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特開2024-121805内視鏡システム、内視鏡システムの制御方法および制御プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121805
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】内視鏡システム、内視鏡システムの制御方法および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20240830BHJP
   A61B 1/045 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
A61B1/00 655
A61B1/00 553
A61B1/00 735
A61B1/045 618
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024024231
(22)【出願日】2024-02-21
(31)【優先権主張番号】63/448474
(32)【優先日】2023-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「医療機器等における先進的研究開発・開発体制強靱化事業」「外科手術のデジタルトランスフォーメーション:情報支援内視鏡外科手術システムの開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510097747
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立がん研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】戴 明軒
(72)【発明者】
【氏名】荻本 浩人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 寛
(72)【発明者】
【氏名】北口 大地
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161GG13
4C161HH51
4C161HH52
4C161HH57
4C161NN01
4C161PP12
4C161RR06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】同一の処置具の使用中に、処置の進行に合わせて近接視野と俯瞰視野とを自動的に切り替えることができる内視鏡システム、内視鏡システムの制御方法および制御プログラムを提供する。
【解決手段】内視鏡システムは、処置具を含む被検体内の画像を取得する内視鏡と、内視鏡の位置および姿勢を変更する移動装置と、少なくとも1つのプロセッサを有する制御装置と、を備える。制御装置は、処置具から組織までの距離および処置具の動作状態を取得しSA2、距離および動作状態の少なくとも1つに基づいてズームインおよびズームアウトの要否を判定しSA3、ズームインまたはズームアウトが必要であると判定された場合に、表示装置に表示する画像内の被写体を拡大または縮小するズームイン制御またはズームアウト制御を行うSA4。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に挿入され、処置具を含む前記被検体内の画像を取得する内視鏡と、
該内視鏡の位置および姿勢を変更する移動装置と、
少なくとも1つのプロセッサを有する制御装置と、を備え、
該制御装置が、
前記処置具から組織までの距離を取得し、
前記処置具の動作状態を取得し、
前記距離および前記動作状態の少なくとも1つに基づいてズームインおよびズームアウトの要否を判定し、
ズームインまたはズームアウトが必要であると判定された場合に、表示装置に表示する前記画像内の被写体を拡大または縮小するズームイン制御またはズームアウト制御を行う、内視鏡システム。
【請求項2】
前記ズームイン制御および前記ズームアウト制御が、前記内視鏡の位置、前記内視鏡の光学倍率および前記画像のデジタル倍率の内、少なくとも1つの制御である、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記制御装置が、前記画像内の特定点を該画像内に維持しながら前記ズームイン制御または前記ズームイン制御を行う、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記制御装置が、
前記画像に基づいて処置フェーズを判定し、
前記処置フェーズに応じた判定フローに従って前記距離および前記動作状態の少なくとも1つを順番に判定することによって、前記ズームインおよび前記ズームアウトの要否を判定する、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記制御装置が、前記画像内の処置具の種類を検出し、前記処置具の種類に基づいて前記処置フェーズを判定する、請求項4に記載の内視鏡システム。
【請求項6】
前記制御装置が、前記画像内の所定の対象処置具の種類を検出する、請求項5に記載の内視鏡システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記処置具の種類が把持鉗子である場合、前記処置フェーズが展開フェーズであると判定する、請求項5に記載の内視鏡システム。
【請求項8】
前記動作状態が、前記把持鉗子の開閉状態および把持状態の少なくとも1つを含む、請求項7に記載の内視鏡システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記処置具の種類が電気メスおよびエネルギデバイスのいずれかである場合、前記処置フェーズが剥離フェーズであると判定する、請求項5に記載の内視鏡システム。
【請求項10】
前記動作状態が、前記電気メスまたは前記エネルギデバイスの通電状態、開閉状態および把持状態の少なくとも1つを含む、請求項9に記載の内視鏡システム。
【請求項11】
前記制御装置は、前記距離が所定の閾値以下である場合にズームインが必要であると判定し、前記ズームイン制御を行う、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項12】
前記制御装置は、前記画像内の被写体の倍率が所定の第1倍率以上になったときに前記ズームイン制御を終了する、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項13】
前記制御装置が、前記内視鏡から被写体までの距離に基づいて前記倍率を判定する、請求項12に記載の内視鏡システム。
【請求項14】
前記制御装置が、前記画像内の所定の被写体の面積に基づいて前記倍率を判定する、請求項13に記載の内視鏡システム。
【請求項15】
前記制御装置は、前記画像内の被写体の倍率が所定の第2倍率以下になったときに前記ズームアウト制御を終了する、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項16】
前記制御装置が、前記内視鏡から被写体までの距離に基づいて前記倍率を判定する、請求項15に記載の内視鏡システム。
【請求項17】
前記制御装置が、前記画像内の所定の被写体の面積に基づいて前記倍率を判定する、請求項15に記載の内視鏡システム。
【請求項18】
内視鏡システムの制御方法であって、前記内視鏡システムが、被検体内に挿入され、処置具を含む前記被検体内の画像を取得する内視鏡と、該内視鏡の位置および姿勢を変更する移動装置と、を備え、
前記処置具から組織までの距離を取得し、
前記処置具の動作状態を取得し、
前記距離および前記動作状態の少なくとも1つに基づいてズームインおよびズームアウトの要否を判定し、
ズームインまたはズームアウトが必要であると判定された場合に、表示装置に表示する前記画像内の被写体を拡大または縮小するズームイン制御またはズームアウト制御を行う、制御方法。
【請求項19】
請求項18に記載の制御方法をコンピュータに実行させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡システム、内視鏡システムの制御方法および制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
腹腔鏡手術等の内視鏡手術において、術者が望む画像の倍率は、処置具の操作に応じて異なる。したがって、同一の処置具の操作中に、処置具の操作に応じて近接視野と俯瞰視野とが切り替えられる。近接視野は、被写体の狭い範囲を含む高倍率の視野であり、俯瞰視野は、被写体の広い範囲を含む低倍率の視野である。視野の切り替えは、例えば、助手が術者の指示に従って内視鏡を被写体に近付ける、または遠ざけることによって行われる。したがって、術者は、助手に対して指示を出す必要がある。
【0003】
一方、手術中に内視鏡から被写体までの距離を自動的に変更する内視鏡システムが提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。特許文献1において、処置具の種類に応じて、内視鏡から処置具の先端までの距離が変更される。特許文献2において、焼灼された組織からのミストの発生および消失に応じて、内視鏡から組織までの距離が変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2022/054428号
【特許文献2】特開2020-192380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の場合、内視鏡から処置具の先端までの距離は、処置具の種類の変更に応答して変更される。したがって、同一の処置具の使用中に近接視野と俯瞰視野とを自動的に切り替えることはできない。
特許文献2の場合、内視鏡から組織までの距離は、ミストの有無に応じて変更される。したがって、距離の変更は、ミストの発生する処置に限って自動で実行され、ミストに関係なく処置具の操作に応じて距離を自動的に変更することができない。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、同一の処置具の使用中に、処置の進行に合わせて近接視野と俯瞰視野とを自動的に切り替えることができる内視鏡システム、内視鏡システムの制御方法および制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、被検体内に挿入され、処置具を含む前記被検体内の画像を取得する内視鏡と、該内視鏡の位置および姿勢を変更する移動装置と、少なくとも1つのプロセッサを有する制御装置と、を備え、該制御装置が、前記処置具から組織までの距離を取得し、前記処置具の動作状態を取得し、前記距離および前記動作状態の少なくとも1つに基づいてズームインおよびズームアウトの要否を判定し、ズームインまたはズームアウトが必要であると判定された場合に、表示装置に表示する前記画像内の被写体を拡大または縮小するズームイン制御またはズームアウト制御を行う、内視鏡システムである。
【0008】
本発明の他の態様は、内視鏡システムの制御方法であって、前記内視鏡システムが、被検体内に挿入され、処置具を含む前記被検体内の画像を取得する内視鏡と、該内視鏡の位置および姿勢を変更する移動装置と、を備え、前記処置具から組織までの距離を取得し、前記処置具の動作状態を取得し、前記距離および前記動作状態の少なくとも1つに基づいてズームインおよびズームアウトの要否を判定し、ズームインまたはズームアウトが必要であると判定された場合に、表示装置に表示する前記画像内の被写体を拡大または縮小するズームイン制御またはズームアウト制御を行う、制御方法である。
本発明の他の態様は、上記の制御方法をコンピュータに実行させるための制御プログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る内視鏡システムの全体構成図である。
図2図1の内視鏡システムのブロック図である。
図3A】展開フェーズの第1タスク中の近接視野の画像である。
図3B】展開フェーズの第2タスク中の近接視野の画像である。
図3C】展開フェーズの第3タスク中の俯瞰視野の画像である。
図4A】本発明の第1実施形態に係る制御方法のフローチャートである。
図4B図4Aの制御方法のステップSA2の一例を説明するフローチャートである。
図4C図4Aの制御方法のステップSA3の一例を説明するフローチャートである。
図4D図4Aの制御方法のステップSA5の一例を説明するフローチャートである。
図4E図4Aの制御方法のステップSA5の他の例を説明するフローチャートである。
図5】処置具から組織までの距離および動作情報の組み合わせを説明する図である。
図6】ステップSA54を説明する画像である。
図7A】剥離フェーズの第1タスク中の近接視野の画像である。
図7B】剥離フェーズの第2タスク中の俯瞰視野の画像である。
図8A】本発明の第2実施形態に係る制御方法のフローチャートである。
図8B図8Aの制御方法のステップSB3の一例を説明するフローチャートである。
図8C図8Aの制御方法のステップSB3の他の例を説明するフローチャートである。
図8D図8Aの制御方法のステップSB5の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る内視鏡システム、内視鏡システムの制御方法および制御プログラムについて図面を参照して説明する。
図1に示されるように、本実施形態に係る内視鏡システム1は、内視鏡2および処置具6を被検体Aである患者の体内に挿入し、処置具6を内視鏡2によって観察しながら処置具6で患部等の対象部位を処置する手術に使用され、例えば、腹腔鏡下手術に使用される。
【0011】
図1および図2に示されるように、内視鏡システム1は、被検体A内に挿入される内視鏡2と、内視鏡2の位置および姿勢を変更する移動装置3と、表示装置4と、内視鏡2および移動装置3を制御する制御装置5とを備える。
内視鏡2および処置具6は、図示しないトロッカ内をそれぞれ経由して被検体A内、例えば腹腔に挿入される。トロッカは、体壁に形成された穴を通って被検体A内に挿入される筒状の器具であり、穴を支点にして揺動可能である。
【0012】
内視鏡2は、CCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサのような撮像素子2aを有し、被検体A内の組織B(B1,B2,B3)および処置具6を含む画像Cを取得する(図3Aから図3C参照。)。撮像素子2aは、例えば内視鏡2の先端部に設けられた3次元カメラであり、ステレオ画像を画像Cとして取得する。内視鏡2の対物レンズは、画像C内の被写体を光学的に拡大または縮小するズームレンズ2bを有していてもよい。
画像Cは、内視鏡2から制御装置5を経由して表示装置4に送信され、表示装置4に表示される。表示装置4は、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイ等の任意の種類のディスプレイである。
【0013】
移動装置3は、多関節のロボットアームからなる電動ホルダ3aを備え、制御装置5によって制御される。内視鏡2は、電動ホルダ3aの先端部に保持され、電動ホルダ3aの動作によって内視鏡2の位置および姿勢が3次元的に変更される。
【0014】
制御装置5は、内視鏡2、移動装置3および表示装置4に表示される画像Cを制御する内視鏡プロセッサである。図2に示されるように、制御装置5は、少なくとも1つのプロセッサ5aと、メモリ5bと、記憶部5cと、入出力インタフェース5dとを備える。
制御装置5は、入出力インタフェース5dを経由して周辺機器2,3,4と接続され、画像Cおよび信号等を入出力インタフェース5dを経由して送受信する。
【0015】
記憶部5cは、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体であり、例えば、ハードディスクドライブ、光ディスクまたはフラッシュメモリ等である。記憶部5cは、後述する制御方法をプロセッサ5aに実行させる制御プログラム5eと、プロセッサ5aの処理に必要なデータとを記憶している。
プロセッサ5aは、記憶部5cからRAM(Random Access Memory)等のメモリ5bに読み込まれた制御プログラム5eに従って後述する制御方法を実行する。プロセッサ5aが実行する後述の処理の一部は、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SoC(System-On-A-Chip)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはPLD(Programmable Logic Dvice)等の専用の論理回路やハードウェア等によって実現されてもよい。
【0016】
プロセッサ5aは、追従モードおよび静止モードのいずれかで移動装置3を制御してもよい。ユーザは、制御装置5に設けられたユーザインタフェース(図示略)を使用して、静止モードおよび追従モードの一方を選択することができる。
追従モードは、プロセッサ5aが処置具6の位置に基づいて移動装置3を制御することによって、内視鏡2を処置具6に自動的に追従させるモードである。例えば、プロセッサ5aは、処置具6の先端の位置を画像Cを用いたステレオ計測によって取得し、処置具6の先端が画像C内の所定の目標点に配置されるように、移動装置3を制御して内視鏡2を移動させる。
静止モードは、処置具6の位置に関わらず内視鏡2を一定位置に維持するモードである。
【0017】
一般に、1つの手術は、1以上の処置フェーズを含む。各処置フェーズにおいて、術者は、1つの処置具を使用して複数のタスクを順番に実行することによって、1種類の処置を進める。手術中の画像C内の被写体の適切な倍率は、処置フェーズおよびタスクに応じて異なる。
図3Aから図3Cに示されるように、処置フェーズの一例は、組織を展開する展開フェーズである。符号6は、術者が操作する術者鉗子を示し、符号71,72は、助手が操作する助手鉗子を示している。
【0018】
展開フェーズは、図3A図3Bおよび図3Cにそれぞれ示される第1タスク、第2タスクおよび第3タスクを含む。
具体的には、第1タスクにおいて、術者は、開いた術者鉗子6を組織B1に近付け、術者鉗子6を閉じて組織B1を把持し、組織B1を術者鉗子6から第1助手鉗子71に受け渡す(図3A参照。)。
次に、第2タスクにおいて、術者は、開いた術者鉗子6を他の位置の組織B2に近付け、術者鉗子6を閉じて組織B2を把持し、組織B2を術者鉗子6から第2助手鉗子72に受け渡す(図3B参照。)。
次に、第3タスクにおいて、術者は、2つの助手鉗子71,72によって組織B1,B2間の組織B3が展開されていることを確認し、必要に応じて助手に指示して助手鉗子71,72の位置および組織B1,B2の牽引方向を調整する(図3C参照。)。
【0019】
術者が望む視野は、第1タスクでは、拡大された組織B1および処置具6,71を含む高倍率の近接視野F1であり、第2タスクでは、拡大された組織B2および処置具6,72を含む高倍率の近接視野F1であり、第3タスクでは、組織B1,B2,B3および処置具6,71,72を全て含む低倍率の俯瞰視野F2である。図3Aおよび図3Bは近接視野F1の画像Cを示し、図3Cは俯瞰視野F2の画像Cを示している。
【0020】
プロセッサ5aは、追従モードまたは静止モードで移動装置3を制御中に制御方法を実行することによって、処置フェーズおよびタスクに応じて画像Cをズームインまたはズームアウトし、それにより近接視野F1と俯瞰視野F2とを自動的に切り替える。
具体的には、図4Aに示されるように、本実施形態に係る制御方法は、処置フェーズを判定するステップSA1と、術者による処置具6の操作に関する操作情報を取得するステップSA2と、ズームの要否を判定するステップSA3と、画像CをズームするステップSA4と、画像C内の被写体の倍率を判定するステップSA5と、ズームを終了するステップSA6と、を含む。
【0021】
プロセッサ5aは、画像Cに基づいて処置フェーズを判定する(ステップSA1)。具体的には、プロセッサ5aは、画像C内の処置具6の種類を検出する。処置具6が展開用の処置具である場合、プロセッサ5aは、処置フェーズが展開フェーズであると判定し(ステップSA1のYES)、次のステップSA2に進む。一方、処置具6が展開用の処置具でない場合、プロセッサ5aは、処置フェーズが展開フェーズ以外のフェーズであると判定し(ステップSA1のNO)、ステップSA1を繰り返す。展開用の処置具6は、例えば、把持鉗子である。
【0022】
図3Aから図3Cに示されるように、画像C内に複数の処置具6,71,72が存在することがある。したがって、ステップSA1において、プロセッサ5aは、画像C内の所定の対象処置具6を検出し、対象処置具6の種類を検出してもよい。所定の対象処置具6は、例えば、術者のメインの処置具、術者の右手で操作される右手処置具、または、術者によって事前に制御装置5に登録された処置具である。処置具の登録は、例えば、処置具6が挿入されるトロッカのポートの設定によって行われる。
【0023】
操作情報は、処置具6から組織Bまでの距離Dと、処置具6の動作状態と、を含む。動作状態は、処置具6が開いているか、または閉じているかである開閉状態と、処置具6が組織Bを把持しているか否かである把持状態と、を含む。図4Bに示されるように、ステップSA2において、プロセッサ5aは、処置具6から組織Bまでの画像Cの深さ方向の距離Dを取得し(ステップSA21)、処置具6の動作状態を取得する(ステップSA22)。
【0024】
ステップSA21において、プロセッサ5aは、ステレオ画像Cから距離Dを測定することによって、距離Dを取得してもよい。例えば、プロセッサ5aは、処置具6の先端の深さ方向の距離と、処置具6の周辺の背景の深さ方向の距離とを測定し、2つの距離の差分を距離Dとして算出する。プロセッサ5aは、他の手段を用いて距離Dを取得してもよく、例えば、内視鏡2に設けられた距離センサから距離Dを受信してもよい。
【0025】
ステップSA22において、プロセッサ5aは、画像C内の処置具6の先端部を画像解析することによって、開閉状態および把持状態を取得してもよい。または、プロセッサ5aは、処置具6のハンドルに設けられた力覚センサからハンドルに加えられている力を受信し、力の大きさから開閉状態および把持状態を判断してもよい。プロセッサ5aは、他の手段を用いて開閉状態および把持状態を取得してもよい。
【0026】
図5は、距離Dおよび動作状態の組み合わせを説明している。距離Dおよび動作状態は、展開フェーズ中のタスクに応じて異なる。
例えば、図3Aの第1タスクおよび図3Bの第2タスクでは、これから組織Bを把持するために開いた把持鉗子6が組織Bの近傍に配置されるか、または、閉じた把持鉗子6が組織Bを把持する。図3Cの第3タスクでは、組織Bを解放した後に閉じられた把持鉗子6が組織Bの近傍に配置されるか、または、把持鉗子6が次の操作のために組織Bから離れた位置に配置される。
【0027】
次に、プロセッサ5aは、展開フェーズ用の判定フローに従い、距離Dおよび動作状態に基づいて、ズームインおよびズームアウトの要否を判定する(ステップSA3)。
図4Cは、判定フローの一例を示している。判定フローは、ステップSA31~SA33を含み、プロセッサ5aは、距離Dおよび動作状態を判定フローに従って順番に判定する。
【0028】
具体的には、距離Dが所定の閾値Th1以下かつ把持鉗子6が開いている場合(ステップSA31のYESかつステップSA32のNO)、または、距離Dが閾値Th1以下かつ閉じた把持鉗子6が組織Bを把持している場合(ステップSA31のYES、ステップSA32のYESかつステップSA33のYES)、プロセッサ5aは、ズームインが必要であると判定し、表示装置4に表示する画像C内の被写体を拡大するズームイン制御を行う(ステップS41)。
すなわち、プロセッサ5aは、距離Dが閾値Th1以下かつ把持鉗子6が開いていること、または、距離Dが閾値Th1以下かつ把持鉗子6が組織Bを把持することなく閉じていること、を開始トリガとして、ズームインを開始する。
【0029】
一方、距離Dが閾値Th1よりも大きい場合(ステップSA31のNO)、または、把持鉗子6が組織Bを把持することなく閉じている場合(ステップSA31のYES、ステップSA32のYESかつステップSA33のNO)、プロセッサ5aは、ズームアウトが必要であると判定し、表示装置4に表示する画像C内の被写体を縮小するズームアウト制御を行う(ステップS42)。
すなわち、プロセッサ5aは、距離Dが閾値Th1よりも大きいこと、または、閉じた把持鉗子6が組織を把持していないこと、を開始トリガとして、ズームアウト制御を開始する。
所定の閾値Th1は、例えば、術者によって制御装置5に事前に設定された値または制御装置5が自動的に設定した値であってもよく、または、他の手段によって設定された値であってもよい。
【0030】
ズームイン制御およびズームアウト制御は、内視鏡2の位置の制御である。すなわち、プロセッサ5aは、移動装置3を制御して内視鏡2を被写体、例えば把持鉗子6または組織に近付けることによって、画像Cをズームインさせる(ステップS41)。また、プロセッサ5aは、移動装置3を制御して内視鏡2を被写体から遠ざけることによって、画像Cをズームアウトさせる(ステップS42)。
ステップS41,S42において、プロセッサ5aは、画像C内の特定点を画像C内に維持しながらズームイン制御およびズームアウト制御を行ってもよい。特定点は、例えば、対象処置具6の先端等、術者が注目する関心領域である。
【0031】
ズームインまたはズームアウトの開始後、プロセッサ5aは、所定の倍率まで画像C内の被写体がズームインまたはズームアウトされたか否かを判定する(ステップSA5)。
図4Dは、ズームインにおける倍率の判定方法の一例を示している。
ズームインの場合の所定の第1倍率は、例えば、観察距離が第1設定値である倍率である。観察距離は、画像Cの深さ方向における、内視鏡2の先端から被写体(例えば、処置具6の先端または組織B)までの距離である。プロセッサ5aは、観察距離が第1設定値以下になったとき(ステップSA51のYES)、内視鏡2を停止させることによってズームイン制御を終了する(ステップSA6)。
すなわち、プロセッサ5aは、画像C内の被写体が所定の第1倍率まで拡大されたことを終了トリガとして、画像Cのズームインを終了させる。これにより、表示装置4には、図3Aおよび図3Bに示されるような、所定の第1倍率に被写体が拡大された近接視野F1の画像Cが表示される。
【0032】
図4Eは、ズームアウトにおける倍率の判定方法の一例を示している。
ズームアウトの場合の所定の第2倍率は、画像C内にトロッカまたは両方の助手鉗子71,72が写る倍率、または、観察距離が第2設定値である倍率である。第2倍率は第1倍率よりも小さく、第2設定値は第1設定値よりも大きい。プロセッサ5aは、画像C内にトロッカが写ったとき(ステップSA52のYES)、観察距離が第2設定値以上になったとき(ステップSA53のYES)、または、両方の助手鉗子71,72が画像C内に写ったとき(ステップSA54のYES)、内視鏡2を停止させることによってズームアウト制御を終了する(ステップSA6)。
すなわち、プロセッサ5aは、画像C内の被写体が所定の第2倍率まで縮小されたことを終了トリガとして、画像Cのズームアウト制御を終了する。これにより、表示装置4には、図3Cに示されるような、所定の第2倍率に被写体が縮小された俯瞰視野F2の画像Cが表示される。
【0033】
第1設定値および第2設定値は、例えば、術者によって制御装置5に事前に設定された値または制御装置5が自動的に設定した値であってもよく、または、他の手段によって設定された値であってもよい。例えば、第1設定値は、内視鏡2の先端を被写体に接触させない安全値であってもよい。
ステップSA52において、プロセッサ5aは、例えば公知の画像認識技術を用いて、画像C内のトロッカを検出してもよい。
ステップSA54において、図6に示されるように、プロセッサ5aは、画像C内の各助手鉗子71,72の部分が所定量以上であるか否かを判断してもよい。例えば、プロセッサ5aは、各助手鉗子71,72の画像C内の部分の長さL1,L2が所定値以上あるか否かを判断してもよい。
【0034】
ステップSA6の後、プロセッサ5aは、処置具6の種類が変更されたか否かを判定してもよい(ステップSA7)。例えば、プロセッサ5aは、現在の画像C内の処置具6の種類を検出し、検出された種類をステップSA1において展開フェーズであると判定したときの処置具6の種類と比較することによって、処置具6の種類の変更を判定する。
処置具6が変更されていない場合(ステップSA7のNO)、すなわち同一の処置具6を使用して展開フェーズが続いている場合、プロセッサ5aは、ステップSA2~SA6を繰り返す。一方、処置具6の種類が変更された場合(ステップSA7のYES)、プロセッサ5aは、ステップSA1に戻る。
【0035】
このように、本実施形態によれば、距離Dおよび動作状態に基づいて、ズームインおよびズームアウトの要否が判定される。距離Dおよび動作状態のような操作情報は展開フェーズ中のタスクに応じて異なる。したがって、タスクに応じてズームインおよびズームアウトの要否を適切に判定することができ、同一の処置具6を使用する展開フェーズ中に、処置の進行に合わせて近接視野F1と俯瞰視野F2とを自動的にかつ適切なタイミングで切り替えることができる。これにより、術者は、組織の展開をスムーズに行うことができる。
【0036】
また、タスクに応じた視野の切り替えが必要であるか否かは、処置フェーズに応じて異なる。本実施形態によれば、展開フェーズが画像Cに基づいて自動的に判定され、その後、視野の切り替えのための制御方法が自動的に実行される。これにより、視野の切り替えが必要な処置フェーズのみにおいて制御方法を自動的に実行することができる。
【0037】
また、本実施形態によれば、ズームインおよびズームアウトの要否が、距離D、開閉状態および把持状態の組み合わせに基づいて判定される。これにより、ズームインおよびズームアウトの要否を正確に判定することができ、ズームインまたはズームアウトを適切なタイミングで実行することができる。
【0038】
本実施形態において、プロセッサ5aが、ズームインおよびズームアウトの要否を距離D、開閉状態および把持状態に基づいて判定することとしたが、これに代えて、距離D、開閉状態および把持状態の内の1つまたは2つに基づいて判定してもよい。
ズームインおよびズームアウトの要否を適切に判定するために、プロセッサ5aは、距離D、開閉状態および把持状態の内の2以上に基づいて判定することが好ましい。
1つのみに基づいて判定する場合、ズームインおよびズームアウトの要否を適切に判定することができない可能性がある。例えば、図5に示されるように、距離Dが閾値Th1以下の場合の適切な視野は、近接視野F1および俯瞰視野F2のいずれもあり得る。したがって、距離Dのみに基づいてズームインおよびズームアウトの要否を適切に判定することは難しい。
【0039】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る内視鏡システム、内視鏡システムの制御方法および制御プログラムについて図面を参照して説明する。
本実施形態は、プロセッサ5aが、膜等の組織を切るまたは剥がす剥離フェーズにおいて画像Cのズームを自動的に行う点において、第1実施形態と相違する。本実施形態において、第1実施形態と異なる構成について説明し、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係る内視鏡システムは、第1実施形態の内視鏡システム1と同一の構成を有し、内視鏡2、移動装置3、表示装置4および制御装置5を備える。
【0040】
剥離フェーズは、図7Aおよび図7Bにそれぞれ示される第1タスクおよび第2タスクを含む。
具体的には、第1タスクにおいて、術者は、剥離用の処置具6によって組織B4(例えば、腸管膜)を剥離する(図7A参照。)。次に、第2タスクにおいて、術者は、剥離ラインEの全体を観察する(図7B参照。)。その後、術者は、必要に応じて追加の剥離を行う。
術者が望む視野は、第1タスクでは、拡大された組織B4および処置具6を含む高倍率の近接視野F1であり、第2タスクでは、剥離ラインEの全体を含む低倍率の俯瞰視野F2である。図7Aは近接視野F1の画像Cを示し、図7Bは俯瞰視野F2の画像Cを示している。
【0041】
図8Aは、本実施形態において制御装置5が実行する制御方法を示している。
本実施形態に係る制御方法は、処置フェーズを判定するステップSB1と、術者による処置具6の操作に関する操作情報を取得するステップSB2と、ズームの要否を判定するステップSB3と、画像CをズームするステップSB4と、画像C内の被写体の倍率を判定するステップSB5と、ズームを終了するステップSB6と、を含む。
【0042】
プロセッサ5aは、画像Cに基づいて処置フェーズを判定する(ステップSB1)。具体的には、プロセッサ5aは、画像C内の処置具6の種類を検出する。ステップSA1と同様に、プロセッサ5aは、画像C内の所定の対象処置具6の種類を検出してもよい。処置具6が剥離用の処置具である場合、プロセッサ5aは、処置フェーズが剥離フェーズであると判定し(ステップSB1のYES)、次のステップSB2に進む。一方、処置具が剥離用の処置具でない場合、プロセッサ5aは、処置フェーズが剥離フェーズ以外のフェーズであると判定し(ステップSB1のNO)、ステップSB1を繰り返す。
剥離用の処置具6は、例えば、電気メスおよびエネルギデバイスのいずれかである。エネルギデバイスは、開閉可能な一対のジョーを有し、一対のジョー間に把持された組織にエネルギを供給する。
【0043】
ステップSB2において、プロセッサ5aは、ステップSA2と同様に、処置具6から組織までの距離Dを取得し、処置具6の動作状態を取得する。本実施形態において、処置具6の動作状態は、処置具6に電気が供給されているか否かである通電状態を少なくとも含む。処置具6がエネルギデバイスである場合、動作状態は、一対のジョーが開いているか、または閉じているかである開閉状態と、一対のジョーが組織Bを把持しているか否かである把持状態と、をさらに含む。
プロセッサ5aは、例えば、処置具6に供給される電流の情報をジェネレータから取得し、電流に基づいて通電状態を判定する。ジェネレータは、剥離のための電流を処置具6に供給する装置であり、制御装置5と接続される。プロセッサ5aは、他の手段を用いて通電状態を判定してもよい。
【0044】
次に、プロセッサ5aは、剥離フェーズ用の判定フローに従い、距離Dおよび動作状態に基づいて、ズームインおよびズームアウトの要否を判定する(ステップSB3)。
図8Bは、処置具6が電気メスである場合の判定フローの一例を示している。この判定フローは、ステップSB31,SB32を含み、プロセッサ5aは、距離Dおよび動作状態を判定フローに従って順番に判定する。
【0045】
具体的には、通電時間が所定の閾値Th2以上である場合(ステップSB31のYES)、または、距離Dが閾値Th1以下である場合(ステップSB32のYES)、プロセッサ5aは、ズームインが必要であると判定し、ズームイン制御を行う(ステップS41)。通電時間は、ジェネレータから処置具6への電流の供給が開始してからの経過時間である。
すなわち、プロセッサ5aは、通電時間が閾値Th2以上であること、または、距離Dが閾値Th1以下であること、を開始トリガとして、ズームインを開始する。
【0046】
一方、通電時間が閾値Th2よりも短い場合(ステップSB31のNO)、または、距離Dが閾値Th1より大きい場合(ステップSB32のNO)、プロセッサ5aは、ズームアウトが必要であると判定し、ズームアウト制御を行う(ステップS42)。
すなわち、プロセッサ5aは、通電時間が閾値Th2以上であること、または、距離Dが閾値Th1よりも大きいこと、を開始トリガとして、ズームアウト制御を開始する。
所定の閾値Th2は、例えば、術者によって制御装置5に事前に設定された値または制御装置5が自動的に設定した値であってもよく、または、他の手段によって設定された値であってもよい。
【0047】
図8Cは、処置具6がエネルギデバイスである場合の判定フローの一例を示している。
この判定フローは、ステップSB31,SB32に加えて、ステップSB33,SB34をさらに含む。具体的には、距離Dが所定の閾値Th1以下かつエネルギデバイス6が開いている場合(ステップSB32のYESかつステップSB33のNO)、または、距離Dが閾値Th1以下かつ閉じた把持鉗子6が組織を把持している場合(ステップSB32のYES、ステップSB33のYESかつステップSB34のYES)、プロセッサ5aは、ズームインが必要であると判定し、ズームイン制御を行う(ステップS41)。
【0048】
一方、距離Dが閾値Th1よりも大きい場合(ステップSB31のNO)、または、エネルギデバイス6が組織を把持することなく閉じている場合(ステップSB32のYES、ステップSB33のYESかつステップSB34のNO)、プロセッサ5aは、ズームアウトが必要であると判定し、ズームアウト制御を行う(ステップS42)。
【0049】
ズームインまたはズームアウトの開始後、プロセッサ5aは、所定の倍率まで画像C内の被写体がズームインまたはズームアウトされたか否かを判定する(ステップSB5)。
ズームインの場合の所定の第1倍率は、例えば、観察距離が第1設定値である倍率である。プロセッサ5aは、ステップSA51と同様、観察距離が第1設定値以下になったとき、内視鏡2を停止させることによってズームイン制御を終了する(ステップSB6)。
すなわち、プロセッサ5aは、画像C内の被写体が所定の第1倍率まで拡大されたことを終了トリガとして、画像Cのズームインを終了させる。これにより、表示装置4には、図7Aに示されるような、所定の第1倍率に被写体が拡大された近接視野F1の画像Cが表示される。
【0050】
図8Dは、ズームアウトにおける倍率の判定方法の一例を示している。
ズームアウトの場合の所定の第2倍率は、画像C内にトロッカまたは剥離ラインEの開始地点E1および終了地点E2の両方が写る倍率、または、観察距離が第2設定値である倍率である。第2倍率は第1倍率よりも小さく、第2設定値は第1設定値よりも大きい。プロセッサ5aは、画像C内にトロッカが写ったとき(ステップSB52のYES)、観察距離が第2設定値以上になったとき(ステップSB53のYES)、または、開始地点E1および終了地点E2の両方が画像C内に写ったときとき(ステップSB54のYES)、内視鏡2を停止させることによってズームアウト制御を終了する(ステップSB6)。
すなわち、プロセッサ5aは、画像C内の被写体が所定の第2倍率まで縮小されたことを終了トリガとして、画像Cのズームアウトを終了させる。これにより、表示装置4には、図7Bに示されるような、所定の第2倍率に被写体が縮小された俯瞰視野F2の画像Cが表示される。
【0051】
ステップSB52およびステップSB53は、ステップSA52およびステップSA53とそれぞれ同一である。
図7Bに示されるように、開始地点E1および終了地点E2はそれぞれ、剥離の開始時および終了時の処置具6の先端の位置である。開始地点E1および終了地点E2は、入力デバイスを使用して術者によって指定されてもよく、プロセッサ5aによって自動的に設定されてもよい。例えば、プロセッサ5aは、処置具6への電流の供給の開始時および終了時の処置具6の先端の位置をそれぞれ開始地点E1および終了地点E2としてステレオ画像Cから算出してもよい。あるいは、プロセッサ5aは、ズームインが必要であると判定された時点での処置具6の先端の位置を開始地点E1に設定し、ズームアウトが必要であると判定された時点での処置具6の先端の位置を終了地点E2に設定してもよい。
ステップSB6の後、プロセッサ5aは、ステップSA7と同様に、処置具6の種類が変更されたか否かを判定してもよい(ステップSB7)。
【0052】
このように、本実施形態によれば、距離Dおよび動作状態に基づいて、ズームインおよびズームアウトの要否が判定される。距離Dおよび動作状態のような操作情報は剥離フェーズ中のタスクに応じて異なり、操作情報から現在のタスクを認識することができる。したがって、現在のタスクに応じてズームインおよびズームアウトの要否を適切に判定することができ、同一の処置具6を使用する剥離フェーズ中に、処置の進行に合わせて近接視野F1と俯瞰視野F2とを自動的にかつ適切なタイミングで切り替えることができる。これにより、術者は、剥離をスムーズに行うことができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、剥離フェーズが画像Cに基づいて自動的に判定され、その後、視野の切り替えのための制御方法が自動的に実行される。これにより、視野の切り替えが必要な処置フェーズのみにおいて制御方法を自動的に実行することができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、ズームインおよびズームアウトの要否が、距離D、通電状態、開閉状態および把持状態の組み合わせに基づいて判定される。これにより、ズームインおよびズームアウトの要否を正確に判定することができ、ズームインまたはズームアウトを適切なタイミングで実行することができる。
本実施形態において、プロセッサ5aが、ズームインおよびズームアウトの要否を、距離D、通電状態、開閉状態および把持状態の1つ、2つまたは3つに基づいて判定してもよい。ズームインおよびズームアウトの要否を適切に判定するために、プロセッサ5aは、距離D、通電状態、開閉状態および把持状態の内の2以上に基づいて判定することが好ましい。
【0055】
上述した第1実施形態および第2実施形態は、組み合わせて実施されてもよい。
すなわち、ステップSA1またはSB1において、プロセッサ5aは、処置フェーズが、展開フェーズおよび剥離フェーズのいずれかであるか否かを判定してもよい。この場合、プロセッサ5aは、処置フェーズが展開フェーズである場合に、図4AのSA2~SA7を実行し、処置フェーズが剥離フェーズである場合に図8AのステップSB2~SB7を実行する。
【0056】
上記第1および第2実施形態において、ズームイン制御およびズームアウト制御が、内視鏡2の位置の制御であることとしたが、これに代えて、内視鏡2の光学倍率の制御または画像Cのデジタル倍率の制御であってもよい。
すなわち、プロセッサ5aは、ズームレンズ2bを制御することによって内視鏡2の光学倍率を変更し、それにより、画像C内の被写体を光学ズームによって拡大または縮小してもよい。また、プロセッサ5aは、画像Cのサイズを拡大または縮小し、それにより、表示装置4に表示される画像C内の被写体をデジタルズームによって拡大または縮小してもよい。ズームイン制御およびズームアウト制御において、内視鏡2の位置、内視鏡2の光学倍率および画像Cのデジタル倍率の内、2つ以上が同時に制御されてもよい。
【0057】
光学倍率およびデジタル倍率の少なくとも一方の制御を用いる場合、プロセッサ5aは、画像C内の所定の被写体の面積に基づいて倍率を判断してもよい(ステップSA5,SB5)。例えば、所定の被写体は対象処置具6であり、ズームインの場合の所定の第1倍率は、画像C内の処置具6の領域の画素数が所定の数である倍率であってもよい。
【0058】
上記第1および第2実施形態において、プロセッサ5aは、ステップSA1,SB1を必ずしも実行しなくてもよい。例えば、手術中に術者が操作する処置具6が展開用の処置具のみ、または剥離用の処置具のみである場合、ステップSA1,SB1が省略されてもよい。
【0059】
以上、本発明の実施形態およびその変形例について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の改良が可能である。
例えば、本発明の制御方法は、展開フェーズおよび剥離フェーズ以外の処置フェーズにおいて実行されてもよい。また、制御装置5は、ズームイン制御およびズームアウト制御の内、一方のみを自動的に実行してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 内視鏡システム
2 内視鏡
3 移動装置
4 表示装置
5 制御装置
5a プロセッサ
6 処置具、対象処置具
A 被検体
B,B1,B2,B3 組織
C 画像
D 距離
E 剥離ライン
E1 開始地点
E2 終了地点
F1 近接視野
F2 俯瞰視野
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D