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特開2024-121826老化を予防及び/又は改善するための組成物、神経変性疾患を予防及び/又は治療するための組成物並びに脳における炎症を予防及び/又は治療するための組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121826
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】老化を予防及び/又は改善するための組成物、神経変性疾患を予防及び/又は治療するための組成物並びに脳における炎症を予防及び/又は治療するための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/231 20060101AFI20240830BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20240830BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20240830BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240830BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
A61K31/231
A61P3/02 101
A61P19/08
A61P25/28
A61P29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024027895
(22)【出願日】2024-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2023028946
(32)【優先日】2023-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
(71)【出願人】
【識別番号】000173968
【氏名又は名称】一般財団法人糧食研究会
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】堤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】阪上 浩
(72)【発明者】
【氏名】川島 昭浩
【テーマコード(参考)】
4C206
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206DB07
4C206DB48
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA15
4C206ZA16
4C206ZA96
4C206ZB11
4C206ZC22
(57)【要約】
【課題】本発明は、老化を予防及び/又は改善するための、神経変性疾患を予防及び/又は治療するための、或いは、脳における炎症を予防及び/又は治療するための組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、1種又は2種以上のトリグリセリドを有効成分として含む、老化を予防及び/又は改善するための、神経変性疾患を予防及び/又は治療するための、或いは、脳における炎症を予防及び/又は治療するための組成物であって、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸がβ位-長鎖飽和脂肪酸を含み、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積の百分率が10%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリドが、2つのα位にオレイン酸を有し、β位にパルミチン酸を有するトリグリセリド(以下「OPO」という。)を含み、前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積の百分率が5%以上50%以下である、組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種又は2種以上のトリグリセリドを有効成分として含む、老化を予防及び/又は改善するための組成物であって、
前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸がβ位-長鎖飽和脂肪酸を含み、
前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積の百分率が10%以上であり、
前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定され、
前記1種又は2種以上のトリグリセリドが、2つのα位にオレイン酸を有し、β位にパルミチン酸を有するトリグリセリド(以下「OPO」という。)を含み、
前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積の百分率が5%以上50%以下であり、
前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.6.2-2013 トリアシルグリセリン組成(高速液体クロマトグラフ法)により測定される、組成物。
【請求項2】
前記β位-長鎖飽和脂肪酸の炭素数が12以上18以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記β位-長鎖飽和脂肪酸がβ位-パルミチン酸を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積の百分率が10%以上であり、
前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記1種又は2種以上のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積の百分率をV(%)、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積の百分率をV(%)としたとき、式:(V/(V×3))×100で定義される前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のβ結合比率が45%以上であり、
前記1種又は2種以上のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.2.3-2013 脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)により測定され、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定される、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記老化が背骨の屈曲又は背骨の屈曲による症状である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
前記背骨の屈曲による症状が、背骨の痛みもしくは痺れ、関節の軟骨の損傷もしくはすり減り、背骨の屈曲から生じる内臓圧迫による消化器症状、背骨の屈曲による便秘、又は背骨の屈曲による呼吸機能の低下である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記老化が反応時間の遅延、反応の鈍化、意欲の低下、無気力傾向の増加、又は注意力もしくは集中力の低下である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項9】
前記老化が脳機能の低下である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項10】
前記脳機能の低下が認知機能の低下である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記認知機能の低下が記憶機能の低下である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記記憶機能の低下が空間記憶機能の低下、作業記憶機能の低下、又は短期記憶機能の低下である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記老化が脳の老化である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項14】
前記脳の老化が海馬の老化である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記海馬の老化が、前記海馬における老化タンパク質の蓄積である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記老化タンパク質が、アミロイドβ及びグリア繊維性酸性タンパク質から選択される少なくとも1種である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
1種又は2種以上のトリグリセリドを有効成分として含む、神経変性疾患を予防及び/又は治療するための組成物であって、
前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸がβ位-長鎖飽和脂肪酸を含み、
前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積の百分率が10%以上であり、
前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定され、
前記1種又は2種以上のトリグリセリドが、2つのα位にオレイン酸を有し、β位にパルミチン酸を有するトリグリセリド(以下「OPO」という。)を含み、
前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積の百分率が5%以上50%以下であり、
前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.6.2-2013 トリアシルグリセリン組成(高速液体クロマトグラフ法)により測定される、組成物。
【請求項18】
前記神経変性疾患が、海馬における老化タンパク質の蓄積及び海馬におけるタウタンパク質のリン酸化の促進から選択される少なくとも1種に起因する神経変性疾患である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記老化タンパク質が、アミロイドβ及びグリア繊維性酸性タンパク質から選択される少なくとも1種である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記神経変性疾患が、アルツハイマー病である、請求項17~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
1種又は2種以上のトリグリセリドを有効成分として含む、脳における炎症を予防及び/又は治療するための組成物であって、
前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸がβ位-長鎖飽和脂肪酸を含み、
前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積の百分率が10%以上であり、
前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定され、
前記1種又は2種以上のトリグリセリドが、2つのα位にオレイン酸を有し、β位にパルミチン酸を有するトリグリセリド(以下「OPO」という。)を含み、
前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積の百分率が5%以上50%以下であり、
前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.6.2-2013 トリアシルグリセリン組成(高速液体クロマトグラフ法)により測定される、組成物。
【請求項22】
前記脳における炎症が、海馬における炎症である、請求項21に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の第1態様は、老化を予防及び/又は改善するための組成物に関する。本発明の第2態様は、神経変性疾患を予防及び/又は治療するための組成物に関する。本発明の第3態様は、脳における炎症を予防及び/又は治療するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、β位-パルミチン酸を含む油脂が、抗アレルギー作用(特許文献1)、脂肪吸収促進作用(特許文献2)及びエネルギー代謝促進作用(特許文献3)を有することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/178492号パンフレット
【特許文献2】特開2018-177734号公報
【特許文献3】特開2019-162055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の第1態様は、老化を予防及び/又は改善するための組成物を提供することを目的とする。本発明の第2態様は、神経変性疾患を予防及び/又は治療するための組成物を提供することを目的とする。本発明の第3態様は、脳における炎症を予防及び/又は治療するための組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の発明を提供する。
【0006】
[A1]1種又は2種以上のトリグリセリドを有効成分として含む、老化を予防及び/又は改善するための組成物であって、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸がβ位-長鎖飽和脂肪酸を含み、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積の百分率が10%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定され、前記1種又は2種以上のトリグリセリドが、2つのα位にオレイン酸を有し、β位にパルミチン酸を有するトリグリセリド(以下「OPO」という。)を含み、前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積の百分率が5%以上50%以下であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.6.2-2013 トリアシルグリセリン組成(高速液体クロマトグラフ法)により測定される、組成物。
[A2]前記β位-長鎖飽和脂肪酸の炭素数が12以上18以下である、[A1]に記載の組成物。
[A3]前記β位-長鎖飽和脂肪酸がβ位-パルミチン酸を含む、[A1]又は[A2]に記載の組成物。
[A4]前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積の百分率が10%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定される、[A3]に記載の組成物。
[A5]前記1種又は2種以上のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積の百分率をV(%)、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積の百分率をV(%)としたとき、式:(V/(V×3))×100で定義される前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のβ結合比率が45%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.2.3-2013 脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)により測定され、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定される、[A3]又は[A4]に記載の組成物。
[A6]前記老化が背骨の屈曲又は背骨の屈曲による症状である、[A1]~[A5]のいずれかに記載の組成物。
[A7]前記背骨の屈曲による症状が、背骨の痛みもしくは痺れ、関節の軟骨の損傷もしくはすり減り、背骨の屈曲から生じる内臓圧迫による消化器症状、背骨の屈曲による便秘、又は背骨の屈曲による呼吸機能の低下である、[A6]に記載の組成物。
[A8]前記老化が反応時間の遅延、反応の鈍化、意欲の低下、無気力傾向の増加、又は注意力もしくは集中力の低下である、[A1]~[A5]のいずれかに記載の組成物。
[A9]前記老化が脳機能の低下である、[A1]~[A5]のいずれかに記載の組成物。
[A10]前記脳機能の低下が認知機能の低下である、[A9]に記載の組成物。
[A11]前記認知機能の低下が記憶機能の低下である、[A10]に記載の組成物。
[A12]前記記憶機能の低下が空間記憶機能の低下、作業記憶機能の低下、又は短期記憶機能の低下である、[A11]に記載の組成物。
[A13]前記老化が脳の老化である、[A1]~[A5]のいずれかに記載の組成物。
[A14]前記脳の老化が海馬の老化である、[A13]に記載の組成物。
[A15]前記海馬の老化が、前記海馬における老化タンパク質の蓄積である、[A14]に記載の組成物。
[A16]前記老化タンパク質が、アミロイドβ及びグリア繊維性酸性タンパク質から選択される少なくとも1種である、[A15]に記載の組成物。
【0007】
[B1]老化を予防及び/又は改善するための組成物の製造における1種又は2種以上のトリグリセリドの使用であって、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸がβ位-長鎖飽和脂肪酸を含み、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積の百分率が10%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定され、前記1種又は2種以上のトリグリセリドが、2つのα位にオレイン酸を有し、β位にパルミチン酸を有するトリグリセリド(以下「OPO」という。)を含み、前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積の百分率が5%以上50%以下であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.6.2-2013 トリアシルグリセリン組成(高速液体クロマトグラフ法)により測定される、使用。
[B2]前記β位-長鎖飽和脂肪酸の炭素数が12以上18以下である、[B1]に記載の使用。
[B3]前記β位-長鎖飽和脂肪酸がβ位-パルミチン酸を含む、[B1]又は[B2]に記載の使用。
[B4]前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積の百分率が10%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定される、[B3]に記載の使用。
[B5]前記1種又は2種以上のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積の百分率をV(%)、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積の百分率をV(%)としたとき、式:(V/(V×3))×100で定義される前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のβ結合比率が45%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.2.3-2013 脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)により測定され、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定される、[B3]又は[B4]に記載の使用。
[B6]前記老化が背骨の屈曲又は背骨の屈曲による症状である、[B1]~[B5]のいずれかに記載の使用。
[B7]前記背骨の屈曲による症状が、背骨の痛みもしくは痺れ、関節の軟骨の損傷もしくはすり減り、背骨の屈曲から生じる内臓圧迫による消化器症状、背骨の屈曲による便秘、又は背骨の屈曲による呼吸機能の低下である、[B6]に記載の使用。
[B8]前記老化が反応時間の遅延、反応の鈍化、意欲の低下、無気力傾向の増加又は注意力もしくは集中力の低下である、[B1]~[B5]のいずれかに記載の使用。
[B9]前記老化が脳機能の低下である、[B1]~[B5]のいずれかに記載の使用。
[B10]前記脳機能の低下が認知機能の低下である、[B9]に記載の使用。
[B11]前記認知機能の低下が記憶機能の低下である、[B10]に記載の使用。
[B12]前記記憶機能の低下が空間記憶機能の低下、作業記憶機能の低下又は短期記憶機能の低下である、[B11]に記載の使用。
[B13]前記老化が脳の老化である、[B1]~[B5]のいずれかに記載の使用。
[B14]前記脳の老化が海馬の老化である、[B13]に記載の使用。
[B15]前記海馬の老化が、前記海馬における老化タンパク質の蓄積である、[B14]に記載の使用。
[B16]前記老化タンパク質が、アミロイドβ及びグリア繊維性酸性タンパク質から選択される少なくとも1種である、[B15]に記載の使用。
【0008】
[C1]老化の予防及び/又は改善を必要とする対象に1種又は2種以上のトリグリセリドを投与する工程を含む、老化を予防及び/又は改善するための方法であって、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸がβ位-長鎖飽和脂肪酸を含み、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積の百分率が10%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定され、前記1種又は2種以上のトリグリセリドが、2つのα位にオレイン酸を有し、β位にパルミチン酸を有するトリグリセリド(以下「OPO」という。)を含み、前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積の百分率が5%以上50%以下であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.6.2-2013 トリアシルグリセリン組成(高速液体クロマトグラフ法)により測定される、方法。
[C2]前記β位-長鎖飽和脂肪酸の炭素数が12以上18以下である、[C1]に記載の方法。
[C3]前記β位-長鎖飽和脂肪酸がβ位-パルミチン酸を含む、[C1]又は[C2]に記載の方法。
[C4]前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積の百分率が10%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定される、[C3]に記載の方法。
[C5]前記1種又は2種以上のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積の百分率をV(%)、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積の百分率をV(%)としたとき、式:(V/(V×3))×100で定義される前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のβ結合比率が45%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.2.3-2013 脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)により測定され、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定される、[C3]又は[C4]に記載の方法。
[C6]前記老化が背骨の屈曲又は背骨の屈曲による症状である、[C1]~[C5]のいずれかに記載の方法。
[C7]前記背骨の屈曲による症状が、背骨の痛みもしくは痺れ、関節の軟骨の損傷もしくはすり減り、背骨の屈曲から生じる内臓圧迫による消化器症状、背骨の屈曲による便秘、又は背骨の屈曲による呼吸機能の低下である、[C6]に記載の方法。
[C8]前記老化が反応時間の遅延、反応の鈍化、意欲の低下、無気力傾向の増加、又は注意力もしくは集中力の低下である、[C1]~[C5]のいずれかに記載の方法。
[C9]前記老化が脳機能の低下である、[C1]~[C5]のいずれかに記載の方法。
[C10]前記脳機能の低下が認知機能の低下である、[C9]に記載の方法。
[C11]前記認知機能の低下が記憶機能の低下である、[C10]に記載の方法。
[C12]前記記憶機能の低下が空間記憶機能の低下、作業記憶機能の低下、又は短期記憶機能の低下である、[C11]に記載の方法。
[C13]前記老化が脳の老化である、[C1]~[C5]のいずれかに記載の方法。
[C14]前記脳の老化が海馬の老化である、[C13]に記載の方法。
[C15]前記海馬の老化が、前記海馬における老化タンパク質の蓄積である、[C14]に記載の方法。
[C16]前記老化タンパク質が、アミロイドβ及びグリア繊維性酸性タンパク質から選択される少なくとも1種である、[C15]に記載の方法。
【0009】
[D1]老化を予防及び/又は改善するための組成物の有効成分としての1種又は2種以上のトリグリセリドの使用であって、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸がβ位-長鎖飽和脂肪酸を含み、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積の百分率が10%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定され、前記1種又は2種以上のトリグリセリドが、2つのα位にオレイン酸を有し、β位にパルミチン酸を有するトリグリセリド(以下「OPO」という。)を含み、前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積の百分率が5%以上50%以下であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.6.2-2013 トリアシルグリセリン組成(高速液体クロマトグラフ法)により測定される、使用。
[D2]前記β位-長鎖飽和脂肪酸の炭素数が12以上18以下である、[D1]に記載の使用。
[D3]前記β位-長鎖飽和脂肪酸がβ位-パルミチン酸を含む、[D1]又は[D2]に記載の使用。
[D4]前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積の百分率が10%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定される、[D3]に記載の使用。
[D5]前記1種又は2種以上のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積の百分率をV(%)、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積の百分率をV(%)としたとき、式:(V/(V×3))×100で定義される前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のβ結合比率が45%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.2.3-2013 脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)により測定され、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定される、[D3]又は[D4]に記載の使用。
[D6]前記老化が背骨の屈曲又は背骨の屈曲による症状である、[D1]~[D5]のいずれかに記載の使用。
[D7]前記背骨の屈曲による症状が、背骨の痛みもしくは痺れ、関節の軟骨の損傷もしくはすり減り、背骨の屈曲から生じる内臓圧迫による消化器症状、背骨の屈曲による便秘、又は背骨の屈曲による呼吸機能の低下である、[D6]に記載の使用。
[D8]前記老化が反応時間の遅延、反応の鈍化、意欲の低下、無気力傾向の増加又は注意力もしくは集中力の低下である、[D1]~[D5]のいずれかに記載の使用。
[D9]前記老化が脳機能の低下である、[D1]~[D5]のいずれかに記載の使用。
[D10]前記脳機能の低下が認知機能の低下である、[D9]に記載の使用。
[D11]前記認知機能の低下が記憶機能の低下である、[D10]に記載の使用。
[D12]前記記憶機能の低下が空間記憶機能の低下、作業記憶機能の低下又は短期記憶機能の低下である、[D11]に記載の使用。
[D13]前記老化が脳の老化である、[D1]~[D5]のいずれかに記載の使用。
[D14]前記脳の老化が海馬の老化である、[D13]に記載の使用。
[D15]前記海馬の老化が、前記海馬における老化タンパク質の蓄積である、[D14]に記載の使用。
[D16]前記老化タンパク質が、アミロイドβ及びグリア繊維性酸性タンパク質から選択される少なくとも1種である、[D15]に記載の使用。
【0010】
[E1]1種又は2種以上のトリグリセリドを有効成分として含む、神経変性疾患を予防及び/又は治療するための組成物であって、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸がβ位-長鎖飽和脂肪酸を含み、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積の百分率が10%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定され、前記1種又は2種以上のトリグリセリドが、2つのα位にオレイン酸を有し、β位にパルミチン酸を有するトリグリセリド(以下「OPO」という。)を含み、前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積の百分率が5%以上50%以下であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.6.2-2013 トリアシルグリセリン組成(高速液体クロマトグラフ法)により測定される、組成物。
[E2]前記β位-長鎖飽和脂肪酸の炭素数が12以上18以下である、[E1]に記載の組成物。
[E3]前記β位-長鎖飽和脂肪酸がβ位-パルミチン酸を含む、[E1]又は[E2]に記載の組成物。
[E4]前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積の百分率が10%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定される、[E3]に記載の組成物。
[E5]前記1種又は2種以上のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積の百分率をV(%)、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積の百分率をV(%)としたとき、式:(V/(V×3))×100で定義される前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のβ結合比率が45%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.2.3-2013 脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)により測定され、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定される、[E3]又は[E4]に記載の組成物。
[E6]前記神経変性疾患が、海馬における老化タンパク質の蓄積及び海馬におけるタウタンパク質のリン酸化の促進から選択される少なくとも1種に起因する神経変性疾患である、[E1]~[E5]のいずれかに記載の組成物。
[E7]前記老化タンパク質が、アミロイドβ及びグリア繊維性酸性タンパク質から選択される少なくとも1種である、[E6]に記載の組成物。
[E8]前記神経変性疾患が、アルツハイマー病である、[E1]~[E7]のいずれかに記載の組成物。
【0011】
[F1]神経変性疾患を予防及び/又は治療するための組成物の製造における1種又は2種以上のトリグリセリドの使用であって、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸がβ位-長鎖飽和脂肪酸を含み、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積の百分率が10%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定され、前記1種又は2種以上のトリグリセリドが、2つのα位にオレイン酸を有し、β位にパルミチン酸を有するトリグリセリド(以下「OPO」という。)を含み、前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積の百分率が5%以上50%以下であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.6.2-2013 トリアシルグリセリン組成(高速液体クロマトグラフ法)により測定される、使用。
[F2]前記β位-長鎖飽和脂肪酸の炭素数が12以上18以下である、[F1]に記載の使用。
[F3]前記β位-長鎖飽和脂肪酸がβ位-パルミチン酸を含む、[F1]又は[F2]に記載の使用。
[F4]前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積の百分率が10%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定される、[F3]に記載の使用。
[F5]前記1種又は2種以上のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積の百分率をV(%)、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積の百分率をV(%)としたとき、式:(V/(V×3))×100で定義される前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のβ結合比率が45%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.2.3-2013 脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)により測定され、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定される、[F3]又は[F4]に記載の使用。
[F6]前記神経変性疾患が、海馬における老化タンパク質の蓄積及び海馬におけるタウタンパク質のリン酸化の促進から選択される少なくとも1種に起因する神経変性疾患である、[F1]~[F5]のいずれかに記載の使用。
[F7]前記老化タンパク質が、アミロイドβ及びグリア繊維性酸性タンパク質から選択される少なくとも1種である、[F6]に記載の使用。
[F8]前記神経変性疾患が、アルツハイマー病である、[F1]~[F7]のいずれかに記載の使用。
【0012】
[G1]神経変性疾患の予防及び/又は治療を必要とする対象に1種又は2種以上のトリグリセリドを投与する工程を含む、神経変性疾患を予防及び/又は治療するための方法であって、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸がβ位-長鎖飽和脂肪酸を含み、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積の百分率が10%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定され、前記1種又は2種以上のトリグリセリドが、2つのα位にオレイン酸を有し、β位にパルミチン酸を有するトリグリセリド(以下「OPO」という。)を含み、前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積の百分率が5%以上50%以下であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.6.2-2013 トリアシルグリセリン組成(高速液体クロマトグラフ法)により測定される、方法。
[G2]前記β位-長鎖飽和脂肪酸の炭素数が12以上18以下である、[G1]に記載の方法。
[G3]前記β位-長鎖飽和脂肪酸がβ位-パルミチン酸を含む、[G1]又は[G2]に記載の方法。
[G4]前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積の百分率が10%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定される、[G3]に記載の方法。
[G5]前記1種又は2種以上のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積の百分率をV(%)、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積の百分率をV(%)としたとき、式:(V/(V×3))×100で定義される前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のβ結合比率が45%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.2.3-2013 脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)により測定され、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定される、[G3]又は[G4]に記載の方法。
[G6]前記神経変性疾患が、海馬における老化タンパク質の蓄積及び海馬におけるタウタンパク質のリン酸化の促進から選択される少なくとも1種に起因する神経変性疾患である、[G1]~[G5]のいずれかに記載の方法。
[G7]前記老化タンパク質が、アミロイドβ及びグリア繊維性酸性タンパク質から選択される少なくとも1種である、[G6]に記載の方法。
[G8]前記神経変性疾患が、アルツハイマー病である、[G1]~[G7]のいずれかに記載の方法。
【0013】
[H1]神経変性疾患を予防及び/又は治療するための組成物の有効成分としての1種又は2種以上のトリグリセリドの使用であって、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸がβ位-長鎖飽和脂肪酸を含み、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積の百分率が10%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定され、前記1種又は2種以上のトリグリセリドが、2つのα位にオレイン酸を有し、β位にパルミチン酸を有するトリグリセリド(以下「OPO」という。)を含み、前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積の百分率が5%以上50%以下であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.6.2-2013 トリアシルグリセリン組成(高速液体クロマトグラフ法)により測定される、使用。
[H2]前記β位-長鎖飽和脂肪酸の炭素数が12以上18以下である、[H1]に記載の使用。
[H3]前記β位-長鎖飽和脂肪酸がβ位-パルミチン酸を含む、[H1]又は[H2]に記載の使用。
[H4]前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積の百分率が10%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定される、[H3]に記載の使用。
[H5]前記1種又は2種以上のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積の百分率をV(%)、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積の百分率をV(%)としたとき、式:(V/(V×3))×100で定義される前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のβ結合比率が45%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.2.3-2013 脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)により測定され、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定される、[H3]又は[H4]に記載の使用。
[H6]前記神経変性疾患が、海馬における老化タンパク質の蓄積及び海馬におけるタウタンパク質のリン酸化の促進から選択される少なくとも1種に起因する神経変性疾患である、[H1]~[H5]のいずれかに記載の使用。
[H7]前記老化タンパク質が、アミロイドβ及びグリア繊維性酸性タンパク質から選択される少なくとも1種である、[H6]に記載の使用。
[H8]前記神経変性疾患が、アルツハイマー病である、[H1]~[H7]のいずれかに記載の使用。
【0014】
[I1]1種又は2種以上のトリグリセリドを有効成分として含む、脳における炎症を予防及び/又は治療するための組成物であって、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸がβ位-長鎖飽和脂肪酸を含み、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積の百分率が10%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定され、前記1種又は2種以上のトリグリセリドが、2つのα位にオレイン酸を有し、β位にパルミチン酸を有するトリグリセリド(以下「OPO」という。)を含み、前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積の百分率が5%以上50%以下であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.6.2-2013 トリアシルグリセリン組成(高速液体クロマトグラフ法)により測定される、組成物。
[I2]前記β位-長鎖飽和脂肪酸の炭素数が12以上18以下である、[I1]に記載の組成物。
[I3]前記β位-長鎖飽和脂肪酸がβ位-パルミチン酸を含む、[I1]又は[I2]に記載の組成物。
[I4]前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積の百分率が10%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定される、[I3]に記載の組成物。
[I5]前記1種又は2種以上のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積の百分率をV(%)、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積の百分率をV(%)としたとき、式:(V/(V×3))×100で定義される前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のβ結合比率が45%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.2.3-2013 脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)により測定され、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定される、[I3]又は[I4]に記載の組成物。
[I6]前記脳における炎症が、海馬における炎症である、[I1]~[I5]のいずれかに記載の組成物。
【0015】
[J1]脳における炎症を予防及び/又は治療するための組成物の製造における1種又は2種以上のトリグリセリドの使用であって、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸がβ位-長鎖飽和脂肪酸を含み、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積の百分率が10%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定され、前記1種又は2種以上のトリグリセリドが、2つのα位にオレイン酸を有し、β位にパルミチン酸を有するトリグリセリド(以下「OPO」という。)を含み、前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積の百分率が5%以上50%以下であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.6.2-2013 トリアシルグリセリン組成(高速液体クロマトグラフ法)により測定される、使用。
[J2]前記β位-長鎖飽和脂肪酸の炭素数が12以上18以下である、[J1]に記載の使用。
[J3]前記β位-長鎖飽和脂肪酸がβ位-パルミチン酸を含む、[J1]又は[J2]に記載の使用。
[J4]前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積の百分率が10%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定される、[J3]に記載の使用。
[J5]前記1種又は2種以上のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積の百分率をV(%)、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積の百分率をV(%)としたとき、式:(V/(V×3))×100で定義される前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のβ結合比率が45%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.2.3-2013 脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)により測定され、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定される、[J3]又は[J4]に記載の使用。
[J6]前記脳における炎症が、海馬における炎症である、[J1]~[J5]のいずれかに記載の使用。
【0016】
[K1]脳における炎症の予防及び/又は治療を必要とする対象に1種又は2種以上のトリグリセリドを投与する工程を含む、脳における炎症を予防及び/又は治療するための方法であって、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸がβ位-長鎖飽和脂肪酸を含み、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積の百分率が10%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定され、前記1種又は2種以上のトリグリセリドが、2つのα位にオレイン酸を有し、β位にパルミチン酸を有するトリグリセリド(以下「OPO」という。)を含み、前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積の百分率が5%以上50%以下であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.6.2-2013 トリアシルグリセリン組成(高速液体クロマトグラフ法)により測定される、方法。
[K2]前記β位-長鎖飽和脂肪酸の炭素数が12以上18以下である、[K1]に記載の方法。
[K3]前記β位-長鎖飽和脂肪酸がβ位-パルミチン酸を含む、[K1]又は[K2]に記載の方法。
[K4]前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積の百分率が10%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定される、[K3]に記載の方法。
[K5]前記1種又は2種以上のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積の百分率をV(%)、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積の百分率をV(%)としたとき、式:(V/(V×3))×100で定義される前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のβ結合比率が45%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.2.3-2013 脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)により測定され、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定される、[K3]又は[K4]に記載の方法。
[K6]前記脳における炎症が、海馬における炎症である、[K1]~[K5]のいずれかに記載の方法。
【0017】
[L1]脳における炎症を予防及び/又は治療するための組成物の有効成分としての1種又は2種以上のトリグリセリドの使用であって、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸がβ位-長鎖飽和脂肪酸を含み、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積の百分率が10%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定され、前記1種又は2種以上のトリグリセリドが、2つのα位にオレイン酸を有し、β位にパルミチン酸を有するトリグリセリド(以下「OPO」という。)を含み、前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積の百分率が5%以上50%以下であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリドの合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のOPOのピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.6.2-2013 トリアシルグリセリン組成(高速液体クロマトグラフ法)により測定される、使用。
[L2]前記β位-長鎖飽和脂肪酸の炭素数が12以上18以下である、[L1]に記載の使用。
[L3]前記β位-長鎖飽和脂肪酸がβ位-パルミチン酸を含む、[L1]又は[L2]に記載の使用。
[L4]前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積の百分率が10%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定される、[L3]に記載の使用。
[L5]前記1種又は2種以上のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積の百分率をV(%)、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積の百分率をV(%)としたとき、式:(V/(V×3))×100で定義される前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のβ結合比率が45%以上であり、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.2.3-2013 脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)により測定され、前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び前記1種又は2種以上のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積が、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により測定される、[L3]又は[L4]に記載の使用。
[L6]前記脳における炎症が、海馬における炎症である、[L1]~[L5]のいずれかに記載の使用。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1態様によれば、老化を予防及び/又は改善するための組成物が提供される。本発明の第2態様によれば、神経変性疾患を予防及び/又は治療するための組成物が提供される。本発明の第3態様によれば、脳における炎症を予防及び/又は治療するための組成物が提供される。第1~3態様の各組成物の有効成分は、長年食品の原料として使用されてきたトリグリセリドである。したがって、第1~3態様の各組成物は、長期間にわたって継続的に摂取しても副作用の懸念がなく、安全性が高い点において有利である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、試験例4におけるウェスタンブロッティングの結果を示す図である。
図2図2は、試験例4におけるウェスタンブロッティングの結果を示す図である。
図3図3は、試験例4におけるウェスタンブロッティングの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
≪第1~3態様≫
本発明の第1態様は、老化を予防及び/又は改善するための組成物に関する。なお、本明細書において、老化を予防及び/又は改善する作用を「抗老化作用」という。
【0021】
老化は、加齢に伴って生じる生理的機能の低下を意味する。
【0022】
一実施形態において、老化は、背骨の屈曲又は背骨の屈曲による症状である。背骨の屈曲による症状としては、例えば、背骨の痛み又は痺れ(日本腰痛会誌,2005年,11巻1号,pp.27-34;日本内科学会雑誌,2017年,106巻10号,pp.2161-2169)、関節の軟骨の損傷又はすり減り(日本老年医学会雑誌,2002年,39巻5号,pp.513-515)、背骨の屈曲から生じる内臓圧迫による消化器症状(日本消化器内視鏡学会雑誌,1999年,41巻3号,pp.320-325;胃と腸,1994年,29巻7号,pp.729-734)、背骨の屈曲による便秘(脳神経外科ジャーナル、2020年,29巻6号,pp.411-421)、背骨の屈曲による呼吸機能の低下(理学療法学,2020年,47巻1号,pp.20-26;理学療法科学,2019年,34巻4号,pp.461-465)等が挙げられる。背骨の屈曲から生じる内臓圧迫による消化器症状としては、例えば、上部食道狭窄症、Barrett食道、Barrett食道潰瘍等が挙げられる。
【0023】
別の実施形態において、老化は、反応時間の遅延、反応の鈍化、意欲の低下、無気力傾向の増加、又は注意力もしくは集中力の低下である。反応時間の遅延や反応の鈍化は、例えば、単純・選択反応検査や全身反応測定器を用いた測定等により診断することができる。意欲の低下や無気力傾向は、例えば、意欲の指標(Vitality index)(Toba K,et al:Geriatr Gerontol Int 2002;2:23-9.)等により診断することができる。
【0024】
さらに別の実施形態において、老化は、脳機能の低下である。
【0025】
脳機能の低下としては、例えば、認知機能の低下が挙げられる。認知機能の低下としては、例えば、記憶機能の低下、学習機能の低下、知覚機能の低下、思考機能の低下、判断機能の低下、見当識の低下、注意機能の低下、実行機能の低下、言語機能の低下等が挙げられる。認知機能の低下は、例えば、ミニメンタルステート検査(MMSE検査)、Mini-Cog、MoCA(Montreal Cognitive Assessment)、DASC-21(Dementia Assessment Sheet for Community-based Integrated Care System-21 items:地域包括ケアシステムにおける認知症アセスメントシート)、ABC-DS(ABC dementia scale:ABC認知症スケール)、HDS-R(Hasegawa’s Dementia Scale-Revised:改訂長谷川式認知症スケール)等により診断することができる。
【0026】
一実施形態において、認知機能の低下は、記憶機能の低下である。記憶機能の低下は、例えば、記憶が持つ様々な側面を総合的に測定するための、ウェクスラー記憶検査(Wechsler Memory Scale-Revised:WMS-R)等により診断することができる。記憶機能の低下としては、例えば、空間記憶機能の低下、作業記憶機能の低下、短期記憶機能の低下等が挙げられる。空間記憶機能は、目から入った情報のうち、物の位置や向きを認識する能力のことを指す。空間記憶機能の低下は、例えば、時計描画試験(Clock Drawing Test)、コース立方体テスト等により診断することができる。作業記憶機能(ワーキングメモリー)は、短期記憶機能の一つで、短い時間に心の中で情報を保持し、同時に処理する能力のことを指す。作業記憶機能の低下は、例えば、リーディングスパン課題等により診断することができる。短期記憶機能は、保持時間が比較的短く、一度に保持される情報の容量の大きさにも限界がある記憶機能を指す。短期記憶機能の低下は、例えば、手がかり再生(短期記憶)、簡易短期記憶再生検査(STMT)等により診断することができる。
【0027】
さらに別の実施形態において、老化は、脳の老化である。
【0028】
脳の老化は、例えば、海馬の老化である。海馬の老化は、例えば、海馬における老化タンパク質の蓄積である。老化タンパク質は、例えば、アミロイドβ及びグリア繊維性酸性タンパク質から選択される少なくとも1種である。
【0029】
脳の老化の予防及び/又は改善には、例えば、海馬における老化タンパク質(例えば、アミロイドβ及びグリア繊維性酸性タンパク質から選択される少なくとも1種)の蓄積の抑制が関与し得る。
【0030】
老化の予防には、生理的機能の維持、老化の抑制及び老化の遅延化が含まれる。老化の改善には、低下した生理的機能の回復及び低下した生理的機能の正常化が含まれる。
【0031】
本発明の第2態様は、神経変性疾患を予防及び/又は治療するための組成物に関する。
【0032】
神経変性疾患の予防には、神経変性疾患の発症の防止、抑制及び遅延化が含まれる。神経変性疾患の治療には、神経変性疾患の進行又は悪化の抑制、神経変性疾患の進行又は悪化の遅延化、並びに、神経変性疾患の緩和、軽減、改善及び治癒が含まれる。
【0033】
神経変性疾患は、例えば、海馬における老化タンパク質の蓄積及び海馬におけるタウタンパク質のリン酸化の促進から選択される少なくとも1種に起因する神経変性疾患である。老化タンパク質は、例えば、アミロイドβ及びグリア繊維性酸性タンパク質から選択される少なくとも1種である。
【0034】
神経変性疾患の予防及び/又は治療には、例えば、海馬における老化タンパク質(例えば、アミロイドβ及びグリア繊維性酸性タンパク質から選択される少なくとも1種)の蓄積の抑制及び海馬におけるタウタンパク質のリン酸化の抑制から選択される少なくとも1種が関与し得る。
【0035】
神経変性疾患としては、例えば、アルツハイマー病(特にアルツハイマー型認知症)、パーキンソン病、パーキンソン症候群(多系統萎縮症,進行性核上性麻痺)、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症、レビー小体型認知症、皮質基底核変性症、脊髄髄膜瘤、仙尾部奇形腫、脳形成障害、ジュベール(Joubert)症候群関連疾患、レット(Rett)症候群、神経皮膚症候群、早老症、ATR-X症候群、脆弱X症候群、DDX3X関連神経発達異常症、糖蛋白代謝障害、脳クレアチン欠乏症候群、もやもや病、脊髄性筋萎縮症、筋ジストロフィー、シュワルツ・ヤンペル(Schwartz-Jampel)症候群、難治てんかん脳症、てんかん、変形性筋ジストニー、脳の鉄沈着を伴う神経変性疾患、エカルディ・グティエール(Aicardi-Goutieres)症候群、亜急性硬化性全脳炎、ラスムッセン(Rasmussen)脳炎、痙攣重積型急性脳症、自己免疫介在性脳炎・脳症、難治頻回部分発作重積型急性脳炎、多発性硬化症、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、重症筋無力症、うつ、てんかん、統合失調症、ドラベ(Dravet)症候群等が挙げられる。
【0036】
一実施形態において、神経変性疾患は、アルツハイマー病(特にアルツハイマー型認知症)である。
【0037】
本発明の第3態様は、脳における炎症を予防及び/又は治療するための組成物に関する。
【0038】
炎症の予防には、炎症の発症の防止、抑制及び遅延化が含まれる。炎症の治療には、炎症の進行又は悪化の抑制、炎症の進行又は悪化の遅延化、並びに、炎症の緩和、軽減、改善及び治癒が含まれる。
【0039】
脳における炎症は、例えば、海馬における炎症である。
【0040】
脳における炎症は、例えば、海馬におけるToll様受容体4(TLR4)の活性化により引き起される炎症である。
【0041】
脳における炎症の予防及び/又は治療には、例えば、海馬におけるTLR4の発現の抑制が関与し得る。
【0042】
第1~3態様の各組成物は、1種又は2種以上のトリグリセリドを有効成分として含む。なお、本明細書において、第1~3態様の各組成物の有効成分である1種又は2種以上のトリグリセリドを「本発明のトリグリセリド」という。
【0043】
第1態様の組成物は、本発明のトリグリセリドが有する抗老化作用を通じて、老化を予防及び/又は改善することができる。第2態様の組成物は、本発明のトリグリセリドが有する神経変性疾患の予防及び/又は治療作用を通じて、神経変性疾患を予防及び/又は治療することができる。神経変性疾患の予防及び/又は治療作用には、例えば、海馬における老化タンパク質(例えば、アミロイドβ及びグリア繊維性酸性タンパク質から選択される少なくとも1種)の蓄積の抑制作用及び海馬におけるタウタンパク質のリン酸化の抑制作用から選択される少なくとも1種が関与し得る。第3態様の組成物は、本発明のトリグリセリドが有する脳における炎症の予防及び/又は治療作用を通じて、脳における炎症を予防及び/又は治療することができる。脳における炎症の予防及び/又は治療作用には、例えば、海馬におけるTLR4の発現の抑制作用が関与し得る。なお、本明細書において使用される「本発明のトリグリセリドの所望の作用」という表現は、第1態様の組成物に関しては抗老化作用、第2態様の組成物に関しては神経変性疾患の予防及び/又は治療作用、第3態様の組成物に関しては脳における炎症の予防及び/又は治療作用を意味する。
【0044】
本発明のトリグリセリドは、1種のトリグリセリドで構成されていてもよいし、2種以上のトリグリセリドで構成されていてもよい。
【0045】
第1~3態様の各組成物は、本発明のトリグリセリドを含む油脂を含んでいてもよい。本発明のトリグリセリドが油脂に含まれる場合、本発明のトリグリセリドは、通常、2種以上のトリグリセリドで構成される。油脂は、本発明のトリグリセリドに加えて、1種若しくは2種以上のジグリセリド及び/又は1種若しくは2種以上のモノグリセリドを含んでいてもよい。すなわち、第1~3態様の各組成物は、本発明のトリグリセリドに加えて、1種若しくは2種以上のジグリセリド及び/又は1種若しくは2種以上のモノグリセリドを含んでいてもよい。なお、一般的に、常温で流動性を有するものは「油」、常温で流動性を有しないものは「脂肪」と呼ばれるが、油脂には、それらの両方が包含される。
【0046】
本発明のトリグリセリドは、グリセロールに結合した脂肪酸を含む。本発明のトリグリセリドにおいて、1分子のグリセロールには、3分子の脂肪酸が結合している。なお、本明細書において、グリセロールに結合した脂肪酸を「本発明のトリグリセリド中の脂肪酸」という。
【0047】
本発明のトリグリセリド中の脂肪酸としては、例えば、長鎖飽和脂肪酸、長鎖不飽和脂肪酸等が挙げられる。
【0048】
長鎖飽和脂肪酸の炭素数は、好ましくは12以上24以下、より好ましくは12以上18以下、より一層好ましくは13以上18以下、より一層好ましくは14以上18以下、より一層好ましくは15以上18以下、より一層好ましくは16以上18以下である。長鎖飽和脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等が挙げられる。本発明のトリグリセリドの所望の作用を向上させる観点から、長鎖飽和脂肪酸は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸から選択されることが好ましい。本発明のトリグリセリドの所望の作用を向上させる観点から、長鎖飽和脂肪酸は、パルミチン酸を含むことが好ましい。
【0049】
長鎖不飽和脂肪酸の炭素数は、好ましくは14以上24以下、より好ましくは16以上24以下、より一層好ましくは16以上22以下、より一層好ましくは18以上22以下、より一層好ましくは18以上20以下である。長鎖不飽和脂肪酸が有する二重結合の数は、例えば、1、2又は3である。長鎖不飽和脂肪酸としては、例えば、パルミトオレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等が挙げられる。本発明のトリグリセリドの所望の作用を向上させる観点から、長鎖不飽和脂肪酸は、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸から選択されることが好ましい。本発明のトリグリセリドの所望の作用を向上させる観点から、長鎖不飽和脂肪酸は、オレイン酸を含むことが好ましい。
【0050】
本発明のトリグリセリド中の脂肪酸は、α位-脂肪酸及びβ位-脂肪酸を含む。
【0051】
α位-脂肪酸は、α位(sn-1又はsn-3)に結合した脂肪酸を意味する。α位-脂肪酸は、α位-長鎖飽和脂肪酸であってもよいし、α位-長鎖不飽和脂肪酸であってもよいが、α位-長鎖不飽和脂肪酸であることが好ましい。本発明のトリグリセリドの所望の作用を向上させる観点から、α位-長鎖不飽和脂肪酸は、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸から選択されることが好ましい。本発明のトリグリセリドの所望の作用を向上させる観点から、α位-長鎖不飽和脂肪酸は、オレイン酸を含むことが好ましい。
【0052】
β位-脂肪酸は、β位(sn-2)に結合した脂肪酸を意味する。本発明のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸は、β位-長鎖飽和脂肪酸を含む。本発明のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸は、β位-長鎖飽和脂肪酸から構成されていてもよいし、β位-長鎖飽和脂肪酸以外のβ位-脂肪酸(例えば、β位-長鎖不飽和脂肪酸)を含んでいてもよい。本発明のトリグリセリドの所望の作用を向上させる観点から、β位-長鎖飽和脂肪酸は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸から選択されることが好ましい。本発明のトリグリセリドの所望の作用を向上させる観点から、β位-長鎖飽和脂肪酸は、パルミチン酸を含むことが好ましい。
【0053】
本発明のトリグリセリドは、2つのα位(sn-1位及びsn-3位)にオレイン酸を有し、β位(sn-2位)にパルミチン酸を有するトリグリセリド(以下「OPO」という。)を含む。
【0054】
本発明のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する本発明のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積の百分率(以下「比率R1」という。)は、10%以上である。本発明のトリグリセリドの所望の作用を向上させる観点から、比率R1は、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、より一層好ましくは40%以上、より一層好ましくは50%以上、より一層好ましくは60%以上である。比率R1の上限は100%である。比率R1は、例えば、90%以下、80%以下又は70%以下であってもよい。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。本発明のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び本発明のトリグリセリド中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積は、後述の試験法1により測定される。
【0055】
試験法1は、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)に準拠して行われる。試験法1において、ガスクロマトグラフィー装置としては、例えば、島津製作所(株)製GC-2030型を使用することができ、カラムとしては、例えば、SUPELCO製SP-2560を使用することができる。クロマトグラムからの各ピーク面積の算出は、例えば、GC Solution(株式会社島津製作所製)を使用した自動積分法により行うことができる。
【0056】
本発明のトリグリセリドの合計ピーク面積に対する本発明のトリグリセリド中のOPOのピーク面積の百分率(以下「比率R2」という。)は、5%以上50%以下である。本発明のトリグリセリドの所望の作用を向上させる観点から、比率R2は、好ましくは10%以上40%以下、より好ましくは15%以上35%以下、より一層好ましくは20%以上35%以下である。本発明のトリグリセリドの合計ピーク面積及び本発明のトリグリセリド中のOPOのピーク面積は、後述の試験法2により測定される。
【0057】
試験法2は、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.6.2-2013 トリアシルグリセリン組成(高速液体クロマトグラフ法)に準拠して行われる。試験法2において、液体クロマトグラフ質量分析計としては、例えば、(液体クロマトグラフィ部)装置:Agilent製 1260 Infinity バイナリ LCシステム、カラム:C18(ODS)、(質量分析部)Agilent製 6130 Single Quadrupole LC/MSシステムを使用することができる。クロマトグラムからの各ピーク面積の算出は、例えば、Agilent製 OpenLAB CDS ChemStationを使用した自動積分法により行うことができる。
【0058】
以上のように、本発明のトリグリセリドは、以下の特徴を有し、これにより、所望の作用を発揮することができる。
・本発明のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸がβ位-長鎖飽和脂肪酸を含む。
・比率R1が10%以上である。
・本発明のトリグリセリドがOPOを含む。
・比率R2が5%以上50%以下である。
【0059】
本発明のトリグリセリドの所望の作用を向上させる観点から、本発明のトリグリセリドは、後述する特徴(比率R3~R11)のうち1又は2以上をさらに有することが好ましい。
【0060】
本発明のトリグリセリドの所望の作用を向上させる観点から、本発明のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する本発明のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積の百分率(以下「比率R3」という。)は、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、より一層好ましくは30%以上、より一層好ましくは40%以上、より一層好ましくは50%以上、より一層好ましくは60%以上である。比率R3の上限は100%である。比率R3は、例えば、90%以下、80%以下又は70%以下であってもよい。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。本発明のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び本発明のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積は、試験法1により測定される。試験法1に関する説明は、上記の通りである。
【0061】
本発明のトリグリセリドの所望の作用を向上させる観点から、本発明のトリグリセリド中のパルミチン酸のβ結合比率(以下「比率R4」という。)は、好ましくは45%以上、より好ましくは50%以上、より一層好ましくは55%以上、より一層好ましくは60%以上である。比率R4の上限は100%である。比率R4は、例えば、98%以下、90%以下、80%以下又は70%以下であってもよい。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0062】
本発明のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積に対する本発明のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積の百分率をV(%)、本発明のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する本発明のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積の百分率をV(%)としたとき、本発明のトリグリセリド中のパルミチン酸のβ結合比率は、式:(V/(V×3))×100で定義される。本発明のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積及び本発明のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積は、後述の試験法3により測定され、本発明のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び本発明のトリグリセリド中のβ位-パルミチン酸のピーク面積は、試験法1により測定される。試験法1に関する説明は、上記の通りである。なお、「本発明のトリグリセリド中のパルミチン酸」には、本発明のトリグリセリド中のα位-パルミチン酸及びβ位-パルミチン酸が包含される。
【0063】
試験法3は、公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.2.3-2013 脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)に準拠して行われる。試験法3において、ガスクロマトグラフィー装置としては、例えば、島津製作所(株)製GC-2030型を使用することができ、カラムとしては、例えば、SUPELCO製SP-2560を使用することができる。クロマトグラムからの各ピーク面積の算出は、例えば、GC Solution(株式会社島津製作所製)を使用した自動積分法により行うことができる。
【0064】
本発明のトリグリセリドの所望の作用を向上させる観点から、本発明のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積に対する本発明のトリグリセリド中の全長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積の百分率(以下「比率R5」という。)は、好ましくは25%以上45%以下、より好ましくは30%以上45%以下、より一層好ましくは30%以上40%以下である。本発明のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積及び本発明のトリグリセリド中の全長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積は、試験法3により測定される。試験法3に関する説明は、上記の通りである。
【0065】
本発明のトリグリセリドの所望の作用を向上させる観点から、本発明のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積に対する本発明のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積の百分率(以下「比率R6」という。)は、好ましくは25%以上40%以下、より好ましくは30%以上35%以下、より一層好ましくは30%以上33%以下である。本発明のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積及び本発明のトリグリセリド中のパルミチン酸のピーク面積は、試験法3により測定される。試験法3に関する説明は、上記の通りである。なお、「本発明のトリグリセリド中のパルミチン酸」には、本発明のトリグリセリド中のα位-パルミチン酸及びβ位-パルミチン酸が包含される。
【0066】
本発明のトリグリセリドの所望の作用を向上させる観点から、本発明のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積に対する本発明のトリグリセリド中の全長鎖不飽和脂肪酸の合計ピーク面積の百分率(以下「比率R7」という。)は、好ましくは55%以上80%以下、より好ましくは60%以上75%以下、より一層好ましくは60%以上70%以下である。本発明のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積及び本発明のトリグリセリド中の全長鎖不飽和脂肪酸の合計ピーク面積は、試験法3により測定される。試験法3に関する説明は、上記の通りである。
【0067】
本発明のトリグリセリドの所望の作用を向上させる観点から、本発明のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積に対する本発明のトリグリセリド中のオレイン酸のピーク面積の百分率(以下「比率R8」という。)は、好ましくは50%以上70%以下、より好ましくは50%以上65%以下、より一層好ましくは55%以上60%以下である。本発明のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積及び本発明のトリグリセリド中のオレイン酸のピーク面積は、試験法3により測定される。試験法3に関する説明は、上記の通りである。なお、「本発明のトリグリセリド中のオレイン酸」には、本発明のトリグリセリド中のα位-オレイン酸及びβ位-オレイン酸が包含される。
【0068】
本発明のトリグリセリドの所望の作用を向上させる観点から、本発明のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する本発明のトリグリセリド中のβ位-長鎖不飽和脂肪酸の合計ピーク面積の百分率(以下「比率R9」という。)は、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下、より一層好ましくは50%以下、より一層好ましくは40%以下、より一層好ましくは35%以下である。比率R9の下限はゼロである。比率R9は、例えば、1%以上、5%以上又は10%以上であってもよい。これらの下限はそれぞれ、上述の上限のいずれと組み合わせてもよい。本発明のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び本発明のトリグリセリド中のβ位-長鎖不飽和脂肪酸の合計ピーク面積は、試験法1により測定される。試験法1に関する説明は、上記の通りである。
【0069】
本発明のトリグリセリドの所望の作用を向上させる観点から、本発明のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する本発明のトリグリセリド中のβ位-オレイン酸のピーク面積の百分率(以下「比率R10」という。)は、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、より一層好ましくは70%以下、より一層好ましくは60%以下、より一層好ましくは50%以下、より一層好ましくは40%以下である。比率R10の下限はゼロである。比率R10は、例えば、5%以上、10%以上又は15%以上であってもよい。これらの下限はそれぞれ、上述の上限のいずれと組み合わせてもよい。本発明のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び本発明のトリグリセリド中のβ位-オレイン酸のピーク面積は、試験法1により測定される。試験法1に関する説明は、上記の通りである。
【0070】
本発明のトリグリセリドの所望の作用を向上させる観点から、本発明のトリグリセリド中のオレイン酸のβ結合比率(以下「比率R11」という。)は、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、より一層好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、より一層好ましくは17%以下である。比率R11の下限はゼロである。比率R11は、例えば、1%以上、5%以上又は10%以上であってもよい。これらの下限はそれぞれ、上述の上限のいずれと組み合わせてもよい。
【0071】
本発明のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積に対する本発明のトリグリセリド中のオレイン酸のピーク面積の百分率をW(%)、本発明のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する本発明のトリグリセリド中のβ位-オレイン酸のピーク面積の百分率をW(%)としたとき、本発明のトリグリセリド中のオレイン酸のβ結合比率は、式:(W/(W×3))×100で定義される。本発明のトリグリセリド中の全脂肪酸の合計ピーク面積及び本発明のトリグリセリド中のオレイン酸のピーク面積は、試験法3により測定され、本発明のトリグリセリド中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積及び本発明のトリグリセリド中のβ位-オレイン酸のピーク面積は、試験法1により測定される。試験法1及び3に関する説明は、上記の通りである。なお、「本発明のトリグリセリド中のオレイン酸」には、本発明のトリグリセリド中のα位-オレイン酸及びβ位-オレイン酸が包含される。
【0072】
好ましい一実施形態において、比率R1及びR2が上述の範囲である。
【0073】
好ましい別の実施形態において、比率R1及びR2が上述の範囲であり、かつ、比率R3~R11のうちいずれか1又は2以上が上述の範囲である。
【0074】
好ましいさらに別の実施形態において、比率R1及びR2が上述の範囲であり、かつ、比率R3~R4のうちいずれか1又は2が上述の範囲である。
【0075】
好ましいさらに別の実施形態において、比率R1及びR2が上述の範囲であり、かつ、比率R5~11のうちいずれか1又は2以上が上述の範囲である。
【0076】
好ましいさらに別の実施形態において、比率R1及びR2が上述の範囲であり、かつ、比率R3~R4のうちいずれか1又は2が上述の範囲であり、かつ、比率R5~11のうちいずれか1又は2以上が上述の範囲である。
【0077】
β位-長鎖飽和脂肪酸(例えば、β位-パルミチン酸)の豊富な油脂としては、例えば、ラードが挙げられ、これを第1~3態様の各組成物に使用することができる。ラードには独特の「けもの臭」があり、これを解消するために、パルミチン酸の豊富な植物油脂を化学的に又は酵素的に改変して、β位-パルミチン酸の豊富な油脂を得る方法が知られている(特表平8-509620号公報、特表平8-509621号公報、特開平6-70786号公報)。あるいは、β位-パルミチン酸の市販品(例えば、Betapol(ロデルス クロクラーン社))を購入して、必要に応じて他の成分と配合して第1~3態様の各組成物に使用してもよい。
【0078】
第1~3態様の各組成物は、本発明のトリグリセリド又は本発明のトリグリセリドを含む油脂で構成されていてもよいし、本発明のトリグリセリド又は本発明のトリグリセリドを含む油脂を製剤化したものでもあってもよい。本発明のトリグリセリド又は本発明のトリグリセリドを含む油脂は、単離、精製又は粗精製された形態のものであってもよいし、本発明のトリグリセリド又は本発明のトリグリセリドを含む油脂を含む食品又は食品の原料の形態であってもよい。
【0079】
第1~3態様の各組成物中の本発明のトリグリセリド又は本発明のトリグリセリドを含む油脂の含有量は、第1~3態様の各組成物の質量を基準として、例えば3質量%以上50質量%以下、好ましくは10質量%以上30質量%以下、より好ましくは20質量%以上30質量%以下である。
【0080】
第1~3態様の各組成物は、例えば、医薬品、医薬部外品、食品、飼料等の形態で提供することができる。また、対象が自身で、各種性状(液状、固形、粉末、ペースト等)の、本発明のトリグリセリド又は本発明のトリグリセリドを含む油脂を、水、飲食品、食事等に添加して摂取することもできる。
【0081】
第1~3態様の各組成物を投与する対象は、例えば哺乳動物、好ましくはヒトである。
【0082】
第1~3態様の各組成物は、対象に経口投与することができる。経口投与に適した剤形としては、例えば、顆粒剤、散剤、錠剤(糖衣錠を含む)、丸剤、カプセル剤、シロップ剤、ゼリー剤、乳剤、懸濁剤等が挙げられる。所望の剤形への製剤化は、常法に従って、薬学上許容される担体を用いて行うことができる。薬学上許容される担体としては、例えば、賦形剤、結合剤、希釈剤、添加剤、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられる。
【0083】
第1~3態様の各組成物は、対象に経管投与、経鼻経管投与等の経路で投与してもよい。例えば、第1~3態様の各組成物を、粘性を有する液状の組成物又は半固形状の組成物とすることで、咀嚼又は嚥下の機能が低下し、経口投与ができない対象に対して投与することができる。
【0084】
第1~3態様の各組成物を食品として提供する場合、本発明のトリグリセリド又は本発明のトリグリセリドを含む油脂を食品に含有させることにより第1~3態様の各組成物を製造することができる。本発明のトリグリセリド又は本発明のトリグリセリドを含む油脂を既に含んでいる食品を第1~3態様の各組成物として提供してもよい。食品としては、例えば、健康食品、機能性食品、保健機能食品(例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)、特別用途食品(例えば、幼児用食品、妊産婦用食品、病者用食品)、栄養補助食品(サプリメント)等が挙げられる。食品の形態は特に限定されるものではなく、例えば、飲料又は流動食のような液状の形態であってもよいし、ペースト状、半液体又はゲル状の形態であってもよいし、固形、バー又は粉末の形態であってもよい。第1~3態様の各組成物の形態が粉末の場合、第1~3態様の各組成物は、噴霧乾燥、凍結乾燥等の手段を用いて製造することができる。
【0085】
第1~3態様の各組成物を食品として提供する場合、第1~3態様の各組成物は、本発明のトリグリセリド又は本発明のトリグリセリドを含む油脂を配合する点を除き、通常の食品の製造方法に従って製造することができる。具体的には、第1~3態様の各組成物は、液状、固形、粉末等の形態を問わず、本発明のトリグリセリド又は本発明のトリグリセリドを含む油脂を、各種食品(例えば、牛乳、清涼飲料、発酵乳、ヨーグルト、チョコレート、グミ、チーズ、パン、ビスケット、クッキー、クラッカー、ピッツァクラスト、ゼリー、アイスクリーム、高エネルギーサプリメント、高エネルギーペースト、調製粉乳、流動食、特別用途食品、病者用食品、総合栄養食品、栄養補助食品、冷凍食品、加工食品、その他の市販食品)又はその原料に添加して製造することができる。
【0086】
第1~3態様の各組成物を、本発明のトリグリセリド又は本発明のトリグリセリドを含む油脂を既に含んでいる食品の形態で提供する場合、そのような食品としては、例えば、ラード、植物油脂等の食用油脂が挙げられる。
【0087】
第1~3態様の各組成物の1日当たりの投与量は、対象の性別、年齢、体重、症状等を考慮して適宜調整することができる。成人1日当たりの本発明のトリグリセリド又は本発明のトリグリセリドを含む油脂の投与量は、固形分換算で、例えば5g以上、好ましくは20g以上、より好ましくは25g以上、より一層好ましくは30g以上、である。成人1日当たりの本発明のトリグリセリド又は本発明のトリグリセリドを含む油脂の投与量の上限値は特に限定されないが、固形分換算で、例えば300g以下、好ましくは200g以下、より好ましくは100g以下、より一層好ましくは50g以下である。
【0088】
第1~3態様の各組成物の投与期間、投与間隔及び1日当たりの投与回数は、対象の性別、年齢、体重、症状等を考慮して適宜調整することができる。第1~3態様の各組成物は、例えば1週間以上の期間、毎日、1日おきに又は2日おきに、好ましくは2週間以上の期間、毎日、1日おきに又は2日おきに、より好ましくは4週間以上の期間、毎日、1日おきに又は2日おきに、投与される。1日あたりの投与回数は、特に限定されないが、通常、1回、2回又は3回である。
【0089】
第1~3態様の各組成物は、1日分の投与量を投与しやすいように、包装されていてもよい。1日分の投与量は、一包装であっても、複数包装であってもよい。包装形態で提供する場合、継続的に投与しやすいように、一定期間の投与量(例えば、数日分の投与量)がセットとなった形態で提供することが好ましい。包装形態は一定量を規定する形態であれば特に限定されず、例えば、包装紙、袋、ソフトバック、紙容器、缶、ボトル、カプセル等が挙げられる。
【0090】
≪第4~6態様≫
本発明の第4態様は、老化を予防及び/又は改善するための組成物の製造における、本発明のトリグリセリドの使用に関する。本発明の第1態様に関する説明は、本発明の第4態様にも適用される。
【0091】
本発明の第5態様は、神経変性疾患を予防及び/又は治療するための組成物の製造における、本発明のトリグリセリドの使用に関する。本発明の第2態様に関する説明は、本発明の第5態様にも適用される。
【0092】
本発明の第6態様は、脳における炎症を予防及び/又は治療するための組成物の製造における、本発明のトリグリセリドの使用に関する。本発明の第3態様に関する説明は、本発明の第6態様にも適用される。
【0093】
≪第7~9態様≫
本発明の第7態様は、老化の予防及び/又は改善を必要とする対象に本発明のトリグリセリドを投与する工程を含む、老化を予防及び/又は改善するための方法に関する。本発明の第1態様に関する説明は、本発明の第7態様にも適用される。
【0094】
本発明の第8態様は、神経変性疾患の予防及び/又は治療を必要とする対象に本発明のトリグリセリドを投与する工程を含む、神経変性疾患を予防及び/又は治療するための方法に関する。本発明の第2態様に関する説明は、本発明の第8態様にも適用される。
【0095】
本発明の第9態様は、脳における炎症の予防及び/又は治療を必要とする対象に本発明のトリグリセリドを投与する工程を含む、脳における炎症を予防及び/又は治療するための方法に関する。本発明の第3態様に関する説明は、本発明の第9態様にも適用される。
【0096】
第7~9態様の各方法において、本発明のトリグリセリドは、本発明のトリグリセリド単独の形態で対象に投与してもよいし、本発明のトリグリセリドを含む油脂の形態で対象に投与してもよいし、第1~3態様の各組成物の形態で対象に投与してもよい。第7~9態様の各方法には、治療的方法及び非治療的方法のいずれも包含される。医師がヒトを手術、治療又は診断する行為(すなわち、ヒトに対する医療行為)は、治療的方法には含まれるが、非治療的方法には含まれない。
【0097】
≪第10~12態様≫
本発明の第10態様は、老化を予防及び/又は改善するための組成物の有効成分としての本発明のトリグリセリドの使用に関する。本発明の第1態様に関する説明は、本発明の第10態様にも適用される。
【0098】
本発明の第11態様は、神経変性疾患を予防及び/又は治療するための組成物の有効成分としての本発明のトリグリセリドの使用に関する。本発明の第2態様に関する説明は、本発明の第11態様にも適用される。
【0099】
本発明の第12態様は、脳における炎症を予防及び/又は治療するための組成物の有効成分としての本発明のトリグリセリドの使用に関する。本発明の第3態様に関する説明は、本発明の第12態様にも適用される。
【実施例0100】
以下、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0101】
油脂A及び油脂Bを太陽油脂株式会社より購入した。なお、油脂A及び油脂Bは、それぞれ、大部分がトリグリセリドで構成されており、トリグリセリドで構成されていると見なすことができる。
【0102】
公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.2.3-2013 脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)により、油脂A及びBの試料を分析し、油脂A中の各脂肪酸のピーク面積及び油脂B中の各脂肪酸のピーク面積を測定した。ガスクロマトグラフィー装置として、島津製作所(株)製GC-2030型を使用し、カラムとして、SUPELCO製SP-2560を使用した。クロマトグラムからの各ピーク面積の算出は、GC Solution(株式会社島津製作所製)を使用した自動積分法により行った。結果を表1に示す。油脂A中の脂肪酸の組成において、「ピーク面積%」は、油脂A中の全脂肪酸の合計ピーク面積に対する油脂A中の各脂肪酸のピーク面積の百分率を表し、油脂B中の脂肪酸の組成において、「ピーク面積%」は、油脂B中の全脂肪酸の合計ピーク面積に対する油脂B中の各脂肪酸のピーク面積の百分率を表す。
【0103】
【表1】
【0104】
公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.5-2016 トリアシルグリセリン2位脂肪酸組成(酵素エステル交換法)により、油脂A及びBの試料を分析し、油脂A中の各β位-脂肪酸のピーク面積及び油脂B中の各β位-脂肪酸のピーク面積を測定した。ガスクロマトグラフィー装置として、島津製作所(株)製GC-2030型を使用し、カラムとして、SUPELCO製SP-2560を使用した。クロマトグラムからの各ピーク面積の算出は、GC Solution(株式会社島津製作所製)を使用した自動積分法により行った。結果を表2に示す。油脂A中のβ位-脂肪酸の組成において、「ピーク面積%」は、油脂A中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する油脂A中の各β位-脂肪酸のピーク面積の百分率を表し、油脂B中のβ位-脂肪酸の組成において、「ピーク面積%」は、油脂B中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する油脂B中の各β位-脂肪酸のピーク面積の百分率を表す。
【0105】
【表2】
【0106】
表2に示すように、油脂A中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する油脂A中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積の百分率は66.2%、油脂B中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する油脂B中のβ位-長鎖飽和脂肪酸の合計ピーク面積の百分率は8.2%であった。
【0107】
油脂A中の各脂肪酸のβ位結合比率及び油脂B中の各脂肪酸のβ位結合比率を表3に示す。油脂A中の各脂肪酸のβ位結合比率(ピーク面積%)は、式:[油脂A中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する油脂A中の各β位-脂肪酸のピーク面積の百分率(すなわち表2中の値)]/[(油脂A中の全脂肪酸の合計ピーク面積に対する油脂A中の各脂肪酸のピーク面積の百分率(すなわち表1中の値))×3]×100から算出され、油脂B中の各脂肪酸のβ位結合比率(ピーク面積%)は、式:[油脂B中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する油脂B中の各β位-脂肪酸のピーク面積の百分率(すなわち表2中の値)]/[(油脂B中の全脂肪酸の合計ピーク面積に対する油脂B中の各脂肪酸のピーク面積の百分率(すなわち表1中の値))×3]×100から算出される。例えば、油脂A中のパルミチン酸のβ位結合比率(ピーク面積%)は、式:[油脂A中のβ位-脂肪酸の合計ピーク面積に対する油脂A中のβ位-パルミチン酸のピーク面積の百分率(すなわち表2中のパルミチンの値)]/[(油脂A中の全脂肪酸の合計ピーク面積に対する油脂A中のパルミチン酸のピーク面積の百分率(すなわち表1中のパルミチンの値))×3]×100から算出される。
【0108】
【表3】
【0109】
油脂A及びBの試料を分析し、油脂A中のトリグリセリドの合計ピーク面積に対する油脂A中のOPOのピーク面積の百分率及び油脂B中のトリグリセリドの合計ピーク面積に対する油脂B中のOPOのピーク面積の百分率を測定したところ、油脂A中のトリグリセリドの合計ピーク面積に対する油脂A中のOPOのピーク面積の百分率は30.4%、油脂B中のトリグリセリドの合計ピーク面積に対する油脂B中のOPOのピーク面積の百分率は2.3%であった。なお、OPOは、2つのα位にオレイン酸を有し、β位にパルミチン酸を有するトリグリセリドを意味する。
【0110】
油脂A中のトリグリセリドの合計ピーク面積、油脂A中のOPOのピーク面積、油脂B中のトリグリセリドの合計ピーク面積及び油脂B中のOPOのピーク面積の測定方法は、次の通りである。公益社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法 2.4.6.2-2013 トリアシルグリセリン組成(高速液体クロマトグラフ法)により、油脂A及びBの試料を分析し、油脂A中のトリグリセリドの合計ピーク面積、油脂A中のOPOのピーク面積、油脂B中のトリグリセリドの合計ピーク面積及び油脂B中のOPOのピーク面積を測定した。液体クロマトグラフ質量分析計として、(液体クロマトグラフィ部)装置:Agilent製 1260 Infinity バイナリ LCシステム、カラム:C18(ODS)、(質量分析部)Agilent製 6130 Single Quadrupole LC/MSシステムを使用した。クロマトグラムからの各ピーク面積の算出は、Agilent製 OpenLAB CDS ChemStationを使用した自動積分法により行った。
【0111】
実施例の飼料として、油脂Aを含む飼料を準備し、比較例の飼料として、油脂Bを含む飼料を準備した。
【0112】
実施例及び比較例の飼料の組成を表4に示す。
【0113】
【表4】
【0114】
〔試験例1〕
8週齢のC57Bl/6雄マウス(日本エスエルシー株式会社)及び老化促進(SAMP8)雄マウス(日本エスエルシー株式会社)を対照飼料(AIN76,オリエンタル酵母社)にて8週間飼育し馴化した後、試験群A-1(5匹のC57Bl/6雄マウス)及び試験群B-1(5匹のSAMP雄マウス)には、試験期間(1週間)中、実施例の飼料を、試験群A-2(5匹のC57Bl/6雄マウス)及び試験群B-2(5匹のSAMP雄マウス)には、試験期間(1週間)中、比較例の飼料を摂取させた。試験期間中は、自由摂食及び自由飲水とした。
【0115】
試験期間経過後の試験群A-1、A-2、B-1及びB-2のマウス(9週齢マウス)について、抗老化作用の判定基準として汎用されている下記方法によって、実施例及び比較例の飼料の抗老化作用を評価した。すなわち、老化防止判定基準(grading score system:竹田俊男,老化促進モデルマウスの開発,難治疾患のモデルと動物実験,180(1984),ソフトサイエンス社)に基づいて、マウスの外見に現れる老化の度合いを評価する評価項目として、マウスをゲージから出した直後の行動(Reactivity)、背骨の屈曲度(Lordokyphosis)を設定し、試験期間経過後の試験群A-1及びA-2のマウスについては、背骨の屈曲度(Lordokyphosis)を、試験期間経過後の試験群B-1及びB-2のマウスについては、マウスをゲージから出した直後の行動(Reactivity)を、以下の基準により判定した。
【0116】
[Reactivityの基準 (Grade 0-4)]
マウスをケージの外に出した時に見られる探索行動
0:若齢マウスが示す動き
1:爪先立ち歩き(チョコチョコ歩き)もしくは興奮状態
2:ゆっくり歩く(ノソノソ歩く)
3:動かないがお尻をつつくと動き出す
4:全く動かない
【0117】
[Lordokyphosisの基準(Grade 0-3)]
撫でると首の所でひっかかる。
マウスの姿勢を首が伸びるようにする。
0:ひっかかりが無い。
1:優しく撫でるとひっかかるが、強くするとひっかからなくなくなる。
2:強く撫でてもひっかかる。尻尾を引っ張って背筋を伸ばすとひっかからなくなる。
3:どうしてもひっかかる。
【0118】
結果を表5A及びBに示す。
【0119】
【表5A】
【0120】
【表5B】
【0121】
表5Aに示すように、マウスをゲージから出した直後の行動(Reactivity)のスコアは、実施例の飼料を摂取させた試験群B-1の方が、比較例の飼料を摂取させた試験群B-2よりも、低かった。
【0122】
表5Aに示す結果から、油脂Aが抗老化作用を有すること、特に、反応時間の遅延、反応の鈍化、意欲の低下、無気力傾向の増加又は注意力もしくは集中力の低下を予防又は改善する作用を有することが示された。
【0123】
表5Bに示すように、背骨の屈曲度(Lordokyphosis)のスコアは、実施例の飼料を摂取させた試験群A-1の方が、比較例の飼料を摂取させた試験群A-2よりも、低かった。
【0124】
表5Bに示す結果から、油脂Aが抗老化作用を有すること、特に、背骨の屈曲を予防又は改善する作用を有することが示された。
【0125】
〔試験例2〕
8週齢の老化促進(SAMP8)雄マウス(日本エスエルシー株式会社)を対照飼料(AIN76,オリエンタル酵母社)にて8週間飼育し馴化した後、試験群C-1(5匹のSAMP雄マウス)には、試験期間(1週間)中、実施例の飼料を、試験群C-2(5匹のSAMP雄マウス)には、試験期間(1週間)中、比較例の飼料を摂取させた。試験期間中は、自由摂食及び自由飲水とした。
【0126】
試験期間経過後の試験群C-1及びC-2のマウス(9週齢マウス)について、Y字型迷路試験による評価を行った。Y字型迷路試験は、マウスの性質(新規環境を探索するための齧歯類の本来の好奇心)を利用して、空間記憶機能、作業記憶機能及び短期記憶機能といった認知機能を評価する試験である。
【0127】
Y字型迷路試験は、次のようにして行った。1本のアームの長さが37.5cm、床の幅が3cm、壁の高さが20.5cmで、3つのアームがそれぞれ120度に分岐しているプラスチック製のY字型迷路を用いた。評価前に、装置の床面の照度が10~40ルクスになるように調節した。マウスをY字型迷路のいずれかのアームに置き、5分間迷路内を自由に探索させた。マウスが測定時間内に移動したアームの順番を記録し、アームに移動した回数を数え、これをアームへの全侵入数とした。次に、この中で連続して異なる3つのアームを選択した組み合わせを調べ、この数を交替行動数とした。そして、以下の式を用いて交替行動率を算出した。
交替行動率(%)=[交替行動数/(アームへの全侵入数-2)]×100
【0128】
結果を表6に示す。
【0129】
【表6】
【0130】
表6に示すように、交替行動率(%)は、実施例の飼料を摂取させた試験群C-1の方が、比較例の飼料を摂取させた試験群C-2よりも、高かった。
【0131】
交替行動率が高いほど認知機能が高いと考えられる。したがって、表6に示す結果から、油脂Aが抗老化作用を有すること、特に、空間記憶機能、作業記憶機能及び短期記憶機能といった認知機能の低下を予防又は改善する作用を有することが示された。
【0132】
〔試験例3〕
8週齢の老化促進(SAMP8)雄マウス(日本エスエルシー株式会社)を対照飼料(AIN76,オリエンタル酵母社)にて8週間飼育し馴化した後、試験群D-1(5匹のSAMP雄マウス)には、試験期間(1週間)中、実施例の飼料を、試験群D-2(5匹のSAMP雄マウス)には、試験期間(1週間)中、比較例の飼料を摂取させた。試験期間中は、自由摂食及び自由飲水とした。
【0133】
試験期間経過後の試験群D-1及びD-2のマウス(9週齢マウス)について、新規物体認識試験(NORT)により、短期記憶機能を評価した。
新規物体認識試験法は、次のようにして行った。積み木を2つ(AとB)マウスケージに入れ、マウスに遊ばせる(5分間、これを訓練試行という)。その1時間後、片方の積み木を別の形のもの(C)に変え、5分間自由に探索させる(これを保持試行という)。通常のマウスは新規の物に興味を示すので、別の形の積み木と遊ぶ時間は増加する。一方、記憶能力の低下したマウスは、最初に見た積み木(A)を覚えていないので、保持試行では、物体Aも物体Cも同程度の探索時間を示す。訓練試行及び保持試行では、2つの積み木に対するそれぞれの接触回数を測定し、保持試行における総接触回数に対する入れ替えた別の積み木への接触回数の割合を判別指数(Discrimination index)として算出した。
【0134】
結果を表7に示す。
【0135】
【表7】
【0136】
表7に示すように、判別指数は、実施例の飼料を摂取させた試験群D-1の方が、比較例の飼料を摂取させた試験群D-2よりも、高かった。
【0137】
判別指数が高いほど認知機能が高いと考えられる。したがって、表7に示す結果から、油脂Aが抗老化作用を有すること、特に、短期記憶機能といった認知機能の低下を予防又は改善する作用を有することが示された。
【0138】
〔試験例4〕
8週齢のC57Bl/6雄マウス(日本エスエルシー株式会社)を対照飼料(AIN76,オリエンタル酵母社)にて8週間飼育し馴化した後、試験群E-1(5匹のC57Bl/6雄マウス)には、試験期間(1週間)中、実施例の飼料を、試験群E-2(5匹のC57Bl/6雄マウス)には、試験期間(1週間)中、比較例の飼料を摂取させた。試験期間中、マウスは、SPF飼育室で12時間の明暗サイクルで飼育し、自由摂食及び自由飲水とした。
【0139】
試験期間経過後の試験群E-1及びE-2のマウス(9週齢マウス)について、海馬におけるタンパク質(グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、アミロイドβ(β-Amyloid)、グリア繊維性酸性タンパク質(GFAP)、タウタンパク質(TAU)、リン酸化されたタウタンパク質(P-TAU)及びToll様受容体4(Toll-like Receptor 4(TLR4)))の発現をウェスタンブロッティング法により測定した。GAPDHはハウスキーピングタンパク質であり、ローディングコントロールとして使用した。ウェスタンブロッティング法は、以下の通り実施した。
【0140】
酵素阻害剤(ナカライテスク社製)を含むRIPA緩衝液(ナカライテスク社製)を使用し、各マウスから採取した海馬を溶解させた。タンパク質溶解物をSDS-PAGE用のサンプル緩衝液中、95℃で5分間変性させ、12%SDS-PAGEにより分離した。タンパク質をニトロセルロース膜上に移した。
【0141】
次いで、ニトロセルロース膜をブロッキング緩衝液とともに1時間インキュベートした。ブロッキング後のニトロセルロース膜を、一次抗体及び標識二次抗体と反応させた後、Luminoimage Analyzer Amersham Imager 600(GE Healthcare UK Ltd)により、画像を取得した。画像処理ソフトウェア(Image-J)を使用して画像を解析し、タンパク質を定量化した。
【0142】
一次抗体として、以下の抗体を使用した。
GFAP抗体(2E1):sc-33673(Santa Cruz Biotechnology社製)
β-Amyloid抗体(20.1):sc-53822(Santa Cruz Biotechnology社製)
TAU抗体(TAU46):sc-32274(Santa Cruz Biotechnology社製)
抗リン酸化TAU(pThr181)抗体(#AS-54960)(AnaSpec社製,フナコシ社から購入)
Toll-like Receptor 4(D8L5W) Rabbit mAb #14358(Cell signaling Technology社製)
ローディングコントロール抗体(Loading control antibody)として、GADPH抗体(G9)sc-365062(Santa Cruz Biotechnology社製)を使用した。
標識二次抗体として、Anti-IgG(H+L chain)(Mouse)pAb-HRP(MBLライフサイエンス社製)及びAnti-IgG(H+L chain)(Rabbit)pAb-HRP(MBLライフサイエンス社製)を使用した。
【0143】
アミロイドβ及びGFAPに関する結果を図1及び表8に示す。表8中、「アミロイドβ/GAPDH」は、GAPDHの定量値で補正されたアミロイドβの定量値(すなわち、アミロイドβの定量値/GAPDHの定量値)、「GFAP/GAPDH」は、GAPDHの定量値で補正されたGFAPの定量値(すなわち、GFAPの定量値/GAPDHの定量値)を表す。
【0144】
【表8】
【0145】
表8に示すように、アミロイドβ/GAPDH、GFAP/GAPDHはいすれも実施例の飼料を摂取させた試験群E-1の方が、比較例の飼料を摂取させた試験群E-2よりも、低かった。
【0146】
アミロイドβは、アルツハイマー病(特にアルツハイマー型認知症)に見られる老人斑の大部分を構成しているタンパク質である。GFAPは、アストロサイトの細胞内に存在し、直径10nm程度の管腔構造を有する細胞を支える支柱の構成成分である。GFAPは、加齢により増加することが知られている。
【0147】
表8に示す結果から、油脂Aが、海馬におけるアミロイドβ、GFAP等の老化タンパク質の蓄積を抑制する作用を有することが示された。
【0148】
TAU及びP-TAUに関する結果を図2及び表9に示す。表9中、「P-TAU/TAU」は、P-TAUの定量値/TAUの定量値、すなわち、TAUのリン酸化比率を表す。
【0149】
【表9】
【0150】
表9に示すように、海馬におけるTAUのリン酸化比率は、実施例の飼料を摂取させた試験群E-1の方が、比較例の飼料を摂取させた試験群E-2よりも、低かった。
【0151】
TAUは主に脳に発現する微小管結合タンパク質であり、軸索の微小管を安定化する機能を有する。TAUは複数の特異的なリン酸化部位を有し、リン酸化を受けることで微小管への親和性が低下する。TAUは健常な脳においてもリン酸化を受けるが、アルツハイマー病(特にアルツハイマー型認知症)等の神経変性疾患では非常に高レベルにリン酸化されることが知られている。
【0152】
表9に示す結果から、油脂Aが、海馬におけるTAUのリン酸化を抑制する作用を有することが示され、油脂Aが、アルツハイマー病(特にアルツハイマー型認知症)等の神経変性疾患を予防及び/又は治療する作用を有することが示唆された。
【0153】
TLR4に関する結果を図3及び表10に示す。なお、表10中、「TLR4/GAPDH」は、GAPDHの定量値で補正されたTLR4の定量値(すなわち、TLR4の定量値/GAPDHの定量値)を表す。
【0154】
【表10】
【0155】
表10に示すように、海馬におけるTLR4の発現は、実施例の飼料を摂取させた試験群E-1の方が、比較例の飼料を摂取させた試験群E-2よりも、低かった。
【0156】
TLR4の活性化は、例えば転写因子である核内因子κB(NF-κB)の活性化を介して、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン6(IL-6)等の炎症性のサイトカインの発現を誘導し、炎症反応を引き起こすことが知られている。
【0157】
表10に示す結果から、油脂Aが、海馬におけるTLR4の発現を抑制する作用を有することが示され、油脂Aが、脳における炎症を抑制する作用を有することが示唆された。
図1
図2
図3