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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121812
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
C09D175/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024026131
(22)【出願日】2024-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2023028013
(32)【優先日】2023-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】591163650
【氏名又は名称】日本化工塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004152
【氏名又は名称】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清野 正裕
(72)【発明者】
【氏名】瓜生 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 幸典
(72)【発明者】
【氏名】塩田 淳
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DG051
4J038DG191
4J038DG262
4J038DH022
4J038KA04
4J038KA08
4J038KA09
4J038NA01
4J038NA27
4J038PB08
4J038PB09
(57)【要約】
【課題】貝殻及び/又は貝殻粉末を含む塗料組成物において、バイオマス度が高く、硬化性に優れ、形成した塗膜の外観、付着性、引掻硬度、耐薬品性及び艶消し性に優れる塗料組成物を提供すること。
【解決手段】(A)ポリオール、(B)ポリイソシアネート、及び(C)貝殻及び/又は貝殻粉末、を含む塗料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリオール、(B)ポリイソシアネート、及び(C)貝殻及び/又は貝殻粉末、を含む塗料組成物。
【請求項2】
さらに、(D)抗菌・抗ウイルス剤を含む、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
乾燥塗膜中の有機材料におけるバイオマス由来の炭素の含有量に基づくC14バイオマス度が10.0%以上である、請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
乾燥塗膜における生物由来の材料の含有量に基づく総バイオマス度が30%以上である、請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記(B)ポリイソシアネートが、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート又はその誘導体を含む、請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項6】
前記塗料組成物が多液型である、請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項7】
前記(C)貝殻及び/又は貝殻粉末が、帆立貝、カキ、ホッキ貝、ホンビノス貝、あさり、はまぐり、アワビ、真珠貝からなる群より選ばれる1種以上の貝殻及び/又は貝殻粉末を含む、請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物に関する。詳しくは、貝殻及び/又は貝殻粉末を含み、艶消し感に優れた塗膜を形成する塗料組成物であり、さらには、バイオマス度が高い塗料組成物に関する。また、貝殻及び/又は貝殻粉末を含み、抗菌・抗ウイルス性及び艶消し感に優れた塗膜を形成する塗料組成物であり、さらには、バイオマス度が高い塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
環境への配慮から、化石資源由来の材料(石油資源由来の材料)の代替材料として、バイオマス(生物由来資源)材料を用いる技術が検討されている。塗料分野においても、バイオマス材料を塗料の構成成分として用いることが検討されている。
【0003】
例えば、バイオマス材料として貝殻粉末を含む塗料組成物として、種々のものが知られている。
特許文献1(特許第6841614号公報)には、合成樹脂エマルション(A)、平均粒子径5μm以上200μm以下の吸放湿性粉体(B)、平均粒子径0.4μm以上80μm未満、屈折率1.4以上2.0以下の粉粒体(C)、及び平均粒子径80μm以上の骨材(D)を含み、吸放湿性粉体(B)として貝殻粉末を含む水性被覆材が開示されている。
特許文献2(特開2014-189792号公報)には、ホタテガイの貝殻を粉砕して得られたホタテガイ粉末と、紅麹を粉砕して得られた粉末を含有する、船底、海中構造物、魚網などに塗布して貝や海草などの水中付着生物の付着を防止する防汚水性塗料が開示されている。
【0004】
例えば、バイオマス材料として、植物由来原料から得られるバイオマスプラスチックを塗膜形成成分として用いた塗料組成物も知られている。
特許文献3(特開2021-155645号公報)には、バイオマス度が5~50%であるバイオマス(メタ)アクリル共重合体と溶媒を含むコーティング剤が開示されている。植物由来原料(バイオマスプラスチック)は、植物の成長過程における光合成によるCOの吸収量と、植物由来原料の焼却廃棄の際のCOの排出量が相殺され、大気中のCOの増減に影響を与えないカーボンニュートラル素材とされており、安全で、循環型社会の形成に貢献し、地球温暖化防止に役立つという背景から、塗料分野における利用が望まれている。特に、塗料組成物から形成された塗膜は、最終的に焼却処分されることが多く、環境への配慮が求められている。
【0005】
塗料組成物は、プラスチックや金属等の被塗物の表面に、種々の特性を持つ塗膜を形成するためのものでもある。被塗物の表面に形成された塗膜は、被塗物の保護をはじめとする種々の特性を付与するだけでなく、被塗物に意匠性を付与するものである。特許文献4~6には、被塗物に艶消しの質感を付与する塗膜を形成する塗料組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6841614号公報
【特許文献2】特開2014-189792号公報
【特許文献3】特開2021-155645号公報
【特許文献4】特表2013-544301号公報
【特許文献5】国際公開第2016/017778号
【特許文献6】特開2022-92772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これまでの貝殻粉末を用いる塗料組成物は、バイオマス度が高いものの、塗膜の付着性、硬度等の塗膜特性や意匠性等の点で、改善すべき点が多いものであった。
塗膜の付着性や硬度等の特性に優れた塗料組成物として、ポリオールとポリイソシアネートを含む塗料組成物が知られている。この塗料組成物は、ポリオール及びポリイソシアネートの種類や組み合わせの調整、各種添加剤の選択により、塗膜に種々の特性や意匠性を付与することが容易であり、プラスチックや金属等の被塗物の表面に、種々の特性を持つ塗膜を形成する塗料組成物として用いることができる。しかしながら、ポリオール及びポリイソシアネートを構成成分とする塗料組成物は、これまでバイオマス材料を用い「バイオマス度」を高める観点においては十分なものではなかった。また、塗膜の抗菌・抗ウイルス性も、十分ではなかった。
艶消し等の意匠性を有する塗膜を形成する塗料は、塗膜の抗菌・抗ウイルス性やバイオマス度についての検討が十分ではなかった。
抗菌・抗ウイルス性を有する塗膜を形成する塗料は、塗膜の艶消し等の意匠性やバイオマス度についての検討が十分ではなかった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、貝殻及び/又は貝殻粉末を含む塗料組成物において、バイオマス度が高く、硬化性に優れ、形成した塗膜の外観、付着性、引掻硬度、耐薬品性及び艶消し性に優れる塗料組成物を提供することである。
本発明が解決しようとする別の課題は、貝殻及び/又は貝殻粉末を含む塗料組成物において、バイオマス度が高く、硬化性に優れ、形成した塗膜の外観、付着性、引掻硬度、耐薬品性、艶消し性及び抗菌・抗ウイルス性に優れる塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の組成の塗料組成物とすることで、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には以下の通りである。
[項1]
(A)ポリオール、(B)ポリイソシアネート、及び(C)貝殻及び/又は貝殻粉末、を含む塗料組成物。
[項2]
さらに、(D)抗菌・抗ウイルス剤を含む、項1に記載の塗料組成物。
[項3]
乾燥塗膜中の有機材料におけるバイオマス由来の炭素の含有量に基づくバイオマス度が10.0%以上である、項1又は2に記載の塗料組成物。
[項4]
乾燥塗膜における生物由来の材料の含有量に基づく総バイオマス度が30%以上である、項1~3のいずれか1項に記載の塗料組成物。
[項5]
前記(B)ポリイソシアネートが、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート又はその誘導体を含む、項1~4のいずれか1項に記載の塗料組成物。
[項6]
前記塗料組成物が多液型である、項1~5のいずれか1項に記載の塗料組成物。
[項7]
前記(C)貝殻及び/又は貝殻粉末が、帆立貝、カキ、ホッキ貝、ホンビノス貝、あさり、はまぐり、アワビ、真珠貝からなる群より選ばれる1種以上の貝殻及び/又は貝殻粉末を含む、項1~6のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、貝殻及び/又は貝殻粉末を含む塗料組成物において、バイオマス度が高く、硬化性に優れ、形成した塗膜の外観、付着性、引掻硬度、耐薬品性及び艶消し性に優れる塗料組成物が提供されるという顕著な効果を発揮する。
また、本発明により、貝殻及び/又は貝殻粉末を含む塗料組成物において、バイオマス度が高く、硬化性に優れ、形成した塗膜の外観、付着性、引掻硬度、耐薬品性、艶消し性及び抗菌・抗ウイルス性に優れる塗料組成物が提供されるという顕著な効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の塗料組成物を構成する各成分、バイオマス度、抗菌・抗ウイルス性、塗料組成物の形態、塗料組成物の製造方法及び塗料組成物の用途について説明する。
【0012】
[(A)ポリオール]
本発明の塗料組成物に含まれる(A)ポリオールは、1分子中に水酸基を2つ以上有する化合物であれば、特に限定されない。例えば、分子量が400未満の低分子量ポリオール及び数平均分子量が400以上100,000以下のポリマーポリオールからなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0013】
分子量が400未満の低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、11,16-ヘキサデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,2-トリメチルペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-ベンゼンジオール(別名カテコール)、1,3-ベンゼンジオール、1,4-ベンゼンジオール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA等のジオール:グリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミン等のトリオール;ペンタエリスリトール、ジグリセリン等のテトラオール、ジペンタエリスリトール等のヘキサオール;等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0014】
数平均分子量が400以上100,000以下のポリマーポリオールとしては、例えば、(メタ)アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0015】
(メタ)アクリルポリオールは、1分子中に2個以上の水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂であり、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとその他のエチレン性不飽和モノマーとを重合することで得られる重合体である。
【0016】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2-ジヒドロキシメチルブチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシアルキルマレエート、ポリヒドロキシアルキルフマレート、水酸基含有(メタ)アクリレートの環状エステル付加物(γ-ブチロラクトン付加物等))、水酸基含有(メタ)アクリレートの環状アミド付加物(ε-カプロラクトン付加物等)及び水酸基含有(メタ)アクリレートの環状エーテル付加物(エチレンオキシド付加物等)等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0017】
その他のエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、及びこれらの無水物等の酸基含有不飽和モノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート系モノマー;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル系モノマー;酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニルモノマー;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート系モノマー;等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0018】
ポリエステルポリオールは、1分子中に2つ以上の水酸基と2つ以上のエステル結合を有する樹脂であり、例えば、少なくともポリオールと多塩基酸を反応させて得られる縮合重合体、環状エステルの開環重合体、ヒドロキシカルボン酸を反応させて得られる縮合重合体等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0019】
ポリエステルポリオールを得る際に用いられるポリオールは、特に限定されない。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、ヒドロキシアルキル化ビスフェノールA、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル-2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピオネート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、N,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)ジメチルヒダントイン、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリカプロラクトンポリオール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス-(ヒドロキシエチル)イソシアネート等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0020】
ポリエステルポリオールを得る際に用いられる多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1-ジメチル-1,3-ジカルボキシプロパン、3-メチル-3-エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバシン酸、炭素数11~13の飽和脂肪族ジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸;オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、4,4’-ジシクロヘキシルジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;ダイマー酸、水添ダイマー酸、ヘット酸等の多塩基酸:これらの多塩基酸から誘導される酸無水物(例えば、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2-アルキル(C12~C18)コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸等):これらの多塩基酸から誘導される酸ハライド(例えば、シュウ酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、セバシン酸ジクロライド等):等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0021】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、前記ポリオールを開始剤として、乳酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシル基含有植物油脂肪酸(例えば、リシノレイン酸を含有するひまし油脂肪酸、12-ヒドロキシステアリン酸を含有する水添ひまし油脂肪酸など)等のヒドロキシカルボン酸を縮合反応させて得られるポリエステルポリオールを用いてもよい。
【0022】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリオールを開始剤として、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトン、L-ラクチド、D-ラクチド等の環状エステルを開環重合して得られる、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、ラクトンベースポリエステルポリオール等からなる群より選ばれる1種以上のポリエステルポリオールを用いてもよい。
【0023】
ポリエステルポリオールは、ラクトン、油脂又は脂肪酸、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などを用いて変性されていてもよい。油脂又は脂肪酸は特に限定されず、例えば、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、ヤシ油、コーン油、綿実油、亜麻仁油、荏の油、ケシ油、紅花油、大豆油、桐油などの油脂、又はこれらの油脂から抽出した脂肪酸からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0024】
ポリエーテルポリオールは、1分子中に2つ以上の水酸基と2つ以上のエーテル結合を有する樹脂であり、例えば、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオール等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0025】
ポリオキシアルキレンポリオールは、例えば、前記低分子量ポリオール等の活性水素化合物を開始剤とし、アルキレンオキサイドを付加重合させることで得ることができる。
アルキレンオキサイドとしては、例えば、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。ポリオキシアルキレンポリオールは、例えば、1種のアルキレンオキサイドのホモポリマー、2種以上のアルキレンオキサイドのランダム及び/又はブロックポリマーであってもよい。
【0026】
ポリテトラメチレンエーテルポリオールは、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合により得られる開環重合体であるポリテトラメチレンエーテルグリコール単独重合体又はポリテトラメチレンエーテルグリコール単位と、アルキル置換テトラヒドロフランからの単位、ジオールからの単位等を含むポリテトラメチレンエーテルグリコール共重合体等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0027】
ポリカーボネートポリオールは、1分子中に2つ以上の水酸基と2つ以上のカーボネート結合を有する樹脂であり、例えば、ポリオールは(好ましくは、ジオール)を開始剤としてエチレンカーボネートを開環重合させた開環重合体や、ポリオールと前記開環重合体とを共重合させた共重合体からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0028】
植物油ポリオールは、1分子中に2つ以上の水酸基を有する植物油であり、例えば、ひまし油、やし油等のヒドロキシル基含有植物油の1種以上が挙げられる。例えば、ひまし油ポリオール、ひまし油脂肪酸とポリプロピレンポリオールとの反応により得られるエステル変性ひまし油ポリオール等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0029】
ポリオレフィンポリオールは、1分子中に2つ以上の水酸基とポリオレフィン鎖を有する樹脂であり、例えば、ポリブタジエンポリオール、部分ケン価エチレン-酢酸ビニル共重合体等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0030】
本発明において、(A)ポリオールは、ポリマーポリオールの1種以上を用いることが好ましい。バイオマス度、反応性及び塗膜硬度等の観点から、(メタ)アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリエーテルポリオールからなる群より選ばれる1種以上がより好ましい。さらに好ましくは、(メタ)アクリルポリオール及びポリエステルポリオールからなる群より選ばれる1種以上であり、よりさらに好ましくは、(メタ)アクリルポリオールの1種以上である。
【0031】
ポリマーポリオールの数平均分子量は、400以上100,000以下である。例えば1,000以上、好ましくは1,500以上であり、例えば90,000以下、好ましくは50,000以下である。ポリマーポリオールの数平均分子量を400以上100,000以下とすることで、塗料組成物の塗布特性、塗料組成物の硬化性及び塗料組成物の塗膜の外観を良好なものとすることができる。
【0032】
ポリマーポリオールの水酸基価は、特に限定されない。例えば30mgKOH/g以上、好ましくは50mgKOH/g以上、より好ましくは70mgKOH/g以上であり、例えば400mgKOH/g以下、好ましくは300mgKOH/g以下、より好ましくは250mgKOH/g以下である。ポリマーポリオールの水酸基価を大きくすることで、塗料組成物の硬化性及び塗膜の架橋密度を高めることができる。ポリマーポリオールの水酸基価は、ポリマーポリオール固形分100質量%を基準とした水酸基価である。
【0033】
ポリマーポリオールの酸価は、特に限定されない。例えば20mgKOH/g以下、好ましくは15mgKOH/g以下、より好ましくは12mgKOH/g以下である。ポリマーポリオールの酸価は、0mgKOH/gであってもよい。
【0034】
ポリマーポリオールのガラス転移温度は、特に限定されない。例えば-40℃以上、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上であり、例えば150℃以下、好ましくは100℃以下である。ガラス転移温度を、例えば-40℃以上150℃以下とすることで、塗料組成物の塗膜の外観を良好なものとすることができ、塗膜硬度を高めることができる。
【0035】
本発明において、(A)ポリオールのバイオマス度(C14バイオマス度)は、特に限定されない。例えば5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上であることが好ましい。(A)ポリオールのバイオマス度が10%以上である場合、塗料組成物の乾燥塗膜のC14バイオマス度及び総バイオマス度を効率的に高めることができる。なお、(A)ポリオールのバイオマス度は、複数のポリオールを用いる場合、各ポリオールの含有割合とバイオマス度の積の和として算出できる。本発明においては、(A)ポリオールとして、バイオマス度が10%以上であるポリオールを、(A)ポリオール全量を100質量%として、少なくとも20質量%含んでいることが好ましい。
【0036】
本発明の塗料組成物中の(A)ポリオールの含有量は、適宜調整することができ、特に限定されない。塗料組成物に含まれる(A)ポリオール中の水酸基(OH)に対するイソシアネート基(NCO)の当量比NCO/OHが、例えば0.7以上、好ましく0.8以上、より好ましくは0.9以上、さらに好ましくは1.0以上であり、例えば2.0以下、好ましくは1.8以下、より好ましくは1.6以下、さらに好ましくは1.5以下の範囲内となる量とすることが好ましい。
【0037】
[(B)ポリイソシアネート]
本発明の塗料組成物に含まれる(B)ポリイソシアネートは、1分子中にイソシアネート基を2つ以上有する化合物又はその誘導体であれば、特に限定されない。(B)ポリイソシアネートとして、イソシアネート基がブロックされたブロックポリイソシアネートを用いた場合、常温において、ブロックイソシアネート(ブロックされたイソシアネート基)とポリオール(水酸基)との反応性が低いため、ポリオールと混合しておくことが可能である。
【0038】
ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、それらのポリイソシアネートの誘導体等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0039】
ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、ポリイソシアネートの多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート誘導体、イミノオキサジアジンジオン誘導体)、5量体、7量体等)、ビウレット体、アロファネート体、ウレトジオン体、ウレトイミン体、イソシアヌレート体、オキサジアジントリオン体、カルボジイミド体、アダクト体(プレポリマー)、ブロック体等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。アダクト体(プレポリマー)としては、前記ポリイソシアネート又はその誘導体と、イソシアネート基と反応し得る活性水素基(水酸基、アミノ基等)を有する活性水素含有化合物を、イソシアネート基過剰の条件で反応させてなるプレポリマーが挙げられる。活性水素含有化合物としては、例えば、多価アルコール、多価アミン、水、活性水素基含有樹脂(アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール)からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0040】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-トリメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)等の脂肪族ジイソシアネート;2,6-ジイソシアナトヘキサン酸2-イソシアナトエチル、1,6-ジイソシアナト-3-イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート;等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0041】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、4-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、2-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水添1,3-キシリレンジイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水添1,4-キシリレンジイソシアネート)、メチレンビス(4,1-シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,6-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)-ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等;からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0042】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン等の芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等;からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0043】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,6-TDI)、クルードTDI、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、等の芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4’,4”-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート;4,4’-ジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)等;からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0044】
(B)ポリイソシアネートとして、ブロックポリイソシアネートを用いる場合、イソシアネート基のブロック剤としては、イソシアネート基と反応するとともに、加熱(例えば、100℃以上、好ましくは130℃以上であり、例えば250℃以下)により容易に離脱してイソシアネート基を再生(生成)し得る化合物であれば、特に限定されない。ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチル等のフェノール系化合物;ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピオラクタム等のラクタム系化合物;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコール等の脂肪族アルコール系化合物;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール等のグリコールエーテル系化合物;ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール性水酸基含有化合物;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系化合物;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn-ブチル、メチルマロン酸ジエチル、マロン酸ベンジルメチル、マロン酸ジフェニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n-プロピル、アセト酢酸ベンジル、アセト酢酸フェニル、アセチルアセトン等の活性メチレン系化合物;ブチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、2-メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系化合物;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系化合物;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系化合物;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N-フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミン等のアミン系化合物;イミダゾール、2-エチルイミダゾール等のイミダゾール系化合物;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素等の尿素系化合物;N-フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系化合物;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリ等の亜硫酸塩系化合物;ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、3-メチル-5-フェニルピラゾール等のピラゾール系化合物;イミダゾール、ベンズイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール系化合物;2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン系化合物;等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0045】
ブロックポリイソシアネートの製造に際しては、公知の方法を用いることができる。例えば、ポリイソシアネート又はその誘導体とブロック剤とを、必要に応じて溶媒の存在下で反応させることでブロックポリイソシアネートを製造することができる。必要に応じて存在させることができる溶媒としては、イソシアネート基に対して反応性でないものであれば、特に限定されない。例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、N-メチル-2-ピロリドン等の含窒素溶媒等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0046】
本発明において、(B)ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート及びこれらの誘導体からなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましい。バイオマス度、反応性及び塗膜硬度等の観点から、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート及びこれらの誘導体からなる群より選ばれる1種以上がより好ましい。さらに好ましくは、脂肪族ポリイソシアネート及び脂肪族ポリイソシアネートの誘導体であり、特に好ましくは、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、これらのビウレット体、アロファネート体、ウレトジオン体、ウレトイミン体、イソシアヌレート体、オキサジアジントリオン体、カルボジイミド体からなる群より選ばれる1種以上である。本発明において、より好ましくは、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートの誘導体(ビウレット体、アロファネート体、ウレトジオン体、ウレトイミン体、イソシアヌレート体、オキサジアジントリオン体又はカルボジイミド体)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体(ビウレット体、アロファネート体、ウレトジオン体、ウレトイミン体、イソシアヌレート体、オキサジアジントリオン体又はカルボジイミド体)からなる群より選ばれる1種以上である。
【0047】
本発明において、(B)ポリイソシアネートのバイオマス度(C14バイオマス度)は、特に限定されない。例えば5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上であることが好ましい。(B)ポリイソシアネートのバイオマス度が10%以上である場合、塗料組成物の乾燥塗膜のC14バイオマス度及び総バイオマス度を効率的に高めることができる。なお、(B)ポリイソシアネートのバイオマス度は、複数のポリイソシアネートを用いる場合、各ポリイソシアネートの含有割合とバイオマス度の積の和として算出できる。本発明においては、(B)ポリイソシアネートとして、バイオマス度が10%以上であるポリイソシアネート又はその誘導体を、(B)ポリイソシアネート全量100質量%として、少なくとも20質量%含んでいることが好ましい。
【0048】
本発明の塗料組成物中の(B)ポリイソシアネートの含有量は、適宜調整することができ、特に限定されない。塗料組成物に含まれる(A)ポリオール中の水酸基(OH)に対するイソシアネート基(NCO)の当量比NCO/OHが、例えば0.7以上、好ましく0.8以上、より好ましくは0.9以上、さらに好ましくは1.0以上であり、例えば2.0以下、好ましくは1.8以下、より好ましくは1.6以下、さらに好ましくは1.5以下の範囲内となる量とすることが好ましい。
【0049】
[(C)貝殻及び/又は貝殻粉末]
本発明の塗料組成物に含まれる(C)貝殻及び/又は貝殻粉末は、二枚貝又は巻貝の貝殻自体及び/又は二枚貝又は巻貝の貝殻を粉末化したものである。貝の種類は、特に限定されない。例えば、帆立貝、カキ、ホッキ貝、ホンビノス貝、あさり、はまぐり、アワビ、真珠貝、ツブ貝、ムール貝、サザエ、シジミ、平貝、ミル貝等が挙げられる。特に、採取し処理された後に廃棄物として発生する貝殻を、殺菌、粉砕、分級、精製したものが好ましい。本発明においては、帆立貝、カキ、ホッキ貝、ホンビノス貝、あさり、はまぐり、アワビ、真珠貝からなる群より選ばれる1種以上の貝殻及び/又は貝殻の粉末を用いることが好ましい。帆立貝の貝殻粉末を用いた場合には、貝殻粉末が白色顔料(C.I.Pigment White 18)としても機能することから、特に好ましい。また、小型の貝殻自体や、粒径が大きい貝殻粉末を用いた場合は、意匠性に優れた塗膜を形成することができる。
【0050】
本発明の塗料組成物に含まれる(C)貝殻及び/又は貝殻粉末は、炭酸カルシウムを主成分(貝殻及び/又は貝殻粉末全量100質量%中の炭酸カルシウムの含有量が50質量%超、好ましくは60質量%以上)とするものであってもよい。このような(C)貝殻及び/又は貝殻粉末は、通常、「未焼成」の貝殻及び/又は貝殻粉末として入手することができる。なお、「未焼成」の貝殻及び/又は貝殻粉末は、貝殻に付着している有機物の除去等を目的として、炭酸カルシウムの分解が起こらない条件(例えば、300℃以下)において、加熱処理されたものであってもよい。
本発明の塗料組成物に含まれる(C)貝殻及び/又は貝殻粉末は、炭酸カルシウムが熱分解して酸化カルシウムが生成する条件(例えば、600℃以上)で焼成された、「焼成」された貝殻及び/又は貝殻粉末であってもよい。「焼成」された貝殻及び/又は貝殻粉末は、酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウムを、例えば10質量%以上、好ましくは20質量%以上含んでいてもよい。貝殻及び/又は貝殻粉末として「焼成」されたものをカルシウムとされたものであってもよい。(C)貝殻及び/又は貝殻粉末として、酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウムを含むものを用いた場合、塗膜に殺菌・抗菌等の作用を付与することができる。
本発明において、(C)貝殻及び/又は貝殻粉末としては、炭酸カルシウムの大部分が酸化カルシウムとなる条件で加熱処理(焼成)されていない「未焼成」の貝殻及び/又は貝殻粉末を用いることができる。
また、本発明において、(C)貝殻及び/又は貝殻粉末としては、「未焼成」の貝殻及び/又は貝殻粉末と、「焼成」された貝殻及び/又は貝殻粉末の両者を含む混合物を用いることができる。両者を含む混合物における「未焼成」の貝殻及び/又は貝殻粉末の量比は、(C)貝殻及び/又は貝殻粉末全量を100質量%として、例えば10質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上であり、例えば99質量%以下、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
【0051】
(C)貝殻及び/又は貝殻粉末は、バイオマス資材であるとともに、顔料としての機能を有するものである。貝殻及び/又は貝殻粉末を含有することで、塗料組成物・塗膜のバイオマス度を高めることができるとともに、しっとりとした艶消し感を塗膜に付与し、塗膜の引掻硬度を高めることが可能である。また、特有の意匠性を付与することができる。
【0052】
(C)貝殻及び/又は貝殻粉末の体積平均粒子径(体積基準の累積50%粒子径(メジアン径D50))は、所望の塗膜外観、塗膜の艶消し感等に応じて、適宜調整することができる。例えば0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上であり、例えば10.0mm以下、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは3.0mm以下である。貝殻及び/又は貝殻粉末の体積平均粒子径が0.1μm未満であると、取扱性が低下するおそれがあり、10.0mm超の場合、取扱性、分散性、塗布特性が低下するとともに、塗膜形成において不利になるおそれがある。
(C)貝殻及び/又は貝殻粉末を塗膜の艶消し等を目的として用いる場合には、例えば0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上であり、例えば10.0μm以下、好ましくは8.0μm以下、より好ましくは5.0μm以下の貝殻粉末を用いることが好ましい。
【0053】
本発明の塗料組成物中の(C)貝殻及び/又は貝殻粉末の含有量は、適宜調整することができ、特に限定されない。例えば、塗料組成物全量を100質量%とした場合において、0質量%超であり、例えば5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、例えば50質量%以下、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。(C)貝殻及び/又は貝殻粉末の含有量が多すぎる場合、塗料組成物の粘度が高くなるおそれがあり、塗布特性が低下するおそれがある。
【0054】
[(D)抗菌・抗ウイルス剤]
本発明の塗料組成物は、(D)抗菌・抗ウイルス剤を含有していてもよい。本発明において、抗菌・抗ウイルス剤は、塗料組成物及び/又は塗料組成物から形成される塗膜に、抗菌性、抗ウイルス性及び抗菌抗ウイルス性のいずれかの特性を付与し得るものであれば、特に限定されない。すなわち、本発明における「(D)抗菌・抗ウイルス剤」は、抗菌剤、抗ウイルス剤及び抗菌抗ウイルス剤のいずれか1種以上を意味するものである。(D)抗菌・抗ウイルス剤としては、例えば、無機系抗菌・抗ウイルス剤、有機系抗菌・抗ウイルス剤、天然物系抗菌・抗ウイルス剤の1種以上を用いることができる。
本発明の塗料組成物においては、(D)抗菌・抗ウイルス剤として、1種以上の無機系抗菌・抗ウイルス剤を含有することができる。
本発明の塗料組成物においては、(D)抗菌・抗ウイルス剤として、1種以上の有機系抗菌・抗ウイルス剤を含有することができる。
本発明の塗料組成物においては、(D)抗菌・抗ウイルス剤として、1種以上の天然物系抗菌・抗ウイルス剤を含有することができる。
本発明の塗料組成物においては、(D)抗菌・抗ウイルス剤として、1種以上の無機系抗菌・抗ウイルス剤、1種以上の有機系抗菌・抗ウイルス剤及び1種以上の天然物系抗菌・抗ウイルス剤からなる群より選ばれる2種以上を含有することができる。
【0055】
本発明の塗料組成物が含有していてもよい(D)抗菌・抗ウイルス剤において、抗菌性を発揮する菌は、特に限定されない。
抗菌性の対象となる菌としては、例えば、グラム陽性菌、グラム陰性菌、好気性菌、嫌気性菌等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。例えば、大腸菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌、百日咳菌、腸炎菌、肺炎桿菌、緑膿菌、ビブリオ属種菌、サルモネラ属種菌、コレラ菌、赤痢菌、炭疽菌、結核菌、ボツリヌス菌、破傷風菌、ウシ結核菌、BCG属種菌、トリ型結核菌、マイコバクテリウム属種菌、ストレプトコッカス属種菌、リステリア属種菌、枯草菌、ノカルジア属種菌、ペプトコッカス属種菌、ペプトストレプトコッカス属種菌、放線菌、ウェルシュ菌、クロストリジウム属種菌、シュードモナス属種菌、カンピロバクター属種菌、エーリキア属種菌、パスツレラ属種菌、レジオネラ属種菌、チフス菌、ウシ流産菌、ブルセラ属種菌、クラミジア属種菌、髄膜炎菌、淋菌、軟性下疳菌、ペスト菌、エルシニア属種菌、エンテロコッカス属種菌、腸内細菌、バークホルデリア属種菌、野兎病菌、プレボテラ属種菌、クレブシエラ属種菌、プロテウ属種菌等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0056】
本発明の塗料組成物が含有していてもよい(D)抗菌・抗ウイルス剤において、抗ウイルス性を発揮するウイルスは、特に限定されない。
抗ウイルス性の対象となるウイルスは、例えば、ゲノムの種類・改変の有無、エンベロープの有無等に影響されるものではない。
エンベロープウイルスとしては、例えば、鳥インフルエンザウイルス、人インフルエンザウイルス、豚インフルエンザウイルス等のインフルエンザウイルス;B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、水痘・帯状発疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒトヘルペスウイルス、ムンプスウイルス、RSウイルス、エボラウイルス等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
ノンエンベロープウイルスとしては、例えば、ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス、A型肝炎ウイルス、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、ネコカリシウイルス等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0057】
本発明の塗料組成物が含有していてもよい(D)抗菌・抗ウイルス剤において、無機系抗菌・抗ウイルス剤は、特に限定されない。例えば、抗菌・抗ウイルス機能を発現する金属・非金属、金属イオン、金属化合物・非金属化合物、これらの2種以上の複合物等が挙げられる。
金属・非金属としては、例えば、鉄、銅、亜鉛、銀、白金、鉛、金、ニッケル、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、クロム、硫黄、これらの2種以上の複合物等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
金属イオンとしては、例えば、銀イオン、銅イオン、亜鉛イオン、ニッケルイオン等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
金属化合物・非金属化合物としては、例えば、二酸化チタン、酸化スズ、酸化タングステン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、酸化銅、酸化銀、硝酸銀、酢酸銀、硫酸銀、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸銅、酢酸銅、硫酸銅、塩化銅、ヨウ化銅、炭酸銅、水酸化銅、酸化ビスマス、酸化タングステン、酸化錫、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、チタン酸塩、次亜塩素酸塩、前記金属の錯体、これらの2種以上の複合物等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
また、金属又は金属イオンと金属化合物の複合物であってもよい。
【0058】
本発明においては、必要に応じて、抗菌・抗ウイルス機能を発現する金属、金属イオン及び金属化合物からなる群より選ばれる1種以上を、1種以上の担体に担持させることができる。担体としては、例えば、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、粘土鉱物、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムカルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム、セピオライト、モンモリロナイト、硫酸ジルコニウム、イオン交換体、酸化亜鉛、ガラス、活性炭等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0059】
本発明の塗料組成物が含有していてもよい(D)抗菌・抗ウイルス剤において、有機系抗菌・抗ウイルス剤は、特に限定されない。例えば、フェノール系化合物、ピリジン系化合物、キノリン系化合物、アニリド系化合物、ニトリル系化合物、アルコール系化合物、アルデヒド系化合物、カルボン酸系化合物、エステル系化合物、ジスルフィド系化合物、チオカルバメート系化合物、エーテル系化合物、第4級アンモニウム塩系化合物、ピリチオン系化合物、スルホン酸系化合物、イソチアゾロン系化合物、イソチアゾリン系化合物、チアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、トリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、チアゾリルスルファミド系化合物、クレゾール系化合物、過酸化物系化合物、ピグアナイド系化合物、有機ハロゲン系化合物、有機窒素ハロゲン系化合物、ピロール系化合物、カチオン系高分子化合物、芳香族系化合物、アルキルアミン系化合物、等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0060】
本発明の塗料組成物が含有していてもよい(D)抗菌・抗ウイルス剤において、天然物系抗菌・抗ウイルス剤は、特に限定されない。例えば、ヒノキチオール、孟宗竹抽出物、ニンニクエキス、カンゾウエキス、キチン、キトサン、ナイシン、リゾチーム、ワサビ抽出物、マスタード抽出物、茶抽出物、多糖類、その他各種の動植物抽出物等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0061】
(D)抗菌・抗ウイルス剤を含有することで、塗料組成物及び塗料組成物から形成される塗膜に、抗菌性、抗ウイルス性又は抗菌抗ウイルス性を付与することができ、特に、医療用物品・機器や食品関連物品・機器の塗装に有用な塗料とすることができる。
【0062】
本発明の塗料組成物中の(D)抗菌・抗ウイルス剤の含有量は、適宜調整することができ、特に限定されない。例えば、塗料組成物から構成される塗膜の固形分全量を100質量%とした場合において、例えば10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下とすることができる。塗膜中の抗菌・抗ウイルス剤は、蛍光X線分析、クロマトグラフィー等の手法で特定・定量することができる。
【0063】
[硬化触媒]
本発明の塗料組成物は、硬化触媒を含有していてもよい。硬化触媒は、(A)ポリオールと(B)ポリイソシアネートとの反応を促進するものであれば、特に限定されない。硬化触媒としては、例えば、錫系触媒、ビスマス系触媒、亜鉛系触媒、チタン系触媒、ジルコニウム系触媒、第三級アミン系触媒等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0064】
錫系触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジラウリル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジマレート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジネオデカネート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジ-2-エチル-ヘキソエート、ジラウリル錫ジアセテート、錫ジアセテート、錫ジオクトエート、錫ジオレエート、錫ジラウレート、錫ジ2-エチル-1-ヘキソエート、錫ジエチルカプロエート、錫ジパルミテート、メタ錫酸、酸化第二錫、水酸化トリメチル錫、水酸化トリブチル錫、水酸化トリオクチル錫等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0065】
ビスマス系触媒としては、例えば、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、ステアリン酸ビスマス、オレイン酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス、ビスマストリス(アセテート)、ビスマストリス(オクタノエート)、ビスマストリス(2-エチルヘキサノエート)、ビスマストリス(ネオデカノエート)、ビスマスビス(ネオデカノエート-オキシネート)、ビスマスネオデカノエート-ビス-(オキシネート)、ビスマストリス(N,N-ジエチル-3-オキソ-ブタンアミデート)等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0066】
亜鉛系触媒としては、例えば、酢酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、亜鉛キレート錯体等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0067】
チタン系触媒としては、例えば、テトライソプロピルオキシチタネート、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライド、チタンキレート錯体等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0068】
ジルコニウム系触媒としては、例えば、ジルコニウム錯体(ジルコニウム-テトラキス(アセテート)、ジルコニウム-テトラキス(オクタノエート)、ジルコニウム-テトラキス(2-エチルヘキサノエート)、ジルコニウム-テトラキス(ネオデカノエート)、ジルコニウム-テトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウム-テトラキス(1,3-ジフェニルプロパン-1,3-ジオネート)、ジルコニウム-テトラキス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウム-テトラキス(N,N-ジエチル-3-オキソ-ブタンアミデート)等)からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0069】
第三級アミン系触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルブタンジアミン、2-メチル-トリエチレンジアミン、1,8-ジアザ-ビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、DBU塩(フェノール塩、有機酸塩(ステアリン酸塩、オレイン酸塩、ギ酸塩等))、1,5-ジアザ-ビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN)、DBN塩(フェノール塩、有機酸塩(ステアリン酸塩、オレイン酸塩、ギ酸塩等))、1,5-ジアザ-ビシクロ[4.4.0]-5-デセン(DBD)、DBD塩(フェノール塩、有機酸塩(ステアリン酸塩、オレイン酸塩、ギ酸塩等))等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0070】
本発明の塗料組成物においては、これらの中でも、錫系触媒、ビスマス系触媒、亜鉛系触媒、第三級アミン系触媒からなる群より選ばれる1種以上が好ましい。特に好ましいのは、錫系触媒、ビスマス系触媒及び亜鉛系触媒からなる群より選ばれる1種以上である。
【0071】
本発明の塗料組成物中の硬化触媒の含有量は、特に限定されず、硬化触媒を使用しなくてもよい。例えば、塗料組成物全量を100質量%とした場合において、0質量%以上であり、例えば5.0質量%以下、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下とすることができる。
【0072】
[その他の成分]
本発明の塗料組成物は、所期の効果を損なわない範囲で、(A)ポリオール、(B)ポリイソシアネート、(C)貝殻及び/又は貝殻粉末、(D)抗菌・抗ウイルス剤及び硬化触媒以外の成分を「その他の成分」として含むことができる。
その他の成分としては、例えば、有機溶媒、着色剤、沈降防止剤、湿潤分散剤、粘度調整剤、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、酸化防止剤、充填材、光安定化剤、酸化防止剤、カップリング剤等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0073】
本発明の塗料組成物は、粘度調整、構成成分の分散性向上等を目的として、有機溶媒を含んでいてもよい。有機溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素系溶媒(ミネラルスピリット等)、芳香族炭化水素系溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭化水素系溶媒(塩化メチレン等)、アルコール系溶媒(エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等)、アルコールエーテル系溶媒(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル系溶媒(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン等)、含窒素系溶媒(N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド等)等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。好ましくは、エステル系溶媒、アルコールエーテル系溶媒、エーテル系溶媒からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。塗料組成物における有機溶媒の含有量は、特に限定されず、塗料組成物の粘度や各成分の分散性等により、適宜の量用いることができる。
【0074】
本発明の塗料組成物は、塗膜の意匠性の向上等のために、着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、顔料(酸化鉄、カーボンブラック、酸化亜鉛、二酸化チタン、有機顔料等)、染料、着色樹脂材料等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。塗料組成物における着色剤の含有量は、特に限定されず、塗料組成物から形成される塗膜の色調、意匠性等により、適宜の量用いることができる。
【0075】
本発明の塗料組成物は、塗料組成物中での貝殻及び/又は貝殻粉末等の無機微粒子の沈降を防止するために、沈降防止剤を含んでいてもよい。沈降防止剤としては、例えば、ワックス(ポリエチレンワックス、脂肪酸アマイドワックス、有機粘土系ワックス、水添炭化水素油ワックス、酸化ポリエチレン系ワックス等)、有機処理されていてもよいベントナイト、有機処理されていてもよいクレー、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0076】
本発明の塗料組成物は、湿潤分散剤を含んでいてもよい。湿潤分散剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリリン酸エステルアルキル塩等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0077】
本発明の塗料組成物は、保存安定性を向上させ、粘度を調整し、(C)貝殻及び/又は貝殻粉末の分散性を向上させる等を目的として、界面活性剤を含んでいてもよい。
界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性界面活性剤の何れを用いてもよい。例えば、スルホン酸系界面活性剤、リン酸系界面活性剤等のアニオン性界面活性剤;第4級アンモニウム系界面活性剤等のカチオン性界面活性剤;エーテル系界面活性剤、エステル系界面活性剤等のノニオン系界面活性剤;フッ素系界面活性剤;等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0078】
[バイオマス度]
本発明の塗料組成物の乾燥塗膜に係るバイオマス度としては、乾燥塗膜中の有機材料におけるバイオマス由来の炭素の含有量に基づくC14バイオマス度(以下、「C14バイオマス度」という場合がある。)及び乾燥塗膜における生物由来の材料の含有量に基づく総バイオマス度(以下、「総バイオマス度」という場合がある。)が挙げられる。
【0079】
<C14バイオマス度>
14バイオマス度は、ASTM D 6866「Standard Test Methods for Determining the Biobased Content of Natural Range Materials Using Radiocarbon and Isotope Ratio Mass Spectrometry Analysis(放射性炭素及び同位体比率重量分析を用いた自然領域材料のバイオベース率の決定試験法)」によって求められる、乾燥塗膜中の有機材料全体の総炭素質量に対する自然領域材料(生物由来材料)に由来する炭素質量の割合(比率)を意味する。乾燥塗膜中の有機材料における生物由来物質にしか含まれていない炭素C14の濃度(含有量)を測定し、下記式;
バイオマス度(%)=C14濃度(pMC)×0.935
て算出される値である。
14の濃度(含有量)は、加速器質量分析装置(AMS)で測定することができる。C14は、石油、石炭等の化石資源には無視し得る程度しか含まれないため、試料中のC14の濃度(含有量)を定量することで、試料中のバイオマス度を求めることができ、塗料組成物のC14バイオマス度を求めることができる。
【0080】
14の濃度(含有量)の測定は、例えば、測定対象試料を燃焼して二酸化炭素を発生させ、真空ラインで精製した二酸化炭素を、鉄を触媒として水素で還元し、グラファイトを生成し、精製したグラファイトを、タンデム加速器をベースとしたC14-AMS専用装置(例えば、NEC社製)に装着して、C14の計数、C13の濃度(C13/C12)、C14の濃度(C14/C12)の測定を行い、この測定値から標準現代炭素に対する試料炭素のC14濃度の割合を算出することができる。標準試料としては、米国国立規格標準局(NIST)から入手できるシュウ酸標準体Oxalic Acid I(HOxI)を使用する
ことができる。
【0081】
本発明の塗料組成物において、乾燥塗膜中の有機材料におけるバイオマス由来の炭素の含有量に基づくC14バイオマス度は、特に限定されない。例えば5.0%以上、好ましくは9.0%以上、より好ましくは10.0%以上であり、100%以下である。C14バイオマス度が高い場合、本発明の塗料組成物を塗装した物品の廃棄処分として焼却処分をした際に、地球環境の炭酸ガス総量の増加を抑制する効果が高く、「地球にやさしい」塗料とすることができる。また、C14バイオマス度を10%以上とすることで、一般社団法人日本有機資源協会によって審査・認定された商品にのみ使用できるバイオマスマークの表示が可能となる。
【0082】
<総バイオマス度>
総バイオマス度は、乾燥塗膜における生物由来材料の割合(比率)を意味する。総バイオマス度は、本発明の塗料組成物においては、前記C14バイオマス度に、貝殻及び/又は貝殻粉末(通常、100%生物由来材料であり、バイオマス度は100%である。)の含有比率を加えることで算出することができる。
【0083】
本発明の塗料組成物において、乾燥塗膜における生物由来の材料の含有量に基づく総バイオマス度は、特に限定されない。例えば15.0%以上、好ましくは18.0%以上、より好ましくは20.0%以上であり、100%以下である。総バイオマス度が高い場合、本発明の塗料組成物を塗装した物品の廃棄処分として焼却処分をした際に、地球環境の炭酸ガス総量の増加を抑制する効果が高く、「地球にやさしい」塗料とすることができる。
【0084】
[抗菌・抗ウイルス性]
本発明の塗料組成物及び/又は塗料組成物から形成される塗膜は、抗菌・抗ウイルス性を有していてもよい。本発明において、抗菌・抗ウイルス性は、抗菌性、抗ウイルス性、抗菌抗ウイルス性のいずれか1種以上の性質を意味するものである。抗菌・抗ウイルス性は、抗菌活性値及び抗ウイルス活性値により特定される。
【0085】
本発明における抗菌活性値は、JIS Z 2801(2010)「抗菌加工製品―抗菌性試験方法・抗菌効果」における試験方法に準拠した指標値として求められる。
本発明の塗料組成物及び/又は塗料組成物から形成される塗膜の抗菌活性値は、2.0以上とすることができ、場合により抗菌活性値5.0以上とすることができる。
抗菌活性値は、抗菌加工面と無加工面に所定の細菌を接種し24時間培養した後、両者の生菌数の対数値の平均値の差として求められる値であって、抗菌活性値が2.0以上のとき抗菌効果有りとされるものである。
【0086】
本発明における抗ウイルス活性値は、ISO 21702:2019「プラスチック及びその他の非多孔質表面の抗ウイルス活性の測定」における試験方法に準拠した指標値として求められる。
本発明の塗料組成物及び/又は塗料組成物から形成される塗膜の抗ウイルス活性値は、2.0以上とすることができ、場合により抗ウイルス活性値4.0以上とすることができる。
抗ウイルス活性値は、抗ウイルス加工面と無加工面に所定のウイルスを接種し24時間培養した後、両者のウイルス数の対数値の平均値の差として求められる値であって、抗ウイルス活性値が2.0以上のとき抗ウイルス効果有りとされるものである。
【0087】
[塗料組成物の形態]
本発明の塗料組成物の形態(剤型)は、特に限定されない。1液型塗料組成物及び多液型塗料組成物の何れであってもよい。
本発明において、(B)ポリイソシアネートとしてブロックされていないポリイソシアネートを用いる場合は、2液型等の多液型塗料組成物とすることができる。多液型塗料組成物とした場合、被塗物に塗料組成物を塗布する直前に、(A)ポリオールを含有する成分(主剤)と、(B)ポリイソシアネートを含有する成分(硬化剤)とを混合し、必要に応じて焼付乾燥を行うことで、塗膜を形成することができる。
本発明において、(B)ポリイソシアネートとしてブロックポリイソシアネートを用いる場合は、全ての成分があらかじめ混合されている1液型塗料組成物とすることができる。1液型塗料組成物とした場合、被塗物に塗料組成物を塗布した後に焼付乾燥を行うことで、塗膜を形成することができる。
【0088】
本発明においては、(B)ポリイソシアネートとしてブロックされていないポリイソシアネートを用い、(A)ポリオール、(C)貝殻及び/又は貝殻粉末を含み、(D)抗菌・抗ウイルス剤、沈降防止剤や硬化触媒等を含んでいてもよい主剤(I)と、(B)ポリイソシアネートを含む硬化剤(II)と、を含む多液型塗料組成物とすることが好ましい。
また、本発明においては、(B)ポリイソシアネートとしてブロックポリイソシアネートを用い、(A)ポリオール、(B)ブロックポリイソシアネート及び(C)貝殻及び/又は貝殻粉末を含み、必要に応じて、(D)抗菌・抗ウイルス剤、沈降防止剤や硬化触媒等を含んでいてもよい1液型塗料組成物とすることが好ましい。
【0089】
[塗料組成物の製造方法]
本発明の塗料組成物の製造方法は、(A)ポリオール、(B)ポリイソシアネート及び(C)貝殻及び/又は貝殻粉末を含む塗料組成物の構成成分を、撹拌し分散混合する工程を含むものであれば、特に限定されない。
【0090】
本発明の塗料組成物が多液型塗料組成物である場合、例えば、(A)ポリオール及び(C)貝殻及び/又は貝殻粉末を含む塗料構成成分を撹拌し分散混合して主剤(I)を調製し、(B)ポリイソシアネートを含む塗料構成成分を撹拌し分散混合して硬化剤(II)を調製し、主剤(I)と硬化剤(II)を使用直前に分散混合することで、塗料組成物を製造することができる。
本発明の塗料組成物が1液型塗料組成物である場合、例えば、(A)ポリオール、(B)ポリイソシアネート(ブロックポリイソシアネート)及び(C)貝殻及び/又は貝殻粉末を含む塗料構成成分を撹拌し分散混合して、塗料組成物を製造することができる。
本発明の塗料組成物の製造方法においては、塗料構成成分の一部、例えば、(C)貝殻及び/又は貝殻粉末や着色顔料等と、溶媒、沈降防止剤等を予め分散混合してペースト又はベースを調製した後に、その余の成分と攪拌し分散混合することができる。
【0091】
塗料構成成分を撹拌し分散混合する際には、適切な撹拌能力を有する撹拌機を付設した撹拌槽を用いることができる。撹拌し分散混合する際には、分散混合機を用いることができる。分散混合機としては、塗料の製造に一般的に用いられている分散混合機を用いることができる。分散混合機としては、例えば、ボールミル、アトライター、ビーズミル、サンドミル等のメディア型分散混合機;プラネタリーミキサー、ホモミキサー、ディスパー、ハイスピード・ディスパーサー、ホモジナイザー、ロールミル、コーンミル、コロイドミル、ニーダー等のせん断型分散混合機;ペイントシェーカー、湿式ジェットミル、自転公転型分散混合機、超音波分散混合機等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。メディア型分散混合機を用いる場合に用いるメディアとしては、適当な径を有する、アルミナ、ジルコニア、ガラス、シリカ、セラミックス、タングステン等からなる群より選ばれる1種以上のメディアを用いることができる。
好ましくは、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー、ビーズミル、サンドミル等のメディア型分散混合機等からなる群より選ばれる1種以上が用いられる。
【0092】
[塗料組成物の用途]
本発明の塗料組成物は、任意の素材から形成された任意の形状の物品等の塗装用途に供することができる。本発明の塗料組成物を塗布することで、しっとりとした艶消し感のある塗膜を形成することができる。また、本発明の塗料組成物を塗布することで、任意の被塗物表面に、抗菌・抗ウイルス性塗膜を形成することにより、抗菌・抗ウイルス特性を付与することができる。
【0093】
被塗物の素材は、特に限定されない。例えば、金属(鉄、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、銅、銀、金、ステンレス、真鍮、亜鉛メッキ鋼等の金属、合金、金属複合体等の1種以上等)、プラスチック(アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン(AS)系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)系樹脂、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート(ASA)系樹脂、ポリアミド系樹脂、ハロゲン化ビニリデン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ハロゲン化ビニル系樹脂、脂肪酸ビニル系樹脂、シリコン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、セルロース系樹脂等の樹脂、これらの1種以上を含む組成物、これらの1種以上から構成される複合体・積層体等の1種以上等)、ガラス、セラミックス、木材、紙、繊維類(織布、不織布、編物、糸等)、これらの1種以上を含む組成物、これらの1種以上から構成される複合体・積層体等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0094】
被塗物の形状は、特に限定されない。平面、立体のいずれでもよく、例えば、板状、フィルム状、棒状、長尺状、3次元形状とすることができる。
被塗物となる物品等は、特に限定されない。例えば、携帯電話、通信機器、情報端末、ゲーム機、家庭用電化製品等の各種機器の筐体や部品、車両内装部材、バンパ、フロントグリル、照明器具等の車両部品、文房具、玩具、キーボード、マウス、タッチパネル、食品容器、建材、壁、扉、把手、手術用具、医療機器・物品、食品関連機器・物品、建築用構造部材、建築用内装部材、樹脂フィルム、樹脂成形体等が挙げられる。
本発明の塗料組成物は、これらの物品等に対して塗布することで、しっとりとした艶消し感を付与することができる。また、これらの物品等に対して塗布することで、抗菌・抗ウイルス機能を付与することができる。
【0095】
本発明の塗料組成物は、物品・基材等の形状やその用途等に応じて、公知の塗膜形成手段を用いて塗膜を形成することができる。例えば、エアスプレー、エアレススプレー、静電、回転霧化、ハケ、ローラー、ハンドガン、万能ガン、浸漬、ロールコーター、カーテンフローコーター、ローラーカーテンコーター、ダイコーター、インクジェット等からなる群より選ばれる1種以上の塗膜形成方法が挙げられる。好ましくは、エアスプレー、エアレススプレー、静電、回転霧化、ハケ、ハンドガン、万能ガン、インクジェットからなる群より選ばれる1種以上が用いられる。
【0096】
本発明の塗料組成物を塗布する際、塗布面をアルコールやケトン等で脱脂・清浄化することができる。また、基材と塗膜との間の付着性等を向上させるために、粗面化処理、プラズマ処理、火炎処理、プライマー処理等の公知の表面処理を行ってもよい。
【0097】
本発明の塗料組成物は、塗布後に常温乾燥又は強制乾燥等の手段で塗膜を乾燥させて乾燥塗膜を形成することができる。常温乾燥の場合は、常温(例えば、10~40℃未満)で静置し、強制乾燥の場合は、ブロアーや乾燥炉等を用い、常温を超える温度、例えば60℃以上で1分以上加熱することで乾燥硬化することができる。乾燥硬化の際、仕上り性の点から、乾燥硬化前に予め常温でセッティング(静置)することができる。
本発明の塗料組成物の塗布に際しては、1回の塗布で設けてもよく、2回以上の塗布で設けてもよい。2回以上の塗布を行う場合には、途中で乾燥工程を設けてもよく、また、途中で乾燥工程を設けることなくウエットオンウエットで行ってもよく、これらを組み合わせてもよい。
【実施例0098】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0099】
[使用成分]
実施例1~39、実施例51、52、参考例1及び比較例1~3で使用された成分は、以下のとおりである。
・ポリオール1:アクリルポリオール樹脂溶液(固形分含有量50.0質量%、水酸基価25.0mgKOH/g、酸価1.0mgKOH/g未満、ガラス転移温度122℃、バイオマス度39%)
・ポリオール2:アクリルポリオール樹脂溶液(固形分含有量65.0質量%、水酸基価47.0mgKOH/g、酸価9.0mgKOH/g、ガラス転移温度65℃、バイオマス度0%)
・沈降防止剤1:ポリカルボン酸アマイド溶液(固形分含有量52.0質量%、バイオマス度0%)
・沈降防止剤2:有機変性ベントナイト(固形分含有量100%、バイオマス度0%)
・硬化触媒:ジブチル錫ジラウレート溶液(固形分含有量0.1質量%、バイオマス度0%)
・ポリイソシアネート:1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(イソシアヌレート体)溶液(固形分含有量50.0%、バイオマス度70%)
・湿潤分散剤:ポリリン酸エステルアルキルアンモニウム塩溶液(固形分含有量52質量%、バイオマス度0%)
・貝殻粉末:帆立貝殻末(固形分含有量100%、体積平均粒子径2.3μm、バイオマス度100%)
・有機溶媒:酢酸エチル(バイオマス度0%)
・抗菌・抗ウイルス剤:カチオン系高分子化合物抗菌・抗ウイルス剤溶液(固形分含有量20質量%、バイオマス度0%)
【0100】
・貝殻粉末分散ベース1~8:表1に示すとおり。
【表1】
【0101】
・顔料ペースト1:黒色系顔料ペースト(ポリオール1含有量40質量%、C.I.Pigment Black 7(カーボンブラック)含有量15質量%、残部酢酸ブチル)
・顔料ペースト2:白色系顔料ペースト(ポリオール1含有量20質量%、C.I.Pigment White 6(二酸化チタン)含有量55質量%、水酸化アルミニウム含有量2.5質量%、残部酢酸ブチル)
・顔料ペースト3:赤色系顔料ペースト(ポリオール1含有量25質量%、C.I.Pigment Violet 19含有量25質量%、残部酢酸ブチル)
・顔料ペースト4:青色系顔料ペースト(ポリオール1含有量30質量%、C.I.Pigment Blue 15:2含有量20質量%、硫酸バリウム含有量2.5質量%、残部酢酸ブチル)
・顔料ペースト5:緑色系顔料ペースト(ポリオール1含有量35質量%、C.I.Pigment Green 7含有量7.5質量%、C.I.Pigment Green 36含有量7.5質量%、残部酢酸ブチル)
・顔料ペースト6:黄色系顔料ペースト(ポリオール1含有量25質量%、C.I.Pigment Yellow 154含有量25質量%、残部酢酸ブチル)
・顔料ペースト7:ブラウン色系顔料ペースト(ポリオール1含有量20質量%、C.I.Pigment Red 101(酸化鉄)含有量55質量%、残部酢酸ブチル)
・顔料ペースト8:黄色系顔料ペースト(ポリオール1含有量20質量%、C.I.Pigment Yellow 42(酸化鉄)含有量55質量%、残部酢酸ブチル)
【0102】
[評価方法]
<硬化性評価>
50mm×100mm×0.3mmのブリキ板を準備し、表面をアセトンにより脱脂した後に、実施例1~39、51、52、参考例1及び比較例1~3に係る塗料組成物をエアスプレーで乾燥塗膜の厚みが30±5μmとなるように塗布し、80℃で30分間乾燥し、室温で3日間放置して試験板を作製した。
20mm×75mmのガーゼを2枚重ね、4つ折りにした後に、メチルエチルケトンをしみ込ませ、メチルエチルケトンの染み込んだガーゼで試験板の塗膜面を、500gの荷重を掛け擦り幅30mmを1秒で往復する速度で擦る。1往復で擦り回数1回として、素地が露出する回数を記録し、以下の基準で評価した。本発明においては、A及びBが合格である。
A:100回以上
B:10回以上99回以下
C:10回未満
【0103】
<加熱残分>
JIS K 5601-1-2(2008)塗料成分試験方法-第1部-第2節 加熱残分に基づき、塗料組成物の加熱残分を質量の変化から求めた。
【0104】
<塗膜外観評価>
100mm×100mm×1mmの黒色ABS板を準備し、表面を脱脂した後に、実施例1~39及び比較例1~3に係る塗料組成物をエアスプレーで乾燥塗膜の厚みが30±5μmとなるように塗布し、80℃で30分間乾燥し、室温で30分徐冷して試験板を作製した。
JIS K 5400-7-1(1990)塗料一般試験方法-第7部-第1節:塗膜の外観に基づき、拡散昼光のもとで、目視により、外観の非一様性(ムラ、滲み、割れ、しわ、ピンホール、その他表面欠陥)を観察し、以下の基準で評価した。本発明においては、Aが合格である。
A:塗膜の外観に非一様性又は他の表面欠陥が見られない
C:塗膜の外観に非一様性又は他の表面欠陥が見られる
【0105】
<塗膜付着性評価>
100mm×100mm×1mmの黒色ABS板を準備し、表面を脱脂した後に、実施例1~39及び比較例1~3に係る塗料組成物をエアスプレーで乾燥塗膜の厚みが30±5μmの単一塗膜系となるように塗布し、80℃で30分間乾燥し、室温で3日間放置して試験板を作製した。
JIS K 5600-5-6(1999)塗料一般試験方法-第5部-第6節:付着性(クロスカット法)に基づき、幅約9.1mm、厚さ0.38mmで20~30°の刃を持つ単一刃切り込み工具を用い手動操作で、切り傷のすきま間隔1mm、ます目の数25を作製し、塗膜の状態を観察し、以下の基準で評価した。本発明においては、A及びBが合格である。
A:分類0(カットの縁が完全に滑らかで,どの格子の目にもはがれがない。)相当
B:分類1(カットの交差点における塗膜の小さなはがれ。クロスカット部分で影響を受けるのは,明確に5%を上回ることはない。)又は分類2(塗膜がカットの縁に沿って,及び/又は交差点においてはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。)相当
C:分類3(塗膜がカットの縁に沿って,部分的又は全面的に大はがれを生じており,及び/又は目のいろいろな部分が,部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは,明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。)、分類4(塗膜がカットの縁に沿って,部分的又は全面的に大はがれを生じており,及び/又は数か所の目が部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは,明確に35%を上回ることはない。)又は分類5(分類4でも分類できないはがれ程度のいずれか)相当
【0106】
<塗膜引掻硬度評価>
100mm×100mm×1mmの黒色ABS板を準備し、表面を脱脂した後に、実施例1~39及び比較例1~3に係る塗料組成物をエアスプレーで乾燥塗膜の厚みが30±5μmの単一塗膜系となるように塗布し、80℃で30分間乾燥し、室温で3日間放置して試験板を作製した。
JIS K 5600-5-4(1999)塗料一般試験方法-第5部-第4節:引っかき硬度(鉛筆法)に基づき、MITSUBISHI Uni鉛筆(三菱鉛筆社製、日本塗料検査協会検査済の鉛筆引っかき値試験用鉛筆)を用い、水平な塗膜面に次第に硬度を増して鉛筆を押しつけて動かした結果生じるきずあと又はその他の欠陥に対する塗膜の抵抗性を観察することによって鉛筆硬度を測定する。試験の間、鉛筆は塗面に対して角度45°、荷重750gで押すように取り付ける。塗膜にa)塑性変形(塗膜に永久くぼみを生じるが、凝集破壊はない。)、b)凝集破壊(表面に、塗膜材質がとれた引っかききず又は破壊が、肉眼で認められる。)又はc)上記の組合せ(最終段階では、すべての欠陥が同時に生じることがある。)のいずれかの欠陥によって圧こん(痕)が生じるまで、鉛筆の硬さを順次増して試験を行い、以下の基準で評価した。本発明においては、2B以上の硬度(2B、B、HB、F、H~6H)が合格であり、3B以下(3B~6B)が不合格である。
【0107】
<耐薬品性評価>
50mm×50mm×1mmの黒色ABS板を準備し、表面を脱脂した後に、実施例1~39及び比較例1~3に係る塗料組成物をエアスプレーで乾燥塗膜の厚みが30±5μmとなるように塗布し、80℃で30分間乾燥し、室温で3日間放置して試験板を作製した。
試験板の塗膜面に、日焼け止めクリームを直径3cmの円状に均一に塗布し、塗布面にガーゼを載せ、55℃に保持した恒温槽に4時間放置し、取り出した後に水洗し、日焼け止めクリームを除き水分を拭き取った後、日焼け止めクリーム塗布面における塗膜の状態を観察し、以下の基準で評価した。本発明においては、A及びBが合格である。
A:塗膜の色調及び/又は光沢の変化が観察される
B:塗膜の膨張及び/又はガーゼ痕が観察される
C:塗膜の溶解が観察される
【0108】
日焼け止めクリームに含まれる塗膜アタック成分は、以下のとおりである。
【表2】
【0109】
<鏡面光沢度>
100mm×100mm×1mmの黒色ABS板を準備し、表面を脱脂した後に、実施例1~39及び比較例1~3に係る塗料組成物をエアスプレーで乾燥塗膜の厚みが30±5μmの単一塗膜系となるように塗布し、80℃で30分間乾燥し、室温で3日間放置して試験板を作製した。
JIS K 5600-4-7(1999)塗料一般試験方法-第5部-第4節:鏡面光沢度に基づき、試験板の塗膜面の20°鏡面光沢度、60°鏡面光沢度及び85°鏡面光沢度のいずれか1つ以上について測定した。
【0110】
<抗菌性評価>
100mm×100mm×1mmの黒色ABS板を準備し、表面を脱脂した後に、実施例51、52及び参考例1に係る塗料組成物をエアスプレーで乾燥塗膜の厚みが30±5μmの単一塗膜系となるように塗布し、80℃で30分間乾燥し、室温で3日間放置して試験板を作製した。
JIS Z 2801(2010)抗菌加工製品-抗菌試験方法・抗菌効果に基づき、黄色ブドウ球菌についての抗菌活性値を求め、以下の基準で抗菌性評価を行った。本発明においては、A及びBが合格である。
A:抗菌活性値4.0以上
B:抗菌活性値2.0以上
C:抗菌活性値2.0未満
【0111】
<抗ウイルス性評価>
100mm×100mm×1mmの黒色ABS板を準備し、表面を脱脂した後に、実施例51、52及び参考例1に係る塗料組成物をエアスプレーで乾燥塗膜の厚みが30±5μmの単一塗膜系となるように塗布し、80℃で30分間乾燥し、室温で3日間放置して試験板を作製した。
ISO 21702(2019)プラスチックやその他の非多孔質表面での抗ウイルス活性の測定に基づき、インフルエンザウイルスの抗ウイルス活性値(抗ウイルス活性値1)及びネコカシリウイルスの抗ウイルス活性値(抗ウイルス活性値2)を求め、以下の基準で抗ウイルス性評価を行った。本発明においては、Aが合格である。
A:抗ウイルス活性値1又は抗ウイルス活性値2の少なくとも一方が、2.0以上である。
C:抗ウイルス活性値1及び抗ウイルス活性値2の両者が、2.0未満である。
【0112】
[塗料組成物の製造]
<実施例1>
ポリオール1を20.23質量部、沈降防止剤1を0.26質量部、硬化触媒を4.83質量部及びあらかじめ調製した貝殻粉末分散ベース1を65.83部、容器に投入し、混合して主剤を調製した。得られた主剤に、ポリイソシアネートを硬化剤として混合し、塗料組成物を得た。
得られた塗料組成物の乾燥塗膜のC14バイオマス度及び総バイオマス度を、表3に示す。
得られた塗料組成物を用いて、乾燥塗膜を形成し、硬化性評価、塗膜外観評価、塗膜付着性評価、塗膜引掻硬度評価及び耐薬品性評価を行うとともに、20°鏡面光沢度、60°鏡面光沢度及び85°鏡面光沢度を測定した。結果を表3に示す。
【0113】
<実施例2~39、比較例1~3>
塗料組成物の構成成分を、表3~表6に示すものとしたほかは、実施例1と同様にして塗料組成物を得た後に、得られた塗料組成物を用いて乾燥塗膜を形成し、硬化性評価、塗膜外観評価、塗膜付着性評価、塗膜引掻硬度評価及び耐薬品性評価を行うとともに、20°鏡面光沢度、60°鏡面光沢度及び85°鏡面光沢度を測定した。結果を表3~表6に併せて示す。
【0114】
【表3】
【0115】
【表4】
【0116】
【表5】
【0117】
【表6】
【0118】
<実施例51>
ポリオール1を26.42質量部、ポリオール2を10.16質量部、有機溶媒を20.93質量部、湿潤分散剤を4.29質量部、貝殻粉末を29.72質量部、沈殿防止剤1を0.26質量部、沈殿防止剤2を1.32質量部、抗菌・抗ウイルス剤を2.81質量部、ポリイソシアネートを4.09質量部混合し、塗料組成物を得た。
乾燥塗膜の加熱残分(質量%)及び乾燥塗膜中の抗菌・抗ウイルス剤含有量を、表7に示す。
得られた塗料組成物を用いて、乾燥塗膜を形成し、硬化性評価、塗膜外観評価、塗膜付着性評価、塗膜引掻硬度評価、60°鏡面光沢度、85°鏡面光沢度、抗菌性評価、抗菌活性値、抗ウイルス性評価、抗ウイルス活性値1(インフルエンザウイルスの抗ウイルス活性値)及び抗ウイルス活性値2(ネコカシリウイルスの抗ウイルス活性値)を測定した。結果を表7に示す。
【0119】
<実施例52、参考例1>
塗料組成物の構成成分を、表7に示すものとしたほかは、実施例51と同様にして塗料組成物を得た後に、得られた塗料組成物を用いて乾燥塗膜を形成し、硬化性評価、塗膜外観評価、塗膜付着性評価、塗膜引掻硬度評価、60°鏡面光沢度、85°鏡面光沢度、抗菌性評価、抗菌活性値、抗ウイルス性評価、抗ウイルス活性値1(インフルエンザウイルスの抗ウイルス活性値)及び抗ウイルス活性値2(ネコカシリウイルスの抗ウイルス活性値)を測定した。結果を表7に併せて示す。
【0120】
【表7】
【0121】
表3~表6より、本発明に係る塗料組成物は、C14バイオマス度及び総バイオマス度が高く、硬化性に優れ、形成した塗膜の外観、付着性、引掻硬度、耐薬品性及び艶消し性に優れるものであることが分かる。
表7より、本発明に係る塗料組成物において、(D)抗菌・抗ウイルス剤を含有する塗料組成物は、抗菌活性値及び抗ウイルス活性値が高く、硬化性に優れ、形成した塗膜の外観、付着性、引掻硬度及び艶消し性に優れるものであることが分かる。