(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121833
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】ヒンジ
(51)【国際特許分類】
E05D 3/14 20060101AFI20240902BHJP
F16C 11/04 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
E05D3/14 Z
F16C11/04 Z
F16C11/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029010
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000107572
【氏名又は名称】スガツネ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正男
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 圭
【テーマコード(参考)】
3J105
【Fターム(参考)】
3J105AA05
3J105AB24
3J105AC01
3J105AC10
(57)【要約】
【課題】摩擦トルクを変化させることができるヒンジを提供する。
【解決手段】ヒンジは、第1ヒンジ本体1と、第1ヒンジ本体1に対して仮想軸線に関して相対回転可能な第2ヒンジ本体2と、第2ヒンジ本体2に一端部が回転可能に連結される第1アーム11と、第1ヒンジ本体1に一端部が回転可能に連結されると共に、第1アーム11に回転可能に連結される第2アーム12と、を備える。第1アーム11と第2アーム12の連結部28に、第1アーム11に対する第2アーム12の相対回転に応じて摩擦トルクを変化させるカム4を設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ヒンジ本体と、
前記第1ヒンジ本体に対して仮想軸線に関して相対回転可能な第2ヒンジ本体と、
前記第2ヒンジ本体に一端部が回転可能に連結される第1アームと、
前記第1ヒンジ本体に一端部が回転可能に連結されると共に、前記第1アームに回転可能に連結される第2アームと、を備えるヒンジにおいて、
前記第1アームと前記第2アームの連結部に、前記第1アームに対する前記第2アームの相対回転に応じて摩擦トルクを変化させるカムを設けるヒンジ。
【請求項2】
前記カムが前記第1アーム及び前記第2アームと別体であることを特徴とする請求項1に記載のヒンジ。
【請求項3】
前記第1アーム又は前記第2アームの一方が連結軸に回転可能に嵌合し、
前記第1アーム又は前記第2アームの他方が前記連結軸に回転不可能に嵌合することを特徴とする請求項1又は2に記載のヒンジ。
【請求項4】
前記カムが前記連結軸に回転不可能に嵌合することを特徴とする請求項3に記載のヒンジ。
【請求項5】
前記第1アーム又は前記第2アームには、前記カムに設けた突部が移動可能な溝が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のヒンジ。
【請求項6】
前記第1アームと前記第2アームとの間に摩擦板を介在させることを特徴とする請求項1又は2に記載のヒンジ。
【請求項7】
前記ヒンジにキャッチ機構を設け、
前記第2ヒンジ本体の閉じ位置近傍及び/又は開き位置近傍において、前記カムが摩擦トルクを減少させることを特徴とする請求項1又は2に記載のヒンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1ヒンジ本体、第2ヒンジ本体、第1アーム、第2アームを備えるヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒンジの一種として、第1ヒンジ本体、第2ヒンジ本体、第1アーム、第2アームを備えるヒンジ装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この種のヒンジでは、第1アームの一端部が第2ヒンジ本体に回転可能に連結される。第2アームの一端部が第1ヒンジ本体に回転可能に連結される。第1アームと第2アームが互いに回転可能に連結される。そして、第2ヒンジ本体が第1ヒンジ本体に対して仮想軸線に関して相対回転する。
【0004】
なお、第1アームの他端部は、第1ヒンジ本体に回転可能にかつスライド可能に連結される場合と、補助リンクを介して連結される場合がある。同様に、第2アームの他端部も第2ヒンジ本体に回転可能にかつスライド可能に連結される場合と、補助リンクを介して連結される場合がある。
【0005】
第1ヒンジ本体が筐体、枠等の本体に取り付けられる。第2ヒンジ本体が蓋、扉等の可動体に取り付けられる。第2ヒンジ本体が第1ヒンジ本体に対して仮想軸線に関して相対回転するので、可動体が本体に対して仮想軸線に関して相対回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この種のヒンジにおいて、任意の開き位置に可動体を保持するために、摩擦トルクを発生させる場合がある。この場合、摩擦トルクを変化させることが望まれる。例えばヒンジにキャッチ機構を設けるとき、可動体の口開きを防止するために、可動体の閉じ位置近傍で摩擦トルクを低減させることが望まれる。また、可動体の開き位置に応じて可動体に働くモーメントが変化するとき、可動体に働くモーメントに応じて摩擦トルクを変化させることが望まれる。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、摩擦トルクを変化させることができるヒンジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、第1ヒンジ本体と、前記第1ヒンジ本体に対して仮想軸線に関して相対回転可能な第2ヒンジ本体と、前記第2ヒンジ本体に一端部が回転可能に連結される第1アームと、前記第1ヒンジ本体に一端部が回転可能に連結されると共に、前記第1アームに回転可能に連結される第2アームと、を備えるヒンジにおいて、前記第1アームと前記第2アームの連結部に、前記第1アームに対する前記第2アームの相対回転に応じて摩擦トルクを変化させるカムを設けるヒンジである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カムによって摩擦トルクを変化させることができる。また、第1アームと第2アームは、第1ヒンジ本体と第2ヒンジ本体に比べて軸方向に移動可能な状態にある。第1アームと第2アームの連結部にカムを設けるので、変化させた摩擦トルクを安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態のヒンジの斜視図である。
【
図3】
図2の反対側から見た本実施形態のヒンジの分解斜視図である。
【
図4】本実施形態のヒンジの動作図である(
図4(a)は第2ヒンジ本体の閉じ位置を示し、
図4(b)は90°開き位置を示し、
図4(c)は150°開き位置を示す)。
【
図5】第1アームの溝を示す図である(
図5(a)は第1アームの側面図を示し、
図5(b)は溝の拡大図を示し、
図5(c)は周方向に沿った溝の断面図を示す)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態のヒンジを詳細に説明する。ただし、本発明のヒンジは種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のヒンジは、基本構成として、第1ヒンジ本体1、第2ヒンジ本体2、第1アーム11、第2アーム12を備える。第1ヒンジ本体1は、筐体、枠等の本体に取り付けられる。第2ヒンジ本体2は、蓋、扉等の可動体に取り付けられる。第2ヒンジ本体2は、第1ヒンジ本体1に対して、
図4に示す閉じ位置(0°)から開き位置(150°)まで仮想軸線に関して相対回転する。
【0014】
図2に示すように、ヒンジは、上記の基本構成の他、摩擦力を発生させる摩擦板3、摩擦力を変化させるカム4、キャッチ機構30、受け部材40を備える。以下にこれらを順番に説明する。
(ヒンジの基本構成)
【0015】
図2に示すように、第1アーム11は複数例えば2つ設けられる。第1アーム11は1つでもよい。第1アーム11の一端部は、軸5を介して第2ヒンジ本体2に回転可能に連結される。第1アーム11の他端部は、スライド軸6を介して第1ヒンジ本体1に回転可能にかつスライド可能に連結される。スライド軸6は、第1ヒンジ本体1のガイド溝9をスライド可能である。
【0016】
同様に、第2アーム12は複数例えば2つ設けられる。第2アーム12は1つでもよい。第2アーム12の一端部は、軸7を介して第1ヒンジ本体1に回転可能に連結される。第2アーム12の他端部は、スライド軸8を介して第2ヒンジ本体2に回転可能にかつスライド可能に連結される。スライド軸8は、第2ヒンジ本体2のガイド溝10をスライド可能である。第1アーム11と第2アーム12は交互に配置される(
図1参照)。
【0017】
第1アーム11と第2アーム12は、連結軸13を介して互いに回転可能に連結される。第1アーム11は、連結軸13に回転可能に嵌合する。連結軸13の一端部には、鍔部13cが形成される。連結軸13の外周には、一対の平坦部13bと一対の円弧部13aが周方向に交互に形成される。第1アーム11の屈曲部11bには、連結軸13が嵌まる穴14が形成される。穴14は、連結軸13の円弧部13aの外形に合わせた円状である。
【0018】
第2アーム12は、連結軸13に回転不可能に嵌合する。第2アーム12の屈曲部12bには、連結軸13が嵌まる穴15が形成される。穴15は、連結軸13の外形に合わせた形状であり、一対の平坦部と一対の円弧部を円周方向に交互に有する。軸5~8、連結軸13は、互いに平行である。なお、2つの第2アーム12の穴15の一方は、円状でもよい。
【0019】
以下に、第1ヒンジ本体1、第2ヒンジ本体2、第1アーム11、第2アーム12の構成を詳述する。
図2に示すように、第1ヒンジ本体1は、筐体等の本体に固定される底壁1aと、この底壁1aの両側縁から突出する一対の側壁1bと、を有する。一対の側壁1bには、第2ヒンジ本体2に近い端部に軸7が嵌まる穴16が形成される。一対の側壁1bには、スライド軸6がスライド可能に嵌まるガイド溝9が形成される。ガイド溝9は円弧状であるが、直線状でもよい。
【0020】
第2ヒンジ本体2は、可動体に固定される底壁2aと、この底壁2aの両側縁から突出する一対の側壁2bと、を有する。一対の側壁2bには、第1ヒンジ本体1に近い端部に軸5が嵌まる穴17が形成される。一対の側壁2bには、スライド軸8がスライド可能に嵌まるガイド溝10が形成される。ガイド溝10は円弧状であるが、直線状でもよい。
【0021】
2つの第1アーム11は、実質的に同一形状である。第1アーム11は、屈曲しており、短尺部11aと、長尺部11cと、屈曲部11bと、を有する。短尺部11aの先端部には、軸5が嵌まる穴18が形成される。短尺部11aは、軸5を介して第2ヒンジ本体2に回転可能に連結される。長尺部11cは、第1ヒンジ本体1の側壁1b間に配置される。長尺部11cの先端部には、スライド軸6が嵌まる穴19が形成される。スライド軸6の一端部には、鍔部6aが形成されており、スライド軸6の他端部には、ワッシャ20が固定される。鍔部6aとワッシャ20は、第1ヒンジ本体1の一対の側壁1bの外面に配置される。屈曲部11bには、連結軸13が嵌まる穴14が形成される。
【0022】
2つの第2アーム12は、実質的に同一形状である。第2アーム12は、屈曲しており、短尺部12aと、長尺部12cと、屈曲部12bと、を有する。短尺部12aの先端部には、軸7が嵌まる穴21が形成される。短尺部12aは、軸7を介して第1ヒンジ本体1に回転可能に連結される。長尺部12cは、第2ヒンジ本体2の側壁2b間に配置される。長尺部12cの先端部には、スライド軸8が嵌まる穴22が形成される。スライド軸8の一端部には、鍔部8aが形成されており、スライド軸8の他端部には、ワッシャ23が固定される。鍔部8aとワッシャ23は、第2ヒンジ本体2の一対の側壁2bの外面に配置される。
【0023】
図4に示すように、第2ヒンジ本体2を第1ヒンジ本体1に対して閉じ位置から開き位置まで回転させる際、第2アーム12が第1ヒンジ本体1に対して軸7を中心に相対回転し、第1アーム11が第2ヒンジ本体2に対して軸5を中心に相対回転する。そして、第1アーム11と第2アーム12が互いに連結軸13を中心に相対回転する。その際、スライド軸6がガイド溝9に沿ってスライドし、スライド軸8がガイド溝10に沿ってスライドする。第1ヒンジ本体1に対する第2ヒンジ本体2の仮想軸線に関する相対回転は、第1アーム11と第2アーム12によって一義的に決定される。
(摩擦板)
【0024】
図2に示すように、第1アーム11と第2アーム12との間には、摩擦板3が介在する。この実施形態では、2つの第1アーム11と2つの第2アーム12との間には、3枚の摩擦板3が介在する。摩擦板3は、略円形である。摩擦板3には、連結軸13が通る貫通穴3aが形成される。摩擦板3は、連結軸13によって支持される。
【0025】
連結軸13の鍔部13cと第2アーム12との間には、弾性体24が配置される。弾性体24は、例えば2枚の皿ばねを備える。第1アーム11、第2アーム12、摩擦板3が弾性体24による押圧力をもって互いに接する。このため、第1アーム11に対して第2アーム12が相対回転する際、摩擦トルクが発生する。この摩擦トルクによって、可動体を任意の開き位置に保持することができる。可動体の開き位置を変えるときには、摩擦トルクに打ち勝つトルクを付与すればよい。
(カム)
【0026】
図1に示すように、第1アーム11と第2アーム12の連結部28には、第1アーム11に対する第2アーム12の相対回転に応じて摩擦トルクを変化させるカム4が設けられる。本実施形態のカム4は、第1アーム11及び第2アーム12と別体であり、第1アーム11と第2アーム12を連結軸13の軸方向に移動させて摩擦トルクを変化させる。
【0027】
図2に示すように、カム4は、連結軸13の一端部に固定されて、連結軸13と共に回転する。カム4は、円盤状であり、連結軸13に嵌まる穴4aを有する。穴4aは、連結軸13の外形に合わせた形状であり、一対の平坦部と一対の円弧部を有する。カム4は、連結軸13に回転不可能に嵌合する。弾性体24、第1アーム11、摩擦板3、第2アーム12は、連結軸13の鍔部13cとカム4との間に挟まれる。
【0028】
カム4の第1アーム11との対向面には、複数の例えば4つの略半球状の凹部4bが形成される。4つの凹部4bは、カム4の円周方向に90°の間隔を空けて等配される。凹部4bには、ボール25が収容される。ボール25は、カム4の対向面から突出しており、カム4の突部25を構成する。なお、カム4に突部25を一体に形成してもよい。
【0029】
図3に示すように、第1アーム11のカム4との対向面には、カム4の突部25が移動する溝27が形成される。溝27の深さは、円周方向に変化する。第1アーム11に対して第2アーム12を相対回転させると、カム4が連結軸13と共に第1アーム11に対して相対回転し、カム4の突部25が溝27に沿って移動する。このため、カム4の作用によって、第1アーム11と第2アーム12が連結軸13の軸方向に移動する。ここで、カム4の突部25が溝27の浅い側に移動すると、弾性体24による押圧力が大きくなり、摩擦トルクが増大する。一方、カム4の突部25が溝27の深い側に移動すると、弾性体24による押圧力が小さくなり、摩擦トルクが低減する。
【0030】
以下に、溝27の構成を詳述する。
図3に示すように、溝27の直角断面は、略円弧状である。
図5(b)に示すように、溝27は、軸方向視でリング状である。溝27は、中心角が90°の単位溝27aを4つ組み合わせて構成される。各単位溝27aにカム4の各突部25が接する。
【0031】
単位溝27aは、周方向に深さが一定のフラット部C、深さが底部Aに向かって徐々に深くなる傾斜部B、深さが最も深い底部Aを有する。第2ヒンジ本体2が開き位置近傍にあるとき、カム4の突部25はフラット部Cに位置し、発生する摩擦トルクは最大になる。このため、可動体に働くモーメントが大きくても可動体を一定位置に保持できる。
【0032】
第2ヒンジ本体2を開き位置から閉じ位置に向かって回転させると、カム4の突部25はフラット部Cから傾斜部Bに移行する。傾斜部Bでは、徐々に溝が深くなるので、発生する摩擦トルクは徐々に小さくなる。また、傾斜部Bでは、弾性体24の押圧力によって閉じ方向に回転モーメントが働く。このため、利用者が可動体を閉じ易くなり、操作性が向上するし、可動体の口開きを防止することができる。
【0033】
第2ヒンジ本体2を閉じ位置近傍まで回転させると、カム4の突部25は傾斜部Bから底部Aに移行する。底部Aは、深さが最も深いので、発生する摩擦トルクが最小になる。このため、摩擦トルクがキャッチ機構30の妨げになるのを防止でき、可動体の口開きを防止することができる。
【0034】
なお、
図5には、わかり易くするために溝27の深さを誇張して示しているが、実際には、
図6に示すように、フラット部Cから底部Aに至るまでの溝27の深さの変化は僅かである。このため、第1アーム11と第2アーム12の軸方向の移動量も僅かである。
【0035】
図7は、溝27の深さの他の例を示す。
図7(a)は、傾斜部Bが2段傾斜の例を示す。
図7(b)は、傾斜部Bにフラット部B1を設けた例を示す。
図7(c)は、傾斜部Bが上に向かって凸の円弧状の例を示す。
図7(d)は、傾斜部Bにクリック位置として機能する凹部B2を設けた例を示す。これらの例に示すように、溝27の深さは、ヒンジの用途に合わせて適宜変更することができる。
(キャッチ機構)
【0036】
図4に示すように、キャッチ機構30は、閉じ位置にある第2ヒンジ本体2に第2アーム12を介して閉じ方向の付勢力を付与する。
図2に示すように、キャッチ機構30は、2つのトーションばね31等の弾性体と、支持ピン32と、押圧ピン33と、を備える。トーションばね31は、コイル部31aと、コイル部31aに連なる係止部31bと、コイル部31aに連なる押圧部31cと、を有する。コイル部31aに挿入された支持ピン32を第1ヒンジ本体1の側壁1bの支持穴34に挿入することにより、トーションばね31が第1ヒンジ本体1に支持される。第1ヒンジ本体1の側壁1bには、穴16に接近離間する方法に延びる長穴35が形成される。長穴35には、段付きピンからなる押圧ピン33が長穴35に沿ってスライド可能に挿入される。
【0037】
図4(a)に示すように、トーションばね31の係止部31bは、第1ヒンジ本体1の底壁1aに係止される。押圧ピン33は、トーションばね31によって第2アーム12の一端部の周面に付勢される。
【0038】
第2アーム12の一端部の周面はカム面になっており、図中時計回りに徐々に径が増大する第1カム領域34aと、図中時計回りに徐々に径が減少する第2カム領域34bと、を有する。第2ヒンジ本体2が閉じ位置(0°)~20°の範囲内にあるときは、押圧ピン33が第1カム領域34aを押すので、第2アーム12に閉じ方向のトルクが付与される。一方、第2ヒンジ本体2が20°~開き位置(150°)の範囲内にあるとき、押圧ピン33が第2カム領域34bを押すので、第2アーム12に開き方向のトルクが付与される。ただし、このトルクは、摩擦板3による摩擦トルクより小さいので、第2ヒンジ本体2は0°~150°の任意の開き位置を保つ。
(受け部材)
【0039】
ガイド溝9,10においてスライド軸6,8をスライドさせるために、ガイド溝9,10の幅はスライド軸6,8の径よりも僅かに大きくなっている。このため、第2ヒンジ本体2を開閉する際に、ガイド溝9,10とスライド軸6,8とのクリアランスに起因したがたつきが発生する。これを防止するために、ガイド溝9,10とスライド軸6,8とのクリアランスを無くす受け部材40が設けられる。
【0040】
第1ヒンジ本体1に設けられる受け部材40は、樹脂製である。受け部材40は、両側面に凸部40aを有しており、この凸部40aを第1ヒンジ本体1の側壁1bの穴41に装着することにより、第1ヒンジ本体1に固定される。受け部材40は、ガイド溝9に対応する形状の摺接面40bを有する。スライド軸6がガイド溝9に沿ってスライドする際に、この摺接面40bに第1アーム11の他端部の周面が摺接する。受け部材40の弾性により、スライド軸6がガイド溝9の側縁に押圧力を持って摺接するので、ガイド溝9とスライド軸6とのクリアランスを無くすことができる。第2ヒンジ本体2に設けられる受け部材40も同様である。
【0041】
以上に本実施形態のヒンジの構成を説明した。本実施形態のヒンジによれば、以下の効果を奏する。
【0042】
第1アーム11と第2アーム12の連結部28にカム4を設けるので、カム4によって摩擦トルクを変化させることができる。また、第1アーム11と第2アーム12は、第1ヒンジ本体1と第2ヒンジ本体2に比べて軸方向に移動可能な状態にある。第1アーム11と第2アーム12の連結部28にカム4を設けるので、変化させた摩擦トルクを安定させることができる。
【0043】
カム4が第1アーム11及び第2アーム12と別体なので、第1アーム11及び第2アーム12の製造が容易になる。
【0044】
第1アーム11が連結軸13に回転可能に嵌合し、第2アーム12が連結軸13に回転不可能に嵌合するので、連結軸13を利用して、カム4を作動させることができる。
【0045】
カム4が連結軸13に回転不可能に嵌合するので、連結軸13と共にカム4を回転させることができる。
【0046】
第1アーム11にカム4の突部25が移動可能な溝27を形成するので、部品点数を少なくすることができる。
【0047】
第1アーム11と第2アーム12との間に摩擦板3が介在するので、摩擦トルクを安定させることができる。
【0048】
ヒンジにキャッチ機構30を設け、第2ヒンジ本体2の閉じ位置近傍において摩擦トルクを減少させるので、可動体の口開きを防止することができる。
【0049】
なお、本発明のヒンジは上記実施形態に具現化するのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で他の実施形態に具現化可能である。
【0050】
例えば上記実施形態では、第1アームの他端部が第1ヒンジ本体にスライド可能かつ回転可能に連結されているが、補助リンクを介して連結されてもよい。すなわち、第1アームの他端部に補助リンクの一端部を回転可能に連結し、補助リンクの他端部を第1ヒンジ本体に回転可能に連結してもよい。第2アームも同様である。
【0051】
上記実施形態では、第1アーム及び第2アームとカムが別体であるが、第1アーム又は第2アームの一方にカムとしての突部を一体に形成し、第1アーム又は第2アームの他方にこの突部が移動可能な溝を形成してもよい。また、第1アーム及び第2アームの一方にカムとしての突部を一体に形成し、第1アーム又は第2アームの他方に溝を形成しなくてもよいし、第1アーム及び第2アームの双方にカムとしての突部を一体に形成してもよい。
【0052】
上記実施形態では、カムが第1アーム及び第2アームを軸方向に移動させているが、第1アーム又は第2アームの一方を軸方向に移動させてもよい。
【0053】
上記実施形態では、第1アームと第2アームとの間に摩擦板を介在させているが、摩擦板を介在させることなく、第1アームと第2アームを直接的に接触させ、これにより摩擦トルクを発生するようにしてもよい。
【0054】
上記実施形態では、キャッチ機構が閉じ位置にある第2ヒンジ本体に閉じ方向の付勢力を付与しているが、開き位置にある第2ヒンジ本体に開き方向の付勢力を付与してもよいし、開き位置及び閉じ位置の双方で付勢力を付与するようにしてもよい。また、キャッチ機構を省略してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…第1ヒンジ本体
2…第2ヒンジ本体
3…摩擦板
4…カム
11…第1アーム
12…第2アーム
13…連結軸
25…突部
27…溝
28…連結部
30…キャッチ機構