(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121804
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】出没式筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 24/08 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
B43K24/08 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024024190
(22)【出願日】2024-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2023028039
(32)【優先日】2023-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005511
【氏名又は名称】ぺんてる株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野村 恭平
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353HA01
2C353HA09
2C353HC04
2C353HG04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】特許文献1に開示されている出没式筆記具は、カム筒の縮径部に切り欠き部が設けられている。出没式筆記具を組み立てる工程で、回転子をカム筒に挿入する際に、回転子の回転側カム部と縮径部との干渉を避けるため、回転側カム部が切り欠き部を通過するように周方向に位置合わせする必要があり、組み立てにくいという問題があった。本発明は、組み立てやすい出没式筆記具を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、少なくとも作動突起の側壁後方がカム突起に接触可能かつ係止不可能である出没式筆記具出没式筆記具を要旨とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒内部に、前後動可能な筆記具本体と、カム筒と、が少なくとも配置された出没式筆記具であって、
筆記具本体の外壁面には、作動突起と係止突起とが形成され、
カム筒には、前後に貫通し、筆記具本体が挿通して配置される貫通孔が形成され、
カム筒の内壁面には、カム突起が形成され、
筆記具本体の前進に伴い、作動突起の側壁前方とカム突起の側壁後方とが接触し、カム筒は筆記具本体外周の周方向に回動可能であり、
筆記具本体の後退に伴い、係止突起の側壁後方とカム突起の側壁前方とが接触し、カム筒は筆記具本体外周の周方向に回動可能であり、
少なくとも作動突起の側壁後方がカム突起に接触可能かつ係止不可能である、
出没式筆記具。
【請求項2】
前記係止突起の側壁後方の少なくとも一部が、前記作動突起の最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域の外側に位置し、
少なくとも前記作動突起の側壁前方が前記カム突起の側壁後方に係止可能である、
請求項1に記載の出没式筆記具。
【請求項3】
前記作動突起の側壁前方の少なくとも一部が、前記係止突起の最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って後方に延ばした領域の外側に位置する、
請求項2に記載の出没式筆記具。
【請求項4】
軸筒内部に、前後動可能な筆記具本体と、カム筒と、が少なくとも配置された出没式筆記具であって、
筆記具本体の外壁面には、作動突起と係止突起とが形成され、
カム筒には、前後に貫通し、筆記具本体が挿通して配置される貫通孔が形成され、
カム筒の内壁面には、カム突起が形成され、
カム突起は、カム突起基部と、カム突起基部の側壁から前方に延び、カム突起基部よりカム筒内壁面からの径方向内側への高さが低いカム突起前方端部と、で少なくとも構成され、
筆記具本体の前進に伴い、作動突起の側壁前方とカム突起の側壁後方とが接触し、カム筒は筆記具本体外周の周方向に回動可能であり、
筆記具本体の後退に伴い、係止突起の側壁後方と、カム突起基部の側壁前方又はカム突起前方端部の側壁前方とが接触し、カム筒は筆記具本体外周の周方向に回動可能であり、
少なくとも作動突起の側壁後方が、カム突起基部の側壁前方に接触可能かつカム突起基部及びカム突起前方端部に係止不可能である、
出没式筆記具。
【請求項5】
前記係止突起の側壁後方の少なくとも一部が、前記作動突起の最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域の外側に位置し、
少なくとも前記作動突起の側壁前方が前記カム突起の側壁後方に係止可能である、
請求項4に記載の出没式筆記具。
【請求項6】
前記作動突起の側壁前方の少なくとも一部が、前記係止突起の最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って後方に延ばした領域の外側に位置する、
請求項5に記載の出没式筆記具。
【請求項7】
軸筒内部に、前後動可能な筆記具本体と、カム筒と、が少なくとも配置された出没式筆記具であって、
筆記具本体の外壁面には、作動突起と係止突起とが形成され、
作動突起は、作動突起基部と、作動突起基部の側壁から後方に延び、作動突起基部より筆記具本体外壁面からの径方向外側への高さが低い作動突起後方端部と、で少なくとも構成され、
カム筒には、前後に貫通し、筆記具本体が挿通して配置される貫通孔が形成され、
カム筒の内壁面には、カム突起が形成され、
カム突起は、カム突起基部と、カム突起基部の側壁から前方に延び、カム突起基部よりカム筒内壁面からの径方向内側への高さが低いカム突起前方端部と、で少なくとも構成され、
筆記具本体の前進に伴い、作動突起の側壁前方とカム突起の側壁後方とが接触し、カム筒は筆記具本体外周の周方向に回動可能であり、
筆記具本体の後退に伴い、係止突起の側壁後方と、カム突起基部の側壁前方又はカム突起前方端部の側壁前方とが接触し、カム筒は筆記具本体外周の周方向に回動可能であり、
少なくとも作動突起後方端部の側壁後方が、カム突起基部の側壁前方に接触可能かつカム突起基部及びカム突起前方端部に係止不可能である、
出没式筆記具。
【請求項8】
前記係止突起の側壁後方の少なくとも一部が、前記作動突起の最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域の外側に位置し、
少なくとも前記作動突起の側壁前方が前記カム突起の側壁後方に係止可能である、
請求項7に記載の出没式筆記具。
【請求項9】
前記作動突起の側壁前方の少なくとも一部が、前記係止突起の最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って後方に延ばした領域の外側に位置する、
請求項8に記載の出没式筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒内部に、前端に筆記部を有する筆記具本体が前後動可能に配置され、筆記具本体を軸筒内部で前後に異なる位置で係止させることで、筆記部の、軸筒前端開口部からの突出及び没入を可能とした、所謂出没式筆記具に関するものである。筆記部が軸筒前端開口部から突出して筆記可能になった状態を突出状態、筆記部が軸筒内部に没入した状態を没入状態とする。
【背景技術】
【0002】
出没式筆記具の出没機構として、所謂カム機構が採用されているものが知られている。出没式筆記具におけるカム機構では、筆記具本体に係止突起と作動突起とを設け、筆記具本体の前後動に伴いそれぞれの側壁がカム部に接触することで、筆記具本体の任意の位置での係止と、係止先の切り替えを可能としている。
【0003】
例えば特許文献1(特開2019-155908号公報)には、カム筒内壁面のカム突起の側壁後方に回転子外壁面の作動突起の側壁前方が、カム筒前端面に回転子外壁面の係止突起の側壁後方が、それぞれ接触してカム機構が作動する出没式筆記具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている出没式筆記具では、カム筒の縮径部に切り欠き部が設けられている。出没式筆記具を組み立てる工程で、回転子をカム筒に挿入する際に、回転子の回転側カム部と縮径部との干渉を避けるため、回転側カム部が切り欠き部を通過するように周方向に位置合わせする必要があり、組み立てにくいという問題があった。
【0006】
本発明は、組み立てやすい出没式筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、軸筒内部に、前後動可能な筆記具本体と、カム筒と、が少なくとも配置された出没式筆記具であって、筆記具本体の外壁面には、作動突起と係止突起とが形成され、カム筒には、前後に貫通し、筆記具本体が挿通して配置される貫通孔が形成され、カム筒の内壁面には、カム突起が形成され、筆記具本体の前進に伴い、作動突起の側壁前方とカム突起の側壁後方とが接触し、カム筒は筆記具本体外周の周方向に回動可能であり、筆記具本体の後退に伴い、係止突起の側壁後方とカム突起の側壁前方とが接触し、カム筒は筆記具本体外周の周方向に回動可能であり、少なくとも作動突起の側壁後方がカム突起に接触可能かつ係止不可能である出没式筆記具を要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の出没式筆記具は、カム筒の貫通孔前方から筆記具本体を挿通させる際に、作動突起の側壁後方がカム突起に意図せず係止しないため周方向の位置合わせをする必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】作動突起7aの側壁後方がカム突起9bの側壁前方と接触する場合を示した図
【
図8】作動突起7aの側壁後方がカム突起9bの側壁前方とは接触しない場合を示した図
【
図9】ボールペンリフィル6及び摺動子7の結合部分近傍拡大断面図
【
図17】後方案内面14acと後方作動突起案内面15cbとが接触する場合を示した図
【
図21】前方案内面14abと没入案内面15caとが接触する場合を示した図
【
図26】作動突起20aの側壁後方がカム突起21bの側壁前方と接触する場合を示した図
【
図29】作動突起20aの側壁後方がカム突起21bの側壁前方とは接触しない場合を示した図
【
図37】作動突起後方端部28cの側壁後方がカム突起30bの側壁前方と接触する場合を示した図
【
図40】作動突起後方端部28cの側壁後方がカム突起30bの側壁前方とは接触しない場合を示した図
【
図41】ボールペンリフィル27及び摺動子28の結合部分近傍拡大断面図
【
図46】筆記具本体26が軸筒23内部において最も後退した状態を示した図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、ボールペン、シャープペンシル、筆ペン、フェルトペン、マーキングペンなどの筆記具であって、ボールペンチップなどの筆記部を軸筒前端開口部から出没可能な出没式筆記具として実施することができる。以降、図面を適宜参照しつつ、本発明に係る各実施形態について説明する。本発明の技術的範囲は各実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0011】
図1(a)(b)は、は本発明の第1の実施形態に係る出没式筆記具であるボールペン1の縦断面図である。
図1(b)は、
図1(a)の状態からボールペン1を90°軸回転させた角度の縦断面図である。ボールペン1は、中空筒状の軸筒2内部に、筆記具本体5を構成するボールペンリフィル6及び摺動子7や、カム筒9等が配置され構成されている。
【0012】
軸筒2は、前軸3と後軸4とが着脱自在に結合して構成されている。前軸3の後方が後軸4の前端開口部から挿入される。前軸3の後端部付近の外壁面と後軸4の前端部付近の内壁面とには、それぞれ螺子部が設けられており、前軸3と後軸4とが螺子螺合により結合可能となっている。
【0013】
前軸3及び後軸4は、軸方向に貫通した円筒状の部材である。前軸3はポリプロピレン樹脂製の成形品であり、後軸4はポリカーボネート樹脂製の成形品である。軸筒2は、前軸3及び/又は後軸4の内部が外部から視認可能な程度に透明又は半透明にしてもよい。
【0014】
筆記具本体5は、ボールペンリフィル6と摺動子7とで構成されている。ボールペンリフィル6は、筆記部としてのボールペンチップ6aと、内部にボールペンインキが収納されるパイプ6bとで構成されている。摺動子7はポリアセタール樹脂製の成形品であり、有底筒状の部材である。ボールペンリフィル6の後方が摺動子7の前端開口部から挿入されるが固定はされておらず、ボールペンリフィル6と摺動子7とが互いに逆方向に軸回転可能な程度に遊嵌されている。
【0015】
筆記具本体5は軸筒2内部を前後動可能に配置されている。摺動子7の後方はノック部7cとして後軸4の後端開口部を介して軸筒2外部へ露出している。使用者がノック部7cを押圧することで、筆記具本体5は軸筒2内部を前進する。前軸3の内壁面前方には周方向に連なった環状の突起である段部3aが設けられている。パイプ6bの前端面が段部3aに接触することで、筆記具本体5の前進が止まる。筆記具本体5は、本実施形態のように筆記具本体5の一部であるノック部7cが軸筒2の一部である後軸4から露出していてもよく、少なくとも軸筒2に対して、軸筒2が形成する内部空間を前後動可能に配置されていればよい。
【0016】
パイプ6bの外壁面には、コイルスプリング8の後端と接触する2本のコイルスプリング後端用突起6baが周方向等間隔に設けられている。また、前軸3の内壁面には、コイルスプリング8の前端と接触する6本のコイルスプリング前端用リブ3bが、周方向等間隔に設けられている。コイルスプリング8は自然状態から縮んだ状態でコイルスプリング後端用突起6baとコイルスプリング前端用リブ3bとにより挟持され、筆記具本体5を常時後方に付勢している。
【0017】
図2(a)(b)は、摺動子7の外観図である。
図2(b)は、
図2(a)の状態から摺動子7を90°軸回転させた角度の外観図である。摺動子7の外壁面には、作動突起7aと係止突起7bとが設けられている。作動突起7aは摺動子7の外壁面において周方向に対向する位置に2か所、係止突起7bは摺動子7の外壁面において周方向等間隔に4か所、設けられている。作動突起7a及び係止突起7bはパイプ6bの外壁に設けてもよく、係止突起7bのみをパイプ6bに設けてもよい。摺動子7の外壁面には、軸方向に延びる摺動溝7dが設けられている。摺動溝7dは、周方向等間隔に2本設けられている。摺動子7の外壁面前方には環状突起7eが設けられている。環状突起7eの後方は係止突起7bの前方と連なっている。環状突起7eは径方向外側に向かって鍔状に突出している。
【0018】
図3(a)(b)はカム筒9の外観斜視図である。
図3(b)はカム筒9の外壁を透明にして、カム筒9の内壁面に設けられたカム突起9bの一部を点線で図示している。カム筒9はポリアセタール樹脂製の成形品であり、円筒状の部材である。カム筒9には、軸方向に貫通し、摺動子7が挿通される貫通孔9aが形成されている。カム筒9の内壁面にはカム突起9bが設けられている。カム突起9bは係止突起7bの係止先であり、係止突起7bの側壁後方は、カム突起9bの側壁前方に係止可能である。カム突起9bは、カム筒9の内壁面において周方向等間隔に4か所設けられている。ボールペン1の出没機構において、筆記具本体5の前進に伴い、作動突起7aの側壁前方と、カム突起9bの側壁後方とが接触し、カム筒9は摺動子7外周を周方向に回動可能である。また、筆記具本体5の後退に伴い、係止突起7bの側壁後方と、カム突起9bの側壁前方とが接触し、カム筒9は摺動子7外周を周方向に回動可能である。つまり摺動子7が挿通されたカム筒9が軸回転することで摺動子7の外周をカム突起9bが公転するものであり、カム筒9自体が摺動子7から離脱した状態で摺動子7の外周を公転するものではない。また、突起の側壁前方及び側壁後方とは、その突起の側壁の前端面及び後端面のみではなく、その突起を軸方向前半と後半とで分けた範囲の側壁も含まれる。
【0019】
図4はカム筒9の縦断面斜視図である。
図4はカム筒9後方を図面奥側、カム筒9前方を図面手前側に傾斜した構図で示している。カム突起9bは、カム突起基部9cと、カム突起基部9cの側壁から前方に延び、カム突起基部9cよりカム筒9内壁面からの径方向内側への高さが低いカム突起前方端部9dと、で少なくとも構成されている。カム突起基部9cの側壁前方には突出係止面9caが形成されており、カム突起前方端部9dの側壁前方には没入案内面9daが形成されている。
【0020】
ボールペン1を組み立てる工程における、カム筒9の貫通孔9aの前方から、筆記具本体5を構成する摺動子7を挿通させる様子について説明する。
図5から
図8は、作動突起7a及び係止突起7bと、カム突起9bとの接触関係を視認しやすくするために、摺動子7とカム筒9とを周方向に展開し、また、本来径方向に向き合う関係である作動突起7a及び係止突起7bと、カム突起9bとを同一平面上で図示している。具体的には、作動突起7a及び係止突起7bが図面奥側から図面手前側に向かって突出する視点で図示し、カム突起9bが図面手前側から図面奥側に向かって突出する視点で図示している。カム突起9bは、カム突起9bの根元であるカム筒9の内壁面から切り取って図示し、断面を表すハッチングは省略している。出没機構においてカム筒9の回動方向である図面右側に向かう方向を回動方向前方、回動方向前方と逆方向であり図面左側に向かう方向を回動方向後方として説明する。例えば、突出係止面9caと没入案内面9daとは、いずれも、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した平面である。後方作動突起案内面9cbはカム突起基部9cの側壁前方の一部であって、突出係止面9caより回動方向後方に位置し、カム突起前方端部9dより径方向内側の範囲の面である。後方作動突起案内面9cbも、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した平面である。また、摺動子7の前後動に伴いカム筒9のみが回動方向のいずれかに回動する様を図示しているが、本発明における筆記具本体5及びカム筒9の組み立て方法においては、一方又は両方を回動可能な状態で組み立てる方法も適宜選択可能である。また、回動方向は本実施形態と逆方向に構成することもできる。
【0021】
カム筒9の貫通孔9a前方から摺動子7の後方を挿入していくと、カム筒9と摺動子7との周方向の位置関係によっては、作動突起7aとカム突起9bとが接触する場合と、作動突起7aとカム突起9bとが接触せず、そのまま周方向に隣り合うカム突起9b間に入っていく場合とがある。
【0022】
図5は、作動突起7aの側壁後方がカム突起9bの側壁前方と接触する場合を示した図である。作動突起7aの側壁後方には、回動方向前方の前方案内面7abと、回動方向後方の後方案内面7acとの2つの平面が形成されている。前方案内面7abは、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜しており、突出係止面9ca及び後方作動突起案内面9cbと互いに向かい合う平面となっている。
【0023】
図6は、
図5の状態から摺動子7を後退させた図である。作動突起7aの側壁後方に形成されている前方案内面7abは、カム突起基部9cの側壁前方の一部である突出係止面9caから後方作動突起案内面9cbに亘るいずれかの面と接触する。作動突起7aの摺動子7外壁面からの径方向外側への高さは、摺動子7が貫通孔9a内に挿入された際に、作動突起7aの側壁後方が、カム突起基部9cの側壁前方に接触可能な高さであり、カム突起前方端部9dの側壁に接触不可能な高さとなっている。後方作動突起案内面9cbも、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した平面であるため、作動突起7aの側壁後方は、カム突起基部9c及びカム突起前方端部9dに係止不可能である。前方案内面7abが、突出係止面9caから後方作動突起案内面9cbに亘るいずれかの面と接触すると、カム筒9は、摺動子7の後退に伴い、突出係止面9ca及び後方作動突起案内面9cbを介して前方案内面7abから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。
【0024】
図7は、
図6の状態から摺動子7を後退させた図である。
図6の状態から摺動子7を後退させると、前方案内面7abと、突出係止面9caから後方作動突起案内面9cbに亘るいずれかの面との接触が解除される。更に摺動子7を後退させると、作動突起7aは、当該カム突起9bと、当該カム突起9bより回動方向後方に位置するカム突起9bとの間に案内される。
【0025】
図8は、
図5とは異なり、作動突起7aの側壁後方がカム突起9bの側壁前方とは接触しない場合を示した図である。カム突起基部9cのうち最も回動方向前方に延びた箇所の側壁前方には、前方作動突起案内面9ccが形成されている。後方案内面7ac及び前方作動突起案内面9ccは、回動方向後方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した、互いに向かい合う平面となっている。
【0026】
後方案内面7acと前方作動突起案内面9ccとが接触すると、カム筒9は、前方作動突起案内面9ccを介して後方案内面7acから周方向の力を受けて回動方向後方へ回動する。更に摺動子7を後退させると、後方案内面7acと前方作動突起案内面9ccとの接触が解除され、
図7の状態となる。つまり、作動突起7aは、当該カム突起9bと、当該カム突起9bより回動方向前方に位置するカム突起9bとの間を通過する。なお作動突起7aの側壁後方がカム突起9bと一切接触せず、作動突起7aが周方向に隣り合うカム突起9b間を通過する場合もある。
【0027】
以上のように、本実施形態においては、作動突起7aの側壁後方がカム突起基部9c及びカム突起前方端部9dに係止不可能なため、カム筒9の貫通孔9a前方から摺動子7を挿通させる際に、カム筒9及び摺動子7の位置合わせをする必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。
【0028】
図9はボールペンリフィル6及び摺動子7の結合部分近傍拡大断面図である。組み立てられたカム筒9及び筆記具本体5は、後軸4の前端開口部から挿入され、前軸3と後軸4との結合により、軸筒2内部に配置される。本実施形態において、カム筒9は軸筒2内部において前後動が制限された部材である。後軸4の内壁面には、軸方向に沿って延びるリブ4aが設けられている。リブ4aは周方向等間隔に4本設けられている。ボールペン1を組み立てた状態において、各リブ4aの前端面と前軸3の後端面とが、カム筒9の軸方向両端面と接触し、カム筒9が挟持される段部として機能する。これにより、カム筒9は軸筒2内部において前後動不可能に配置される。なお、前後動不可能とは、カム筒9が軸筒2内部において軸方向に全く動かない状態のみならず、成形上の公差や使用に伴う僅かな摩耗などによって生じた隙間分だけは前後動してしまう状態も含むものである。
【0029】
後軸4の内壁面に設けられたリブ4aのうち、周方向に対向する2本であって、摺動子7の摺動溝7dに対応した位置におけるリブ4aは、軸方向中腹から後方に向かって、前端面より径方向内側に突出した摺動リブ4aaが延設されている。摺動リブ4aaは摺動溝7dに挿入される。摺動リブ4aaの前端面が、摺動溝7dの前端面に接触することで、ボールペン1の出没機構における筆記具本体5の後退が止まる。また、摺動リブ4aaが摺動溝7dに沿って摺動することで、摺動子7は軸筒2内部において回動不可能に配置される。回動不可能とは、摺動子7が軸筒2内部において周方向に全く動かない状態のみならず、成形上の公差や使用に伴う僅かな摩耗などによって生じた隙間分だけは周方向に回動してしまう状態も含むものである。
【0030】
図10は、
図2のA部分拡大図である。本実施形態では、係止突起7bの側壁後方の少なくとも一部が、作動突起7aの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域Bの外側に位置する。具体的には、係止突起7bの側壁後方に形成されている係止面7baのうち回動方向前方の一部が、領域Bの外側に位置している。係止面7baは、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した平面となっている。
【0031】
図11は、
図7の状態から摺動子7を後退させた図である。カム筒9の貫通孔9a前方から摺動子7を挿入し作動突起7aの側壁後方がカム突起基部9c及びカム突起前方端部9dの各側壁前方と係止せず挿通が進んだ際に、係止面7baのうち回動方向前方の一部が、領域Bの外側に位置し、作動突起7aの最大周方向幅がカム突起9b間の最小周方向幅より小さく、軸方向に隣接した作動突起7aと係止突起7bとが含まれる最小周方向幅がカム突起9b間の最小周方向幅より大きくなるため、没入案内面9daと係止面7baとが接触する。カム筒9は、没入案内面9daを介して係止面7baから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。
【0032】
図12は、
図11の状態から摺動子7を後退させた図である。
図11の状態から摺動子7を後退させると、係止面7baと没入案内面9daとの接触が解除される。更に摺動子7を後退させると、係止突起7bは、当該カム突起9bと、当該カム突起9bより回動方向後方に位置するカム突起9bとの間に案内され、貫通孔9aへの摺動子7の挿通が完了する。なお、環状突起7eの側壁後方とカム突起9bの側壁前方とが接触するため、これ以上摺動子7を後退させることは不可能である。
【0033】
図13は、
図12の状態から摺動子7を前進させた図である。ボールペン1を組み立てる工程において、カム筒9の貫通孔9aの前方から摺動子7を挿通させる際に、不意に摺動子7が前進してしまう状態を想定している。カム突起基部9cの側壁後方には、回動方向前方の前方作動面9cdと、回動方向後方の後方作動面9ceとの2つの平面が形成されている。また、作動突起7aの側壁前方には、作動面7aaが形成されている。前方作動面9cd及び後方作動面9ceと、作動面7aaとは、いずれも回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ、回動方向後方に向かう従って軸方向前方へ傾斜した、互いに向かい合う平面となっている。
図12の状態から摺動子7を前進させると、作動突起7aの摺動子7外壁面からの径方向外側への高さは、作動突起7aの側壁前方が、カム突起基部9cの側壁後方に接触可能な高さであるため、作動面7aaと前方作動面9cdとが接触する。カム筒9は、前方作動面9cdを介して作動面7aaから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。
【0034】
図14は
図13の状態から摺動子7を前進させた図である。作動突起7aの摺動子7外壁面からの径方向外側への高さは、作動突起7aの側壁前方が、カム突起基部9cの側壁後方に接触可能な高さである。そのため、作動突起7aの側壁前方は、カム突起9bの側壁後方である、軸方向後方に後方作動面9ceが形成されているカム突起基部9cの回動方向前方の側壁に対して係止可能である。
【0035】
以上より、カム筒9の貫通孔9a前方から摺動子7を挿入し作動突起7aの側壁後方がカム突起基部9c及びカム突起前方端部9dの各側壁前方と係止せず挿通が進み、カム突起前方端部9dの側壁前方と係止面7baとが接触した後、摺動子7が貫通孔9a前方へ移動しても、カム筒9と摺動子7とが、作動突起7aの側壁前方とカム突起9bの側壁後方が接触し作動突起7aの側壁前方がカム突起9bの側壁後方に係止可能となる周方向位置に変位するため、摺動子7が貫通孔9aから抜けないようカム筒9及び摺動子7の周方向の位置関係に配慮する必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。
【0036】
本発明の第2の実施形態に係る出没式筆記具であるボールペン10について、第1の実施形態との主な相違点である摺動子14及びカム筒15を中心に説明する。ボールペン10は、中空筒状の軸筒11内部に、筆記具本体12やカム筒15等が配置され構成されている。筆記具本体12は、ボールペンリフィル13と摺動子14とで構成されている。筆記具本体12は軸筒11内部を前後動可能に配置されている。摺動子14の外壁面には、作動突起14aと係止突起14bとが設けられている。カム筒15の内壁面にはカム突起15bが設けられている。
【0037】
図15(a)(b)はカム筒15の外観斜視図、
図16はカム筒15の縦断面斜視図である。
図15(b)はカム筒15の外壁を透明にして、内壁面に設けられたカム突起15bの一部を点線で図示している。
図16はカム筒15後方を図面奥側、カム筒15前方を図面手前側に傾斜した構図で示している。カム突起15bは、カム突起基部15cと、カム突起基部15cの側壁から前方に延び、カム突起基部15cよりカム筒15内壁面からの径方向内側への高さが低いカム突起前方端部15dと、で少なくとも構成されている。第1の実施形態では、カム突起前方端部9dが、カム突起基部9cの側壁前方のうち回動方向後方に形成されているのに対して、第2の実施形態では、カム突起前方端部15dが、カム突起基部15cの側壁前方のうち回動方向前方に形成されている。カム突起前方端部15dの側壁前方には突出係止面15daが形成されており、カム突起基部15cの側壁前方には没入案内面15ca及び後方作動突起案内面15cbが形成されている。
【0038】
ボールペン10を組み立てる工程における、カム筒15の貫通孔15aの前方から摺動子14を挿通させる様子について説明する。
図17から
図25については、
図5から
図8及び
図11から
図14と同様の構図で図示している。
【0039】
図17は、作動突起14aの側壁後方がカム突起15bの側壁前方と接触する場合のうち、作動突起14aの側壁後方に形成されている後方案内面14acと、カム突起基部15cの側壁前方に形成されている後方作動突起案内面15cbとが接触する場合を示した図である。作動突起14aの側壁後方には、回動方向前方の前方案内面14abと、回動方向後方の後方案内面14acとの2つの平面が形成されている。前方案内面14abは、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜しており、没入案内面15caと互いに向かい合う平面となっている。後方案内面14acは、回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向前方へ傾斜しており、後方作動突起案内面15cbと互いに向かい合う平面となっている。
【0040】
図18は、
図17の状態から摺動子14を後退させた図である。作動突起14aの側壁後方に形成されている後方案内面14acは、カム突起基部15cの側壁前方に形成されている後方作動突起案内面15cbに接触する。作動突起14aの摺動子14外壁面からの径方向外側への高さは、摺動子14が貫通孔15a内に挿入された際に、作動突起14aの側壁後方が、カム突起基部15cの側壁前方に接触可能な高さであり、カム突起前方端部15dの側壁に接触不可能な高さとなっている。後方作動突起案内面15cbも、回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向前方へ傾斜した平面であるため、作動突起14aの側壁後方は、カム突起基部15c及びカム突起前方端部15dに係止不可能である。後方案内面14acが、後方作動突起案内面15cbと接触すると、カム筒15は、摺動子14の後退に伴い、後方作動突起案内面15cbを介して後方案内面14acから周方向の力を受けて回動方向後方へ回動する。
【0041】
図19は、
図18の状態から摺動子14を後退させた図である。
図18の状態から摺動子14を後退させると、後方案内面14acと後方作動突起案内面15cbとの接触が解除される。更に摺動子14を後退させると、作動突起14aは、当該カム突起15bと、当該カム突起15bより回動方向前方に位置するカム突起15bとの間に案内される。後方案内面14acは、前方作動突起案内面15ccと接触する。前方作動突起案内面15ccは、カム突起基部15cのうち最も回動方向前方に延びた箇所の側壁前方に形成されている。前方作動突起案内面15ccは、回動方向後方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した平面となっている。後方案内面14acと前方作動突起案内面15ccとが接触すると、カム筒15は、前方作動突起案内面15ccを介して後方案内面14acから周方向の力を受けて回動方向後方へ回動する。
【0042】
図20は、
図19の状態から摺動子14を後退させた図である。
図19の状態から摺動子14を後退させると、後方案内面14acと前方作動突起案内面15ccとの接触が解除される。そして、作動突起14aは、当該カム突起15bと、当該カム突起15bより回動方向前方に位置するカム突起15bとの間を通過する。なお、作動突起14aの側壁後方がカム突起15bの側壁前方とは接触しない場合も、後方案内面14acと前方作動突起案内面15ccとが接触し
図19と同様の状態となるか、作動突起14aの側壁後方がカム突起15bと一切接触せず、作動突起14aが周方向に隣り合うカム突起15b間を通過する。
【0043】
図21は、
図17とは異なり、作動突起14aの側壁後方がカム突起15bの側壁前方と接触する場合のうち、作動突起14aの側壁後方に形成されている前方案内面14abと、カム突起基部15cの側壁前方に形成されている没入案内面15caとが接触する場合を示した図である。没入案内面15caも、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した平面であるため、作動突起14aの側壁後方は、カム突起基部15cに係止不可能である。前方案内面14abが、没入案内面15caと接触すると、カム筒15は、摺動子14の後退に伴い、没入案内面15caを介して前方案内面14abから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。
【0044】
図21の状態から摺動子14を後退させると、前方案内面14abと没入案内面15caとの接触が解除される。更に摺動子14を後退させると、作動突起14aは、当該カム突起15bと、当該カム突起15bより回動方向後方に位置するカム突起15bとの間に案内され、
図20と同様の状態となる。
【0045】
以上のように、本実施形態においても、作動突起14aの側壁後方がカム突起基部15c及びカム突起前方端部15dに係止不可能なため、カム筒15の貫通孔15a前方から摺動子14を挿通させる際に、カム筒15及び摺動子14の位置合わせをする必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。
【0046】
本実施形態においても、係止突起14bの側壁後方の少なくとも一部が、作動突起14aの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域の外側に位置する。具体的には、係止突起14bの側壁後方に形成されている係止面14baのうち回動方向前方の一部が、作動突起14aの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域の外側に位置している。係止面14baは、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した平面となっている。
【0047】
図22は、
図20の状態から摺動子14を後退させた図である。カム筒15の貫通孔15a前方から摺動子14を挿入し作動突起14aの側壁後方がカム突起基部15c及びカム突起前方端部15dの各側壁前方と係止せず挿通が進んだ際に、係止面14baのうち回動方向前方の一部が、作動突起14aの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域の外側に位置し、作動突起14aの最大周方向幅がカム突起15b間の最小周方向幅より小さく、軸方向に隣接した作動突起14aと係止突起14bとが含まれる最小周方向幅がカム突起15b間の最小周方向幅より大きくなるため、没入案内面15caと係止面14baとが接触する。カム筒15は、没入案内面15caを介して係止面14baから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。
【0048】
図23は、
図22の状態から摺動子14を後退させた図である。
図22の状態から摺動子14を後退させると、係止面14baと没入案内面15caとの接触が解除される。更に摺動子14を後退させると、係止突起14bは、当該カム突起15bと、当該カム突起15bより回動方向後方に位置するカム突起15bとの間に案内され、貫通孔15aへの摺動子14の挿通が完了する。なお、環状突起14cの側壁後方とカム突起15bの側壁前方とが接触するため、これ以上摺動子14を後退させることは不可能である。
【0049】
図24は、
図23の状態から摺動子14を前進させた図である。ボールペン10を組み立てる工程において、カム筒15の貫通孔15aの前方から摺動子14を挿通させる際に、不意に摺動子14が前進してしまう状態を想定している。カム突起基部15cの側壁後方には、回動方向前方の前方作動面15cdと、回動方向後方の後方作動面15ceとの2つの平面が形成されている。また、作動突起14aの側壁前方には、作動面14aaが形成されている。前方作動面15cd及び後方作動面15ceと、作動面14aaとは、いずれも回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ、回動方向後方に向かう従って軸方向前方へ傾斜した、互いに向かい合う平面となっている。
図23の状態から摺動子14を前進させると、作動突起14aの摺動子14外壁面からの径方向外側への高さは、作動突起14aの側壁前方が、カム突起基部15cの側壁後方に接触可能な高さであるため、作動面14aaと前方作動面15cdとが接触する。カム筒15は、前方作動面15cdを介して作動面14aaから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。
【0050】
図25は、
図24の状態から摺動子14を前進させた図である。作動突起14aの摺動子14外壁面からの径方向外側への高さは、作動突起14aの側壁前方が、カム突起基部15cの側壁後方に接触可能な高さである。そのため、作動突起14aの側壁前方は、カム突起15bの側壁後方であって、軸方向後方に後方作動面15ceが形成されているカム突起基部15cの回動方向前方の側壁に対して係止可能である。
【0051】
以上より、カム筒15の貫通孔15a前方から摺動子14を挿入し作動突起14aの側壁後方がカム突起基部15c及びカム突起前方端部15dの各側壁前方と係止せず挿通が進み、カム突起基部15cの側壁前方と係止面14baとが接触した後、摺動子14が貫通孔15a前方へ移動しても、カム筒15と摺動子14とが、作動突起14aの側壁前方とカム突起15bの側壁後方が接触し作動突起14aの側壁前方がカム突起15bの側壁後方に係止可能となる周方向位置に変位するため、摺動子14が貫通孔15aから抜けないようカム筒15及び摺動子14の周方向の位置関係に配慮する必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。
【0052】
本発明の第3の実施形態に係る出没式筆記具であるボールペン16について、第1の実施形態との主な相違点である摺動子20及びカム筒21を中心に説明する。ボールペン16は、中空筒状の軸筒17内部に、筆記具本体18やカム筒21等が配置され構成されている。筆記具本体18は、ボールペンリフィル19と摺動子20とで構成されている。筆記具本体18は軸筒17内部を前後動可能に配置されている。摺動子20の外壁面には、作動突起20aと係止突起20bとが設けられている。カム筒21の内壁面にはカム突起21bが設けられている。第1の実施形態と同様に、カム突起前方端部21dはカム突起基部21cの側壁前方のうち回動方向後方に形成されている。カム突起前方端部21dの側壁前方には没入案内面21daが形成されており、カム突起基部21cの側壁前方には突出係止面21ca及び後方作動突起案内面21cbが形成されている。
【0053】
ボールペン16を組み立てる工程における、カム筒21の貫通孔21aの前方から摺動子20を挿通させる様子について説明する。
図26から
図29及び
図31から
図34については、
図5から
図8及び
図11から
図14と同様の構図で図示している。
【0054】
図26は、作動突起20aの側壁後方がカム突起21bの側壁前方と接触する場合を示した図である。作動突起20aの側壁後方には、回動方向前方の前方案内面20abと、回動方向後方の後方案内面20acとの2つの平面が形成されている。前方案内面20abは、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜しており、突出係止面21ca及び後方作動突起案内面21cbと互いに向かい合う平面となっている。
【0055】
図27は、
図26の状態から摺動子20を後退させた図である。作動突起20aの側壁後方に形成されている前方案内面20abは、カム突起基部21cの側壁前方の一部である突出係止面21caから後方作動突起案内面21cbに亘るいずれかの面と接触する。作動突起20aの摺動子20外壁面からの径方向外側への高さは、摺動子20が貫通孔21a内に挿入された際に、作動突起20aの側壁後方が、カム突起基部21cの側壁前方に接触可能な高さであり、カム突起前方端部21dの側壁に接触不可能な高さとなっている。後方作動突起案内面21cbも、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した平面であるため、作動突起20aの側壁後方は、カム突起基部21c及びカム突起前方端部21dに係止不可能である。前方案内面20abが、突出係止面21caから後方作動突起案内面21cbに亘るいずれかの面と接触すると、カム筒21は、摺動子20の後退に伴い、突出係止面21ca及び後方作動突起案内面21cbを介して前方案内面20abから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。
【0056】
図28は、
図27の状態から摺動子20を後退させた図である。
図27の状態から摺動子20を後退させると、前方案内面20abと、突出係止面21caから後方作動突起案内面21cbに亘るいずれかの面との接触が解除される。更に摺動子20を後退させると、作動突起20aは、当該カム突起21bと、当該カム突起21bより回動方向後方に位置するカム突起21bとの間に案内される。
【0057】
図29は、
図26とは異なり、作動突起20aの側壁後方がカム突起21bの側壁前方とは接触しない場合を示した図である。カム突起基部21cのうち最も回動方向前方に延びた箇所の側壁前方には、前方作動突起案内面21ccが形成されている。後方案内面20ac及び前方作動突起案内面21ccは、回動方向後方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した、互いに向かい合う平面となっている。
【0058】
後方案内面20acと前方作動突起案内面21ccとが接触すると、カム筒21は、前方作動突起案内面21ccを介して後方案内面20acから周方向の力を受けて回動方向後方へ回動する。更に摺動子20を後退させると、後方案内面20acと前方作動突起案内面21ccとの接触が解除され、
図28の状態となる。つまり、作動突起20aは、当該カム突起21bと、当該カム突起21bより回動方向前方に位置するカム突起21bとの間を通過する。なお作動突起20aの側壁後方がカム突起21bと一切接触せず、作動突起20aが周方向に隣り合うカム突起21b間を通過する場合もある。
【0059】
以上のように、本実施形態においても、作動突起20aの側壁後方がカム突起基部21c及びカム突起前方端部21dに係止不可能なため、カム筒21の貫通孔21a前方から摺動子20を挿通させる際に、カム筒21及び摺動子20の位置合わせをする必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。
【0060】
図30は、摺動子20外観の
図10相当図である。
図30(a)の通り、本実施形態においても、係止突起20bの側壁後方の少なくとも一部が、作動突起20aの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域Cの外側に位置する。具体的には、係止突起20bの側壁後方に形成されている係止面20baのうち回動方向前方の一部が、作動突起20aの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域の外側に位置している。係止面20baは、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した平面となっている。
【0061】
図31は、
図28の状態から摺動子20を後退させた図である。カム筒21の貫通孔21a前方から摺動子20を挿入し作動突起20aの側壁後方がカム突起基部21c及びカム突起前方端部21dの各側壁前方と係止せず挿通が進んだ際に、係止面20baのうち回動方向前方の一部が、作動突起20aの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域の外側に位置し、作動突起20aの最大周方向幅がカム突起21b間の最小周方向幅より小さく、軸方向に隣接した作動突起20aと係止突起20bとが含まれる最小周方向幅がカム突起21b間の最小周方向幅より大きくなるため、没入案内面21daと係止面20baとが接触する。カム筒21は、没入案内面21daを介して係止面20baから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。
【0062】
図32は、
図31の状態から摺動子20を後退させた図である。
図31の状態から摺動子20を後退させると、係止面20baと没入案内面21daとの接触が解除される。更に摺動子20を後退させると、係止突起20bは、当該カム突起21bと、当該カム突起21bより回動方向後方に位置するカム突起21bとの間に案内され、貫通孔21aへの摺動子20の挿通が完了する。なお、環状突起20cの側壁後方とカム突起21bの側壁前方とが接触するため、これ以上摺動子20を後退させることは不可能である。
【0063】
図33は、
図32の状態から摺動子20を前進させた図である。ボールペン16を組み立てる工程において、カム筒21の貫通孔21aの前方から摺動子20を挿通させる際に、不意に摺動子20が前進してしまう状態を想定している。カム突起基部21cの側壁後方には、回動方向前方の前方作動面21cdと、回動方向後方の後方作動面21ceとの2つの平面が形成されている。また、作動突起20aの側壁前方には、作動面20aaが形成されている。前方作動面21cd及び後方作動面21ceと、作動面20aaとは、いずれも回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ、回動方向後方に向かう従って軸方向前方へ傾斜した、互いに向かい合う平面となっている。
図32の状態から摺動子20を前進させると、作動突起20aの摺動子20外壁面からの径方向外側への高さは、作動突起20aの側壁前方が、カム突起基部21cの側壁後方に接触可能な高さであるため、作動面20aaと前方作動面21cdとが接触する。カム筒21は、前方作動面21cdを介して作動面20aaから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。
【0064】
図34は、
図33の状態から摺動子20を前進させた図である。作動突起20aの摺動子20外壁面からの径方向外側への高さは、作動突起20aの側壁前方が、カム突起基部21cの側壁後方に接触可能な高さである。そのため、作動突起20aの側壁前方は、カム突起21bの側壁後方である、軸方向後方に後方作動面21ceが形成されているカム突起基部21cの回動方向前方の側壁に対して係止可能である。
【0065】
以上より、カム筒21の貫通孔21a前方から摺動子20を挿入し作動突起20aの側壁後方がカム突起基部21c及びカム突起前方端部21dの各側壁前方と係止せず挿通が進み、カム突起前方端部21dの側壁前方と係止面20baとが接触した後、摺動子20が貫通孔21a前方へ移動しても、カム筒21と摺動子20とが、作動突起20aの側壁前方とカム突起21bの側壁後方が接触し作動突起20aの側壁前方がカム突起21bの側壁後方に係止可能となる周方向位置に変位するため、摺動子20が貫通孔21aから抜けないようカム筒21及び摺動子20の周方向の位置関係に配慮する必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。
【0066】
図30(b)の通り、本実施形態においては、作動突起20aの側壁前方の少なくとも一部が、係止突起20bの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って後方に延ばした領域Dの外側に位置する。具体的には、作動突起20aの側壁前方に形成されている作動面20aaのうち回動方向後方の一部が、係止突起20bの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って後方に延ばした領域Dの外側に位置している。そのため、カム筒21の貫通孔21a前方から摺動子20を挿入し作動突起20aの側壁後方がカム突起基部21c及びカム突起前方端部21dの各側壁前方と係止せず挿通が進む際に、カム突起基部21cの側壁前方又はカム突起前方端部21dの側壁前方と、係止突起20bの側壁後方とが接触しやすくなることでカム筒21の回動可能な範囲をより確保できる。具体的には、
図31に示す、没入案内面21daと係止面20baとが接触しやすくなることで、カム筒21の、没入案内面21daを介し係止面20baから周方向の力を受けた回動方向前方への回動可能な範囲をより広く確保できる。よって、
図33に示すように、摺動子20がカム筒21前方へ移動しても作動突起20aの側壁前方とカム突起21bの側壁後方が接触可能な周方向の幅をより多く設けることができるため、摺動子20が貫通孔21aから抜けないようカム筒21及び摺動子20の周方向の位置関係に配慮する必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。
【0067】
本発明の第4の実施形態に係る出没式筆記具であるボールペン22について、第3の実施形態との主な相違点である摺動子28及びカム筒30を中心に説明する。
図35(a)(b)はボールペン22の縦断面図である。
図1同様、
図35(b)は、
図35(a)の状態からボールペン1を90°軸回転させた角度の縦断面図である。ボールペン22は、中空筒状の軸筒23内部に、筆記具本体26やカム筒30等が配置され構成されている。軸筒23は、前軸24と後軸25とが螺子螺合により結合して構成されている。筆記具本体26は、ボールペンリフィル27と摺動子28とで構成されている。筆記具本体26は軸筒23内部を前後動可能に配置されている。摺動子28の外壁面には、作動突起28aと係止突起28dとが設けられている。摺動子28の後方はノック部28eとして後軸25の後端開口部を介して軸筒23外部へ露出している。使用者がノック部28eを押圧することで、筆記具本体26は軸筒23内部を前進する。前軸24の内壁面前方には周方向に連なった環状の突起である段部24aが設けられている。パイプ27bの前端面が段部24aに接触することで、筆記具本体26の前進が止まる。パイプ27bの外壁面には、コイルスプリング29の後端と接触する2本のコイルスプリング後端用突起27baが周方向等間隔に設けられている。前軸24の内壁面には、コイルスプリング29の前端と接触する6本のコイルスプリング前端用リブ24bが、周方向等間隔に設けられている。コイルスプリング29は自然状態から縮んだ状態でコイルスプリング後端用突起27baとコイルスプリング前端用リブ24bとにより挟持され、筆記具本体26を常時後方に付勢している。カム筒30の内壁面にはカム突起30bが設けられている。第1の実施形態及び第3の実施形態と同様に、カム突起前方端部30dはカム突起基部30cの側壁前方のうち回動方向後方に形成されている。カム突起前方端部30dの側壁前方には没入案内面30daが形成されており、カム突起基部30cの側壁前方には突出係止面30ca及び後方作動突起案内面30cbが形成されている。
【0068】
図36(a)(b)は、摺動子28の外観図である。
図2同様、
図36(b)は、
図36(a)の状態から摺動子28を90°軸回転させた角度の外観図である。本実施形態においては、作動突起28aは、作動突起基部28bと、作動突起基部28bの側壁から後方に延び、作動突起基部28bより摺動子28の外壁面からの径方向外側への高さが低い作動突起後方端部28cと、で少なくとも構成されている。作動突起28aの側壁後方と側壁前方とで摺動子28外壁面からの径方向外側への高さが異なるため、作動突起28aの側壁前方とカム突起30bの側壁後方との接触によるカム筒30の回動に必要な作動突起基部28bの摺動子28外壁面からの径方向外側への高さを確保でき、カム筒30を確実に回動させることができる。
【0069】
ボールペン22を組み立てる工程における、カム筒30の貫通孔20aの前方から摺動子28を挿通させる様子について説明する。
図37から
図40及び
図42から
図45についても、
図5から
図8及び
図11から
図14と同様の構図で図示している。
【0070】
図37は、作動突起後方端部28cの側壁後方がカム突起30bの側壁前方と接触する場合を示した図である。作動突起後方端部28cの側壁後方には、回動方向前方の前方案内面28caと、回動方向後方の後方案内面28cbとの2つの平面が形成されている。前方案内面28caは、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜しており、突出係止面30ca及び後方作動突起案内面30cbと互いに向かい合う平面となっている。
【0071】
図38は、
図37の状態から摺動子28を後退させた図である。作動突起後方端部28cの側壁後方に形成されている前方案内面28caは、カム突起基部30cの側壁前方の一部である突出係止面30caから後方作動突起案内面30cbに亘るいずれかの面と接触する。作動突起後方端部28cの摺動子28外壁面からの径方向外側への高さは、摺動子28が貫通孔30a内に挿入された際に、作動突起後方端部28cの側壁後方が、カム突起基部30cの側壁前方に接触可能な高さであり、カム突起前方端部30dの側壁に接触不可能な高さとなっている。後方作動突起案内面30cbも、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した平面であるため、作動突起後方端部28cの側壁後方は、カム突起基部30c及びカム突起前方端部30dに係止不可能である。前方案内面28caが、突出係止面30caから後方作動突起案内面30cbに亘るいずれかの面と接触すると、カム筒30は、摺動子28の後退に伴い、突出係止面30ca及び後方作動突起案内面30cbを介して前方案内面28caから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。
【0072】
図39は、
図38の状態から摺動子28を後退させた図である。
図38の状態から摺動子28を後退させると、前方案内面28caと、突出係止面30caから後方作動突起案内面30cbに亘るいずれかの面との接触が解除される。更に摺動子28を後退させると、作動突起30aは、当該カム突起30bと、当該カム突起30bより回動方向後方に位置するカム突起30bとの間に案内される。
【0073】
図40は、
図37とは異なり、作動突起後方端部28cの側壁後方がカム突起30bの側壁前方とは接触しない場合を示した図である。カム突起基部30cのうち最も回動方向前方に延びた箇所の側壁前方には、前方作動突起案内面30ccが形成されている。後方案内面28cb及び前方作動突起案内面30ccは、回動方向後方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した、互いに向かい合う平面となっている。
【0074】
後方案内面28cbと前方作動突起案内面30ccとが接触すると、カム筒30は、前方作動突起案内面30ccを介して後方案内面28cbから周方向の力を受けて回動方向後方へ回動する。更に摺動子28を後退させると、後方案内面28cbと前方作動突起案内面30ccとの接触が解除され、
図39の状態となる。つまり、作動突起28aは、当該カム突起30bと、当該カム突起30bより回動方向前方に位置するカム突起30bとの間を通過する。なお作動突起後方端部28cの側壁後方がカム突起30bと一切接触せず、作動突起28aが周方向に隣り合うカム突起30b間を通過する場合もある。
【0075】
以上のように、作動突起後方端部28cの側壁後方がカム突起基部30c及びカム突起前方端部30dに係止不可能なため、カム筒30の貫通孔30a前方から摺動子28を挿通させる際に、カム筒30及び摺動子28の位置合わせをする必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。
【0076】
図41はボールペンリフィル27及び摺動子28の結合部分近傍拡大断面図である。本実施形態においても、カム筒30は軸筒23内部において前後動が制限された部材である。後軸25の内壁面には、軸方向に沿って延びるリブ25aが設けられている。リブ25aは周方向等間隔に4本設けられている。ボールペン22を組み立てた状態において、各リブ25aの前端面と前軸24の後端面とが、カム筒30の軸方向両端面と接触し、カム筒30が挟持される段部として機能する。これにより、カム筒30は軸筒23内部において前後動不可能に配置される。また、摺動子28の外壁面には、軸方向に延びる摺動溝28gが設けられている。摺動溝28gは、周方向等間隔に2本設けられている。後軸25の内壁面に設けられたリブ25aのうち、周方向に対向する2本であって摺動溝28gに対応した位置におけるリブ25aは、軸方向中腹から後方に向かって、前端面より径方向内側に突出した摺動リブ25aaが延設されている。摺動リブ25aaは摺動溝28gに挿入される。摺動リブ25aaの前端面が、摺動溝28gの前端面に接触することで、ボールペン22の出没機構における筆記具本体26の後退が止まる。摺動リブ25aaが摺動溝28gに沿って摺動することで、摺動子28は軸筒23内部において回動不可能に配置される。
【0077】
本実施形態においても、係止突起28dの側壁後方の少なくとも一部が、作動突起28aの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域の外側に位置する。具体的には、係止突起28dの側壁後方に形成されている係止面28daのうち回動方向前方の一部が、作動突起28aの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域の外側に位置している。係止面28daは、回動方向前方に向かうに従って軸方向前方へ、回動方向後方に向かうに従って軸方向後方へ傾斜した平面となっている。
【0078】
図42は、
図39の状態から摺動子28を後退させた図である。カム筒30の貫通孔30a前方から摺動子28を挿入し作動突起後方端部28cの側壁後方がカム突起基部30c及びカム突起前方端部30dの各側壁前方と係止せず挿通が進んだ際に、係止面28daのうち回動方向前方の一部が、作動突起28aの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って前方に延ばした領域の外側に位置し、作動突起28aの最大周方向幅がカム突起30b間の最小周方向幅より小さく、軸方向に隣接した作動突起28aと係止突起28bとが含まれる最小周方向幅がカム突起30b間の最小周方向幅より大きくなるため、没入案内面30daと係止面28daとが接触する。カム筒30は、没入案内面30daを介して係止面28daから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。
【0079】
図43は、
図42の状態から摺動子28を後退させた図である。
図42の状態から摺動子28を後退させると、係止面28daと没入案内面30daとの接触が解除される。更に摺動子28を後退させると、係止突起28dは、当該カム突起30bと、当該カム突起30bより回動方向後方に位置するカム突起30bとの間に案内され、貫通孔30aへの摺動子28の挿通が完了する。なお、環状突起28fの側壁後方とカム突起30bの側壁前方とが接触するため、これ以上摺動子28を後退させることは不可能である。
【0080】
図44は、
図43の状態から摺動子28を前進させた図である。ボールペン22を組み立てる工程において、カム筒30の貫通孔30aの前方から摺動子28を挿通させる際に、不意に摺動子28が前進してしまう状態を想定している。カム突起基部30cの側壁後方には、回動方向前方の前方作動面30cdと、回動方向後方の後方作動面30ceとの2つの平面が形成されている。また、作動突起28aの側壁前方である作動突起基部28bの側壁前方には、作動面28baが形成されている。前方作動面30cd及び後方作動面30ceと、作動面28baとは、いずれも回動方向前方に向かうに従って軸方向後方へ、回動方向後方に向かう従って軸方向前方へ傾斜した、互いに向かい合う平面となっている。
図43の状態から摺動子28を前進させると、作動突起28aの摺動子28外壁面からの径方向外側への高さは、作動突起28aの側壁前方である作動突起基部28bの側壁前方が、カム突起基部30cの側壁後方に接触可能な高さであるため、作動面28baと前方作動面30cdとが接触する。カム筒30は、前方作動面30cdを介して作動面28baから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。
【0081】
図45は、
図44の状態から摺動子28を前進させた図である。作動突起28aの摺動子28外壁面からの径方向外側への高さは、作動突起28aの側壁前方である作動突起基部28bの側壁前方が、カム突起基部30cの側壁後方に接触可能な高さである。そのため、作動突起28aの側壁前方である作動突起基部28bの側壁前方は、カム突起30bの側壁後方である、軸方向後方に後方作動面30ceが形成されているカム突起基部30cの回動方向前方の側壁に対して係止可能である。
【0082】
以上より、カム筒30の貫通孔30a前方から摺動子28を挿入し作動突起後方端部28cの側壁後方がカム突起基部30c及びカム突起前方端部30dの各側壁前方と係止せず挿通が進み、カム突起前方端部30dの側壁前方と係止面28daとが接触した後、摺動子28が貫通孔30a前方へ移動しても、カム筒30と摺動子28とが、作動突起28aの側壁前方とカム突起30bの側壁後方が接触し作動突起28aの側壁前方がカム突起30bの側壁後方に係止可能となる周方向位置に変位するため、摺動子28が貫通孔30aから抜けないようカム筒30及び摺動子28の周方向の位置関係に配慮する必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。
【0083】
本実施形態においても、作動突起28aの側壁前方の少なくとも一部が、係止突起28dの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って後方に延ばした領域の外側に位置する。具体的には、作動突起28aの側壁前方である作動突起基部28bの側壁前方に形成されている作動面28baのうち回動方向後方の一部が、係止突起28dの最大周方向幅の範囲を軸方向に沿って後方に延ばした領域の外側に位置している。そのため、カム筒30の貫通孔30a前方から摺動子28を挿入し作動突起後方端部28cの側壁後方がカム突起基部30c及びカム突起前方端部30dの各側壁前方と係止せず挿通が進む際に、カム突起前方端部30dの側壁前方と、係止突起28dの側壁後方とが接触しやすくなることでカム筒30の回動可能な範囲をより確保できる。具体的には、
図42に示すような、没入案内面30daと係止面28daとの接触がしやすくなることで、カム筒30の、没入案内面30daを介し係止面28daから周方向の力を受けた回動方向前方への回動可能な範囲をより広く確保できる。よって、
図44に示すように、摺動子28がカム筒30前方へ移動しても作動突起28aの側壁前方とカム突起30bの側壁後方が接触可能な周方向の幅をより多く設けることができるため、摺動子28が貫通孔30aから抜けないようカム筒30及び摺動子28の周方向の位置関係に配慮する必要がなく、組み立てやすい出没式筆記具とすることができる。
【0084】
【0085】
図46は、筆記具本体26が軸筒23内部において最も後退した状態を示した図であり、没入状態における摺動子28及びカム筒30の位置関係を示している。
【0086】
図47は、
図46の状態から筆記具本体26を前進させた図である。
図46の状態から筆記具本体26を前進すると、作動面28baと前方作動面30cdとが接触する。
【0087】
図48は、
図47の状態から筆記具本体26を前進させた図である。この状態が、筆記具本体26が軸筒23内部において最も前進した状態である。
図47の状態から、筆記具本体26を前進させると、カム筒30は回動方向前方へ回動する。パイプ27bの前端面が段部24abに接触して筆記具本体26の前進が止まると、カム筒30の回動も止まり、
図48に示す状態となる。
【0088】
図49は、
図48の状態から筆記具本体26を後退させた図である。
図48の状態から筆記具本体26を後退させると、係止面28daと突出係止面30caとが接触する。
【0089】
図50は、
図49の状態から筆記具本体26を後退させた図であり、突出状態における摺動子28及びカム筒30の位置関係を示している。
図49の状態から筆記具本体26を後退させると、カム筒30は、突出係止面30caを介して係止面28daから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。突出係止面30caの回動方向後方にはカム突起前方端部30dがあり、カム突起前方端部30dの回動方向前方の側壁と、係止突起28dの側壁後方のうち回動方向後方が接触することで、筆記具本体26の後退及びカム筒30の回動が停止し、
図50に示す状態となる。
【0090】
図51は、
図50の状態から筆記具本体26を前進させた図である。
図50の状態から筆記具本体26を前進させると、作動面28baと後方作動面30ceとが接触する。筆記具本体26を更に前進させると、カム筒30は、後方作動面30ceを介して作動面28baから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。パイプ27bの前端面が段部24abに接触して筆記具本体26の前進が止まると、カム筒30の回動も止まる。
【0091】
その後筆記具本体26を後退させると、係止面28daと没入案内面30daとが接触する。カム筒30は、没入案内面30daを介して係止面28daから周方向の力を受けて回動方向前方へ回動する。カム筒30が、没入案内面30daと係止面28daとの接触が解除されるまで回動すると、
図46に示す没入状態となる。
【0092】
各実施形態に係る各樹脂成形品の材質は、成形性や耐久性などを考慮して、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、シリコーン樹脂、エラストマー、又は、これらの樹脂を含む複合材などを適宜選択することができる。また、成形方法も様々な方法を適宜選択することができる。
【0093】
図52は
図36のB‐B’線断面矢視図、
図53は摺動子28の外観斜視図、
図54は摺動子28の軸方向視図である。
図53及び
図54は軸方向前方が図面手前になる角度から摺動子28を視認している。摺動子28の内部には、案内面28haと、溝28hbと、リブ28hcとが形成されている。
図53は摺動子28の外壁を透明にして、摺動子28の内部の一部を破線で図示している。
【0094】
案内面28haは、軸方向前方から軸方向後方に向かうにつれて互いに接近する一対の曲面である。案内面28haの軸方向後方には、溝28hbが連なっており、案内面28haがそれぞれ溝28hbの一対の側壁と連なっている。案内面28ha及び溝28hbは、本発明に係る出没式筆記具を組み立てる工程において、摺動子28の周方向の位置決めをするための治具との関係で機能する部位である。棒状の治具の外壁面に突起が形成されており、治具の先端に摺動子28の前端開口部を被せるように乗せると、治具の突起の側壁が案内面28haと接触する。治具への摺動子28への被覆が進むと(摺動子28が鉛直方向下方へ移動すると)、突起の側壁は案内面28haによって溝28hb側へ案内されるよう、摺動子28が軸回転する。さらに被覆が進むと、突起が溝28hb内を摺動するようになり、摺動子28を任意の周方向位置に位置決めすることができる。摺動子28を一定の周方向位置で位置決めできることによって、後軸25を摺動子28へ被覆するよう取り付ける際に、摺動リブ25aaが摺動溝28gに挿入可能なよう、後軸25と摺動子28との周方向の位置合わせが容易になり好ましい。
【0095】
リブ28hcは摺動子28の内壁面から径方向内側に向かって突出している。本実施形態においては3か所に形成されている。リブ28hcと治具の先端とが緩く圧入できるように、軸方向に直交する方向の横断面において、3か所のリブ28hcを接点とする摺動子7内部の内接円の面積は、治具の先端の横断面積(太さ)よりわずかに小さくなるよう、リブ28hcの突出量が設計される。治具の突起が溝28hbに案内された後、リブ28hcと治具の先端が緩く圧入することで、治具への摺動子28の被覆が停止し、摺動子28を任意の軸方向位置に位置決めすることができる。リブ28hcの数や形状は適宜変更可能である。当該リブ28hcを接点とする摺動子28内部の内接円の面積は、パイプ27bの外壁面における横断面積より大きいため、パイプ27bの後端面がリブ28hcより軸方向後方の段部と接触可能である。よって、ボールペンリフィル27と摺動子28との軸方向の位置合わせが容易になり好ましい。また、治具の突起と摺動子28内部とは、溝28hbの側壁及び底面に対して圧入されない寸法関係となっている。
【符号の説明】
【0096】
1 ボールペン
2 軸筒
3 前軸
3a 段部
3b コイルスプリング前端用リブ
4 後軸
4a リブ
4aa 摺動リブ
5 筆記具本体
6 ボールペンリフィル
6a ボールペンチップ
6b パイプ
6ba コイルスプリング後端用突起
7 摺動子
7a 作動突起
7aa 作動面
7ab 前方案内面
7ac 後方案内面
7b 係止突起
7ba 係止面
7c ノック部
7d 摺動溝
7e 環状突起
8 コイルスプリング
9 カム筒
9a 貫通孔
9b カム突起
9c カム突起基部
9ca 突出係止面
9cb 後方作動突起案内面
9cc 前方作動突起案内面
9cd 前方作動面
9ce 後方作動面
9d カム突起前方端部
9da 没入案内面
10 ボールペン
11 軸筒
12 筆記具本体
13 ボールペンリフィル
14 摺動子
14a 作動突起
14aa 作動面
14ab 前方案内面
14ac 後方案内面
14b 係止突起
14ba 係止面
14c 環状突起
15 カム筒
15a 貫通孔
15b カム突起
15c カム突起基部
15ca 没入案内面
15cb 後方作動突起案内面
15cc 前方作動突起案内面
15cd 前方作動面
15ce 後方作動面
15d カム突起前方端部
15da 突出係止面
16 ボールペン
17 軸筒
18 筆記具本体
19 ボールペンリフィル
20 摺動子
20a 作動突起
20aa 作動面
20ab 前方案内面
20ac 後方案内面
20b 係止突起
20ba 係止面
20c 環状突起
21 カム筒
21a 貫通孔
21b カム突起
21c カム突起基部
21ca 突出係止面
21cb 後方作動突起案内面
21cc 前方作動突起案内面
21cd 前方作動面
21ce 後方作動面
21d カム突起前方端部
21da 没入案内面
22 ボールペン
23 軸筒
24 前軸
24a 段部
24b コイルスプリング前端用リブ
25 後軸
25a リブ
25aa 摺動リブ
26 筆記具本体
27 ボールペンリフィル
27a ボールペンチップ
27b パイプ
27ba コイルスプリング後端用突起
28 摺動子
28a 作動突起
28b 作動突起基部
28ba 作動面
28c 作動突起後方端部
28ca 前方案内面
28cb 後方案内面
28d 係止突起
28da 係止面
28e ノック部
28f 環状突起
28g 摺動溝
28ha 案内面
28hb 溝
28hc リブ
29 コイルスプリング
30 カム筒
30a 貫通孔
30b カム突起
30c カム突起基部
30ca 突出係止面
30cb 後方作動突起案内面
30cc 前方作動突起案内面
30cd 前方作動面
30ce 後方作動面
30d カム突起前方端部
30da 没入案内面