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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121794
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240830BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
H01L21/304 647Z
H01L21/304 643A
H01L21/304 648K
H01L21/30 572B
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024014602
(22)【出願日】2024-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2023028824
(32)【優先日】2023-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鰍場 真樹
(72)【発明者】
【氏名】ホー リンダ
(72)【発明者】
【氏名】林 宗儒
(72)【発明者】
【氏名】山口 佑
(72)【発明者】
【氏名】柴田 秀一
(72)【発明者】
【氏名】田村 圭伍
【テーマコード(参考)】
5F146
5F157
【Fターム(参考)】
5F146MA02
5F146MA05
5F146MA06
5F146MA10
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157AB49
5F157AB51
5F157AB64
5F157AB90
5F157AC01
5F157AC26
5F157BB23
5F157BB37
5F157BB44
5F157BB66
5F157BC12
5F157BD33
5F157BD55
5F157BE12
5F157BE43
5F157BH18
5F157CB14
5F157CF04
5F157CF14
5F157CF16
5F157CF34
5F157CF60
5F157CF70
5F157CF74
5F157CF99
5F157DB02
5F157DB03
5F157DB18
5F157DB41
5F157DC84
5F157DC85
(57)【要約】
【課題】薬液の使用量を削減しながら、基板上のレジスト膜を効率良く除去できる基板処理方法および基板処理装置を提供する。
【解決手段】主面にレジスト膜が形成された基板を処理する方法が提供される。この方法は、複数流体ノズルを基板の主面に向けて配置するノズル配置工程(S3)と、複数流体ノズルに水蒸気、オゾンガスおよび硫酸を供給する供給工程(S4)と、複数流体ノズルから、水蒸気、オゾンガスおよび硫酸の混合流体を前記基板の主面に向けて供給して、レジスト膜を基板の主面から除去する混合流体供給工程(S5)と、を含む。供給工程は、複数流体ノズルに、水蒸気およびオゾンガスが混合した湿潤オゾンガスを供給する湿潤オゾンガス供給工程を含んでもよい。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面にレジスト膜が形成された基板を処理する方法であって、
複数流体ノズルを前記基板の主面に向けて配置するノズル配置工程と、
前記複数流体ノズルに水蒸気、オゾンガスおよび硫酸を供給する供給工程と、
前記複数流体ノズルから、水蒸気、オゾンガスおよび硫酸の混合流体を前記基板の主面に向けて供給して、前記レジスト膜を前記基板の主面から除去する混合流体供給工程と、を含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記供給工程は、前記複数流体ノズルに、水蒸気およびオゾンガスが混合した湿潤オゾンガスを供給する湿潤オゾンガス供給工程を含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記湿潤オゾンガス供給工程は、水中でオゾンガスをバブリングして湿潤オゾンガスを生成する湿潤オゾンガス生成工程を含む、請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記湿潤オゾンガス供給工程は、閉鎖空間内の水中で、オゾンガス供給源から供給されるオゾンガスをバブリングして前記閉鎖空間内に湿潤オゾンガスを生成させ、前記閉鎖空間から前記複数流体ノズルに前記湿潤オゾンガスを圧送する工程を含む、請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記複数流体ノズルに到達するまでに前記湿潤オゾンガスが通る流路内の水を除去する水除去工程をさらに含む、請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記混合流体供給工程は、前記オゾンガスと前記硫酸との混合によって生じるカロ酸を含む前記混合流体を前記基板の主面に向けて供給する、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記混合流体供給工程は、前記水蒸気と前記硫酸との接触によって生じる希釈熱によって、前記硫酸よりも高温の前記カロ酸を含む前記混合流体を前記基板の主面に向けて供給する、請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記複数流体ノズルに供給される水蒸気は、100℃以下である、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記混合流体供給工程によって前記混合流体が供給される前の前記基板の主面は、液膜の無い乾燥表面である、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記基板を前記主面を通る回転軸線まわりに回転させる基板回転工程をさらに含み、
前記混合流体供給工程は、前記基板回転工程と並行して実行され、前記複数流体ノズルから前記混合流体を吐出しながら、前記基板の外周縁から前記回転軸線に向けて前記混合流体の前記主面上における着地点を移動させるスキャン工程を含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記硫酸に過酸化水素水を接触させることなく、前記基板の主面の前記レジスト膜を除去する、請求項1~10のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項12】
基板を保持する基板保持ユニットと、
前記基板保持ユニットに保持される基板の主面に向けて配置される複数流体ノズルと、
前記複数流体ノズルに水蒸気およびオゾンガスを供給する水蒸気/オゾン供給ユニットと、
前記複数流体ノズルに硫酸を供給する硫酸供給ユニットと、を含み、
前記複数流体ノズルから、水蒸気、オゾンガスおよび硫酸の混合流体を前記基板保持ユニットに保持された基板の主面に向けて供給するように構成された、基板処理装置。
【請求項13】
前記水蒸気/オゾン供給ユニットは、水蒸気およびオゾンガスの混合ガスである湿潤オゾンガスを供給する、請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記水蒸気/オゾン供給ユニットは、水中でオゾンガスをバブリングさせて前記湿潤オゾンガスを生成する湿潤オゾンガス生成ユニットを含む、請求項13に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記湿潤オゾンガス生成ユニットは、閉鎖空間を形成する密閉容器と、前記密閉容器中に貯留される水中にオゾンガスを供給するオゾンガス供給ユニットとを含み、前記複数流体ノズルに向けて前記湿潤オゾンガスを圧送する、請求項14に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記複数流体ノズルに到達するまでに前記湿潤オゾンガスが通る流路内の水を除去する水除去装置をさらに含む、請求項13に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する基板処理方法および基板処理装置に関する。処理の対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置および有機EL(Electroluminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用の基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板等が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、基板上でのパターンの形成や活性領域へのイオン注入のためのマスクとしてレジスト(フォトレジスト)が用いられる。使用後のレジストを基板から除去するためのウェット処理として、硫酸過酸化水素水混合液(SPM)を用いる処理が知られている。具体的には、特許文献1に記載されているように、硫酸と過酸化水素水とを混合してSPMを生成し、そのSPMを基板の表面に供給することにより、基板上のレジストが除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-16497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
硫酸および過酸化水素水は、いずれも高価な薬液であるため、使用量を削減できれば基板処理コストを削減できる。加えて、硫酸は環境負荷の高い薬液であるため、環境負荷低減の観点からも使用量の削減が求められている。使用後のSPMを回収して硫酸を再生し、その再生した硫酸を再利用するための研究も行われている。しかし、過酸化水素水と混合して生成されるSPMには大量の水分が含まれる。そのため、SPMから水分を蒸発させて目標濃度の硫酸を得るには、技術上およびコスト上の課題を克服する必要がある。
【0005】
そこで、この発明の一実施形態は、薬液の使用量を削減しながら、基板上のレジスト膜を効率良く除去できる基板処理方法および基板処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一実施形態は、次に例示的に列記する特徴を有する基板処理方法および基板処理装置を提供する。
【0007】
1.主面にレジスト膜が形成された基板を処理する方法であって、
複数流体ノズルを前記基板の主面に向けて配置するノズル配置工程と、
前記複数流体ノズルに水蒸気、オゾンガスおよび硫酸を供給する供給工程と、
前記複数流体ノズルから、水蒸気、オゾンガスおよび硫酸の混合流体を前記基板の主面に向けて供給して、前記レジスト膜を前記基板の主面から除去する混合流体供給工程と、を含む、基板処理方法。
【0008】
この方法によれば、水蒸気、オゾンガスおよび硫酸(典型的には室温よりも高温に加熱された硫酸)の混合流体が基板の主面に供給され、その混合流体によって、基板の主面からレジスト膜が除去される。硫酸と水蒸気が接触することにより希釈熱が発生し、その希釈熱によって加熱された硫酸の界面でオゾンが分解することにより、カロ酸(ペルオキソ一硫酸)が発生する。このカロ酸(とくに活性酸素)の働きによってレジストが分解され、レジスト膜を基板の主面から効率良く除去(剥離)することができる。
【0009】
コストの高い過酸化水素水を必要としない(用いない)プロセスであるので、安価で剥離性能の高いプロセスを実現できる。また、混合流体に含まれる硫酸は、基板から液体となって流下するので、これを回収して再利用することができる。回収される硫酸中の水分量は少ないので、回収した硫酸から目標濃度の硫酸を再生させるための技術上およびコスト上の障壁は高くない。よって、硫酸の再利用がしやすいプロセスであるので、硫酸の使用量を削減することが可能となる。こうして、薬液使用量を削減しながら基板上のレジスト膜を効率良く除去できる基板処理を実現できる。
【0010】
2.前記供給工程は、前記複数流体ノズルに、水蒸気およびオゾンガスが混合した湿潤オゾンガスを供給する湿潤オゾンガス供給工程を含む、項1に記載の基板処理方法。
【0011】
複数流体ノズルにおいて湿潤オゾンガスと硫酸とが接触することにより、湿潤オゾンガス中の水分(水蒸気)による希釈熱が発生し、その希釈熱により加熱された硫酸の界面にオゾンを接触させることができる。よって、カロ酸を効率的に生成でき、生成直後のカロ酸を基板の主面に供給してレジスト膜と反応させることができる。それにより、効率的なレジスト除去処理を達成できる。
【0012】
3.前記湿潤オゾンガス供給工程は、水中でオゾンガスをバブリングして湿潤オゾンガスを生成する湿潤オゾンガス生成工程を含む、項2に記載の基板処理方法。
【0013】
水中(典型的には脱イオン水の中)でのオゾンガスのバブリングによって、簡単な方法で湿潤オゾンガスを生成できる。
【0014】
このほか、水蒸気とオゾンガスとを混合することによって湿潤オゾンガスを生成することもできる。ただし、オゾンガスは約130℃で分解するので、分解を回避できる温度の水蒸気と混合することが好ましい。水中でのバブリングによって湿潤オゾンガスを発生させるときには、水の沸点がオゾンガスの分解温度よりも低いので、オゾンガスの分解回避のための温度管理は必要ではない。
【0015】
オゾンガスがバブリングされる水は加熱されてもよい。加熱された水中でのバブリングによって水蒸気の発生を促すことができるので、水蒸気を適度に含む湿潤オゾンガスを生成して、複数流体ノズルへと圧送できる。
【0016】
4.前記湿潤オゾンガス供給工程は、閉鎖空間内の水中で、オゾンガス供給源から供給されるオゾンガスをバブリングして前記閉鎖空間内に湿潤オゾンガスを生成させ、前記閉鎖空間から前記複数流体ノズルに前記湿潤オゾンガスを圧送する工程を含む、項2に記載の基板処理方法。
【0017】
閉鎖空間内に収容された水中にオゾンガスを供給してバブリングすることで、湿潤オゾンガスの生成およびその圧送を行うことができ、簡単な構成で、複数流体ノズルでの流体混合を行うことができる。
【0018】
5.前記複数流体ノズルに到達するまでに前記湿潤オゾンガスが通る流路内の水を除去する水除去工程をさらに含む、項2~項4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【0019】
6.前記混合流体供給工程は、前記オゾンガスと前記硫酸との混合によって生じるカロ酸を含む前記混合流体を前記基板の主面に向けて供給する、項1~5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【0020】
カロ酸を含む混合流体が基板の主面に供給されることにより、基板上のレジストを分解して効率的に除去できる。
【0021】
7.前記混合流体供給工程は、前記水蒸気と前記硫酸との接触によって生じる希釈熱によって、前記硫酸よりも高温の前記カロ酸を含む前記混合流体を前記基板の主面に向けて供給する、項6に記載の基板処理方法。
【0022】
水蒸気と硫酸との混合によって生じる希釈熱は、基板の主面に供給されるカロ酸を硫酸よりも高温にする。それにより、基板上のレジストの分解を促すことができるので、レジスト膜を効率的に除去できる。
【0023】
8.前記複数流体ノズルに供給される水蒸気は、100℃以下である、項1~6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【0024】
水蒸気の温度がオゾンの分解温度よりも低い100℃以下であることにより、オゾンが硫酸に接触する前に分解することを抑制できる。それにより、オゾンガスが硫酸と接触したときにカロ酸を効率良く生成できるので、高いレジスト除去性能を実現できる。
【0025】
9.前記混合流体供給工程によって前記混合流体が供給される前の前記基板の主面は、液膜の無い乾燥表面である、項1~8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【0026】
液膜のない乾燥状態の主面に混合流体が供給されることにより、混合流体中のカロ酸が希釈されることなくレジスト膜に作用する。そのため、カロ酸によるレジスト分解反応が効率的に生じるので、高効率なレジスト除去が可能になる。
【0027】
10.前記基板を前記主面を通る回転軸線まわりに回転させる基板回転工程をさらに含み、
前記混合流体供給工程は、前記基板回転工程と並行して実行され、前記複数流体ノズルから前記混合流体を吐出しながら、前記基板の外周縁から前記回転軸線に向けて前記混合流体の前記主面上における着地点を移動させるスキャン工程を含む、項1~9のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【0028】
基板の主面上の液体は、基板の回転に起因する遠心力によって外周側へと流れる。そこで、複数流体ノズルから吐出される混合流体による基板主面のスキャンを基板の外周縁から始めることによって、実質的に液膜の無い表面に混合流体が供給される。それにより、混合流体中のカロ酸が希釈されることなく基板主面のレジスト膜に作用するので、高効率なレジスト除去を実現できる。
【0029】
11.前記硫酸に過酸化水素水を接触させることなく、前記基板の主面の前記レジスト膜を除去する、項1~10のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【0030】
硫酸に対する過酸化水素水の接触がないことにより、硫酸に多量の水分が混合することを回避できる。それにより、硫酸中の水分を除去するための処理を軽減できるので、硫酸を再生して再利用しやすくなり、それに応じて硫酸の使用量を削減できる。
【0031】
12.基板を保持する基板保持ユニットと、
前記基板保持ユニットに保持される基板の主面に向けて配置される複数流体ノズルと、
前記複数流体ノズルに水蒸気およびオゾンガスを供給する水蒸気/オゾン供給ユニットと、
前記複数流体ノズルに硫酸(典型的には室温よりも加熱された硫酸)を供給する硫酸供給ユニットと、を含み、
前記複数流体ノズルから、水蒸気、オゾンガスおよび硫酸の混合流体を前記基板保持ユニットに保持された基板の主面に向けて供給するように構成された、基板処理装置。
【0032】
13.前記水蒸気/オゾン供給ユニットは、水蒸気およびオゾンガスの混合ガスである湿潤オゾンガスを供給する、項12に記載の基板処理装置。
【0033】
14.前記水蒸気/オゾン供給ユニットは、水中でオゾンガスをバブリングさせて前記湿潤オゾンガスを生成する湿潤オゾンガス生成ユニットを含む、項13に記載の基板処理装置。
【0034】
15.前記湿潤オゾンガス生成ユニットは、閉鎖空間を形成する密閉容器と、前記密閉容器中に貯留される水中にオゾンガスを供給するオゾンガス供給ユニットとを含み、前記複数流体ノズルに向けて前記湿潤オゾンガスを圧送する、項14に記載の基板処理装置。
【0035】
16.前記複数流体ノズルに到達するまでに前記湿潤オゾンガスが通る流路内の水を除去する水除去装置をさらに含む、項13~項15のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【0036】
17.項12~項16に記載した特徴に、さらに前述の基板処理方法に関して述べた特徴の一つ以上が組み合わされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成例を説明するための図解的な平面図である。
図2図2は、前記基板処理装置に備えられる処理ユニットの構成を説明するための模式図である。
図3図3は、水蒸気、オゾンガスおよび硫酸の混合流体を供給するための供給系の構成例を示す。
図4図4は、前記基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
図5図5は、基板処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図6A図6Aは、基板処理が行われているときの基板およびその周辺の様子を説明するための模式図であり、ノズル配置工程を示す。
図6B図6Bは、基板処理が行われているときの基板およびその周辺の様子を説明するための模式図であり、混合流体供給工程を示す。
図6C図6Cは、基板処理が行われているときの基板およびその周辺の様子を説明するための模式図であり、リンス工程を示す。
図7図7は、スキャン工程(図5のステップS52)の一例を示す。
図8図8は、この発明の他の実施形態における混合流体供給系の構成を説明するための図である。
図9図9は、この発明のさらに他の実施形態における混合流体供給系の構成を示す。
図10図10は、図9に示す水除去装置の一例を示す。
図11図11は、図9に示す水除去装置の他の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0039】
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置1の構成例を説明するための図解的な平面図である。基板処理装置1は、基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。この実施形態では、基板Wは、円板状を有する。基板Wは、シリコンウエハ等の基板Wであり、一対の主面を有する。
【0040】
基板処理装置1は、基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリアC(収容器)が載置されるロードポートLP(収容器保持ユニット)と、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボット(第1搬送ロボットIRおよび第2搬送ロボットCR)と、基板処理装置1に備えられる各部材を制御するコントローラ3とを含む。
【0041】
第1搬送ロボットIRは、キャリアCと第2搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。第2搬送ロボットCRは、第1搬送ロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。各搬送ロボットは、たとえば、多関節アームロボットである。
【0042】
複数の処理ユニット2は、第2搬送ロボットCRによって基板Wが搬送される搬送経路TRに沿って搬送経路TRの両側に配列され、かつ、上下方向に積層されて配列されている。複数の処理ユニット2は、たとえば、同様の構成を有している。
【0043】
複数の処理ユニット2は、水平に離れた4つの位置にそれぞれ配置された4つの処理タワーTWを形成している。各処理タワーTWは、上下方向に積層された複数の処理ユニット2を含む。4つの処理タワーTWは、ロードポートLPから第2搬送ロボットCRに向かって延びる搬送経路TRの両側に2つずつ配置されている。
【0044】
基板処理装置1は、バルブや配管等を収容する複数の流体ボックス4と、硫酸、薬液、リンス液、有機溶剤、または、これらの原料を貯留するタンクを収容する貯留ボックス5とを含む。処理ユニット2および流体ボックス4は、平面視略四角形状のフレーム6の内側に配置されている。
【0045】
処理ユニット2は、基板処理の際に基板Wを収容するチャンバ7を有する。チャンバ7は、第2搬送ロボットCRによって、チャンバ7内に基板Wを搬入したりチャンバ7から基板Wを搬出したりするための出入口(図示せず)と、出入口を開閉するシャッタユニット(図示せず)とを含む。チャンバ7内で基板Wに供給される処理液としては、詳しくは後述するが、硫酸、薬液、リンス液、有機溶剤等が挙げられる。
【0046】
図2は、処理ユニット2の構成を説明するための模式図である。処理ユニット2は、基板Wを所定の処理姿勢に保持しながら、回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック8と、基板Wに向けて処理液を吐出する複数のノズル(第1移動ノズル9、第2移動ノズル10、第3移動ノズル11)とを含む。
【0047】
処理ユニット2は、スピンチャック8に保持されている基板Wを加熱する基板加熱部材14と、スピンチャック8に保持されている基板Wから飛散する処理液を受ける処理カップ15とをさらに含む。
【0048】
スピンチャック8、複数の移動ノズル、基板加熱部材14、および処理カップ15は、チャンバ7内に配置されている。
【0049】
回転軸線A1は、基板Wの中心部を通り、処理姿勢に保持されている基板Wの各主面に対して直交する。処理姿勢は、たとえば、図2に示す基板Wの姿勢であり、基板Wの主面が水平である水平姿勢であるが、水平姿勢に限られない。すなわち、処理姿勢は、図2とは異なり、基板Wの主面が水平面に対して傾斜する姿勢であってもよい。処理姿勢が水平姿勢である場合、回転軸線A1は、鉛直に延びる。
【0050】
スピンチャック8は、基板Wを処理姿勢に保持する基板保持部材(基板保持ユニット、基板ホルダ)の一例であり、基板Wを処理姿勢に保持しながら回転軸線A1のまわりに基板Wを回転させる回転保持部材の一例でもある。
【0051】
スピンチャック8は、水平方向に沿う円板形状を有するスピンベース21と、スピンベース21の上方で基板Wを把持する複数の把持ピン20と、スピンベース21に連結され鉛直方向に延びる回転軸22と、回転軸22をその中心軸線(回転軸線A1)のまわりに回転させる回転駆動機構23とを含む。スピンベース21は、円板状のベースの一例である。
【0052】
複数の把持ピン20は、スピンベース21の周方向に間隔を空けてスピンベース21の上面に配置されている。回転駆動機構23は、たとえば、電動モータ等のアクチュエータを含む。回転駆動機構23は、回転軸22を回転させることでスピンベース21および複数の把持ピン20を回転軸線A1のまわりに回転させる。これにより、基板Wは、スピンベース21および複数の把持ピン20とともに回転軸線A1のまわりに回転される。
【0053】
複数の把持ピン20は、基板Wの周縁部に接触して基板Wを把持する閉位置と、基板Wに対する把持を解除する開位置との間で移動可能である。複数の把持ピン20は、開閉機構(図示せず)によって移動される。
【0054】
複数の把持ピン20は、閉位置に位置するとき、基板Wの周縁部を把持して基板Wを水平に保持する。複数の把持ピン20は、開位置に位置するとき、基板Wに対する把持を解除する一方で、基板Wの周縁部を下方から支持する。開閉機構は、たとえば、リンク機構と、リンク機構に駆動力を付与するアクチュエータとを含む。
【0055】
複数の移動ノズルは、スピンチャック8に保持されている基板Wの上面(上側の主面)に向けて、水蒸気、オゾンガスおよび硫酸の混合流体を吐出する第1移動ノズル9と、スピンチャック8に保持されている基板Wの上面に向けて、薬液の連続流およびリンス液の連続流を選択的に吐出する第2移動ノズル10と、スピンチャック8に保持されている基板Wの上面に向けて有機溶剤を吐出する第3移動ノズル11とを含む。
【0056】
第1移動ノズル9は、スピンチャック8に保持されている基板Wの主面(上面)に向けて、水蒸気、オゾンガスおよび硫酸の混合流体を供給する複数流体ノズルの一例である。第2移動ノズル10は、スピンチャック8に保持されている基板Wの主面(上面)に向けて薬液を吐出する薬液ノズルの一例であり、かつスピンチャック8に保持されている基板Wの主面(上面)に向けてリンス液を吐出するリンス液ノズルの一例である。第3移動ノズル11は、スピンチャック8に保持されている基板Wの主面(上面)に向けて有機溶剤を吐出する有機溶剤ノズルの一例である。
【0057】
複数の移動ノズルは、複数のノズル駆動機構(第1ノズル駆動機構25、第2ノズル駆動機構26および第3ノズル駆動機構27)によって水平方向にそれぞれ移動される。
【0058】
各ノズル駆動機構は、対応する移動ノズルを、中央位置と退避位置との間で移動させることができる。中央位置は、移動ノズルが基板Wの上面の中央領域に対向する位置である。基板Wの上面の中央領域とは、基板Wの上面において回転中心(中央部)と回転中心の周囲の部分とを含む領域のことである。退避位置は、移動ノズルが基板Wの上面に対向しない位置であり、処理カップ15の外側の位置である。
【0059】
各ノズル駆動機構は、対応する移動ノズルを支持するアーム(第1アーム25a、第2アーム26aおよび第3アーム27a)と、対応するアームを水平方向に移動させるアーム駆動機構(第1アーム駆動機構25b、第2アーム駆動機構26bおよび第3アーム駆動機構27b)とを含む。各アーム駆動機構は、電動モータ、エアシリンダ等のアクチュエータを含む。
【0060】
移動ノズルは、所定の回動軸線まわりに回動する回動式ノズルであってもよいし、対応するアームが延びる方向に直線的に移動する直動式ノズルであってもよい。移動ノズルは、鉛直方向にも移動できるように構成されていてもよい。
【0061】
処理ユニット2は、第1移動ノズル9に硫酸を供給する硫酸供給ユニット16と、第1移動ノズル9に水蒸気およびオゾンガスを供給する水蒸気/オゾン供給ユニット13とをさらに含む。硫酸供給ユニット16は、硫酸配管40、硫酸バルブ50Aおよび硫酸流量調整バルブ50Bを含む。
【0062】
硫酸配管40は、第1移動ノズル9に接続され、第1移動ノズル9に硫酸を案内する。硫酸バルブ50Aおよび硫酸流量調整バルブ50Bは、硫酸配管40に設けられている。
【0063】
硫酸バルブ50Aが硫酸配管40に設けられる、とは、硫酸バルブ50Aが硫酸配管40に介装されることを意味してもよい。以下で説明する他のバルブにおいても同様である。
【0064】
硫酸バルブ50Aは、硫酸配管40内の流路を開閉する。硫酸流量調整バルブ50Bは、硫酸配管40内の流路を流れる硫酸の流量を調整する。硫酸バルブ50Aが開かれると、硫酸流量調整バルブ50Bによって調整された流量で、第1移動ノズル9へと硫酸が供給される。
【0065】
図示はしないが、硫酸バルブ50Aは、弁座が内部に設けられたバルブボディと、弁座を開閉する弁体と、開位置と閉位置との間で弁体を移動させるアクチュエータとを含む。他のバルブについても同様の構成を有している。
【0066】
水蒸気/オゾン供給ユニット13は、この実施形態では、水蒸気およびオゾンガスの混合ガスである湿潤オゾンガスを第1移動ノズル9に供給する湿潤オゾンガス供給ユニットである。水蒸気/オゾン供給ユニット13は、第1移動ノズル9に結合された湿潤オゾンガス配管45を有している。第1移動ノズル9は、この実施形態では、二流体ノズルで構成されている。硫酸供給ユニット16から供給される硫酸と水蒸気/オゾン供給ユニット13から供給される湿潤オゾンガスとが、第1移動ノズル9を構成する二流体ノズルにおいて混合されることによって混合流体が生成される。その混合流体が、スピンチャック8に保持された基板Wの上面に向けて吐出される。水蒸気/オゾン供給ユニット13の構成は後述する。
【0067】
第2移動ノズル10から吐出される薬液は、たとえば、APM液(ammonia-hydrogen peroxide mixture:アンモニア過酸化水素混合液。より具体的にはいわゆるSC1)であってもよい。その他、フッ酸(HF)、希フッ酸(DHF)、バッファードフッ酸(BHF)、塩酸(HCl)、HPM液(hydrochloric acid-hydrogen peroxide mixture:塩酸過酸化水素水混合液)、アンモニア水、TMAH液(Tetramethylammonium hydroxide solution:水酸化テトラメチルアンモニウム溶液)、または、過酸化水素水(H)を含有する薬液が第2移動ノズル10から吐出されてもよい。
【0068】
第2移動ノズル10から吐出されるリンス液は、たとえば、脱イオン水(DIW)等の水である。ただし、リンス液は、脱イオン水に限られず、脱イオン水、炭酸水、電解イオン水、希釈濃度(たとえば、1ppm以上で、かつ、100ppm以下)の塩酸水、希釈濃度(たとえば、1ppm以上で、かつ、100ppm以下)のアンモニア水、もしくは、還元水(水素水)、または、これらのうちの少なくとも2種類を含有する混合液であってもよい。
【0069】
第2移動ノズル10は、第2移動ノズル10に流体を案内する共通配管41に接続されている。共通配管41には、共通配管41に薬液を供給する薬液配管42と、共通配管41にリンス液を供給するリンス液配管43とが接続されている。共通配管41は、ミキシングバルブ(図示せず)を介して薬液配管42およびリンス液配管43と接続されていてもよい。
【0070】
共通配管41には、共通配管41を開閉する共通バルブ51が設けられている。薬液配管42には、薬液配管42を開閉する薬液バルブ52Aと、薬液配管42内の薬液の流量を調整する薬液流量調整バルブ52Bとが設けられている。リンス液配管43には、リンス液配管43を開閉するリンス液バルブ53Aと、リンス液配管43内のリンス液の流量を調整するリンス液流量調整バルブ53Bとが設けられている。
【0071】
薬液バルブ52Aおよび共通バルブ51が開かれると、第2移動ノズル10から薬液の連続流が吐出される。リンス液バルブ53Aおよび共通バルブ51が開かれると、第2移動ノズル10からリンス液の連続流が吐出される。
【0072】
第3移動ノズル11から吐出される有機溶剤は、エタノール(EtOH)、イソプロパノール(IPA)等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)等の乳酸エステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類のうち少なくとも一種類を含有する。
【0073】
第3移動ノズル11には、第3移動ノズル11に有機溶剤を案内する有機溶剤配管44が接続されている。有機溶剤配管44には、有機溶剤配管44を開閉する有機溶剤バルブ54Aと、有機溶剤配管44内の有機溶剤の流量を調整する有機溶剤流量調整バルブ54Bとが設けられている。
【0074】
処理カップ15は、スピンチャック8に保持された基板Wから外方に飛散する処理液を受け止める複数(図2では3つ)のガード28と、複数のガード28によって下方に案内された処理液をそれぞれ受け止める複数(図2では3つ)のカップ29と、複数のガード28および複数のカップ29を取り囲む円筒状の外壁部材30とを含む。
【0075】
各ガード28は、平面視でスピンチャック8を取り囲む筒状の形態を有している。各ガード28の上端部は、ガード28の中心側に向かうように内方に傾斜している。各カップ29は、上向きに開放された環状溝の形態を有している。複数のガード28および複数のカップ29は、同軸上に配置されている。
【0076】
複数のガード28は、ガード昇降駆動機構(図示せず)によって個別に昇降される。ガード昇降駆動機構は、たとえば、複数のガード28をそれぞれ昇降駆動する複数のアクチュエータを含む。複数のアクチュエータは、電動モータおよびエアシリンダの少なくとも一方を含む。
【0077】
処理ユニット2は、チャンバ7外からチャンバ7内に不活性ガスを送るFFU(ファンフィルタユニット)等の送風ユニット31と、チャンバ7内を排気する排出配管32とを含む。送風ユニット31は、チャンバ7の上壁7aに配置されている。排出配管32は、外壁部材30に接続されている。送風ユニット31によってチャンバ7に送られる不活性ガスは、たとえば、窒素ガス、希ガス、またはこれらの混合ガスであってもよい。希ガスは、たとえば、アルゴンガスである。
【0078】
排出配管32は、排気ダクト(図示せず)に接続されている。排気ダクト内の雰囲気は吸引装置(図示せず)によって吸引される。チャンバ7内の雰囲気は、排出配管32を介して排気ダクトに排出される。吸引装置は、排気ダクト内の雰囲気を吸引する吸引ポンプ等を含む。吸引装置は、排気ダクトに介装され、または、排気ダクトに連結される。排出ダクトおよび吸引装置は、基板処理装置1が設置されるクリーンルームまたはクリーンルームに付随する設備内に設けられている。排気ダクトおよび吸引装置は、基板処理装置1の一部であってもよい。
【0079】
排出配管32と排気ダクトとの間、または、排出配管32には、オゾン除去装置33(オゾン除害器)が設けられている。チャンバ7から排出される雰囲気に含まれるオゾンガスは、オゾン除去装置33を通過する際に分解される。
【0080】
送風ユニット31および排出配管32の作用によって、チャンバ7の内部空間7cには、上方から下方に向かう気流が形成される。気流は、処理カップ15の内部を通って、排出配管32に流入する。
【0081】
基板Wに供給された処理液は、基板Wの周縁部から飛散していずれかのガード28によって受けられる。ガード28によって受けられた処理液は、対応するカップ29に案内され、各カップ29に対応する排液配管35を通って回収または廃棄される。
【0082】
基板加熱部材14は、基板Wを下方から加熱する円板状のホットプレートの形態を有している。基板加熱部材14は、スピンベース21の上面と基板Wの下面との間に配置されている。基板加熱部材14は、基板Wの下面に下方から対向する加熱面14aを有する。
【0083】
基板加熱部材14は、プレート本体60およびヒータ61を含む。プレート本体60は、平面視において、基板Wよりも僅かに小さい。プレート本体60の上面が加熱面14aを構成している。ヒータ61は、プレート本体60に内蔵されている抵抗体であってもよい。ヒータ61に通電することによって、加熱面14aが加熱される。
【0084】
ヒータ61は、基板Wを室温(たとえば、5℃以上で、かつ、25℃以下の温度)以上で、かつ、たとえば400℃以下の温度範囲で基板Wを加熱できるように構成されている。
【0085】
処理ユニット2は、基板加熱部材14の温度を検出する温度センサ62をさらに含む。温度センサ62は、図2に示す例では、プレート本体60に内蔵されているが、温度センサ62の配置については特に限定されない。温度センサ62は、たとえば、プレート本体60に外部から取り付けられていてもよい。
【0086】
ヒータ61には、給電線64を介して通電ユニット63が接続されている。通電ユニット63からヒータ61に供給される電流が調整されることによって、ヒータ61の温度が調整される。たとえば、通電ユニット63からヒータ61に供給される電流は、温度センサ62の検出温度に基づいて調整される。
【0087】
基板加熱部材14の下面には、ヒータ昇降軸65が接続されている。ヒータ昇降軸65は、スピンベース21の中央部に形成された貫通孔21aと、回転軸22の内部空間とに挿入される。
【0088】
処理ユニット2は、上下方向に基板加熱部材14を移動させるヒータ駆動機構66をさらに含む。ヒータ駆動機構66は、たとえば、上下方向にヒータ昇降軸65を移動させるヒータアクチュエータ(図示せず)を含む。ヒータアクチュエータは、たとえば、電動モータおよびエアシリンダの少なくとも一方を含む。ヒータ駆動機構66は、ヒータ昇降軸65を介して基板加熱部材14を上下方向に移動させる。基板加熱部材14は、基板Wの下面とスピンベース21の上面との間で上下方向に移動可能である。
【0089】
基板加熱部材14は、上昇する際に、開位置に位置する複数の把持ピン20から基板Wを受け取ることが可能である。基板加熱部材14は、加熱面14aが基板Wの下面に接触する接触位置、または、基板Wの下面に非接触で近接する近接位置に配置されることによって、基板Wを加熱することができる。基板加熱部材14による基板Wの加熱が緩和される程度に基板Wの下面から充分に退避する位置を退避位置という。基板Wに対する加熱が充分に緩和されることを、基板Wに対する加熱が停止されると言い換えることができる。
【0090】
基板加熱部材14を退避位置に配置しているときに基板加熱部材14から基板Wに伝達される熱量は、基板加熱部材14を近接位置に配置しているときに基板加熱部材14から基板Wに伝達される熱量よりも小さい。接触位置および近接位置は、加熱位置ともいう。退避位置は、加熱緩和位置ともいい、加熱停止位置ともいう。
【0091】
図3は、水蒸気、オゾンガスおよび硫酸の混合流体を供給するための供給系の構成例を示す。混合流体の供給系は、この例では、硫酸供給ユニット16と、水蒸気/オゾン供給ユニット13と、複数流体ノズル(この例では2流体ノズル)からなる第1移動ノズル9とを含む。
【0092】
硫酸供給ユニット16は、硫酸供給源である硫酸タンク55から第1移動ノズル9へと硫酸を流通させる硫酸配管40と、硫酸配管40に介装された硫酸バルブ50Aと、同じく硫酸配管40に介装された硫酸流量調整バルブ50Bとを含む。硫酸流量調整バルブ50Bは、硫酸配管40における硫酸の流量を1リットル/分以下に調整することが好ましい。さらに、この例では、硫酸供給ユニット16は、硫酸配管40に設けられたフィルタ50C、ポンプ50Dおよびヒータユニット50Eを含む。ポンプ50Dは、硫酸タンク55から硫酸を汲み出して硫酸配管40から第1移動ノズル9へと送出する。フィルタ50Cは、硫酸配管40を流通する硫酸中の異物を除去する。ヒータユニット50Eは、硫酸配管40を通って第1移動ノズル9に供給される硫酸を加熱する。ヒータユニット50Eは、たとえば、第1移動ノズル9に到達するときの硫酸の温度が120℃以上190℃以下となるように、硫酸を加熱する。
【0093】
硫酸供給ユニット16によって供給される硫酸は、厳密には硫酸含有液であり、典型的には、所定濃度の硫酸水溶液であって、硫酸(HSO)と水(HO)とが含有されている。硫酸水溶液は、たとえば、希硫酸または濃硫酸である。硫酸含有液は、硫酸と脱イオン水等の水とを混合することによって調整された硫酸水溶液であってもよい。硫酸含有液には、硫酸および水以外の物質が含有されていてもよいが、この実施形態においては、少なくとも過酸化水素水は含有されていない。この明細書において、「硫酸」とは、上記のような硫酸含有液を意味する。
【0094】
水蒸気/オゾン供給ユニット13は、水中でオゾンガスをバブリングさせて湿潤オゾンガスを生成する湿潤オゾンガス生成ユニット56と、湿潤オゾンガス生成ユニット56によって生成された湿潤オゾンガスを第1移動ノズル9に供給する湿潤オゾンガス配管45とを含む。湿潤オゾンガス生成ユニット56は、閉鎖空間を形成する密閉容器57と、密閉容器57中に貯留される水(たとえば脱イオン水)の中にオゾンガスを供給するオゾンガス供給ユニット58とを含む。湿潤オゾンガス生成ユニット56は、この実施形態では、さらに密閉容器57内に貯留される水を加熱するヒータユニット59を含む。ヒータユニット59は、密閉容器57を加熱するように構成されていてもよい。オゾンガス供給ユニット58は、オゾンガス供給源から密閉容器57へとオゾンガスを流通させるオゾンガス配管70と、オゾンガス配管70に設けられたオゾンガスバルブ70A(開閉バルブ)と、オゾンガス配管70に設けられたオゾンガス流量調整バルブ70Bとを含む。オゾンガス配管70には、さらに、異物を除去するためのフィルタ70Cが設けられていてもよい。オゾンガス配管70の先端は、密閉容器57内に貯留される水中に配置される。
【0095】
オゾンガスバルブ70Aを開くと、オゾンガス流量調整バルブ70Bによって規制される流量(たとえば、1~2リットル/分)でオゾンガスがオゾンガス配管70を通って流れ、密閉容器57に貯留された水中で放出される。それにより、水中でオゾンガスをバブリングさせることができる。これにより、オゾンガスに水蒸気が混合されて湿潤オゾンガスが生成される(湿潤オゾンガス生成工程)。湿潤オゾンガス配管45の入口は、密閉容器57内において開口し、密閉容器57に貯留された水の水位よりも上の閉鎖空間内に配置されている。したがって、密閉容器57内で生成された湿潤オゾンガスは、湿潤オゾンガス配管45を通って、第1移動ノズル9へと導かれる。オゾンガス供給ユニット58から密閉容器57へのオゾンガスの供給を継続することにより、密閉容器57内の気圧が高くなるので、密閉容器57から湿潤オゾンガス配管45を介して、第1移動ノズル9へと湿潤オゾンガスを圧送することができる。
【0096】
ヒータユニット59によって密閉容器57中の水を加熱し、水温を室温よりも高く(たとえば室温~80℃)としておくことにより、水の蒸発を促すことができるので、オゾンガスに対して適正な混合比で水蒸気を混合させた湿潤オゾンガスを生成できる。密閉容器57内に貯留される水の温度は、100℃以下として、オゾンガスの分解が生じないようにすることが好ましい。
【0097】
第1移動ノズル9は、たとえば外部混合型の2流体ノズルで構成されていてもよい。より具体的には、第1移動ノズル9は、ノズルハウジング90と、ノズルハウジング90内に形成された第1通路91および第2通路92とを有する。第1通路91は硫酸配管40に結合されており、第2通路92は湿潤オゾンガス配管45に結合されている。ノズルハウジング90の先端部には、第1通路91を流通した流体(この例では硫酸)を吐出する第1吐出口91aと、第2通路92を流通した流体(この例では湿潤オゾンガス)を吐出する第2吐出口92aとが開口している。第1吐出口91aおよび第2吐出口92aから吐出される流体は、それらの吐出口91a,92aの近傍のノズルハウジング90外で衝突して混合し、混合流体100を生成する。混合流体100は、典型的には、湿潤オゾンガスと硫酸の液滴とが混合した流体である。この混合流体100が、第1移動ノズル9から基板Wの上面へと供給される。
【0098】
むろん、ノズルハウジング内で流体を混合させる内部混合型の2流体ノズルを第1移動ノズル9として用いてもよい。
【0099】
硫酸タンク55には、新液配管71に設けられた新液バルブ71Aを開いて未使用の硫酸(新液)を供給できるほか、硫酸回収/再生ユニット80から、再生処理された硫酸が供給されてもよい。硫酸回収/再生ユニット80は、処理カップ15(図2参照)において、混合流体による処理の際に基板Wから排出される液を受けるガード28に対応したカップ29に接続された排液配管35(回収ライン)から使用済みの硫酸を回収し、その硫酸を再利用のために再生する。たとえば、硫酸回収/再生ユニット80は、回収した硫酸を加熱し、その硫酸中の水分を蒸発させることによって目標濃度まで回復させるように構成されていてもよい。
【0100】
具体的には、硫酸回収/再生ユニット80は、再生対象の硫酸を貯留する再生タンク81と、再生タンク81内の硫酸を加熱するヒータユニット82と、再生タンク81から硫酸タンク55へと再生処理された硫酸を供給する再生硫酸配管83とを含む。再生硫酸配管83には、再生硫酸バルブ83A、ポンプ83Bおよびフィルタ83Cが配置されている。再生硫酸バルブ83Aを開くと、ポンプ83Bによって再生タンク81から汲み出され、かつフィルタ83Cで異物が除去された再生硫酸が、硫酸タンク55に供給される。こうして、硫酸を再生して再利用することにより、硫酸の使用量を削減できる。
【0101】
この例では、排液配管35(回収ライン)からは、廃棄配管36が分岐している。廃棄配管36の分岐部と再生タンク81との間で排液配管35に設けられたバルブ37と、廃棄配管36に設けられたバルブ38とを開閉することによって、カップ29に集められた液を再生のために回収するか、または廃棄するかを選択できる。たとえば、基板W上の処理の状況に応じて、液中の異物が多いときには液を廃棄し、液中の異物が少ないときには液を再生タンク81に回収してもよい。
【0102】
図4は、基板処理装置1の電気的構成を説明するためのブロック図である。コントローラ3は、コンピュータ本体3aと、コンピュータ本体3aに接続された周辺装置3dとを含む、コンピュータである。コンピュータ本体3aは、各種の命令を実行するプロセッサ(CPU)3bと、情報を記憶するメモリ3cとを含む。
【0103】
周辺装置3dは、プログラム等の情報を記憶する補助記憶装置3eと、リムーバブルメディア(図示せず)から情報を読み取る読取装置3fと、ホストコンピュータ(図示せず)等の他の装置と通信する通信装置3gとを含む。
【0104】
コントローラ3は、入力装置3A、表示装置3B、および警報装置3Cに接続されている。入力装置3Aは、ユーザやメンテナンス担当者等の操作者が基板処理装置1に情報を入力するときに操作される。情報は、表示装置3Bの画面に表示される。入力装置3Aは、キーボード、ポインティングデバイス、およびタッチパネルのいずれかであってもよいし、これら以外の装置であってもよい。入力装置3Aおよび表示装置3Bを兼ねるタッチパネルディスプレイが基板処理装置1に設けられていてもよい。警報装置3Cは、光、音、文字、および図形のうちの1つ以上を用いて警報を発する。入力装置3Aがタッチパネルディスプレイの場合、入力装置3Aが、警報装置3Cを兼ねていてもよい。
【0105】
補助記憶装置3eは、電力が供給されていなくても記憶を保持する不揮発性メモリである。補助記憶装置3eは、たとえば、ハードディスクドライブ等の磁気記憶装置である。
【0106】
補助記憶装置3eは、複数のレシピを記憶している。レシピは、基板Wの処理内容、処理条件、および処理手順を規定する情報である。複数のレシピは、基板Wの処理内容、処理条件、および処理手順の少なくとも一つにおいて互いに異なる。
【0107】
コントローラ3は、ホストコンピュータ等の外部装置によって指定されたレシピに従って基板Wが処理されるように、基板処理装置1に備えられる各部材を制御する。
【0108】
コントローラ3の制御対象としては、第1搬送ロボットIR、第2搬送ロボットCR、回転駆動機構23、第1ノズル駆動機構25、第2ノズル駆動機構26、第3ノズル駆動機構27、ヒータ駆動機構66、通電ユニット63、送風ユニット31、温度センサ62、ポンプ50D,83B、ヒータユニット50E,59,82、硫酸バルブ50A、硫酸流量調整バルブ50B、共通バルブ51、薬液バルブ52A、薬液流量調整バルブ52B、リンス液バルブ53A、リンス液流量調整バルブ53B、有機溶剤バルブ54A、有機溶剤流量調整バルブ54B、オゾンガスバルブ70A、オゾンガス流量調整バルブ70B、再生硫酸バルブ83A、バルブ37,38等が挙げられる。
【0109】
また、図4には、代表的な部材が図示されているが、図示されていない部材についてコントローラ3によって制御されないことを意味するものではなく、コントローラ3は、基板処理装置1に備えられる各部材を適切に制御することができる。
【0110】
以下の各工程は、コントローラ3が基板処理装置1を制御することにより実行される。言い換えると、コントローラ3は、以下の各工程を実行するようにプログラムされている。
【0111】
図5は、基板処理装置1によって実行される基板処理の一例を説明するためのフローチャートである。図6A図6Cは、基板処理が行われているときの基板Wおよびその周辺の様子を説明するための模式図である。基板処理に用いられる基板Wの一対の主面のうちの少なくとも一方には、レジスト膜が形成されている。レジスト膜は、典型的には有機材料膜であり、パターン形成処理(ドライエッチングまたはウェットエッチング)やイオン注入処理などのマスクとして使用された後のレジスト膜であってもよい。
【0112】
基板処理装置1による基板処理では、たとえば、基板搬入工程(ステップS1)、基板加熱工程(ステップS2)、ノズル配置工程(ステップS3)、供給工程(ステップS4。湿潤オゾンガス供給工程、硫酸供給工程)、混合流体供給工程(ステップS5)、第1リンス工程(ステップS6)、薬液供給工程(ステップS7)、第2リンス工程(ステップS8)、有機溶剤供給工程(ステップS9)、スピンドライ工程(ステップS10)および基板搬出工程(ステップS11)が実行される。
【0113】
未処理の基板Wは、第2搬送ロボットCR(図1を参照)によってキャリアCから処理ユニット2に搬入され、スピンチャック8に渡される(基板搬入工程:ステップS1)。これにより、基板Wは、スピンチャック8によって水平に保持される(基板保持工程)。このとき、基板Wは、レジスト膜が形成されている主面が上面となるようにスピンチャック8に保持される。処理前の基板Wの主面(レジスト膜が形成されている主面)は、液膜が存在していない乾燥表面である。基板Wは、スピンドライ工程(ステップS10)が終了するまで、スピンチャック8によって保持され続ける。
【0114】
スピンチャック8に基板Wが保持されている状態で、回転駆動機構23が基板Wの回転を開始する(基板回転工程)。また、基板処理の実行中において、チャンバ7の内部空間7cには、上方から下方に向かう気流が常時形成されており、気流は、処理カップ15の内部を通って、排出配管32に流入している。
【0115】
第2搬送ロボットCRがチャンバ7から退避した後、基板Wを加熱する基板加熱工程(ステップS2)が実行される。具体的には、通電ユニット63によってヒータ61に電流が供給されて、ヒータ61の温度上昇が開始される。そして、ヒータ駆動機構66が、基板加熱部材14を退避位置から近接位置に移動させる。図6Aに示すように、ヒータ61の温度上昇が開始され、基板加熱部材14が近接位置に配置されることによって、基板Wの加熱が開始される(基板加熱開始工程:ステップS21)。
【0116】
一方、第1ノズル駆動機構25が、第1移動ノズル9を処理位置に移動させるノズル配置工程(ステップS3)が実行される。処理位置は、第1移動ノズル9が基板Wの主面(レジスト膜が形成された主面)に対向し、混合流体100を基板Wの主面に供給できる位置である。
【0117】
温度センサ62の検出温度が処理温度範囲に達すると、第1移動ノズル9が処理位置に位置する状態で、オゾンガスバルブ70Aおよび硫酸バルブ50Aが開かれ、それによって、湿潤オゾンガスおよび硫酸の第1移動ノズル9への供給が開始される(湿潤オゾンガス供給開始工程:ステップS41。硫酸供給開始工程:S42)。これにより、図6Bに示すように、第1移動ノズル9から湿潤オゾンガスと硫酸との混合流体100が吐出され、基板Wの上面への混合流体100の供給が開始される(混合流体供給開始工程:ステップS51)。一方、第1ノズル駆動機構25は第1移動ノズル9を移動させ、基板Wの上面における混合流体の着地点を基板Wの半径方向に移動させる(スキャン工程:ステップS52)。基板Wは回転軸線A1まわりに回転しているので、第1移動ノズル9から吐出される混合流体100は、基板Wの上面の全域をスキャンする。
【0118】
混合流体100の供給が開始された後、所定の時間が経過すると、オゾンガスバルブ70Aおよび硫酸バルブ50Aが閉じられ、第1移動ノズル9への湿潤オゾンガスおよび硫酸の供給が停止される(湿潤オゾンガス供給停止工程:ステップS43。硫酸供給停止工程:S44)。これにより、基板Wの上面への混合流体100の供給が停止される(混合流体供給停止工程:ステップS53)。
【0119】
混合流体100の吐出が停止された後、第1ノズル駆動機構25が第1移動ノズル9を退避させる(ステップS54)。一方、ヒータ駆動機構66が、基板加熱部材14を近接位置から退避位置に移動させる。基板加熱部材14を退避位置(図6Cに示す位置)に配置されることによって、基板Wの加熱が停止される(基板加熱停止工程:ステップS22)。これにより、基板加熱工程(ステップS2)が終了する。
【0120】
湿潤オゾンガスと硫酸との混合流体100によって基板Wの上面をスキャンすることによって、基板Wの上面全域に混合流体100を供給できる。この混合流体100の働きによって、基板Wの主面のレジストが分解され、レジスト膜が基板Wの主面から除去(剥離)される。そして、混合流体100中の液成分(主として硫酸)が基板Wの回転に伴う遠心力によって基板Wの上面に沿って回転半径外方へと流れ、それにより、基板Wの主面から剥離したレジスト膜の少なくとも一部が基板Wの外へと排除される。
【0121】
第1移動ノズル9においては、硫酸と湿潤オゾンガス中の水蒸気とが接触することにより希釈熱が発生し、その希釈熱によって加熱された硫酸の界面で湿潤オゾンガス中のオゾンが分解する。それによって、カロ酸(ペルオキソ一硫酸)が発生する。このカロ酸(とくに活性酸素)を含む混合流体100が基板Wの上面に供給されることにより、レジストが分解され、レジスト膜を基板Wの主面から効率良く除去(剥離)することができる。しかも、基板Wに供給される直前に硫酸と水蒸気とが接触するので、希釈熱を効率的に利用してオゾンガスを分解してカロ酸を生成でき、しかも生成直後のカロ酸を基板Wの主面に供給できる。そのうえ、希釈熱によってカロ酸が加熱され、カロ酸は混合前の硫酸よりも高温の状態で基板Wの主面に供給される。こうして、生成直後の高温のカロ酸によってレジストを効率的に分解することができる。さらに、この実施形態では、基板加熱工程(ステップS2)が並行して実行されるので、一層効率的にレジスト膜を除去することができる。
【0122】
基板加熱工程(ステップS2)および混合流体供給工程(ステップS5)の後、基板Wの上面リンス液を供給することによって、基板Wの上面を洗浄する第1リンス工程(ステップS6)が実行される。
【0123】
具体的には、第2ノズル駆動機構26が、第2移動ノズル10を処理位置に移動させる。処理位置は、たとえば、中央位置である。第2移動ノズル10が処理位置に位置する状態で、共通バルブ51およびリンス液バルブ53Aが開かれる。これにより、図6Cに示すように、第2移動ノズル10からリンス液が吐出され、基板Wの上面へのリンス液の供給が開始される(リンス液供給開始工程、リンス液供給工程)。基板Wの上面上に着液したリンス液は、基板Wの上面の周縁部に向かって移動し、基板Wの上面の全体にリンス液が広がる。
【0124】
リンス液の供給が開始された後、所定の時間が経過すると、共通バルブ51およびリンス液バルブ53Aが閉じられる。これにより、基板Wの上面へのリンス液の供給が停止される(リンス液供給停止工程)。これにより、第1リンス工程が終了する。第1リンス工程によって、基板Wの上面から硫酸が排出される。硫酸とともに、基板Wの上面から剥離されたレジスト膜が洗い流され、基板Wの上面から基板W外へと排除される。
【0125】
基板Wの上面へのリンス液の供給が停止された後、基板Wの上面に薬液を供給する薬液供給工程(ステップS7)が実行される。具体的には、第2移動ノズル10が処理位置に位置する状態で共通バルブ51および薬液バルブ52Aが開かれる。これにより、リンス液の吐出が停止され、さらに、第2移動ノズル10から基板Wの上面に向けて、薬液の連続流が吐出(供給)される(薬液吐出工程、薬液供給工程)。これにより、基板Wの上面が薬液によって処理される。これにより、基板Wの上面に残っている残渣が除去される。
【0126】
薬液供給工程(ステップS7)の後、基板Wの上面にリンス液を供給して基板Wの上面を洗浄する第2リンス工程(ステップS8)が実行される。具体的には、第2移動ノズル10が基板Wの上面に対向し、かつ、共通バルブ51が開かれている状態に維持しながら、薬液バルブ52Aが閉じられてリンス液バルブ53Aが開かれる。これにより、第2移動ノズル10からの薬液の吐出が停止され、さらに、第2移動ノズル10から基板Wの上面に向けてリンス液の連続流が吐出(供給)される(リンス液吐出工程、リンス液供給工程)。これにより、基板Wの上面の薬液がリンス液とともに基板W外に排出されて、基板Wの上面が洗浄される。
【0127】
第2リンス工程(ステップS8)の後、基板Wの上面に有機溶剤を供給する有機溶剤供給工程(ステップS9)が実行される。具体的には、第2移動ノズル10からのリンス液の吐出を停止し、かつ、第2移動ノズル10を退避させる。そして、第3ノズル駆動機構27が第3移動ノズル11を基板Wの上面に対向させて有機溶剤バルブ54Aが開かれる。これにより、第3移動ノズル11から基板Wの上面に向けて、有機溶剤の連続流が吐出(供給)される(有機溶剤吐出工程、有機溶剤供給工程)。これにより、基板Wの上面のリンス液が有機溶剤によって置換される。
【0128】
基板処理に用いられる有機溶剤はリンス液よりも揮発性が高いことが好ましい。そうであれば、リンス液を有機溶剤で置換することで、その後のスピンドライ工程(ステップS10)において基板Wを良好に乾燥させることができる。基板処理に用いられる有機溶剤はリンス液よりも表面張力が低いことが好ましい。そうであれば、基板Wの上面に凹凸パターンが形成されている場合には、基板Wの上面を乾燥させる際に凹凸パターンに作用する表面張力を低減でき、凹凸パターンの倒壊を抑制できる。
【0129】
次に、基板Wを高速回転させて基板Wの上面を乾燥させるスピンドライ工程(ステップS10)が実行される。具体的には、有機溶剤バルブ54Aを閉じて基板Wの上面への有機溶剤の供給を停止させる。そして、回転駆動機構23が基板Wの回転を加速し、基板Wを高速回転(たとえば、1500rpm)させる。それによって、大きな遠心力が基板Wに付着しているリンス液に作用し、有機溶剤が基板Wの周囲に振り切られる。
【0130】
スピンドライ工程(ステップS10)の後、回転駆動機構23が基板Wの回転を停止させる。その後、第2搬送ロボットCRが、処理ユニット2に進入して、スピンチャック8から処理済みの基板Wを受け取って、処理ユニット2外へと搬出する(基板搬出工程:ステップS11)。その基板Wは、第2搬送ロボットCRから第1搬送ロボットIRへと渡され、第1搬送ロボットIRによって、キャリアCに収納される。
【0131】
図7は、スキャン工程(図5のステップS52)の一例を示す。この例では、混合流体100の吐出を開始するときの第1移動ノズル9の初期位置は、基板Wの外周縁に混合流体100の着地点100aが配置される位置である。混合流体100の供給が開始されると、第1移動ノズル9が移動し始め、それによって、混合流体100の着地点100aは、基板Wの外周縁から回転中心(回転軸線A1)に向かって移動する。その後は、必要に応じて、混合流体100の着地点100aが基板Wの外周縁と回転中心(回転軸線A1)との間で繰り返し往復するように第1移動ノズル9が移動されてもよい。図7には、基板Wのほぼ半径の範囲をスキャン範囲として示すが、基板Wのほぼ直径に渡る範囲をスキャン範囲としてもよい。
【0132】
混合流体100の初期着地点が基板Wの外周縁に設定され、その着地点100aが回転中心(回転軸線A1)に向かって移動することにより、混合流体100は、基板W上の液膜のない(実質的に乾燥した)表面に着地する。そのため、混合流体100中のカロ酸が希釈されることなくレジスト膜に作用するので、レジスト分解反応を効率的に生じさせることができる。それにより、高効率なレジスト除去が可能になる。
【0133】
以上のように、この実施形態によれば、水蒸気、オゾンガスおよび硫酸の混合流体100が基板Wの主面に供給され、その混合流体100によって、基板Wの主面からレジスト膜が除去される。硫酸と水蒸気が接触することにより希釈熱が発生し、その希釈熱によって加熱された硫酸の界面でオゾンが分解することにより、カロ酸(ペルオキソ一硫酸)が発生する。このカロ酸(とくに活性酸素)の働きによってレジストが分解され、レジスト膜を基板Wの主面から効率良く除去(剥離)することができる。
【0134】
混合流体100によるレジスト除去工程では、コストの高い過酸化水素水を必要としない(用いない)ので、安価で剥離性能の高いレジスト除去プロセスを実現できる。また、混合流体100中の硫酸は、基板Wから液体となって流下するので、これを回収して再利用することができる。そして、基板Wから流下する硫酸中の水分量は少ないので、回収した硫酸を目標濃度に再生させるための技術上およびコスト上の障壁は高くない。よって、硫酸を再利用しやすいので、硫酸の使用量を削減できる。こうして、薬液使用量を削減しながら基板W上のレジスト膜を効率良く除去できる。
【0135】
この実施形態では、オゾンガスを水中でバブリングさせることで、予め水蒸気およびオゾンガスが混合された湿潤オゾンガスが生成される。したがって、湿潤オゾンガスおよび硫酸を2流体ノズルからなる第1移動ノズル9で混合させて、混合流体100を生成できる。第1移動ノズル9(2流体ノズル)において湿潤オゾンガスと硫酸とが接触することにより、湿潤オゾンガス中の水分(水蒸気)による希釈熱が発生し、その希釈熱により加熱された硫酸の界面にオゾンを接触させることができる。よって、カロ酸を効率的に生成でき、生成直後のカロ酸を基板Wの主面に供給してレジスト膜と反応させることができる。それにより、効率的なレジスト除去処理を達成できる。水中でのオゾンガスのバブリングによる湿潤オゾンガスの生成は比較的簡単な方法であり、しかも2流体ノズルを用いて、水蒸気、オゾンガスおよび硫酸、すなわち3つの流体を混合できる利点もある。
【0136】
硫酸を予め加熱(たとえば120℃~190℃)しておき、かつオゾンガスをバブリングさせる水を加熱しておくことで、湿潤オゾンガスが硫酸に接触すると、硫酸の界面はオゾンの分解温度(約130℃)を確実に超える。それにより、活性酸素(酸素ラジカル)を多量に含むカロ酸を効率的に生成することができる。水中でのバブリングによって湿潤オゾンガスを生成する場合、水の沸点はオゾンガスの分解温度よりも低いので、オゾンガスの分解回避のための厳密な温度管理は必要ではない。
【0137】
また、この実施形態では、閉鎖空間を形成する密閉容器57内の水中にオゾンガスを供給してバブリングを行う構成によって、湿潤オゾンガスの生成およびその圧送を行うことができる。それにより、簡単な構成で、第1移動ノズル9(複数流体ノズル)での流体混合を行うことができる。密閉容器57内の水を加熱しておくことにより、バブリングによる水蒸気の発生を促すことができるので、水蒸気を適度に含む湿潤オゾンガスを生成して、第1移動ノズル9へと圧送できる。
【0138】
また、この実施形態では、少なくとも混合流体100の供給開始直前の基板Wの主面は、液膜のない乾燥表面である。したがって、混合流体100が供給されることにより、混合流体100中のカロ酸が希釈されることなくレジスト膜に作用する。そのため、カロ酸によるレジスト分解反応が効率的に生じるので、高効率なレジスト除去が可能になる。
【0139】
とくに、この実施形態では、基板Wを回転軸線A1まわりに回転しながら第1移動ノズル9をスキャンさせるスキャン工程(図5のステップS52)において、第1移動ノズル9から混合流体100を吐出させながら、基板Wの外周縁から回転軸線A1に向けて混合流体100の着地点100aを移動させる。基板Wの主面上の液体は、基板Wの回転に起因する遠心力によって外周側へと流れる。そこで、複数流体ノズルである第1移動ノズル9から吐出される混合流体100による基板主面のスキャンを基板Wの外周縁から始めることによって、実質的に液膜の無い乾燥表面に混合流体100が供給される。それにより、混合流体100中のカロ酸が希釈されることなく基板主面のレジスト膜に作用するので、高効率なレジスト除去を実現できる。
【0140】
また、この実施形態では、硫酸に過酸化水素水を接触させることなく、基板Wの主面のレジスト膜を除去できる。硫酸に対する過酸化水素水の接触がないことにより、硫酸に多量の水分が混合することを回避できる。それにより、硫酸中の水分を除去するための処理を軽減できるので、硫酸を再生して再利用しやすくなり、それに応じて硫酸の使用量を削減できる。
【0141】
図8は、この発明の他の実施形態の構成を説明するための図である。この実施形態では、第1移動ノズル9として、3流体ノズルが用いられる。3流体ノズルからなる第1移動ノズル9には、硫酸供給ユニット16から硫酸(好ましくは加熱された硫酸)が供給され、オゾンガス供給ユニット13Aからオゾンガスが供給され、水蒸気供給ユニット13Bから水蒸気が供給される。オゾンガス供給ユニット13Aおよび水蒸気供給ユニット13Bは、オゾンガスおよび水蒸気をそれぞれ第1移動ノズル9に圧送するように構成されていることが好ましい。
【0142】
第1移動ノズル9を構成する3流体ノズルは、硫酸、オゾンガスおよび水蒸気を混合して混合流体100を生成し、その混合流体100を基板Wの主面に向けて吐出するように構成されている。この例では、オゾンガスおよび水蒸気がノズルハウジング90の第2通路92内で混合(内部混合)して第2吐出口92aから吐出される。一方、硫酸はノズルハウジング90内の第1通路91を通り、第1吐出口91aから吐出される。そして、硫酸と、オゾンガスおよび水蒸気の混合ガスとが、吐出口91a,92aの近傍のノズルハウジング90外で衝突して混合(外部混合)され、それによって、混合流体100が形成される。
【0143】
むろん、この構成は、一例であり、硫酸、オゾンガスおよび水蒸気のための3つの分離した流路がノズルハウジング内に形成され、硫酸、オゾンガスおよび水蒸気がノズルハウジング内またはノズルハウジング外で接触して混合される構成の3流体ノズルを用いてもよい。
【0144】
水蒸気供給ユニット13Bは、加熱された水蒸気を第1移動ノズル9に供給することが好ましい。たとえば、水蒸気供給ユニット13Bは、室温よりも高く100℃以下(たとえば80℃程度)の水蒸気を第1移動ノズル9に供給することが好ましい。これにより、水蒸気がオゾンガスに接したときにオゾンの分解が生じず、かつ水蒸気およびオゾンが硫酸に接したときに高温のカロ酸を生成させることができる。
【0145】
図9は、この発明のさらに他の実施形態の構成を説明するための図である。図9に示す基板処理装置1は、複数流体ノズルの一例である第1移動ノズル9に到達するまでに湿潤オゾンガスが通るガス流路内の水を除去する水除去装置101を含む。図9は、水除去装置101が第1移動ノズル9と湿潤オゾンガス生成ユニット56の密閉容器57との間で湿潤オゾンガス配管45に取り付けられた例を示している。
【0146】
ガス流路は、湿潤オゾンガスが通過する空間とこの空間を形成する内面とを含む。湿潤オゾンガス配管45の内部空間と湿潤オゾンガス配管45の内周面は、ガス流路に含まれる。ガス流路の少なくとも一部は、後述するミストセパレータ107などの配管以外の部材によって形成されていてもよい。
【0147】
湿潤オゾンガスがガス流路を流れると、湿潤オゾンガスに含まれる水が凝縮し、ガス流路内に水が発生することがある。以下では、この水を凝縮水ともいう。ガス流路内の凝縮水の一部は、湿潤オゾンガスとともに第1移動ノズル9の方に流れ、硫酸供給ユニット16から供給された硫酸と混ざり合う。言い換えると、余計な水が硫酸と混ざり合う。水除去装置101は、ガス流路内の凝縮水を除去する。これにより、硫酸と混ざり合う余計な水を減らすことができる。さらに、湿潤オゾンガスの温度が凝縮水の温度よりも低い場合は、湿潤オゾンガスが凝縮水によって冷却される。水除去装置101によってガス流路内の凝縮水を除去することにより、硫酸と混合されたときの湿潤オゾンガスの温度の低下を軽減することができる。
【0148】
図10は、水除去装置101の一例を示している。図11は、水除去装置101の他の例を示している。図10および図11に示す水除去装置101は、ガス流路から排出された水(凝縮水)を案内するドレーン配管120を含む。図10および図11は、ミストセパレータ107が湿潤オゾンガス配管45に設けられており、ドレーン配管120がミストセパレータ107から下方に延びた例を示している。ドレーン配管120は、湿潤オゾンガス配管45、上流バルブ110、または下流バルブ111などのミストセパレータ107以外の部材から下方に延びていてもよい。
【0149】
図1から図11の少なくとも1つに示す基板処理装置1は、硫酸が通る硫酸流路に洗浄液を供給する洗浄液配管102と、湿潤オゾンガスが通るガス流路に洗浄液を供給する洗浄液配管104と、のうちの少なくとも一方を備えていてもよい。図10および図11は、洗浄液配管102および洗浄液配管104の両方が設けられた例を示している。
【0150】
図10および図11に示すように、硫酸用の洗浄液配管102は、第1移動ノズル9の第1通路91(図9参照)に接続されている。洗浄液配管102に取り付けられた洗浄液バルブ103が開かれると、純水(脱イオン水)などの洗浄液が洗浄液配管102から硫酸配管40に供給され、硫酸配管40内を下流に流れる。これにより、硫酸配管40および第1移動ノズル9を洗浄液で洗浄することができる。
【0151】
図10および図11に示すように、湿潤オゾンガス用の洗浄液配管104は、湿潤オゾンガス生成ユニット56の密閉容器57の下流で湿潤オゾンガス配管45に接続されている。図10および図11に示す基板処理装置1は、洗浄液配管104および湿潤オゾンガス配管45の接続位置の上流でガス流路を開閉するストッパバルブ106を備えている。図10および図11は、ストッパバルブ106が、流体が密閉容器57に向かって湿潤オゾンガス配管45内を流れる流体の逆流を防止する逆止弁である例を示している。ストッパバルブ106は、開閉バルブであってもよい。
【0152】
洗浄液配管104に取り付けられた洗浄液バルブ105が開かれると、純水などの洗浄液が洗浄液配管104から湿潤オゾンガス配管45に供給され、湿潤オゾンガス配管45内を下流に流れる。その一方で、湿潤オゾンガス配管45内を上流に流れるリンス液は、ストッパバルブ106によってせき止められる。したがって、洗浄液が密閉容器57に入ることを防止しながら、ガス流路を洗浄液で洗浄できる。
【0153】
図10および図11は、水除去装置101が、ガス流路内を下流に流れる湿潤オゾンガスから水を除去することにより、硫酸と混合される前の湿潤オゾンガスの湿度を低下させるミストセパレータ107を含む例を示している。ミストセパレータ107および洗浄液配管104がある場合、基板処理装置1は、ミストセパレータ107の上流でガス流路を開閉する上流バルブ110と、ミストセパレータ107の下流でガス流路を開閉する下流バルブ111と、ミストセパレータ107を迂回して上流バルブ110から下流バルブ111に延びるバイパス配管112とを備える。
【0154】
図10および図11は、ミストセパレータ107が、湿潤オゾンガスが入る入口と湿潤オゾンガスが出る出口とが設けられたボックス108と、鉛直または水平に1回以上折れ曲がった流路をボックス108の内面とともにボックス108の中に形成する少なくとも1つのプレート109とを含む例を示している。この例では、鉛直な複数のプレート109が水平に離れた状態で上下に互い違いに配置されている。ドレーン配管120は、ボックス108の底に接続されている。湿潤オゾンガスの湿度を零を超える値まで低下させることができるのであれば、ミストセパレータ107の構造は、図10および図11に示す構造に限られない。
【0155】
ボックス108の入口を通じてボックス108の中に入った湿潤オゾンガスは、ボックス108の内面およびプレート109の表面に沿って蛇行しながらボックス108内を流れ、ボックス108の出口からボックス108の外に出る。湿潤オゾンガスに含まれる水分は、ボックス108の内面およびプレート109の表面に付着し、ボックス108の底に流れ落ちる。したがって、湿潤オゾンガスがミストセパレータ107に入ったときよりも湿度が低下した湿潤オゾンガスがミストセパレータ107から出る。これにより、湿潤オゾンガスが硫酸と混合されるときに湿潤オゾンガスに含まれる水の濃度を安定させることができる。
【0156】
上流バルブ110および下流バルブ111は、いずれも、3つのポート(第1ポート、第2ポート、および第3ポート)を含む三方弁である。上流バルブ110の第1ポートおよび第2ポートは、湿潤オゾンガス配管45に接続されている。上流バルブ110の第3ポートは、バイパス配管112に接続されている。同様に、下流バルブ111の第1ポートおよび第2ポートは、湿潤オゾンガス配管45に接続されている。下流バルブ111の第3ポートは、バイパス配管112に接続されている。
【0157】
上流バルブ110は、処理状態および洗浄状態を含む複数の状態の間で切り替わる。上流バルブ110の処理状態は、上流バルブ110の第1ポートに入った流体が、上流バルブ110の第3ポートから出ずに、上流バルブ110の第2ポートから出る状態である。上流バルブ110の洗浄状態は、上流バルブ110の第1ポートに入った流体が、上流バルブ110の第2ポートから出ずに、上流バルブ110の第3ポートから出る状態である。
【0158】
下流バルブ111は、処理状態および洗浄状態を含む複数の状態の間で切り替わる。下流バルブ111の処理状態は、下流バルブ111の第1ポートに入った流体が、下流バルブ111の第3ポートから出ずに、下流バルブ111の第2ポートから出る状態である。下流バルブ111の洗浄状態は、下流バルブ111の第3ポートに入った流体が、下流バルブ111の第1ポートから出ずに、下流バルブ111の第3ポートから出る状態である。
【0159】
湿潤オゾンガスを第1移動ノズル9に供給する場合、湿潤オゾンガスは、上流バルブ110および下流バルブ111の両方が処理状態のときに湿潤オゾンガス配管45に供給される。湿潤オゾンガスは、上流バルブ110の第1ポートから上流バルブ110の中に入り、上流バルブ110の第2ポートから上流バルブ110の外に出る。これにより、湿潤オゾンガスがミストセパレータ107に供給される。ミストセパレータ107から出た湿潤オゾンガスは、下流バルブ111の第1ポートから下流バルブ111の中に入り、下流バルブ111の第2ポートから下流バルブ111の外に出る。
【0160】
湿潤オゾンガス配管45を洗浄する場合、洗浄液バルブ105は、上流バルブ110および下流バルブ111の両方が洗浄状態のときに開かれる。これにより、純水などの洗浄液が洗浄液配管104から湿潤オゾンガス配管45に入る。湿潤オゾンガス配管45に入った洗浄液は、上流バルブ110の第1ポートから上流バルブ110の中に入り、上流バルブ110の第3ポートから上流バルブ110の外に出る。上流バルブ110からバイパス配管112に入った洗浄液は、下流バルブ111の第3ポートから下流バルブ111の中に入り、下流バルブ111の第2ポートから下流バルブ111の外に出る。これにより、湿潤オゾンガス配管45内の洗浄液がミストセパレータ107を迂回して湿潤オゾンガス配管45に戻る。
【0161】
図10に示す水除去装置101は、ドレーン配管120によってガス流路から排出された水を溜めるウォータタンク121と、ウォータタンク121に貯留された水中で窒素ガスなどの不活性ガスを放出することによりウォータタンク121内の水からオゾンガスを除去する不活性ガス配管122と、不活性ガスが不活性ガス配管122からウォータタンク121に入る開状態と不活性ガスが不活性ガス配管122からウォータタンク121に入らない閉状態との間で切り替わる不活性ガスバルブ123とを含む。
【0162】
図10に示す水除去装置101は、さらに、ウォータタンク121から排出されたガスを案内する排出ガス配管124と、ガスがウォータタンク121から排出ガス配管124に入る開状態とガスがウォータタンク121から排出ガス配管124に入らない閉状態との間で切り替わる排出ガスバルブ125と、排出ガス配管124によって案内されるガスからオゾンを除去するオゾン除去装置126とを含む。図10に示す水除去装置101は、さらに、ウォータタンク121から排出された液体を案内する排出液配管127と、水がウォータタンク121から排出液配管127に入る開状態と水がウォータタンク121から排出液配管127に入らない閉状態との間で切り替わる排出液バルブ128とを含む。
【0163】
図10に示す例では、ガス流路内の水は、ドレーン配管120によってウォータタンク121に案内される。ガス流路から排出された水にはオゾンガスが含まれ得る。不活性ガスバルブ123は、ウォータタンク121内の水量が所定値を超えているときに、開状態に切り替えられる。不活性ガス配管122からウォータタンク121に供給された不活性ガスは、ウォータタンク121内の水に溶け込み、オゾンガスを除去する。これにより、オゾンガスが除去された水がウォータタンク121から排出液配管127に排出される。
【0164】
その一方で、ウォータタンク121から排出ガス配管124に排出されたガスにはオゾンガスが含まれ得る。オゾン除去装置126は、排出ガス配管124によって案内されるガスからオゾンガスを除去する。オゾン除去装置126は、活性炭、触媒、吸着剤、および薬液の少なくとも1つにガスを接触させることによりオゾンガスを除去してもよいし、ガスを加熱することによりオゾンガスを除去してもよいし、これら以外の方法によりオゾンガスを除去してもよい。
【0165】
図11に示す水除去装置101は、ドレーン配管120によってガス流路から排出された水(凝縮水)を溜める中間タンク130と、中間タンク130から排出された水を溜めるウォータタンク121と、水が中間タンク130からウォータタンク121に入る開状態と水が中間タンク130からウォータタンク121に入らない閉状態との間で切り替わる中間バルブ131とを含む。中間タンク130およびウォータタンク121は、いずれも、閉鎖空間を形成する密閉容器である。
【0166】
図11に示す水除去装置101は、さらに、ウォータタンク121に貯留された水中でオゾンガスを放出することによりウォータタンク121内の水から湿潤オゾンガスを発生させるオゾンガス配管132と、オゾンガスがオゾンガス配管132からウォータタンク121に入る開状態とオゾンガスがオゾンガス配管132からウォータタンク121に入らない閉状態との間で切り替わるオゾンガスバルブ133と、ウォータタンク121内の水を加熱することによりウォータタンク121内の水から湿潤オゾンガスを発生させるヒータユニット134とを含む。
【0167】
図11に示す水除去装置101は、さらに、ウォータタンク121で発生した湿潤オゾンガスを湿潤オゾンガス配管45に案内するリターン配管135と、湿潤オゾンガスがリターン配管135から湿潤オゾンガス配管45に入る開状態と湿潤オゾンガスがリターン配管135から湿潤オゾンガス配管45に入らない閉状態との間で切り替わるストッパバルブ136とを含む。図11は、ストッパバルブ136が、流体が湿潤オゾンガス配管45に向かってリターン配管135内を流れる流体の逆流を防止する逆止弁である例を示している。ストッパバルブ136は、開閉バルブであってもよい。
【0168】
ガス流路内の水は、ドレーン配管120によって中間タンク130に案内される。中間バルブ131が開かれると、中間タンク130内の水がドレーン配管120によってウォータタンク121に案内される。ガス流路から排出された水にはオゾンガスが含まれ得る。オゾンガス配管132およびヒータユニット134は、このような水を用いて湿潤オゾンガスを生成する。したがって、オゾンガスを含まない水を用いて湿潤オゾンガスを生成する場合に比べて、オゾンガスの濃度が高い湿潤オゾンガスを生成できる。
【0169】
オゾンガスバルブ133は、湿潤オゾンガスが密閉容器57から湿潤オゾンガス配管45に供給されており、ウォータタンク121内の水量が所定値を超えているときに、開状態に切り替えられる。ヒータユニット134は、湿潤オゾンガスが密閉容器57から湿潤オゾンガス配管45に供給されており、ウォータタンク121内の水量が所定値を超えているときに、ウォータタンク121内の水を加熱する。ヒータユニット134がウォータタンク121内の水を加熱するとき、中間バルブ131を閉じることにより中間タンク130からウォータタンク121への水の供給を一時的に停止してもよい。
【0170】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、以下に例示的に列記するように、さらに他の形態で実施することができる。
【0171】
上述の各実施形態では、複数の移動ノズルから処理液が吐出されるように構成されている。しかしながら、上述の実施形態とは異なり、水平方向における位置が固定された固定ノズルから処理液が吐出されてもよいし、全ての処理液が単一のノズルから吐出されるように構成されていてもよい。
【0172】
前述の実施形態では、硫酸配管40に配置したヒータユニット50Eによって硫酸を加熱している。しかし、硫酸の加熱は、硫酸タンク55において行ってもよい。また、硫酸タンク55内の硫酸を循環させる循環配管を設け、循環配管にヒータユニットを配置して硫酸を加熱してもよい。
【0173】
基板Wの加熱は、基板加熱部材14による加熱に限られない。具体的には、基板加熱部材は、基板Wの上面に対向する赤外線ランプを含んでいてもよいし、基板Wの上面に対向するヒータを含んでいてもよい。あるいは、基板加熱部材は、基板Wの下面に窒素ガスまたは温水等の加熱流体を供給する加熱流体ノズルを含んでいてもよい。基板加熱部材は、プレート本体60内に加熱流体を流通させることでプレート本体60を加熱するように構成されていてもよい。加熱流体を用いる場合、基板Wの温度の調整は、加熱流体の流量を制御するバルブの開度の調整によって行われる。基板加熱部材14は、この発明において必須の構成ではなく、基板加熱部材14および基板加熱工程(ステップS2)を省いてもよい。
【0174】
基板処理装置1には、基板Wを冷却するクーリングプレート(図示せず)が設けられていてもよい。基板Wは、基板加熱停止工程(ステップS22)の後、クーリングプレートによって室温にまで冷却されてもよい。
【0175】
上述の各実施形態では、スピンチャック8は、基板Wの周縁を複数の把持ピン20で把持する把持式のスピンチャックであるが、スピンチャック8は、把持式のスピンチャックに限られない。たとえば、スピンチャック8は、スピンベース21に基板Wを吸着させる真空吸着式のスピンチャックであってもよい。
【0176】
上述の各実施形態では、コントローラ3が基板処理装置1の全体を制御する。しかしながら、基板処理装置1の各部材を制御するコントローラは、複数箇所に分散されていてもよい。また、コントローラ3は、各部材を直接制御する必要はなく、コントローラ3から出力される信号は、基板処理装置1の各部材を制御するスレーブコントローラに受信されてもよい。
【0177】
また、上述の実施形態では、基板処理装置1が、搬送ロボット(第1搬送ロボットIRおよび第2搬送ロボットCR)と、複数の処理ユニット2と、コントローラ3とを備えている。しかしながら、基板処理装置1は、単一の処理ユニット2とコントローラ3とによって構成されており、搬送ロボットを含んでいなくてもよい。あるいは、基板処理装置1は、単一の処理ユニット2のみによって構成されていてもよい。言い換えると、処理ユニット2が基板処理装置の一例であってもよい。
【0178】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0179】
1 :基板処理装置
2 :処理ユニット
3 :コントローラ
7 :チャンバ
8 :スピンチャック
9 :第1移動ノズル
10 :第2移動ノズル
11 :第3移動ノズル
13 :水蒸気/オゾン供給ユニット
13A :オゾンガス供給ユニット
13B :水蒸気供給ユニット
15 :処理カップ
16 :硫酸供給ユニット
23 :回転駆動機構
28 :ガード
29 :カップ
35 :排液配管
40 :硫酸配管
45 :湿潤オゾンガス配管
50A :硫酸バルブ
50B :硫酸流量調整バルブ
50C :フィルタ
50D :ポンプ
50E :ヒータユニット
55 :硫酸タンク
56 :湿潤オゾンガス生成ユニット
57 :密閉容器
58 :オゾンガス供給ユニット
59 :ヒータユニット
70 :オゾンガス配管
70A :オゾンガスバルブ
70B :オゾンガス流量調整バルブ
70C :フィルタ
71 :新液配管
71A :新液バルブ
80 :硫酸回収/再生ユニット
81 :再生タンク
82 :ヒータユニット
83 :再生硫酸配管
83A :再生硫酸バルブ
83B :ポンプ
83C :フィルタ
90 :ノズルハウジング
91 :第1通路
91a :第1吐出口
92 :第2通路
92a :第2吐出口
100 :混合流体
100a :着地点
101 :水除去装置
107 :ミストセパレータ
112 :バイパス配管
120 :ドレーン配管
121 :ウォータタンク
A1 :回転軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11