特に高い品位が求められる工程離型用フィルムに好適である。