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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121798
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】油中水型固形乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20240830BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20240830BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240830BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20240830BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20240830BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20240830BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240830BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20240830BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20240830BHJP
   A61Q 1/06 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/06
A61K8/86
A61K8/39
A61K8/63
A61K8/92
A61K8/81
A61Q1/12
A61Q1/10
A61Q1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024019701
(22)【出願日】2024-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2023028028
(32)【優先日】2023-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】595137022
【氏名又は名称】東色ピグメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】津幡 和昌
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA081
4C083AA082
4C083AA121
4C083AA122
4C083AA162
4C083AB051
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC302
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC391
4C083AC392
4C083AC401
4C083AC402
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC431
4C083AC432
4C083AD021
4C083AD262
4C083AD491
4C083AD662
4C083BB12
4C083BB13
4C083CC03
4C083CC12
4C083CC13
4C083CC14
4C083DD32
4C083EE01
4C083EE03
4C083EE06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】使用感の良い、油中水型固形乳化化粧料の提供。
【解決手段】(A)25℃でペースト状の化合物、
(B)ジポリヒドロキシステアリン酸PEG-30、PEG-5水添ヒマシ油、PEG-10水添ヒマシ油、PEG-20水添ヒマシ油、PEG-30水添ヒマシ油、PEG-40水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油及びそれらの混合物から選ばれる化合物、
(C)融点65℃以上である固形状油分、
(D)25℃における粘度が40mPa・s以下の低粘度液状油分、
(E)水、
を含有し、実質的にシリコーン化合物を含まない、油中水型固形乳化化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)25℃でペースト状の化合物(以下「成分(A)」という)、
(B)ジポリヒドロキシステアリン酸PEG-30、PEG-5水添ヒマシ油、PEG-10水添ヒマシ油、PEG-20水添ヒマシ油、PEG-30水添ヒマシ油、PEG-40水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油、及びそれらの2またはより多くの組み合わせから選ばれる化合物(以下「成分(B)」という)、
(C)融点65℃以上である固形状油分(以下「成分(C)」という)、
(D)25℃における粘度が40mPa・s以下の低粘度液状油分(以下「成分(D)」という)、
(E)水(以下「成分(E)」という)、
を含有し、実質的にシリコーン化合物を含まない、油中水型固形乳化化粧料。
【請求項2】
成分(B)が、ジポリヒドロキシステアリン酸PEG-30(B1)と、PEG-5水添ヒマシ油、PEG-10水添ヒマシ油、PEG-20水添ヒマシ油、PEG-30水添ヒマシ油、PEG-40水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油から選ばれる1種(B2)の組み合わせであり、(B1)の含有量と(B2)の含有量の質量比である(B1)/(B2)が1~5の範囲である、請求項1記載の油中水型固形乳化化粧料。
【請求項3】
成分(A)が、イソステアリン酸水添ヒマシ油、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ビスジグリセリルポリアシルアジペート-2、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1記載の油中水型固形乳化化粧料。
【請求項4】
成分(C)が、ヒマワリ種子ロウ、合成ワックス、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、コメヌカロウ、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレン、(エチレン/プロピレン)コポリマー、固形パラフィン、モクロウ、オゾケライト、セレシン、水添硬化油から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1記載の油中水型固形乳化化粧料。
【請求項5】
成分(D)が、パルミチン酸エチルヘキシル、トリエチルヘキサノイン、ドデカン、イソドデカン、イソヘキサデカンから選ばれる1種又は2種以上である、請求項1記載の油中水型固形乳化化粧料。
【請求項6】
成分(B)の含有量と成分(E)の含有量の質量比(B)/(E)が0.01~0.5である、請求項1記載の油中水型固形乳化化粧料。
【請求項7】
化粧料はファンデーション、アイシャドー、アイライナー、マスカラ、コンシーラー、リップスティック、バームおよび化粧下地から選ばれる、請求項1記載の油中水型固形乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水型固形乳化化粧料、例えばファンデーション、アイシャドー、アイライナー、マスカラ、コンシーラー、リップスティック、バーム等の油中水型固形乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油性化粧料の塗布時の使用感(べたつき感、伸びの重さ)や塗布後の感触(べたつき感、皮膜感)を軽減するために、揮発性シリコーン油剤やシリコーン系乳化剤等が配合された油中水型乳化化粧料が開発されてきた。
【0003】
特許文献1には、モノイソステアリン酸グリセリン、液状油分であるデカメチルシクロペンタシロキサン、固形油分を含有する、油中水型乳化メーキャップ化粧料が開示されている。
【0004】
特許文献2には、ジポリヒドロキシステアリン酸PEG-30、半固形状のエステル油としてダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/べヘニル)、ジグリセリン及び水を含有する油中水型乳化組成物が開示されている。
【0005】
特許文献3には、(エチレン/プロピレン)コポリマー、ジポリヒドロキシステアリン酸PEG-30を含有する皮膚外用組成物が記載されている。
【0006】
上記特許文献1~3に記載の化粧料および組成物には、べたつきがなく良好な伸び広がり等の使用感を得るためや粉末成分の分散性向上のため、シリコーン化合物を配合することができる。しかしながら近年、シリコーン化合物が生分解性を有さないため長期間の使用による蓄積が問題となっている。
【0007】
特許文献4には、シリコーンを含まない油中水型乳化日焼け止め化粧料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010-132619号公報
【特許文献2】特開2019-108286号公報
【特許文献3】特開2022-53332号公報
【特許文献4】国際公開第2022/092128号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、実質的にシリコーンを含有せずに、塗布時のべたつき感や伸びの重さ、塗布後のべたつき感や皮膜感が軽減された油中水型固形化化粧料を提供することを課題とする。また本発明の別の課題は、製造過程での取り扱い性や、製造後の製品の安定性にも優れた油中水型固形化化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(A)25℃でペースト状の化合物(以下「成分(A)」という)、
(B)ジポリヒドロキシステアリン酸PEG-30、PEG-5水添ヒマシ油、PEG-10水添ヒマシ油、PEG-20水添ヒマシ油、PEG-30水添ヒマシ油、PEG-40水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油、及びそれらの混合物から選ばれる化合物(以下「成分(B)」という)、
(C)融点65℃以上である固形状油分(以下「成分(C)」という)、
(D)25℃における粘度が40mPa・s以下の低粘度液状油分(以下「成分(D)」という)、
(E)水(以下「成分(E)」という)、
を含有し、実質的にシリコーン化合物を含まない、油中水型固形乳化化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の油中水型固形乳化化粧料は、実質的にシリコーンを含有せずに、塗布時のべたつき感や伸びの重さ、さらに塗布後のべたつき感や皮膜感が軽減されており、良好な使用感を得ることができる。また製造過程での取り扱い性が良好であり、製造後の製品の安定性にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<油中水型固形乳化化粧料>
本発明の油中水型固形乳化化粧料(以下、「本発明の化粧料」という。)は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、および成分(D)を含む油相と、成分(E)を含む水相と、及び必要に応じて任意選択的に(F)セルロース(以下「成分(F)」という)を含む粉体相等、並びにその他の化粧品成分から構成されることができる。
【0013】
本発明の化粧料で用いる成分(A)の化合物は、25℃でペースト状である。25℃でペースト状の化合物としては、25℃における粘度が、1,000mPa・s超、100,000mPa・s以下のものが好ましく、5,000mPa・s超、50,000mPa・s以下のものがより好ましい。ここでの粘度は、粘弾性測定装置(レオメーター)にて、25℃、せん断速度10(1/s)で測定した時の粘度である。
【0014】
成分(A)の化合物としては、イソステアリン酸水添ヒマシ油、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ビスジグリセリルポリアシルアジペート-2、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)から選ばれる1種又は2種以上を使用することができる。
【0015】
成分(A)としては、使用感及び経日安定性の観点から、ビスジグリセリルポリアシルアジペート-2、イソステアリン酸水添ヒマシ油が好ましく、ビスジグリセリルポリアシルアジペート-2が好ましい。
【0016】
また、本発明の化粧料は、粉体相等の分散性の観点から、成分(A)として、ビスジグリセリルポリアシルアジペート-2とイソステアリン酸水添ヒマシ油とを併用するのが好ましい。
【0017】
成分(A)の含有量は、本発明の化粧料全量中、4~15質量%が好ましく、6~13質量%がより好ましい。
【0018】
本発明の化粧料で用いる成分(B)の化合物は、ジポリヒドロキシステアリン酸PEG-30、PEG-5水添ヒマシ油、PEG-10水添ヒマシ油、PEG-20水添ヒマシ油、PEG-30水添ヒマシ油、PEG-40水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油、及びそれらの2またはより多くの組み合わせから選ばれる化合物である。これらの化合物の組み合わせを用いる場合は、化粧料の製造時に混合物として使用することができる。
【0019】
成分(B)としては、使用感の観点からPEG-20水添ヒマシ油がより好ましい。
【0020】
成分(B)は、ジポリヒドロキシステアリン酸PEG-30(以下、成分(B1))と、PEG-5水添ヒマシ油、PEG-10水添ヒマシ油、PEG-20水添ヒマシ油、PEG-30水添ヒマシ油、PEG-40水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油(以下、成分(B2))から選ばれる1種以上との組み合わせであることが、製造過程での取り扱い性や、製造後の製品の経日安定性と使用感の観点から好ましい。
【0021】
成分(B)が、成分(B1)と成分(B2)の組み合わせである場合、両者の質量比(B1)/(B2)は1~5の範囲が好ましく、1~3の範囲がより好ましい。
【0022】
成分(B)の含有量は、本発明の化粧料全量中、0.5~10質量%が好ましく、1~8質量%がより好ましく、1.5~6質量%がさらに好ましい。
【0023】
本発明の化粧料で用いる成分(C)は、融点が65℃以上である固形状油である。
【0024】
成分(C)としては、植物由来のロウエステル、及び炭化水素系ワックスが好ましく、具体的には、ヒマワリ種子ロウ、合成ワックス、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、コメヌカロウ、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレン、(エチレン/プロピレン)コポリマー、固形パラフィン、モクロウ、オゾケライト、セレシン、水添硬化油などの固形ワックス、から選ばれる1種又は2種以上を使用することができる。
【0025】
成分(C)としては、使用感及び経日安定性の観点から、ヒマワリ種子ロウ、合成ワックス、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、コメヌカロウ、マイクロクリスタリンワックス、(エチレン/プロピレン)コポリマーから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0026】
合成ワックスとは、日本化粧品工業連合会が作成する「化粧品の成分表示名リスト」に収載されている、「フィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)法又はエチレン重合法で得られる炭化水素系ワックス」をいう。
【0027】
成分(C)の含有量は、本発明の化粧料全量中、5~20質量%が好ましく、8~15質量%がより好ましい。
【0028】
本発明の化粧料で用いられる成分(D)は、25℃における粘度が40mPa・s以下の低粘度液状油であり、粘度が15mPa・s以下の低粘度液状油が好ましい。粘度は例えば、動粘度を測定してから換算されてよく、一般的な動粘度の測定方法であれば特に限定されないが、ISO 23581:2020「石油製品及び関連製品―動粘度の測定―スタビンガー型粘度計による方法」、ISO 12185:1996「原油及び石油製品-密度の測定-振動U管法」等の測定方法が好適である。
【0029】
成分(D)としては、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸イソアミル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソステアリル、イソノナン酸エチルヘキシル、イソステアリン酸イソブチル、エチルヘキサン酸セチル、ネオペンタン酸イソステアリル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸トリシクロデカンメチル、ホホバ油、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジイソノナン酸ネオペンチルグリコール、ネオペンタン酸イソステアリル、コハク酸ビスエトキシジグリコール、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジエチルヘキシル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリエチルヘキサノイン、ミネラルオイル、スクワラン、ドデカン、イソドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、イソヘキサデカン、から選ばれる1種又は2種以上を使用することができる。
【0030】
成分(D)としては、使用感(伸びの軽さ)及び経日安定性(硬度)の観点から、パルミチン酸エチルヘキシル、トリエチルヘキサノイン、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、ドデカン、イソドデカン、イソヘキサデカンから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0031】
さらに、成分(D)としては、使用感(伸びの軽さ)の観点から、パルミチン酸エチルヘキシルとトリエチルヘキサノインの組み合わせがより好ましい。
【0032】
さらに、成分(D)としては、使用感(伸びの軽さ)及び経日安定性(硬度)の観点から、トリエチルヘキサノインと、ドデカン、イソドデカン、イソヘキサデカンから選ばれる1種以上との組み合わせがより好ましい。
【0033】
成分(D)の含有量は、本発明の化粧料全量中、20~50質量%であってよく、30~45質量%が好ましく、32~42質量%がより好ましい。
【0034】
本発明の化粧料は、成分(B)を除く油分の配合量として、成分(A)、成分(C)及び成分(D)の合計含有量は、23~70質量%が好ましく、40~60質量%がより好ましい。前記範囲内で、安定に乳化でき、さらに十分な使用感(瑞々しさ、伸びの軽さ)を得ることができる。
【0035】
本発明の化粧料で用いる成分(E)の水は、衛生上の観点から精製水が好ましい。成分(E)の含有量は、本発明の化粧料全量中、10~70質量%が好ましく、20~50質量%がより好ましい。
【0036】
また、成分(E)は、前記化粧料中の成分(B)の含有量と成分(E)の含有量の質量比(B)/(E)が0.01~0.5の範囲であってよく、0.02~0.4の範囲であることが好ましく、0.07~0.3の範囲であることがより好ましい。前記範囲内で、製造過程での取り扱い性を良好にでき、また製品の使用感及び経日安定性に優れる。
【0037】
本発明の化粧料は、さらに、任意選択的に成分(F)のセルロースを含有することができる。
【0038】
成分(F)としては、球状セルロースが好ましく、球状セルロースの平均粒径は1~150μmであるのが好ましく、5~50μmがより好ましい。
【0039】
球状セルロースとしては、セルロースそのものを用いることもでき、またアセチルセルロース等のセルロース誘導体を用いることもできる。例えば、「GE-800」(東色ピグメント株式会社製)を使用することができる。
【0040】
また、必要に応じて疎水化処理剤を用いて表面処理した、疎水化球状セルロースを使用することもできる。必要に応じて用いられる疎水化処理剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸やステアロイルグルタミン酸ジナトリウム等のアミノ酸等が挙げられる。シリコーン化合物で表面処理したシリコーン処理球状セルロースは、成分(F)に含まれない。
【0041】
成分(F)の含有量は、本発明の化粧料全量中、1~20質量%が好ましく、1.5~15質量%がより好ましい。
【0042】
本発明の化粧料は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、成分(E)、及び必要に応じて成分(F)、並びにその他の化粧料成分を含む残部成分との合計が100質量%である。
【0043】
「その他の化粧料成分を含む残部成分」とは、発明の効果の発現には関与しないが、油中水型固形乳化化粧料を成形したり、化粧料としての機能(例えば、着色剤による着色効果)を発現したりするための成分である。
【0044】
本発明の化粧料は、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量の質量比(A)/(B)が0.6~10の範囲にあることが好ましく、1.2~10の範囲にあることがより好ましく、1.5~8の範囲にあることが更に好ましい。
【0045】
本発明の化粧料は、前記化粧料中の成分(A)、成分(B)、成分(C)、および成分(D)の合計含有量と、前記化粧料中の成分(B)の含有量との質量比、(B)/〔(A)+(B)+(C)+(D)〕が、0.016~0.2であることが好ましく、0.02~0.15であることがより好ましい。
【0046】
<その他の成分>
本発明の化粧料は、その他の化粧料成分として以下の化粧料成分を含有していてもよい。
ベへニルアルコール、オクチルドデカノールなどの高級アルコール;
パルミチン酸デキストリンなどの多糖脂肪酸エステル;
ステアリン酸ポリグリセリル-10などのポリグリセリン脂肪酸エステル;
d-δトコフェロールなどの抗酸化剤;
ロジンペンタエリスリトットエステル、ジイソオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリイソオクタン酸グリセリン、モノラウリン酸プロピレングリコール、ペンタイソステアリン酸ポリグリセリル-10など;
溶剤として、エタノール、イソプロパノール、多価アルコール、水溶性高分子、ベントナイト、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブタノール;
保湿剤として、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビット、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ジグリセリン、マンニトール、POEメチルグリコシド、生体高分子、蔗糖など;
エチルヘキサン酸セチルなどのエモリエント成分;
クインスシード、ペクチン、セルロース誘導体、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ソアギーナ、カルボキシビニルポリマー;
モノオレイン酸ソルビタン、トリイソオクタン酸グリセリン、オクチルメトキシシンナメート、モノオレイン酸POEソルビタン、イソステアリン酸、ステアリン酸、クエン酸アセチルトリブチル、ジ安息香酸トリメチルペンタンジイル、ステアラルコニウムベントナイト;
増粘剤、防腐剤、乳化剤、安定化剤、可塑剤;
陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤、蛋白質系界面活性剤;
薬効成分、ビタミンCジパルミテート、ビタミン類、アミノ酸、美白剤、殺菌剤;
タルク、カオリン、マイカ、セリサイト、アルミナ、シリカ、ガラスフレーク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸、硫酸バリウムなどの体質顔料、パール顔料;
pH調整剤、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、金属イオン封止剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、
紫外線吸収剤、抗酸化剤、香料、防腐剤、キレート剤、酸化防止剤、分散剤、褐色防止剤、緩衝剤、沈殿防止成分、有機変性粘土鉱物、使用性改質剤;
粉体相として、ベンガラ(酸化鉄)、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、酸化クロムなどの金属酸化物;
(HDI/トリメチロールヘキシルラクトン)クロスポリマー;
オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、酸化鉄コーティング雲母、酸化鉄雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン、アルミニウムパウダー、パール顔料などの光輝性粉体類。
なお、本発明の化粧料は、上記したその他の成分の製造原料にシリコーンを含有するものは使用されず、上記したその他の粉末成分においてもシリコーンで処理した粉末成分は使用されない。
【0047】
本発明の化粧料は、実質的にシリコーン化合物を含まない。「実質的にシリコーン化合物を含まない」とは、本発明の化粧料にシリコーン化合物が意図的に添加されていないことをいう。ただし、上記した成分(A)~成分(F)、任意成分を含む化粧料成分の製造工程においてシリコーン化合物が微量に混入される可能性を排除できないこと、また場合により各成分中に微量のシリコーン化合物が配合成分として含有されている可能性を排除できないことから、本発明の化粧料には、好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下のシリコーン化合物(ケイ素含有量として)を含有するものも含まれる。
【0048】
シリコーン化合物の含有量の測定には、公知の測定方法を用いることができる。例えば、「原子吸光法による食品中のジメチルポリシロキサンの定量法について」(西島基弘等著、食衛誌,Vol.16,No.2,p.110~115)や、「原子吸光法による汚でい中のシリコーン油の分析」(槌谷祐一等著、分析化学,V0l.27 (1978),No.6,p.343~346)の記載に基づき、シリコーン化合物中のケイ素含有量を測定することができる。
【0049】
本発明の油中水型固形乳化化粧料は、例えば下記第1工程から第4工程を含む製造方法により製造することができる。
第1工程:成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)を含む油相を溶融混練する工程
第2工程:前記第1工程で得られた混練物に、必要であれば任意選択的成分(F)を含む粉体相を添加して分散または混練させる工程、
第3工程:前記第2工程で得られた分散物または混練物に、加熱した成分(E)である水を添加して乳化させる工程、
第4工程:前記第3工程で得られた乳化物を必要に応じて脱泡した後、容器に充填又は成型する工程
【0050】
第1工程では、成分(A)と、成分(B)、成分(C)、成分(D)を含む油相成分を80~100℃に加温してパドルミキサー等を用いて溶融して、混練物を得ることができる。
【0051】
前記油相は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)以外に、任意の化粧料成分(油相)のうち液体、ゲル状、固体状のものを含んでいてよい。
【0052】
第2工程は、第1工程で得られた混練物を、例えば80~100℃に加温したまま行う。溶融状態の前記混練物に、必要に応じて成分(F)及び任意の粉体状の化粧料成分を含む粉体相を添加して、三本ローラー等を用いて均一混合して、油相に粉体相が分散した、溶融状態の分散物または混練物を得る。
【0053】
第3工程では、第2工程で得られた分散物または混練物に、例えば80~100℃に加熱した成分(E)である水を添加してホモジナイザー等で分散させて、油中水型固形乳化化粧料組成物を得る。この工程で任意成分を添加してよい。
【0054】
第4工程では、第3工程で得た組成物を、例えば80~100℃に加熱して、真空脱泡機を用いて攪拌しながら脱泡した後、容器に充填又は成型して、本発明の油中水型固形乳化化粧料を得る。
【0055】
本発明の化粧料は、実質的にシリコーン化合物を含まないため、前記製造工程の途中、例えば、第1工程の途中又は直後、第2工程の途中又は直後、第3工程の途中又は直後で冷やしても、相分離することがない。特に、成分(E)である水を加えた第3工程の途中又は直後で冷やしても、再乳化しやすい。
【0056】
本発明の化粧料は、化粧料の種類にもよるが、前記の製造方法において、成分(F)、法定色素や体質顔料など、その他の成分からなる粉体相の含有量が、前記化粧料中1~30質量%であることが好ましく、3~20質量%であることがより好ましい。残部は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)を含む油相及び成分(E)を含む水相の含有量となる。
【実施例0057】
<使用成分>
成分(A)
・イソステアリン酸水添ヒマシ油:製品名「キャストライドMIS-P」(25℃でペースト状)、ナショナル美松社製
・ビスジグリセリルポリアシルアジペート-2:製品名「ソフチザン649」(25℃でペースト状)、IOI Oleo GmbH社製
成分(B)
・ジポリヒドロキシステアリン酸PEG-30:製品名「CITHROL DPHS」、CRODA社製
・PEG-20水添ヒマシ油:製品名「NIKKOL HCO-20」、日光ケミカルズ社製
成分(C)
・合成ワックス:製品名「PERFORMA SW-88 Synthetic Wax」、NuCera Solutions社製
・ミツロウ:製品名「ミツロウ」、三木化学工業(株)社製
・ヒマワリ種子ロウ:製品名「精製ヒマワリワックス」、横関油脂工業(株)社製
成分(D)
・トリエチルヘキサノイン:製品名「トリファット S-308」、日本サーファクタント工業(株)社製
・パルミチン酸エチルヘキシル:製品名「IOP」、日光ケミカルズ社製
・ドデカン:製品名「PARAFOL 12-97」、SASOL Germany GmbH社製
成分(F)
・セルロース(球状):「GE-800」、東色ピグメント株式会社
【0058】
比較成分(B’)
・トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル:製品名「NIKKOL TGI-20」、日本サーファクタント工業(株)社製
・PEG-100水添ヒマシ油:製品名NIKKOL HCO-100、日光ケミカルズ社製
【0059】
実施例、比較例の油中水型固形乳化化粧料は、下記の方法により調製した。
表1および表2に示す、成分(A)~(D)を含む油相を、90~100℃下でパドルミキサーを用いて溶融混練した(第1工程)。
溶融した油相に、成分(F)を含む粉体相を添加し、三本ローラーで3回混練して混練物を得た(第2工程)。前記混練物を90℃前後に昇温後、90~100℃下の成分(E)と混合し、さらに表に示す任意成分と混合して、実施例及び比較例の油中水型固形乳化化粧料組成物を得た(第3工程)。
得られた化粧料組成物を、真空脱泡機を用いて攪拌しながら脱泡した後、所定の容器に充填して、油中水型固形乳化化粧料を得た。前記化粧料を用いて下記項目を評価し、その結果を表1および表2に併せて示す。
【0060】
<化粧料の評価方法>
・成型性
実施例及び比較例で得られた化粧料組成物を約90℃で溶融し、所定の棒状化粧料用成型型(内径12mm×長さ44mm、4.0g容量)に充填して、-20℃下に5分間静置させ、固化した。固化した棒状化粧料を所定の容器に装填し、室温で静置6時間後の化粧料の外観を目視観察し、下記基準により成型性を評価した。
【0061】
○:成型型から容易に取り出すことができ、また所定の容器に装填でき、化粧料表面が均一であることが確認できた。
△:成型型から取り出すことができ、また所定の容器に装填できたが、化粧料表面に、型から取り出した際に擦れた傷が確認できた。
×:固化が不完全であり、成型型から取り出せなかった。
【0062】
・再溶融時の分散安定性・乳化安定性
第3工程後の、油中水型固形乳化化粧料組成物を、室温(約25℃)に6時間以上静置して、冷却した。前記化粧料組成物が完全固化したことを確認後、固化した前記化粧料組成物をプロペラミキサーで攪拌(30rpm)しながら約90℃で再溶融状態にして、下記基準により評価した
【0063】
○:沈殿や凝集物がなく、均一に分散されていた。
△:一部沈殿や凝集物が見られ、やや不均一に分散されていた
×:沈殿が見られた。
【0064】
・使用性(伸びの軽さ)
実施例及び比較例の化粧料を、化粧品評価の女性パネラー5名が日常の使用方法で肌に塗布し、下記の基準で評価した。評価結果は、最も評価の多かったものとした。
【0065】
○:塗布時の伸びが軽く、良好な感触が得られた。
△:塗布時の伸びがやや軽く、やや良好な感触が得られた。
×:塗布時の伸びが重く、良好な感触が得られなかった。
【0066】
・使用感(瑞々しさ)
実施例及び比較例の化粧料を、化粧品評価の女性パネラー5名が日常の使用方法で肌に塗布し、使用感(瑞々しさ)を下記の基準で評価した。
【0067】
○:5名中、全員が瑞々しいと評価した。
△:5名中、2~4名が瑞々しいと評価した。
×:5名中、1名以下が瑞々しいと評価した。
【0068】
・化粧料の経日安定性(外観)
実施例及び比較例で得られた化粧料組成物を約90℃で溶融し、所定の棒状化粧料用成型型(内径12mm×長さ44mm、4.0g容量)に充填して、-20℃下に5分間静置させ、固化した。固化した棒状化粧料を所定の容器に装填し、室温で6時間以上静置した。前記化粧料を、サイクル試験恒温槽に入れ、槽内を0℃に設定し12時間静置させ、次に槽内を40℃に設定し12時間を静置し、これを1サイクル/日としたサイクル試験を1か月間実施した(約30サイクル)。試験後の前記化粧料の外観を目視観察し、下記基準により評価した。
【0069】
○:変化なし
△:変化あり、ただし製品品質に問題が無い程度である。
×:変化あり(表面への油滴の滲みだし、ワックス結晶の析出、表面の一部溶融、容器との擦れによる傷、などの発生)
‐:評価なし
【0070】
・化粧料の経日安定性(硬度)
実施例及び比較例で得られた化粧料組成物を約90℃で溶融し、所定の棒状化粧料用成型型(内径12mm×長さ44mm、4.0g容量)に充填して、-20℃下に5分間静置させ、固化した。固化した棒状化粧料を所定の容器に装填し、室温で6時間以上静置した。6時間後の前記化粧料組成物の硬度を「初期値」とした。前記化粧料を、サイクル試験恒温槽に入れ、槽内を0℃に設定し12時間静置させ、次に槽内を40℃に設定し12時間を静置し、これを1サイクル/日としたサイクル試験を1か月間実施した(約30サイクル)。試験後、前記化粧料組成物の硬度を測定し、下記基準により評価した。
この評価では、前記化粧料の中心に直径3mmのプローブを5mm針入したときの応力(g)を硬度とした。
【0071】
○:初期値からの硬度低下が30%未満であった。
△:初期値からの硬度低下が30%以上40%未満であった。
×:初期値からの硬度低下が40%以上であった。
‐:評価なし
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の油中水型固形乳化化粧料は、特に用途は限定されないが、例えば、ファンデーション、アイシャドー、アイライナー、マスカラ、コンシーラー、リップスティック、バーム等の油中水型固形メイクアップ化粧料、化粧下地等に利用することができる。