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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121825
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】ビジネスマネジメント学習システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/20 20120101AFI20240830BHJP
【FI】
G06Q50/20
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024027229
(22)【出願日】2024-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2023028766
(32)【優先日】2023-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】523070366
【氏名又は名称】スコレ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(72)【発明者】
【氏名】須藤 奨
(72)【発明者】
【氏名】大野 幸
(57)【要約】      (修正有)
【課題】全社思考・戦略的思考・財務思考を、幹部候補人材や若手・新入社員に効率的に学ばせるビジネスマネジメント学習システムを提供する。
【解決手段】サーバー端末と、情報通信網を通じてサーバー端末に接続される複数のクライアント端末からなるビジネスマネジメント学習ゲームが実施するビジネスマネジメント学習システムであって、サーバー端末から送信される情報に基づいて,クライアント端末のディスプレイ上には経営管理画面及び意思決定画面が表示され、クライアント端末を使用するユーザーが、当該経営管理画面上に表示される情報に基づいて意思決定した結果を、意思決定画面を通じて入力する。複数ユーザーが同一の経営管理画面及び意思決定画面を使用可能なことで、当該ビジネスマネジメント学習ゲームは、チーム参加が可能となっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバー端末と、情報通信網を通じてサーバー端末に接続される複数のクライアント端末からなる、ビジネスマネジメント学習ゲームが実施するためのビジネスマネジメント学習システムであって、当該システム上においてされるものであって、サーバー端末から送信される情報に基づいてクライアント端末のディスプレイ上に経営管理画面及び意思決定画面が表示されるよう構成されており、クライアント端末を使用するユーザーが、当該経営管理画面上に表示される情報に基づいて意思決定した結果を、意思決定画面を通じて入力するものにおいて、複数ユーザーが同一の経営管理画面及び意思決定画面を使用可能に構成されていることによって、当該ビジネスマネジメント学習ゲームにチーム参加が可能となっていることを特徴とするビジネスマネジメント学習システム。
【請求項2】
複数のチームが参加可能に構成されており、これら複数のチームが、各チームのための経営管理画面に表示される情報に基づいて、各チーム独自の意思決定を各チームの意思決定画面を通じて入力し、これら複数のチームによって入力された意思決定結果が、サーバー端末に送信され、サーバー端末において集計処理が行われた後、処理結果が、各チームの経営管理画面に表示可能となるよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のビジネスマネジメント学習システム。
【請求項3】
意思決定画面を通じた意思決定結果の入力、及び意思決定結果の経営管理画面への反映が、1年間を4期に分割した期ごとに実施され、意思決定画面を通じて入力した企業経営活動の実施に所定のリードタイムが付与されており、当該リードタイムが期の数量によって定められていることを特徴とする請求項1または2に記載のビジネスマネジメント学習システム。
【請求項4】
経営管理画面に表示される情報が、現実の経営において使用される財務諸表及び経営指標であることを特徴とする請求項4に記載のビジネスマネジメント学習システム。
【請求項5】
企業経営活動として、資金の調達活動、工場の建設活動、研究開発活動、製品の製造活動、マーケティング活動、販売活動が再現可能に構成されており、各チームが、自身の意思決定画面を通じてこれらのいずれかを選択可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のビジネスマネジメント学習システム。
【請求項6】
各チームのユーザーにより選択され実施された企業経営活動の結果が、次期以降の自社の企業活動及び/又は競合企業の企業活動の進行に影響を有するよう構成されていることを特徴とする請求項5に記載のビジネスマネジメント学習システム。
【請求項7】
各企業活動が、所定の実施条件を満たしたときのみ実施可能であるよう構成されていることを特徴とする請求項6に記載のビジネスマネジメント学習システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビジネスマネジメント学習システム及びビジネスマネジメント学習方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、各企業においては、幹部候補人材の能力開発を行う研修プログラム、若手・新入社員向け研修プログラムなどとして、会社経営・ビジネスマネジメントについて議論し体験する研修が行われる。そのようなビジネス・マネジメントを体験する研修のため、ボードゲームなどを活用し研修の効率を向上させようとする取り組みは存在する。
【0003】
しかしながら、そのようなビジネスマネジメント学習のためのプログラムは、参加者に全社思考・戦略的思考・財務思考を学ばせるものである必要がある。
【0004】
つまり、経営者は全社思考を有していることが必要であり、企業が存在する意義と目標を掲げることが求められる。全社を俯瞰してファクトを捉え、将来のマネジメントビューを持ち、資源の投入方針を意思決定し、組織と共に目標に向かって推進していくことが重要となる。
【0005】
また経営者には、企業業績の最大化のため、競争に勝利するための仮説をたて、検証によって改善していく戦略的思考力も求められる。多くの場合、戦略は不完全な情報に基づくため、自社の状況、業界構造や競合動向、経済や市場環境の変化などに応じた、行動の変革が求められることとなる。
【0006】
さらに、企業経営とは、負債提供者や資本家から資金を調達し、事業活動によりキャッシュを生み出し、資本市場に還元する一連の活動である。過去を振り返る会計、未来を見通すファイナンス、事業の結果を数値で理解することが経営者には不可欠である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-331091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、このような全社思考・戦略的思考・財務思考を、幹部候補人材や若手・新入社員に効率的に学ばせるためのビジネスマネジメント学習システム(ビジネスマネジメントゲーム)、ビジネス・マネジメント学習方法は現在のところ存在していない。
【0009】
そこで本発明は、上述した全社思考・戦略的思考・財務思考を、幹部候補人材や若手・新入社員に効率的に学ばせるためのビジネスマネジメント学習システム(ビジネスマネジメントゲーム)、ビジネス・マネジメント学習方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、サーバー端末と、情報通信網を通じてサーバー端末に接続される複数のクライアント端末からなる、ビジネスマネジメント学習ゲームが実施するためのビジネスマネジメント学習システムであって、当該システム上においてされるものであって、サーバー端末から送信される情報に基づいてクライアント端末のディスプレイ上に経営管理画面及び意思決定画面が表示されるよう構成されており、クライアント端末を使用するユーザーが、当該経営管理画面上に表示される情報に基づいて意思決定した結果を、意思決定画面を通じて入力するものにおいて、複数ユーザーが同一の経営管理画面及び意思決定画面を使用可能に構成されていることによって、当該ビジネスマネジメント学習ゲームにチーム参加が可能となっていることを特徴とするビジネスマネジメント学習システムによって解決される。
【0011】
発展型においては、複数のチームが参加可能に構成されており、これら複数のチームが、各チームのための経営管理画面に表示される情報に基づいて、各チーム独自の意思決定を各チームの意思決定画面を通じて入力し、これら複数のチームによって入力された意思決定結果が、サーバー端末に送信され、サーバー端末において集計処理が行われた後、処理結果が、各チームの経営管理画面に表示可能となるよう構成されていることが可能である。
【0012】
別の発展型においては、意思決定画面を通じた意思決定結果の入力、及び意思決定結果の経営管理画面への反映が、1年間を4期に分割した期ごとに実施され、意思決定画面を通じて入力した企業経営活動の実施に所定のリードタイムが付与されており、当該リードタイムが期の数量によって定められていることが可能である。
【0013】
更に、経営管理画面に表示される情報は、現実の経営において使用される財務諸表及び経営指標であると有利である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明にかかるビジネスマネジメント学習システムの全体図
図2】本発明にかかるビジネスマネジメント学習システムを構成する各端末のハードウェア構成の図
図3】サーバー端末におけるソフトウェア構成の図
図4】クライアント端末におえるソフトウェア構成の図
図5】本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームにおける経営活動の例
図6】本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームにおける各期の進行の様子の例
図7】ユーザー用クライアント端末における画面表示の例
図7a】ユーザー用クライアント端末における画面表示の例
図7b】ユーザー用クライアント端末における画面表示の例
図8】本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームの進行の様子の例
図9】本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームにおいて設けられる意思決定領域の例の図
図10】工場建設の進行の様子の一例を示す図
図11】工場建設の意思決定・指示情報を入力する意思決定画面の一例
図12】本発明にかかるビジネスマネジメントゲームにおいて設けられる市場の例
図13】マーケティング・セールス領域の意思決定情報入力画面の一例
図14】今期及び次期の意思決定結果の関係図
図15】ユーザー用クライアント端末における経営管理画面の一例
図15a】ユーザー用クライアント端末における経営管理画面の一例
図16】ゲーム上において再現される資金調達の状況を示す画面の一例
図17】ファイナンス領域における意思決定入力画面の一例
図17a】意思決定入力画面の別の例
図18】経営管理画面にて確認可能な経営指標の例
図19】経営管理画面にて確認可能な経営指標の例
図20】経営管理画面にて確認可能な経営指標の例
図20a】経営管理画面にて確認可能な経営指標の例
図20b】経営管理画面にて確認可能な経営指標の例
図20c】経営管理画面にて確認可能な経営指標の例
図21】ゲーム進行中における各意思決定と各期における意思決定項目の一覧とその開始時期実施状況の一例
図21a】ゲーム進行中における各意思決定と各期における意思決定項目の一覧とその開始時期実施状況の一例
図22】研究開発への投資に関する経営管理画面の例
図23】需要調査・消費者調査・営業戦略/製品戦略に関する競合調査に関する経営管理画面の例
図24】販売員の給与等に関する経営管理画面の例
【発明を実施するための形態】
【0015】
[全体構成]
図1は、本発明にかかるビジネスマネジメント学習システムの全体像を示す。図1に見て取れるように、本発明にかかるビジネスマネジメント学習システムは、サーバー端末、及びサーバー端末と情報通信網を通じて接続される複数のクライアント端末からなっている。その際、当該サーバー端末は、クラウドコンピューティングサービス等により外部サービスとして提供される一又は複数のサーバー端末として実現されていることも可能である。図1に示されるように、クライアント端末には、ユーザー用クライアント端末(学習者用クライアント端末とも称する)と、ゲームマスター用クライアント端末が存在している。通常、ユーザー用クライアント端末は複数であり、ゲームマスター用クライアント端末は少数・または単数のみ存在している。これらクライアント端末は、図1においてはノートPCとして表されているが、これに限定されず、デスクトップ型のPCとして、タブレット端末として、スマートフォンとして実施されることも可能である。
【0016】
[各端末の機能・役割]
サーバー端末は、後述するハードウェア・ソフトウェア構成を有しており、ビジネスマネジメント学習ゲームを提供する、または、ビジネスマネジメント学習ゲームを適宜進行させる機能を有するよう構成されている。
【0017】
ユーザー用クライアント端末(学習者用クライアント端末)は、後述するハードウェア構成・ソフトウェア構成を有している。これによってビジネスマネジメント学習ゲームを通じて、ユーザーが全社思考・戦略的思考・財務思考を学習できるよう構成されている。より具体的には、後述する「経営管理画面」を通じて自社の財務状況、前期の意思決定の結果、競合の動向などを分析し、「意思決定画面」を通じて自社の行動計画を入力可能に構成されている。ユーザー用クライアント端末(学習者用クライアント端末)を使用するユーザーは、通常、ビジネスマネジメントを学習する学習者・学生・トレイニーなどである。
【0018】
この「経営管理画面」及び「意思決定画面」は、各チームごとに同じものが表示される、つまり同一の画面にチームメンバーが同時にアクセスすることが可能であるよう構成されている。
【0019】
図1から見て取れるように、本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームにおけるユーザー用クライアント端末は、複数のグループ(チーム)にグルーピングされるよう構成されている。この実施例においては、チームA、チームB、チームCの3つのグループ(チーム)がビジネスマネジメント学習ゲームに参加しているのが見て取れる。
【0020】
ゲームマスター用クライアント端末は、後述するハードウェア構成・ソフトウェア構成を有している。これによってビジネスマネジメント学習ゲームを通じて学習を行う学習者・学生・トレイニーに応じたゲームの初期設定・管理を行い、またゲーム進行をモニタリングし、ユーザー用クライアント端末によって構成されるチームに対して、または全体に対して所定の助言・アナウンスを提供することが可能に構成されている。ゲームマスター用クライアント端末を使用するゲームマスターは通常、ビジネスマネジメントを指導する指導者・教授・トレイナーなどである。
【0021】
[各端末のハードウェア構成]
図2に基づき、図1に記載されるサーバー端末及び各クライアント端末のハードウェア構成の例について説明する。本発明にかかるビジネスマネジメント学習システムにおいて使用されるサーバー端末、クライアント端末は、例えば図2のように構成されていることが可能である。
【0022】
図2に示すように、サーバー装置、クライアント端末は、情報処理を行うCPU、記憶装置としてのSSD/HDD、一時的記憶メモリであるRAM、不揮発性記憶メモリであるROM、入力装置、出力装置(表示装置)、外部インターフェース、通信インターフェースからなっている。
【0023】
CPUは、ROMやSSD/HDDなどの記憶装置からプログラムやデータを読み出し、処理を実行する役割を担う。図2に記載される端末(コンピュータ)全体の制御や、コンピュータとしての機能を実現する演算装置である。本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームプログラムが当該CPUにより実行される。
【0024】
SSD/HDDは、プログラムやデータを格納している不揮発性の記憶装置である。格納されるプログラムとしては、基本ソフトウェアであるOS(オペレーションシステム)、OS上で各種機能を実現するアプリケーションソフトウェアがある。本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームプログラムが当該SSD/HDDなどに格納される。なおSSD/HDDは、あくまで記憶装置の一例であり、これに代わる代替技術の採用を妨げるものでない。また、このようなSSD/HDDは、クラウドコンピューティングサービス等の外部サービスにより提供される保管スペースとして実現されていることも可能である。
【0025】
RAMは、プログラムやデータを一時的に保持する揮発性の半導体メモリ(記憶装置)である。本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームプログラムがSSD/HDDなどから読み出され、一時的にRAM上に書き込まれ、これがCPUにより実行されたり、本発明にかかるゲームプログラムの実行において必要となるデータを一時的に保持したりするために使用される。
【0026】
ROMは、サーバー端末、クライアント端末などを実現するコンピュータの電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる不揮発性の半導体メモリ(記憶装置)である。ROMには、図2のコンピュータが起動時に実行されるBIOS、OS設定、各種プログラムやデータなどが格納されていることが可能である。
【0027】
入力装置は、図2のコンピュータに対するユーザー(学習者、トレイニー)、ゲームマスター(指導者、トレイナー)からの指示の入力を可能とするための装置である。入力装置として、キーボード、マウス、コントローラ、タッチパネルなどが考えられる。本発明にかかるゲームプログラムを実施する際、ユーザー(学習者、トレイニー)、ゲームマスター(指導者、トレイナー)からの指示の入力を可能とする機能を有する。具体的には、初期設定を入力する際、意思決定に基づく指示を与える際などに様々な入力を可能とする。
【0028】
表示装置は、いわゆるディスプレイ、モニターである。図2のコンピュータがノートPCやデスクトップPCとして実現されている場合には、表示出力用のディスプレイとして形成されていることが可能であり、タブレット端末、スマートフォンなどとして実現されている場合には、表示装置が入力装置と一体式に例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどとして形成されていることが可能である。
【0029】
外部インターフェースは、外部装置との接続インターフェースである。外部装置としては、例えば記憶媒体などが考えられる。記憶媒体としては、一般的なSSD/HDDのほか、メモリカード、USBメモリなどが考えられる。このような記憶媒体は、コンピュータ内部の記憶媒体の要領が不足した際や、外部とプログラムやデータのやり取りを行う際などに用いられる。
【0030】
通信インターフェースは、本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームシステムにおいて情報通信網に接続するためのインターフェースである。図2のコンピュータは、この通信インターフェースを介してデータ通信、情報通信を行うことが可能であるよう構成されている。
【0031】
[サーバー端末のソフトウェア構成]
以下、図3に基づいてサーバー端末内におけるソフトウェア構成を説明する。基本ソフトウェア等の一般的な部分は本発明の本質と関係しないためここでは説明しない。図3に例示的に記載されているように、本発明にかかるサーバー端末上には、情報送受信部、取得情報処理部、記憶部が設けられている。
【0032】
情報送受信部は、クライアント端末との情報の送受信を可能とする構成要素である。ユーザー用クライアント端末、及びゲームマスター用クライアント端末から情報通信網(インターネット通信網、社内ネットワーク通信網、電話回線網など)を通じて送られてくる情報を受信し、これを記憶部及び/又は取得情報処理部に引き渡す機能を有している。
【0033】
記憶部は、種々の情報(データ)を記憶しておくための構成要素である。情報送受信部が受信した情報を直接的に記憶し、及び/又は、取得情報処理部によって加工された情報を記憶することが可能であるよう構成されている。
【0034】
取得情報処理部は、本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームの進行のために必要となる様々な情報を、情報送受信部または記憶部より取得し、情報の処理・加工を行う。処理された情報は記憶部に記憶されることが可能であるよう構成されている。
【0035】
[クライアント端末のソフトウェア構成]
続いて、図4に基づいてクライアント端末上のソフトウェア構成を説明する。クライアント端末上には、主として情報送受信部、情報処理部、情報入力部、情報出力部が設けられている。その他、本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームの実現に必要な構成要素が適宜設けられていることは当業者にとって自明であるのでここでは詳説しない。ユーザー用クライアント端末とゲームマスター用クライアント端末は基本的に同じソフトウェア構成を有するので、ここでは単にクライアント端末として説明する。
【0036】
情報入力部は、ユーザーまたはゲームマスターからの情報入力を受付け、つまり、本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームの進行に必要となる情報のユーザー・ゲームマスターによる入力を受け付け、入力された情報を情報処理部に引き渡す役目・機能を有する構成要素である。
【0037】
情報処理部は、クライアント端末における基本的情報処理を行う構成要素である。例えば、情報入力部からの情報を受付け、これを情報送受信部に引き渡す。図4に例示的に表されているように、情報送受信部から受け付けた情報を情報出力部に引き渡すことも可能である。また、情報入力部によって入力された情報を直接情報出力部に引き渡すことも考えられる。
【0038】
情報送受信部は、サーバー端末との情報の送受信を実現するための構成要素である。情報入力部を通じてユーザーが入力した情報を情報処理部より引き取り、これに対して、本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームにおける処理を行うためサーバー端末(サーバー端末の情報送受信部)に送信する機能・役割を有している。また、サーバー端末内で処理され、情報通信網を通じて送信されてきた情報を受信し、これを情報処理部に引き渡すよう構成されている。
【0039】
[ビジネスマネジメント学習ゲームの全体像]
図5にもとづいて、本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームの全体像を説明する。本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームのプレイヤー(学習者)は、チームを組んで、例えば“製造小売業”の企業を経営する。企業の経営には、例えば図5に記載の経営活動、つまり1.資金の調達、2.工場の建設、3.研究開発、4.製品の製造、5.マーケティング、6.販売活動が含まれることが可能である。
【0040】
つまりプレイヤーは、所定の期間(例えば最大で5年間などの期間)、自社の工場で製品を製造する。本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームには、図1に記載したように複数のチームが参加できるよう構成されている。つまりプレイヤーは、他チームと同一の市場で競いながら、販売活動を通じて売上を立て、経営業績を高めることを目指す。
【0041】
本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームにおける経営の期間は、例えば最大5年間などと設定することが可能である(図6)。図6に表されるように、本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームは、1年を4期に分割し、各期を1ターンとしてゲームが進行するよう構成されている。
【0042】
図7は、本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームをプレイ中の、ユーザー用クライアント端末における操作画面の表示の例を示す。本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームにおいてプレイヤー(学習者)は、主として2つの画面、つまり経営管理画面と意思決定画面を操作して意思決定を行うよう構成されている。
【0043】
図7の左側の図は、経営管理画面の一例を示す。経営管理画面は、自社の財務状況、前期の意思決定の結果、競合の動向などの分析を行うことが可能であるよう構成されている。競合の動向の分析のため、経営管理画面には追加的なリーダーボードが設けられていることも可能である。当該リーダーボードには、例えば各ランキング(企業名、代表者名が上位3社)などが、マーケット売上シェア(%)、総資本回転率(%)、平均工場稼働率(%)、累計受注数(個)、投下貸本利益率(ROIC)(%)、意思決定時間などにつき表示されることが考えられる。また、リーダーボードには、例えば各ランキング(企業名、代表者名が上位3社)などが、売上高、売上高営業利益率、自己資本率、自己資本利益率(ROE)、投下資本利益率(ROIC)、意思決定時間を6項目表示することも考えられる。一方図7の右側には意思決定画面の一例が表されている。この画面は、自社の行動計画が入力可能であるよう構成されている。どちらの画面にも同一チームのメンバーは同時にアクセスすることが可能であるよう構成されている。これは、例えば一般的なウェブブラウザを通じて行うことが考えられる。つまりチームメンバーは同一URLに同時にアクセスすることによって同じ情報を共有し、同一URLの意思決定画面に同時にアクセスすることによって意思決定に関わり、自社の経営に関与可能に構成されている。なお、ゲーム開始時には、各企業の情報を入力することが可能であるよう構成されており、当該入力情報は、企業情報タブなどに表示されることが可能であるよう構成されていることも考えられる。
【0044】
続いて図8に基づき、1ターン(1期)中における流れを説明する。図8に例示的に表されているように、ユーザーはチームメンバーと協働してこの図に記載の行動、つまり「自社、市場、競合の分析」を行う。この分析は、上述したとおり経営分析画面を通じて行うことが可能であるよう構成されている。つまり、経営分析画面には、このような分析が必要な情報が網羅されている(図9も参照のこと)。
【0045】
続いてユーザーは、「今期の行動計画の入力」を行う。行動計画の入力は上述した意思決定画面を通じて行う。意思決定画面を通じて入力された情報は、上述したクライアント端末の情報送受信部、情報通信網、サーバー端末の情報送受信部を通じて、サーバー端末内の取得情報処理部に送られる。
【0046】
この際、図8に記載されるように、他のチームにおいても同様の「自社、市場、競合の分析」、「今期の行動計画の入力」を各チームの経営管理画面、意思決定画面を通じて行っており、他のチームがそのチームの意思決定画面を通じて入力した情報は、同様にサーバー端末に送られる。つまり、サーバー端末には、参加している全てのチームから同様の意思決定情報(行動計画情報)が送信されてくることとなる。
【0047】
全チームからの意思決定情報(行動計画情報)が揃うと、サーバー端末内の取得情報処理部においては、図8に記載されているように各社の財務数値や行動結果が更新、つまりシミュレーションが実施される。シミュレーションは、全てのチームの意思決定情報(行動計画情報)に基づいて行われる。シミュレーション結果は、先程と逆に、サーバー端末内の情報送受信部、情報通信網、クライアント端末内の情報送受信部を通じて、クライアント端末内の情報処理部に送られ、更に、クライアント端末内の情報出力部(ソフトウェア構成、ハードウェア構成)を介してユーザーにフィードバックされる、つまり次期の経営管理画面に反映される。
【0048】
図9に示すように、本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームにおいては、3つの領域で意思決定を行うことが可能であるよう構成されている。つまり各チームのユーザー(プレイヤー、学習者)は、1.プロダクト領域、2.マーケティング&セールス領域、3.アカウンティング&ファイナンス領域において意思決定を行う。各領域において行う意思決定の概要は図9に示されている通りである。
【0049】
まず1.プロダクト領域における意思決定について説明する。本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームは、製造小売業における経営を学習するものである。そのため、各チームは、製品の製造に必要な工場を建設し、部材品を仕入れ、生産する計画をたて実行していく必要がある。工場の建設、部材品の発注、生産活動には一定の期間が必要であるよう内部設定されているので、適切な製造計画の立案が必要となる。
【0050】
つまり、発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームにおいては、工場の建設がゲーム内で再現可能であるよう構成されている。例えば、工場の建設には、図10に表されているように計画から稼働まで4ターンの期間が、部材品の発注から納品完了までの2ターン分の期間が、そして生産計画には、次期計画から生産完了まで2ターン分の期間が必要であるよう設定されることなどが可能である。また、図10見て取れるように、部材品発注は1年2期目以降、生産計画は1年3期目以降のみ可能となること、次期計画を行うには部材品が必要であること、生産を行うには工場が稼働していることが条件となるよう設定されることが可能である。
【0051】
本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームにおいては、例えば、1工場の建設費は所定の金額(例えば800万円)は、建設計画時に支払うよう構成されていることが可能である。工場は例えば10棟まで建設でき、計画から三期後に稼働開始するよう構成されている。
【0052】
本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームにおいては、償却期間は20期と定められており、償却費は1工場あたり毎期40万円となる。償却は工場稼働後に実施されるよう構成されている。
【0053】
工場の生産能力は、例えば1工場あたり生産可能な製品の最大の数を50個とするよう構成されていることが可能である。また、各工場の稼働率は最低20%を保つことが必要であるよう構成されている。
【0054】
図10の右側に記載された表は、工場の生産固定費の例を示す。各工場に対しては、各工場が稼働した時点から生産固定費(工場労務費等)が発生する。
【0055】
また、本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームにおいては、部材品と在庫の管理がゲーム内で再現可能であるよう構成されている。このため、例えば製品1個を生産するのに、部材品1個が必要であり、部材品の価格(材料費)を、1個あたり4万円と設定することなどが可能である。部材品は、「当期・発注、次期・納入、次次期・生産ラインへ払出可能」の順で利用可能となる。また、部材品の支払いは、納入時点で買掛金となり、翌期に支払わるよう構成されている。
【0056】
本発明におけるビジネスマネジメント学習ゲームにおいては、在庫の管理がゲーム内で再現可能であるよう構成されている。このため、例えば過剰な製品在庫には、倉敷料が発生するよう構成されている。例えば、稼働する工場が1工場ごとに20個を超える期末製品在庫がある場合には、20個を超える在庫製品に対して、毎期1個あたり15,000円の倉敷料が発生するよう構成されている。
【0057】
つまり、3工場が稼働している体制で、期末に製品在庫が70個ある場合、3工場分の60個を超える10個の過剰製品に対して、1個あたり15,000円、合計15万円の倉敷料が発生するよう構成されている。
【0058】
本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームにおいては、ゲーム上において研究開発(R&D)が再現可能であるよう構成されている。このため、研究開発に1年1期目から100万円単位で投資可能であるよう構成されている。研究開発のための投資額は、累積投資額が多いほど成功確率が高くなるよう構成されている。研究開発が成功した場合には、製品の受注率が向上するよう構成されている。研究開発の成功は、一度だけでなく複数回発生するよう構成されており、研究開発の成功が複数回発生すると、その度に受注率が向上するよう構成されている。
【0059】
図11に、プロダクト領域における意思決定の入力のための操作画面の一例を示す。上から順番に、工場建設数、部材発注数、生産計画数、そして研究開発費の入力欄が設けられており、ここではそれぞれ「2」、「100」、「0」、「0」が入力されているのが見て取れる。
【0060】
本発明に係るビジネスマネジメント学習ゲームにおいては、製品は、4種類の性能という概念を有するよう構成されていることが可能である。4種類の性能は、例えば耐久性、軽量性、高品質、省エネに関する性能である。このためユーザー(プレイヤー、学習者)は、研究開発を行う際に、製品のどの性能を改善するか選択できるよう、本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームは構成されていることが可能である。本発明におけるビジネスマネジメント学習ゲームにおいては、ユーザーが(プレイヤー、学習者)が研究開発に投資をすると、製品の性能のうち、ユーザーが選択した性能が一定の確率で進化するよう構成されていることが可能である。製品性能は、例えば、3段階のランクに分類されて構成されていることが可能である。この場合、本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームの開始時には(初期段階)、ランク1からスタートし、研究開発への投資によって最大ランク3まで進化するよう構成されていることが可能である。
【0061】
本発明に係るビジネスマネジメント学習ゲームにおいては、研究開発に対する投資の前に、研究開発者の雇用・採用が必要であるよう構成されていることが可能である。研究開発者の雇用・採用は、例えば1年目・第2期から可能であるよう構成されていることが可能である。雇用・採用にあたっては、採用に際して一人100万円の採用費が、そして採用後には一人60万円の給与を支払わなければならないよう構成されていることが可能である。
【0062】
研究開発に対する投資は、その累積が蓄積されるよう構成されていることが可能である。本発明に係るビジネスマネジメント学習ゲームは、当該累積額を参照し、研究開発に対する投資の成功の確率が変動するよう構成されていることが可能である。例えば、研究開発に対する累積の投資額が増えるほど、研究開発が成功し、各性能が進化する確率が上がるよう構成されていることが可能である。研究開発に対する投資額の累積は、研究開発が成功するとリセットされるよう構成されていることも可能である。
【0063】
研究開発が成功し製品の性能が進化すると、製品の受注の可能性・確率・数量に影響が生じるよう構成されていることが可能である。製品の性能の進化は、市場によっては製品を受注する数量にプラスの影響が生じる反面、市場によってはマイナスの影響が生じるよう構成されていることも可能である。
【0064】
続いて、本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームにおけるマーケティング&セールス領域における意思決定について説明する。本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームにおいては、製品を販売する市場(マーケット)を選択可能に構成されていることが可能である。このため例えば、4つの市場(マーケット)が設けられていることが可能である。図12は、4つの市場の例を表す。各市場においては、販売可能な製品の合計数量が定められており、この合計数量は期ごと・市場ごとに変動するよう構成されていることが可能である。したがって本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームに参加する各チーム(各企業)は、これら例えば4つの市場で、製品を販売しシェアを競うことにより経営・ビジネスマネジメントを学習することが可能となる。市場の需要を分析しながら、市場の特徴を参考に、価格戦略や広告宣伝などのマーケティング戦略を立案し、自社の売上や利益の最大化を目指す。なお、市場(マーケット)の数量は4つに限られず、他の数量の市場(マーケット)が設けられていることも可能である。
【0065】
本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームにおいては、市場調査の実施がゲーム上に再現可能であるよう構成されている。つまり各チームは、マーケティング&セールス領域における意思決定において、市場調査を実施することができるよう構成されている。市場調査を実施すると、その市場における次期の需要を調査することが可能となる。このため、市場調査は、需要調査とも称されることが可能である。市場調査(需要調査)に必要となる予算は、例えば40万円/1市場と事前に設定しておくことが可能である。市場全体の調査(需要の総合計)の費用として60万円を設定しておくことも可能である(図12の下の図)。
【0066】
本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームは、市場調査(需要調査)に加えて、消費者調査が実施可能であるよう構成されていることが可能である。消費者調査は、上述した4つの市場における顧客が、どのような製品性能を好むかを調査するよう構成されていることが可能である。消費者調査は、各市場ごとに最大実施可能回数(例えば最大2回までなど)を設けることが可能であるよう構成されていることが可能である。
【0067】
消費者調査により、各市場における広告宣伝の効果の出やすさを調査することができるよう構成されていることも可能である(広告宣伝については後述)。
【0068】
本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームは、営業戦略に関する競合調査を実施可能であるよう構成されていることが可能である。営業戦略に関する競合調査を実施すると、競合の企業(競合チーム)が、各市場に何人の販売員を配置しているか(各市場に対する販売員の配置については後述する)を、調査することが可能となるよう構成されている。営業戦略に関する競合調査の機能においては、競合企業(競合チーム)の販売員の平均の給与額が調査可能に構成されていることも可能である。
【0069】
本発明に係るビジネスマネジメント学習ゲームは、製品戦略に関する競合調査を実施可能であるよう構成されていることが可能である。製品戦略に関する競合調査を実施すると、競合の企業(競合チーム)が保有する製品の性能に関する情報を得ることができるよう構成されていることが可能である。
【0070】
本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームのマーケティング&セールス領域における意思決定においては、製品の販売数を最大化するため、「販売員の採用と市場への配置」、「広告宣伝活動」、「製品の価格設定」などの実施が再現可能に構成されている。これにより、各チームは、市場の需要を分析しながら、市場の特徴を参考に、価格戦略や広告宣伝などのマーケティング戦略を立案し、自社の売上や利益の最大化を目指すことが可能となる。
【0071】
図13は、このようなマーケティング&セールス領域における意思決定を可能とするための、マーケティング&セールス領域における意思決定画面の例である。上から順番に、市場調査(需要調査)を行うか、どの市場で行うか、採用する販売員の数量、販売員をどの市場にどれだけ配置するか、広告ページをどの市場にどれくらい出稿するか、そして製品の販売をどのようにするかを入力可能に構成されていることが見て取れる。
【0072】
上述したとおり、本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームにおいては、販売員(職員)の採用と配置の実施がゲーム上で再現されている。つまり製品を販売するには販売員を採用し、各市場に配置する必要がある。例えば、販売員を派遣するには3ターンの期間、つまり「当期・募集、次期・訓練、次次期・実働(受注活動)」といった期間が必要であるよう構成されていることが可能である。また、販売員の採用には、募集時に1人あたり100万円、訓練・実働時に1人あたり50万円の費用が必要であるよう構成されていることが可能である。このような販売員の給与は、例えば40万円、60万円、80万円の三段階から選択して決定できるよう構成されていることが可能である。当該給与の設定は、市場における受注の数量に影響が生じるよう構成されていることが可能である。更に、販売員は募集から実働のプロセスにおいて一定の確率で辞退・退職するよう構成されているこが可能である。更に、前述した販売員の給与が、販売員の離職率に影響するよう構成されていることも可能である。販売員の給与は、競合企業(競合チーム)の水準と比較して、これを基に受注率・離職率に影響が生じるよう構成されていることが可能である。
【0073】
本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームにおいては、広告宣伝の実施がゲーム上で再現されている。広告宣伝の実施は、上述したマーケティング&セールス領域における意思決定画面を通じて情報の入力により実施する。各市場で広告宣伝を実施すると、受注率に影響が発生するよう構成されている。広告宣伝は、例えば市場あたり20万円単位で実施可能に構成されていることが可能である。受注率に対する影響は市場によって異なって事前設定されていることが可能である。例えば、1市場あたり実施可能な広告宣伝の最大数を設けておくことも可能である(5ページ(100万円)など)。
【0074】
本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームにおいては、製品価格を各チームごとに設定することが可能であるよう構成されている。販売する製品の単価は、例えば16万円から20万円の間で1万円単位で設定可能に構成されていることが考えられる。価格はすべての市場で同一となり、各市場の特徴や競合の価格設定などの要素を踏まえて受注率に影響が生じるよう構成されている。価格は1万円単位で変更可能であり、例えば前期の価格が17万円であった場合、今期の価格は16万円、17万円、18万円の中から選択することとなる。
【0075】
以上、本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームにおけるプロダクト活動(製品の製造、R&D)、マーケティング&セールス活動(価格設定、広告宣伝、販売)の詳細を説明した。図14は、これらプロダクト活動とマーケティング&セールス活動の流れを表す。図14に示されるように、本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームに参加する各チームは、プロダクト活動の領域、及びマーケティング&セールス活動の領域における意思決定を意思決定画面を通じて入力する。入力された情報はサーバー端末に送られ、サーバ端末の取得情報処理部において各社の受注数(自社の受注数)が決定される。受注数に応じた製品の在庫が存在する場合は、販売が行われ、在庫が不足している場合、受注残が翌期に持ち越される。これら情報に基づいて、サーバー端末の取得情報処理部において各社の財務諸表が更新され、適宜、記憶部に記憶されるとともに、更新された財務諸表情報は、情報通信網を通じてクライアント端末へ送信され、各ユーザーから経営管理画面を通じて閲覧できる状態となり、翌期の意思決定に利用される。
【0076】
図15は、経営管理画面の一例を示す。経営管理画面には、このように進行中のゲーム内における諸情報(工場建設数、部材発注数、生産計画数、研究開発費、市場調査(需要調査)の状況など)の情報の他に、賃借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、製造原価計算書、キャッシュフロー計算書(CF)といった財務諸表を表示するためのボタンが配置されて構成されていることが可能である。これら財務諸表情報は、情報通信網を介してサーバー端末から送信されるものである。
【0077】
続いて、アカウンティング&ファイナンス領域における意思決定について説明する。本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームにおいては、各チームは、自社の経営活動に必要な資金を、借入や増資を通じて調達する必要があるよう構成されている。このため、各チームは、製造や販売活動に必要な資金を計算し、適切にキャッシュフローを管理する必要がある。
【0078】
ゲームは、まず、資本金5,000万円(1,000株)にて1年目1期が開始するよう構成されている。株価は5万円から始まり、業績によって5万円から25万円の範囲で推移するよう構成されている。より具体的には、累積利益が黒字となった時点から、1株=前期経常利益の10倍(PER=10)となるよう構成されていることが考えられる。
【0079】
また、本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームにおいては、ゲーム中で本社設立が再現されるよう構成されている。本社はゲーム開始時に設立され、1年目1期に本社設備として2,000万円を支払うよう構成されている。
【0080】
更に、本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームにおいては、ゲーム中において増資が可能であるよう構成されている。増資は、所定の条件が揃った際に、意思決定画面を通じて行うことが可能であるよう構成されている。所定の条件は、例えば、1.前期の税引前当期利益が黒字である、2.累積利益が黒字である、3.前回の増資から1年経過している、の三条件とすることなどが考えられる。
【0081】
本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームにおいては、ゲーム中において短期借入金、長期借入金、特別借入金によって資金調達が可能あるよう構成されている。
【0082】
短期借入金としては、事業活動に必要な資金を金融機関から借り入れることが可能である。限度額を例えば3000万円に設定しておき、翌期に強制的に返済されるよう構成しておくことなどが考えられる。利子率は、例えば1期あたり2%とし、返済期に利子が支払われるよう構成しておくことが考えられる。短期借入金に関しては、1年目は限度額が2000万円(各期)、2年目以降は信用の増加に伴い3000万円(各期)などと上限金額が変動するよう構成されていることも考えられる。
【0083】
長期借入金は、例えば用途を「本社と工場の設備投資」に限定することが考えられる。この場合、1期あたりの利子率を3%とし、例えば3000万円まで借入可能などと構成することも考えられる。借入の条件として、工場の建設費用などの支出時のみ借入が可能であり、翌期から10期間で元金を均等返済するよう構成されていることも可能である(図16)。
【0084】
本発明におけるビジネスマネジメント学習ゲームにおいては、特別借入金は、経営の緊急時にのみ利用することができるよう構成されている。限度額は5000万円で、翌期に強制的に返済されるよう構成されていることが可能である。利子率を例えば1期あたり15%とし、返済期に利子が支払われるよう構成されていることが可能である。
【0085】
本発明におけるビジネスマネジメント学習ゲームにおいては、資金調達にくわえて、有価証券を運用することによって売却益を売ることが可能であるよう構成されている。また、ゲーム中における経営状況に基づいて法人税や配当の支払いが発生するよう構成されている。
【0086】
本発明におけるビジネスマネジメント学習ゲームにおいては、各チームは企業として有価証券を購入し、売却益を得ることが可能であるよう構成されている。この場合、購入した証券は、翌期に自動的に売却されるよう構成されていることなどが考えられる。証券は、市場の状況に応じて値上がり、または値下がりするよう構成されている。
【0087】
本発明におけるビジネスマネジメント学習ゲームにおいては、法人税が発生するよう構成されている。法人税発生の条件としては、例えば、累積利益が黒字で、かつ当期経常利益が黒字の場合に発生するよう構成することが可能である。法人税の利益率は、例えば1期あたり利益の40%とすることなどが考えられる。この場合、法人税は、翌期に現金で支払われるよう構成されていることが可能である。
【0088】
また、本発明におけるビジネスマネジメント学習ゲームにおいては、所有する株式に対して配当が発生するよう構成されていることが可能である。配当発生の条件として、例えば、累積利益が黒字で、かつ当期経常利益が黒字で、更に、配当資金があることなどを設定するよう構成することが可能である。この場合、1期当たり株価の2.5%の配当が発生するよう構成することが考えられる。配当金は、翌期に現金で支払われるよう構成されていることが考えられる。
【0089】
更に、本発明におけるビジネスマネジメント学習ゲームにおいては、ゲーム中において資金ショートが発生するよう構成されている。この場合、例えばゲーム進行中(経営中)に資金ショート(賃貸貸借表の現金<0)が発生すると、ペナルティとして翌期の受注が半減されるペナルティが与えられるよう構成されていることが可能である。つまり資金ショートを回避するため、各チームは毎期の意思決定において、翌期のキャッシュイン・キャッシュアウトを計算・把握し、資金管理を実施することが求められることとなる。
【0090】
更に、本発明におけるビジネスマネジメント学習ゲームにおいては、ゲーム中において倒産が発生するよう構成されている。ゲーム進行中(経営中)に資金ショートし(全ての借入金限度を超え)、債務超過に陥った場合(資本<0)には、ゲーム中において経営していた企業は倒産の扱いとなる。倒産となってしまった企業の経営(ゲーム進行)はその時点で終了となるよう構成されていることが可能である。
【0091】
また、本発明におけるビジネスマネジメント学習ゲームにおいては、マクロ環境の変化に伴うイベントの発生が再現可能であるよう構成されていることも可能である。当該マクロ環境の変化には、例えば「不景気の発生」、「外資大手企業の参入」等が考えられる。これらイベントは、上述した期ごとにイベントが進行するよう構成されていることが可能である。イベントが発生する期は事前設定されているか、またはランダムに発生するよう構成されていることが可能である。もちろんこれらイベントが発生しないよう事前に設定しておくことも考えられる。
【0092】
「不景気の発生」イベントについて説明する。当該イベントの発生は、サーバー端末上において所定の処理が実施され、又は所定のパラメーターが設定・変更されることにより実行される。当該処理、又はパラメーター変更が行われるとサーバー端末は、情報通信網を介して、ユーザー用クライアント端末に指示情報を送信するよう構成されている。イベントは、不景気の兆候が告知されることから開始されるよう構成されている。不景気の兆候は、各ユーザーの経営管理画面上に例えば、「経済環境の変化(円安の加速)が観測されています」及び/又は「一部都市で新型ウイルス感染症の拡大が観測されています」等の文言が表示されるよう構成されている。このため、サーバー端末は、所定の指示情報(文字情報等)をユーザー用クライアント端末に送信するよう構成されている。ユーザー用クライアント端末は当該指示情報を受信し、経営管理画面上に前記文言を表示するよう構成されている。当該イベントの発生条件として、ゲーム期間が4年2期以上に設定されていることなどが条件として設けられていることが可能である。
【0093】
イベント「不景気の発生」は、期ごとに進行するよう構成されている。上述したとおり発生した当該イベントは次期には、次の段階へと移行する。当該移行はサーバー端末上においてパラメーター値が変更されることなどにより行われる。当該イベントの次段階においては、実際の不景気の発生がゲーム上において再現されるよう構成されている。すなわち所定のロジックで、売上高ランキングに応じて工場における生産が停止し、部材品の発注単価が高騰するよう構成されている。
【0094】
例えば、売上ランキングが1―20%の場合、7割の工場が1期の間停止するよう構成されていることが可能である。また同時に、部材品の発注単価が6万円に高騰するよう構成されていることが可能である。売上ランキングが21ー70%の場合、5割の工場が1期の間停止するよう構成されていることが可能である。この場合も同時に、部材品の発注単価が6万円に高騰するよう構成されていることが可能である。更に売上ランキングが71ー100%の場合、3割の工場が1期の間停止するよう構成されていることが可能である。この場合も同時に、部材品の発注単価が6万円に高騰するよう構成されていることが可能である。
【0095】
この場合、ユーザー用クライアント端末の経営管理画面上には、例えば「円安の加速に伴い、部材品の発注価格が一定の期間 6万円に高騰します。また、新型ウィルス感染症のパンデミックが発生し、一部の工場の稼働が停止しました。今期の稼働可能な工場の数は○棟です。」等の文言が表示されるよう構成されている。
【0096】
ゲームが進行し、次の期に入ると、工場の停止が終了するよう構成されていることが可能である。ユーザー用クライアント端末の経営管理画面上には、例えば「新型ウィルス感染症のパンデミックが沈静化され、工場の稼働が通常通りに復活しました。」等の文言が表示されるよう構成されている。
【0097】
更にゲームが進行し、次の期に入ると、部材品単価の高騰が終了するよう構成されていることが可能である。ユーザー用クライアント端末の経営管理画面上には、例えば「経済環境の安定化に伴い、部材品の発注価格が4万円に戻りました。」等の文言が表示されるよう構成されている。これらの進行は、サーバー端末上で、適当な処理が実施される、及び/又は所定のパラメーターが切り替えられる等により実施されることがあり、当該処理については当業者にとって自明であるのでここでは詳説しない。
【0098】
本発明におけるビジネスマネジメント学習ゲームにおいては、マクロ環境の変化に伴うイベントとして、更に「外資大手企業の参入」が設けられていることが可能である。当該イベントの発生もまた、サーバー端末上において所定の処理が実施され、又は所定のパラメーターが設定・変更されることにより実行される。当該処理、又はパラメーター変更が行われるとサーバー端末は、情報通信網を介して、ユーザー用クライアント端末に指示情報を送信するよう構成されている。イベントは、外資大手企業の参入と働き方の変化の兆候が告知されることから開始されるよう構成されている。当該イベントの発生条件として、例えばゲーム期間が5年1期以上に設定されていることなが条件とされていることが考えられる。
【0099】
外資大手企業の参入と働き方の変化の兆候の告知は、ユーザー用クライアント端末上に、例えば「欧州の大手競合企業が日本市場への参入を発表しました。新型ウィルス感染症の拡大に伴う働き方の変化と合わさり、労働環境の変化が予想されます」等の文言が表示されることにより行われるよう構成されていることが可能である。このため、サーバー端末及びユーザー用クライアント端末は、当該文言に関する指示・情報を送受信可能に構成されていることが可能である。
【0100】
ゲームが進行し、次の期に入ると、当該イベントの次段階に進行する。次段階においては、ゲーム上において外資大手企業の新規参入と物価上昇に伴う業界内の給与上昇の流れ、及びリモートワークの拡大によるライフスタイルの変化が再現される。すなわち、サーバー端末上に用意された所定のロジックにしたがい所定の処理が実行される。当該処理は、例えば販売員(職員)の離職の発生であることが考えられる。例えば売上高ランキング1―30%の場合、強制的に離職(前期の意思決定結果に対して、最低1人、全体の20%)が発生し、前期に退職が発生していても離職が発生するよう構成されていることが可能である。更に、当該期から次期にかけて離職率が1.5倍に上昇するよう構成されていることも可能である。また、以後、ゲーム終了まで販売員訓練・実働費用が100万円に上昇するよう構成されていることも可能である。なお、販売員の給与を例えば40万円、60万円、80万円の三段階から選択して決定できるよう構成されているときには、ゲーム終了まで販売員訓練・実働費用は1.5倍に上昇した結果、60万円、90万円、120万円などと上昇することとなるよう構成されることが可能である。
【0101】
また売上高ランキングが31ー100%の場合、強制的に離職(前期の意思決定結果に対して、最低1人、全体の15%)が発生し、前期に退職が発生していても離職が発生するよう構成されていることが可能である。更に、当該期から次期にかけて離職率が1.5倍に上昇するよう構成されていることも可能である。また、以後、ゲーム終了まで販売員訓練・実働費用が100万円に上昇するよう構成されていることも可能である。
【0102】
当該期においては、ユーザー用クライアント端末の経営管理画面上には、例えば「外資大手企業の新規参入と業界平均給与の引き上げ、リモートワークの拡大と働き方の変化に伴って、一定期間のあいだ (1)離職率の増加、(2)販売員の訓練費・実働費用の高騰(100万円に)、が発生します。」等の文言が表示されるよう構成されていることが可能である。このため、サーバー端末、及びユーザー用クライアント端末は、情報通信回線を通じて適切な指示情報を交換を行うことが可能であるよう構成されている。
【0103】
ゲームが進行し、次の期に入ると、退職率・離職率の上昇が終了するよう構成されていることが考えられる。このため、サーバー端末上では所定のパラメーター変更等が行われ、ユーザー用クライアント端末に対して情報通信回線を通じて、所定の指示情報が送信されるよう構成されている。ユーザー用クライアント端末上においては、経営管理画面上に「働き方の変化に落ち着きがみられ、退職率が元の水準に落ちつく傾向がみられます。」等の文言が表示されるように構成されていることが可能である。
【0104】
図17は、アカウンティング&ファイナンス領域における意思決定画面の一例を示す。上から順番に借入金(短期借入金、長期借入金、特別借入金)の入力欄、有価証券購入のための入力欄、増資のための入力欄が設けられているのが見て取れる。上述したアカウンティング&ファイナンス領域における意思決定は、このようなアカウンティング&ファイナンス領域の意思決定画面を通じて数値等を入力することにより実施される。入力された数値は、適宜、ユーザー用クライアント端末からサーバーへと送信され、サーバー端末における取得情報処理部によって処理され(シミュレーションに利用され)、適宜記憶された上で、処理結果は、再びユーザー用クライアント端末へと送信され、経営管理画面上から確認できるよう構成されている。
【0105】
図18から図20に、本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームにおける経営管理画面にて確認可能な経営指標の例を示す。このような経営指標はゲームの中間期及び最終期に出力可能に構成されている。各チームのユーザーは、各社の財務諸表や経営指標を参照し、自社の経営状況、他社の動向を分析しつつ、上述した意思決定を行い経営方針を決定する。
【0106】
図21に実際のゲーム進行中における各意思決定と各期における意思決定項目の一覧とその開始時期実施状況の一例を示す。
【0107】
以上、本発明にかかるビジネスマネジメント学習ゲームを一つの実施例に基づき説明した。上述の説明はあくまで例示的説明であって、本発明の趣旨を離れない限りにおいて本発明はこれに限定されるものではない。



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図7a
図7b
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図15a
図16
図17
図17a
図18
図19
図20
図20a
図20b
図20c
図21
図21a
図22
図23
図24