(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121795
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】架橋性組成物および該組成物を使用するコーティング層の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 183/04 20060101AFI20240830BHJP
C08L 83/08 20060101ALI20240830BHJP
C08L 83/06 20060101ALI20240830BHJP
C08K 5/544 20060101ALI20240830BHJP
C08K 5/541 20060101ALI20240830BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240830BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240830BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
C09D183/04
C08L83/08
C08L83/06
C08K5/544
C08K5/541
C08K3/013
B05D7/24 302Y
B32B27/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024015324
(22)【出願日】2024-02-05
(31)【優先権主張番号】P 2023028100
(32)【優先日】2023-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】500004955
【氏名又は名称】旭化成ワッカーシリコーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】黒田 晃
(72)【発明者】
【氏名】本村 ちか
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4D075BB64Z
4D075BB79Y
4D075BB92Z
4D075CA48
4D075DA27
4D075DB01
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4D075DB14
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4D075EC13
4F100AA17B
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4J002CP053
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4J002GH00
4J002GH01
4J038DL051
4J038DL052
4J038DL081
4J038HA446
4J038JA02
4J038KA06
4J038KA08
4J038MA15
4J038NA10
4J038PA06
4J038PA18
4J038PB05
(57)【要約】
【課題】硬化により、繰り返し塗装性が良好であり、繰り返し除去性にも優れるコーティング層を形成可能であり、平滑で硬度を有するコーティング層を得ることが可能な架橋性組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)-(I)成分の分子鎖末端がトリオルガノシリル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンと、(A)-(II)成分の所定のアミノ基と所定のアルコキシ基を有するジオルガノポリシロキサンと、(B)成分の特定のシランおよび/またはその部分加水分解物と、(C)成分の炭素原子数が5以下のアルコキシ基を2個以上有するアルコキシシランと、(D)成分のNH2基を含む基を有する有機ケイ素化合物を含む架橋性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)-(I)成分:分子鎖末端がトリオルガノシリル基で封鎖された直鎖状または分岐状構造のジオルガノポリシロキサンと、
(A)-(II)成分:分子1つにつき少なくとも2つの(R2R3NCH2)基および少なくとも4つの(OR4)基を有する直鎖状または分岐状構造のジオルガノポリシロキサンと、
(R2は、水素原子、または、任意で置換された、1個以上6個以下の炭素原子を有する一価の直鎖状または分岐状炭化水素基を表し、
R3は、任意で置換された、1個以上~6個以下の炭素原子を有する一価の直鎖状または分岐状炭化水素基、または5個もしくは6個の炭素原子を有する環状飽和炭化水素基、またはフェニル基を表し、
R4は、同じでも異なってもよく、任意で置換された一価の炭化水素基を表す)
(B)成分:下記式(1)で表されるシランおよび/またはその部分加水分解物と、
(R2R3NCH2)Si(OR4)3 (1)
(C)成分:下記式(2)で表されるアルコキシシランと、
R21
4-xSi(OR22)x (2)
(式中、R21は、同じでも異なってもよく、任意で置換された、1個以上6個以下の炭素原子を有する一価の炭化水素基を表し、
R22は、同じでも異なってもよく、任意で置換された、1個以上5個以下の炭素原子を有する一価の炭化水素基を表し、xは、2、3、または4を表す)
(D)成分:下記式(3)で表される単位を含む有機ケイ素化合物であって、分子1つにつき少なくとも1つの基Dが存在し、少なくとも1つの基DがNH2基を有する、有機ケイ素化合物と、
DfSi(OR32)eR31
dO(4-d-e-f)/2 (3)
(式中、R31は、同じでも異なってもよく、任意で置換された、窒素を含まない一価のSiC結合有機基を表し、
R32は、同じでも異なってもよく、水素原子、または任意で置換された炭化水素基を表し、
Dは、同じでも異なってもよく、カルボニル基(C=O)に結合していない少なくとも1個の窒素原子を有する一価のSiC結合基を表し、
dは、0または1であり、eは、0、1、2、または3であり、fは、0または1であり、d+e+fの和が4以下である)
を含む、架橋性組成物。
【請求項2】
(E)成分:下記式(4)で表される単位を2単位以上30単位以下有し、分子1つにつき式(4)のbが0以外である少なくとも1つの単位が存在する、オルガノシロキサン:
R6
a(R7O)bSiO(4-a-b)/2 (4)
(式中、R6は、同じでも異なってもよく、任意でハロゲン原子で置換された一価のSiC結合炭化水素基、またはSi結合ハロゲン原子を表し、
R7は、同じでも異なってもよく、任意で置換された一価の炭化水素基を表し、
aは、0または1であり、
bは、0、1、2、または3であり、
a+bの和が<4である)、
をさらに含む、請求項1に記載の架橋性組成物。
【請求項3】
前記(C)成分において、基R22がエトキシ基である、請求項1または請求項2に記載の架橋性組成物。
【請求項4】
前記(A)-(II)成分の基(R2R3NCH2)が、N,N-ジメチルアミノメチル基、N,N-ジエチルアミノメチル基、N,N-ジ-n-プロピルアミノメチル基、およびN,N-ジ-nーブチルアミノメチル基からなる群から選択される一つであることを特徴とする、請求項1または2に記載の架橋性組成物。
【請求項5】
(F)成分:充填剤をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の架橋性組成物。
【請求項6】
前記(A)-(I)成分と前記(A)-(II)成分の合計量を100質量部とした場合に、
前記(B)成分を5質量部以上20質量部以下と、
前記(C)成分を10質量部以上200質量部以下と、
前記(D)成分0.1質量部以上2質量部以下と、
任意で(E)成分であって下記式(4)で表される単位を2単位以上30単位以下有し、分子1つにつき式(4)のbが0以外である少なくとも1つの単位が存在する、オルガノシロキサン:
R6
a(R7O)bSiO(4-a-b)/2 (4)
(式中、R6は、同じでも異なってもよく、任意でハロゲン原子で置換された一価のSiC結合炭化水素基、またはSi結合ハロゲン原子を表し、
R7は、同じでも異なってもよく、任意で置換された一価の炭化水素基を表し、
aは、0または1であり、
bは、0、1、2、または3であり、
a+bの和が<4である)を0質量部以上40質量部以下と、
任意で充填剤である(F)成分を0質量部以上30質量部以下と、
任意で有機溶剤である(G)成分を0質量部以上40質量部以下と、
を含む、請求項1または請求項2に記載の架橋性組成物。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の架橋性組成物からなる一液型の湿気硬化性コーティング剤。
【請求項8】
前記(A)-(II)成分と、前記(B)成分との混合物に、前記(A)-(I)成分を配合する第1混合工程と、
前記第1混合工程で得られた混合物に前記(C)成分を配合する第2混合工程と、
前記第2混合工程で得られた混合物に前記(D)成分を配合する第3混合工程と、を含む、
請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の架橋性組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の架橋性組成物を基材に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程で塗布された架橋性組成物を湿気硬化させる硬化工程を含む、コーティング層の製造方法。
【請求項10】
前記架橋性組成物が、1m2の基材表面積あたり50g以上400g以下の量で使用されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の架橋性組成物の硬化物であるコーティング層を修復する方法であって、前記コーティング層表面に、請求項1または請求項2に記載の架橋性組成物を上塗りする方法。
【請求項12】
前記基材がセメント系材料、石膏ボード、アスファルト、木材、金属、金属酸化物、樹脂、タイル、ガラス、天然石、人工石、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される1つである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
(A)-(I)成分:分子鎖末端がトリオルガノシリル基で封鎖された直鎖状または分岐状構造のジオルガノポリシロキサンと、
(A)-(II)成分:分子1つにつき少なくとも2つの(R2R3NCH2)基および少なくとも4つの(OR4)基を有する直鎖状または分岐状構造のジオルガノポリシロキサンと、
(R2は、水素原子、または、任意で置換された、1個以上6個以下の炭素原子を有する一価の直鎖状または分岐状炭化水素基を表し、
R3は、任意で置換された、1個以上~6個以下の炭素原子を有する一価の直鎖状または分岐状炭化水素基、または5個もしくは6個の炭素原子を有する環状飽和炭化水素基、またはフェニル基を表し、
R4は、同じでも異なってもよく、任意で置換された一価の炭化水素基を表す)
(B)成分:下記式(1)で表されるシランおよび/またはその部分加水分解物と、
(R2R3NCH2)Si(OR4)3 (1)
(C)成分:下記式(2)で表されるアルコキシシランと、
R21
4-xSi(OR22)x (2)
(式中、R21は、同じでも異なってもよく、任意で置換された、1個以上6個以下の炭素原子を有する一価の炭化水素基を表し、
R22は、同じでも異なってもよく、任意で置換された、1個以上5個以下の炭素原子を有する一価の炭化水素基を表し、xは、2、3、または4を表す)
(D)成分:下記式(3)で表される単位を含む有機ケイ素化合物であって、分子1つにつき少なくとも1つの基Dが存在し、少なくとも1つの基DがNH2基を有する、有機ケイ素化合物と、
DfSi(OR32)eR31
dO(4-d-e-f)/2 (3)
(式中、R31は、同じでも異なってもよく、任意で置換された、窒素を含まない一価のSiC結合有機基を表し、
R32は、同じでも異なってもよく、水素原子、または任意で置換された炭化水素基を表し、
Dは、同じでも異なってもよく、カルボニル基(C=O)に結合していない少なくとも1個の窒素原子を有する一価のSiC結合基を表し、
dは、0または1であり、eは、0、1、2、または3であり、fは、0または1であり、d+e+fの和が4以下である)
を含む架橋性組成物であって、
前記(A)-(I)成分と前記(A)-(II)成分との合計量を100質量部とした場合に、前記(C)成分を10質量部以上200質量部以下配合することにより、前記架橋性組成物の硬化物の繰り返し塗装性と硬度を向上させるものであることを特徴とする、架橋性組成物。
【請求項14】
基材と、請求項1または請求項2に記載の架橋性組成物を硬化させてなるコーティング層と、を含む、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ケイ素化合物をベースとする架橋性組成物、その製造方法およびその使用、特に、繰り返し塗装、繰り返し除去が可能なコーティング層を形成するためのその使用に関する。
【0002】
建物の外壁、石造りの建造物、鉄道車両、橋脚、塀、交通標識などの表面に対し落書きされてしまう事例が社会問題化している。そのため、落書きを防止するためのシートや、コーティングが開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1は長期に安定して防汚性、洗浄性、洗浄容易性、耐摩耗性を示し、また、被着体に容易に貼りつけることができ、被施工面の割れやずれに対しても追従可能であるシリコーン複合防汚シートを提供することを課題とし、フッ素樹脂で構成された基材層と前記基材層の片面に積層したシリコーン粘着層とを含むシリコーン複合防汚シートを開示する。
【0004】
特許文献2は、プライマーでの前処理がなくても、サブサーフェスに良好に付着するが、落書きはコーティングにほとんど付着しない落書き防止コーティングに使用可能な架橋性組成物を開示する。
【0005】
上記文献に代表される落書きを防止するためのシートやコーティングはいずれも、落書きがつきにくく、かつ除去しやすい特性を備えるものである。落書きが付きにくい表面は、すなわち塗装性が悪く、十分な美観を有する塗装を施すことができないという問題がある。
また、特許文献1では落書きを粘着テープにより除去可能であるが、広範囲の落書きを除去するためには時間と労力がかかるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-092493号公報
【特許文献2】特表2019-527245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年ではコンクリート壁などの表面にペイントを施し、一定期間鑑賞した後に除去して別のペイント用に転用したり、ペイントや注意書き等を施した屋外で使用される鉄板について描き換えしたりする使用方法が注目されるようになっている。
このような用途においては、塗装したものが容易に除去可能であるだけでなく、塗装がはじかれたり流れ落ちたりすることのない、良好な塗装性、筆記性を有するコーティング層を形成することが求められる。
さらに美観が良好な塗装を施すためには、塗装面となるコーティング層が一定の硬度を有して、平滑である必要もある。
また、特に屋外で広い塗装面が使用される場合には、作業の容易性、環境負荷の低減、安全上の観点から、溶剤、乾式イレーザー、粘着テープ等ではなく、水流により塗装をコーティング層から除去可能であることが求められる。
【0008】
例えば引用文献2に開示される組成物を使用する落書き防止コーティングでは、コーティング表面に塗装しようとすると塗料がほとんど付着せず、ペイントできない、またはペイントできたとしても、ペイントがコーティング表面ではじかれて十分な美観が維持できないという問題があった。
【0009】
以上の背景から、本発明の目的は、硬化により、繰り返し塗装性が良好であり、繰り返し除去性にも優れるコーティング層を形成可能であり、硬度を有するコーティング層を得ることが可能な架橋性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、(A)-(I)成分である分子鎖末端がトリオルガノシリル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンと、(A)-(II)成分である所定のアミノ基と所定のアルコキシ基を有するジオルガノポリシロキサンと、(B)成分である特定のシランおよび/またはその部分加水分解物と、(C)成分である炭素原子数が5以下のアルコキシ基を2個以上有するアルコキシシランと、(D)成分であるNH2基を含む基を有する有機ケイ素化合物とを含む架橋性組成物が上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
(A)-(I)成分:分子鎖末端がトリオルガノシリル基で封鎖された直鎖状または分岐状構造のジオルガノポリシロキサンと、
(A)-(II)成分:分子1つにつき少なくとも2つの(R2R3NCH2)基および少なくとも4つの(OR4)基を有する直鎖状または分岐状構造のジオルガノポリシロキサンと、
(R2は、水素原子、または、任意で置換された、1個以上6個以下の炭素原子を有する一価の直鎖状または分岐状炭化水素基を表し、
R3は、任意で置換され、1個以上~6個以下の炭素原子を有する一価の直鎖状または分岐状炭化水素基、または5個もしくは6個の炭素原子を有する環状飽和炭化水素基、またはフェニル基を表し、
R4は、同じでも異なってもよく、任意で置換された一価の炭化水素基を表す)
(B)成分:下記式(1)で表されるシランおよび/またはその部分加水分解物と、
(R2R3NCH2)Si(OR4)3 (1)
(C)成分:下記式(2)で表されるアルコキシシランと、
R21
4-xSi(OR22)x (2)
(式中、R21は、同じでも異なってもよく、任意で置換された、1個以上6個以下の炭素原子を有する一価の炭化水素基を表し、
R22は、同じでも異なってもよく、任意で置換された、1個以上5個以下の炭素原子を有する一価の炭化水素基を表し、xは、2、3、または4を表す)
(D)成分:下記式(3)で表される単位を含む有機ケイ素化合物であって、分子1つにつき少なくとも1つの基Dが存在し、少なくとも1つの基DがNH2基を有する、有機ケイ素化合物と、
DfSi(OR32)eR31
dO(4-d-e-f)/2 (3)
(式中、R31は、同じでも異なってもよく、任意で置換された、窒素を含まない一価のSiC結合有機基を表し、
R32は、同じでも異なってもよく、水素原子、または任意で置換された炭化水素基を表し、
Dは、同じでも異なってもよく、カルボニル基(C=O)に結合していない少なくとも1個の窒素原子を有する一価のSiC結合基を表し、
dは、0または1であり、eは、0、1、2、または3であり、fは、0または1であり、d+e+fの和が4以下である)
を含む、架橋性組成物である。
【0012】
上記架橋性組成物は、コンクリート等の基材に塗布し、硬化させることによりコーティング層を形成するものである。当該コーティング層は、そのコーティング層表面に塗料を塗布した場合にハジキ等がない良好な塗布性を発揮し、塗布された塗料を除去した場合には残存塗膜が少ない良好な除去性を示すだけでなく、複数回の塗布/除去を繰り返しても良好な塗布性と除去性を維持する。このため当該コーティング層は、繰り返し塗装・繰り返し除去可能なコーティング層として有用である。
【0013】
本発明のコーティング層に塗布される塗料は特に限定されず、例えば、ラッカー、粉体塗料、水性(水系)塗料、エポキシ樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料、フッ素樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料、メラミン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料等の合成樹脂塗料が挙げられる。
【0014】
本発明の架橋性組成物は、少なくとも1液以上の形態であって、湿気により硬化して最終的に組成物の硬化物が得られるものであれば、いかなる態様、形態であってもよい。
【0015】
(A)-(I)成分は、シランまたはシロキサンである(A)-(II)、(B)、(C)、(D)の各成分との相溶性が良好であるため、未硬化の状態ではこれら成分を含む架橋性組成物中に均一に分散した状態で存在する。各成分が均一に混合した状態の架橋性組成物は、コンクリートや木材等の基材に塗布されると大気中の湿気等の水分により架橋反応し、湿気硬化することによりコーティング層を与える。該コーティング層は、(A)-(II)、(B)、(C)、(D)の各成分が架橋することにより形成されたマトリックスと、架橋反応に関与せずにマトリックス中に分散した(A)-(I)成分とを含む状態となる。
このとき、(A)-(II)成分が有する(R2R3NCH2)基および(OR4)基と、(D)成分が有するNH2基は、コーティング層の基材への接着を促進するため、コーティング層が良好に基材に接着する。
一方で架橋性基を有しない(A)-(I)成分はマトリックス形成に関与しないため、架橋性組成物が硬化した後に経時的にコーティング層表面へとブリードする。コーティング層表面に塗料等により塗装を施した場合、塗料は溶剤や、布・スポンジ等による摩擦、粘着テープ等によっても除去可能であるが、(A)-(I)成分は撥水性・撥油性を有するため、溶剤や粘着テープ等を使用せずとも水流により容易に除去可能である。
【0016】
ここで、(A)-(I)成分のブリード量が多いと、塗装の除去は容易となるものの、コーティング表面で塗料がはじかれてしまい、十分な美観を有する塗装ができないという問題が生じる。
しかし本発明においては(C)成分のアルコキシシランがマトリックス中に存在することにより、コーティング層の硬度が高められ、同時に、(A)-(I)成分のコーティング層表面へのブリード量が(C)成分を含まない場合よりも低減される。従って、(A)-(I)成分を含む組成物を硬化させて得られるコーティング層であっても、表面にはじきのない、十分な美観を有する塗装が可能となる。また、(C)成分を含むコーティング層においても一定量の(A)-(I)成分はコーティング層表面にブリードするため、塗装の除去性は維持される。
(C)成分を含むコーティング層においては、(A)-(I)成分はその撥水性により水流による除去時にも流出することなくコーティング層表面にとどまること、少量ずつ長期間にわたってコーティング層内部からブリードすることから、塗装と塗装の除去を繰り返し実施しても、容易に塗装が除去できるという特性は長期間維持される。
【0017】
さらに(C)成分を含まない場合や、炭素数6以上のアルコキシ基を2個以上有するアルコキシシランを含む場合と比較して、(C)成分を含むコーティング層は硬度が向上することが確認された。高硬度のコーティング層は、繰り返し塗装を除去した場合であってもクラックの発生や基材からのはがれが少なく、特に長期間の繰り返し使用や屋外での使用に好適である。
【0018】
(C)成分はまた、それ自身の粘度が低く、硬化前の架橋性組成物全体の粘度を低下させる。このため、基材へ塗布する際の作業性が良好である。さらに、均一に薄く塗布することが可能であるため、平滑なコーティング層表面を得ることができ、コーティング表面に良好な美観を有する塗装を施すことが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0020】
本発明の架橋性組成物は、
(A)-(I)成分:分子鎖末端がトリオルガノシリル基で封鎖された直鎖状または分岐状構造のジオルガノポリシロキサンと、
(A)-(II)成分:分子1つにつき少なくとも2つの(R2R3NCH2)基および少なくとも4つの(OR4)基を有する直鎖状または分岐状構造のジオルガノポリシロキサンと、
(R2は、水素原子、または、任意で置換された、1個以上6個以下の炭素原子を有する一価の直鎖状または分岐状炭化水素基を表し、
R3は、任意で置換された、1個以上~6個以下の炭素原子を有する一価の直鎖状または分岐状炭化水素基、または5個もしくは6個の炭素原子を有する環状飽和炭化水素基、またはフェニル基を表し、
R4は、同じでも異なってもよく、任意で置換された一価の炭化水素基を表す)
(B)成分:下記式(1)で表されるシランおよび/またはその部分加水分解物と、
(R2R3NCH2)Si(OR4)3 (1)
(C)成分:下記式(2)で表されるアルコキシシランと、
R21
4-xSi(OR22)x (2)
(式中、R21は、同じでも異なってもよく、任意で置換された、1個以上6個以下の炭素原子を有する一価の炭化水素基を表し、
R22は、同じでも異なってもよく、任意で置換された、1個以上5個以下の炭素原子を有する一価の炭化水素基を表し、xは、2、3、または4を表す)
(D)成分:下記式(3)で表される単位を含む有機ケイ素化合物であって、分子1つにつき少なくとも1つの基Dが存在し、少なくとも1つの基DがNH2基を有する、有機ケイ素化合物と、
DfSi(OR32)eR31
dO(4-d-e-f)/2 (3)
(式中、R31は、同じでも異なってもよく、任意で置換された、窒素を含まない一価のSiC結合有機基を表し、
R32は、同じでも異なってもよく、水素原子、または任意で置換された炭化水素基を表し、
Dは、同じでも異なってもよく、カルボニル基(C=O)に結合していない少なくとも1個の窒素原子を有する一価のSiC結合基を表し、
dは、0または1であり、eは、0、1、2、または3であり、fは、0または1であり、d+e+fの和が4以下である)
を含む。
【0021】
本発明に係る上記の架橋性組成物は、繰り返し塗装可能なコーティング層形成用の組成物であってもよい。
ここで、繰り返し塗装可能なコーティング層とは、下記の繰り返し塗装性評価方法により、ハジキが全く見られないか、存在していても直径2mm未満のハジキが0個/m2超10個/m2未満であり、直径2mm以上のハジキが存在しないコーティング層をいう。
<繰り返し塗装性評価方法>
架橋性組成物を基材に塗布して硬化させることにより、コーティング層を得る。
前記コーティング層の表面に、日本ペイント株式会社製のアクリルラッカースプレー(茶色)を30cm×20cmの面積に対し、コーティング層表面の上方30cmからスプレーした(乾燥前の状態で、塗布量は100g/m2)。2時間静置後に、家庭用高圧洗浄機を使用してコーティング層の表面から10cmの距離で水を噴射して塗料を除去する工程を10回繰り返し、繰り返し塗装性評価用の評価試験体表面を得る。
繰り返し塗装性評価用の評価試験体表面に、日本ペイント株式会社製のアクリルラッカースプレー(茶色)を30cm×20cmの面積に対し、コーティング層表面の上方30cmからスプレーし、ハジキの有無を目視で観察する。
AまたはBの評価のものが本発明の対象である。
A: ハジキが全く見られない。
B: 直径2mm未満のハジキが0個/m2超10個/m2未満、かつ直径2mm以上のハジキが存在しない
C: 直径2mm未満のハジキが10個/m2以上、直径2mm以上5mm未満のハジキが0個/m2超10個/m2未満、かつ直径5mm以上のハジキが存在しない
D: 直径2mm以上5mm未満のハジキが10個/m2以上、かつ直径5mm以上のハジキが存在しない
E: 直径5mm以上のハジキがある
【0022】
本発明の架橋性組成物は、(A)-(I)、(A)-(II)、(B)、(C)、および(D)の各成分を含み、前記(C)成分の添加により、前記架橋性組成物を硬化させて得られるコーティング層の繰り返し塗装性を向上させるものであることを特徴とする架橋性組成物であってもよい。
【0023】
((A)-(I)成分)
(A)-(I)成分は、架橋性組成物が硬化した後にコーティング層内部からコーティング層表面へとブリードして、コーティング層表面に塗布された塗装を除去しやすくするための成分である。
【0024】
(A)-(I)成分は、分子鎖末端がトリオルガノシリル基で封鎖された、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状または分岐状構造の無官能性のジオルガノポリシロキサンである。主鎖は、具体的には下記(4)式で表される単位の繰り返しからなり、下記(4)式においてcは1または2である。
RcSiO4-c/2 (4)
(A)-(I)成分1分子当たりの繰り返し単位の数(重合度)は1以上500以下であってもよく、好ましくは10以上200以下であり、より好ましくは10以上100以下である。なお、重合度は、例えば、トルエン等を展開溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ分析におけるポリスチレン換算での数平均重合度(又は数平均分子量)等として測定することができる。
【0025】
(A)-(I)成分において、分子鎖末端および/または分子鎖側鎖の一部にSi-OH基を含んでいてもよいが、Si-OH基含有量は、(A)-(I)成分中のRに対してSi-OH基が5モル%以下であることが好ましく、1モル%以下であることがより好ましく、0.1モル%以下であることがさらにより好ましい。
【0026】
基Rにおいてc=2の場合の例は、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、1-n-ブチル基、2-n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基などのヘキシル基、n-ヘプチル基などのヘプチル基、n-オクチル基や2,2,4-トリメチルペンチル基などのイソオクチル基などのオクチル基、n-ノニル基などのノニル基、n-デシル基などのデシル基、n-ドデシル基などのドデシル基、n-オクタデシル基などのオクタデシル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、メチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ビニル基、1-プロペニル基や2-プロペニル基などのアルケニル基;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などのアリール基;o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、キシリル基、エチルフェニル基などのアルカリル基;ベンジル基、α-フェニルエチル基、β-フェニルエチル基などのアラルキル基が挙げられる。
【0027】
置換された基Rにおいてc=2の場合の例は、それぞれ独立して、3,3,3-トリフルオロプロプ-1-イル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロプ-2-イル基、およびヘプタフルオロプロプ-2-イル基などのハロアルキル基が挙げられる。
【0028】
基Rは、好ましくは、任意でハロゲン原子で置換された、1~18個の炭素原子を有する一価の炭化水素基、特に好ましくはアルキル基、特にメチル基である。
【0029】
本発明において使用される(A)-(I)成分は25℃および1000hPaで液体であることが好ましい。
【0030】
本発明において使用される(A)-(I)成分は、25℃で測定した粘度が20mPa・s~100,000mPa・sであってもよく、50mPa・s~10,000mPa・sであることが好ましく、70mPa・s~500mPa・sであることがさらにより好ましい。
上記範囲のジオルガノポリシロキサンであれば、(A)-(I)成分として1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
当該粘度範囲であれば、硬化前の架橋性組成物全体の粘度が適度な範囲となるため作業性が良好であり、得られるコーティング層の平滑性が良好となる。特に架橋性組成物全体の粘度を低く維持して、作業性を向上させる必要がある用途においては、例えば70mPa・s~500mPa・sの粘度範囲としてもよい。一方で、架橋性組成物全体の粘度は高くてもよいが、(A)-(I)成分のブリード速度を遅くし、得られるコーティング層の繰り返し塗装性と繰り返し除去性を、長期間にわたって維持する必要がある場合には、 (A)-(I)成分の一部または全部に、より高粘度のものを使用することができる。
なお、本明細書内において記載する粘度は、特に記載がない限り25℃、せん断速度:10/sで、回転粘度計(JIS K7117-2)により測定した値である。
【0031】
(A)-(I)成分の配合量は、(A)-(I)成分と(A)-(II)成分の合計量を100質量部とした場合に、1質量部以上20質量部未満であってもよく、2質量部以上15質量部以下がより好ましく、5質量部以上10質量部以下がさらにより好ましい。
(A)-(I)成分の配合量が上記範囲内であれば、コーティング層表面がべたついたり、コーティング層表面に塗布される塗装をはじいたりする現象を抑制可能である。
【0032】
これらの(A)-(I)成分、例えばジオルガノポリシロキサンは市販のものを使用してもよく、また当業者に公知の方法で製造されたものを使用してもよい。
【0033】
((A)-(II)成分)
(A)-(II)成分は、架橋性組成物が硬化により形成するマトリックスを構成する主成分であり、硬化後に得られるコーティング層を基材に良好に接着させる成分でもある。
【0034】
(A)-(II)成分は、分子1つにつき少なくとも2つの(R2R3NCH2)基および少なくとも4つの(OR4)基を有する直鎖状または分岐状構造のジオルガノポリシロキサンである。具体的には下記(4)式で表される単位および下記(5)式で表される単位の繰り返しからなり、下記(4)は(A)-(I)成分について述べた式と同様である。
RcSiO4-c/2 (4)
(R2R3NCH2)(OR4)mSiO3-m/2 (5)
ここでR2は、水素原子、または、任意で置換された、1個以上6個以下の炭素原子を有する一価の直鎖状または分岐状炭化水素基を表し、R3は、任意で置換された、1個以上~6個以下の炭素原子を有する一価の直鎖状または分岐状炭化水素基、または5個もしくは6個の炭素原子を有する環状飽和炭化水素基、またはフェニル基を表し、R4は、同じでも異なってもよく、任意で置換された一価の炭化水素基を表す。
【0035】
(A)-(II)成分1分子当たりの主鎖の重合度は1以上2,500以下であってもよく、好ましくは10以上1,000以下であり、より好ましくは10以上800以下である。
上記範囲のジオルガノポリシロキサンであれば、(A)-(II)成分として1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。重合度が上記範囲内であれば、得られるコーティング層の硬度を好適な範囲とすることが可能である。
【0036】
(A)-(II)成分において、分子鎖末端および/または分子鎖側鎖の一部にSi-OH基を含んでいてもよいが、Si-OH基含有量は、(A)-(II)成分中の(OR4)に対してSi-OH基が5モル%以下であることが好ましく、1モル%以下であることがより好ましく、0.1モル%以下であることがさらにより好ましい。
【0037】
炭化水素基R2の例は、アルキル基が挙げられ、たとえばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、1-n-ブチル基、2-n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基などのヘキシル基である。
【0038】
基R2は、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、または1-n-ブチル基、特に好ましくは、エチル基または1-n-ブチル基、特にn-ブチル基である。
【0039】
R3の例は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、1-n-ブチル基、2-n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基などのヘキシル基などのアルキル基;シクロペンチル基およびシクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ならびにフェニル基である。
【0040】
基R3は、好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、1-n-ブチル基、またはシクロヘキシル基、特に好ましくは、エチル基、n-ブチル基、またはシクロヘキシル基、特にn-ブチル基である。
【0041】
基R2およびR3は同一の基であることが好ましい。
【0042】
基(R2R3NCH2)は、好ましくは、N,N-ジメチルアミノメチル基、N,N-ジエチルアミノメチル基、N,N-ジ-n-プロピルアミノメチル基、N,N-ジ-n-ブチルアミノメチル基、N-n-ブチルアミノメチル基、N-ブタン-2-イルアミノメチル基、N-シクロペンチルアミノメチル基、またはN-シクロヘキシルアミノメチル基、特に好ましくは、N,N-ジメチルアミノメチル基、N,N-ジエチルアミノメチル基、N,N-ジ-n-プロピルアミノメチル基、N,N-ジ-n-ブチルアミノメチル基、特に、N,N-ジ-n-ブチルアミノメチル基である。
【0043】
基R4の例は、Rに対して規定した基と同一の基である。基R4は、好ましくはそれぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、特に好ましくは、メチルまたはエチル基である。
【0044】
(A)-(II)成分の配合量は、(A)-(I)成分と(A)-(II)成分の合計量を100質量部とした場合に、80質量部以上99質量部未満であってもよく、85質量部超98質量部未満がより好ましく、90質量部超95質量部未満がさらにより好ましい。
また、架橋性組成物全体の合計量を100質量部とした場合の、(A)-(I)成分と(A)-(II)成分の合計量は、20質量部以上95質量部以下であってもよく、30質量部以上90質量部以下がより好ましく、40質量部以上85質量部以下がさらにより好ましい。
上記範囲内であれば、良好な除去性と、良好な塗装性を両立させることが可能である。
【0045】
本発明において使用される(A)-(II)成分は既に知られており、例えば、α,ω-ジヒドロキシジオルガノポリシロキサン(A0)を式(1)のシランと脱アルコール反応させることによって調製することができる。
(R2R3NCH2)Si(OR4)3 (1)
所望の場合、(A)-(II)成分はまた、本発明による架橋性組成物の製造の間にその場で調製することができる。本発明において使用される(A)-(II)成分を調製するために使用されるα,ω-ジヒドロキシジオルガノポリシロキサン(A0)は、数平均モル質量Mnが好ましくは45000g/mol未満、特に好ましくは40000g/mol未満、とりわけ35000g/mol未満、とりわけ好ましくは30000g/mol未満のものであることが好ましい。
【0046】
本発明において使用される(A)-(II)成分に存在する式(4)の単位は、好ましくは本質的にc=2のものである。調製の結果として、(A)-(II)成分は、cが1である式(4)の単位も含んでなることがある。本発明に従って使用される(A)-(II)成分は、好ましくは、分子1つにつき最大で1単位のcが1の式(4)を含んでなり、特に好ましくはその単位を含まない。
【0047】
本発明において使用される(A)-(II)成分は、好ましくは、式:
[(R4O)2(R2R3NCH2)SiO-(SiR2O)n-]o(OR4)2-o(R2R3NCH2)SiO-(SiR2O)n-Si(R2R3NCH2)(OR4)2-o[O-(SiR2O)n-Si(R2R3NCH2)(OR4)2]o (6)
(式中、oは、同じでも異なってもよく、0、1、または2を表し、nは、同じでも異なってもよく、10~600の整数を表す)のものである。
【0048】
式(6)の-(SiR2O)n-部分は、それぞれ独立して、好ましくは、数平均モル質量Mnが45000g/mol未満、特に好ましくは40000g/mol未満、とりわけ35000g/mol未満、とりわけ好ましくは30000g/mol未満である。
【0049】
本発明において使用される(A)-(II)成分の例は、
(EtO)2[(n-C4H9)2NCH2]SiO-(SiMe2O)x-Si[CH2N(n-C4H9)2](OEt)2、
(EtO)2[(n-C4H9)2NCH2]SiO-(SiMe2O)x(OEt)[(n-C4H9)2NCH2]SiO-(SiMe2O)x-Si[CH2N(n-C4H9)2](OEt)2、
(EtO)2[(n-C4H9)2NCH2]SiO-(SiMe2O)x(OEt)[(n-C4H9)2NCH2]SiO-(SiMe2O)x-Si[CH2N(n-C4H9)2](OEt)-(SiMe2O)x-Si[CH2N(n-C4H9)2](OEt)2、
[(EtO)2[(n-C4H9)2NCH2]SiO-(SiMe2O)x]2[(n-C4H9)2NCH2]SiO-(SiMe2O)x-Si[CH2N(n-C4H9)2]((OEt)2、
[(EtO)2[(n-C4H9)2NCH2]SiO-(SiMe2O)x]2[(n-C4H9)2NCH2]SiO-(SiMe2O)x-Si[CH2N(n-C4H9)2](OEt)-(SiMe2O)x-Si[CH2N(n-C4H9)2](OEt)2、および
[(EtO)2[(n-C4H9)2NCH2]SiO-(SiMe2O)x]2[(n-C4H9)2NCH2]SiO-(SiMe2O)x-Si[CH2N(n-C4H9)2][-(SiMe2O)x-Si[CH2N(n-C4H9)2](OEt)2]2、
であり、
(EtO)2[(n-C4H9)2NCH2]SiO-(SiMe2O)x-Si[CH2N(n-C4H9)2](OEt)2または(EtO)2[(n-C4H9)2NCH2]SiO-(SiMe2O)x(OEt)[(n-C4H9)2NCH2]SiO-(SiMe2O)x-Si[CH2N(n-C4H9)2](OEt)2であることが好ましく、
(EtO)2[(n-C4H9)2NCH2]SiO-(SiMe2O)x-Si[CH2N(n-C4H9)2](OEt)2であることが特に好ましく、式中、Meはメチル基であり、Etはエチル基であり、xは同じでも異なってもよく、10~405の整数を表す。
【0050】
本発明において使用される(A)-(II)成分は25℃および1000hPaで液体であることが好ましい。
【0051】
本発明において使用される(A)-(II)成分は、25℃で測定した粘度が400mPa・s~20,000mPa・sであってもよく、800mPa・s~15,000mPa・sであることが好ましく、1,000mPa・s~10,000mPa・sであることがさらにより好ましい。当該粘度範囲であれば、硬化前の架橋性組成物全体の粘度が適度な範囲となるため作業性が良好であり、得られるコーティング層の平滑性が良好となる。
【0052】
((B)成分)
本発明における(B)成分は、下記式(1)で示されるシランおよび/またはその部分加水分解物である。
(R2R3NCH2)Si(OR4)3 (1)
本発明で使用される(B)成分は既に知られており、ケイ素化学で一般的な方法によって容易に調製することができる。
【0053】
本発明において使用される(B)成分の例は、
N,N-ジメチルアミノメチルトリエトキシシラン、
N,N-ジエチルアミノメチルトリエトキシシラン、
N,N-ジ-n-プロピルアミノメチルトリエトキシシラン、
N,N-ジ-n-ブチルアミノメチルトリエトキシシラン、
N-n-ブチルアミノメチルトリエトキシシラン、
N-ブタン-2-イルアミノメチルトリエトキシシラン、
N-シクロペンチルアミノメチルトリエトキシシラン、
N-シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、
N,N-ジメチルアミノメチルトリメトキシシラン、
N,N-ジエチルアミノメチルトリメトキシシラン、
N,N-ジ-n-プロピルアミノメチルトリメトキシシラン、
N,N-ジ-n-ブチルアミノメチルトリメトキシシラン、
N-n-ブチルアミノメチルトリメトキシシラン、
N-ブタン-2-イルアミノメチルトリメトキシシラン、
N-シクロペンチルアミノメチルトリメトキシシラン、
N-シクロヘキシルアミノメチルトリメトキシシラン、およびそれらの部分加水分解物であり、
N,N-ジメチルアミノメチルトリエトキシシラン、
N,N-ジエチルアミノメチルトリエトキシシラン、
N,N-ジ-n-プロピルアミノメチルトリエトキシシラン、
N,N-ジ-n-ブチルアミノメチルトリエトキシシラン、
N-シクロペンチルアミノメチルトリエトキシシラン、
N-シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、またはそれらの部分加水分解物であることが好ましく、
N,N-ジエチルアミノメチルトリエトキシシラン、
N,N-ジ-n-ブチルアミノメチルトリエトキシシラン、
N-シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、またはそれらの部分加水分解物であることが特に好ましい。
【0054】
(B)成分が式(1)のシランの部分加水分解物の形をとる場合、ケイ素原子が2~10個の部分加水分解物であることが好ましい。
【0055】
本発明に係る架橋性組成物は、(B)成分を、(A)-(I)成分と(A)-(II)成分の合計量を100質量部としたときに、5質量部以上20質量部以下含むことができ、5質量部以上15質量部以下含むことが好ましく、5質量部以上10質量部以下含むことがさらにより好ましい。
(B)成分は、(A)-(II)成分、(C)成分、および(D)成分と共に架橋反応に寄与してマトリックスを形成することから、上記範囲内であれば、架橋密度が好適な範囲に維持され、十分な硬度を有するコーティング層の形成が可能である。また、上記範囲内であれば、基材とコーティング層との接着性を良好に維持しながら、塗装の除去性も良好に維持することが可能となる。
【0056】
((C)成分)
アルコキシシランである(C)成分は、架橋性組成物が形成するマトリックス中に架橋によって取り込まれることにより、コーティング層の硬度を向上させ、コーティング層表面への(A)-(I)成分のブリード量を低く維持する成分である。
(C)成分の粘度が低いことから、(C)成分の配合により架橋性組成物全体の粘度を低下させることができ、架橋性組成物を基材へ塗布する場合の作業性が良好となるほか、むらなく均一に塗布することが可能となるため、硬化後に平滑なコーティング層を得ることが可能となる。
【0057】
(C)成分は下記式(2)で表される、アルコキシシランであり、好ましくは窒素原子を含まない。
R21
4-xSi(OR22)x (2)
(式中、R21は、同じでも異なってもよく、任意で置換された、1個以上6個以下の炭素原子を有する一価の炭化水素基を表し、
R22は、同じでも異なってもよく、任意で置換された、1個以上5個以下の炭素原子を有する一価の炭化水素基を表し、xは、2、3、または4を表す)
【0058】
基R21においてx=2の場合の例は、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、1-n-ブチル基、2-n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基などのヘキシル基、n-ヘプチル基などのヘプチル基、n-オクチル基や2,2,4-トリメチルペンチル基などのイソオクチル基などのオクチル基、n-ノニル基などのノニル基、n-デシル基などのデシル基、n-ドデシル基などのドデシル基、n-オクタデシル基などのオクタデシル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、メチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ビニル基、1-プロペニル基や2-プロペニル基などのアルケニル基;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などのアリール基;o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、キシリル基、エチルフェニル基などのアルカリル基;ベンジル基、α-フェニルエチル基、β-フェニルエチル基などのアラルキル基が挙げられる。
【0059】
置換された基R21においてx=2の場合の例は、それぞれ独立して、3,3,3-トリフルオロプロプ-1-イル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロプ-2-イル基、およびヘプタフルオロプロプ-2-イル基などのハロアルキル基が挙げられる。
【0060】
基R21は、好ましくは、1個以上6個以下の炭素原子を有する、非置換の直鎖状または分岐状アルキル基またはフェニル基であり、特に好ましくは、メチル基、エチル基、ビニル基、n-ペンチル基、またはn-ヘキシル基である。基R21の炭素数が6以下であれば、十分な硬度を有するコーティング層が得られる。
基R21は非芳香族の炭化水素基であれば、より除去性が向上することから、好ましい。
【0061】
基R22は、基Rに対して規定した基と同一の基である。
基R22は好ましくはそれぞれ独立して1個以上6個以下の炭素原子を有するアルキル基、特に好ましくはメチル基またはエチル基であり、エチル基が最も好ましい。
【0062】
xは、2、3、または4を表すが、3又は4であることが好ましく、4であることがさらにより好ましい。xが3以上であれば、得られるコーティング層の硬度がより好適なものとなる。例えば、xが3以上であれば得られるコーティング層のショアA硬度を30以上とすることが可能であり、xが4以上であれば、ショアA硬度を40以上とすることが可能である。
【0063】
(C)成分の例は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-i-プロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトラ-i-ブトキシシラン、テトラ-t-ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリ-n-プロポキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシランである。
【0064】
(C)成分の配合量は、(A)-(I)成分と(A)-(II)成分の合計量を100質量部とした場合に、10質量部以上200質量部未満であってもよく、15質量部以上150質量部以下がより好ましく、20質量部以上100質量部以下がさらにより好ましい。
上記範囲内であれば、得られるコーティング層の硬度を好適な範囲(例えばショアA硬度が30以上60以下)とすることが可能であり、コーティング層表面への(A)-(I)成分のブリード量を好適な範囲とすることが可能である。
【0065】
((D)成分)
有機ケイ素化合物である(D)成分は、架橋性組成物が架橋反応するための触媒であると同時に、架橋反応によって形成されるマトリックス中に取り込まれてコーティング層を形成する反応性触媒である。コーティング層の基材への接着性を向上させる機能も有する。
本発明の架橋性組成物には、触媒として(D)成分以外の触媒も併用することができるが、環境・安全面からは金属を含む触媒を使用しないことが望ましい。
【0066】
(D)成分は、下記式(3)で表される単位を含む有機ケイ素化合物であって、分子1つにつき少なくとも1つの基Dが存在し、少なくとも1つの基DがNH2基を有する、有機ケイ素化合物である。
DfSi(OR32)eR31
dO(4-d-e-f)/2 (3)
(式中、R31は、同じでも異なってもよく、任意で置換された、窒素を含まない一価のSiC結合有機基を表し、
R32は、同じでも異なってもよく、水素原子、または任意で置換された炭化水素基を表し、
Dは、同じでも異なってもよく、カルボニル基(C=O)に結合していない少なくとも1個の窒素原子を有する一価のSiC結合基を表し、
dは、0または1であり、eは、0、1、2、または3であり、fは、0または1であり、d+e+fの和が4以下である)
【0067】
本発明における(D)成分は、シラン、すなわちd+e+f=4の式(3)の化合物、またはシロキサン、すなわちd+e+f≦3の式(3)の単位を含んでなる化合物のいずれかであってもよく、シランであることが好ましい。
本発明における(D)成分は、少なくとも1つのアルコキシ基を有するシランであることがより好ましい。
【0068】
基Dの例は、式:H2NCH2-、H2N(CH2)3-、H2N(CH2)2NH(CH2)3-、H2N(CH2)2NH(CH2)3NH(CH2)3-、H3CNH(CH2)3-、C2H5NH(CH2)3-、H2N(CH2)4-、H2N(CH2)5-、H(NHCH2CH2)2-(CH2)3-、C4H9NH(CH2)2NH(CH2)3-、シクロ-C6H11NH(CH2)3-、(CH3)2N(CH2)3-、および(C2H5)2N(CH2)3-で表される基である。
【0069】
基Dは、好ましくは、H2N(CH2)3-、H2N(CH2)2NH(CH2)3-、H3CNH(CH2)3-、C2H5NH(CH2)3-、またはシクロ-C6H11NH(CH2)3-で表される基、特に好ましくは、H2N(CH2)2NH(CH2)3-またはシクロ-C6H11NH(CH2)3-で表される基、特に、H2N(CH2)2NH(CH2)3-で表される基である。
【0070】
有機ケイ素化合物(D)の例は、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピル-トリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノ‐エチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチル-シラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3-アミノプロピル(メチル)シルセスキオキサン、末端エトキシ基(CAS番号128446-60-6)、ポリ[3-(2-アミノ‐エチル)アミノプロピル]メチルシロキサン、末端ヒドロキシ基(CAS番号106214-80-6)、および3-(2-アミノエチル)アミノプロピルシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体(CAS番号67923-07-3)である。
【0071】
(D)成分は、好ましくは、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3-アミノプロピル(メチル)-シルセスキオキサン、末端エトキシ基(CAS番号128446-60-6)、または3-(2-アミノエチル)アミノプロピルシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体(CAS番号67923-07-3)であり、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピル-(メチル)シルセスキオキサン、末端エトキシ基(CAS番号128446-60-6)、または3-(2-アミノエチル)アミノプロピルシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体(CAS番号67923-07-3)であることが特に好ましい。
【0072】
(D)成分中のアミノ基の数は1個以上であれば特に限定されず、2個以上のアミノ基を含む場合にはより基材とコーティング層との接着強度が向上する傾向にある。
【0073】
本発明による架橋性組成物は、(D)成分を、(A)-(I)成分と(A)-(II)成分の合計量を100質量部とした場合に、0.1質量部以上2質量部以下含むことができ、好ましくは0.1質量部以上~1.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上~1.0質量部以下含むことができる。
0.1質量部以上であればポリマー((A)-(I)および(A)-(II)成分を含む架橋性組成物)の加水分解および縮合反応を促進することが可能となる。一方で0.1質量部を下回ると加水分解および縮合反応を触媒する効果が低下すると同時に、接着性も低下する。また2質量部超配合すると、本発明の架橋性組成物が湿気硬化性組成物である場合、その貯蔵中に加水分解および縮合反応が進行し、貯蔵中にゲル化・硬化するなど貯蔵安定性が悪くなる可能性がある。
【0074】
本発明に従って使用される(D)成分である有機ケイ素化合物は既知であり、化学において一般的な方法によって調製でき、またはGENIOSIL(登録商標)GF91、GENIOSIL(登録商標)GF93、GENIOSIL(登録商標)GF94、GENIOSIL(登録商標)GF95、GENIOSIL(登録商標)GF96、WACKER HAFTVERMITTLER AMS60、WACKER HAFTVERMITTLER AMS70という名称でドイツ、ミュンヘンのWACKER Chemie AGから市販されている。
【0075】
上記の(A)-(I)、(A)-(II)、(B)、(C)、および(D)の各成分のほかに、本発明による組成物は、例えば、(E)成分:オルガノシロキサン、(F)成分:充填剤、(G)成分:有機溶剤、(H)成分:可塑剤、(I)成分:触媒、(J)成分:顔料などの縮合反応で架橋できる組成物にこれまでにも使用されてきたいずれかの物質を含んでいてもよい。
【0076】
本発明による組成物は、(A)-(I)~(J)成分以外のいずれの追加要素も含まないことが好ましい。
【0077】
((E)成分)
(E)成分は、任意で配合させることができる、コーティング層の硬度向上に寄与する成分である。
(E)成分は、下記式(4)で表される単位を2単位以上30単位以下有し、分子1つにつき式(4)のbが0以外である少なくとも1つの単位が存在する、オルガノシロキサンである。
R6
a(R7O)bSiO(4-a-b)/2 (4)
(式中、R6は、同じでも異なってもよく、任意でハロゲン原子で置換された一価のSiC結合炭化水素基、またはSi結合ハロゲン原子を表し、
R7は、同じでも異なってもよく、任意で置換された一価の炭化水素基を表し、
aは、0または1であり、
bは、0、1、2、または3であり、
a+bの和が<4である)
【0078】
本発明において使用される(E)成分は既知であり、例えば、WACKER(登録商標)TES40という名称でWacker Chemie AGから市販されている。
【0079】
(E)成分の例は、
(MeSiO3/2)0.37(MeSi(OEt)O2/2)0.46(MeSi(OEt)2O1/2)0.17
(ここで、Mw=2400g/mol、Mn=900g/mol、およびMw/Mn=2.7である)、
(MeSiO3/2)0.38(MeSi(OEt)O2/2)0.46(MeSi(OEt)2O1/2)0.15(Me2SiO2/2)0.01
(ここで、Mw=2800g/mol、Mn=1000g/mol、およびMw/Mn=2.8である)、
(MeSiO3/2)0.30(MeSi(OMe)O2/2)0.47(MeSi(OMe)2O1/2)0.23
(ここで、Mw=2300g/mol、Mn=600g/mol、およびMw/Mn=3.8である)、
(MeSiO3/2)0.32(MeSi(OMe)O2/2)0.48(MeSi(OMe)2O1/2)0.20
(ここで、Mw=3300g/mol、Mn=900g/mol、およびMw/Mn=3.7、である)
(Si(OEt)2O2/2)0.42(Si(OEt)O3/2)0.19(Si(OEt)3O1/2)0.39
(ここで、Mw=1000g/mol、Mn=800g/mol、およびMw/Mn=1.2、である)
(Si(OEt)2O2/2)0.48(Si(OEt)O3/2)0.35(Si(OEt)3O1/2)0.09(SiO4/2)0.08
(ここで、Mw=1400g/mol、Mn=900g/mol、およびMw/Mn=1.6である)、
(iso-OctSi(OMe)O2/2)0.09(iso-OctSiO3/2)0.06(iso-OctSi(OMe)2O1/2)0.08(MeSiO3/2)0.23(MeSi(OMe)O2/2)0.35(MeSi(OMe)2O1/2)0.19
(ここで、Mw=1400g/mol、Mn=600g/mol、およびMw/Mn=2.3である)、および
(iso-OctSi(OMe)O2/2)0.12(iso-OctSiO3/2)0.05(iso-OctSi(OMe)2O1/2)0.08(MeSiO3/2)0.22(MeSi(OMe)O2/2)0.33(MeSi(OMe)2O1/2)0.20
(ここで、Mw=1600g/mol、Mn=700g/mol、およびMw/Mn=2.3である)
であり、式中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、iso-Octは2,4,4-トリメチルペンチル基を表す。
【0080】
(E)成分は、好ましくは、R6がメチル基(Me)であり、R7がエチル基(Et)であり、aが0または1であり、bが1、2、または3である式(4)のものであり、例えば、
(MeSiO3/2)0.37(MeSi(OEt)O2/2)0.46(MeSi(OEt)2O1/2)0.17
(ここで、Mw=2400g/mol、Mn=900g/mol、およびMw/Mn=2.7である)、
(MeSiO3/2)0.38(MeSi(OEt)O2/2)0.46(MeSi(OEt)2O1/2)0.15(Me2SiO2/2)0.01
(ここで、Mw=2800g/mol、Mn=1000g/mol、およびMw/Mn=2.8である)、
(MeSiO3/2)0.30(MeSi(OMe)O2/2)0.47(MeSi(OMe)2O1/2)0.23
(ここで、Mw=2300g/mol、Mn=600g/mol、およびMw/Mn=3.8である)、
(MeSiO3/2)0.32(MeSi(OMe)O2/2)0.48(MeSi(OMe)2O1/2)0.20
(ここで、Mw=3300g/mol、Mn=900g/mol、およびMw/Mn=3.7である)、
(Si(OEt)2O2/2)0.42(Si(OEt)O3/2)0.19(Si(OEt)3O1/2)0.39
(ここで、Mw=1000g/mol、Mn=800g/mol、およびMw/Mn=1.2である)、または
(Si(OEt)2O2/2)0.48(Si(OEt)O3/2)0.35(Si(OEt)3O1/2)0.09(SiO4/2)0.08
(ここで、Mw=1400g/mol、Mn=900g/mol、およびMw/Mn=1.6である)
などであり、R7=Etおよびa=0である式(4)のオルガノシロキサンは、例えば、
(Si(OEt)2O2/2)0.42(Si(OEt)O3/2)0.19(Si(OEt)3O1/2)0.39
(ここで、Mw=1000g/mol、Mn=800g/mol、およびMw/Mn=1.2である)、または
(Si(OEt)2O2/2)0.48(Si(OEt)O3/2)0.35(Si(OEt)3O1/2)0.09(SiO4/2)0.08
(ここで、Mw=1400g/mol、Mn=900g/mol、およびMw/Mn=1.6である)
などであることが特に好ましい。
【0081】
(E)成分は、重量平均モル質量Mwが、好ましくは500~10000g/mol、特に好ましくは500~8000である。
【0082】
(E)成分は、数平均モル質量Mnが、好ましくは200~5000g/mol、特に好ましくは200~3000g/molである。
【0083】
成分(E)は、多分散度Mw/Mnが、好ましくは1~5、特に好ましくは1~4である。
【0084】
本発明では、DIN1333:1992-02の第4段落に従って百の位に四捨五入された重量平均モル質量Mwおよび数平均モル質量Mnは、ポリスチレン標準と示差屈折率検出器(RI検出器)を使用してDIN55672-1に従ってゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)またはサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で決定される。別段の記述がない限り、THFがフェニル含有成分用の溶離液として使用され、トルエンが非フェニル含有成分用の溶離液として使用され、分析は45℃のカラム温度で実施される。多分散度は指数(quotient)Mw/Mnである。
【0085】
(E)成分は、25℃および1000hPaで液体であることが好ましい。
【0086】
本発明による架橋性組成物は、(E)成分を、(A)-(I)成分と(A)-(II)成分の合計量を100質量部とした場合に、0質量部以上40質量部以下含むことができ、好ましくは1質量部以上20質量部以下含み、より好ましくは4質量部以上10質量部以下含むものである。
上記範囲であれば架橋性組成物の粘度を、基材への塗布に適した範囲とすることができ、作業性が良好である。
(C)成分の配合により、架橋性組成物の粘度が低下し、平滑なコーティング層が得られるが、ここに(E)成分も共存させることにより、架橋性組成物の粘度の大幅な上昇を抑制しつつコーティング層の硬度を向上させることが可能となる。
【0087】
((F)成分)
充填剤である(F)成分は、任意で配合させることができる、架橋性組成物のタレ止め剤として機能する成分である。
【0088】
任意で存在する(F)成分の例は、カーボンブラックおよびシリカなどの補強充填剤であり、シリカであることが好ましく、ヒュームドシリカであることが特に好ましい。
【0089】
本発明に従って使用される(F)成分、たとえばシリカは表面処理されていてもよい。特に、(F)成分として使用されるヒュームドシリカは、トリメチルシロキシ基で表面改質されたヒュームドシリカである。
【0090】
本発明による組成物が(F)成分を含んでなる場合、その(F)成分は、(A)-(I)成分と(A)-(II)成分の合計量を100質量部とした場合に、0質量部以上30質量部以下としてもよく、好ましくは5質量部以上30質量部以下、より好ましくは8質量部以上15質量部以下の量で配合することができる。本発明による架橋性組成物は(F)成分を含んでなることが好ましい。
【0091】
((G)成分)
(G)成分は、任意で配合させることができる、有機溶剤である。
【0092】
任意で存在する(G)成分の例は、CAS番号64742-47-8の混合された炭化水素混合物などの、直鎖状、分岐状、または環状でありうる、6~20個の炭素原子を有する飽和炭化水素である。
【0093】
任意で使用される(G)成分は、分岐状および環状化合物から選択される、6~20個の炭素原子を有する飽和炭化水素からなる炭化水素混合物であることが好ましい。
【0094】
(G)成分は、25℃および1000hPaで液体であることが好ましい。
【0095】
(G)成分は、初留点(IBP)(ASTM D86)が90℃~270℃の温度範囲であり、乾点(DP)(ASTM D86)が100℃~310℃の温度範囲であることが好ましい。
【0096】
任意で使用される(G)成分は、15.6℃での密度が0.699~0.831g/cm3の範囲である(EN ISO12185)。
【0097】
任意で使用される(G)成分は、好ましくは、40℃での動粘度が、0.5mm2/s~8mm2/s、特に好ましくは、2mm2/s~5mm2/sである(ASTM D445)。
【0098】
本発明による架橋性組成物が(G)成分を含んでなる場合、その(G)成分は、(A)-(I)成分と(A)-(II)成分の合計量を100質量部とした場合に、0質量部以上40質量部以下含むことができ、好ましくは5質量部以上30質量部以下、より好ましくは10質量部以上20質量部以下の量で含むことができる。本発明による架橋性組成物は(G)成分を含んでなることが好ましい。
【0099】
((H)成分)
(H)成分は、任意で配合させることができる、可塑剤である。
【0100】
任意で存在する(H)成分は、好ましくはトリオルガニルシロキシ基で末端ブロック化されたジオルガニル-ポリシロキサン、特に好ましくは、トリメチルシロキシ基で末端ブロック化されたジメチルポリシロキサンである。
【0101】
(H)成分は、25℃および1000hPaで液体であることが好ましい。
【0102】
特に、(H)成分は、トリメチルシロキシ基で末端ブロック化され、25℃および1000hPaで液体であるジメチルポリシロキサンである。
【0103】
(H)成分は、好ましくは、25℃での粘度が5~1000mPasの範囲であり、特に好ましくは35~100mPasである。
【0104】
本発明による組成物が(H)成分を含んでなる場合、その(H)成分は、(A)-(I)成分と(A)-(II)成分の合計量を100質量部とした場合に、0質量部以上20質量部以下含むことができ、好ましくは5質量部以上20質量部以下、より好ましくは5質量部以上10質量部以下の量で含むことができる。
【0105】
((I)成分)
(I)成分は、任意で配合させることができる、触媒である。
【0106】
使用することができる任意で存在する(I)成分である触媒は、例えば、ジオルガノスズ化合物、チタンアルコキシレート、チタンキレート、2-エチルヘキサン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸ビスマス(III)などの、湿気硬化系に従来から使用されてきたいずれかの化合物である。
【0107】
本発明による組成物はいずれの金属含有触媒も含まないことが好ましい。本発明による組成物はいずれの触媒も含まないことが特に好ましい。
【0108】
((J)成分)
(J)成分は、任意で配合させることができる、顔料である。
【0109】
任意で存在する(J)成分の例は、二酸化チタンならびに黄色、赤色、および黒色酸化鉄顔料などの無機顔料である。
【0110】
本発明による組成物が(J)成分を含んでなる場合、その(J)成分は、(A)-(I)成分と(A)-(II)成分の合計量を100質量部とした場合に、0質量部以上2質量部以下含むことができ、好ましくは0.5質量部以上2.0質量部以下含むことができる。
【0111】
上記(A)-(I)成分~(D)成分および必要に応じて各任意成分を含む最終的な生成物である組成物の粘度は、特に限定されず、例えば1,000mPa・s以上5,000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。上記範囲内であれば、基板に架橋性組成物を塗布する際の作業性が良好であり、かつ、架橋性組成物の硬化後に平滑なコーティング層を得ることが可能となる。
【0112】
本発明はまた、
前記(A)-(I)成分と前記(A)-(II)成分の合計量を100質量部とした場合に、
前記(B)成分を5質量部以上20質量部以下と、
前記(C)成分を10質量部以上200質量部以下と、
前記(D)成分0.1質量部以上2質量部以下と、
任意で前記(E)成分を0質量部以上40質量部以下と、
任意で前記(F)成分を0質量部以上30質量部以下と、
任意で(G)有機溶剤を0質量部以上40質量部以下と、
を含む架橋性組成物である。
【0113】
本発明の架橋性組成物は、湿気硬化型組成物であり、二液型組成物以上の多液型組成物としてもよいが、一液型組成物とすることもできる。該架橋性組成物を、基材に塗布してコーティング層を得るための湿気硬化性コーティング剤として使用する場合には、塗布作業時に混合作業が不要である一液型組成物とすることが特に好ましい。
【0114】
一液型の湿気硬化性コーティング剤として使用される、本発明の架橋性組成物を、製造する方法は、特に限定されず、個々の成分を任意の順序で混合することによって製造してもよい。
本発明の架橋性組成物の製造方法はまた、、
(A)-(II)成分と、(B)成分との混合物に、(A)-(I)成分を配合する第1混合工程と、
第1混合工程で得られた混合物に(C)成分を配合する第2混合工程と、
第2混合工程で得られた混合物に前記(D)成分を配合する第3混合工程と、を含む方法であってもよい。
【0115】
(第1混合工程)
上記の架橋性組成物の製造方法の第1混合工程において使用される、(A)-(II)成分は、分子鎖両末端にシラノール基を有するジオルガノポリシロキサンと、過剰量の(B)成分を混合して脱アルコール反応させる既知の方法によって得ることができる。
第1混合工程では、上記の通り得られた(A)-(II)成分と、未反応の(B)成分との混合物に、(A)-(I)成分を導入し、混合する。混合時の温度は特に限定されず、0℃以上80℃以下、好ましくは20℃以上50℃以下の温度とすることができる。
架橋性組成物が(F)成分である充填剤を含むものである場合には、(F)成分の充填剤は(A)-(II)成分と共に第1混合工程で配合されてもよい。(F)成分の充填剤を含む場合、ディゾルバ―ミキサー等により高シェアがかかる混合方法により混合することが好ましい。
ここで、(F)成分を他の液状成分((A)-(I)、(B)、(C)、(D)成分等である)を導入する前に導入すると、混合物の粘度が上昇し、シェアがかかりやすくなることから、(F)成分の架橋性組成物中の分散性がより良好になる。
(F)成分を含む場合には、(F)成分配合後の混合物(すなわち、(A)-(I)成分、(A)-(II)成分、(B)成分、および(F)成分の混合物)の粘度が10,000mPa・s以上100,000mPa・s以下であることが良好な分散性を得るために好ましく、2,000mPa・s以上50,000mPa・s以下であることがさらに好ましい。
【0116】
(第2混合工程)
上記の架橋性組成物の製造方法の第2混合工程は、第1混合工程で得られた混合物に(C)成分を導入し、混合する工程である。混合時の温度は特に限定されず、0℃以上80℃以下、好ましくは20℃以上50℃以下の温度とすることができる。
架橋性組成物が(E)成分を含むものである場合には、(E)成分は(C)成分と共に第2混合工程で配合されてもよい。
【0117】
(第3混合工程)
上記の架橋性組成物の製造方法の第3混合工程は、第2混合工程で得られた混合物に(D)成分を導入し、混合する工程である。混合時の温度は特に限定されず、0℃以上80℃以下、好ましくは20℃以上50℃以下の温度とすることができる。湿分を含む環境下に置かれると、(D)成分を配合後に架橋反応が進行することから、第3混合工程で(D)成分を導入した後は窒素雰囲気下または減圧下で保存することが好ましい。
【0118】
本発明の架橋性組成物は、20℃以上40℃以下の温度範囲において、水を排除した状態で保存安定性があり、水と接触することで架橋反応する。
【0119】
本発明はまた、上記の架橋性組成物を基材に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程で塗布された架橋性組成物を湿気硬化させる硬化工程を含む、コーティング層の製造方法である。
塗布工程における塗布方法としては、具体的には、塗装、吹き付け、スクレーピング、圧延、噴霧、刷毛塗り、注入、へらでの塗布、浸漬、およびローラーでの塗布によってなどの一般的かつ従来公知の塗布方法によって基材の表面上に塗布する方法が上げられる。
【0120】
本発明の方法において、架橋性組成物の塗布量は1m2の基材表面積あたり50g以上400g以下であり、好ましくは70g以上200g以下である。金属基材等の平滑な基材に対しては塗布量を50g以上200g以下とすることができ、木材等の多孔質基材に対しては100g以上400g以下としてもよい。
【0121】
ここで、架橋性組成物が塗布される基材は特に限定されず、例えばセメント系材料、石膏ボード、アスファルト、木材、金属、樹脂、タイル、ガラス、天然石、人工石、またはこれらの組み合わせであってもよい。
これらの基材はプライマーによる下処理がされているものであってもよい。
【0122】
基材として使用される金属は、例えば、鉄、アルミニウム、チタン、銅、またはこれらを含む合金を含む。電着塗装等の塗装された前記金属であってもよい。
基材として使用される金属酸化物は、例えば、ケイ素-、アルミニウム-、ジルコニウム-又はチタン酸化物又はこの金属酸化物の混合物を含む。
【0123】
基材として使用されるセメント系材料は、コンクリート、モルタル、サイディングボード、ALC(軽量気泡コンクリート)、スレート板、ケイ酸カルシウム板、木質系セメント板などを含む。
【0124】
基材として使用される木材は、無垢の木材、および木材から製造されたチップボード、木材チップからなるボード、合板、ラミネート板、化粧板等の製品を含む。無垢の木材は、例えばモミ、トウヒ、ハンノキ、ブナ、マツ、オーク、ポプラ、シナノキ、ヤナギ、カエデ、ヒマラヤスギ、シラカバ、パラゴムノキ、サクラ、カラマツ、ビャクシン、イチイ、ハリエンジュ、ニレ、クルミ、マホガニー、紫檀、チーク、タシロマメ、エンピツビャクシン、オリーブであるが、これらに限定されない。
【0125】
基材として使用される樹脂としては、例えば種類は特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルブチラール樹脂、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂が挙げられる。
【0126】
本発明の架橋性組成物を硬化させて得られるコーティング層は好適な硬度を有し(例えばショアA硬度が30以上60以下である)、硬度がありながら、柔軟性も兼ね備えることから、木材等の伸縮性のある材質に対しても好適に密着し、硬化後のひび割れやはがれが少ないコーティング層を得ることが可能である。
【0127】
上記方法により、基材表面上に塗布され、硬化されることにより得られたコーティング層に対し、該コーティング層の表面にさらに硬化前の架橋性組成物を塗布する(上塗りする)ことも可能である。すなわち、経年劣化や物理的衝撃等によりコーティング層にひび割れ、欠け、傷等が発生した場合に、架橋性組成物を塗布することにより修復することが可能である。
コーティング層表面は塗装性が良好であり、架橋性組成物をコーティング層表面に上塗りした場合にも、はじきのない上塗りが可能である。また、上塗り後の架橋性組成物は湿気硬化により、上塗り前のコーティング層と同じ組成を有する硬化物を形成するため、上塗り前のコーティング層と良好に密着し、高圧洗浄水などによっても剥落することが少ない。従って、上塗り後に得られる新たなコーティング層においても、硬度を維持しながら、良好な繰り返し塗装性と繰り返し除去性を発揮することが可能である。
【0128】
本発明の架橋性組成物は、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン(D7)、およびヘキサデカメチルシクロオクタシロキサン(D8)からなる群から選択されるいずれか1種または2種以上を含んでいてもよい。
上記(D4)、(D5)、(D6)、(D7)および(D8)の含有量合計は、架橋性組成物全体を100質量部としたときに、0.1質量部未満(すなわち1,000ppm未満)であってもよい。
架橋性組成物中の(D4)~(D8)の含有量合計が上記範囲内であれば、該組成物全体としての引火点が高くなり、貯蔵中の安全性を向上させることが可能となる。
上記(D4)~(D8)の含有量の合計が、架橋性組成物全体を100質量部としたときに、0.1質量部未満である架橋性組成物は、(A)-(I),(A)-II)、(B)および(C)成分として(D4)~(D8)の含有量合計xA、xB、xCがそれぞれ0.1質量%未満であり、かつxA+xB+xC<0.1質量部となるように使用することにより製造することが可能である。
(D4)~(D8)の含有量はガスクロマトグラフィーにより測定される。ガスクロマトグラフィーの測定条件は従来公知の方法に従い適宜選択されればよい。
【0129】
架橋性組成物中の(D4)~(D8)の含有量を減らす手法としては、各原料成分の加熱及び減圧処理を行う方法が広く知られており、例えば、(A)-(I)~(D)成分の原料のいずれか、またはそれらすべての作製時に180℃、20mmHgにて8h程度の加熱減圧処理を行うことが望ましい。
【0130】
本発明の架橋性組成物は、上述した成分以外にも、本発明の目的を達する限りにおいて、任意成分を含有することができる。例えば、消泡剤、硬化速度調整材、添加剤等の全てのその他の物質を含むことができる。
【0131】
本発明はまた、上記の(A)-(I)、(A)-(II)と、(B)と、(C)と、(D)の各成分を含む架橋性組成物であって、(A)-(I)成分と(A)-(II)成分との合計量を100質量部とした場合に、(C)成分を10質量部以上200質量部以下配合することにより、該架橋性組成物の硬化物の繰り返し塗装性と硬度を向上させるものであることを特徴とする、架橋性組成物である。
【0132】
ここで、硬化物の繰り返し塗装性は、下記の評価方法により評価することができる。
<繰り返し塗装性評価方法>
本発明の架橋性組成物を硬化させることにより得られるコーティング層の表面に、日本ペイント株式会社製のアクリルラッカースプレー(茶色)を30cm×20cmの面積に対し、コーティング層表面の上方30cmからスプレーした(乾燥前の状態で、塗布量は100g/m2)。2時間静置後に、家庭用高圧洗浄機を使用してコーティング層の表面から10cmの距離で水を噴射して塗料を除去する工程を10回繰り返し、繰り返し塗装性評価用の評価試験体表面を得る。
繰り返し塗装性評価用の評価試験体表面に、日本ペイント株式会社製のアクリルラッカースプレー(茶色)を30cm×20cmの面積に対し、コーティング層表面の上方30cmからスプレーし、ハジキの有無を目視で観察する。
【0133】
本発明はまた、基材と、上記の架橋性組成物を硬化させてなるコーティング層と、を含む積層体である。当該積層体は、繰り返し塗装性と、繰り返し除去性に優れるコーティング層を表面に有する。このため、表面にペイントを施し一定期間鑑賞したのちに高圧洗浄水で塗装を除去して別のペイント用に転用する、といった繰り返し使用が想定されるボードとして有用である。例えば、工事現場や野外集会場に設置される鋼板、防護柵、ラッピング車両等の車両外面、広告看板、高架橋脚表面、公共構造物の外壁等として当該積層体を使用することができる。
【0134】
ここで、硬化物の硬度は、JISK6253で規定された方法に基づいて、タイプAデュロメータでショアA硬度を測定することにより評価することができる。
【実施例0135】
実施例、比較例を示し、表1、表2に各成分の配合量と、評価結果を記載した上で本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0136】
<評価試験体作成方法>
表1、表2に記載の各成分を混合して得られた架橋性組成物を、スレート基材に、ローラーにより1m2の基材表面積あたり100gの量で塗布したのち、温度23℃、湿度50%の条件下で7日間静置した。得られた硬化物(コーティング層)を塗装性、繰り返し塗装性、塗装保持性、繰り返し塗装保持性、除去性、繰り返し除去性、平滑性の評価試験体とした。
【0137】
<作業性評価方法>
硬化前の架橋性組成物の粘度を、回転粘度計を用いて25℃の温度条件にて測定した。その際、1,000mPa・s以上5,000mPa・s以下であれば作業性が良好であると評価した。
【0138】
<塗装性評価方法>
評価試験体表面に、日本ペイント株式会社製のアクリルラッカースプレー(茶色)を30cm×20cmの面積に対し、コーティング層表面の上方30cmからスプレーし、ハジキの有無を目視で観察する。
以下の評価指標において、AまたはBである場合に、塗装性が良好であると評価した。
A: ハジキが全く見られない。
B: 直径2mm未満のハジキが0個/m2超10個/m2未満、かつ直径2mm以上のハジキが存在しない
C: 直径2mm未満のハジキが10個/m2以上、直径2mm以上5mm未満のハジキが0個/m2超10個/m2未満、かつ直径5mm以上のハジキが存在しない
D: 直径2mm以上5mm未満のハジキが10個/m2以上、かつ直径5mm以上のハジキが存在しない
E: 直径5mm以上のハジキがある
【0139】
<繰り返し塗装性評価方法>
評価試験体の表面に、日本ペイント株式会社製のアクリルラッカースプレー(茶色)を30cm×20cmの面積に対し、コーティング層表面の上方30cmからスプレーした(乾燥前の状態で、塗布量は100g/m2)。2時間静置後に、家庭用高圧洗浄機を使用して評価試験体の表面から10cmの距離で水を噴射して塗料を除去する工程を10回繰り返し、繰り返し塗装性評価用の評価試験体表面を得る。
繰り返し塗装性評価用の評価試験体表面に、日本ペイント株式会社製のアクリルラッカースプレー(茶色)を30cm×20cmの面積に対し、コーティング層表面の上方30cmからスプレーし、ハジキの有無を目視で観察する。
以下の評価指標において、AまたはBである場合に、繰り返し塗装性が良好であると評価した。
A: ハジキが全く見られない。
B: 直径2mm未満のハジキが0個/m2超10個/m2未満、かつ直径2mm以上のハジキが存在しない
C: 直径2mm未満のハジキが10個/m2以上、直径2mm以上5mm未満のハジキが0個/m2超10個/m2未満、かつ直径5mm以上のハジキが存在しない
D: 直径2mm以上5mm未満のハジキが10個/m2以上、かつ直径5mm以上のハジキが存在しない
E: 直径5mm以上のハジキがある
【0140】
<塗装保持性評価方法>
評価試験体に、0.1kgf/cm2の条件で水温25℃の水を30分間、高さ30cmからシャワーリングし、2時間静置して乾燥させ、試験体表面を目視観察した。以下の評価指標において、AまたはBである場合に、塗装保持性が良好であると評価した。
A:はがれが全く見られない。
B:はがれが全く見られないが、わずかにクラックがみられる。
C:はがれが見られ、はがれの面積が5%未満
D:はがれが見られ、はがれの面積が5%以上30%未満
E:はがれが見られ、はがれの面積が30%以上
【0141】
<繰り返し塗装保持性評価方法>
評価試験体の表面に、0.1kgf/cm2の条件で水温25℃の水を30分間、高さ30cmからシャワーリングし、2時間静置して乾燥させる工程を10回繰り返したのちの試験体表面を目視観察した。以下の評価指標において、AまたはBである場合に、繰り返し塗装保持性が良好であると評価した。
A:はがれが全く見られない。
B:はがれが全く見られないが、わずかにクラックがみられる。
C:はがれが見られ、はがれの面積が5%未満
D:はがれが見られ、はがれの面積が5%以上30%未満
E:はがれが見られ、はがれの面積が30%以上
【0142】
<除去性評価方法>
評価試験体表面に、日本ペイント株式会社製のアクリルラッカースプレー(茶色)を30cm×20cmの面積に対し、コーティング層表面の上方30cmからスプレーした(乾燥前の状態で、塗布量は100g/m2)。2時間静置した後に、高圧洗浄機を使用して100バールのポンプ圧力で表面から10cmの距離で水を噴射してラッカーを除去し、除去の程度(アクリルラッカーの残存塗膜)を目視で評価した。以下の評価指標において、AまたはBである場合に、除去性が良好であると評価した。
A:残存塗膜が全くない。
B:残存塗膜が0%超5%以下
C:残存塗膜が5%超10%以下
D:残存塗膜が10%超30%未満
E:残存塗膜が30%以上
【0143】
<繰り返し除去性評価方法>
評価試験体表面に、日本ペイント株式会社製のアクリルラッカースプレー(茶色)を30cm×20cmの面積に対し、コーティング層表面の上方30cmからスプレーした(乾燥前の状態で、塗布量は100g/m2)。2時間静置した後に、高圧洗浄機を使用して100バールのポンプ圧力で表面から10cmの距離で水を噴射してラッカーを除去する工程を10回繰り返した。その後、上記アクリルラッカースプレーを評価試験体表面にスプレーし、高圧洗浄機を使用して100バールのポンプ圧力で表面から10cmの距離で水を噴射してラッカーを除去して、除去の程度(ラッカーの残存塗膜)を目視で評価した。以下の評価指標において、AまたはBである場合に、繰り返し除去性が良好であると評価した。
A:残存塗膜が全くない。
B:残存塗膜が0%超5%以下
C:残存塗膜が5%超10%以下
D:残存塗膜が10%超30%未満
E:残存塗膜が30%以上
【0144】
<平滑性評価方法>
評価試験体の表面を目視により観察した。以下の評価指標において、AまたはBである場合に、平滑性が良好であると評価した。
A:塗膜ムラがほとんど観察されない。
B:塗膜ムラが一部観察される。
C:塗膜ムラが多く観測される。
【0145】
<指触乾燥時間評価方法>
膜が形成された後、30分後、1時間後から7時間後まで1時間おき、および24時間後に指で膜に触れ、その指定の時間に膜が付着しないと感じたら、指触乾燥状態に達していると判断し、その時間を指触乾燥時間とする。
【0146】
<評価試験体の硬度評価方法>
JIS K 6249に準じて5mm厚シートの硬化物のショアA硬度を測定した。
【0147】
<実施例1>
(A)-(II)成分として、25℃における粘度5,240mPa・sであり、(N,N-ジノルマルブチルアミノトリエトキシ)ジエトキシシリル基を両末端に有する、直鎖状のポリジメチルシロキサンと、(B)成分として(N,N-ジノルマルブチルアミノトリエトキシ)トリエトキシシランの混合物に、(F)成分としてヒュームドシリカ充填剤を加えた。
なお、(A)-(II)成分はジメチルシロキシ単位数の異なる2つの成分の混合物であり、25℃における粘度が6,000mPa・sである成分と、2,000mPa・sである成分を53.0:40:9の質量割合で混合したものである。
さらに、(A)-(I)成分として粘度が100mPa・sである、両末端がトリメチルシリル基で封鎖された直鎖状のポリジメチルシロキサンを加え、25℃にて400分-1の攪拌速度で10分間撹拌した。
その後、(C)成分としてテトラエトキシシランと、(E)成分としてオリゴマーテトラエトキシシラン加水分解物と、(G)成分としてイソパラフィン系溶媒を加え、25℃にて400分-1の攪拌速度で5分間撹拌した。
最後に(D)成分として、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランを加え、混合物を25℃にて400分-1の攪拌速度で5分間撹拌した。その後、脱気のため、混合物を100hPaの圧力でさらに25分間撹拌し、実施例1に係る架橋性組成物を得た。
【0148】
ここでヒュームドシリカ充填剤は、Wacker Chemie AG社からHDK(登録商標)H2000として市販されている、カーボン含有量が2.3~3.2重量%(DIN ISO10694に準拠)、タップ密度が100~250g/l(DIN EN ISO787011に準拠)であるトリメチルシロキシ基で表面改質されたヒュームドシリカであり、表面処理前のヒュームドシリカのBET表面積が190~210m2/gである。
オリゴマーテトラエトキシシラン加水分解物はWacker Chemie AG社からWACKER(登録商標)TES40として市販されており、20℃ (DIN51757)の密度が1.06~1.07g/cm3、引火点(DIN51755)が62℃、SiO2含量が約41%である。
イソパラフィン系溶媒は、ExxonMobil Chemical社からISOPAR(登録商標)Mとして市販されている有機溶剤である。
【0149】
得られた架橋性組成物は、粘度が3200mPa・sと低粘度であり作業性が良好であり、硬化後に得られたコーティング層は良好な平滑性を示した。
塗装性、繰り返し塗装性も極めて良好な結果であった。繰り返し塗装保持性も良好であり、除去性と繰り返し除去性も極めて良好であった。コーティング層のショアA硬度は52であり、十分な硬度を有していた。
【0150】
<実施例2>
(E)成分であるオリゴマーテトラエトキシシラン加水分解物を配合しないこと以外は実施例1と同様にして、実施例2に係る架橋性組成物を得た。
【0151】
得られた架橋性組成物の粘度は、実施例1と比較するとやや高くなったが、硬化後に得られたコーティング層は良好な平滑性を示した。コーティング層のショアA硬度は実施例1よりは低下したが、十分な硬度を有する範囲であった。
【0152】
<実施例3>
(C)成分としてテトラエトキシシランに代えて、メチルトリエトキシシランを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3に係る架橋性組成物を得た。
【0153】
評価結果は実施例1とほぼ同等であったが、コーティング層のショアA硬度は実施例1よりも低下した。
【0154】
<実施例4>
(C)成分としてテトラエトキシシランに代えて、テトラメトキシシランを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例4に係る架橋性組成物を得た。
【0155】
評価結果は実施例1と同等に良好であった。
【0156】
<実施例5>
(C)成分としてテトラエトキシシランに代えて、メチルトリメトキシシランを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例5に係る架橋性組成物を得た。
【0157】
評価結果は実施例1とほぼ同等であったが、コーティング層のショアA硬度は実施例1よりも低下した。
実施例1、3、5より、(C)成分として、ケイ素原子に結合するアルコキシ基を4つ有する成分(4官能性シラン)を配合するほうが、ケイ素原子に結合するアルコキシ基を3つ有する成分(3官能性シラン)を有する成分を配合するよりもコーティング層の硬度が上昇することが確認された。
【0158】
<実施例6>
(C)成分としてテトラエトキシシランを実施例1の約半分量とし、(E)成分としてメチルトリメトキシシランのオリゴマーであるWacker Chemie AG社製SILRES MSE 100をさらに加えた以外は実施例1と同様にして、実施例6に係る架橋性組成物を得た。
【0159】
塗装性、繰り返し塗装性、および塗装保持性は実施例1と比較するとやや劣る結果となった。これはSILRES MSE 100と組成物中の他の成分との相溶性が低いことに起因すると考えられる。一方で、除去性、繰り返し除去性は実施例1と同等の良好な結果が得られた。
【0160】
<実施例7>
(D)成分として、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランに代えて、アミノプロピルトリメトキシシランを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例7に係る架橋性組成物を得た。
【0161】
架橋性組成物の粘度がやや上昇した以外は、実施例1と同等の良好な結果が得られた。
【0162】
<実施例8>
(C)成分としてテトラエトキシシランに代えてフェニルトリエトキシシランを配合した以外は実施例1と同様にして、実施例8に係る架橋性組成物を得た。
【0163】
除去性および繰り返し除去性がやや低下したが許容範囲内であった。
【0164】
<比較例1>
(C)成分および(E)成分に相当する成分を配合しない以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る架橋性組成物を得た。
【0165】
(C)成分を含まないため、架橋性組成物の粘度が高く、作業性が悪い上、得られたコーティング層にムラが多く観察され、平滑性が悪い結果となった。
塗装性は非常に悪く、これは(A)-(I)成分が多く表面にブリードすることにより塗料がはじかれてしまうためと考えられる。10回塗装除去後には、繰り返し塗装性は若干改善されたものの、不十分な結果であった。表面の(A)-(I)成分が複数回の塗装除去により減少し、初期よりは塗装性が改善したものの、不十分な結果となったと考えられる。
塗装保持性と、繰り返し塗装保持性も劣る結果となった。コーティング層の硬度も不十分であった。
一方で、除去性と繰り返し除去性は良好であった。
【0166】
<比較例2>
(C)成分に相当する成分を配合せず、(E)成分は配合した以外は実施例1と同様にして、比較例2に係る架橋性組成物を得た。
【0167】
作業性、塗装性、繰り返し塗装性、塗装保持性、繰り返し塗装保持性、コーティング層の硬度は、比較例1と比較すればやや改善した。これは(E)成分を配合したことによる効果と考えられる。しかしこれらの評価結果はいずれも不十分なものであった。
【0168】
<比較例3>
(C)成分に相当する成分を配合せず、(E)成分はオリゴマーテトラエトキシシラン加水分解物に代えてメチルトリメトキシシランのオリゴマーWacker Chemie AG社製SILRES MSE 100を配合した以外は実施例1と同様にして、比較例3に係る架橋性組成物を得た。
【0169】
架橋性組成物の粘度が高く、得られるコーティング層の平滑性が悪い結果となった。また、除去性、繰り返し除去性に劣る結果となった。
【0170】
<比較例4>
(C)成分としてテトラエトキシシランに代えてイソオクチルトリエトキシシランを配合した以外は実施例1と同様にして、比較例4に係る架橋性組成物を得た。
【0171】
得られたコーティング層は非常に柔らかく、硬度が不足しており、塗装保持性がやや低下した。イソオクチルトリエトキシシランの有機基(イソオクチル基)が嵩高いため、立体障害となり架橋密度が低下したためと推定される。
【0172】
実施例1~8および比較例1~4において、指触乾燥時間はいずれも2時間以上3時間以下であった。
また、実施例1~7において、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン(D7)、およびヘキサデカメチルシクロオクタシロキサン(D8)のそれぞれの含有量合計は、架橋性組成物全体を100質量部としたときに、0.3質量部未満であった。
【0173】
【0174】
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下の記載には限定されない。各付記は、特許請求の範囲に記載の各請求項と組み合わせることもできる。
【0175】
(付記1)
(A)-(I)成分:分子鎖末端がトリオルガノシリル基で封鎖された直鎖状または分岐状構造のジオルガノポリシロキサンと、
(A)-(II)成分:分子1つにつき少なくとも2つの(R2R3NCH2)基および少なくとも4つの(OR4)基を有する直鎖状または分岐状構造のジオルガノポリシロキサンと、
(R2は、水素原子、または、任意で置換された、1個以上6個以下の炭素原子を有する一価の直鎖状または分岐状炭化水素基を表し、
R3は、任意で置換された、1個以上~6個以下の炭素原子を有する一価の直鎖状または分岐状炭化水素基、または5個もしくは6個の炭素原子を有する環状飽和炭化水素基、またはフェニル基を表し、
R4は、同じでも異なってもよく、任意で置換された一価の炭化水素基を表す)
(B)成分:下記式(1)で表されるシランおよび/またはその部分加水分解物と、
(R2R3NCH2)Si(OR4)3 (1)
(C)成分:下記式(2)で表されるアルコキシシランと、
R21
4-xSi(OR22)x (2)
(式中、R21は、同じでも異なってもよく、任意で置換された、1個以上6個以下の炭素原子を有する一価の炭化水素基を表し、
R22は、同じでも異なってもよく、任意で置換された、1個以上5個以下の炭素原子を有する一価の炭化水素基を表し、xは、2、3、または4を表す)
(D)成分:下記式(3)で表される単位を含む有機ケイ素化合物であって、分子1つにつき少なくとも1つの基Dが存在し、少なくとも1つの基DがNH2基を有する、有機ケイ素化合物と、
DfSi(OR32)eR31
dO(4-d-e-f)/2 (3)
(式中、R31は、同じでも異なってもよく、任意で置換された、窒素を含まない一価のSiC結合有機基を表し、
R32は、同じでも異なってもよく、水素原子、または任意で置換された炭化水素基を表し、
Dは、同じでも異なってもよく、カルボニル基(C=O)に結合していない少なくとも1個の窒素原子を有する一価のSiC結合基を表し、
dは、0または1であり、eは、0、1、2、または3であり、fは、0または1であり、d+e+fの和が4以下である)
を含む、架橋性組成物。
【0176】
(付記2)
(E)成分:下記式(4)で表される単位を2単位以上30単位以下有し、分子1つにつき式(4)のbが0以外である少なくとも1つの単位が存在する、オルガノシロキサン:
R6
a(R7O)bSiO(4-a-b)/2 (4)
(式中、R6は、同じでも異なってもよく、任意でハロゲン原子で置換された一価のSiC結合炭化水素基、またはSi結合ハロゲン原子を表し、
R7は、同じでも異なってもよく、任意で置換された一価の炭化水素基を表し、
aは、0または1であり、
bは、0、1、2、または3であり、
a+bの和が<4である)、
をさらに含む、付記1に記載の架橋性組成物。
【0177】
(付記3)
前記(C)成分において、基R22がエトキシ基である、付記1または付記2に記載の架橋性組成物。
【0178】
(付記4)
前記(A)-(II)成分の基(R2R3NCH2)が、N,N-ジメチルアミノメチル基、N,N-ジエチルアミノメチル基、N,N-ジ-n-プロピルアミノメチル基、およびN,N-ジ-nーブチルアミノメチル基からなる群から選択される一つであることを特徴とする、付記1ないし付記3のいずれか1つに記載の架橋性組成物。
【0179】
(付記5)
(F)成分:充填剤をさらに含む、付記1ないし付記4のいずれか1つに記載の架橋性組成物。
【0180】
(付記6)
前記(A)-(I)成分と前記(A)-(II)成分の合計量を100質量部とした場合に、
前記(B)成分を5質量部以上20質量部以下と、
前記(C)成分を10質量部以上200質量部以下と、
前記(D)成分0.1質量部以上2質量部以下と、
任意で前記(E)成分を0質量部以上40質量部以下と、
任意で前記(F)成分を0質量部以上30質量部以下と、
任意で(G)有機溶剤を0質量部以上40質量部以下と、
を含む、付記1ないし付記5のいずれか1つに記載の架橋性組成物。
【0181】
(付記7)
付記1ないし付記6のいずれか1つに記載の架橋性組成物からなる一液型の湿気硬化性コーティング剤。
【0182】
(付記8)
前記(A)-(II)成分と、前記(B)成分との混合物に、前記(A)-(I)成分を配合する第1混合工程と、
前記第1混合工程で得られた混合物に前記(C)成分を配合する第2混合工程と、
前記第2混合工程で得られた混合物に前記(D)成分を配合する第3混合工程と、を含む、
付記1ないし付記6のいずれか1つに記載の架橋性組成物の製造方法。
【0183】
(付記9)
付記1ないし付記6のいずれか1つに記載の架橋性組成物を基材に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程で塗布された架橋性組成物を湿気硬化させる硬化工程を含む、コーティング層の製造方法。
【0184】
(付記10)
前記架橋性組成物が、1m2の基材表面積あたり50g以上400g以下の量で使用されることを特徴とする、付記9に記載の方法。
【0185】
(付記11)
付記1ないし付記6のいずれか1つに記載の架橋性組成物の硬化物であるコーティング層を修復する方法であって、前記コーティング層表面に、付記1ないし付記6のいずれか1項に記載の架橋性組成物を上塗りする方法。
【0186】
(付記12)
前記基材がセメント系材料、石膏ボード、アスファルト、木材、金属、金属酸化物、樹脂、タイル、ガラス、天然石、人工石、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される1つである、付記9または付記10のいずれか1つに記載の方法。
【0187】
(付記13)
前記(A)-(I)成分、前記(A)-(II)成分と、前記(B)成分と、前記(C)成分と、前記(D)成分とを含む架橋性組成物であって、
前記(A)-(I)成分と前記(A)-(II)成分との合計量を100質量部とした場合に、前記(C)成分を10質量部以上200質量部以下配合することにより、前記架橋性組成物の硬化物の繰り返し塗装性と硬度を向上させるものであることを特徴とする、架橋性組成物。
【0188】
(付記14)
基材と、付記1ないし付記6のいずれか1つに記載の架橋性組成物を硬化させてなるコーティング層と、を含む、積層体。