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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121824
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】SGLT機能画像診断薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 51/04 20060101AFI20240830BHJP
   A61P 33/14 20060101ALI20240830BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
A61K51/04 300
A61P33/14
A61P1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024027025
(22)【出願日】2024-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2023028238
(32)【優先日】2023-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 彩夏
(72)【発明者】
【氏名】川井 惠一
(72)【発明者】
【氏名】小林 正和
(72)【発明者】
【氏名】絹谷 清剛
(72)【発明者】
【氏名】玉井 郁巳
(72)【発明者】
【氏名】水谷 明日香
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 翔
(72)【発明者】
【氏名】関 達哉
【テーマコード(参考)】
4C085
【Fターム(参考)】
4C085HH03
4C085KA29
4C085KB18
4C085KB78
4C085LL05
4C085LL18
(57)【要約】
【課題】[18F]FDGとは異なる集積特性を有する、放射性診断薬(特に、がん放射性診断薬)を提供することを課題とする。
【解決手段】進拡散型グルコース輸送体(GLUT)との相同性がないグルコース輸送体であり、[18F]FDGでは検出困難な脳腫瘍等にも発現が確認されているナトリウム共役型グルコース輸送体(SGLT)に着目し、放射性同位元素標識グリコシドがSGLTに対して特異的な親和性を有することを見出した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナトリウム共役型グルコース輸送体に対して特異的な親和性を有する放射性同位元素標識グリコシド又はその薬学的に許容される塩を含む、放射性診断薬。
【請求項2】
前記ナトリウム共役型グルコース輸送体が、SGLT-1及びSGLT-2からなる群から選択されるいずれか1種以上である、請求項1に記載の放射性診断薬。
【請求項3】
前記グリコシドが、フェノールグリコシドである、請求項1に記載の放射性診断薬。
【請求項4】
前記フェノールグリコシドが、β-アルブチン及びフロリジンからなる群から選択されるいずれか1種以上である、請求項3に記載の放射性診断薬。
【請求項5】
前記放射性同位元素が、125-ヨウ素(125I)である、請求項1に記載の放射性診断薬。
【請求項6】
前期放射性同位元素標識グリコシドが、125I標識β-アルブチン及び125I標識フロリジンからなる群から選択されるいずれか1種以上である、請求項1に記載の放射性診断薬。
【請求項7】
前記放射性診断薬が、がん放射性診断薬である、請求項1~6のいずれかに記載の放射性診断薬。
【請求項8】
前記がんが大腸がんである、請求項7に記載の放射性診断薬。
【請求項9】
請求項1~6のいずれかに記載の放射性診断薬を含む、がんの診断用キット。
【請求項10】
下記式1で表される構造を有する125I標識β-アルブチン又はその薬学的に許容される塩。
【化1】
(式中、Iは125Iを表す。)
【請求項11】
下記式2で表される構造を有する125I標識フロリジン又はその薬学的に許容される塩。
【化2】
(式中、Iは125Iを表す。)
【請求項12】
ナトリウム共役型グルコース輸送体であるSGLT-1及び/又はSGLT-2過剰発現細胞の培養系に候補放射性化合物を加えて培養し、細胞内の該化合物の集積量を確認することを特徴とする、がんの放射性診断薬のスクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性診断薬に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、我が国の死因第1位は、悪性新生物(がん)であり、その割合は全体の約30%を占め、約4人に1人はがんで死亡している。がんの検査方法には、細胞診検査や組織診検査などの病理検査、腫瘍マーカー検査、画像検査の主に3つの手法があるが、その中でも画像検査は身体的負担が比較的少なく、他の疾患を持つ患者や高齢者に対してもリスクが少ない検査方法である。がんの画像診断法として、グルコース輸送体により輸送されるグルコース類似化合物[18F]FDG(2-deoxy-2-[18F]fluoro-D-glucose)を用いたPET(positron emission tomography)検査が用いられている(非特許文献1)。
【0003】
グルコース輸送体としては、[18F]FDGを輸送する促進拡散型グルコース輸送体(sodium independent glucose transporter;GLUT)のほか、脳腫瘍等における発現が確認されているナトリウム共役型グルコース輸送体(sodium glucose co-transporter;SGLT)が知られている(非特許文献2、非特許文献3)。
【0004】
しかしながら、[18F]FDGは、正常組織への生理的集積により、脳のようなグルコース代謝が盛んな組織に発生する腫瘍に対しては的確な診断に苦慮する等の問題点が指摘されている(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Minamimoto R, et al.Performance profile ofFDG-PET and PET/CT for cancer screening on the basis ofa Japanese NationwideSurvey. Ann Nucl Med. 2007 Nov;21(9):481-98.
【非特許文献2】SzablewskiL. Expression of glucosetransporters in cancers. Biochim Biophys Acta.2013;1835(2):164-9.
【非特許文献3】Navale AM, et al.Glucose transporters:physiological and pathological roles. Biophys Rev. 2016Mar;8(1):5-9.
【非特許文献4】Sarji SA et al.Physiological uptake in FDG PETsimulating disease. Biomed Imaging Interv J.2006;2(4):e59.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、[18F]FDGとは異なる集積特性を有する、放射性診断薬(特に、がん放射性診断薬)を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために、促進拡散型グルコース輸送体(GLUT)との相同性がないグルコース輸送体であり、[18F]FDGでは検出困難な脳腫瘍等にも発現が確認されているナトリウム共役型グルコース輸送体(SGLT)に着目し、鋭意研究を重ね、放射性同位元素標識グリコシドがSGLTに対して特異的な親和性を有することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち本発明は、以下よりなる。
1.ナトリウム共役型グルコース輸送体に対して特異的な親和性を有する放射性同位元素標識グリコシド又はその薬学的に許容される塩を含む、放射性診断薬。
2.前記ナトリウム共役型グルコース輸送体が、SGLT-1及びSGLT-2からなる群から選択されるいずれか1種以上である、前項1に記載の放射性診断薬。
3.前記グリコシドが、フェノールグリコシドである、前項1に記載の放射性診断薬。
4.前記フェノールグリコシドが、β-アルブチン及びフロリジンからなる群から選択されるいずれか1種以上である、前項3に記載の放射性診断薬。
5.前記放射性同位元素が、125-ヨウ素(125I)である、前項1に記載の放射性診断薬。
6.前期放射性同位元素標識グリコシドが、125I標識β-アルブチン及び125I標識フロリジンからなる群から選択されるいずれか1種以上である、前項1に記載の放射性診断薬。
7.前記放射性診断薬が、がん放射性診断薬である、前項1~6のいずれかに記載の放射性診断薬。
8.前記がんが大腸がんである、前項7に記載の放射性診断薬。
9.前項1~6のいずれかに記載の放射性診断薬を含む、がんの診断用キット。
10.下記式1で表される構造を有する125I標識β-アルブチン又はその薬学的に許容される塩。
【化1】
(式中、Iは125Iを表す。)
11.下記式2で表される構造を有する125I標識フロリジン又はその薬学的に許容される塩。
【化2】
(式中、Iは125Iを表す。)
12.ナトリウム共役型グルコース輸送体であるSGLT-1及び/又はSGLT-2過剰発現細胞の培養系に候補放射性化合物を加えて培養し、細胞内の該化合物の集積量を確認することを特徴とする、がんの放射性診断薬のスクリーニング方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の放射性診断薬に含まれる放射性同位元素標識グリコシドは、ナトリウム共役型グルコース輸送体に対して特異的な親和性を有するため、本発明の放射性診断薬(がんの放射性診断薬)は、従来の[18F]FDGでは検出が困難なグルコース代謝が盛んな脳等に発生する腫瘍の検出に寄与し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】各輸送体における[18F]FDGの集積量。図中、GLUT-1、GLUT-3、SGLT-1及びSGLT-2は、それぞれ各種遺伝子導入細胞の結果を示し、Controlは、HEK293-Mock細胞の結果を示す。図中、†は、コントロールに対する有意差を示す(P<0.01)。(実施例1)。
図2】各輸送体における[H]MDGの集積量。図中、GLUT-1、GLUT-3、SGLT-1及びSGLT-2は、それぞれ各種遺伝子導入細胞の結果を示し、Controlは、HEK293-Mock細胞の結果を示す。図中、†は、Na-PBS使用時のコントロールに対する有意差(P<0.01)、又は、Na-PBS使用時とCh-PBS使用時との有意差(P<0.05)を示す。(実施例1)
図3】安定同位体ヨウ素化β-アルブチン(左上)及び安定同位体ヨウ素化フロリジン(右上)並びに[125I]β-アルブチン(左下)及び[125I]フロリジン(右下)のHPLC波形。(実施例2)
図4】各輸送体における[125I]β-アルブチンの集積量。図中、GLUT-1、GLUT-3、SGLT-1及びSGLT-2は、それぞれ各種遺伝子導入細胞の結果を示し、Controlは、HEK293-Mock細胞の結果を示す。図中、†は、Na-PBS使用時のコントロールに対する有意差、又は、Na-PBS使用時とCh-PBS使用時との有意差を示す(P<0.05)。(実施例2)
図5】各輸送体における[125I]フロリジンの集積量。図中、GLUT-1、GLUT-3、SGLT-1及びSGLT-2は、それぞれ各種遺伝子導入細胞の結果を示し、Controlは、HEK293-Mock細胞の結果を示す。図中、†は、Na-PBS使用時のコントロールに対する有意差、又は、Na-PBS使用時とCh-PBS使用時との有意差を示す(P<0.05)。(実施例2)
図6】大腸がん細胞株LS180での[125I]β-アルブチンの集積量及び[125I]フロリジンの集積量の確認。(実施例3)
図7】大腸がん細胞DLD-1での[125I]β-アルブチンの集積量及び[125I]フロリジンの集積量の確認。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、ナトリウム共役型グルコース輸送体(特に、SGLT-1及び/又はSGLT-2)に対して特異的な親和性を有する放射性同位元素標識グリコシド又はその薬学的に許容される塩を含む、放射性診断薬(以下、単に「放射性診断薬」と称する場合がある)を対象とする。
本発明の放射性診断薬は、該診断薬を、被検者体内(特に、体内のがん細胞内)、又は被検者由来試料(特に、試料中のがん細胞内)に集積させることにより、がんの検査において、従来の方法では検出が困難なグルコース代謝が盛んな組織に発生する腫瘍であっても検出することができる。
【0012】
(ナトリウム共役型グルコース輸送体)
本発明は、新規合成した放射性同位元素標識グリコシドが、ナトリウム共役型グルコース輸送体(sodium glucose co-transporter;SGLT)に対して特異的な親和性を有することを新たに見出し、達成されたものである。
SGLTには、2つのサブタイプがあり、SGLT-1及びSGLT-2が知られており、本発明における放射性同位元素標識グリコシドは、SGLT-1及び/又はSGLT-2に対して特異的な親和性を有する。
本発明において、「ナトリウム共役型グルコース輸送体(SGLT)に対して特異的な親和性」は、GLUTよりもナトリウム共役型グルコース輸送体(SGLT)に対して高い親和性を有することを意味し、好ましくは、SGLTに対して親和性を有し、GLUTに対して実質的に親和性を有しないことを意味する。
SGLTに対して特異的な親和性は、後述する実施例において、本発明における放射性同位元素標識グリコシドが、GLUT過剰発現細胞及び対照細胞(Mock細胞)と比較して、SGLT過剰発現細胞胞に対して高い集積性を示し、かつ、Mock細胞及びSGLT過剰発現細胞と比較して、GLUT過剰発現細胞に対して高い集積性を示さないことにより確認された。
【0013】
(ナトリウム共役型グルコース輸送体に対して特異的な親和性)
本発明の「ナトリウム共役型グルコース輸送体に対して特異的な親和性」とは、上記説明に加えて、下記の実施例を考慮して、以下のように設定できるが、特に限定されない。
〇[125I]β-アルブチン
SGLT-1及び/又はSGLT-2に対する親和性(SGLT-1過剰発現細胞及び/又はSGLT-2過剰発現細胞での集積量)は、GLUT-1及び/又はGLUT-3に対する親和性(GLUT-1過剰発現細胞及び/又はGLUT-3過剰発現細胞での集積量)と比較して、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2.0倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約2.6倍、約2.7倍、約2.8倍、約2.9倍、約3.0倍、約3.5倍、約4.0倍、約4.5倍、又は約5.0倍である。
〇[125I]フロリジン
SGLT-1に対する親和性(SGLT-1過剰発現細胞での集積量)は、GLUT-1及び/又はGLUT-3に対する親和性(GLUT-1過剰発現細胞及び/又はGLUT-3過剰発現細胞での集積量)と比較して、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2.0倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約2.6倍、約2.7倍、約2.8倍、約2.9倍、約3.0倍、約3.5倍、約4.0倍、約4.5倍、又は約5.0倍である。
なお、本明細書において、数値範囲(例えば、集積量)を段階的に記載した場合、各下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「約1.6倍」と「約2.5倍」という記載において、組み合わせて「約1.6倍~約2.5倍」とすることができる。
【0014】
(放射性同位元素)
本発明の放射性診断薬に含まれる放射性同位元素標識グリコシドは、放射性同位元素がグリコシドに結合してなるものであり、放射性同位元素としては、特に限定されないが、125-ヨウ素(125I)、123-ヨウ素(123I)、124-ヨウ素(124I)、131-ヨウ素(131I)、99-テクネチウム(99mTc)、18-フッ素(18F)、67-ガリウム(67Ga)、111-インジウム(111In)、201-タリウム(201Tl)、3-水素(H)、11-炭素(11C)、15-酸素(15O)、32-リン(32P)、59-鉄(59Fe)、67-銅(67Cu)、81-クリプトン(81mKr)、81-ルビジウム(81Rb)、89-ストロンチウム(89Sr)、90-イットリウム(90Y)、133-キセノン(133Xe)、117m-サマリウム(117mSm)、153-サマリウム(153Sm)、177-ルテチウム(177Lu)、186-レニウム(186Re)、188-レニウム(188Re)、212-ビスマス(212Bi)、213-ビスマス(212Bi)、211-アスタチン(211At)、225-アクチニウム(225Ac)および223-ラジウム(223Ra)等が挙げられる。これらの中でも、125I、123I、124I、131I等のヨウ素の放射性同位体である放射性ヨウ素が好ましい。
【0015】
(放射性同位元素標識グリコシド)
本発明の放射性診断薬に含まれる放射性同位元素標識グリコシドは、放射性同位元素が結合したグリコシドである。本発明におけるグリコシドとしては、フェノールグリコシドが好ましい。
本発明におけるフェノールグリコシドは、特に限定されないが、β-アルブチン(Cas:497-76-7)、フロリジン(Cas:60-81-1)、エスクリン(Cas:531-75-9)、ルベリトリン酸(Cas: 152-84-1)、ソラニン(Cas: 20562-02-1)、ジギトキシン(Cas: 71-63-6)及びアミグダリン(Cas: 29883-15-6)が好ましく、アルブチン及びフロリジンがより好ましい。
本発明における放射性同位元素標識グリコシドとしては、放射性ヨウ素標識グリコシドが好ましく、放射性ヨウ素標識フェノールグリコシドがより好ましく、125I標識β-アルブチン、125I標識フロリジンがより好ましい。
これらの放射性ヨウ素標識グリコシドは、単独でも2種以上を併用してもよい。後述の実施例により、125I標識β-アルブチンは、SGLT-1過剰発現細胞及びSGLT-2過剰発現細胞に対して特異的な集積性が確認され、125I標識フロリジンは、SGLT-1過剰発現細胞対して特異的な集積性が確認されている。
本発明の放射性同位元素標識グリコシドの「薬学的に許容される塩」は、薬学的に許容される限り特に限定されないが、例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸等の無機酸との塩、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機酸との塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩基との塩、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン等の有機塩基との塩等が挙げられる。
【0016】
(医薬的に許容し得る担体)
本発明の放射性診断薬は、放射性同位元素標識グリコシド以外に、医薬的に許容し得る担体を含んでいてもよい。医薬的に許容し得る担体とは、液体または固体の賦形剤、希釈液、潤滑剤、または物質をカプセル化する溶媒のような、医薬的に許容し得る物質、組成物または媒体を意味する。各担体は、前記製剤の他の成分との適合性があり、また投与対象に対して傷害性でないという意味において「許容し得る」ものでなければならない。医薬的に許容し得る担体の具体的な例としては、例えば、ラクトース、グルコース、ショ糖などの糖;コーンスターチ、ジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、セルロース酢酸塩などのセルロース;トラガカント;麦芽;ゼラチン;滑石;カカオバター、坐薬ワックスなどの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、ダイズ油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール類;グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコールなどのポリオール類;オレイン酸エチル、ラウリン酸エチルなどのエステル類;寒天;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの緩衝化剤;アルギン酸;生理食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール;ポリエステル、ポリカーボネートなどのポリ無水物類、などが挙げられるが、特に限定されない。当業者であれば、適宜これらの担体を選択することが可能である。
【0017】
(剤型)
本発明の放射性診断薬を、がんの診断を目的として対象に投与する場合は、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、液剤などとして経口的に、あるいは、注射剤、坐剤、経皮吸収剤、吸入剤等として非経口的に投与することができる。このような投与剤型の選択および製造は、当業者であれば公知の方法を利用して適宜行うことができる。
【0018】
(がんの種類)
本発明の放射性診断薬の対象であるがんの種類は、特に限定されず、固形がんであっても浸潤がんであってもよく、例えば、脳腫瘍、膵がん、前立腺がん、膀胱がん、乳がん、結腸がん、大腸がん、小腸がん、直腸がん、虫垂がん、肛門がん、腎臓がん、副腎がん、肝臓がん、肺がん、小細胞肺がん、食道がん、胆嚢がん、胆管がん、卵巣がん、精巣がん、膵臓がん、胃がん、子宮がん、子宮頸部がん、甲状腺がん、前立腺がん、扁平上皮がん、皮膚がん、リンパ腫、メラノーマ、有棘細胞がん、基底細胞がん、結膜がん、口腔がん、白血病、脂肪肉腫、骨肉腫、骨髄増殖性疾患、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫、血管肉腫、神経膠腫、髄膜腫等が挙げられる。本発明の放射性診断薬に含まれる放射性同位元素標識グリコシドは、SGLTに対して特異的な親和性を有するため、特に、[18F]FDGでは検出が難しい、大腸がん、脳腫瘍、膵がん、前立腺がんについて、本発明の放射性診断薬の適用が好ましい。
【0019】
(がんの診断方法又は診断補助方法)
本発明の放射性診断薬を用いたがんの診断方法又は診断補助方法は、がん細胞への放射性診断薬の集積を検出する。
該診断方法又は診断補助方法は、(1)対象(被検者)に本発明の放射性診断薬を投与する工程、(2)投与された放射性診断薬を検出する工程、及び(3)検出結果からがんの有無若しくは進行を判定する工程を含む。
【0020】
(1)に関し、本発明の放射性診断薬を投与する方法は、他の一般に知られている放射性画像診断剤と同様の方法にて投与することができる。投与方法は、特に限定されないが、例えば、静脈注射、皮下注射、皮内注射及び筋肉注射等が挙げられる。投与のタイミングは、対象(被検者)の状態、治療や診断の状況によって、適宜決定することができる。
(2)に関し、投与された放射性診断薬を検出する方法は、特に限定されないが、例えば、公知の方法により画像化することにより行うことができる。例えばPETやSPECT等の核医学画像を用いて当該化合物から放出される放射線を検出することにより、がん細胞のイメージングが可能である。
【0021】
(被検者)
本発明における「被検者」は、特に限定されないが、がんを疑われたヒトおよびヒト以外の哺乳動物、がん疾患と診断されたヒトおよびヒト以外の哺乳動物を好ましく例示できる。
【0022】
(放射能量)
本発明の放射性同位元素標識グリコシドの放射能量は、一般に知られている放射性画像診断で検出可能な放射能量を適宜設定できる。例えば、PET撮像の場合、PET撮像が可能となる放射能量を有している必要がある。例えば、成人に対してPET撮像を行う目的においては、使用時に50~225MBqの放射能量を有していれば良い。
【0023】
(がんの診断用キット)
本発明は、本発明の放射性診断薬を含む、がんの診断用キットを提供する。
【0024】
(新規放射性化合物またはその薬学的に許容される塩)
本発明の他の一観点によれば、下前の新規放射性化合物またはその薬学的に許容される塩が提供される。
下記式1で表される構造を有する125I標識β-アルブチン。
下記式2で表される構造を有する125I標識フロリジン。
【0025】
【化3】
(式中、Iは125Iを表す。)
【0026】
【化4】
(式中、Iは任意の位置の125Iを表す。)
【0027】
(PET/SPECT)
本発明の放射性診断薬を用いたがんの診断方法の具体例として、PET(Positron Emission Tomography:陽電子放出断層撮影)又はSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography:単一光子放射断層撮影)の場合を説明する。
(1)被検者に本発明の放射性診断薬を静脈注射する。
(2)注射の20分~1時間後、PET又はSPECT撮像(又はPET-CT若しくはSPECT-CT撮像)する。
(3)PET又はSPECT画像の放射性同位元素標識グリコシド集積が高ければがんと診断する。
【0028】
(がんの診断方法又は診断補助方法の例示)
本発明の放射性診断薬を用いたがんの診断方法を実施例を基にして説明する。
(1)被検者に本発明の放射性診断薬である「125I標識β-アルブチン」又は「125I標識フロリジン」を静脈注射する。
(2)注射の20分~1時間後、PET又はSPECT撮像(又はPET-CT若しくはSPECT-CT撮像)する。
(3)PET又はSPECT画像により、「125I標識β-アルブチン」又は「125I標識フロリジン」の集積が正常集積より高い場合には、がん陽性と診断する。
【0029】
(がんの放射性診断薬のスクリーニング方法)
本発明は、ナトリウム共役型グルコース輸送体であるSGLT-1及び/又はSGLT-2過剰発現細胞の培養系に候補放射性化合物を加えて培養し、細胞内の該化合物の集積量を確認することを特徴とする、がんの放射性診断薬のスクリーニング方法を提供する。
【0030】
本発明のスクリーニング方法は、in vitro又はin vivoの方法で実施することができる。候補放射性化合物としては、特に制限はなく、いかなる公知放射性化合物及び新規放射性化合物であってもよいが、放射性同位元素で標識されたグリコシドが好ましく、放射性同位元素で標識されたフェノールグリコシドがより好ましい。放射性同位元素としては、特に限定されないが、125-ヨウ素(125I)、123-ヨウ素(123I)、131-ヨウ素(131I)、99-テクネチウム(99mTc)、18-フッ素(18F)、67-ガリウム(67Ga)、111-インジウム(111In)、201-タリウム(201Tl)、3-水素(H)、11-炭素(11C)、15-酸素(15O)、32-リン(32P)、59-鉄(59Fe)、67-銅(67Cu)、81-クリプトン(81mKr)、81-ルビジウム(81Rb)、89-ストロンチウム(89Sr)、90-イットリウム(90Y)、133-キセノン(133Xe)、117m-サマリウム(117mSm)、153-サマリウム(153Sm)、177-ルテチウム(177Lu)、186-レニウム(186Re)、188-レニウム(188Re)、212-ビスマス(212Bi)、213-ビスマス(212Bi)、211-アスタチン(211At)、225-アクチニウム(225Ac)および223-ラジウム(223Ra)等が挙げられる。
【0031】
本発明においてグルコース輸送体過剰発現細胞とは、細胞においてグルコース輸送体遺伝子が機能的に過剰である状態、又は当該生殖細胞の培養系にグルコース輸送体タンパク質が含まれている状態をいう。例えば当該細胞においてグルコース輸送体遺伝子が機能的に過剰である状態、即ちグルコース輸送体遺伝子が本来有する機能を上回る効果を発揮する状態が挙げられる。細胞にグルコース輸送体を過剰発現させる方法は、各遺伝子を細胞に導入してもよいし(必要に応じて過剰発現ベクターを用いてもよい)、細胞の培養系にタンパク質を添加してもよい。
又は、他の遺伝子を調節することによって、相対的にグルコース輸送体が過剰発現させることもできる。グルコース輸送体過剰発現に用いる細胞は、特に限定されないが、哺乳類細胞が好ましく、ヒト細胞がより好ましい。ヒト細胞としては、例えば、HEK293細胞、各種腫瘍由来細胞等が挙げられる。グルコース輸送体としては、SGLT及びGLUTが好ましく、SGLT-1、SGLT-2、GLUT-1及びGLUT-3がより好ましい。例えば、SGLT過剰発現細胞(SGLT-1過剰発現細胞及び/又はSGLT-2過剰発現細胞)、GLUT過剰発現細胞(GLUT-1過剰発現細胞及び/又はGLUT-3過剰発現細胞)及び非過剰発現細胞(Mock細胞)の培養系に候補放射性化合物を加えて培養し、各細胞内の候補放射性化合物の集積量を放射能測定法により測定し、Mock細胞及びGLUT過剰発現細胞と比較して、SGLT過剰発現細胞における集積量が高い候補放射性化合物を選択することで、がんの放射性診断薬をスクリーニングすることができる。放射能測定法は、当業者であれば公知の方法を利用して適宜行うことができる。
【実施例0032】
以下、本発明の理解を深めるために実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0033】
実施例1
[グルコース輸送体過剰発現細胞の作製及び有用性評価]
本実施例では、GLUT-1、GLUT-3、SGLT-1及びSGLT-2の各種グルコース輸送体過剰発現細胞を作製し、GLUTの基質[18F]FDG及びSGLTの基質[H]MDGを用いて集積実験を行い、有用性を評価した。
【0034】
(グルコース輸送体過剰発現細胞の作製)
遺伝子導入が容易に可能なヒト胎児腎細胞HEK293(human embryonic kidney cell)株を使用した。HEK293細胞は10%FBS(Fetal Bovine Serum)を混合したD-MEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium、富士フイルム和光純薬社製)を用いて、5%CO、37℃で培養した。12well細胞培養用マルチプレート(アズワン社製)に2×10 cells/wellになるよう播種し、約24時間後にGLUT-1、GLUT-3、SGLT-1及びSGLT-2の各プラスミドDNAを用いて、Lipofectamine(商標)3000 Transfection Kit(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)によりトランスフェクションを行い、グルコース輸送体過剰発現細胞を作製した。各種グルコース輸送体の塩基配列情報は、GenBankアクセッション番号NM_006516.4(ヒトGLUT-1)、NM_006931.3(ヒトGLUT-3)、NM_000343.4(ヒトSGLT-1)、NM_003041.4(ヒトSGLT-2)を用いた。
【0035】
(グルコース輸送体過剰発現細胞における基質の集積実験)
トランスフェクションの24時間後の実験当日に培養用培地を除去し、インキュベーション用緩衝液であるNa-PBS(Na-phosphate buffer)(137mM NaCl、2.7mM KCl、8mM NaHPO・12HO、1.5mM KHPO、5.6mM D-glucose、0.9mM CaCl・2HO、0.5mM MgCl)とNaをChに置換したCh-PBS(Choline-phosphate buffer)(137mM Choline Chloride、2.7mM KCl、8mM NaHPO・12HO、1.5mM KHPO、5.6mM D-glucose、0.9mM CaCl・2HO、0.5mM MgCl)を加え、5~10分間のプレインキュベーションを行った。約18.5 kBqの[H]MDG(methyl-α-D-[H]glucopyranoside、American Radiolabeled Chemicals Inc.)と約185 kBqの[18F]FDG(金沢先進医学センターより譲受)を細胞に投与して5分間インキュベーションした。各PBSにより細胞を2回洗浄し、0.1N NaOH水溶液で細胞を溶解させ、細胞内の各集積をオートウェルガンマカウンタ(AccuFLEX γ7000、日立アロカメディカル社製)で測定した。測定結果は、タンパク質定量キット(TaKaRa BCA Protein Assay Kit、タカラバイオ社製)で補正した1 mg protein当たりに取り込まれた[H]MDG又は[18F]FDGの放射能で表記した。トランスフェクションしていない細胞(HEK293-Mock細胞)を対照とした。
【0036】
(結果)
18F]FDGの各輸送体過剰発現細胞における集積量の変化の結果を図1に示す。GLUTの基質である[18F]FDGは、Na依存性がないため、Ch-PBSを用いた場合も集積を示し、GLUT-1のみならずSGLT-2にも親和性がみられた。本結果よりGLUT-1及びSGLT-2の過剰発現細胞の有効性が確認できた。
また、[H]MDGの各輸送体過剰発現細胞における集積量の変化を図2に示す。SGLTの基質である[H]MDGは、SGLT-1及びSGLT-2のみならずGLUT-1及びGLUT-3に親和性がみられた。本結果よりSGLT-1及びSGLT-2とGLUT-1及びGLUT-3の過剰発現細胞の有効性が確認できた。
以上より、GLUTの基質である[18F]FDGとSGLTの基質である[H]MDGを用いて、本実施例で使用した全てのグルコース輸送体過剰発現細胞の有効性を確認できた。
【0037】
実施例2
[SGLT標的放射性ヨウ素標識体の作製及び有用性評価]
本実施例では、SGLTに特異的に親和性を有する核医学画像診断薬開発のために、新たにSGLT標的放射性ヨウ素標識体を作製し、実施例1で作製した各種グルコース輸送体過剰発現細胞を用いて集積実験を行い、有用性を評価した。
【0038】
(SGLT標的放射性ヨウ素標識体の作製)
新規SGLT標的放射性ヨウ素標識体として[125I]β-アルブチンと[125I]フロリジンを作製した。標識母体として、アルブチン(CAS登録番号:497-76-7、東京化成工業社製)及びフロリジン(CAS登録番号:60-81-1、東京化成工業社製)を用いた。両標識体ともに標識母体の濃度を10mMとし、1mMクロラミン-Tと放射性ヨウ素-125(125I)の混合液に20分間酸化反応させた後、1/10ピロ亜硫酸ナトリウムを用いて酸化反応を停止させた。その後、HPLC(high performance liquid chromatography, Hitachi High-Tech)にて各放射性ヨウ素標識体を分取し、同装置を用いて両標識体ともに標識率及び放射化学的純度を測定した。
〇HPLC条件
カラム:COSMOSIL 5C18-MS-2(4.6mmI.D.×250mm、ナカライテスク社製)
展開溶媒及びグラジエント条件:MeOH:0.1M HCl:HO(v/v)=5:1:94(at 0 min)、10:1:89(at 6 min)、50:1:49(at 10 min)、100:0:0(at 20 min)
流速:1mL/min
カラム温度:24~26℃程度
測定波長:254nm
【0039】
(グルコース輸送体過剰発現細胞における基質の集積実験)
新たに合成した[125I]β-アルブチン(約18.5 kBq)と[125I]フロリジン(約18.5 kBq)を用いて、実施例1と同様の方法により、それぞれグルコース輸送体過剰発現細胞における集積実験を行った。測定結果はタンパク定量キット(Takara)で補正した1 mg protein当たりに取り込まれた[125I]β-アルブチン又は[125I]フロリジンの放射能で表記した。HEK293-Mock細胞を対照とした。
【0040】
(結果)
安定同位体である下記式1で表される127I-β-アルブチン及び下記式2で表される127I-フロリジン(ともに東京化成工業社製)並びに[125I]β-アルブチン及び[125I]フロリジンのHPLC波形を図3に示す。安定同位体ヨウ素化β-アルブチン及び[125I]β-アルブチンは、どちらも約14分後に溶出され、安定同位体ヨウ素化フロリジン及び[125I]フロリジンは、どちらも約18分後に溶出された。[125I]β-アルブチン及び[125I]フロリジンのピーク波形が、安定同位体ヨウ素化β-アルブチン及び安定同位体ヨウ素化フロリジンのピーク波形とそれぞれ一致したため、下記式1及び式2におけるIが125Iである以外は同一の化学構造を有する[125I]β-アルブチンと[125I]フロリジンがそれぞれ適切に合成できたことを確認できた。
また、標識率について、[125I]β-アルブチンは約75%、[125I]フロリジンは約70%であり、両放射性ヨウ素標識体ともに放射化学的純度95%以上であることが確認できた。
次に、[125I]β-アルブチンの各輸送体過剰発現細胞における集積量の変化を図4に示す。[125I]β-アルブチンは、SGLT-1及びSGLT-2の両SGLTに親和性が確認できた。
また、[125I]フロリジンの各輸送体過剰発現細胞における集積量を図5に示す。[125I]フロリジンは、SGLT-1のみに親和性を確認できた。
【0041】
【化5】
(式中、Iは127Iを表す。)
【0042】
【化6】
(式中、Iは任意の位置の127Iを表す。)
【0043】
実施例3
(大腸がん細胞における基質の集積実験1)
実施例2で合成した[125I]β-アルブチン(約18.5 kBq)及び[125I]フロリジンを用いて、実施例1と同様の方法により、大腸がん細胞株LS180(販売元:American Type Culture Collection)における集積実験を行った。
マイクロアレイ解析により、大腸がん細胞株LS180は高発現SGLT-1及び低発現SGLT-2であることを確認した。
測定結果はタンパク定量キット(Takara)で補正した1 mg protein当たりに取り込まれた[125I]β-アルブチン又は[125I]フロリジンの放射能で表記した。α-MDG(α-methyl-D-glucopyranoside)を対照とした。
【0044】
集積量の変化の結果を図6に示す。
125I]β-アルブチンは、大腸がん細胞で高い集積量を示した。この結果は、実施例2の結果「β-アルブチンはSGLT-1及びSGLT-2の両SGLTに親和性が有する」と一致していた。
125I]フロリジンは、公知のPET薬剤であるα-MDGと同程度の集積量を示した。この結果は、実施例2の結果「フロリジンはSGLT-1に親和性が有する」と一致していた。
【0045】
(大腸がん細胞における基質の集積実験2)
大腸がん細胞における基質の集積実験1と同様な方法で、大腸がん細胞株DLD-1(販売元:American Type Culture Collection)における集積実験を行った。
マイクロアレイ解析により、大腸がん細胞株DLD-1は低発現SGLT-1及び中程度発現SGLT-2であることを確認した。
【0046】
集積量の変化の結果を図7に示す。
125I]β-アルブチンは、中程度発現SGLT-2細胞である大腸がん細胞株DLD-1において早期の段階で集積されることを確認した。
125I]フロリジンは、公知のPET薬剤であるα-MDGと比較して、優れた集積量を示した。
【0047】
125I]β-アルブチン及び[125I]フロリジは体内中のがん細胞(特に、大腸がん細胞)を検出・定量することができるがん放射性診断薬(特に、大腸がん放射線診断薬)となることを確認した。
さらに、[125I]β-アルブチンはSGLT-1、-2を発現している細胞(特に、がん細胞)を検出することができることを確認した。また、[125I]フロリジはSGLT-1を発現している細胞(特に、がん細胞)を検出することができることを確認した。
【0048】
本実施例より、放射性同位元素標識グリコシドは、SGLTに対して特異的な親和性を有するため、SGLTに特異性を示す核医学画像診断薬になることを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の放射性診断薬により、従来の[18F]FDGでは検出が困難なグルコース代謝が盛んな組織に発生する腫瘍の早期発見ができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7