(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121828
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】薬剤監査装置及び薬剤監査方法
(51)【国際特許分類】
A61J 3/06 20060101AFI20240830BHJP
A61J 3/07 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
A61J3/06 R
A61J3/07 R
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024054332
(22)【出願日】2024-03-28
(62)【分割の表示】P 2023028935の分割
【原出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】504373093
【氏名又は名称】日立チャネルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】加藤 利一
(72)【発明者】
【氏名】勝地 真
(72)【発明者】
【氏名】巻本 英二
(72)【発明者】
【氏名】林 良樹
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047JJ01
4C047JJ12
4C047JJ26
4C047JJ31
4C047JJ34
4C047JJ40
(57)【要約】
【課題】
薬剤によっては監査処理が不要の場合には、投入部が薬剤を受け取った後に、監査処理部を経由することなく直接、排出部に薬剤を移動させることが可能な機構を追加することができる。
【解決手段】
薬剤を撮像する監査撮像部を有する搬送監査処理部と、投入された薬剤を搬送監査処理部に移載する投入部である監査前貯留部200Aや移載処理部と、監査撮像部により撮像後の薬剤を装置外に排出する排出部と、搬送監査処理部、投入部および排出部の動作の制御と、監査撮像部により撮影された画像を基にして薬剤の監査処理とを行う監査制御部と、を備え、投入部は、薬剤を移載する第1の部品である貯留ケース203が着脱可能に構成されていることを特徴とする薬剤監査装置。
【選択図】
図23
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を撮像する監査撮像部を有する監査処理部と、
投入された前記薬剤を前記監査処理部に移載する投入部と、
前記監査撮像部により撮像後の前記薬剤を装置外に排出する排出部と、
前記監査処理部、前記投入部および前記排出部の動作の制御と、前記監査撮像部により撮影された画像を基にして前記薬剤の監査処理とを行う監査制御部と、
を備え、
前記投入部は、前記薬剤を移載する第1の部品が着脱可能に構成されている
ことを特徴とする薬剤監査装置。
【請求項2】
前記投入部は、前記第1の部品および投入された前記薬剤を前記監査処理部を介さずに前記排出部に移載する第2の部品の何れかが装着可能に構成され、
前記投入部は、前記第1の部品または前記第2の部品のいずれかが装着されているかを検知するセンサを有し、
前記監査制御部は、前記センサの検知結果に基づき、前記投入部および前記排出部の動作の制御を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の薬剤監査装置。
【請求項3】
前記監査処理部は、前記薬剤の搬送路として回転する回転円盤と、前記回転円盤を外周の所定幅で回転方向に所定の数で分割した薬剤載置領域と、を有し、
前記薬剤を載せた前記薬剤載置領域が前記回転円盤の回転によって所定範囲を通過する際に、前記監査撮像部が当該薬剤載置領域を撮影する
ことを特徴とする請求項1に記載の薬剤監査装置。
【請求項4】
前記投入部は、投入された前記薬剤を一旦保持する監査前貯留部と、一旦保持された前記薬剤を前記監査処理部に移載する移載処理部と、を含み、
前記監査前貯留部は、前記薬剤を貯留する空間を斜面がV字型かつ底面が細長形状となるように形成し、前記斜面の構成部材が振動することにより、前記薬剤を前記底面に細長の略一列に散開させ、
前記移載処理部は、前記回転円盤で搬送される方向に沿って、前記薬剤を前記回転円盤に移載する
ことを特徴とする請求項3に記載の薬剤監査装置。
【請求項5】
前記投入部は、散開した前記薬剤を前記回転円盤方向に押し出す動作を行う移載押出板と、前記回転円盤との間に配置し、前記移載押出板により前記薬剤を押し出すときに閉状態から開状態になる移載部シャッターと、を備え、
前記移載押出板の先端は、円弧形状をなすとともに、前記移載部シャッターは、前記回転円盤の円周に接するように円弧形状をなす
ことを特徴とする請求項3に記載の薬剤監査装置。
【請求項6】
調剤した薬剤を監査する薬剤監査装置による薬剤監査方法であって、
前記薬剤監査装置が、
前記薬剤を撮像する監査撮像部を有する監査処理部と、
投入された前記薬剤を前記監査処理部に移載する投入部と、
前記監査撮像部により撮像後の前記薬剤を装置外に排出する排出部と、
前記監査処理部、前記投入部および前記排出部の動作の制御と、前記監査撮像部により撮影された画像を基にして前記薬剤の監査処理とを行う監査制御部と、
を備え、
前記投入部は、前記薬剤を移載する第1の部品および投入された前記薬剤を前記監査処理部を介さずに前記排出部に移載する第2の部品の何れかが装着可能に構成され、
前記監査処理を行うときは、前記第1の部品を装着し、前記監査処理を行わないときは、前記第2の部品を装着する
ことを特徴とする薬剤監査方法。
【請求項7】
前記投入部は、前記第1の部品または前記第2の部品のいずれかが装着されているかを検知するセンサを有し、
前記監査制御部は、前記センサの検知結果に基づき、前記投入部および前記排出部の動作の制御を行う
ことを特徴とする請求項6に記載の薬剤監査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤監査装置及び薬剤監査方法に関し、調剤した薬剤を監査する薬剤監査装置及び薬剤監査方法に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
病院や薬局では、処方箋に応じた調剤を行っており、準備された薬剤の分量等が間違っていないかを確認するための薬剤監査は、薬剤師によって行われるのが一般的である。特に、複数の薬剤を組み合わせて1回の服用分として一包化して処方する場合には、1服用分ごとに、薬剤を分配し、薬剤内容を監査する必要がある。この作業を支援するための自動化技術や効率化技術について、さまざまな方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、監査の為に薬剤を円盤状の部材に落下させ、所定の軸心を中心に回転させて搬送させる技術が開示されている。特許文献1には、「本発明の薬剤分包装置は、所定の軸心位置を中心として回転可能とされた回転体に前記受入部が周方向に複数配されており、前記受渡部が、所定の作動領域内に配された前記受入部内の前記薬剤について前記受渡動作を実施可能であることが好ましい。かかる構成によれば、薬剤準備払出部側から供給された薬剤を複数設けられた受入部に順次準備しつつ、回転体を受渡部の作動領域内に向けて移動させて受渡動作を実施することにより、薬剤を次々と分包前撮影部側に供給することができる。これにより、個別供給部において薬剤を一つずつ個別に分包前撮影部側に供給する動作を効率的に実施できる。」と記載されている。
【0004】
また、特許文献1と同様な技術として、特許文献2には、監査装置が、ホッパーから排出された固形薬剤を一服用分毎に、ターンテーブル上面に配置した複数の監査容器に移動し、ターンテーブルを移動して、監査容器内の固形薬剤を撮影する撮影装置によって撮影する撮影位置へ移動することが開示されている。
【0005】
また、1回の服用分として一包化した後の薬剤を監査を支援する装置の技術として、特許文献3が挙げられる。特許文献3には、「2枚のフィルム間に薬剤が封入された分包体を前記2枚のフィルムのうち一方のフィルムの側から照明した状態で、前記2枚のフィルムのうちの他方のフィルムの側から前記分包体を撮像することにより、前記分包体の画像である透過光画像を取得し、前記分包体を前記他方のフィルムの側から照明した状態で、前記他方のフィルムの側から前記分包体を撮像することにより、前記分包体のカラー画像である反射光画像を取得し、前記透過光画像を用いて前記分包体に封入された前記薬剤の領域を示す薬剤領域を検出し、前記薬剤領域に対応する前記反射光画像の領域の画像を切り出すことによりカラー画像である薬剤画像を作成し、前記薬剤画像を表示部に表示する。」と記載されている。
【0006】
また、薬剤を撮影するカメラを2台用いる技術として、特許文献4が挙げられる。特許文献4には、「画像取得部20は、
図2に示すように薬剤を撮影する2台のカメラ(撮影部)22A,22Bと、複数の光源を有する照明部24と、カメラ22A,22B及び照明部24を制御する撮影制御部26とから構成されている。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2017/002713号
【特許文献2】国際公開第2013/105198号
【特許文献3】国際公開第2012/005004号
【特許文献4】国際公開第2020/105395号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載された薬剤払出装置は、監査すべき薬剤の投入から、監査後の薬剤の排出までの処理機構が煩雑化し、1服用分ごとの監査処理に時間が掛かるという問題があった。また、薬剤の撮像が一錠ずつ行われるため、1服用分の薬剤数が多い場合は、さらに時間が掛かってしまう。また、連続する複数の処方に対して処理時間が累積して長くなる他、機構が複雑で大型化する、という問題もあった。
【0009】
また、特許文献2に開示された監査装置(薬剤供給装置)は、1服用分に多数の薬剤が含まれる場合に、監査容器内で複数の薬剤が重なってしまい、精度良く撮像及び監査ができない状況が想定された。このような状況では、撮像部による撮像を監査容器を停止して行う必要があるため、動作に時間が掛かるという問題があった。また、特許文献2において撮像画像から一錠ずつ監査する画像処理は、時間が掛かるという問題もあった。
【0010】
また、特許文献3,4に開示された装置では、1服用分に多数の薬剤が含まれる場合に、一包化された包装シート内で薬剤が偏った状態になりやすく、薬剤の重なりによって、精度良く撮像及び監査ができない状況が想定される。また、多数回の服用分の薬剤が連続して供給されることを考慮して撮像部が構成されておらず、処理能力にも課題があった。
【0011】
本発明は薬剤によっては監査処理が不要の場合には、投入部が薬剤を受け取った後に、監査処理部を経由することなく直接、排出部に薬剤を移動させることが可能な機構を追加することができる薬剤監査装置及び薬剤監査方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる課題を解決するため本発明においては、薬剤を撮像する監査撮像部を有する監査処理部と、投入された前記薬剤を前記監査処理部に移載する投入部と、前記監査撮像部により撮像後の前記薬剤を装置外に排出する排出部と、前記監査処理部、前記投入部および前記排出部の動作の制御と、前記監査撮像部により撮影された画像を基にして前記薬剤の監査処理とを行う監査制御部と、を備え、前記投入部は、前記薬剤を移載する第1の部品が着脱可能に構成されていることを特徴とする薬剤監査装置が提供される。
【0013】
また、かかる課題を解決するため本発明においては、調剤した薬剤を監査する薬剤監査装置による薬剤監査方法であって、前記薬剤監査装置が、前記薬剤を撮像する監査撮像部を有する監査処理部と、投入された前記薬剤を前記監査処理部に移載する投入部と、前記監査撮像部により撮像後の前記薬剤を装置外に排出する排出部と、前記監査処理部、前記投入部および前記排出部の動作の制御と、前記監査撮像部により撮影された画像を基にして前記薬剤の監査処理とを行う監査制御部と、を備え、前記投入部は、前記薬剤を移載する第1の部品および投入された前記薬剤を前記監査処理部を介さずに前記排出部に移載する第2の部品の何れかが装着可能に構成され、前記監査処理を行うときは、前記第1の部品を装着し、前記監査処理を行わないときは、前記第2の部品を装着することを特徴とする薬剤監査方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、薬剤によっては監査処理が不要の場合には、投入部が薬剤を受け取った後に、監査処理部を経由することなく直接、排出部に薬剤を移動させることが可能な機構を追加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る薬剤監査装置10の概略構成例を示す図である。
【
図2】薬剤監査装置10を搭載した薬剤分包装置101の概略構成例を示す図である。
【
図3】実施例1に係る薬剤監査装置11の正面図及び上面図である。
【
図4】監査制御部800を中心とした薬剤監査装置11の内部構成例を示すブロック図である。
【
図7】搬送監査処理部400、排出処理部600、及び監査後貯留部700の構成図である。
【
図8】薬剤動作制御部804による制御処理の処理手順例を示すフローチャートである。
【
図9】複数の薬剤が連続投入されるときの監査処理の処理遷移例を示す図である。
【
図11】監査撮像部500による撮像動作を説明するための模式図である。
【
図13】監査結果判定処理の第1の処理手順例を示す図である。
【
図14】監査結果判定処理の第2の処理手順の例を示す図である。
【
図15】監査処理画面の一例(第1例)を示す図である。
【
図16】監査処理画面の別例(第2例)を示す図である。
【
図17】監査処理画面の別例(第3例)を示す図である。
【
図18】監査処理画面の別例(第4例)を示す図である。
【
図19】監査処理画面の別例(第5例)を示す図である。
【
図20】監査処理画面の別例(第6例)を示す図である。
【
図21】監査処理画面の別例(第7例)を示す図である。
【
図23】監査前貯留部200Aの構成例を示す図である。
【
図24】実施例2に係る薬剤監査装置12の側面図及び正面図である。
【
図25】薬剤監査装置12における薬剤監査の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳述する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る薬剤監査装置10の概略構成例を示す図である。薬剤監査装置10は、監査前貯留部20、移載処理部30、監査撮像部50を有する搬送監査処理部40、排出処理部60、及び監査後貯留部70を備え、これらの各部は、薬剤監査装置10が受け入れる複数の薬剤Mの移動経路を形成する構成として連続的に配置される。さらに、薬剤監査装置10は、上記の各部に加えて、薬剤Mの移動、撮像、及び監査を制御処理する監査制御部80を備える。監査制御部80は、コンピュータを構成するハードウェア(例えば、プロセッサ、記憶素子、各種インタフェース等)が、所定のプログラムの実行やデータの記憶等を行うことによって、ソフトウェアにより所定の機能を実現するものであるが、一部または全てをハードウェアで実現するものであってもよい。
【0018】
薬剤監査装置10は、受け入れる複数の薬剤Mの中の個々の薬剤をmとすると、監査制御処理において、1群の薬剤群(薬剤Mと称する)ごとに、当該薬剤群に含まれる個々の薬剤mに対して、あらかじめ登録された薬剤情報と一致するかの個別の監査処理を行う。薬剤mに対する監査処理結果は、例えば、一致すると判断した場合は「正常」、一致すると判断できない場合は「不明」とする。
【0019】
薬剤監査装置10は、上記の個別の薬剤mに対する監査処理結果を薬剤Mごとに集約し、受け入れた複数の薬剤mからなる薬剤Mに対する監査処理を行う。薬剤Mに対する監査処理結果は、含まれる薬剤mの監査処理結果がすべて正常の場合は「正常」、少なくとも一部の薬剤mに不明の監査結果があれば「不明」とする。
【0020】
さらに、薬剤監査装置10は、薬剤Mに連続して別の薬剤M(以降M1,M2,M3・・・と称する)を受け入れ可能であり、連続的に複数の薬剤M1,M2,M3・・・に対して監査処理を行う。そして薬剤監査装置10は、連続的に扱う薬剤M1,M2,M3・・・の監査結果を集約して、すべて「正常」か、少なくとも一部に「不明」があるかなどの処理結果を出力する。なお、本明細書において「連続的に薬剤Mが投入される/薬剤Mに連続して別の薬剤Mを受け入れる」とは、先行する薬剤群(例えば薬剤M1)と後続する薬剤群(例えば薬剤M2)との間で、それぞれの投入期間(あるいは受入期間)が重複することなく連続的に実行される、ことを意味するものであり、薬剤M1の投入(あるいは受入)が終了してから薬剤M2の投入(あるいは受入)が開始されるまでの間に所定の時間が挟まれる(すなわち、間欠的に連続して薬剤Mが投入される(あるいは受け入れる))ことが含まれる。
【0021】
具体的な薬剤Mの流れとして説明すると、薬剤監査装置10が受け入れる複数の薬剤Mは、監査前貯留部20に一旦保持される。その後、それぞれの薬剤Mに含まれる複数の薬剤mは、薬剤Mごとに所定の間隔をあける等して順次、下方に配置した後段の移載処理部30に落下移動する。さらに、後段の搬送監査処理部40は、水平方向に連続動作する搬送手段(例えば
図1では搬送ベルトであり、後述する
図3では回転円盤など)によって、薬剤M(複数の薬剤m)を移載処理部30から搬送手段上に移載する。ここで、搬送手段上の後段には、カメラ及び照明を有して構成される監査撮像部50が搬送手段の上下に配置されており、この監査撮像部50が、搬送手段上を移動する薬剤Mを上面及び下面から撮像する。詳細は後述するが、この撮像画像を用いて、薬剤Mを構成する個々の薬剤mに対して監査処理が実行される。そして、搬送手段の終点に配置された排出処理部60において、薬剤Mは搬送手段から監査後貯留部70に移動され、薬剤Mの監査処理が終了すると薬剤は監査後貯留部70から排出される。
【0022】
図2は、薬剤監査装置10を搭載した薬剤分包装置101の概略構成例を示す図である。薬剤分包装置101は、医者からの処方によって指示された複数の薬剤(薬剤Mと同意)に従って、薬剤M単位で分包する装置であって、
図2に示したように、薬剤収納部102、薬剤供給部103、薬剤監査装置10、及び薬剤包装部104から構成される。薬剤分包装置101の薬剤包装部104によって分包された薬剤(例えば、包装薬剤105)は、薬剤師108が取り出し、内容確認して患者に渡す。例えば、
図2に示した包装薬剤105は、1回の服用量とされる1以上の個別薬剤106を1袋に包装した一包処方薬剤107が、患者に渡す服用回数の分だけ連結されている。
【0023】
薬剤監査装置10を除く薬剤分包装置101の構成(薬剤収納部102、薬剤供給部103、及び薬剤包装部104)は、前述した先行技術文献に上げた文献等に示されているため、詳細な説明は省略するが、薬剤分包装置101の各構成は、次のような機能を有する。
【0024】
薬剤収納部102は、複数の異なる薬剤(薬剤m)を収納しており、医者からの処方指示によって、調剤される薬剤の出力指示を受けると、指定された薬剤mを指定された分量・個数ごとに排出する。薬剤供給部103は、シュータ形状であり、薬剤収納部102から排出された薬剤mの落下重力を利用して、複数の薬剤mを集約して薬剤Mとして、薬剤監査装置10に渡す。薬剤監査装置10は、
図1に示したように、薬剤供給部103のシュータの下部に配置され、複数の薬剤Mを受けとると、上記指定された薬剤が指定された分量排出されたか否かを監査する監査処理を行う。そして、薬剤包装部104は、薬剤監査装置10における監査処理が終わった薬剤Mを包装して、排出する。
【0025】
薬剤分包装置101には、薬剤の処方内容を示す処方データが入力される。処方データには、例えば、1週間分の朝、昼、夜それぞれにおいて服用する各薬剤の薬剤名とその数が指定されている。薬剤分包装置101は、処方データが示す薬剤名に従い、当該の薬剤が分別して収納されている薬剤収納部102から、指定の数の薬剤Mを薬剤供給部103に放出する。1回に服用する薬剤は、1種類または1個の場合もあるが、複数種類あるいは複数個である場合が多い。薬剤分包装置101は、処方データに基づき、以上の処理を連続的に処理することで、例えば1週間の朝、昼、夜の合計21個分の包装薬剤を作成するので、薬剤監査装置10にも、連続的に薬剤M1、M2,M3・・・(合計21個分の包装薬剤)が投入される。したがって、薬剤監査装置10は、薬剤分包装置101との間で薬剤M1,M2,M3・・・に付されたID番号の同期をとるなどしながら、複数の薬剤Mに対して監査処理を行う。薬剤監査装置10による監査処理は、薬剤M1,M2,M3・・・のすべてに対して実行され、前述したように、すべてが正常であった「正常」か、少なくとも一部に不明があった「不明」の監査処理結果が得られる。そして薬剤分包装置101(例えば薬剤監査装置10)は、監査処理結果に基づく監査処理結果データを取得して、不図示の表示手段に表示することにより、薬剤師108に情報を伝達することができ、薬剤師は、分包された薬剤と監査処理結果データを照合、確認することにより、薬剤Mの内容確認が容易となる。
【0026】
なお、
図2では、本発明の薬剤監査装置10を薬剤分包装置101に内蔵搭載した一例を示したが、薬剤監査装置10の利用方法はこれに限定されるものではない。薬剤監査装置10は、監査制御処理によって、受け入れる複数の薬剤Mのなかの個々の薬剤mに対して、予め登録された薬剤情報(薬剤マスタデータや薬剤データベース)と一致するか否かの個別の監査処理を行うことができるので、例えば、一包化して処方された後の薬剤Mに関して、個々の薬剤mが、登録された薬剤情報のうちのどの薬剤であるかを知る手段としても活用することができる。
【0027】
上記のような目的を実現する薬剤監査装置10としては、様々な構成が提案可能である。そこで、以降は、薬剤監査装置10の複数の実施例として、実施例1において薬剤監査装置11を説明し、実施例2において薬剤監査装置12を説明する。
【実施例0028】
図3は、実施例1に係る薬剤監査装置11の正面図及び上面図である。
図3に示した薬剤監査装置11は、
図1に示した薬剤監査装置10と比較すると、薬剤監査装置10における搬送監査処理部40の搬送手段が搬送ベルトであったのに対し、薬剤監査装置11における搬送監査処理部400の搬送手段が回転円盤401になっている点で大きく異なるが、共通する構成も多い。
【0029】
そこで以下では、薬剤監査装置11の各構成について、薬剤監査装置10の構成に対応するものには同一の名称を用いて説明する。具体的には例えば、薬剤監査装置11が備える搬送監査処理部400は、薬剤監査装置10が備える搬送監査処理部40に対応する構成である。また、このような名称の統一は、実施例2に示す薬剤監査装置12でも同様である。
【0030】
薬剤監査装置11は、受け入れた複数の薬剤m(薬剤M)を、監査前貯留部200に一旦保持する。監査前貯留部200の薬剤Mは、投入仕切板202を開状態にすることで、下方に配置した移載処理部300に落下移動する。
【0031】
そして移載処理部300では、移載押出板302によって薬剤Mを押し出して、後段の搬送監査処理部400を構成する回転円盤401に移載する。
【0032】
回転円盤401は、直径約250mmの円盤で、15rpmの一定の回転速度で回転する。搬送監査処理部400では、水平方向に連続回転動作する回転円盤401と、回転円盤上の内周面に配置した内周ガイド403とによって形成された幅約20mmの細長空間に、薬剤Mが載置される。この薬剤Mは、回転円盤401とともに移動すると、搬送下流に配置されたカメラ501と照明(反射照明)502とを上下に配置した監査撮像部500において、上面及び下面から撮像される。さらに回転円盤401が180度程度回転すると、薬剤Mは、回転円盤401上の内周ガイド403を外周方向に移動することで、回転円盤401から排出処理部600に押し出され、さらに、排出処理部600の排出レバー602が回転円盤401の方向に動作することにより、薬剤Mは監査後貯留部700に移動する。そして監査後貯留部700では、不図示の貯留部カメラによって、薬剤Mが貯留されていることを撮像する。
【0033】
以上の流れを経て薬剤Mの監査処理が終了すると、監査後貯留部700は、排出仕切板702を開状態にすることで薬剤Mを排出し、その後、排出仕切板702を閉状態にした後、貯留部カメラで監査後貯留部700を撮像し、薬剤Mが残留していないことを確認する。
【0034】
なお、本実施例で用いる回転円盤401は、回転円盤401上の外周部を4区画に分割してあり、各区画の境界に、区画を分割する円周仕切板404が配置されている(
図7参照)。監査前貯留部200が受け入れる複数の薬剤Mが連続する場合(例えば、薬剤M1,M2,M3,M4を連続して受け入れる場合)は、上記の動作を繰り返し実行することになるが、回転円盤401は4区画に分割してあるので、薬剤M1,M2,M3,M4を順番に、各区画に載置して、連続的に、撮像・監査処理することができる。
【0035】
図4は、監査制御部800を中心とした薬剤監査装置11の内部構成例を示すブロック図である。監査制御部800は、薬剤監査装置10の監査制御部80に対応する構成であって、薬剤監査装置11において、受け入れた薬剤Mの搬送、撮像、及び監査を処理する機能を有する。
図4に示したように、監査制御部800は、全体的な制御処理を行う監査全体処理部801の元に、監査結果処理部802、撮像・監査処理部803、及び薬剤動作制御部804を有して構成される。
【0036】
監査全体処理部801は、処方する薬剤のデータ(薬剤処方データ)を保持する上位処方薬剤指示装置902に接続され、上位処方薬剤指示装置902との間で、受け入れる薬剤Mの薬剤処方データの取得や監査処理結果の出力を行う。また、監査全体処理部801は、各種の薬剤に関する基本データ(薬剤マスタデータ)を保持するサーバ903に接続され、サーバ903から処方する薬剤のマスタデータを取得して、撮像・監査処理部803の薬剤データベース904に格納する。また、監査全体処理部801は、例えば上位処方薬剤指示装置902から取得した薬剤処方データに基づいて、薬剤監査装置11の動作方法を決定し、監査結果処理部802、撮像・監査処理部803、及び薬剤動作制御部804に動作処理を指示する他、薬剤Mの監査結果を監査結果表示画面901や上位処方薬剤指示装置902に出力する。監査結果表示画面901は、薬剤監査装置10における薬剤の監査結果を薬剤師のために表示する画面であって、例えば、GUI(Graphical User Interface)を利用して、薬剤監査装置10に接続された外部端末の表示装置(例えば、ネットワークを介して接続されたユーザ端末のディスプレイ)に表示される。また、監査結果表示画面901は、薬剤監査装置10に備えられたディスプレイ等の表示装置に表示されてもよいし、上位処方薬剤指示装置902への出力に含まれてもよい。また、監査結果表示画面901は、表示装置への画面表示に限定されず、少なくとも一部が他の出力方法(例えば、外部記憶媒体へのデータ出力や印刷など)に置き換えられて実行されてもよい。そして、より具体的には、監査結果表示画面901には、後述する監査選択初期画面、監査処理画面、及び監査修正画面が表示される。
【0037】
薬剤動作制御部804は、監査全体処理部801が定めた動作方法に従い、薬剤監査装置11が受け入れる薬剤Mに対して、薬剤動作部805(具体的には、監査前貯留部200、移載処理部300、搬送監査処理部400、排出処理部600、及び監査後貯留部700)の動作を制御する。
【0038】
撮像・監査処理部803は、搬送監査処理部400の監査撮像部500で撮影された薬剤Mの個々の薬剤mの画像を取得し、その画像と、薬剤データベース904から読み出した薬剤処方データに含まれる個々の薬剤mのマスタデータとを使用して、薬剤mの外形サイズや色情報の比較判定や、刻印情報の画像照合を行うことにより、撮影画像とマスタデータとの類似度を計算し、算出された類似度に基づいて、個々の薬剤mの監査結果を決定し、出力する。この監査結果としては、例えば「正常」、「確認要」、「不明」の3種類を定義することができる。
【0039】
「正常」の監査結果は、監査対象の薬剤mが薬剤処方データで指定された薬剤である、と薬剤監査装置11が判定したことを表すものであり、例えば、薬剤処方データに含まれる薬剤マスタデータのうちの1つのマスタデータとの類似度が予め決められた閾値を超えていた場合に決定される。「確認要」の監査結果は、「正常」の監査結果の一部であって(薬剤処方データで指定された薬剤であると推定されるものの)、監査対象の薬剤mについて薬剤監査装置11としては問題ないと判定したものの、念のために人(例えば薬剤師)による確認を行うことが推奨されるものである。「確認要」の監査結果は、例えば、類似度は閾値に達していないが、薬剤処方データに含まれる薬剤マスタデータのうちの1つのマスタデータと類似していると判断できた場合に決定される。「不明」の監査結果は、監査対象の薬剤mが薬剤処方データで指定された薬剤であるか不明である、と薬剤監査装置11が判定したことを表すものであり、例えば、類似度が低く、薬剤処方データに含まれる薬剤のどのマスタデータとも類似していない場合や、複数の薬剤マスタデータと類似していると判断した場合に決定される。そして、撮像・監査処理部803は、個々の薬剤mの監査結果を組み合わせて、薬剤Mの監査結果を生成する。
【0040】
監査結果処理部802は、撮像・監査処理部803が実施した薬剤Mの監査の結果から、薬剤師108が確認するための画面を生成し、監査結果表示画面901に表示する。すなわち、監査結果処理部802は、薬剤監査装置11における薬剤Mの監査結果を表す情報を出力する機能を有する。
【0041】
なお、本実施例の薬剤監査装置11が、
図2に示した薬剤監査装置10のように薬剤分包装置101の内部に実装して使用される場合、上位処方薬剤指示装置902は、薬剤分包装置101の制御部分と同意である。そして監査制御部800は、監査全体処理部801の制御によって、内部の監査結果処理部802、撮像・監査処理部803、及び薬剤動作制御部804が個別あるいは並行して処理を実行できる構成とすることで、高速かつ高精度な監査処理を実現したり、薬剤師が利用し易い監査処理を実現したり、上位装置とのソフトウェア上の容易な接続処理を実現したりすることができる。
【0042】
以上、
図3及び
図4を参照しながら、実施例1に係る薬剤監査装置11の構成及び機能について説明した。以下では、さらに詳細に、監査前貯留部200、移載処理部300、搬送監査処理部400、監査撮像部500、排出処理部600、及び監査後貯留部700の構成と薬剤Mに対する動作、並びに、薬剤動作制御部804による薬剤動作部805の制御方法について、図面を参照しながら説明する。
【0043】
図5は、監査前貯留部200の構成図である。
図5(A)は、監査前貯留部200の斜視図であり、
図5(B)~
図5(D)は、監査前貯留部200における薬剤Mの移動を時系列で示している。
【0044】
図5(A)に示すように、監査前貯留部200は、貯留ケース203の内部に、投入される薬剤Mを受け止める投入振動整列部201と、投入振動整列部201に回転支持される投入仕切板202と、が取付けられている。投入振動整列部201は、不図示の駆動源により、矢印204方向に約5mm程度往復振動することにより、集積している薬剤Mを散開させる。投入仕切板202は、投入振動整列部201と移載処理部300との間に設置された扉であり、投入仕切板202が不図示の駆動源によって回転軸206を中心に矢印205方向に回転して開口することで、薬剤が投入振動整列部201から落下する。
【0045】
図5(B)は、薬剤M(複数の薬剤m)が投入振動整列部201から落下した状態で、複数の薬剤が重なった状態を示している。投入振動整列部201と投入仕切板202は、V字谷形状を形成している。このV字谷形状は、重力の影響を受けて落下する個々の薬剤mが、細長のV字谷に沿って広がり易いように、V字谷形状を形成する斜面を45度程度の急斜面とし、長さ方向には、薬剤mの大きさや個数を考慮して、約100mmとしている。
【0046】
図5(C)は、
図5(B)に示した複数の薬剤mが、矢印204の方向の振動動作によって散開した状態を示している。積み重なった薬剤mを水平方向の振動動作で散開させるためには、薬剤毎に異なった加速度を付与することが有効である。そのため、投入振動整列部201及び投入仕切板202の、V字谷面で薬剤と接する部分を溝形状にすることで、駆動源による水平方向(矢印204方向)の振動動作によって、V字溝に接した薬剤には積み重なった薬剤よりも大きな加速度を与えることができ、積み重なった薬剤mを高速で散開させることができる。
【0047】
図5(D)は、回転軸206を中心にして投入仕切板202を矢印205方向に回転させることで、薬剤Mが下方に落下した状態を示している。監査前貯留部200では、投入仕切板202に連結された回転軸206をV字溝の上方に配置することで、回転軸206を矢印205方向に回転させたときに、投入仕切板202を、
図5(C)では投入振動整列部201と略接触して約45度の斜面のV字溝を形成していた状態から、高速で開放状態に移行させることができる。この結果、
図5(C)において投入仕切板202上に散開状態で保持されていた薬剤Mを、
図5(D)に示したように、その散開状態を保持したまま、高速な動作で確実に落下させることができる。
【0048】
図6は、移載処理部300の構成図である。
図6(A)は移載処理部300の斜視図であり、
図6(B)は移載処理部300の断面図である。また、
図6(C)~
図6(E)は、移載処理部300における薬剤Mの移動を時系列で示している。
【0049】
移載処理部300は、監査前貯留部200を構成する貯留ケース203の内部に配置される。より具体的には、
図6(A)及び
図6(B)に示すように、移載処理部300は、貯留ケース203の内部に、落下する薬剤Mを案内する移載案内ガイド301と、散開状態で落下した薬剤Mを保持する移載押出整列部303と、移載押出整列部303上の薬剤Mを、次段の回転円盤401方向に押し出す動作を行う移載押出板302と、回転円盤401との間に配置して上下動作により開閉する移載部シャッター304と、を備えて構成される。
【0050】
図5(C)~
図5(D)で示したように、薬剤Mが監査前貯留部200から散開状態で落下するとき、薬剤Mは、移載案内ガイド301と移載押出板302の斜面にガイドされ、散開状態を維持しながら、移載押出整列部303の上面の、移載部シャッター304で仕切られた平面に、複数の薬剤mが重なることなく細長に散開して保持される。
【0051】
その後、
図6(C)に示すように、移載部シャッター304を上方移動させて開状態にし、さらに、
図6(D)に示すように、移載押出板302を移載押出整列部303上を移載部シャッター304方向に移動させる。この結果、薬剤Mは、散開状態を維持したまま、回転円盤401上に押し出されて移動する。そして、薬剤Mを回転円盤401上に押し出した後は、
図6(E)に示すように、移載押出板302を元の位置に戻す。
【0052】
ここで、移載部シャッター304は、回転円盤401の円周に接するように円弧形状とし、移載押出板302の先端も同様に円弧形状とすることで、回転円盤401に複数の薬剤mを、同時に、かつ、散開状態を維持したまま押し出すことができるようにしている。また、薬剤Mを移載案内ガイド301から回転円盤401に移載する際に、隙間が大きかったり、段差が大きかったりすると、薬剤の散開状態に悪影響を与えるため、可能な範囲で、水平方向の隙間及び落下方向段差を最小に構成することが好ましい。
【0053】
図7は、搬送監査処理部400、排出処理部600、及び監査後貯留部700の構成図である。
【0054】
図7に示す搬送監査処理部400は、不図示の駆動モータにより15rpmの一定の回転速度で水平方向に連続回転する、直径約250mmの回転円盤401を有する。回転円盤401は、回転円盤401上の外周部を4区画に分割してあり、4区画を分割する4つの円周仕切板404(個別には、円周仕切板404A~404D)を配置し、回転円盤401上の内周面に4つの内周ガイド403(個別には、内周ガイド403A~403D)を配置することで、薬剤Mの個々の薬剤mを載置する幅約20mmの細長の面として円周載置板402(区画別には、円周載置板402A~402D)を形成し、支持フレーム406上で回転する。
【0055】
円周載置板402には、アクリル板やガラス板といった透明性を有する材料(透明体)が用いられることにより、後述するように、円周載置板402上に載置された薬剤mが上面及び下面の双方から撮影可能となる。また、支持フレーム406の上方には、回転円盤401に接する位置に移載処理部300が配置される。
【0056】
以下では、回転円盤401の回転に対応した薬剤の搬送を説明する。この説明を分かり易く行うため、回転円盤401上で分割された4区画のうち、移載処理部300が配置された位置を含む象限を「象限1」とし、象限1から回転方向の下流に沿って、90度ごとに「象限2」、「象限3」、「象限4」と呼ぶことにする。また、図面上、これらの象限1~4に対応して、前述した回転円盤401上の各部材は、A~Dの符号を対応付けて呼ぶことができる。例えば、円周載置板402Aは象限1の円周載置板402に相当し、円周載置板402Bは象限2の円周載置板402に相当し、円周載置板402Cは象限3の円周載置板402に相当し、円周載置板402Dは象限4の円周載置板402に相当する。
【0057】
回転円盤401上で分割された4区画が
図7に示した状態にあるとき、象限1では、回転円盤401の回転によって円周載置板402Aが移載部シャッター304に対面する位置を通過するタイミングで、移載部シャッター304を開口し、移載押出板302を押出動作することで、薬剤Mを円周載置板402A上に移動させる。そして、円周載置板402A上に移動させた薬剤Mを、内周ガイド403Aと、円周仕切板404A,404Dとともに回転させる。
【0058】
なお、本説明では、象限1の円周載置板402A上に薬剤Mが移載されたとき、その他の象限2,3,4の円周載置板402B,402C,402Dには、それぞれ既に薬剤Mが載置されているとする。
【0059】
このとき、象限2では、透明な円周載置板402B上に載置された薬剤Mは、回転する内周ガイド403Bと固定された外周ガイド405との間を搬送され、このとき、監査撮像部500が、後述する撮像処理を行う。詳細は後述するが、監査撮像部500は、象限2に、円周載置板402の上側から撮影するためのカメラ501A及び反射照明502Aと、下側から撮影するためのカメラ501B及び反射照明502Bとを配置している。
【0060】
一方、象限3では、薬剤Mは、円周載置板402C上に載置されたまま搬送される。
【0061】
一方、象限4では、内周ガイド403Dが、回転カム機構を利用した不図示の可動機構により、外周方向に押し出されることで、円周載置板402D上の薬剤Mは、回転円盤401から排出される。
【0062】
以上のように、
図7の搬送監査処理部400では、回転円盤401の回転に応じて、移載から搬送を経て排出するまでの一連の動作を、象限ごとにタイミングをずらして並行実施することにより、同時に最大4つまでの薬剤Mを連続的に搬送することができる。
【0063】
搬送監査処理部400から薬剤Mが排出された後の動作についても、
図7を参照しながら説明する。
【0064】
図7に示したように、象限4には、回転円盤401から排出された薬剤Mを受け取る排出処理部600が配置されている。排出処理部600は、回転円盤401から押し出された薬剤Mを保持する排出ガイド601と、排出ガイド601上を回転円盤401の回転方向に、不図示の駆動源によって動作する排出レバー602と、を備えて構成される。象限4において回転円盤401から押し出された薬剤Mは、排出処理部600の排出ガイド601に保持された後、排出レバー602の動作によって押し出され、監査後貯留部700に移動する。
【0065】
監査後貯留部700は、排出レバー602で押し出された薬剤Mを保持する板で、不図示の駆動源によって水平方向に開閉移動する排出仕切板702と、排出仕切板702上の薬剤Mを撮像する貯留部カメラと、を備えて構成される。貯留部カメラは、排出仕切板702に薬剤Mが貯留されていることを撮像する。そして、薬剤Mの監査処理が終了すると、監査後貯留部700の排出仕切板702が開状態に移動することにより、薬剤Mは薬剤監査装置11から排出され、その後、排出仕切板702を閉状態にした後で、貯留部カメラが排出仕切板702上を撮像することにより、薬剤が残留していないことを確認する。
【0066】
図8は、薬剤動作制御部804による制御処理の処理手順例を示すフローチャートである。
図8には、薬剤監査装置11に薬剤が投入されてから、薬剤の整列、薬剤に対する監査画像の撮影、薬剤の監査、そして薬剤の排出が行われるまでの動作フローが示されている。前述したように、薬剤動作制御部804は、監査全体処理部801が定めた動作方法に従い、薬剤監査装置11が受け入れた薬剤Mに対して、監査前貯留部200、移載処理部300、搬送監査処理部400(監査撮像部500を含む)、排出処理部600、及び監査後貯留部700の動作を制御する。以下では、
図8の処理フローに示した各処理を説明するが、簡略のため、各処理の制御主体が薬剤動作制御部804であることの記載を省略する。
【0067】
図8によればまず、薬剤監査装置11に受け入れた薬剤Mに対する監査が開始されると、搬送監査処理部400の回転円盤401の回転を開始する(ステップS110)。
【0068】
そして、後述するステップS130で回転円盤401の回転を停止するまでの間に、監査前貯留部200、移載処理部300、搬送監査処理部400、排出処理部600、そして監査後貯留部700を順に経由する所定の流路に薬剤Mを搬送しながら、薬剤の整列、撮影、及び監査等を行う(ステップS120)。なお、ステップS120では、詳細には、以下に説明するようにステップS121~S129の処理が実行される。
【0069】
まず、
図5を参照しながら詳述したように、監査前貯留部200に薬剤Mが投入され(ステップS121)、監査前貯留部200において投入振動整列部201を振動させることにより、薬剤M(複数の薬剤m)を散開させる(ステップS122)。
【0070】
さらに、監査前貯留部200では、投入仕切板202を開放し、散開状態のまま薬剤Mを移載処理部300に落下させる(ステップS123)。
【0071】
次いで、
図6を参照しながら詳述したように、移載処理部300の移載押出板302を動作させることにより、薬剤Mを搬送監査処理部400の回転円盤401上に移載する(ステップS124)。
【0072】
図7を参照しながら詳述したように、ステップS124で回転円盤401上(例えば象限1)に移載された薬剤Mは、回転円盤401の回転に伴って移動する。そして、移動の途中(例えば象限2)において、監査撮像部500に配置したカメラ501及び照明502によって、薬剤Mの上下面を撮影する(ステップS125)。その後は、回転円盤401の回転によって薬剤Mが排出処理部600の付近(例えば象限4)に移動したとき、内周ガイド403を外周方向に押し出すことで、薬剤Mを排出処理部600に移動させる(ステップS126)。
【0073】
次に、排出処理部600において排出レバー602を回転円盤401の回転方向に動作させることにより、薬剤Mを監査後貯留部700に移動させる(ステップS127)。次いで、監査後貯留部700では、排出仕切板702の開動作によって薬剤Mが薬剤監査装置11から排出される(ステップS128)。そして、排出仕切板702が閉動作を行った後、貯留部カメラの撮影によって薬剤Mが監査後貯留部700に残留していないことを確認する(ステップS129)。
【0074】
以上がステップS120における詳細な処理である。そして、ステップS121~S129の処理が終了し、監査対象の薬剤Mがすべて薬剤監査装置11から排出されたことが確認されると、薬剤動作制御部804は回転円盤401の回転を停止し(ステップS130)、薬剤Mに対する監査が終了する。
【0075】
なお、上記したステップS120の処理は、薬剤監査装置11への薬剤Mの1回の投入に対する処理である。薬剤監査装置11は、複数の薬剤Mの連続的な投入にも対応可能に構成されており、薬剤Mの投入が連続する場合には、
図7の説明でも象限1~4を用いて説明したように、各投入に応じたステップS120の処理が並行して実行される必要がある。
【0076】
図9は、複数の薬剤が連続投入されるときの監査処理の処理遷移例を示す図である。
図9では、連続して投入される複数の薬剤Mを、投入順に薬剤M1~M7と表し、各薬剤Mに対する監査処理の処理遷移を示している。なお、
図9に示された[1]~[11]の番号(No.)は、
図8に示した監査処理の各処理に付した番号と対応しており、
図9の説明では、上記[1]~[11]の番号を用いて各処理を表記する。すなわち、
図9では、
図8のステップS110の処理を「処理1」、ステップS121の処理を「処理2」、・・・、ステップS130の処理を「処理11」と称する。また、
図9では、n番目に投入される薬剤Mnに対して処理2が開始されるタイミングを、「時刻Tn」としている。
【0077】
図9によれば、1番目の薬剤M1に対しては、時刻T1において処理2が開始し、時刻T4と時刻T5との途中で処理10が終了する。この途中、処理5の移載押出板302で回転円盤401に薬剤M1を移載する動作は、回転円盤401の回転位置と同期して実行される。そして、この処理5の動作と連動するタイミングで、次の薬剤M2に対する処理2の動作が開始される。このような動作開始の連携は、後続する薬剤M3以降でも同様である。
【0078】
ここで、薬剤M2の処理2を開始する時刻T2と時刻T1との差が処理周期Tsである。回転円盤401は4分割されているので、回転円盤401の回転周期は、Tsの4倍に設定するとよい。連続する薬剤Mの処理のために、例えば、時刻T4において、薬剤M1に対しては処理9を実行しながら、薬剤M2に対しては処理6を実行し、薬剤M3に対しては処理5を実行し、薬剤M4に対しては処理2を並行して実行する。このようにすることで、薬剤監査装置11は、連続して投入される薬剤Mに対して、周期的に、並行処理制御で監査処理を実行することができる。
【0079】
さらに、
図9では、薬剤M1~M7を周期的に同期したタイミングで投入しているが、何らかの原因で薬剤Mを投入するタイミングが遅れる場合、例えば、時刻T4のタイミングで薬剤M4が投入されなかった場合には、薬剤M4に対する一連の監査処理は、1回分の処理周期Tsだけ遅らせて、時刻T5に開始するようにすれば、処理2~処理10の実行を、他の薬剤Mに対する処理と同期して実行することができる。
【0080】
図10は、監査撮像部500の構成図である。
図10(A)は、監査撮像部500の上面図であり、
図10(B)は、監査撮像部500を
図10(A)の矢印方向から見た断面図である。
【0081】
監査撮像部500は、象限2において円周載置板402の上側と下側にそれぞれカメラ501及び照明502を配置し、搬送監査処理部400が円周載置板402上に散開状態で保持される薬剤Mを反時計回りに一定速度で搬送するときに、上側のカメラ501(上部カメラ501A)、下側のカメラ501(下部カメラ501B)の順で、一定間隔で連続して撮影を連続して行う。薬剤M1,M2,M3,M4が連続して投入されるとするとき、監査撮像部500は、
図7に示した円周載置板402A,402B,402C,402D上に保持された薬剤M1,M2,M3,M4に対して、それぞれが象限2を搬送されるときに撮影処理を行う。
【0082】
図10(A)に示すように、上部カメラ501Aが円周載置板402の上側に配置されるのに対して、下部カメラ501Bは、円周載置板402の下側に配置され、透明材の円周載置板402越しに、薬剤Mを撮像する。上部カメラ501Aと下部カメラ501Bは、回転円盤401の回転方向に所定量ずらして、光学的に上下対称に配置することにより、監査処理における画像処理の共通化を図ることができる。
【0083】
上部カメラ501A及び下部カメラ501Bは、ともに、細長形状の円周載置板402の幅寸法(約20mm)と薬剤Mの大きさとを考慮して、25~30mmの撮像領域で四方がゆがみなく撮影できるように、カメラ素子511及びレンズ512を配置し、かつ実装寸法を最小にするために、ミラー513に反射させて撮像することでL字光路の構造としている。
【0084】
上部カメラ501Aの撮影のために配置される反射照明502A、及び下部カメラ501Bの撮影のために配置される反射照明502Bは、ともに、薬剤の画像(特に表面のマークや刻印)を明瞭に撮影するため、個別の薬剤mを斜め側面から照射できるような環状の照明を採用している。また、照明に対する方向性のムラを低減するために、円周載置板402を透明にするだけでなく、内周ガイド403の内周面や、外周ガイド405を透明材にするなどが望ましい。
【0085】
また、本実施例では、透明体の錠剤など特殊な薬剤に対する撮像も可能とするために、監査撮像部500は透過照明による外形撮像を実装する。具体的には、監査撮像部500は、上部カメラ501Aとの組み合わせとして、透過照明515及び半透過シート516を、円周載置板402の上部カメラ501Aとは反対側、つまり薬剤mの背面側に配置している。また、下部カメラ501Bとの組み合わせとしても、同様に、透過照明515及び半透過シート516が配置される。
【0086】
図11は、監査撮像部500による撮像動作を説明するための模式図である。なお、
図11では、上部カメラ501Aを例として、カメラ及び照明等の工学系構成の配置関係を示しているが、下部カメラ501Bも同様に考えてよい。
図11を参照しながら、監査撮像部500において、透過照明515と反射照明502とを交互に切り替えて、カメラ501によって薬剤の撮影を行う動作について説明する。
【0087】
まず上側撮影の際には、上部カメラ501Aは、周囲に配置した反射照明502Aを点灯して、回転円盤401(円周載置板402)上の薬剤を上面から撮影することにより、薬剤の表面を撮像した順光画像522を取得する。その際、透過照明515は消灯しておく。
【0088】
次に、下側撮影の際には、半透過シート516の下の透過照明515を点灯して、回転円盤401(円周載置板402)上の薬剤が半透過シート516及び回転円盤401越しに下側から照射された状態で、上部カメラ501Aで上面から撮影することにより、薬剤の外形(影絵)を撮像した逆光画像521を取得する。その際、反射照明502Aは消灯しておく。半透過シート516は、反射照明502Aからの照射に対して無反射で、かつ透過照明515からの照射に対して透過するシート部材であって、例えば、黒色の減衰フィルタであってもよい。また、後述するように、半透過シート516は、円周載置板402側の面が黒色またはそれに準じた色であることが好ましい。
【0089】
上記のように、上部カメラ501Aは、透過光による上側撮影と反射光による下側撮影とを交互に繰り返して、順光画像522及び逆光画像521を取得する。この結果、薬剤の上側と下側の両方の表面のカラー画像(順光画像522)と影絵の外形画像(逆光画像521)が取得できる。なお、下部カメラ501Bも、上部カメラ501Aと同様の手順で(但し、上下は反対に入れ替わる)、上側撮影及び下側撮影を行う。
【0090】
なお、上側撮影と下側撮影の繰り返しにおいては、点灯する照明(反射照明502,透過照明515)を数10ms周期で定期的に切り替えて、薬剤を照射する光を反射光と透過光とで定期的に切り替えながら、これに同期してカメラ画像を連続的に撮像することで、回転移動する薬剤Mを連続して撮影した逆光画像521及び順光画像522を取得することができる。また、前述したように、上部カメラ501Aと下部カメラ501Bが、回転円盤401の回転方向に所定量ずらして配置されることから、両カメラによる薬剤Mの撮影画像には時間差が生じる。したがって、上部カメラ501A及び下部カメラ501Bでそれぞれ上側撮影と下側撮影が行われた場合には、順光画像522及び逆光画像521のそれぞれで異なる時間の撮影画像を取得でき、薬剤の識別精度を高める効果に期待できる。
【0091】
そして撮像・監査処理部803は、上部カメラ501Aと下部カメラ501Bで撮像した薬剤Mの画像について、薬剤m毎に切出した画像(以後、薬剤画像とも称する)を、あらかじめ登録された薬剤mごとのマスタデータの色、外形、刻印等の情報と比較し、その比較結果に基づいて、薬剤mごとに、当該薬剤の監査結果が「正常」、「確認要」、または「不明」の何れに該当するかを判定する。なお、撮像・監査処理部803が薬剤mの監査結果を判定する処理(監査結果判定処理)の詳細な処理手順については、
図13,
図14を参照しながら後述する。
【0092】
以上の監査撮像部500では、透過照明515と黒色の半透過シート516とを近づけて配置することで、透過光による撮影(例えば上部カメラ501Aによる下側撮影)の際、透過照明515の照明光色である白色が半透過シート516及び回転円盤401(円周載置板402)を透過して薬剤mの背景色となり、薬剤m自体は影絵の状態で黒やグレーで撮影される。このようにして撮影された逆光画像521は、
図11に示したように、透明体や黒っぽい薬剤の輪郭が見やすくなる。
【0093】
一方、反射光による撮影(例えば上部カメラ501Aによる上側撮影)では、反射照明502と半透過シート516が離れていることから、反射照明502による光が半透過シート516を透過せず、半透過シート516の表面の黒色が薬剤mの背景色となる。このように順光画像522の背景色が黒色であると、薬剤mの多くが白っぽいことから、撮影された薬剤mを識別しやすくなる。また、前述したように薬剤mの表面のマークや刻印の影を明瞭に撮影するため、反射照明502は、薬剤mに対して斜め側面から照射する。
【0094】
このように監査撮像部500が照明を切り替えて監査画像を取得することで、撮像・監査処理部803が、薬剤mを見易い画像を使って監査したり、あるいは薬剤mの移動をそれぞれ追跡して個別に画像を切り出したりすることに使用できる。また、半透過シート516には、黒色の減衰フィルタを使ってもよい。
【0095】
ここまで説明してきたように、本実施例に係る薬剤監査装置11では、受け入れた薬剤M(複数の薬剤m)を整列させて搬送する途中で監査画像を撮影し、画像分析することにより、薬剤Mに含まれる個々の薬剤mに対する監査を行い、個々の薬剤mに対する監査結果を組み合わせて薬剤Mに対する監査結果を得ることができる。このようにして得られた監査結果は、監査結果処理部802によって監査結果表示画面901に表示されて薬剤師108に提示される。
【0096】
そして、薬剤師108は、監査結果を表示する監査結果表示画面901を操作して、分包された薬剤M1,M2,・・・が処方箋情報(薬剤処方データ)と一致しているかの確認と、監査結果が不明な場合や処方箋情報と相違している場合には監査結果の修正とを行い、薬剤監査を完了させる。以下では、
図12~
図22を参照しながら、監査結果表示画面に表示される画面出力、及び薬剤師による操作について説明する。
【0097】
図12は、監査選択初期画面の一例を示す図である。監査選択初期画面は、薬剤師がこれから監査しようとする薬剤Mを選択する際に操作する画面であり、
図12にはその具体例が示されている。
【0098】
図12に示した監査選択初期画面1500は、薬剤Mを選択するためのボタン1501と、選択するためのキー情報となる処方箋ID1502と、患者氏名1503と、分包機ID1504と、各薬剤Mの処方箋情報に含まれる分包総数1505と、「朝食後」や「寝る前」などの服薬の時点用法の種類数を示す用法種類数1506と、監査レベル1507と、監査結果1508と、薬剤師監査1509と、を表示する。
【0099】
監査レベル1507は、薬剤Mに含まれる個別の錠剤である薬剤mについて、ハイリスク薬などの厳重な監査が必要な薬剤である場合と、通常の薬剤である場合とを区別するための情報であり、このレベルによって監査すべき人の制限(薬剤師が監査必要、複数の薬剤師で監査必要、事務員でも監査可能など)を付けることで、厳密な薬剤監査の運用をすることも考えられる。
【0100】
監査結果1508には、薬剤監査装置11による個別の薬剤mに対する監査結果として、前述した「正常」、「確認要」、「不明」の3種類を定義し、処方箋ID1502ごとの分包総数の内訳数を表示する。ここで、「正常」は処方箋情報(薬剤処方データ)に指定された通りの錠剤として識別、監査できた場合、「確認要」は処方箋情報通りに仕分けはできたが(薬剤監査装置11としては問題がないと判定するものではあるが)、錠剤のマスタデータとの比較や識別による類似性が低く、薬剤師による確認が望ましいと判断した場合、「不明」は処方箋情報に指定された錠剤として仕分けもできなかった場合、としている。
【0101】
以下では、薬剤監査装置11の撮像・監査処理部803が個別の薬剤mの監査結果(「正常」、「確認要」、「不明」)を判定する「監査結果判定処理」について、
図13及び
図14を参照して2つの処理手順例を説明する。
【0102】
図13は、監査結果判定処理の第1の処理手順例を示す図である。
図13に示した処理は、錠剤の刻印を考慮して薬剤の監査を行う監査結果判定処理の一例であって、第1の監査結果判定処理と称する。
【0103】
図13によれば、撮像・監査処理部803は、まず、上部カメラ501Aと下部カメラ501Bで撮像された薬剤Mの画像から、個別の薬剤mの画像(薬剤画像)を取得する(ステップS201)。そして個別の薬剤mごとに、ステップS202以降の処理が実施される。なお、薬剤Mに含まれる複数の薬剤mは、薬剤処方データで指定された薬剤であり、それぞれのマスタデータが用意されている。
【0104】
次に、撮像・監査処理部803は、ステップS201で取得した薬剤画像に対して画像解析を実施することにより、薬剤画像に映っている監査対象の薬剤mについて、刻印の有無を示す情報、サイズ情報、及び色情報を取得する(ステップS202)。
【0105】
刻印の有無を示す情報は、監査対象の薬剤mにおける刻印の有無を分析した情報であり、刻印の内容(数字を含む文字列など)を示す情報(後述する刻印情報)とは異なる。すなわち、ステップS202では、刻印情報までは取得しなくてよい。なお、本実施形態では、錠剤の刻印に注目して処理を行うが、錠剤以外の薬剤(例えばカプセル等)に対しても同様に刻印の有無に応じた処理を行うようにしてもよい。
【0106】
サイズ情報は、監査対象の薬剤mの外形(サイズ)を示す情報である。サイズ情報は、具体的には例えば、縦または横の長さ、縦横比、面積、周囲長などである。色情報は、監査対象の薬剤mの色を示す情報である。色情報は、具体的には例えば、薬剤全体の平均色や、薬剤に含まれる色数などである。
【0107】
次に、撮像・監査処理部803は、ステップS202で取得した刻印の有無を示す情報に基づいて(あるいは、監査対象の薬剤mのマスタデータを参照してもよい)、監査対象の薬剤mが刻印を有する錠剤であるか否かを判定する(ステップS203)。
【0108】
ステップS203において監査対象の薬剤mが刻印有りの錠剤であった場合には(ステップS203のYES)、撮像・監査処理部803は、薬剤画像の画像解析によって当該薬剤mの刻印情報を追加取得した上で、ステップS202で取得したサイズ情報及び色情報とともに、薬剤mのマスタデータと照合することにより、刻印、サイズ、及び色がそれぞれ一致するかを解析する(ステップS204)。なお、第1及び第2の監査結果判定処理における「一致」とは、照合する2つの情報(画像解析から取得した情報とマスタデータ)の一致率が、予め定められた閾値(第1閾値)を超えることを意味する。照合による一致率の算出は、既知の画像解析(イメージ分析)の手法を利用すればよいため、詳細な説明を省略する。
【0109】
次に、撮像・監査処理部803は、ステップS204の解析結果に基づいて、刻印、サイズ、及び色が全て一致したか否かを判定する(ステップS205)。ステップS205で肯定結果が得られた場合(ステップS205のYES)、撮像・監査処理部803は、監査対象の薬剤mの監査結果を「正常」と判定し(ステップS206)、監査結果判定処理を終了する。
【0110】
ステップS205において肯定結果が得られなかった、すなわち、刻印、サイズ、及び色の少なくとも何れかが一致しなかった場合(ステップS205のNO)、撮像・監査処理部803は、サイズ及び色が一致して、刻印だけが近似であったかを確認する(ステップS207)。なお、「刻印が近似であった」とは、撮影画像の刻印情報と監査対象の薬剤mのマスタデータとが一致しなかったこと(あるいはさらに、近似していたこと)を表す。具体的には例えば、刻印情報とマスタデータとの一致率が第1閾値(一致の判定基準とされた閾値)未満である場合に、近似(不一致)と判定することができる。なお、一致しなかったものをすべて「近似」とするのではなく、近似の程度を限定したい場合には、後述する第2閾値等を利用すればよい。
【0111】
そしてステップS207で肯定結果が得られた場合(ステップS207のYES)、撮像・監査処理部803は、監査対象の薬剤mの監査結果を「確認要」と判定し(ステップS208)、監査結果判定処理を終了する。一方、ステップS207で肯定結果が得られなかった場合(ステップS207のNO)、撮像・監査処理部803は、監査対象の薬剤mの監査結果を「不明」と判定し(ステップS209)、監査結果判定処理を終了する。
【0112】
また、ステップS203において監査対象の薬剤mが刻印を有する錠剤ではなかった場合には(ステップS203のNO)、撮像・監査処理部803は、ステップS202で取得したサイズ情報及び色情報を画像mのマスタデータと照合することにより、サイズ及び色がそれぞれ一致するかを解析する(ステップS210)。
【0113】
そしてステップS210の解析の結果、サイズ及び色がともに一致した場合(ステップS210のYES)、撮像・監査処理部803は、監査対象の薬剤mの監査結果を「正常」と判定し(ステップS212)、監査結果判定処理を終了する。一方、ステップS210の判定においてサイズまたは色の少なくとも何れかが一致しなかった場合(ステップS210のNO)、撮像・監査処理部803は、監査対象の薬剤mの監査結果を「不明」と判定し(ステップS213)、監査結果判定処理を終了する。
【0114】
以上のように、第1の監査結果判定処理は、サイズ及び色に関する情報は、薬剤Mの撮像画像から切出したすべての薬剤mの薬剤画像に対して分析及び取得を行う一方、刻印情報は、薬剤mが刻印を有する錠剤である場合に限って分析及び取得を行う。錠剤には、そもそも刻印がなされていないものがあるだけでなく、刻印が有っても、文字が小さい錠剤や、凹状の印で目視困難な錠剤、カプセル形状や円筒、球形状の表面に刻印が有って目視では観察しにくい錠剤など、様々な種類がある。そのため、第1の監査結果判定処理は、処理を開始してすぐのステップS202で取得した画像情報から、刻印の有無を分析して、刻印情報を取得する場合と、刻印情報を取得しない場合とに分類した上で(ステップS203)、監査結果の判定方法を分けたものである。このような第1の監査結果判定処理によれば、刻印の一致判定が不要な錠剤については、刻印情報に関する画像解析が行われないことから、監査時間を短縮する効果に期待できる。
【0115】
また、第1の監査結果判定処理によれば、刻印が有る錠剤については、「正常」、「不明」だけでなく、刻印の一致率が不十分な場合に「確認要」という新たな分類が可能となることで、薬剤師は、刻印部のみを再確認すべき錠剤(監査結果が「確認要」)と、錠剤の種類の正誤から確認すべき錠剤(監査結果が「不明」)とを区別することができ、効率的な作業が可能となる。
【0116】
なお、第1の監査結果判定処理の変形例として、ステップS202における画像解析において刻印情報まで取得しておき、ステップS204では刻印情報の取得を行わないような処理手順としてもよい。このような変形例の場合、すべての薬剤画像に対して刻印情報の画像解析を行う点で監査時間が長くなるおそれはあるが、画像解析を行うプログラム等を呼び出す回数が減ることで、内部処理を簡易化する効果が得られる。
【0117】
また、刻印の不明を確認するステップS207の変形例として、撮像・監査処理部803は、撮影画像の刻印情報がマスタデータとは明確に不一致であることの判定基準として第1閾値よりも低い第2閾値を設け、刻印情報とマスタデータとの一致率が第2閾値以上かつ第1閾値未満である場合に限り、刻印が近似である、と判定するようにしてもよい(第2閾値未満である場合はステップS207でNOと判定する)。あるいは、第2閾値を使わずに、刻印情報とマスタデータとの一致率が第1閾値の90%以内である場合に、刻印が近似であると判定するようにしてもよい。これらの変形例を採用する場合、薬剤画像に示される刻印がマスタデータの刻印とは明らかに異なるような場合(すなわち、明確に不一致である場合)を除外して、ある程度の一致性を有するが確実に一致とは言えない程度を近似と判定し、後続のステップS208で監査結果を「確認要」と判定することができる。この結果、薬剤監査装置11による監査の精度を高く維持しながら、薬剤師による確認が必要なケースを絞り込むことができる。
【0118】
図14は、監査結果判定処理の第2の処理手順例を示す図である。
図14に示した処理は、錠剤の刻印を考慮せずに薬剤の監査を行う監査結果判定処理の一例であって、第2の監査結果判定処理と称する。
図13に示した第1の監査結果判定処理との相違点として、
図14に示す第2の監査結果判定処理は、薬剤画像から刻印情報の分析及び取得を行わない点が挙げられる。
【0119】
図14によれば、撮像・監査処理部803は、まず、上部カメラ501Aと下部カメラ501Bで撮像された薬剤Mの画像から、個別の薬剤mの画像(薬剤画像)を取得する(ステップS301)。そして個別の薬剤mごとに、ステップS302以降の処理が実施される。なお、薬剤Mに含まれる複数の薬剤mは、薬剤処方データで指定された薬剤であり、それぞれのマスタデータが用意されている。ステップS301は、
図13のステップS201と同様である。
【0120】
次に、撮像・監査処理部803は、ステップS301で取得した薬剤画像に対して画像解析を実施することにより、薬剤画像に映っている監査対象の薬剤mについて、サイズ情報及び色情報を取得する(ステップS302)。
【0121】
次に、撮像・監査処理部803は、ステップS302で取得したサイズ情報及び色情報を薬剤mのマスタデータと照合することにより、サイズ及び色がそれぞれ一致するかを解析する(ステップS303)。
【0122】
次に、撮像・監査処理部803は、ステップS303の解析結果に基づいて、サイズ及び色が全て一致したか否かを判定する(ステップS304)。ステップS304で肯定結果が得られた場合(ステップS304のYES)、撮像・監査処理部803は、監査対象の薬剤mの監査結果を「正常」と判定し(ステップS305)、監査結果判定処理を終了する。
【0123】
ステップS304において肯定結果が得られなかった、すなわち、サイズまたは色の少なくとも何れかが一致しなかった場合(ステップS304のNO)、撮像・監査処理部803は、色が一致してサイズが近似であるかを判定する(ステップS306)。「サイズが近似であるか」は、例えば、サイズが完全に不一致であることの判定基準として第1閾値(一致の判定基準)よりも低い第2閾値を設け、サイズ情報とマスタデータとの一致率が第2閾値以上かつ第1閾値未満である場合に限り、サイズが近似である、と判定すればよい(第2閾値未満である場合は近似とは見なさず、ステップS306でNOと判定する)。
【0124】
そしてステップS306で肯定結果が得られた場合(ステップS306のYES)、撮像・監査処理部803は、監査対象の薬剤mの監査結果を「確認要」と判定し(ステップS307)、監査結果判定処理を終了する。一方、ステップS306で肯定結果が得られなかった場合(ステップS306のNO)、撮像・監査処理部803は、監査対象の薬剤mの監査結果を「不明」と判定し(ステップS308)、監査結果判定処理を終了する。
【0125】
以上のように、第2の監査結果判定処理は、刻印情報までは取得しないことにより、判定処理が容易で、処理時間の短縮効果にも期待できる。ところで、薬剤mの監査においてサイズ及び色の一致だけを単純にマスタデータと照合した場合には、識別が難しい薬剤に対して人(薬剤師)による再確認が必要となり、その頻度が高くなることが想定される。このため、第2の監査結果判定処理では、サイズ情報または色情報の少なくとも何れかがマスタデータと一致しなかった場合に(ステップS304のNO)、すべてを「不明」の監査結果と判定するのではなく、色情報は一致してサイズ情報が近似しているかというステップS306の判定を行うことにより、「確認要」の監査結果となるケースを追加するものである。サイズ情報が近似とは、上述した説明では第2閾値以上第1閾値未満としたが、他にも例えば、サイズ情報とマスタデータとの一致率が第1閾値の90%以内である場合、といった定義を行ってもよい。このような第2の監査結果判定処理によれば、「確認要」と「不明」を分けることにより、薬剤師は、サイズ(形状)だけを再確認すべき薬剤(監査結果が「確認要」)と、薬剤の種類の正誤から確認すべき薬剤(監査結果が「不明」)とを区別することができ、効率的な作業が可能となる。
【0126】
また、上述した第2の監査結果判定処理では、ステップS306においてサイズ情報の近似を判定条件としたが、変形例として、色情報の近似を判定条件とするようにしてもよい。薬剤の色は、光の当たり具合や影の位置等によって多少の変化が想定され得るところ、このような変形例の監査結果判定処理を採用することにより、薬剤画像における色の揺らぎを「確認要」の監査結果と判定することができ、薬剤師による目視による補助が可能となる。
【0127】
以上、第1及び第2の監査結果判定処理を説明したが、薬剤監査装置11においてどちらの監査結果判定処理を実行するかは、薬剤監査装置11のハードウェア構成に応じて設定されてもよいし、ハードウェア構成が十分な条件を満たしている場合はユーザによって任意に設定可能としてもよい。ハードウェア構成による条件としては、例えば、カメラ501の解像度が刻印を識別可能なほどに十分な性能ではない場合等が挙げられ、この場合は第2の監査結果判定処理が実行されることが好ましい。第2の監査結果判定処理を実行することで、刻印を識別できないハードウェア構成であっても、「要確認」の監査結果を判定することが可能となる。また、ユーザから設定可能な場合には、例えば、通常のモードと、処理速度を向上させる特定モードとを設け、通常のモードでは第1の監査結果判定処理を実行し、特定モードでは第2の監査結果判定処理を実行する、といった実装が考えられる。
【0128】
また、本実施形態に係る薬剤監査装置11で実行される監査結果判定処理は、
図13または
図14に示した処理手順例に限定されるものではなく、例えば、監査結果を「正常」または「不明」の何れかとして「確認要」の監査結果を出さないようにする処理手順も実行可能である。この場合、具体的には例えば、
図13のステップS205や
図14のステップS304でNOと判定した場合に、さらなる判定処理(ステップS207,S306)を行わずに「不明」と判定すればよい。
【0129】
また、上記説明では、錠剤固有の識別情報として、薬剤mを切り出した薬剤画像を基に、色、サイズ、及び刻印に関する情報を画像解析によって取得する、としていたが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、他にも例えば、円、楕円、樽型、三角形、四角形、五角形、円形度合いといったような薬剤(錠剤)の形状に関する情報を取得するようにしてもよいし、光沢の有無に関する情報を取得するようにしてもよい。あるいは、素錠、糖衣錠、カプセル、軟カプセルといったような薬剤の種別に関する情報を取得するようにしてもよい。
【0130】
また、薬剤画像から取得した刻印情報とマスタデータとを照合して一致率を算出する際には、刻印部分の画像としての一致率を算出する方法を採用してもよいし、刻印部分の画像から文字を認識する文字認識を行った上で、文字としての一致率を算出するようにしてもよい。また、これら両方を行うようにしてもよい。これらを適宜採用することにより、薬剤監査装置11による監査機能の更なる向上に期待できる。
【0131】
図12に示した監査選択初期画面1500の説明に戻る。
【0132】
薬剤師監査1509には、各薬剤Mについて薬剤師による監査が完了しているかどうかのステータスとして、「完了」や「未完了」などの情報を表示する。
【0133】
薬剤師は、このような監査選択初期画面1500を見て、取り扱う処方箋ID(監査する薬剤M)を選択し(例えば、第1レコード1510を選択し)、ボタン1520を押下することで、選択した処方箋ID(監査する薬剤M)に対する監査処理画面を表示させる。
【0134】
図15~
図21には、監査処理画面の具体例(第1~第7の例)が示されている。以下、それぞれの監査処理画面例について、その特徴を詳しく説明する。
【0135】
図15は、監査処理画面の一例(第1例)を示す図である。
図15に示した監査処理画面1600は、薬剤M1に対する薬剤監査装置11による監査結果が全て「正常」であり、「確認要」や「不明」の薬剤(錠剤)mがない場合の監査処理画面の具体例である。
【0136】
監査処理画面1600では、薬剤M1の処方箋IDや患者氏名、監査した分包機IDといった情報1601を表示した上で、薬剤M1に含まれる個別の薬剤(錠剤)mの撮影画像を一覧表示する。この一覧表示は、各行に錠剤m1~m5の薬剤名、各列に処方された処方日数を表した表形式とし、時点用法をタブ1602で表示する。
【0137】
監査処理画面1600は、薬剤監査装置11で撮影した錠剤画像を装置の監査結果に従って個別の錠剤ごとに日数分だけ並べて表示させることで、薬剤師が一目で間違った錠剤が含まれていないことを確認できる。薬剤師は、監査処理画面1600を見て薬剤M1に含まれる個別の薬剤mの全てが正しい錠剤種及び数量で分包されていることを確認した上で、監査結果確定ボタン1603を押下することにより、薬剤M1の薬剤師監査を完了させることができる。もし、薬剤師が個別の薬剤(例えば、錠剤m1)の詳細確認が必要と判断した場合は、薬剤師は、後述する
図22の監査修正画面を表示させて、錠剤m1のマスタ画像と装置による撮影画像とが並べられた表示を目視比較することにより、薬剤師監査を進めることもできる。
【0138】
図16~
図21は、監査処理画面の別例(第2例~第7例)を示す図である。
図16~
図21に示すそれぞれの監査処理画面は、薬剤M2に対する薬剤監査装置11による監査結果に、「正常」だけでなく「不明」または「確認要」の薬剤(錠剤)mが含まれている場合の監査処理画面の具体例であり、各例において、「不明」または「確認要」の錠剤が発生した場合の画面表示方法や、薬剤師に求められる対応方法が異なる。
【0139】
図16~
図21に示す監査処理画面では、共通する表示要素には同一の符号を付している。まず、これらの共通する表示要素について、
図16の監査処理画面1700(一部では
図17の監査処理画面1800)を例にとって説明する。
【0140】
監査処理画面1700では、薬剤M2の処方箋IDや患者氏名、監査した分包機IDといった情報1701を表示し、薬剤M2に含まれる個別の薬剤(錠剤)mの撮影画像を一覧表示する。この一覧表示は、各行に錠剤m1~m3の薬剤名や薬剤名が特定できていない不明の薬剤を表し、各列に処方された処方日数を表した表形式としている。また、時点用法の種類をタブ1702~1704で表示し、このタブを選択することで時点用法ごとに個別の錠剤mの錠剤画像を表示することができる。
【0141】
監査処理画面1700では、薬剤監査装置11による監査結果で「不明」とされた個別の錠剤mについては、薬剤M2の処方箋情報に含まれる個別の薬剤名を表す行(具体的には「刻印ありm1」、「刻印なしm2」、「カプセルm3」の行)とは別に、「不明1」や「不明2」と表記した新たな行に撮影画像を表示する。本説明では、「不明1」の行は、「不明」と判定された錠剤を表示する行とし、「不明2」の行は、「不明」と判定されたカプセルを表示する行としているが、これに限定されるものではない。また、個別の薬剤名の表示における「刻印あり」または「刻印なし」は、第1の監査結果判定処理のステップS203において刻印が確認される錠剤であるか否かを表す情報である。第2の監査結果判定処理が実行される場合は、「刻印あり」または「刻印なし」の表記は不要となる。
【0142】
また、監査結果が「不明」とされた薬剤mがある場合には、監査結果が「正常」であれば撮影画像が表示される当該薬剤mの表示エリアには撮影画像が表示されないが、この撮影画像の表示エリア周辺に色を付けるなどの強調表示がなされてよい。具体的には、
図16等に示した「格子線の網掛け1706」が「不明」に対応する強調表示であって、
図16の監査処理画面1700の場合、合計で5個の薬剤が「不明」と判定されたことが分かる。また、「不明1」及び「不明2」の行に表示される撮影画像の周辺にも「不明」に対応する強調表示を行うようにしてもよい。
【0143】
一方、薬剤監査装置11による監査結果で「確認要」とされた個別の薬剤(錠剤)mについては、対応する錠剤mの表示エリアに撮影画像が表示される。さらに、当該表示エリア周辺に色を付けるなどの強調表示がなされてよい。具体的には、
図17等に示した「斜線の網掛け1707」が「確認要」に対応する強調表示であって、
図17の監査処理画面1800の場合、合計で4個の薬剤が「確認要」と判定されたことが分かる。
【0144】
監査処理画面1700等では、「不明」または「確認要」の監査結果に対する上記の表示により、確認や修正するべき個別の薬剤(錠剤)を、薬剤師に一目で認識させることができる。なお、「不明」と「確認要」とで異なる強調表示を行うほうが、識別性を高めることができる。
【0145】
また、監査処理画面1700は、画面上に確認が必要な分包数や錠剤数を表示する警告欄1705を設けることで、薬剤師の監査忘れや見逃しを防ぐことができる。監査処理画面1700に設けられた監査結果確定ボタン1708は、
図15の監査処理画面1600における監査結果確定ボタン1603と同様に、監査対象の薬剤に対する薬剤師検査を完了する際に薬剤師によって押下されるボタンである。
【0146】
次に、
図16~
図21に示す監査処理画面のそれぞれの特徴を説明する。
【0147】
図16に示す第2例の監査処理画面1700は、薬剤M2を対象とした第1の監査結果判定処理が実行され、個々の薬剤mの監査結果が「正常」または「不明」となった場合の表示結果例である。また、「確認要」を判定しない変形例で第1の監査結果判定処理を行った場合も、
図16のような監査処理画面が表示される。
【0148】
監査処理画面1700に監査結果が表示された個別の薬剤mの詳細を説明すると、薬剤m1は、第1の監査結果判定処理において刻印が確認される錠剤(錠剤m1)であり、薬剤m2は、第1の監査結果判定処理において刻印が確認されない錠剤(錠剤m2)であり、薬剤m3は、第1の監査結果判定処理において刻印が確認されないカプセル(カプセルm3)である。
【0149】
第1の監査結果判定処理において、刻印確認が必要とされる錠剤m1に対しては、色、サイズ、及び刻印についてマスタデータとの照合(一致解析)が行われる。また、刻印確認が不要とされる錠剤m2及びカプセルm3に対しては、色及びサイズについてマスタデータとの照合(一致解析)が行われる。
【0150】
監査処理画面1700の表示によれば、錠剤m1、錠剤m2、カプセルm3のそれぞれで1回以上、「不明」の監査結果が発生したことが分かる。具体的には例えば、2日目の薬剤M2の監査結果においては、錠剤m2のみが正常と判定されており、錠剤m1及びカプセルm3が不明と判定されている。そして、「不明1」には不明と判定された錠剤の撮影画像が表示され、「不明2」には不明と判定されたカプセルの撮影画像が表示されている。さらに、錠剤m1及びカプセルm3の撮影画像の表示エリアは、格子線の網掛け1706で強調表示されている。
【0151】
図17に示す第3例の監査処理画面1800は、薬剤M2を対象とした第1の監査結果判定処理が実行され、個々の薬剤mの監査結果として「正常」または「不明」だけでなく「確認要」も発生した場合の表示結果例である。
【0152】
監査処理画面1800に監査結果が表示された個別の薬剤mは、監査処理画面1700と同様に、刻印ありの薬剤m1(錠剤m1)、刻印なしの薬剤m2(錠剤m2)、及びカプセルの薬剤m3(カプセルm3)である。
【0153】
第1の監査結果判定処理において、刻印確認が必要とされる錠剤m1に対しては、色、サイズ、及び刻印についてマスタデータとの照合(一致解析)が行われる。また、刻印確認が不要とされる錠剤m2及びカプセルm3に対しては、色及びサイズについてマスタデータとの照合(一致解析)が行われる。
【0154】
監査処理画面1800の表示によれば、錠剤m1、錠剤m2、カプセルm3のそれぞれで1回以上、「不明」の監査結果が発生したことが分かる。そして、「不明1」には不明と判定された錠剤の撮影画像が表示され、「不明2」には不明と判定されたカプセルの撮影画像が表示されている。さらに、錠剤m1及びカプセルm3の撮影画像の表示エリアは、格子線の網掛け1706で強調表示されている。例えば、2日目の監査結果を見ると、「不明1」には円形錠剤の撮影画像が表示され、「不明2」にはカプセルの撮影画像が表示されている。このように不明な錠剤及び非錠剤(カプセル)の撮影画像が別の欄に表示されることで、薬剤師による不明薬剤の確認及び修正が容易となる。
【0155】
さらに、監査処理画面1800の表示によれば、錠剤m1について、3回の「確認要」の監査結果が発生したことも分かる。具体的には例えば、3,5,7日目の監査結果において、刻印ありの錠剤m1は「確認要」と判定されたことから、該当する撮影画像の表示エリアが斜線の網掛け1707で強調表示されている。なお、
図17からも分かるように、「確認要」は「正常」の一部という扱い(薬剤監査装置11としては正常と判断するが薬剤師による確認を推奨する)であるため、当該撮影画像は「不明1」ではなく「錠剤m1」の表示エリアに表示される。この場合、薬剤師は、「確認要」の強調表示がなされた薬剤画像について、後述する
図22の監査修正画面2300に表示されるマスタ画像2301のようなマスタ画像と比較することにより、容易に目視確認を行うことができる。なお、このマスタ画像は、個別の薬剤mに対する監査結果判定処理で照合に用いられたマスタデータの画像(マスタ画像)である。
【0156】
図18に示す第4例の監査処理画面1900は、監査対象の薬剤M2に立ち易い錠剤(錠剤m4)が含まれている場合の、個々の薬剤mの監査結果の表示例である。
【0157】
監査処理画面1900に監査結果が表示された個別の薬剤mは、刻印ありの薬剤m1(錠剤m1)、刻印なしの薬剤m2(錠剤m2)、カプセルの薬剤m3(カプセルm3)、及び、刻印ありで立ち易い薬剤m4(錠剤m4)である。
【0158】
ここで、「立ち易い薬剤」とは、監査前貯留部200から散開状態で搬送路(回転円盤401上)に落下された際に、刻印がない面がカメラ側に向いた状態で「立つ」可能性が想定される錠剤である。立ち易いか否かは、錠剤の形状によって予め判断することができる。そこで、立ち易い錠剤については、「立ち易い」錠剤であることが、刻印の有無とともに薬剤マスタデータに予め登録される。具体的には、刻印ありの立ち易い錠剤の場合は、刻印がみえる通常状態のマスタ画像と、刻印がみえない立ち状態のマスタ画像とがマスタデータに登録される。立ち状態のマスタ画像は複数通りが登録されてもよい。刻印なしの立ち易い錠剤の場合は、通常状態のマスタ画像と、立ち状態のマスタ画像とがマスタデータに登録される。なお、通常状態と立ち状態とでは、サイズが異なることもデータとして考慮される。そして監査結果処理部802は、監査処理画面1900を生成する際に、これらの個別の薬剤mに関する情報を薬剤マスタデータから読み出して、「薬剤名」の欄に表示する。この結果、監査処理画面1900において薬剤m4は、「刻印あり」かつ「立ち易い」錠剤m4として表示されている。錠剤m1、錠剤m2、カプセルm3については、監査処理画面1700,1800と同様である。
【0159】
第1の監査結果判定処理において、刻印確認が必要とされる錠剤m1及び錠剤m4に対しては、色、サイズ、及び刻印についてマスタデータとの照合(一致解析)が行われる。刻印確認が不要とされる錠剤m2及びカプセルm3に対しては、色及びサイズについてマスタデータとの照合(一致解析)が行われる。
【0160】
但し、立ち易い錠剤m4に対する第1の監査結果判定処理では、
図13に示したステップS204以降の処理が、以下のように変化する。薬剤M2に立ち易い錠剤が含まれる場合には、立ち易い錠剤に対する監査判定を行う際に、以下に説明する処理手順で第1の監査結果判定処理を行うようにすればよい。前提として、立ち易い錠剤の場合、薬剤マスタデータには、通常状態(立っていない状態)で撮影されたマスタ画像と立ち状態で撮影されたマスタ画像とが事前に登録される。
【0161】
まず、刻印なしの立ち易い錠剤の場合を説明する。刻印なしの立ち易い錠剤の場合、
図13のステップS203でNOと判定される。そしてステップS210の一致解析において、撮像・監査処理部803は、通常状態のマスタ画像を用いる。ステップS210において撮影画像が通常状態のマスタ画像と色及びサイズが一致した場合、撮像・監査処理部803は、ステップS211でYESと判定して監査結果を「正常」と判定する。ステップS210において撮影画像が通常状態のマスタ画像と少なくとも色が一致しなかった場合、撮像・監査処理部803は、ステップS211でNOと判定して監査結果を「不明」と判定する。また、本変形例で特有の処理として、ステップS210において撮影画像が通常状態のマスタ画像とサイズだけが一致しなかった場合、撮像・監査処理部803は、立ち状態のマスタ画像を用いて改めて一致解析を行う。この一致解析の結果、撮影画像が立ち状態のマスタ画像と色及びサイズが一致した場合には、監査結果を「正常」と判定する。一方、この一致解析の結果、撮影画像が立ち状態のマスタ画像と、色またはサイズの少なくとも何れかが一致しなかった場合には、監査結果を「不明」と判定する。
【0162】
次に、刻印ありの立ち易い錠剤の場合を説明する。
図13のステップS203で撮像画像が刻印あり(YES)と判定された場合、ステップS204の一致解析において、撮像・監査処理部803は、通常状態(立っていない状態)のマスタ画像を用いる。ステップS204以降は、前述した処理手順と同様である。一方、ステップS203で撮像画像が刻印なし(NO)と判定された場合、ステップS210の一致解析において、撮像・監査処理部803は、立ち状態のマスタ画像を用いる。ステップS210の一致解析において撮影画像が立ち状態のマスタ画像と色及びサイズが一致した場合、撮像・監査処理部803は、ステップS211でYESと判定して監査結果を「正常」ではなく「確認要」と判定する。監査結果を「確認要」とする理由は、一致解析において色及びサイズがマスタ画像と一致することを確認できたものの、刻印については一致するかの確認がとれていないためである。なお、設定によっては、ステップS210の一致解析において撮影画像が立ち状態のマスタ画像と色及びサイズが一致した(ステップS211でYESと判定した)場合、撮像・監査処理部803は、監査結果を「確認要」でなく「正常」と判定するようにしてもよい。
【0163】
以上のようにして第1の監査結果判定処理を行った結果、監査処理画面1900の表示によれば、錠剤m1、錠剤m2、カプセルm3は何れも「正常」と判定されたが、刻印ありで立ち易い錠剤m4については、3回の「確認要」の監査結果が発生したことが分かる。「確認要」と判定された錠剤m4の表示エリアは、斜線の網掛け1707によって強調表示されている。このような監査結果の表示が行われることで、薬剤師は、確認要とされた錠剤m4について、撮影画像を後述する
図22の監査修正画面2300に表示されるマスタ画像2301のようなマスタ画像と比較することにより、容易に確認及び修正が可能となる。
【0164】
また、第4例の監査処理画面1900の説明では、立ち易い錠剤について、複数のマスタ画像を用いて撮影画像との照合を行って、立ち状態にある錠剤への監査結果を決定することを説明したが、本実施形態に係る薬剤監査装置11におけるこのような処理方法は、立ち易い錠剤に限定されるものではなく、搬送路に載置された方向によってサイズまたは刻印の見え方が変わる薬剤全般に適用可能である。詳細な説明は省略するが、サイズが変わる場合は、それぞれの載置方法に応じたサイズのマスタ画像が用意されて、各マスタ画像との一致解析が行われるようにすればよい。
【0165】
また、搬送路に載置された方向によって撮影画像における刻印の見え方が変わる薬剤としては、刻印有りの非錠剤(カプセル)も考えられる。例えば、薬剤M2に刻印有りのカプセルm3が含まれ、カプセルm3についても刻印の一致を考慮した監査結果を判定したい場合には、
図13に示した第1の監査結果判定処理の変形例として、ステップS204及びステップS210以降の処理を以下のように変化させて処理を行えばよい。
【0166】
まず、前提として、カプセルの場合、薬剤マスタデータには、撮影時のカプセルの向きによって刻印の見え方が異なる複数のマスタ画像(カプセルの刻印が全て見えた状態で撮影されたマスタ画像、カプセルの刻印の一部が見えた状態で撮影されたマスタ画像、等)が事前に登録される。刻印が見えない状態のマスタ画像は登録されなくてよい。
【0167】
当該変形例では、第1の監査結果判定処理のステップS203において撮像画像が刻印あり(YES)と判定された場合、ステップS204の一致解析において、撮像・監査処理部803は、複数のマスタ画像の各々との一致解析を行い、いずれかのマスタ画像でサイズ、色、刻印が全て一致したと判定された場合、ステップS205でYESと判定し監査結果を「正常」と判定する。ステップS204の一致解析においてどのマスタ画像ともサイズ、色、刻印の全てが一致する結果が得られなかった場合、撮像・監査処理部803はステップS205でNOと判定し、ステップS207に進む。ステップS207において、撮像・監査処理部803は、ステップS204におけるいずれかのマスタ画像との解析結果に基づいて、サイズ及び色が一致して、刻印だけが近似であったかを確認する。そして、ステップS207で肯定結果が得られた場合、撮像・監査処理部803はYESと判定して監査結果を「確認要」と判定し、ステップS207で肯定結果が得られなかった場合、撮像・監査処理部803はNOと判定して監査結果を「不明」と判定する。
【0168】
また、ステップS203において撮像画像が刻印なし(NO)と判定された場合、ステップS210の一致解析において、撮像・監査処理部803は、複数のマスタ画像の各々との一致解析を行い、いずれかのマスタ画像でサイズ及び色が一致したと判定された場合、ステップS211でYESと判定し、監査結果を「正常」ではなく「確認要」と判定する。一方、ステップS210においていずれのマスタ画像を用いた一致解析でもサイズ及び色が一致する結果が得られなかった場合、撮像・監査処理部803はステップS211でNOと判定し、監査結果を「不明」と判定する。なお、設定によっては、いずれかのマスタ画像でサイズ及び色が一致したと判定した(ステップS211でYESと判定した)場合、監査結果を「確認要」でなく「正常」と判定するようにしてもよい。
【0169】
図19に示す第5例の監査処理画面2000は、監査対象の薬剤M2に立ち易い錠剤(錠剤m4)が含まれている場合の個々の薬剤mの監査結果の表示例であって、
図18に示した第4例との相違点として、刻印ありの薬剤(錠剤)について、刻印の一致率を表示するように構成されている。
【0170】
監査処理画面2000に監査結果が表示された個別の薬剤mは、刻印ありの薬剤m1(錠剤m1)、刻印なしの薬剤m2(錠剤m2)、カプセルの薬剤m3(カプセルm3)、及び、刻印ありで立ち易い薬剤m4(錠剤m4)であり、
図18に示した第4例と同様である。したがって、実行される第1の監査結果判定処理も第4例と同様であり、説明を省略する。
【0171】
監査結果処理部802は、監査処理画面2000を生成する際に、刻印ありの薬剤(錠剤)については、監査結果判定処理において刻印の一致を判定するために用いられた基準値(第1閾値)を薬剤名の欄に表示し、撮影画像における一致率を該当する表示エリアに表示する。この結果、監査処理画面2000には、刻印ありの錠剤m1及び刻印ありで立ち易い錠剤m4の欄に、基準値と一致率が示されている。
図19の場合、完全一致を100とした数値で一致率を表しているが、これに限るものではなく、例えば一致率をランク分けしてランクを表示する等であってもよい。
【0172】
なお、監査処理画面2000の錠剤m4の3,5,6日目の結果をみると、「確認要」の監査結果が示されているが、一致率は表示されていない。これは、撮影画像が立ち状態となっていて刻印を確認できなかった(一致率が0%)ことを意味している。立ち状態を理由とする以外の「確認要」の場合(例えば、監査処理画面1800の3日目の錠剤m1)は、刻印の一致率が表記される。なお、監査結果が「不明」であった場合は、一致率を表示する価値はさほど高くないことから、監査結果処理部802は、監査結果を「正常」または「確認要」と判定した刻印ありの撮影画像に対してのみ、一致率を表示するようにしてもよい。またさらに、監査結果が「確認要」である場合も、薬剤師による確認が行われるものとして、一致率を表示しないようにしてもよい。
【0173】
監査処理画面2000のように刻印ありの錠剤について基準値と一致率とが表示されることにより、確認要の錠剤の識別がさらに容易となるだけでなく、監査結果が「正常」となった錠剤においても、一致率の高低からマスタデータとの相違の度合いが分かり、マスタデータの妥当性(現在設定している基準値が適切か)を検証する参考にもなる。また、監査結果判定処理で一致判定に用いる基準値(閾値)は、薬剤ごとに異なる設定が可能であり、その変更も可能である。なお、薬剤名の欄には、基準値ではなく、過去の監査時における「正常(あるいは、一致率が算出された確認要の結果を含んでもよい)」結果の平均一致率を表示するようにしてもよく、この場合は、過去に「正常」と判定された監査結果と今回の監査結果とを比較することができる。
【0174】
図20に示す第6例の監査処理画面2100は、監査対象の薬剤M2を散開させて撮影した薬剤mの撮影画像のなかに、複数の薬剤が重なった画像が含まれている場合の監査結果の表示例である。この重なり状態の撮影画像に対する処理以外は、
図16~
図19に説明した各監査処理画面と同様であるため、説明を省略する。
【0175】
第6例の監査処理画面2100を表示可能な薬剤監査装置11においては、重なり状態の撮影画像に対する特別な処理として、撮像・監査処理部803が、監査結果判定処理において以下のような処理を実施する。具体的には、
図13のステップS204,S210(あるいは
図14のステップS303)の一致解析において、少なくとも全体のサイズが撮影画像とマスタ画像とで一致しない場合に、撮像・監査処理部803は、撮影画像の形状を詳細解析し、例えば、2以上の薬剤が重なり状態にあるときに想定される形状(言い換えると、1つの薬剤が取り得る形状(円形や多角形など)とは異なる形状)であった場合に、重なり状態であると識別することができる。撮像・監査処理部803は、重なり状態の撮影画像であると識別した場合、薬剤M2の薬剤処方データで指定された複数の薬剤mのうち、監査結果判定処理で正常結果が得られていない複数の薬剤の情報を参照して、当該複数の薬剤のそれぞれと、重なり状態の撮影画像を画像解析して識別される個々の薬剤との照合を行う。例えば、大きさが異なる2つの錠剤m1,m2が部分的に重なった状態であったとすると、前面に位置する錠剤(例えば錠剤m1)は、撮影画像にその全体形状が映っていることから、正常結果が得られていない薬剤のマスタ画像との照合(サイズ、色、あるいは刻印)が可能であり、その照合による一致率が所定の基準値を超えた場合には、当該薬剤が錠剤m1であると推定(一致率によっては特定)することができる。また、後面に位置する他方の錠剤も、撮影画像に映っている範囲で、正常結果が得られていない薬剤のマスタ画像との照合(少なくとも、サイズまたは色)が可能であり、照合による一致率が所定の基準値を超えた場合には、当該薬剤が錠剤m2であると推定することができる。このようにして、撮像・監査処理部803は、どの薬剤が重なっているかを推定する。
【0176】
そして、撮像・監査処理部803は、上記処理によって、重なり状態の撮影画像に含まれる複数の薬剤を個別に推定できた場合に、監査結果を「確認要」と判定する。このとき、重なり状態による「確認要」であることを示す情報とともに、どの薬剤の組合せによる重なり状態であるかの推定結果も出力する。なお、撮像・監査処理部803は、重なり状態と識別した撮影画像に対して、含まれる複数の薬剤を個別に推定できなかった場合には、監査結果を「不明」と判定する。
【0177】
そして、監査結果処理部802は、監査処理画面2000を生成する際に、監査結果判定処理で出力された上記情報を基に、監査処理画面2100において、重なり状態の撮影画像に含まれると推定された複数の薬剤のそれぞれの表示エリアに、当該撮影画像を表示し、「確認要」に相当する強調表示を行う。例えば、
図20の監査処理画面2100では、錠剤m1及び錠剤m2の2日目の監査結果欄に、2個の錠剤が重なった撮影画像が表示されて、その表示エリアが斜線の網掛け1707によって強調表示されている。これらの表示は、監査結果判定処理において、重なり状態の撮影画像に映った薬剤が錠剤m1と錠剤m2であると推定されて、監査結果が「確認要」と判定されたことを意味している。
【0178】
以上のように、監査処理画面2100のように重なり状態となっている薬剤について、推定される薬剤が「確認要」として表示されることにより、薬剤師は、対象の薬剤を容易に確認することが可能となる。
【0179】
図21に示す第7例の監査処理画面2100は、監査対象の薬剤M2に含まれる個々の薬剤mのなかに、酷似錠剤が含まれる場合の監査結果の表示例である。
【0180】
酷似錠剤とは、対象錠剤とサイズまたは色の少なくとも何れかが酷似している錠剤であり、予めマスタデータにおける対象錠剤に関する情報に、酷似錠剤の情報(酷似錠剤のマスタ画像)が紐付けて登録される。例えば、酷似関係にある錠剤のマスタデータ(基本データ)同士を紐付けるような登録方法であってもよい。また、マスタデータへの酷似錠剤の登録及び解除は、薬剤監査装置11の運用中に任意に設定可能としてよい。
【0181】
そして、監査結果処理部802は、監査処理画面2100を生成する際に、薬剤M2の監査結果として出力された個々の薬剤m1~m4についてマスタデータを参照する際に、酷似錠剤の登録がされているかを確認し、酷似錠剤が登録されている薬剤(錠剤)であった場合は、当該薬剤の表示欄に所定形式(例えば吹き出しやポップアップ等)で酷似錠剤が存在することの注意表示2201を表示する。具体的には監査処理画面2100の場合は、刻印ありで立ち易い錠剤m4の薬剤名の欄に、吹き出し形式で注意表示2201が表示されている。
【0182】
監査処理画面2100のように、酷似錠剤が存在する薬剤mに対して注意表示2201が表示されることで、薬剤師は注意喚起を受け取ることができ、仮に監査結果が「正常」となっていても、念のため目視確認をする等の対策を行うことが可能となる。
【0183】
以上、
図16~
図21を参照しながら、「正常」以外の監査結果が発生した場合の監査結果の様々な表示例について説明した。これらの表示例は、適宜組合せ可能であり、その組合せに応じて、監査結果判定処理の処理内容も適宜変更される。また、どのような表示形態を選択するかを、薬剤師などが選択できるように構成されてもよいし、ある表示形態で監査処理画面が表示された後に、薬剤師などの操作に応じて、別の表示形式による監査処理画面の表示に切り替え可能に構成されてもよい。
【0184】
図22は、監査修正画面の一例を示す図である。監査修正画面は、
図15~
図21に例示した監査処理画面において、一覧表示された任意の個別の錠剤の撮影画像をクリックしたときに表示される画面であり、
図22に示した監査修正画面2300はその具体例である。
【0185】
監査修正画面2300は、2行3列の表示欄を主として構成されている。詳しくは、画面左側の第1列に、薬剤監査装置11(撮像・監査処理部803)による識別結果として割り当てられた錠剤名(
図22では錠剤m1)を表示し、その右側の第2列に、当該錠剤のマスタ画像2301を表示する。なお、上記した錠剤名の割り当ては、詳しくは、監査撮像部500による薬剤Mの撮影画像から抽出した個々の薬剤mの撮影画像を撮像・監査処理部803が画像識別し、識別結果を薬剤処方データ及び薬剤マスタデータ(あるいは薬剤データベース904)を用いて比較することにより、該当するマスタ錠剤を判定し、マスタ錠剤の錠剤名を割り当てるものである。さらに、監査修正画面2300において、画面右側の第3列には、薬剤監査装置11(監査撮像部500)で撮影した個別の薬剤(この場合は錠剤m1)の拡大画像2302を表示する。なお、第2列及び第3列の画像表示は、上側の1行目に表面の画像が表示され、下側の2行目に裏面の画像が表示される。
【0186】
薬剤師は、このような監査修正画面2300を見て、「確認要」とされていた対象の錠剤について、マスタ画像2301と撮影画像(拡大画像2302)とが同一種類の個別錠剤であることを目視確認した上で、確定ボタン2304を押下し、監査結果を確定する。確定ボタン2304の押下によって監査結果を確定させると、例えば
図14の監査処理画面1700で「確認要」とされていた対象錠剤の強調表示が消える。なお、
図15,
図14の監査処理画面1600,1700で表示する撮影画像は、刻印や印刷などが存在し、目視にて他の錠剤との識別ができる面の画像のみを表示しているが、監査修正画面2300では、個別の錠剤mの詳細情報を確認するために、錠剤の表面と裏面の両方の撮影画像を表示している。
【0187】
なお、
図22の監査修正画面2300は、
図14の監査処理画面1700で「確認要」とされた3日目の錠剤m1(網掛け1706)を選択した場合に表示される監査修正画面であるが、監査処理画面1700で「不明」とされた錠剤(網掛け1707)を選択した場合も同様に、
図22の監査修正画面2300を使って修正を行うことができる。
【0188】
「不明」の個別錠剤の場合には、薬剤監査装置11(撮像・監査処理部803)による識別結果として割り当てられたマスタ錠剤がないため、監査修正画面2300の1列目及び2列名には、薬剤M2に含まれる個別の錠剤のなかで割り当てられていないマスタ錠剤を優先的に選択し、その錠剤名及びマスタ画像を表示する。なお、マスタ画像2301の表示欄の下部に設けられた矢印ボタン2303を押すことにより、薬剤M2の処方箋情報に含まれる他のマスタ錠剤の候補に、マスタ画像2301等の表示を切り替えることができる。
【0189】
薬剤師は、このような監査修正画面2300を見て、「不明」とされていた対象の錠剤について、マスタ画像2301と不明錠剤の撮影画像(拡大画像2302)とが同一種類の個別錠剤であることを目視確認した上で、確定ボタン2304を押下し、監査結果を確定する。確定ボタン2304の押下によって監査結果を確定させると、監査処理画面1700で「不明」とされていた対象錠剤の画像が目視確認された個別錠剤mの行に表示されるように修正され、当該対象錠剤の強調表示が消える。
【0190】
また、上記のように監査修正画面2300を使用しなくても、監査処理画面1700上で、「不明」とされた錠剤の画像を薬剤師が正しい個別錠剤の行にドラッグしてドロップする操作を行うことで、監査結果を修正することも可能である。
【0191】
そして、上記手順が実施されて、監査結果が「確認要」または「不明」とされた全ての個別錠剤について目視確認と監査結果の修正が完了すると、薬剤師は監査処理画面1700における監査結果確定ボタン1708を押下し、薬剤M2の薬剤師監査を完了させる。この結果、監査処理画面1700の表示は終了し、
図22に示した監査選択初期画面1500の表示に戻る。
【0192】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。薬剤Mの個数や形状等の条件や、薬剤師の処方薬剤の監査作業の条件で、薬剤監査装置11の構成や制御方法は様々な変形例が考えられる。
【0193】
例えば、薬剤Mの個数や形状等の条件で、個数が1個である場合や、同一球状の薬剤で自然に散開する場合には、監査前貯留部200や移載処理部300を備えなくても、薬剤監査装置11が受け入れた薬剤Mを直接、搬送監査処理部400の回転円盤401の円周載置板402に落下させることもできる。
【0194】
また例えば、薬剤によっては監査処理が不要の場合には、監査前貯留部200が薬剤を受け取った後に、搬送監査処理部400を経由することなく直接、監査後貯留部700に薬剤を移動させることが可能な機構を追加してもよい。このような機構は、例えば、
図5や
図6等で詳述した監査前貯留部200に代えて、
図23に示す監査前貯留部200Aを採用することによって実現できる。
【0195】
図23は、監査前貯留部200Aの構成例を示す図である。監査前貯留部200Aは、貯留ケース203と経路切替ガイド213とが付け替え可能に構成される。貯留ケース203及び経路切替ガイド213にそれぞれ手持ち部分(取っ手)を設けることにより、ユーザが簡易にこれらの付け替えを実施することができる。
図23(A)は、監査前貯留部200Aにおいて貯留ケース203が装着された状態を示しており、
図23(B)は、監査前貯留部200Aにおいて貯留ケース203を経路切替ガイド213に付け替えた状態を示している。
【0196】
監査前貯留部200Aは、
図23(A)のように貯留ケース203を装着している場合は、前述した監査前貯留部200と同様に、薬剤を貯留ケース203に一旦保持した後に移載処理部300に落下移動させることができる。一方、
図23(B)のように経路切替ガイド213を装着している場合は、経路切替ガイド213に投下された薬剤を、監査後貯留部700に直接に移動させることが可能となる。
【0197】
また、監査前貯留部200Aには、貯留ケース203と経路切替ガイド213のいずれが装着されているかを検知する経路切替ガイド検知センサ220が搭載されている。監査前貯留部200Aを採用した薬剤監査装置11では、監査前貯留部200Aに貯留ケース203が装着されている場合と経路切替ガイド213が装着されている場合とで、薬剤が監査後貯留部700に到達するまでの所要時間が異なるため、経路切替ガイド検知センサ220の検出結果に基づいて、搬送監査処理部400及び監査後貯留部700の動作の切り替えを行う。
【0198】
以上のように構成された監査前貯留部200Aでは、監査処理が不要な場合には監査前貯留部200Aに経路切替ガイド213を装着することで、搬送監査処理部400を経由しない分だけ薬剤が監査後貯留部700に達するまでの所要時間を短縮できるため、結果として分包の所要時間を短縮することができる。
【0199】
なお、監査前貯留部200Aは、上述したように、監査処理が不要な薬剤を取り扱う場合に効果を発揮するが、それ以外にも例えば、搬送監査処理部400または排出処理部600が故障して動作不能となった場合に、貯留ケース203を経路切替ガイド213に付け替えることにより、故障個所を経由せずに薬剤の搬送が可能となり、監査機能は縮退した状態にはなるが、薬剤に対する処理を継続できるという効果が得られる。
【0200】
また例えば、
図7等の説明では、搬送監査処理部400における回転円盤401の円周載置板402を4象限に分けて構成したが、薬剤Mの個数が少なければ6~10象限等に細分化してもよいし、あるいは簡素化のために、象限の分割数を減らしたり象限を分けないようにしてもよい。
【0201】
一方、薬剤Mの個数が多い場合(例えば10個以上)や大きい薬剤が含まれる場合のように、個別薬剤の監査が難しい場合には、監査全体処理部801が、薬剤処方データに基づいて、薬剤監査装置11が上位装置から受け取る錠剤の種類と数量とを把握し、上位装置とその薬剤の投入タイミング、及び繰り返し動作の周期、回数を可変に取扱うようにしてもよい。例えば、薬剤監査装置11の場合、監査前貯留部200や搬送監査処理部400等は薬剤を貯留できる容積が予め決まっており、薬剤処方データに記載されている薬剤が一度に薬剤監査装置11へ投入できない場合もある。このような場合、上位装置との調整によって薬剤の投入回数を2回以上に分割し、回転円盤401では複数の区画を使って処理する等により、処理方法を調整することができる。また、薬剤の形状と組み合わせによっては、重なりやすい等の特徴をもつものもあり、それらの薬剤を薬剤監査装置11へ別々に投入する等の調整を行うこともできる。
【0202】
また、薬剤の監査性能を向上させるために、薬剤監査に失敗した場合には当該薬剤を回転円盤401から排出せず、もう1周、回転円盤401上に保持して、再度撮影して監査に回すように構成してもよい。
【0203】
以上のような実施例1またはその変形例によれば、以下の(1)~(4)の特徴を有する薬剤監査装置及び薬剤監査方法が提供される。
(1)薬剤Mが形状の異なる多数の薬剤の組み合わせの場合、例えば、10種類の形状が異なる錠剤のような場合にも、細長の搬送空間において縦列(搬送路に沿って略一列)に、かつ、重ならない状態(散開状態)で個々の薬剤を移載することにより、確実に個々の薬剤の上下表面を撮像でき、高精細な画像を取得することができる。かくして、高精度あるいは高確率に監査を実行可能な薬剤監査装置及び薬剤監査方法を提供できる。
(2)薬剤Mが形状の異なる多数の薬剤の組み合わせの場合にも、回転円盤上の細長の搬送空間に薬剤Mを移載し、一定速度で搬送しながら、複数の薬剤を撮像した画像から薬剤を個々に分割して監査することで、設置するカメラの視野を狭くできるため、監査処理(画像の切り出し)を小型、かつ高速化することが容易となる。かくして、小型で高速処理が可能な薬剤監査装置及び薬剤監査方法を提供できる。
(3)薬剤Mが形状の異なる多数の薬剤の組み合わせの場合にも、回転円盤上の細長の搬送空間が約360度回転して監査処理を行うことで、一連の、往復動作のない、一方向の動作によって、先行の薬剤と後続の薬剤との区分けを明確にすることができる。かくして、複数の連続した薬剤の処理に好適な薬剤監査装置及び薬剤監査方法を提供できる。
(4)水平な回転円盤上の細長の搬送空間が約360度回転して監査処理を行うことで、監査前貯留部と監査後貯留部とを、近傍かつ、高低差の少ない配置とすることができるので、高さ寸法が小さく、薬剤の投入部と排出部が近傍にある小型化した薬剤監査装置を提供できる。
薬剤監査装置12は、監査前貯留部250、移載処理部350、搬送監査処理部450、監査撮像部550、排出処理部650、及び監査後貯留部750と、不図示の監査制御部とを備えて構成される。実施例1と同様に、各構成が有する機能概要は、薬剤監査装置10における同じ名称の構成の機能に対応する。また、以降の説明において、実施例1と共通する構成や制御動作については、その説明を省略する。
以上のような実施例2によれば、薬剤Mが形状の異なる多数の薬剤の組み合わせの場合、例えば、10種類の形状が異なる錠剤のような場合にも、実施例1と同様な細長の搬送空間において縦列(搬送路に沿って略一列)に、かつ、重ならない状態(散開状態)で個々の薬剤を移載することにより、高精細な画像を取得することができる。かくして、高精度あるいは高確率に監査を実行可能な薬剤監査装置を小型の装置で提供することができる。
なお、実施例2の薬剤監査装置12では、搬送監査処理部450の実質的な構成は、薬剤Mの載置面となる平板451とその近傍空間だけであるから、これらを搬送監査処理部450の構成とせずに、例えば排出処理部650の一構成としてもよい。このように構成する場合、薬剤監査装置12は、搬送監査処理部450を備える必要がなくなる。
また、実施例2において、連続する複数の薬剤Mを高速に処理するためには、薬剤を移動させる機構だけでなく、監査撮像部550を高速で移動させるようにしてもよい。
なお、上記した各実施例は本発明を分かりやすく説明する為に詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置換することも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。また、各構成を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。