(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121838
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】部品実装システム、データ構造、メンテナンス支援装置、ならびにメンテナンス支援方法
(51)【国際特許分類】
H05K 13/00 20060101AFI20240902BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
H05K13/00 Z
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029027
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】相良 博喜
(72)【発明者】
【氏名】工藤 良太
(72)【発明者】
【氏名】丸田 晟央
(72)【発明者】
【氏名】前園 尚
【テーマコード(参考)】
3C100
5E353
【Fターム(参考)】
3C100AA57
3C100AA58
3C100AA63
3C100BB13
3C100BB15
3C100BB33
3C100EE07
5E353AA02
5E353CC01
5E353CC21
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5E353EE54
5E353GG01
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5E353LL01
5E353LL03
5E353LL04
5E353LL06
5E353LL07
5E353QQ08
(57)【要約】
【課題】作業設備に対するメンテナンス作業を適切に改善することができる部品実装システム、データ構造、メンテナンス支援装置、ならびにメンテナンス支援方法を提供する。
【解決手段】メンテナンス支援方法は、基板に対して作業を行う作業設備の設備要素に関するメンテナンスの作業履歴情報を含む設備要素情報を取得し(ST1、ST7)、取得した設備要素情報に基づいて、設備要素に対するメンテナンスの効果が小さくなった要因を特定し(ST10)、特定した要因に対応する改善内容を出力する(ST11)。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して作業を行う作業設備を含む部品実装ラインと、
メンテナンス支援装置と、を備え、
前記メンテナンス支援装置は、
前記作業設備の設備要素に関するメンテナンスの作業履歴情報を含む設備要素情報を取得する取得部と、
取得した前記設備要素情報に基づいて、前記設備要素に対するメンテナンスの効果が小さくなった要因を特定する要因特定部と、
特定した前記要因に対応する改善内容を出力する出力部と、を有する、部品実装システム。
【請求項2】
前記メンテナンスの効果は、
メンテナンスの間隔、前のメンテナンスからの前記設備要素の使用回数、前のメンテナンスからの前記設備要素の使用時間、メンテナンスによって回復した前記設備要素の状態量の、少なくともいずれかを含む、請求項1に記載の部品実装システム。
【請求項3】
前記設備要素情報は、メンテナンスの作業を行った作業者、メンテナンスの対象の設備要素とメンテナンスに用いられる補修部材を含む機械、メンテナンスの方法の3項目の中の少なくとも1項目に関する情報を含む、請求項1に記載の部品実装システム。
【請求項4】
前記作業履歴情報は、前記設備要素のメンテナンスの作業を行った作業者に関する作業者情報と、前記作業者の勤務に関する勤務情報と、作業日時に関する作業日時情報と、前記メンテナンスの作業手順と、前記設備要素の補修に用いられる補修部材に関する補修部材情報の中の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の部品実装システム。
【請求項5】
前記設備要素情報は、前記部品実装ラインを特定するライン識別情報、前記作業設備を特定する設備識別情報と、前記設備要素の種類を特定する種別情報の中の少なくとも一つを含む、請求項1に記載の部品実装システム。
【請求項6】
前記設備要素情報は、前記設備要素の使用状況に関する使用状況情報を含む、請求項1に記載の部品実装システム。
【請求項7】
前記要因特定部は、前記3項目の中の少なくとも1項目に関する前記要因を特定する、請求項3に記載の部品実装システム。
【請求項8】
前記要因特定部は、複数の前記要因を特定し、
前記複数の要因の各々は、前記3項目のいずれかに関する、請求項3に記載の部品実装システム。
【請求項9】
前記要因特定部は、取得した前記設備要素情報を基にした重回帰分析によって前記要因を特定する、請求項1に記載の部品実装システム。
【請求項10】
前記出力部は、特定した前記要因が前記作業者に関する場合、前記作業者を含む複数の作業者についてスキルのばらつきがないかの確認を促す旨のメッセージを出力する、請求項4に記載の部品実装システム。
【請求項11】
前記勤務情報は、前記作業者のシフト勤務に関する情報を含み、
前記出力部は、特定した前記要因が前記シフト勤務に関する場合、シフト毎に作業環境が異ならないかの確認を促す旨のメッセージを出力する、請求項4に記載の部品実装システム。
【請求項12】
前記作業日時は、前記メンテナンスの作業が行われた曜日に関する情報を含み、
前記出力部は、特定した前記要因が前記作業日時に関する場合、特定の時間帯または特定の曜日に問題が起きていないかの確認を促す旨のメッセージを出力する、請求項4に記載の部品実装システム。
【請求項13】
前記出力部は、特定した前記要因が前記作業手順に関する場合、前記作業手順に問題がないかの確認を促す旨のメッセージを出力する、請求項4に記載の部品実装システム。
【請求項14】
前記出力部は、特定した前記要因が前記部品実装ラインに関する場合、前記部品実装ラインを含む複数の前記部品実装ラインについて運用のばらつきがないかの確認を促す旨のメッセージを出力する、請求項5に記載の部品実装システム。
【請求項15】
前記出力部は、特定した前記要因が前記作業設備に関する場合、前記作業設備の状態に問題がないかの確認を促す旨のメッセージを出力する、請求項5に記載の部品実装システム。
【請求項16】
前記出力部は、特定した前記要因が前記補修部材に関する場合、前記補修部材の品質に問題がないかの確認を促す旨のメッセージを出力する、請求項4に記載の部品実装システム。
【請求項17】
基板に対して作業を行う作業設備を含む部品実装ラインとメンテナンス支援装置とを有する部品実装システムにおいて用いられるデータ構造であって、
前記作業設備の設備要素に関するメンテナンスの作業履歴情報と前記作業履歴情報から作成されたメンテナンスの効果を含み、
前記メンテナンス支援装置が、
前記設備要素に対する前記メンテナンスの効果が小さくなった要因を特定する処理に用いられる、データ構造。
【請求項18】
前記メンテナンスの効果は、
メンテナンスの間隔、前のメンテナンスからの前記設備要素の使用回数、前のメンテナンスからの前記設備要素の使用時間、メンテナンスによって回復した前記設備要素の状態量の、少なくともいずれかを含む、請求項17に記載のデータ構造。
【請求項19】
前記作業履歴情報は、前記設備要素のメンテナンスの作業を行った作業者に関する作業者情報と、前記作業者の勤務に関する勤務情報と、作業日時に関する作業日時情報と、前記メンテナンスの作業手順と、前記設備要素の補修に用いられる補修部材に関する補修部材情報の中の少なくとも1つを含む、請求項17に記載のデータ構造。
【請求項20】
前記データ構造は、前記部品実装ラインを特定するライン識別情報、前記作業設備を特定する設備識別情報と、前記設備要素の種類を特定する種別情報の中の少なくとも一つを含む、請求項17に記載のデータ構造。
【請求項21】
前記データ構造は、前記設備要素の使用状況に関する使用状況情報を含む、請求項17に記載のデータ構造。
【請求項22】
基板に対して作業を行う作業設備の設備要素に関するメンテナンスの作業履歴情報を含む設備要素情報を取得する取得部と、
取得した前記設備要素情報に基づいて、前記設備要素に対するメンテナンスの効果が小さくなった要因を特定する要因特定部と、
特定した前記要因に対応する改善内容を出力する出力部と、を有する、メンテナンス支援装置。
【請求項23】
基板に対して作業を行う作業設備の設備要素に関するメンテナンスの作業履歴情報を含む設備要素情報を取得する取得工程と、
取得した前記設備要素情報に基づいて、前記設備要素に対するメンテナンスの効果が小さくなった要因を特定する要因特定工程と、
特定した前記要因に対応する改善内容を出力する出力工程と、を含む、メンテナンス支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に対して作業を行う作業設備のメンテナンスを支援する部品実装システム、データ構造、メンテナンス支援装置、ならびにメンテナンス支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に対して作業を行う作業設備を含む部品実装ラインにおいて生産される実装基板の品質を維持するため、様々な取り組みが行われている。特許文献1には、製造設備の稼働状況から製造設備で発生した特定の事象とその要因を分析して、機械(Machine)、人(Man)、材料(Material)、方法(Method)からなる4つの視点から事象を発生させた要因が存在する可能性を示す指標を表示することで、製造設備を品質管理する管理システムが開示されている。特許文献2には、設備の稼働実績等のデータを時系列に分析して変化点を検出することで、監視対象の状態監視を実現する監視装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/094472号
【特許文献2】特開2015-152933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1を含む従来技術では、リアルタイムに作業設備の稼働状態を監視し、分析して作業設備の品質管理を行うことができるものの、作業設備に対して実施するメンテナンスの効果に着目して作業設備の品質管理を行うことはできず、更なる改善の余地があった。
【0005】
そこで本発明は、作業設備に対するメンテナンス作業を適切に改善することができる部品実装システム、データ構造、メンテナンス支援装置、ならびにメンテナンス支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の部品実装システムは、基板に対して作業を行う作業設備を含む部品実装ラインと、メンテナンス支援装置と、を備え、前記メンテナンス支援装置は、前記作業設備の設備要素に関するメンテナンスの作業履歴情報を含む設備要素情報を取得する取得部と、取得した前記設備要素情報に基づいて、前記設備要素に対するメンテナンスの効果が小さくなった要因を特定する要因特定部と、特定した前記要因に対応する改善内容を出力する出力部と、を有する。
【0007】
本発明のデータ構造は、基板に対して作業を行う作業設備を含む部品実装ラインとメンテナンス支援装置とを有する部品実装システムにおいて用いられるデータ構造であって、前記作業設備の設備要素に関するメンテナンスの作業履歴情報と前記作業履歴情報から作成されたメンテナンスの効果を含み、前記メンテナンス支援装置が、前記設備要素に対する前記メンテナンスの効果が小さくなった要因を特定する処理に用いられる。
【0008】
本発明のメンテナンス支援装置は、基板に対して作業を行う作業設備の設備要素に関するメンテナンスの作業履歴情報を含む設備要素情報を取得する取得部と、取得した前記設備要素情報に基づいて、前記設備要素に対するメンテナンスの効果が小さくなった要因を特定する要因特定部と、特定した前記要因に対応する改善内容を出力する出力部と、を有する。
【0009】
本発明のメンテナンス支援方法は、基板に対して作業を行う作業設備の設備要素に関するメンテナンスの作業履歴情報を含む設備要素情報を取得する取得工程と、取得した前記設備要素情報に基づいて、前記設備要素に対するメンテナンスの効果が小さくなった要因を特定する要因特定工程と、特定した前記要因に対応する改善内容を出力する出力工程と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業設備に対するメンテナンス作業を適切に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態の部品実装システムの構成説明図
【
図2】本発明の一実施の形態の部品実装装置の要部の平面図
【
図3】本発明の一実施の形態の部品実装装置の構成説明図
【
図4】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(メンテナンス支援装置)の情報処理系の構成を示すブロック図
【
図5】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(メンテナンス支援装置)において収集される設備要素情報の構成の例の説明図
【
図6】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(メンテナンス支援装置)によるメンテナンスの必要時期の判定と状態量の回復量の説明図
【
図7】本発明の一実施の形態のデータ構造の例の説明図
【
図8】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(メンテナンス支援装置)において使用される改善内容テーブルの例の説明図
【
図9】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(メンテナンス支援装置)が備える表示部に表示された改善提案表示画面の例の説明図
【
図10】本発明の一実施の形態のメンテナンス支援方法のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、部品実装システム、管理コンピュータ、部品実装ライン、作業設備、作業要素などの仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図2、及び後述する一部では、水平面内で互いに直交する2軸として、基板搬送方向のX軸(
図2における左右方向)、基板搬送方向に直交するY軸(
図2における上下方向)が示される。
図3、及び後述する一部では、水平面と直交する高さ方向としてZ軸(
図3における上下方向)が示される。
【0013】
まず
図1を参照して、部品実装システム1の構成を説明する。部品実装システムは、1本の部品実装ラインLを構成する作業設備を通信ネットワーク2によって接続し、管理コンピュータ3によって管理する構成となっている。なお、部品実装システム1が備える部品実装ラインLは1本である必要はなく、2本以上であっても良い。この場合、管理コンピュータ3は2本以上の部品実装ラインLを管理する。
【0014】
部品実装ラインLは、基板搬送方向の上流(紙面左側)から下流(紙面右側)に向けて、基板供給装置M1、印刷装置M2、印刷検査装置M3、部品実装装置M4~M8、実装検査装置M9、リフロー装置M10、基板回収装置M11などの基板に対して作業を行う作業設備を直列に連結して構成されている。部品実装ラインLは、基板に部品を実装した実装基板を生産する機能を有している。なお、部品実装ラインLは通信ネットワーク2を介して接続される作業設備群であって、物理的に作業設備同士が連結されていなくてもよい。
【0015】
図1において、基板供給装置M1は、複数の基板を収納するラック等の収納部を備え、収納部から取り出した基板を下流の装置に供給する基板供給作業を実行する。印刷装置M2は、印刷作業部に装着されたスクリーンマスクを介して上流側から基板搬送部が搬入した基板にペースト状のはんだを印刷するはんだ印刷作業を実行する作業設備である。
【0016】
印刷装置M2は、複数の開口が形成されたスクリーンマスクに基板を当接させ、スクリーンマスクに当接させたスキージを移動させてスクリーンマスク上に供給されたはんだを開口に押し込むことで、基板にはんだを印刷する。印刷装置M2は、はんだ印刷作業中にカメラや各種センサ(粘度検出センサ、圧力センサ等)を用いて、スクリーンマスクの表面状態、はんだの粘度、はんだの大気暴露時間、スキージの移動回数、スキージの移動時間、スクリーンマスクの平面度などを監視する。監視結果は、管理コンピュータ3に送信される。
【0017】
図1において、印刷検査装置M3は、はんだ検査カメラや各種センサを含む印刷検査作業部によって基板に印刷されたはんだの状態を検査する印刷検査作業を実行する作業設備である。印刷検査装置M3が検査したはんだを堆積した基板の表面状態などの監視結果は、管理コンピュータ3に送信される。
【0018】
部品実装装置M4~M8は、実装ヘッドに装着されたノズルでテープフィーダやトレイフィーダなどの部品供給装置が供給する部品を取り出し、はんだが印刷された基板に実装する部品実装作業を実行する作業設備である。部品実装装置M4~M8は、部品実装作業中にカメラや各種センサを用いて、実装ヘッドによる実装ミス、ノズルが部品を正常に吸着していない吸着ミス、部品供給装置が部品を正常に供給していない供給ミスなどを監視する。監視結果は、管理コンピュータ3に送信される。部品実装ラインLは、部品実装装置M4~M8が5台の構成に限定されることなく、部品実装装置M4~M8が1~4台であっても6台以上であってもよい。
【0019】
図1において、実装検査装置M9は、実装検査カメラを含む実装検査作業部によって基板に実装された部品の状態を検査する実装検査作業を実行する作業設備である。実装検査装置M9が検査した基板の所定の位置に部品が実装されていない実装ミスなどの監視結果は、管理コンピュータ3に送信される。
【0020】
リフロー装置M10は、装置内に搬入された基板を基板加熱部によって加熱して、基板上のはんだを硬化させ、基板の電極部と部品とを接合する基板加熱作業を実行する。基板回収装置M11は、複数の基板を収納するラック等の収納部を備え、上流の装置が搬出する基板を受け取って収納部に回収する基板回収作業を実行する。
【0021】
図1において、管理コンピュータ3は、部品実装ラインLが備える作業設備の稼働に必要なデータやパラメータを作成し、各作業設備に送信する機能を有している。また、管理コンピュータ3は、部品実装ラインLが備える複数の作業設備から作業設備を構成する設備要素の状態を収集し、メンテナンス対象についてのメンテナンス計画を作成し、メンテナンス作業を改善するための提案を行う機能を有している。
【0022】
次に
図2、
図3を参照して、部品実装装置M4~M8の構成の詳細について説明する。部品実装装置M4~M8は同様の構成をしており、ここでは、部品実装装置M4を例に説明する。なお
図3は、
図2における部品実装装置M4の一部を模式的に示している。部品実装装置M4は、部品供給部から供給された部品を基板に装着する部品実装作業を実行する機能を有する。基台4の中央には、基板搬送部5がX軸に沿って配置されている。基板搬送部5は、上流から搬送された基板6を、作業位置まで搬送して位置決めして保持する。また、基板搬送部5は、部品実装作業が完了した基板6を下流に搬出する。
【0023】
基板搬送部5の両側(Y軸の前後方向)には、部品供給部7が配置されている。それぞれの部品供給部7には、複数のテープフィーダ8がX軸に沿って並列に装着されている。テープフィーダ8は、部品Dを格納するポケットが形成された部品テープ17を部品供給部7の外側から基板搬送部5に向かう方向(テープ送り方向)にピッチ送りすることにより、以下に説明する実装ヘッド11によって部品Dが取り出される部品供給位置8aに部品Dを供給する。
【0024】
図2、
図3において、基台4上面においてX軸における両端部には、リニア駆動機構を備えたY軸テーブル9がY軸に沿って配置されている。Y軸テーブル9には、同様にリニア駆動機構を備えたビーム10が、Y軸に沿って移動自在に結合されている。ビーム10はX軸に沿って配置されている。ビーム10には、プレート10aを介して実装ヘッド11がX軸に沿って移動自在に装着されている。実装ヘッド11は、部品Dを吸着保持して昇降可能な複数の実装ユニット20を備えている。
【0025】
各々の実装ユニット20は上下(Z軸方向)に昇降するシャフト20aを備えており、シャフト20aの下端部には、先端部19aで部品Dを吸着保持するノズル19が装着されている。また、各々の実装ユニット20は、シャフト20aを昇降させるZ軸モータ(図示省略)とノズル19(または、シャフト20a)の高さを検出するエンコーダ(図示省略)を備えている。Z軸モータは、エンコーダの出力信号に基づいてサーボ制御される。また、各々の実装ユニット20には、ノズル19に流入するエアの流量を計測するセンサ(図示省略)が設けられている。
【0026】
図2において、Y軸テーブル9およびビーム10は、実装ヘッド11をX軸およびY軸に沿って基板6と部品供給部7との間で移動させる移動機構12を構成する。移動機構12および実装ヘッド11は、部品供給部7に配置されたテープフィーダ8の部品供給位置8aから部品Dをノズル19の先端部19aに吸着して取り出して、基板搬送部5に位置決めされた基板6の実装位置に装着する実装ターンを実行する。すなわち、Y軸テーブル9、ビーム10および実装ヘッド11は、テープフィーダ8の部品供給位置8aに供給される部品Dをノズル19で保持して基板6に装着する部品実装手段を構成する。
【0027】
図2、
図3において、部品供給部7と基板搬送部5との間には、部品認識カメラ13が配置されている。部品供給部7から部品Dを取り出した実装ヘッド11が部品認識カメラ13の上方を移動する際に、部品認識カメラ13はノズル19に保持された部品Dを撮像する。撮像結果からは、部品Dの保持姿勢が認識される。実装ヘッド11が取り付けられたプレート10aにはヘッドカメラ14が取り付けられている。ヘッドカメラ14は、実装ヘッド11と一体的に移動する。
【0028】
実装ヘッド11が移動することにより、ヘッドカメラ14は基板搬送部5に位置決めされた基板6の上方に移動し、基板6に設けられた基板マーク(図示省略)を撮像する。撮像結果からは、基板6の位置が認識される。また、ヘッドカメラ14はテープフィーダ8の上方に移動し、部品供給位置8aに供給された部品Dを撮像する。撮像結果からは、テープフィーダ8による部品Dの供給位置が認識される。実装ヘッド11による基板6への部品実装動作においては、部品認識カメラ13による部品Dの撮像結果と、ヘッドカメラ14による基板マークの撮像結果とを加味して実装位置の補正が行われる。
【0029】
図2において、部品実装装置M4の前面で作業者が作業する位置には、作業者が操作するタッチパネル15が設置されている。タッチパネル15は、その表示部に各種情報を表示し、また表示部に表示される操作ボタンなどを使って作業者がデータ入力や部品実装装置M4の操作を行う。
【0030】
図3において、部品供給部7にはフィーダベース16aに予め複数のテープフィーダ8が装着された状態の台車16がセットされる。台車16には、部品Dを保持した部品テープ17を巻回状態で収納するテープリール18が保持されている。テープリール18から引き出された部品テープ17は、テープフィーダ8が内蔵するスプロケットモータ8bによって間欠回転するスプロケット8cによって部品供給位置8aまでピッチ送りされる。
【0031】
このように、部品実装装置M4~M8は、基板搬送部5、テープフィーダ8、実装ヘッド11、移動機構12、部品認識カメラ13、ヘッドカメラ14、ノズル19などの設備要素Eを備えて構成されており、基板6に対して部品実装作業を行う作業設備である。
【0032】
次に
図4を参照して、管理コンピュータ3の情報処理系の構成について説明する。ここでは、管理コンピュータ3が備える複数の機能のち、作業設備(印刷装置M2、印刷検査装置M3、部品実装装置M4~M8、実装検査装置M9など)から作業設備を構成する設備要素Eの使用実績とメンテナンス作業結果を取得し、設備要素Eに対するメンテナンスの効果を解析する構成について説明する。ここでは、部品実装ラインLが備える部品実装装置M4~M8の設備要素Eのメンテナンスの効果を解析する例を中心について説明する。
【0033】
管理コンピュータ3は、処理部30、記憶装置である記憶部37の他、入力部43、表示部44、通信部45を備えている。処理部30はCPUなどのデータ処理装置であり、内部処理部として取得部31、判定部32、タスク情報作成部33、データ構造作成部34、要因特定部35、出力部36を備えている。記憶部37には、設備要素情報38、タスク情報39、データ構造40、要因特定結果41、改善内容テーブル42などが記憶されている。なお、管理コンピュータ3は、ひとつのコンピュータで構成する必要はなく、複数のデバイスで構成してもよい。例えば、記憶部、処理部の全てもしくは一部を、サーバを介してクラウドに備えてもよい。
【0034】
図4において、入力部43は、キーボード、タッチパネル、マウスなどの入力装置であり、操作コマンドやデータ入力時などに用いられる。表示部44は液晶パネルなどの表示装置であり、記憶部37が記憶する各種データを表示する他、入力部43による操作のための操作画面、入力画面などの各種情報を表示する。通信部45は、通信インターフェースであり、通信ネットワーク2を介して部品実装ラインLを構成する作業設備(印刷装置M2、印刷検査装置M3、部品実装装置M4~M8、実装検査装置M9など)との間でデータの送受信を行う。
【0035】
図4において、取得部31は、実装基板の生産中に作業設備を構成する設備要素Eに関する使用実績情報(監視結果等)を取得して、設備要素情報38に追加して記憶させる。また、取得部31は、作業者が行う設備要素Eに対するメンテナンス作業の後に作業結果を取得して、設備要素情報38に追加して記憶させる。
【0036】
例えば取得部31は、印刷装置M2から、スクリーンマスクの表面状態、スキージの移動回数、スキージの移動時間、スクリーンマスクの平面度などを設備要素情報38として取得する。また取得部31は、印刷検査装置M3から、印刷装置M2においてはんだを堆積(印刷)した基板6の表面状態などを設備要素情報38として取得する。また取得部31は、実装検査装置M9から、実装ヘッド11による実装位置ずれ量、実装ミス回数などを設備要素情報38として取得する。
【0037】
図4において、取得部31は、部品実装装置M4~M8から、テープフィーダ8のスプロケットモータ8bの駆動電流値(トルク量)、テープフィーダ8の部品供給回数、ノズル19が装着されていない状態の実装ユニット20のエアの流量値、ノズル19が装着されている状態の実装ユニット20のエアの流量値、実装ユニット20のZ軸モータの駆動電流値(トルク量)、ノズル19が保持する部品Dの吸着位置のずれ量、ノズル19の回転量、ノズル19の先端部19aの撮像画像、ノズル19による吸着ミス回数、テープフィーダ8による供給ミス回数、実装ヘッド11の移動回数または移動距離、ノズル19の使用回数、使用時間などを設備要素情報38として取得する。
【0038】
ここで、
図5を参照して、取得部31が取得した情報に基づいて記憶部37に記憶される設備要素情報38の構成の例について説明する。設備要素情報38には、設備要素Eを特定する設備要素番号50毎に、設備要素固有情報51、設備要素履歴情報53、作業履歴情報61が関連付けされて記憶されている。設備要素固有情報51には、設備要素Eの種類を特定する種別情報52が含まれている。設備要素履歴情報53には、取得部31が使用実績情報を取得した取得日時に関する取得日時情報54毎に、ライン識別情報55、設備識別情報56、使用状況情報57が関連付けされて記憶されている。
【0039】
ライン識別情報55には、設備要素Eが使用された部品実装ラインLを特定する情報が含まれている。設備識別情報56には、設備要素Eが使用された作業設備(作業設備)を特定する情報が含まれている。なお、ノズル19のように、設備要素Eである実装ヘッド11に装着されて使用される設備要素Eの場合、設備要素E(ノズル19)が使用された作業設備(部品実装装置M4~M8)と設備要素E(ノズル19)が装着された設備要素E(実装ヘッド11)を特定する情報が設備識別情報56として記憶される。
【0040】
図5において、使用状況情報57には、設備要素Eの使用状況に関する情報として、累積使用回数58、累積使用時間59、シャフト20aの摺動値などの状態量60などが含まれている。なお、使用状況情報57には、累積使用回数58と累積使用時間59の代わりに、メンテナンス作業後の使用回数と使用時間を記憶してもよい。また、使用状況情報57として、吸着ミス、供給ミスなどのミスの累積発生回数またはメンテナンス作業後のミスの発生回数を記憶してもよい。
【0041】
作業履歴情報61には、取得部31が取得したメンテナンス作業の作業結果に含まれる作業日時に関する作業日時情報62毎に、作業者情報63、メンテナンスの作業手順66、補修部材情報67が関連付けされて記憶されている。作業者情報63には、設備要素Eのメンテナンスの作業を行った作業者に関する情報として、作業者の勤務に関する勤務情報64などが含まれている。また、勤務情報64には、作業者のシフト勤務に関するシフト勤務情報65が含まれている。補修部材情報67には、設備要素Eの補修に用いられる補修部材に関する情報が含まれている。なお、作業履歴情報61として、メンテナンス作業直前の累積使用回数や累積使用時間、メンテナンス作業前の状態量とメンテナンス作業後の状態量を記憶してもよい。
【0042】
このように、取得部31は、作業設備の設備要素Eに関するメンテナンスの作業履歴情報61を含む設備要素情報38を取得する。そして、設備要素情報38には、メンテナンスの作業を行った作業者に関する情報(作業者情報63、勤務情報64、シフト勤務情報65)、メンテナンスの対象の設備要素Eとメンテナンスに用いられる補修部材を含む機械に関する情報(種別情報52、ライン識別情報55、設備識別情報56、使用状況情報57、補修部材情報67)、メンテナンスの方法に関する情報(作業手順66)の3項目が含まれる。なお、要因解析に使用される設備要素情報38には、これらの3項目の全て含める必要は無く、3項目の中の少なくとも1項目を含んでいればよい。
【0043】
図4において、判定部32は、設備要素情報38に含まれる使用状況情報57に基づいて、設備要素E毎にメンテナンスの必要時期を判定する。また、判定部32は、複数の時点(取得日時情報54)で計測された使用状況情報57に含まれる複数のフィールドの中の少なくとも1つと、複数のフィールドの変化の傾向とに基づいて、必要時期を判定する。
【0044】
例えば、判定部32は、テープフィーダ8(設備要素E)のスプロケットモータ8bの駆動電流値(状態量60)や供給回数(累積使用回数58)等の変化の傾向からメンテナンスの必要時期を判定する。また、判定部32は、実装ヘッド11(設備要素E)の実装ユニット20のエアの流量値(状態量60)、撮像画像から検出されたノズル19の先端部19aに付着するゴミの数(状態量60)、ノズル19の回転量の誤差(状態量60)等の変化の傾向からメンテナンスの必要時期を判定する。なお、印刷装置M2の場合、判定部32は、スクリーンマスクの表面状態(状態量60)、はんだの粘度(状態量60)、印刷検査装置M3の検査結果等の変化の傾向からメンテナンスの必要時期を判定する。
【0045】
ここで、
図6を参照して、判定部32によるメンテナンスの必要時期の判定の例について説明する。ここでは、実装ヘッド11(設備要素E)が備える実装ユニット20のシャフト20aが昇降する際の摺動値(状態量60)に基づく必要時期の判定を例に説明する。
【0046】
実装ユニット20のシャフト20aの摺動値は、実装ユニット20が備えるZ軸モータの駆動電流値(トルク量)から算出される。例えば、シャフト20aに付着した汚れの増加やグリースの減少によってシャフト20aが昇降する際の摩擦(摺動値)が増加すると、シャフト20aを昇降駆動するZ軸モータの駆動電流値が増加する。以下、部品実装装置M4~M8が備える制御装置(図示省略)が摺動値を算出する例で説明する。なお、管理コンピュータ3がZ軸モータの駆動電流値を取得して、管理コンピュータ3の処理部30が摺動値を算出してもよい。
【0047】
図6において、部品実装装置M4~M8の制御装置は、実装ヘッド11の各々の実装ユニット20からZ軸モータの駆動電流値を取得し、駆動電流値から摺動値を0~100(数字が大きい方が摩擦が大きい)の計測値に変換し、実装ヘッド11の状態として管理コンピュータ3に送信する。取得部31は、摺動値(状態量60)に実装ヘッド11(設備要素E)と実装ユニット20を特定する情報(設備要素番号50)と摺動値が計測された計測日時(取得日時情報54)を関連づけて設備要素情報38に記憶させる。
【0048】
図6は、設備要素情報38に含まれる実装ユニット20の摺動値を縦軸に、計測日時を横軸にプロットしたグラフである。この例では、摺動値が0から60を「正常状態」、60から70を「準正常状態」、70から80を「警告状態」、80以上を「異常状態」と定義している。判定部32は、摺動値がモニタ閾値(この例では40)を超過するまでは、メンテナンスの必要時期Tnを算出しない。判定部32は、摺動値がモニタ閾値を超過すると、計測日時と摺動値から予測関数を決定し、摺動値が80(異常状態)となる日時を必要時期Tnとして算出する。予測関数としては、最小二乗法により導出される1次関数、多項式、対数関数などが使用される。予測関数の傾きが、計測値の変化の傾向を示す。
【0049】
図4において、タスク情報作成部33は、判定部32によって判定された必要時期Tnに基づいて、必要時期Tnに関する情報を含む設備要素Eのメンテナンスに関するタスク情報39を作成して記憶部37に記憶させる。取得部31による設備要素情報38の取得(更新)、判定部32による必要時期Tnの決定、タスク情報作成部33のよるタスク情報39の作成は、部品実装ラインLによる実装基板の生産中に、所定のタイミング(例えば、8時間毎)で実行される。
【0050】
出力部36は、作成されたタスク情報39を、メンテナンス作業を担当する作業者が所持する携帯端末やメンテナンス対象の設備要素Eが装着された作業設備に出力する。出力されたタスク情報39は、携帯端末や作業設備の表示部(タッチパネル15)にメンテナンス指示として表示される。作業者は、表示されたタスク情報39に基づいて、設備要素Eのメンテナンス作業を実行する。メンテナンス作業の作業結果は、取得部31によって取得されて、設備要素情報38に追加して記憶される。
【0051】
図4において、データ構造作成部34は、記憶部37に記憶されている設備要素情報38に基づいて、要因特定部35が設備要素Eに対するメンテナンスの効果が小さくなった要因を特定する要因特定処理に用いられるデータ構造40(学習データ)を作成し、記憶部37に記憶させる。データ構造作成部34は、設備要素Eの1回のメンテナンス作業を1つのレコードとするデータ構造40を作成する。
【0052】
データ構造40の各々のレコードには、メンテナンスの効果を目的変数とし、メンテナンスの作業を行った作業者、メンテナンスの対象の設備要素Eとメンテナンスに用いられる補修部材を含む機械、メンテナンスの方法の3項目の中の少なくとも1項目に関する情報を説明変数とする複数のフィールドが含まれている。
【0053】
図4において、データ構造作成部34は、設備要素情報38に基づき、メンテナンスの効果(目的変数)として、メンテナンスの間隔、前のメンテナンスからの設備要素Eの使用回数、前のメンテナンスからの設備要素Eの使用時間、メンテナンスによって回復した設備要素Eの状態量60の少なくともいずれかを作成する。
【0054】
メンテナンスの効果が高いほど、メンテナンスの間隔(良好な状態で使用可能な期間)、前のメンテナンスからの設備要素Eの使用回数(良好な状態で使用可能な回数)、前のメンテナンスからの設備要素Eの使用時間(良好な状態で使用可能な時間)、メンテナンスによって回復した設備要素Eの状態量60(回復量)が大きくなる。なお、データ構造40の目的変数であるメンテナンスの効果はこれらのフィールドに限定されることはなく、メンテナンス作業の成果が定量的に表現可能なものであればよい。
【0055】
具体的には、データ構造作成部34は、メンテナンスの間隔を、設備要素Eの作業履歴情報61に含まれるN回目のメンテナンスの作業日時(作業日時情報62)とN+1回目のメンテナンスの作業日時(作業日時情報62)から計算する。なお、データ構造作成部34は、N+1回目のメンテナンスの作業日時情報62に含まれる作業日時の代わりに、判定部32が算出するメンテナンスの必要時期Tnを使用してメンテナンスの間隔を計算してもよい。メンテナンスの作業日時は生産や作業者の都合によって変動するが、判定部32が算出するメンテナンスの必要時期Tnを使用することにより、N回目のメンテナンスの効果(メンテナンスの間隔)をより正確に計算することができる。
【0056】
データ構造作成部34は、前のメンテナンスからの設備要素Eの使用回数を、設備要素Eの設備要素履歴情報53に含まれるN回目のメンテナンス時の累積使用回数58とN+1回目のメンテナンス時の累積使用回数58から計算する。なお、設備要素履歴情報53にメンテナンス時の累積使用回数58が記憶されていない場合、データ構造作成部34は、メンテナンス時(作業日時情報62)に近い取得日時(取得日時情報54)の累積使用回数58を使用して、前のメンテナンスからの設備要素Eの使用回数を計算する。
【0057】
データ構造作成部34は、前のメンテナンスからの設備要素Eの使用時間を、設備要素Eの設備要素履歴情報53に含まれるN回目のメンテナンス時の累積使用時間59とN+1回目のメンテナンス時の累積使用時間59から計算する。なお、設備要素履歴情報53にメンテナンス時の累積使用時間59が記憶されていない場合、データ構造作成部34は、メンテナンス時(作業日時情報62)に近い取得日時(取得日時情報54)の累積使用時間59を使用して、前のメンテナンスからの設備要素Eの使用時間を計算する。
【0058】
データ構造作成部34は、メンテナンスによって回復した設備要素Eの状態量60(以下、「回復量」と称する。)を、設備要素Eの設備要素履歴情報53または作業履歴情報61に含まれるN回目のメンテナンス前の状態量60とメンテナンス後の状態量60から計算する。なお、設備要素履歴情報53にメンテナンス前後の状態量60が記憶されていない場合、データ構造作成部34は、メンテナンス時(作業日時情報62)に近い取得日時(取得日時情報54)の状態量60を使用して、回復量を計算する。
【0059】
ここで、
図6を参照して、実装ヘッド11(設備要素E)が備える実装ユニット20のシャフト20aの摺動値(状態量60)の回復量について説明する。
図6では、作業日時Tmに実装ヘッド11のメンテナンス作業が実行されている。メンテナンス前の摺動値F1は黒丸で、メンテナンス後の摺動値F2は斜線付きの丸で表示されている。メンテナンスの効果によって、シャフト20aの摺動値(状態量60)は回復量ΔFだけ低下(回復)している。データ構造作成部34は、メンテナンス前の摺動値F1とメンテナンス後の摺動値F2から、回復量ΔF(=F2-F1)を計算する。
【0060】
次に、
図7を参照して、データ構造作成部34が作成したデータ構造40の例について説明する。この例では、メンテナンスの効果(目的変数)として、前のメンテナンスからの設備要素Eの使用回数(打点数)が使用されている。データ構造40には、レコード毎に、レコード番号70、設備要素シリアル番号71(設備要素番号50)、使用回数72、使用ライン73(ライン識別情報55)、使用設備74(設備識別情報56)、設備要素種別75(種別情報52)、補修部材76(補修部材情報67)、作業者77(作業者情報63)、シフト78(シフト勤務情報65)、作業日時79(作業日時情報62)、メンテナンス作業手順80(作業手順66)などが含まれている。
【0061】
データ構造40のフィールドのうち、使用ライン73、使用設備74、設備要素種別75、補修部材76、作業者77、シフト78、作業日時79、メンテナンス作業手順80は、説明変数である。設備要素種別75には、設備要素Eの種類を特定する大項目である種別75aと中項目である詳細75bが含まれている。使用ライン73と使用設備74は、N+1回目のメンテナンス作業を行う直前に設備要素Eが使用されていた部品実装ラインLと作業設備(または、作業設備と設備要素E)を特定する情報である。補修部材76は、メンテナンス作業で設備要素Eにおいて交換された部材などの情報である。
【0062】
図7において、作業者77は、メンテナンス作業を行った作業者を特定する情報(作業者A、作業者B)である。シフト78は、メンテナンス作業を行った作業者のシフト勤務を特定する情報(昼勤、夜勤)である。作業日時79は、メンテナンス作業を開始した日時と終了した日時の情報である。メンテナンス作業手順80は、設備要素Eのメンテナンス作業の手順を特定する情報である。
【0063】
データ構造40のレコードは、設備要素Eのメンテナンス作業毎に作成される。例えば、レコード番号70が「1」「2」「3」の3つのレコードは、同じ設備要素E(設備要素シリアル番号71が「AAA-123456」)の異なるメンテナンス作業(例えば、1回目、2回目、3回目のメンテナンス作業)のレコードである。
【0064】
図4において、要因特定部35は、設備要素情報38から作成されたデータ構造40に基づいて、設備要素Eに対するメンテナンスの効果が小さくなった要因を特定する要因特定処理を実行する。すなわち、要因特定部35は、データ構造40の説明変数(独立変数)であるメンテナンスの作業を行った作業者、メンテナンスの対象の設備要素Eとメンテナンスに用いられる補修部材を含む機械、メンテナンスの方法の3項目の中の少なくとも1項目に関する要因(説明変数)のうち、目的変数(従属変数)であるメンテナンスの効果の低下に寄与する割合が大きな1つ、または、複数の要因を特定する。
【0065】
例えば、要因特定部35は、データ構造40を学習データとし、説明変数を特徴量とする重回帰分析によって目的変数に与える影響が大きな特徴量(要因)を選択するモデルベース特徴量選択やラッパー法(Wrapper Method)などの機械学習、重回帰分析や分散分析などの統計検定により、メンテナンスの効果が小さくなった要因を特定する。すなわち、要因特定部35は、取得した設備要素情報38を基にして、重回帰分析によって複数の要因(説明変数)の中でメンテナンスの効果(目的変数)の低下に寄与する割合が大きな要因を特定する。要因特定部35は、特定した要因を要因特定結果41として記憶部37に記憶させる。例えば、要因特定結果41として、上位から5つの要因を記憶させる。
【0066】
このように、データ構造40は、作業設備の設備要素Eに関するメンテナンスの作業履歴情報61とメンテナンスの効果(目的変数)を含み、管理コンピュータ3(メンテナンス支援装置)の要因特定部35が設備要素Eに対するメンテナンスの効果が小さくなった要因81を特定する要因特定処理に用いられる。
【0067】
図4において、改善内容テーブル42には、特定した要因81とメンテナンス作業の改善内容82を対応させた情報が含まれている(
図8参照)。出力部36は、改善内容テーブル42に基づいて、要因特定部35が特定した要因81に対応する改善内容82を表示部44に出力する。これによって、作業者や管理者は、作業設備に対するメンテナンス作業を適切に改善することができる。なお、出力部36は、作業者が所持する携帯端末の表示画面に改善内容82を表示させるようにしてもよい。
【0068】
例えば、要因特定部35が特定した要因81が作業者77に関する場合、出力部36は、要因81となった作業者77(例えば、作業者「A」)を含む複数の作業者77についてスキルのばらつきがないかの確認を促す旨のメッセージを出力する。また、要因特定部35が特定した要因81がシフト勤務(シフト78)に関する場合、出力部36は、シフト毎(例えば、昼勤と夜勤)に作業環境が異ならないかの確認を促す旨のメッセージを出力する。
【0069】
また、要因特定部35が特定した要因81が作業日時79に関する場合、出力部36は、特定の時間帯(例えば、14時から15時)または特定の曜日(例えば、月曜日)に問題が起きていないかの確認を促す旨のメッセージを出力する。また、要因特定部35が特定した要因81がメンテナンス作業手順80(作業手順66)に関する場合、出力部36は、メンテナンス作業手順80(例えば、手順A)に問題がないかの確認を促す旨のメッセージを出力する。
【0070】
また、要因特定部35が特定した要因81が部品実装ライン(使用ライン73)に関する場合、出力部36は、部品実装ラインLを含む複数の部品実装ラインについて運用のばらつきがないかの確認を促す旨のメッセージを出力する。また、要因特定部35が特定した要因81が作業設備(使用設備74)に関する場合、出力部36は、作業設備(例えば、部品実装装置M4)の状態に問題がないかの確認を促す旨のメッセージを出力する。
【0071】
また、要因特定部35が特定した要因81が補修部材76に関する場合、出力部36は、補修部材76(例えば、フィルタ(メーカA))の品質に問題がないかの確認を促す旨のメッセージを出力する。
【0072】
次に、
図9を参照して、出力部36が表示部44に表示させた改善提案表示画面90の例について説明する。この例では、要因特定部35によって、作業者77の中の「作業者A」が要因81として特定されている。改善提案表示画面90には、特定結果表示枠91、改善提案表示枠92が表示されている。特定結果表示枠91には、要因特定部35が特定した要因81に関するコメントがテキストで表示される。改善提案表示枠92には、改善内容テーブル42に基づき、特定した要因81に対応する改善内容82がテキストで表示される。
【0073】
次に、
図10のフローに沿って、管理コンピュータ3(メンテナンス支援装置)によるメンテナンス支援方法について説明する。取得部31は、実装基板の生産中に所定のタイミング(例えば、8時間毎)に、作業設備から設備要素Eの使用実績情報を取得し(ST1:実績取得工程)、設備要素情報38の設備要素履歴情報53に記憶させる(ST2:設備要素履歴情報記憶工程)。次いで要因分析処理が実行されず(ST3においてNo)、判定部32によってメンテナンス作業が必要と判定されない場合は(ST4においてNo)、実績取得工程(ST1)と設備要素履歴情報記憶工程(ST2)が繰り返し実行される。
【0074】
判定部32によってメンテナンス作業が必要と判定されると(ST4においてYes)、タスク情報作成部33は、設備要素Eのメンテナンスに関するタスク情報39を作成する(ST5:タスク情報作成工程)。次いで出力部36はタスク情報39を出力して、表示部44等にメンテナンス指示を表示させる(ST6:メンテナンス指示出力工程)。メンテナンス作業が実行されると、取得部31は、メンテナンス作業の作業結果を取得し(ST7:作業結果取得工程)、設備要素情報38の作業履歴情報61に記憶させる(ST8:作業履歴情報記憶工程)。
【0075】
その後、(ST1)に戻って、設備要素履歴情報53と作業履歴情報61が繰り返し取得されて(ST1、ST7)、設備要素情報38に蓄積される(ST2、ST8)。このように、実績取得工程(ST1)と作業結果取得工程(ST7)は、基板6に対して作業を行う作業設備の設備要素Eに関するメンテナンスの作業履歴情報61を含む設備要素情報38を取得する取得工程である。
【0076】
図10において、要因分析処理を実行する場合(ST3においてYes)、データ構造作成部34は、設備要素情報38に基づいてデータ構造40を作成する(ST9:データ構造作成工程)。次いで要因特定部35は、取得した設備要素情報38から作成されたデータ構造40に基づいて、設備要素Eに対するメンテナンスの効果が小さくなった要因81を特定する(ST10:要因特定工程)。次いで出力部36は、改善内容テーブル42に基づいて、特定した要因81に対応する改善内容82を表示部44等に出力する(ST11:改善内容出力工程)。これによって、表示部44にメンテナンス作業の改善提案が表示され(
図9参照)、作業設備に対するメンテナンス作業を適切に改善することができる。
【0077】
このように、実績取得工程(ST1)から作業履歴情報記憶工程(ST8)は、設備要素情報38の収集工程(実績収集フェイズ)である。そして、データ構造作成工程(ST9)から改善内容出力工程(ST11)は、収集された設備要素情報38から設備要素Eに対するメンテナンスの効果が小さくなった要因81を特定してメンテナンスの改善内容82を提案する分析工程(分析フェイズ)である。
【0078】
上記説明したように、本実施の形態の管理コンピュータ3は、基板6に対して作業を行う作業設備の設備要素Eに関するメンテナンスの作業履歴情報61を含む設備要素情報38を取得する取得部31と、取得した設備要素情報38に基づいて、設備要素Eに対するメンテナンスの効果が小さくなった要因81を特定する要因特定部35と、特定した要因81に対応する改善内容82を出力する出力部36と、を有する、メンテナンス支援装置である。これによって、作業設備に対するメンテナンス作業を適切に改善することができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の部品実装システム、データ構造、メンテナンス支援装置、ならびにメンテナンス支援方法は、作業設備に対するメンテナンス作業を適切に改善することができるという効果を有し、部品を基板に実装する分野において有用である。
【符号の説明】
【0080】
3 管理コンピュータ(メンテナンス支援装置)
6 基板
E 設備要素
L 部品実装ライン
M4~M8 部品実装装置(作業設備)