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特開2024-121821抗肥満剤、筋力向上剤、脂肪性肝炎改善剤、及び脂質代謝改善剤
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  • 特開-抗肥満剤、筋力向上剤、脂肪性肝炎改善剤、及び脂質代謝改善剤 図1
  • 特開-抗肥満剤、筋力向上剤、脂肪性肝炎改善剤、及び脂質代謝改善剤 図2
  • 特開-抗肥満剤、筋力向上剤、脂肪性肝炎改善剤、及び脂質代謝改善剤 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121821
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】抗肥満剤、筋力向上剤、脂肪性肝炎改善剤、及び脂質代謝改善剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/135 20160101AFI20240830BHJP
   A61K 35/744 20150101ALI20240830BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240830BHJP
   A61K 31/7084 20060101ALI20240830BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20240830BHJP
   A61K 8/99 20170101ALI20240830BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240830BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240830BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20240830BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
A23L33/135
A61K35/744
A61P3/04
A61K31/7084
A61K31/706
A61K8/99
A61P1/16
A61P29/00
A61K8/60
A61Q1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024026777
(22)【出願日】2024-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2023028477
(32)【優先日】2023-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】517363366
【氏名又は名称】学校法人神戸薬科大学
(71)【出願人】
【識別番号】000108993
【氏名又は名称】株式会社大阪ソーダ
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】江本 憲昭
(72)【発明者】
【氏名】西川 孝治
(72)【発明者】
【氏名】中野 喜之
(72)【発明者】
【氏名】井戸垣 秀聡
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B018MD44
4B018MD86
4B018ME01
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF13
4C083AA031
4C083AA032
4C083AD601
4C083AD602
4C083CC01
4C083EE11
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA70
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087MA02
4C087MA52
4C087MA63
4C087NA14
4C087ZA70
(57)【要約】
【課題】 本発明は、抗肥満剤及び筋力向上剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び/又は前記乳酸菌の抽出物は、抗肥満剤及び筋力向上剤の有効成分として有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び/又は前記乳酸菌の抽出物を含有する、抗肥満剤。
【請求項2】
前記乳酸菌がフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)である、請求項1に記載の抗肥満剤。
【請求項3】
前記乳酸菌がフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus) OS-1010株(受託番号:NITE BP-03818)である、請求項1に記載の抗肥満剤。
【請求項4】
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド及びニコチンアミドモノヌクレオチドを含み、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド1重量部あたりのニコチンアミドモノヌクレオチドの含有量が0.001重量部以上10重量部以下である、請求項1に記載の抗肥満剤。
【請求項5】
請求項1に記載の抗肥満剤を含む、飲食品、化粧品又は医薬品。
【請求項6】
フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び/又は前記乳酸菌の抽出物を含有する、筋力向上剤。
【請求項7】
前記乳酸菌がフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)である、請求項6に記載の筋力向上剤。
【請求項8】
前記乳酸菌がフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus) OS-1010株(受託番号:NITE BP-03818)である、請求項6に記載の筋力向上剤。
【請求項9】
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド及びニコチンアミドモノヌクレオチドを含み、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド1重量部あたりのニコチンアミドモノヌクレオチドの含有量が0.001重量部以上10重量部以下である、請求項6に記載の筋力向上剤。
【請求項10】
筋肉量減少抑制用、筋力低下抑制用、筋肉量増加用、又は筋力増加用である、請求項6に記載の筋力向上剤。
【請求項11】
請求項6に記載の筋力向上剤を含む、飲食品、化粧品又は医薬品。
【請求項12】
フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び/又は前記乳酸菌の抽出物を含有する、脂肪性肝炎改善剤。
【請求項13】
前記乳酸菌がフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)である、請求項12に記載の脂肪性肝炎改善剤。
【請求項14】
前記乳酸菌がフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus) OS-1010株(受託番号:NITE BP-03818)である、請求項12に記載の脂肪性肝炎改善剤。
【請求項15】
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド及びニコチンアミドモノヌクレオチドを含み、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド1重量部あたりのニコチンアミドモノヌクレオチドの含有量が0.001重量部以上10重量部以下である、請求項12に記載の脂肪性肝炎改善剤。
【請求項16】
請求項12に記載の脂肪性肝炎改善剤を含む、飲食品、化粧品又は医薬品。
【請求項17】
フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び/又は前記乳酸菌の抽出物を含有する、脂質代謝改善剤。
【請求項18】
前記乳酸菌がフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)である、請求項17に記載の脂質代謝改善剤。
【請求項19】
前記乳酸菌がフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus) OS-1010株(受託番号:NITE BP-03818)である、請求項17に記載の脂質代謝改善剤。
【請求項20】
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド及びニコチンアミドモノヌクレオチドを含み、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド1重量部あたりのニコチンアミドモノヌクレオチドの含有量が0.001重量部以上10重量部以下である、請求項17に記載の脂質代謝改善剤。
【請求項21】
請求項17に記載の脂質代謝改善剤を含む、飲食品、化粧品又は医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗肥満剤、筋力向上剤、脂肪性肝炎改善剤、及び脂質代謝改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
医療技術の発展により人間の平均寿命は延びている。平均寿命が延びると、高齢になっても身体的及び精神的に健康な生活を送りたい、すなわち健康寿命を延ばしたいという希望を持つのは通常のことである。健康寿命を延ばすためには加齢に伴う老化現象を食い止めることが必要となるが、この様な老化現象としては、肥満、筋力の低下、脂質代謝の低下、糖尿病の罹患等が知られている。したがって、肥満の防止、筋力の向上、脂質代謝の促進、糖尿病の予防等については研究が活発に進められている。
【0003】
例えば、特許文献1にはラクトバチルス・カルバタス(Lactobacillus curvatus)あるいはラクトバチルス・アミロボラス(Lactobacillus amylovorus)である乳酸菌株、前記乳酸菌株の処理物、またはそれらの抽出物を含有する、筋肉の分解抑制剤について開示されている。また、特許文献2にはラクトバチルス・ファルシミニス(Lactobacillus farciminis)若しくはペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)に属する乳酸菌、当該乳酸菌の培養物、又は当該乳酸菌の培養上清を含有する、ミトコンドリア機能改善剤について開示され、代謝機能改善用途、運動能力低下改善用途、筋力低下抑制用途として使用されることが説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-216408号公報
【特許文献2】国際公開第2020/067368号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、抗肥満剤、筋力向上剤、脂肪性肝炎改善剤、及び脂質代謝改善剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、所定の乳酸菌及び/又は所定の乳酸菌由来成分に、肥満を防止する効果(抗肥満効果)、筋力を向上させる効果(筋力向上効果)、脂肪性肝炎(特にアルコール性脂肪性肝炎以外の脂肪性肝炎)を改善する効果、脂質代謝を改善させる効果があることを新たに見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
[1]フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び/又は前記乳酸菌の抽出物を含有する、抗肥満剤。
[2]前記乳酸菌がフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)である、[1]に記載の抗肥満剤。
[3]前記乳酸菌がフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus) OS-1010株(受託番号:NITE BP-03818)である、[1]又は[2]に記載の抗肥満剤。
[4]ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド及びニコチンアミドモノヌクレオチドを含み、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド1重量部あたりのニコチンアミドモノヌクレオチドの含有量が0.001重量部以上10重量部以下である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の抗肥満剤。
[5][1]~[4]のいずれか1つに記載の抗肥満剤を含む、飲食品、化粧品又は医薬品。
[6]フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び/又は前記乳酸菌の抽出物を含有する、筋力向上剤。
[7]前記乳酸菌がフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)である、[6]に記載の筋力向上剤。
[8]前記乳酸菌がフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus) OS-1010株(受託番号:NITE BP-03818)である、[6]又は[7]に記載の筋力向上剤。
[9]ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド及びニコチンアミドモノヌクレオチドを含み、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド1重量部あたりのニコチンアミドモノヌクレオチドの含有量が0.001重量部以上10重量部以下である、[6]~[8]のいずれか1つに記載の筋力向上剤。
[10]筋肉量減少抑制用、筋力低下抑制用、筋肉量増加用、又は筋力増加用である、[6]~[9]のいずれか1つに記載の筋力向上剤。
[11][6]~[10]のいずれか1つに記載の筋力向上剤を含む、飲食品、化粧品又は医薬品。
[12]フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び/又は前記乳酸菌の抽出物を含有する、脂肪性肝炎改善剤。
[13]前記乳酸菌がフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)である、[12]に記載の脂肪性肝炎改善剤。
[14]前記乳酸菌がフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus) OS-1010株(受託番号:NITE BP-03818)である、[12]又は[13]に記載の脂肪性肝炎改善剤。
[15]ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド及びニコチンアミドモノヌクレオチドを含み、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド1重量部あたりのニコチンアミドモノヌクレオチドの含有量が0.001重量部以上10重量部以下である、[12]~[14]のいずれか1つに記載の脂肪性肝炎改善剤。
[16][12]~[15]のいずれか1つに記載の脂肪性肝炎改善剤を含む、飲食品、化粧品又は医薬品。
[17]フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び/又は前記乳酸菌の抽出物を含有する、脂質代謝改善剤。
[18]前記乳酸菌がフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)である、[17]に記載の脂質代謝改善剤。
[19]前記乳酸菌がフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus) OS-1010株(受託番号:NITE BP-03818)である、[17]又は[18]に記載の脂質代謝改善剤。
[20]ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド及びニコチンアミドモノヌクレオチドを含み、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド1重量部あたりのニコチンアミドモノヌクレオチドの含有量が0.001重量部以上10重量部以下である、[17]~[19]のいずれか1つに記載の脂質代謝改善剤。
[21][17]~[19]のいずれか1つに記載の脂質代謝改善剤を含む、飲食品、化粧品又は医薬品。
[22]フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び/又は前記乳酸菌の抽出物を含有する、脂質代謝促進剤、若しくは、糖尿病の予防及び/又は治療剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、抗肥満剤、筋力向上剤、脂肪性肝炎改善剤、及び脂質代謝改善剤の有効成分として有用な新規の素材が提供される。具体的には、本発明によれば、フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び/又は前記乳酸菌の抽出物が、抗肥満剤、筋力向上剤、脂肪性肝炎改善剤、及び脂質代謝改善剤の有効成分として提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】抗肥満効果の評価における、各群のマウスの体重増加量を示すグラフである。
図2】筋力向上効果の評価における、各群のマウスの体重あたりの握力を示すグラフである。
図3】脂肪性肝炎改善効果の評価における、各群のマウスの腹部のCT画像における肝臓脂肪含率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の抗肥満剤、筋力向上剤、脂肪性肝炎改善剤、及び脂質代謝改善剤は、いずれも、フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び/又は前記乳酸菌の抽出物を、有効成分として含有することを特徴とする。以下、抗肥満剤、筋力向上剤、脂肪性肝炎改善剤、及び脂質代謝改善剤について詳述する。
【0011】
[1.有効成分]
本発明の抗肥満剤、筋力向上剤、脂肪性肝炎改善剤、及び脂質代謝改善剤の有効成分は、フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び/又は前記乳酸菌の抽出物である。
【0012】
[1-1.フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌]
フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌(以下において、「所定の乳酸菌」とも記載する。)は、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及び/又はニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)を産生する微生物である。また、フルクトバシラス属に属する乳酸菌は、好ましくは、少なくともNADを産生する微生物であり、より好ましくは、NMN及びNADの両方を産生する微生物である。
【0013】
フルクトバシラス属に属する乳酸菌としては、例えば、フルクトバシラス・ドゥリオニス(Fructobacillus durionis)、フルクトバシラス・トロパエオイル(Fructobacillus tropaeoil)、及びフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)が挙げられる。
【0014】
フルクトバシラス属に属する乳酸菌のより具体的な例としては、Fructobacillus durionis RD011727株、Fructobacillus durionis NBRC113239株、Fructobacillus tropaeoil RD012353株、Fructobacillus tropaeoil RD012354株、Fructobacillus fructosus NBRC3516株、及びFructobacillus fructosus OS-1010株が挙げられる。
【0015】
Fructobacillus durionis RD011727株は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、2020年10月28日付で寄託番号NITE BP-02764として国際寄託されている。
【0016】
Fructobacillus tropaeoil RD012353株は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、2020年10月28日付で寄託番号NITE BP-02765として国際寄託されている。
【0017】
Fructobacillus tropaeoil RD012354株は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、2020年10月28日付で寄託番号NITE BP-02766として国際寄託されている。
【0018】
Fructobacillus fructosus OS-1010株は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、2024年1月5日付で受託番号NITE BP-03818として国際寄託されている。
【0019】
これらのフルクトバシラス属乳酸菌は1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
抗肥満効果をより一層効果的に向上させる観点からは、フルクトバシラス属乳酸菌は、フルクトバシラス・トロパエオイル(Fructobacillus tropaeoil)及びフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)が好ましく、フルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)がより好ましい。
【0021】
これらのフルクトバシラス属乳酸菌の中でも、抗肥満効果をより一層効果的に向上させる観点から、Fructobacillus durionis RD011727株、Fructobacillus durionis NBRC113239株、Fructobacillus tropaeoil RD012353株、Fructobacillus tropaeoil RD012354株、Fructobacillus fructosusNBRC3516株、及びFructobacillus fructosus OS-1010株が好ましく、より好ましくはFructobacillus tropaeoil RD012353株、Fructobacillus tropaeoil RD012354株、Fructobacillus fructosusNBRC3516株、及びFructobacillus fructosus OS-1010株、さらに好ましくはFructobacillus tropaeoil RD012353株、Fructobacillus fructosusNBRC3516株、及びFructobacillus fructosus OS-1010株、特に好ましくはFructobacillus fructosus OS-1010株が挙げられる。
【0022】
筋力向上効果をより一層効果的に向上させる観点からは、フルクトバシラス属乳酸菌は、フルクトバシラス・トロパエオイル(Fructobacillus tropaeoil)及びフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)が好ましく、フルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)がより好ましい。
【0023】
これらのフルクトバシラス属乳酸菌の中でも、筋力向上効果をより一層効果的に向上させる観点から、Fructobacillus durionis RD011727株、Fructobacillus durionis NBRC113239株、Fructobacillus tropaeoil RD012353株、Fructobacillus tropaeoil RD012354株、Fructobacillus fructosusNBRC3516株、及びFructobacillus fructosus OS-1010株が好ましく、より好ましくはFructobacillus tropaeoil RD012353株、Fructobacillus tropaeoil RD012354株、Fructobacillus fructosusNBRC3516株、及びFructobacillus fructosus OS-1010株、さらに好ましくはFructobacillus tropaeoil RD012353株、Fructobacillus fructosusNBRC3516株、及びFructobacillus fructosus OS-1010株、特に好ましくはFructobacillus fructosus OS-1010株が挙げられる。
【0024】
脂肪性肝炎改善効果をより一層効果的に向上させる観点からは、フルクトバシラス属乳酸菌は、フルクトバシラス・トロパエオイル(Fructobacillus tropaeoil)及びフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)が好ましく、フルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)がより好ましい。
【0025】
これらのフルクトバシラス属乳酸菌の中でも、脂肪性肝炎改善効果をより一層効果的に向上させる観点から、Fructobacillus durionis RD011727株、Fructobacillus durionis NBRC113239株、Fructobacillus tropaeoil RD012353株、Fructobacillus tropaeoil RD012354株、Fructobacillus fructosusNBRC3516株、及びFructobacillus fructosus OS-1010株が好ましく、より好ましくはFructobacillus tropaeoil RD012353株、Fructobacillus tropaeoil RD012354株、Fructobacillus fructosusNBRC3516株、及びFructobacillus fructosus OS-1010株、さらに好ましくはFructobacillus tropaeoil RD012353株、Fructobacillus fructosusNBRC3516株、及びFructobacillus fructosus OS-1010株、特に好ましくはFructobacillus fructosus OS-1010株が挙げられる。
【0026】
脂質代謝改善効果をより一層効果的に向上させる観点からは、フルクトバシラス属乳酸菌は、フルクトバシラス・トロパエオイル(Fructobacillus tropaeoil)及びフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)が好ましく、フルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)がより好ましい。
【0027】
これらのフルクトバシラス属乳酸菌の中でも、脂質代謝改善効果をより一層効果的に向上させる観点から、Fructobacillus durionis RD011727株、Fructobacillus durionis NBRC113239株、Fructobacillus tropaeoil RD012353株、Fructobacillus tropaeoil RD012354株、Fructobacillus fructosusNBRC3516株、及びFructobacillus fructosus OS-1010株が好ましく、より好ましくはFructobacillus tropaeoil RD012353株、Fructobacillus tropaeoil RD012354株、Fructobacillus fructosusNBRC3516株、及びFructobacillus fructosus OS-1010株、さらに好ましくはFructobacillus tropaeoil RD012353株、Fructobacillus fructosusNBRC3516株、及びFructobacillus fructosus OS-1010株、特に好ましくはFructobacillus fructosus OS-1010株が挙げられる。
【0028】
[1-2.有効成分の形態]
有効成分の形態は、上記所定の乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び前記乳酸菌の抽出物の、少なくともいずれかである。有効成分は、これらのいずれか1種の形態のものを単独で用いてもよいし、複数種の形態のものを組み合わせて用いてもよい。
【0029】
[1-2-1.乳酸菌]
有効成分が乳酸菌の形態である場合、当該有効成分は、当該乳酸菌の菌体成分及び当該乳酸菌に内在する又は内在していた産生物を含む。乳酸菌は、生菌及び死菌のいずれであってもよい。また、死菌の場合、菌体が破砕されていてもよい。また、破砕菌の場合、菌体成分の一部が除去されていてもよい。さらに、乳酸菌は、凍結乾燥、棚乾燥、スプレードライ等の手段により乾燥された菌体粉末の形態であってもよい。この中でも、抗肥満効果、筋力向上効果、脂肪性肝炎改善効果、及び脂質代謝改善効果をより一層高める観点から、凍結乾燥により乾燥された菌体粉末であることが好ましい。
【0030】
乳酸菌は、上記の所定の乳酸菌の1種又は複数種を培養する工程、並びに菌体を分離回収する工程を含む製造方法により得ることができる。分離回収する工程で行われる方法は、固液分離及び菌体洗浄を含む。当該製造方法は、上記の工程以外に、他の工程を含むことができる。他の工程としては、休止菌体反応工程(培養する工程の後、好ましくは分離回収する工程の後に行うことができる。)、乾燥工程(分離回収する工程又は休止菌体反応の後に行うことができる。)、菌体破砕工程(分離回収する工程、休止菌体反応工程又は乾燥工程の後に行うことができる。)等が挙げられる。
【0031】
培養する工程で用いることができる培地としては、拡大培養に用いられるもの(前培養培地)、及び生産培養に用いられるもの(本培養培地)が挙げられる。本培養培地は、前培養培地として用いられる培地を基本として、更に添加物を含有させて調製することができる。培地の性状については、好ましくは液体培地であるが、寒天培地であってもよい。培地は、炭素源の他、一般的には窒素源、ミネラル等を含む。
【0032】
炭素源としては、糖質及び糖質材料が挙げられる。糖質としては、糖類(単糖、二糖、オリゴ糖)、多糖類、及び糖アルコールが挙げられる。糖質としては、乳糖、ショ糖、グルコース、デンプン、キシリトール、デキストロース等が挙げられる。糖質材料は、糖質を含む有機組成物であればよく、例えば、乳及びその加工品(脱脂粉乳、ホエイ、ミルクパウダー、練乳等)、豆乳及びその加工品(豆乳加水分解物等)、穀類、果実、野菜等の食品が挙げられる。乳としては、ウシ、ヤギ、ヒツジ、水牛、ラクダ、ラマ、ロバ、ヤク、ウマ、トナカイ等の任意の哺乳動物に由来するものが挙げられる。なお糖質は、単離されたものであってもよいし、糖質材料に含まれているものであってもよい。例えば、フルクトース(糖質)は、果実(糖質材料)に含まれる形態のものを用いてもよい。これらの炭素源は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらの炭素源の中でも、好ましくはグルコースが挙げられる。
【0033】
培地中の炭素源の濃度については特に限定されず、培地の種類や培養方式等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.5~4w/w%、好ましくは1~3w/w%、より好ましくは1.5~2.5w/w%が挙げられる。
【0034】
窒素源としては、任意の無機窒素源又は有機窒素源を使用することができる。例えば、酵母エキス(ビール酵母等)、肉エキス、カゼイン等のタンパク質;ペプトン(プロテアーゼペプトン等)等のタンパク質加水分解物、ペプチド等のペプチド類;アンモニウム塩(クエン酸アンモニウム等)、硝酸塩等の含窒素塩等が挙げられる。これらの窒素源は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
培地中の窒素源の濃度については特に限定されず、培地の種類や培養方式等に応じて適宜設定すればよいが、タンパク質の場合、例えば、0.3~4w/w%、好ましくは0.5~3w/w%、より好ましくは1~2w/w%が挙げられ;ペプチド類の場合、例えば、0.1~2w/w%、好ましくは0.3~1.8w/w%、より好ましくは0.5~1.5w/w%が挙げられ;含窒素塩の場合、例えば、0.03~1.5w/w%、好ましくは0.05~1w/w%、より好ましくは0.1~0.5w/w%が挙げられる。
【0036】
ミネラルとしては、例えば、マンガン(例えば、硫酸マンガン等のマンガン塩)、亜鉛、鉄、ナトリウム(例えば、酢酸ナトリウム等のナトリウム塩)、カリウム(例えば、硫酸水素二カリウム、リン酸水素二カリウム等のカリウム塩)、マグネシウム(例えば、硫酸マグネシウム等のマグネシウム塩)、カルシウム、リン(例えば、リン酸水素二カリウム等のリン酸塩)、硫黄(例えば、硫酸マンガン、硫酸水素カリウム、硫酸マグネシウム等の硫酸塩)、微量元素等が挙げられる。これらのミネラルは、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらのミネラルの中でも、好ましくは、マンガン、ナトリウム、マグネシウム、カリウムが挙げられる。
【0037】
培地中のミネラルの濃度については特に限定されず、培地の種類や培養方式等に応じて適宜設定すればよいが、マンガン塩の場合、例えば、0.001~0.01w/w%、好ましくは0.003~0.008w/w%が挙げられ;ナトリウム塩の場合、例えば、0.05~1.5w/w%、好ましくは0.1~1w/w%が挙げられ;マグネシウム塩の場合、例えば、0.001~0.02w/w%、好ましくは0.005~0.015w/w%が挙げられ;カリウム塩の場合、例えば、0.05~1w/w%、好ましくは0.1~0.5w/w%が挙げられ;リン酸塩の場合、例えば、0.05~1w/w%、好ましくは0.1~0.5w/w%が挙げられ;硫酸塩の場合、0.001~0.04w/w%、好ましくは0.005~0.02w/w%が挙げられる。
【0038】
培地は、上記成分以外に、ビタミン(ビタミンB群等)、界面活性剤(非イオン性界面活性剤(Tween等)、陰イオン性界面活性剤(SDS等)等)、抗菌剤(トリクロサン等)、抗生物質(モネシン等)等の他の成分を含んでもよい。これらの他の成分は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらの他の成分の中でも、好ましくは界面活性剤、より好ましくは非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0039】
培地中の他の成分の濃度については特に限定されず、他の成分の種類、培地の種類、培養方式等に応じて適宜設定すればよいが、界面活性剤を含む場合、界面活性剤の濃度として、例えば、0.01~0.5w/w%、好ましくは0.05~0.3w/w%が挙げられる。
【0040】
培養条件としては、フルクトバシラス属乳酸菌が生育できる条件下であれば特に限定されない。
【0041】
培養温度としては、培養対象となるフルクトバシラス属乳酸菌の至適温度であればよく、例えば、26~40℃、好ましくは27~38℃、より好ましくは28~36℃、更に好ましくは29~34℃が挙げられる。培養時間としては、実際に培養するフルクトバシラス属乳酸菌の種類等に合せて適宜設定すればよく、例えば、4~48時間、好ましくは8~36時間、より好ましくは12~24時間が挙げられる。
【0042】
培養中の操作については、培養中における培養液の攪拌の要否は問わない。また、具体的な培養手順の例については、上述の培養を一定時間生産培養(本培養)として行い、その前に、少量(例えば、体積比で本培養培地の1/6~1/4)の培地で拡大培養を(前培養)行うことができる。前培養の培養条件は、フルクトバシラス属乳酸菌の種類等に合せて適宜設定すればよく、上述の条件を採用することができる。また、本培養においては、前培養で得られた培養物を、OD660が例えば、0.01~0.04、好ましくは0.01~0.03となるように本培養培地に植菌することができる。
【0043】
分離回収工程においては、ろ紙を用いたろ過、遠心分離、デカンテーション、スクリュープレス、ローラープレス、ロータリードラムスクリーン、ベルトスクリーン、振動スクリーン、多重板振動フィルター、真空脱水、加圧脱水、ベルトプレス、遠心濃縮脱水、多重円板脱水等によって培養液の固液分離を行い、得られた菌体を洗浄することができる。
【0044】
休止菌体工程では、乳酸菌中のニコチンアミドモノヌクレオチド含有比率を増大させることができる。
【0045】
休止菌体反応工程で用いる液体としては、フルクトバシラス属に属する乳酸菌が休止菌体反応できるものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、水、緩衝液、有機溶剤等を用いることができる。
【0046】
休止菌体反応に用いる液体のpHとしては、例えば、4.0~10.0、好ましくはpH5.0~9.0、より好ましく5.5~7.5が挙げられる。
【0047】
休止菌体反応に用いる液体が緩衝液である場合、緩衝液としては、例えば、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、HEPES衝液等が挙げられる。
【0048】
緩衝液のより具体的な例としては、KHC844-NaOH (pH4.0)、CH3COOH-CH3COONa(pH4.0)、MES-NaOH (pH5.0)、CH3COOH-CH3COONa(pH5.0)、KH2PO4-K2HPO4(pH6.0)、MES-NaOH(pH6.0)、 KH2PO4-K2HPO4(pH7.0)、PIPES-NaOH (pH7.0)、HEPES-NaOH(pH8.0)、H3BO4-NaOH(pH8.0)、CHES-NaOH(pH9.0)、H3BO4-NaOH(pH9.0)、H2CO3-NaHCO3(pH10.0)、CHES-NaOH(pH10.0)等が挙げられ、好ましくはCH3COOH-CH3COONa、KH2PO4-K2HPO4、H3BO4-NaOH、より好ましくはKH2PO4-K2HPO4が挙げられる。
【0049】
休止菌体反応に用いる液体が有機溶剤である場合、有機溶剤としては、例えば、ベンゼン、ベンゾニトリル等の芳香族化合物、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸エチル、蟻酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のジオール類、炭素数1~7の直鎖又は分岐アルキルを有するアルコール、シクロヘキサノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール等のアルコール類等が挙げられる。
【0050】
休止菌体反応に用いる液体としては、上記の液体の中でも、好ましくは水、緩衝液が挙げられる。
【0051】
休止菌体反応における反応温度としては、例えば、21~37℃、好ましくは24~28℃が挙げられる。反応時間としては、例えば、0.1~24時間、好ましくは6~12時間が挙げられる。
【0052】
休止菌体反応は、フルクトバシラス属に属する乳酸菌を上記の液体に懸濁し、静置、攪拌または振盪することで行うことができる。
【0053】
また、休止菌体反応は、上記の液体を用いることなく、フルクトバシラス属に属する乳酸菌を含む培養液のpHを4.0~10.0、好ましくは5.0~9.0、より好ましくは5.5~7.5の範囲に調整することにより行ってもよい。
【0054】
乾燥工程では、凍結乾燥、棚乾燥、スプレードライ等の工程の乾燥方法を用いて菌体を乾燥させることができる。
【0055】
菌体破砕工程では、乾燥菌体を任意の方法で破砕することができる。菌体破砕工程では、破砕された菌体は菌体成分の一部を除去してもよい。
【0056】
[1-2-2.乳酸菌の培養物]
有効成分が乳酸菌の培養物の形態である場合、当該有効成分は、乳酸菌とともに、当該乳酸菌の産生物を含む培地成分を含む。乳酸菌の培養物は、上記の所定の乳酸菌の1種を単独で用いて製造した培養物であってもよいし、複数種を組み合わせて用いて製造した培養物であってもよいし、ある1種を単独で用いて製造した培養物と他の1種を単独で用いて製造した培養物との混合物であってもよい。
【0057】
培養物に含まれる培地成分は、当該乳酸菌の培養に用いた培地成分の一部が除去されていてもよい。また、培養物に含まれる乳酸菌は、生菌及び死菌のいずれであってもよい。また、死菌の場合、菌体は破砕されていてもよい。また、菌体が破砕されている場合、菌体成分の一部が除去されていてもよい。
【0058】
乳酸菌の培養物は、上記の所定の乳酸菌の1種又は複数種を培養する工程を含む製造方法により得ることができる。当該製造方法は、上記の工程以外に、他の工程を含むことができる。他の工程としては、培地成分の一部を除去する工程、乳酸菌を休止菌体反応に供する工程、及び/又は、乾燥工程を含んでもよい。それぞれの工程の詳細は、上記「1-2-1.乳酸菌」で述べた通りである。
【0059】
[1-2-3.乳酸菌の培養上清]
有効成分が乳酸菌の培養上清の形態である場合、当該有効成分は、当該乳酸菌の産生物を含む培地成分を含む。乳酸菌の培養上清は、上記の所定の乳酸菌の1種を単独で用いて製造した培養上清であってもよいし、複数種を組み合わせて用いて製造した培養上清でもあってよいし、ある1種を単独で用いて製造した培養上清と他の1種を単独で用いて製造した培養上清との混合物であってもよい。
【0060】
培養上清に含まれる培地成分は、当該乳酸菌の培養に用いた培地成分の一部が除去されていてもよい。
【0061】
乳酸菌の培養上清は、上記の所定の乳酸菌の1種又は複数種を培養する工程、並びに培養上清を分離回収する工程を含む製造方法により得ることができる。当該製造方法は、上記の工程以外に、他の工程を含むことができる。他の工程としては、培地成分の一部を除去する工程、乳酸菌を休止菌体反応に供する工程、及び/又は、乾燥工程を含んでもよい。それぞれの工程の詳細は、上記「1-2-1.乳酸菌」で述べた通りである。
【0062】
[1-2-4.乳酸菌の抽出物]
有効成分が乳酸菌の抽出物の形態である場合、当該有効成分は、上記乳酸菌又は乳酸菌の培養物を抽出処理に供して得られる多成分系の組成物である。当該抽出物の調製に用いられる抽出溶媒としては、例えば、水;エタノール、イソプロパノール等の炭素数1~4の1価低級アルコール;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;これらの混合液等の極性溶媒が挙げられる。また、抽出時の温度条件としては、室温(例えば、5~35℃、好ましくは20~30℃)であることが好ましい。抽出物の具体的な調製方法としては、例えば、記乳酸菌又は乳酸菌の培養物若しくはそれらの粉砕物を抽出溶媒中に含む懸濁液を調製し、当該懸濁液を固液分離することで抽出液(エキス液)を得る方法、又は必要に応じて当該抽出液を乾燥させることで粉末(エキス末)を得る方法が挙げられる。
【0063】
[1-3.有効成分に含まれる成分]
本発明で用いられる有効成分であるフルクトバシラス属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び前記乳酸菌の抽出物は、いずれも、当該乳酸菌が産生したNMN及び/又はNAD)だけでなく、当該乳酸菌が産生した(NMN、NAD以外の)他の代謝物、及び/又は菌体成分等も含む。本発明による優れた抗肥満効果、筋力向上効果、脂肪性肝炎改善効果、及び脂質代謝改善効果は、これらの成分が相まって奏されると考えられる。
【0064】
本発明で用いられる有効成分がNAD及びNMNを含む場合、NMNの含有量は特に限定されないが、NAD1重量部あたりのNMNの含有量(含有比率)は、例えば、0.001重量部以上10重量部以下である。抗肥満効果、筋力向上効果、脂肪性肝炎改善効果、及び脂質代謝改善効果からなる群より選択される少なくとも1つをより一層効果的に向上させる観点からは、NAD1重量部あたりのNMNの含有量は、好ましくは0.005重量部以上5.0重量部以下、より好ましくは0.005重量部以上3.0重量部以下、さらに好ましくは0.008重量部以上2.0重量部以下、特に好ましくは0.01重量部以上1.5重量部以下、一層好ましくは0.03重量部以上1.0重量部以下が挙げられる。
【0065】
また、NAD1モルあたりのNMNの含有量(含有比率)は特に限定されないが、例えば、0.001モル以上10モル以下、好ましくは0.005モル以上5モル以下が挙げられる。さらに好ましい形態において、NAD1モルあたりのNMNの含有量としては、好ましくは0.01モル以上3モル以下、より好ましくは0.02モル以上2モル以下、さらに好ましくは0.03モル以上1.5モル以下が挙げられる。
【0066】
[1-4.有効成分の含有量]
本発明の抗肥満剤、筋力向上剤、脂肪性肝炎改善剤、及び脂質代謝改善剤それぞれに含まれる有効成分の量としては特に限定されず、付与すべき抗肥満効果、筋力向上効果、脂肪性肝炎改善効果、脂質代謝改善効果に応じて適宜決定することができる。
【0067】
本発明の抗肥満剤、筋力向上剤、脂肪性肝炎改善剤、及び脂質代謝改善剤それぞれに含まれる有効成分の含有量としては、例えば、フルクトバシラス属乳酸菌の乾燥重量換算量で、0.00001~10重量%、好ましくは0.0001~1重量%が挙げられる。上記の乾燥重量換算量とは、有効成分が、乳酸菌、乳酸菌の培養物である場合は、有効成分の乾燥重量を指し、有効成分が乳酸菌の培養上清である場合は、培養上清の取得に用いた乳酸菌の乾燥重量を指し、有効成分が抽出物である場合は、抽出物の取得に用いた乳酸菌の乾燥重量を指す。
【0068】
[2.他の成分]
本発明の抗肥満剤、筋力向上剤、脂肪性肝炎改善剤、及び脂質代謝改善剤は、上記の有効成分以外に、必要に応じて、他の薬理成分を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。このような薬理成分としては、例えば、抗炎症剤、抗酸化剤、殺菌剤、清涼化剤、ビタミン類、ムコ多糖類等が挙げられる。
【0069】
また、本発明の抗肥満剤、筋力向上剤、脂肪性肝炎改善剤、及び脂質代謝改善剤は、所望の製剤形態にするために、必要に応じて、基剤及び/又は添加剤が含まれていてもよいし、含有していなくてもよい。このような基剤及び/又は添加剤については、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、水、炭素数1~4の1価低級アルコール(エタノール、イソプロパノール等)等の水性基剤;天然由来油(植物油、動物油、それらの加工油)、鉱物油、エステル油、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸、脂肪酸エステル、高級アルコール等の油性基剤;界面活性剤;多価アルコール(グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等);清涼化剤、防腐剤、着香剤、着色剤、粘稠剤、pH調整剤、湿潤剤、安定化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、粘着剤、緩衝剤、溶解補助剤、可溶化剤、保存剤等の添加剤が挙げられる。
【0070】
[3.製剤形態及び製品分類]
本発明の抗肥満剤、筋力向上剤、脂肪性肝炎改善剤、及び脂質代謝改善剤の製剤形態については、特に制限されず、液状、半固形状(クリーム状、ゲル状、軟膏状、ペースト状)、固形状(顆粒剤、細粒剤、散剤、錠剤、カプセル剤)等のいずれであってもよい。また、本発明の抗肥満剤、筋力向上剤、脂肪性肝炎改善剤、及び脂質代謝改善剤は、水性製剤、油性製剤等の非乳化製剤であってもよく、また水中油型乳化製剤、油中水型乳化製剤等の乳化製剤であってもよい。
【0071】
また、本発明の抗肥満剤、筋力向上剤、脂肪性肝炎改善剤、及び脂質代謝改善剤の製品分類としては、飲食品、化粧品、医薬品が挙げられる。
【0072】
飲食品としては特に限定されないが、例えば、発酵乳(ドリンクヨーグルト等)、乳酸菌飲料、乳飲料(コーヒー牛乳、フルーツ牛乳等)、茶系飲料(緑茶、紅茶及び烏龍茶等)、果物・野菜系飲料(オレンジ、りんご、ぶどう等の果汁、トマト、ニンジン等の野菜汁を含む飲料)、アルコール性飲料(ビール、発泡酒、ワイン等)、炭酸飲料、清涼飲料、水ベースの飲料等の飲料;及び発酵乳(セットタイプヨーグルト、ソフトヨーグルト等)、菓子、インスタント食品、調味料等の加工食品等の食品が挙げられる。
【0073】
また、飲食品としては、機能性食品も挙げられる。機能性食品は、生体に対して一定の機能性を有する食品を意味し、例えば、特定保健用食品(条件付きトクホ[特定保健用食品]を含む)及び栄養機能食品等の保健機能食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント(例えば、錠剤、被覆錠、糖衣錠、カプセル及び液剤等の各種剤形のもの)及び美容食品(例えば、ダイエット食品)等が挙げられる。更に、機能性食品は、病者用食品、妊産婦・授乳婦用粉乳、乳児用調製粉乳、高齢者用食品、介護用食品等の特別用途食品であってもよい。
【0074】
化粧品としては、皮膚外用剤及び粘膜外用剤を含む外用剤が挙げられ、より具体的には、化粧水、乳液、クリーム、エッセンス、ゲル、パック、シートマスク、リップクリーム等の基礎化粧料;洗顔料、メイク落とし(クレンジング剤を含む)、角質除去剤、ボディーシャンプー等の皮膚洗浄料;サンスクリーン剤、ボディー用ジェル、ボディー用マッサージ剤、抑汗剤、防臭剤、除毛剤、入浴剤等のボディーケア化粧料;ファンデーション、おしろい、口紅、頬紅、アイシャドー、アイライナー、マスカラ、眉墨等のメークアップ化粧料;マネキュア、ネイルリムーバー等の爪用化粧料;ヘアスタイリング剤、シャンプー、コンディショナー、リンス、育毛剤等の毛髪化粧料;液体歯磨、練歯磨、洗口液、マウススプレー等の口腔用化粧料等が挙げられる。
【0075】
医薬品としては、経口剤、並びに、皮膚外用剤及び粘膜外用剤を含む外用剤(医薬部外品を含む)が挙げられる。経口剤の剤形としては、錠剤、被覆錠、糖衣錠、カプセル及び液剤等が挙げられ、外用剤の剤型としては、液剤(ローション剤、スプレー剤、エアゾール剤、及び乳液剤を含む)、フォーム剤、軟膏剤、クリーム剤、ジェル剤、貼付剤等が挙げられる。
【0076】
これらの製品分類の中でも、抗肥満効果、筋力向上効果、脂肪性肝炎改善効果、脂質代謝改善効果をより一層高める観点から、好ましくは飲食品が挙げられる。
【0077】
[4.用途]
本発明の抗肥満剤、筋力向上剤、脂肪性肝炎改善剤、及び脂質代謝改善剤は、それぞれ、抗肥満効果、筋力向上効果、脂肪性肝炎改善効果、脂質代謝改善効果を目的とした用途に用いられる。筋力向上剤の用途としては、筋肉量減少抑制用、筋力低下抑制用、筋肉量増加用、又は筋力増加用が挙げられる。
【0078】
本発明の脂肪性肝炎改善剤、脂質代謝改善剤は、脂質代謝促進効果を目的とした用途や、糖尿病の予防効果及び/又は治療効果を目的とした用途でも使用できる。すなわち、脂質代謝促進剤や糖尿病の予防及び/又は治療剤(「糖尿病の予防剤等」と称する)として使用することができる。
【0079】
上記脂質代謝促進剤としては、フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び/又は前記乳酸菌の抽出物を含有することを特徴とする。前記乳酸菌はフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)であることが好ましく、フルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus) OS-1010株(受託番号:NITE BP-03818)であることが好ましい。なお、上記脂質代謝促進剤は、本発明の抗肥満剤、筋力向上剤、脂肪性肝炎改善剤、及び脂質代謝改善剤と同様に、[1.有効成分]、[2.他の成分]、[3.製剤形態及び製品分類]、及び[5.用量]の記載を用いて説明できる。
【0080】
上記糖尿病の予防剤等としては、フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び/又は前記乳酸菌の抽出物を含有することを特徴とする。前記乳酸菌はフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)であることが好ましく、フルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus) OS-1010株(受託番号:NITE BP-03818)であることが好ましい。なお、上記糖尿病の予防剤等は、本発明の抗肥満剤及び筋力向上剤と同様に、[1.有効成分]、[2.他の成分]、[3.製剤形態及び製品分類]、及び[5.用量]の記載を用いて説明できる。
【0081】
[5.用量]
本発明の抗肥満剤、筋力向上剤、脂肪性肝炎改善剤、及び脂質代謝改善剤が内用される場合、有効成分量が、例えば、0.01~200mg/kg/日、好ましくは0.1~20mg/kg/日となる量で、1日に1~5回、内用することができる。
【実施例0082】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0083】
[サンプル(乳酸菌粉末)の調製]
Fructobacillus fructosus OS-1010株を、Difco社製のMRS培地(前培養培地)30mlに植菌し、30℃で24時間、静置で拡大培養した。得られた培養液をOD660が0.02となるように、MRS培地(本培養培地)1Lに植菌し、30℃で12時間、pH6.0~7.0で攪拌培養した。得られた培養液を遠心分離に供して菌体を回収した。回収した菌体を1Lの0.85w/w%KCl水溶液で洗浄した。洗浄した菌体を再度遠心分離に供し、菌体を回収した。回収した菌体を50mlの蒸留水に懸濁し、65℃で30分間殺菌後に凍結乾燥を行い、サンプル(乳酸菌粉末)を得た。
【0084】
後述するHPLC分析条件を用い、回収した乳酸菌粉末中のニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)生産量を測定したところ、NAD1重量部あたりのNMNの比率は0.03重量部(NAD1モルあたりのNMNの比率としては0.06モル)であった。
【0085】
(MRS培地の組成)
2w/w% グルコース
1w/w% プロテアーゼペプトン
1w/w% 牛肉エキス
0.5w/w% 酵母エキス
0.2w/w% クエン酸アンモニウム
0.1w/w% Tween80
0.5w/w% 酢酸ナトリウム
0.01w/w% 硫酸マグネシウム
0.005w/w% 硫酸マンガン
0.2w/w% リン酸水素二カリウム
【0086】
(HPLC分析条件)
・NMNの測定方法
カラム:DaisoPak SP-100-5-ODS-P(4.6×150mm)×2本
カラム温度:25℃
溶離液 :75mM リン酸アンモニウム水溶液(pH6.0)
流速 :0.6ml/min
検出器 :UV検出器(260nm)
検出時間 :14.5分
・NADの測定方法
カラム:DAISOPAK SP-100-5-ODS-P(4.6×250mm)×2本
カラム温度:25℃
溶離液 :75mM リン酸アンモニウム水溶液(pH6.0):メタノール=95:5(w:w)
流速 :0.7mL/min
検出器 :UV検出器(260nm)
検出時間 :33分
【0087】
(NMN及びNADの定量方法)
購入したNMN及びNADを標準試料として用いて検量線を作成し、乳酸菌粉末中のNMN及びNADの生産量をそのHLPCのピーク面積比から定量した。
【0088】
[評価マウスの準備]
5週齢の雄性C57BL/6Jマウス(日本クレア株式会社)を36匹購入し、市販の固形飼料CRF-1(オリエンタル酵母工業株式会社)で3週間予備飼育した後、平均体重が均一となるように1群9匹の4群に分けた。
上記4群のマウスに(1)「通常餌」としてD12450J(リサーチダイエット社)、(2)「高脂肪餌」としてD12492(リサーチダイエット社)、(3)「高脂肪餌+0.05%乳酸菌」として、上記サンプル(乳酸菌粉末)を0.05重量%となるように配合したD12492、(4)「高脂肪餌+2.0%乳酸菌」として、上記サンプル(乳酸菌粉末)を2.0重量%となるように配合したD12492をそれぞれ自由摂取させた。なお、実験動物は飼育温度22±2℃、12時間明暗サイクル(明期は7~19時)の環境下にて飼育した。
【0089】
[抗肥満効果の評価]
自由摂取開始より91日目に各マウスの体重を測定し、下記式(X)により体重増加量を算出した。各群の体重増加量を図1に示す。図1に示した結果は、各群の平均値±標準誤差で示した。
体重増加量=自由摂取91日目の体重-自由摂取開始前の体重・・・式(X)
【0090】
統計解析の結果、通常餌摂取群に比べ、高脂肪餌を摂取した群では顕著に体重が増加していた。また、高脂肪餌群に比べ、高脂肪餌+0.05%乳酸菌群、高脂肪餌+2.0%乳酸菌群では、有意に体重増加量が抑制されており、乳酸菌摂取による抗肥満効果が確認できた(図1)。
【0091】
[筋力向上効果の評価]
自由摂取開始より84日目に、以下の方法で各マウスの握力を測定した。
(握力の測定)
ラット・マウス握力測定器GPM-101B/V(有限会社メルクエスト)を用いて、マウス1匹あたり5回、尾を水平方向に引き、その際の握力を測定した。5回の測定の最大値を体重で割り、体重あたりの握力を算出した。各群の体重あたりの握力を図2に示す。図2に示した結果は、各群の平均値±標準誤差で示した。
【0092】
統計解析の結果、通常餌摂取群に比べ、高脂肪餌を摂取した群では顕著に握力が低下していた。また、高脂肪餌群に比べ、高脂肪餌+0.05%乳酸菌群、高脂肪餌+2.0%乳酸菌群では、有意に握力低下が抑制されており、乳酸菌摂取による筋力向上効果、言い換えると筋力低下抑制効果が確認できた(図2)。
【0093】
[抗脂肪性肝炎効果の評価]
自由摂取開始より85日目に各マウスに麻酔を施し、実験動物用X線CTスキャン装置(日立アロカメディカル Latheta LCT-200SE)にて腹部のCT画像を撮影し、付属の解析ソフトにて肝臓脂肪含率を測定した(図3)。図3に示した結果は、各群の平均値±標準誤差で示した。通常餌摂取群に比べ、高脂肪餌を摂取した群では顕著に肝臓への肝臓脂肪含率が増加していた。また、高脂肪餌群に比べ、高脂肪餌+0.05%乳酸菌群、高脂肪餌+2.0%乳酸菌群では、肝臓脂肪含率が低下しており、乳酸菌摂取による肝臓への脂肪蓄積抑制効果が確認できた(図3)。
【0094】
また、自由摂取開始より91日目に各マウスの体重を測定した後、各マウスより血清を回収し、肝酵素値(ALT)を測定した(表1)。
表1に示した結果は、各群の平均値±標準誤差で示した。
通常餌摂取群に比べ、高脂肪餌を摂取した群では顕著にALT値が増加していた。また、高脂肪餌群に比べ、高脂肪餌+0.05%乳酸菌群、高脂肪餌+2.0%乳酸菌群では、ALT値が低下しており、乳酸菌摂取による抗脂肪性肝炎効果が確認できた(表1)。
【0095】
【表1】
【0096】
[脂質代謝改善効果の確認]
自由摂取開始より91日目に各マウスの体重を測定した後、各マウスより血清を回収し、総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロールを測定した(表2)。なお、動脈硬化指数は以下の式により求めた。
動脈硬化指数=(総コレステロール-HDLコレステロール)/HDLコレステロール
表2に示した結果は、各群の平均値±標準誤差で示した。
【0097】
【表2】
【0098】
表2に示すように、通常餌摂取群に比べ、高脂肪餌を摂取した群ではLDLコレステロール及び動脈硬化指数が増加していた。また、高脂肪餌群に比べ、高脂肪餌+0.05%乳酸菌群、高脂肪餌+2.0%乳酸菌群では、LDLコレステロール及び動脈硬化指数が低下しており、乳酸菌摂取による脂質代謝改善効果が確認できた。
図1
図2
図3