(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121857
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収利用製品の製造方法、及び、二酸化炭素回収利用製品の製造システム
(51)【国際特許分類】
C07C 1/12 20060101AFI20240902BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C07C1/12
C07C9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029061
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000217686
【氏名又は名称】電源開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 洋
(72)【発明者】
【氏名】中西 賢
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC29
4H006BD84
4H006BE20
4H006BE41
(57)【要約】
【課題】カーボンニュートラルな二酸化炭素回収利用製品を生産性よく製造することが可能な二酸化炭素回収利用製品の製造方法及び製造システムを提供する。
【解決手段】石炭SにバイオマスBを混合してガス化用石炭原料CBとする混合工程と、ガス化用石炭原料CBをガス化して原料ガスG1とするガス化工程と、原料ガスG1を水素G2及び二酸化炭素G3を含むガスに改質するシフト反応工程と、改質後の原料ガスG1から二酸化炭素G3を部分回収してメタン原料ガスG4を生成する二酸化炭素分離工程と、メタン原料ガスG4を製品化する製品化工程とを備え、二酸化炭素分離工程はメタン原料ガスG4の(水素)/(二酸化炭素)当量比が所定範囲となるように二酸化炭素G3の回収量を調整し、混合工程は二酸化炭素分離工程で生成されるメタン原料ガスG4中の炭素がバイオマスB由来となるように石炭Sに対するバイオマスBの混合比を決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭のガス化過程で生成するガスを原料として二酸化炭素回収利用製品を製造する方法であって、
前記石炭にバイオマスを混合することでガス化用石炭原料を調整する混合工程と、
前記ガス化用石炭原料をガス化して原料ガスを生成するガス化工程と、
前記ガス化工程で生成された前記原料ガスをシフト反応させることで、前記原料ガスを水素及び二酸化炭素を含むガスに改質するシフト反応工程と、
前記シフト反応工程で改質された前記原料ガスから前記二酸化炭素を部分回収して製品原料ガスを生成する二酸化炭素分離工程と、
前記二酸化炭素が分離された前記製品原料ガスを製品化する製品化工程と、を備え、
前記二酸化炭素分離工程は、前記製品原料ガスの組成が、次式{(水素)/(二酸化炭素)当量比=2.70~4.40}で表される範囲となるように、前記二酸化炭素の回収量を調整し、且つ、前記混合工程は、前記二酸化炭素分離工程で生成される前記製品原料ガス中の炭素が前記バイオマス由来となるように、前記石炭に対する前記バイオマスの混合比を決定すること、を特徴とする二酸化炭素回収利用製品の製造方法。
【請求項2】
前記二酸化炭素分離工程は、前記原料ガスから前記二酸化炭素を部分回収することで、前記製品原料ガスとしてメタン原料ガスを生成し、
さらに、前記二酸化炭素分離工程は、前記メタン原料ガスの組成が、次式{(水素)/(二酸化炭素)当量比=3.60~4.40}で表される範囲となるように、前記二酸化炭素の回収量を調整し、且つ、前記混合工程は、前記二酸化炭素分離工程で生成される前記メタン原料ガス中の炭素が前記バイオマス由来となるように、前記石炭に対する前記バイオマスの混合比を決定し、
前記製品化工程は、メタネーション反応により、前記二酸化炭素回収利用製品としてメタンを製造すること、を特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素回収利用製品の製造方法。
【請求項3】
石炭のガス化過程で生成するガスを原料として二酸化炭素回収利用製品を製造する製造システムであって、
前記石炭にバイオマスを混合することでガス化用石炭原料を調整する混合装置と、
前記ガス化用石炭原料をガス化して原料ガスを生成するガス化炉と、
前記ガス化炉で生成された前記原料ガスをシフト反応させることで、前記原料ガスを水素及び二酸化炭素を含むガスに改質するシフト反応器と、
前記シフト反応器で改質された前記原料ガスから前記二酸化炭素を部分回収して製品原料ガスを生成する二酸化炭素分離装置と、
前記二酸化炭素が分離された前記製品原料ガスを製品化する製品化装置と、を備え、
前記二酸化炭素分離装置は、前記製品原料ガスの組成が、次式{(水素)/(二酸化炭素)当量比=2.70~4.40}で表される範囲となるように、前記二酸化炭素の回収量を調整し、且つ、前記混合装置は、前記二酸化炭素分離装置で生成される前記製品原料ガス中の炭素が前記バイオマス由来となるように、前記石炭に対する前記バイオマスの混合比を決定すること、を特徴とする二酸化炭素回収利用製品の製造システム。
【請求項4】
前記二酸化炭素分離装置は、前記原料ガスから前記二酸化炭素を部分回収することで、前記製品原料ガスとしてメタン原料ガスを生成し、
さらに、前記二酸化炭素分離装置は、前記メタン原料ガスの組成が、次式{(水素)/(二酸化炭素)当量比=3.60~4.40}で表される範囲となるように、前記二酸化炭素の回収量を調整し、且つ、前記混合装置は、前記二酸化炭素分離装置で生成される前記メタン原料ガス中の炭素が前記バイオマス由来となるように、前記石炭に対する前記バイオマスの混合比を決定し、
前記製品化装置は、メタネーション反応により、前記二酸化炭素回収利用製品としてメタンを製造すること、を特徴とする請求項3に記載の二酸化炭素回収利用製品の製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素回収利用製品の製造方法、及び、二酸化炭素回収利用製品の製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地球温暖化防止の観点から、例えば、石炭ガス化プロセスや、製鉄プロセス、火力発電プラント、各種の化学プラント等からの二酸化炭素(CO2)排出量を削減するため、二酸化炭素を効率的に回収する技術が注目されており、各種の回収技術が提案されている。
【0003】
また、従来、上記のような各種の排出源から回収された二酸化炭素は、主として、液化して陸地中や海底下に貯留されるケースが多かったが、その貯留地は限定されるという問題があった。このため、近年では、単に二酸化炭素を回収して排出量を削減することのみならず、例えば、大気に排出される前の二酸化炭素を分離回収して有効利用する、所謂「CCU(Carbon dioxide Capture and Utilization:二酸化炭素の分離回収と有効利用)」と呼ばれる技術が注目を集めるようになっている。
【0004】
例えば、特許文献1には、二酸化炭素及び水素を含むガスから触媒を用いて、二酸化炭素の分離回収と有効利用によってメタンを製造する方法において、第一のメタネーション反応工程と、その後のシフト反応工程と、その後の第二のメタネーション反応工程と、を含む方法を採用することが開示されている。特許文献1に開示された技術によれば、二酸化炭素及び水素を含むガスを原料としてメタンを製造するのにあたり、回収メタン中のメタン純度及びメタン収率を高めることができ、さらに、回収メタン中から有毒なCOガスを除去することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
メタネーション反応においては、次式{CO2+4H2→CH4+2H2O}で表されるように、1モルの二酸化炭素と4モルの水素とが反応する。このような反応の場合、二酸化炭素の4倍の水素が必要となるが、この水素の供給がコストアップの大きな要因となっている。
一方、特許文献1に記載されているように、二酸化炭素及び水素を含むガスからメタネーション反応を行うことも可能である。しかしながら、この場合、二酸化炭素が過剰となり、二酸化炭素の回収を再度行う必要が生じる。このため、装置が大型化するとともに、工程が増大することから、生産性やコスト面で不利になるという問題があった。
【0007】
また、特許文献1に記載の技術では、メタネーション反応において生成されるメタンの炭素が、各種プラントから排出された炭素源ガスに含まれる二酸化炭素由来であるため、カーボンニュートラルの製品とはならず、脱炭素化という環境保護の観点からは好ましくない面もあった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、工程が増大することなく、カーボンニュートラルな二酸化炭素回収利用製品を生産性よく製造することが可能な二酸化炭素回収利用製品の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、簡便な構成によって、カーボンニュートラルな二酸化炭素回収利用製品を生産性よく製造することが可能な二酸化炭素回収利用製品の製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用する。
[1] 石炭のガス化過程で生成するガスを原料として二酸化炭素回収利用製品を製造する方法であって、前記石炭にバイオマスを混合することでガス化用石炭原料を調整する混合工程と、前記ガス化用石炭原料をガス化して原料ガスを生成するガス化工程と、前記ガス化工程で生成された前記原料ガスをシフト反応させることで、前記原料ガスを水素及び二酸化炭素を含むガスに改質するシフト反応工程と、前記シフト反応工程で改質された前記原料ガスから前記二酸化炭素を部分回収して製品原料ガスを生成する二酸化炭素分離工程と、前記二酸化炭素が分離された前記製品原料ガスを製品化する製品化工程と、を備え、前記二酸化炭素分離工程は、前記製品原料ガスの組成が、次式{(水素)/(二酸化炭素)当量比=2.70~4.40}で表される範囲となるように、前記二酸化炭素の回収量を調整し、且つ、前記混合工程は、前記二酸化炭素分離工程で生成される前記製品原料ガス中の炭素が前記バイオマス由来となるように、前記石炭に対する前記バイオマスの混合比を決定すること、を特徴とする二酸化炭素回収利用製品の製造方法。
[2] 前記二酸化炭素分離工程は、前記原料ガスから前記二酸化炭素を部分回収することで、前記製品原料ガスとしてメタン原料ガスを生成し、さらに、前記二酸化炭素分離工程は、前記メタン原料ガスの組成が、次式{(水素)/(二酸化炭素)当量比=3.60~4.40}で表される範囲となるように、前記二酸化炭素の回収量を調整し、且つ、前記混合工程は、前記二酸化炭素分離工程で生成される前記メタン原料ガス中の炭素が前記バイオマス由来となるように、前記石炭に対する前記バイオマスの混合比を決定し、前記製品化工程は、メタネーション反応により、前記二酸化炭素回収利用製品としてメタンを製造すること、を特徴とする上記[1]に記載の二酸化炭素回収利用製品の製造方法。
[3] 石炭のガス化過程で生成するガスを原料として二酸化炭素回収利用製品を製造する製造システムであって、前記石炭にバイオマスを混合することでガス化用石炭原料を調整する混合装置と、前記ガス化用石炭原料をガス化して原料ガスを生成するガス化炉と、前記ガス化炉で生成された前記原料ガスをシフト反応させることで、前記原料ガスを水素及び二酸化炭素を含むガスに改質するシフト反応器と、前記シフト反応器で改質された前記原料ガスから前記二酸化炭素を部分回収して製品原料ガスを生成する二酸化炭素分離装置と、前記二酸化炭素が分離された前記製品原料ガスを製品化する製品化装置と、を備え、前記二酸化炭素分離装置は、前記製品原料ガスの組成が、次式{(水素)/(二酸化炭素)当量比=2.70~4.40}で表される範囲となるように、前記二酸化炭素の回収量を調整し、且つ、前記混合装置は、前記二酸化炭素分離装置で生成される前記製品原料ガス中の炭素が前記バイオマス由来となるように、前記石炭に対する前記バイオマスの混合比を決定すること、を特徴とする二酸化炭素回収利用製品の製造システム。
[4] 前記二酸化炭素分離装置は、前記原料ガスから前記二酸化炭素を部分回収することで、前記製品原料ガスとしてメタン原料ガスを生成し、さらに、前記二酸化炭素分離装置は、前記メタン原料ガスの組成が、次式{(水素)/(二酸化炭素)当量比=3.60~4.40}で表される範囲となるように、前記二酸化炭素の回収量を調整し、且つ、前記混合装置は、前記二酸化炭素分離装置で生成される前記メタン原料ガス中の炭素が前記バイオマス由来となるように、前記石炭に対する前記バイオマスの混合比を決定し、前記製品化装置は、メタネーション反応により、前記二酸化炭素回収利用製品としてメタンを製造すること、を特徴とする上記[3]に記載の二酸化炭素回収利用製品の製造システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の二酸化炭素回収利用製品の製造方法によれば、二酸化炭素分離工程が、製品原料ガスにおける水素/二酸化炭素の当量比が所定範囲となるように二酸化炭素の回収量を調整し、且つ、混合工程が、二酸化炭素分離工程で生成される製品原料ガス中の炭素がバイオマス由来となるように、石炭に対するバイオマスの混合比を決定する方法を採用している。
上記のように、バイオマスの混合比を調整し、且つ、二酸化炭素を最適な回収量で分離しながら製品原料ガスを生成させることで、工程が増大することなく、カーボンニュートラルな二酸化炭素回収利用製品を生産性よく製造することが可能となる。
【0011】
また、本発明の二酸化炭素回収利用製品の製造システムによれば、二酸化炭素分離装置が、製品原料ガスにおける水素/二酸化炭素の当量比が所定範囲となるように二酸化炭素の回収量を調整し、且つ、混合装置が、二酸化炭素分離装置で生成される製品原料ガス中の炭素がバイオマス由来となるように、石炭に対するバイオマスの混合比を決定する構成を採用している。
上記構成により、バイオマスの混合比を調整し、且つ、二酸化炭素を最適な回収量で分離しながら製品原料ガスを生成させることで、簡便な構成によって、カーボンニュートラルな二酸化炭素回収利用製品を生産性よく製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明を適用した一実施形態である二酸化炭素回収利用製品の製造方法及び二酸化炭素回収利用製品の製造システムについて模式的に説明する図であり、製造システム全体を概略で示す系統図である。
【
図2】
図2は、本発明を適用した一実施形態である二酸化炭素回収利用製品の製造方法及び二酸化炭素回収利用製品の製造システムについて、特定の条件によるシミュレーションを行った一例を示す系統図である。
【
図3】
図3は、本発明を適用した一実施形態である二酸化炭素回収利用製品の製造方法及び二酸化炭素回収利用製品の製造システムについて、特定の条件によるシミュレーションを行った他の例を示す系統図である。
【
図4】
図4は、本発明を適用した一実施形態である二酸化炭素回収利用製品の製造方法及び二酸化炭素回収利用製品の製造システムについて、特定の条件によるシミュレーションを行った他の例を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した一実施形態である二酸化炭素回収利用製品の製造方法について、これに用いる二酸化炭素回収利用製品の製造システムと併せて、図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0014】
<二酸化炭素回収利用製品(CCU製品)>
本発明に係る二酸化炭素回収利用製品の製造方法及び製造システム(以下、単に「製造方法」又は「製造システム」と略称する場合がある)において製造される二酸化炭素回収利用製品は、一般的に、CCU(Carbon dioxide Capture and Utilization:二酸化炭素の分離回収と有効利用)製品と呼ばれるものであり、以下の説明においては、二酸化炭素回収利用製品全般についてCCU製品と称することがある。
【0015】
二酸化炭素の分離回収と有効利用によって得られるCCU製品としては、一般的に、メタン製品の他、例えば、メタノールや、炭化水素系の合成燃料であるFT(Fischer-Tropsch synthesis)油等が挙げられる。上記のFT油とは、フィッシャー・トロプシュ法(FT法)により、天然ガスや石炭等を原料として、液体炭化水素を合成する方法で得られるものであり、合成石油と呼ばれることもある。
【0016】
本実施形態においては、以下に詳述するように、再生可能エネルギーの一種である、動植物由来の有機物からなるバイオマスを用い、石炭ガス化プロセスから回収した二酸化炭素と混合して各種の処理を実施し、CCU製品として、燃料製品として使用可能なメタンを製造する例について説明する。
【0017】
<二酸化炭素回収利用製品の製造システム>
先ず、本発明を適用した一実施形態である二酸化炭素回収利用製品の製造システムについて説明する。
図1は、本発明を適用した一実施形態である製造システム1の構成を概略で示す全体系統図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の製造システムは、石炭Sのガス化過程で生成するガスを原料として二酸化炭素回収利用製品(
図1中の符号Mを参照)を製造する製造システム1である。
即ち、製造システム1は、石炭SにバイオマスBを混合することでガス化用石炭原料CBを調整する混合装置2と、ガス化用石炭原料CBをガス化して原料ガスG1を生成するガス化炉3と、ガス化炉3で生成された原料ガスG1をシフト反応させることで、原料ガスG1を水素G2及び二酸化炭素G3を含むガスに改質するシフト反応器4と、シフト反応器4で改質された原料ガスG1から二酸化炭素G3を部分回収して製品原料ガス(
図1中の符号G4を参照)を生成する二酸化炭素分離装置5と、二酸化炭素G3が分離された製品原料ガス(同上)を製品化する製品化装置6と、を備え、概略構成される。
【0019】
そして、製造システム1は、二酸化炭素分離装置5が、製品原料ガス(同上)の組成が次式{(水素)/(二酸化炭素)当量比=2.70~4.40}で表される範囲となるように、二酸化炭素G3の回収量を調整し、且つ、混合装置2は、二酸化炭素分離装置5で生成される製品原料ガス中の炭素がバイオマスB由来となるように、石炭Sに対するバイオマスBの混合比を決定する。
【0020】
本実施形態においては、二酸化炭素分離装置5が、原料ガスG1から二酸化炭素G3を部分回収することで、製品原料ガスとしてメタン原料ガスG4を生成させる例を説明する。
また、本実施形態においては、二酸化炭素分離装置5が、メタン原料ガスG4の組成が、次式{(水素)/(二酸化炭素)当量比=3.60~4.40}で表される範囲となるように、二酸化炭素G3の回収量を調整し、且つ、混合装置2が、二酸化炭素分離装置5で生成されるメタン原料ガスG4中の炭素がバイオマスB由来となるように、石炭Sに対するバイオマスBの混合比を決定し、製品化装置6が、メタネーション反応により、二酸化炭素回収利用製品としてメタンMを製造する例を挙げて説明する。
また、本実施形態においては、石炭Sのガス化プロセスに適用した場合の製造システム1を例示して説明する。
【0021】
混合装置2は、石炭Sに対し、バイオマスBを混合することで、ガス化用石炭原料CBを調整するものである。このような混合装置2としては、特に限定されず、石炭SやバイオマスBのような固体同士を均一に混合することが可能な、従来から当該分野で一般的に用いられている混合手段を何ら制限無く採用することが可能である。
【0022】
本実施形態では、詳細を後述するように、混合装置2が、二酸化炭素分離装置5で生成されるメタン原料ガスG4中の炭素がバイオマスB由来となるように、石炭Sに対するバイオマスBの混合比を決定する構成とされている。
なお、
図1においては、詳細を後述するように、混合装置2と、後述のガス化炉3とを一体化した例を示している。
【0023】
ガス化炉3は、上述したように、ガス化用石炭原料CBをガス化して、一酸化炭素(CO)を主成分とする原料ガスG1を生成するものである。
ガス化炉3は、例えば、ガス化用石炭原料CBと酸素とを高温下で反応させることにより、原料ガスG1を生成する。このようなガス化炉3としても、従来から当該分野で一般的に用いられているものを何ら制限無く採用することが可能である。
【0024】
ガス化炉3には、ガス化用石炭原料CBを搬送するための、図示略の搬送ガス(キャリアガス)が投入される。このような搬送ガスとしては、特に限定されないが、例えば、窒素やアルゴン等の不活性なガスの他、二酸化炭素を用いることも可能である。
また、ガス化炉3の内部には、図示略のパージガスが投入される。このようなパージガスとしても、特に限定されないが、例えば、搬送ガスと同様、窒素やアルゴン等の不活性なガスの他、二酸化炭素をパージガスに用いることも可能である。
また、ガス化炉3に投入する搬送ガス及びパージガスとしては、同じガスを用いてもよいし、異なるガスを用いても構わない。
【0025】
上述したように、
図1においては、ガス化炉3を、上記の混合装置2と一体化させた例を示している。これは、本実施形態で例示する製造システム1が、石炭ガス化プロセスから排出される二酸化炭素を回収・利用することでCCU製品を製造するものであり、これら混合装置2及びガス化炉3の両方が、石炭ガス化プロセス中に組み込まれた構成であることが、実使用上、効率的であるためである。
【0026】
なお、ガス化炉3の下流側には、必要に応じて、例えば、原料ガスG1から硫化物を除去するための図示略の脱硫手段等を配置することができる。
【0027】
シフト反応器4は、上述したように、ガス化炉3で生成された原料ガスG1をシフト反応させることで、原料ガスG1を水素(H2)G2及び二酸化炭素(CO2)G3を含むガスに改質するものである。
シフト反応器4は、例えば、Cu-Zn系等の触媒を充填した条件下において、原料ガスG1に水を反応させることで、一酸化炭素(CO)を主成分とする原料ガスG1を、水素G2及び二酸化炭素G3を含むガスに改質する。
シフト反応器4におけるシフト反応は、下記式(1)で表される。
CO+H2O → CO2+H2 ・・・(1)
【0028】
二酸化炭素分離装置5は、上述したように、シフト反応器4で改質された原料ガスG1(水素G2+二酸化炭素G3)から二酸化炭素G3を部分回収して、メタン原料ガスG4を生成する。
二酸化炭素分離装置5は、例えば、セレクソール法やレクチゾール法等の物理吸収法により、改質後の原料ガスG1から二酸化炭素G3を吸収して部分回収する。あるいは、二酸化炭素分離装置5は、例えば、メチルジエタノールアミンやアンモニア等を用いた化学吸収法により、改質後の原料ガスG1から二酸化炭素G3を吸収して部分回収する。
【0029】
本実施形態の製造システム1に備えられる二酸化炭素分離装置5は、メタン原料ガスG4の組成が、次式{(水素)/(二酸化炭素)当量比=3.60~4.40}で表される範囲となるように、二酸化炭素G3の回収量を調整する。これにより、二酸化炭素分離装置5の後段(下流)側に配置される製品化装置6において、メタネーション(メタン化)反応に必要な水素(H2)及び二酸化炭素(CO2)の等量比がバランスするので、未反応の二酸化炭素を含まないCCU製品(メタンM)が得られる。
【0030】
製品化装置6は、上流側に配置された二酸化炭素分離装置5において二酸化炭素G3が分離されたメタン原料ガスG4を製品化し、CCU製品とするものである。即ち、製品化装置6は、メタン原料ガスG4から、メタネーション反応によってメタンMを生成させるものである。
製品化装置6におけるメタネーション反応は、下記式(2)で表される。
CO2+4H2→CH4+2H2O ・・・(2)
【0031】
製品化装置6としては、特に限定されないが、例えば、生体触媒を用いたバイオリアクターや、メタネーション触媒を用いたメタネーション反応装置等が挙げられる。
【0032】
製品化装置6としてバイオリアクターを採用する場合、例えば、メタン原料ガスG4を、温度や圧力等が管理された状態で、反応槽の内部に固定された酵素等の生体触媒からなる反応素子と合成・分解・変換・除去することでメタンMを得ることが可能な構成のものを採用できる。
【0033】
また、製品化装置6としてメタネーション反応装置を採用する場合、メタネーション触媒としては、例えば、担体としてアルミナ等を用いたRh/Mn系やRh系、Ni系、Pd系、Pt系等の触媒のうち、何れかを用いることができる。
【0034】
なお、製品化装置6の下流側には、必要に応じて、例えば、生成させたメタンMを冷却するための図示略の冷却手段を配置することができる。
【0035】
本実施形態の製造システム1は、上述したように、二酸化炭素分離装置5が、メタン原料ガスG4の組成が、次式{(水素)/(二酸化炭素)当量比=3.60~4.40}で表される範囲となるように、二酸化炭素G3の回収量を調整する機能を有するとともに、混合装置2が、二酸化炭素分離装置5で生成されるメタン原料ガスG4中の炭素がバイオマスB由来となるように、石炭Sに対するバイオマスBの混合比を決定する機能を有した構成とされている。即ち、製造システム1は、上記のような、メタン原料ガスG4の組成を最適化する機能と、石炭Sに対するバイオマスBの混合比を最適化する機能の両方を備えることで、簡便な構成によって、カーボンニュートラル(CO2フリー)なCCU製品であるメタンMを生産性よく製造することが可能となる。
【0036】
本実施形態の製造システム1によれば、上記のように、石炭由来の炭素ではなく、バイオマスB由来の炭素を含むメタン原料ガスG4からメタンMを製造するものであり、脱炭素の付加価値を有するCCU製品(メタンM)が得られるものである。従って、本実施形態の製造システム1は、CCU製品を優れた生産性で製造できる産業上のメリットの他、環境保護の観点からも非常に有用なものである。
【0037】
なお、本実施形態の製造システム1によれば、上記のように、二酸化炭素分離装置5における二酸化炭素G3の回収量を、製品原料ガスG4の組成が所定の範囲、即ち、次式{(水素)/(二酸化炭素)当量比=2.70~4.40}で表される範囲となるように調整することで、メタンMのみならず、各種のCCU製品を製造することが可能となる。例えば、上記のH2/CO2当量比を概ね4.00とした場合には、上記式(2)に示した反応式でCCU製品であるメタンMを製造することができる。
【0038】
また、本実施形態の製造システム1によれば、二酸化炭素分離装置5における二酸化炭素G3の回収量を上記のように調整することで、メタネーション反応において二酸化炭素が過剰となるのを防止できるので、製品化装置6の後に、さらに二酸化炭素分離手段を設置する必要が無い。これにより、装置が大型化したり複雑化したりするのを回避できる。
【0039】
なお、本実施形態において、例えば、上記のH2/CO2当量比を概ね3.00とした場合には、下記式(3)で表される反応式により、CCU製品であるメタノール(CH3OH)を製造することが可能となる。
CO2+3H2→CH3OH+H2O ・・・(3)
【0040】
また、例えば、上記のH2/CO2当量比を概ね3.00とした場合には、下記式(4)で表される反応式により、CCU製品であるFT油(CnH2n+2)を製造することが可能となる。
nCO2+(3n+1)H2→CnH2n+2+2nH2O ・・・(4)
但し、上記式(4)中における「n」は、1以上の整数である。
【0041】
本実施形態の製造システム1によれば、上記構成を採用することで、簡便な構成で、カーボンニュートラルなCCU製品であるメタンM等を生産性よく製造することが可能となる。
【0042】
<二酸化炭素回収利用製品(CCU製品)の製造方法>
以下、本発明を適用した一実施形態である二酸化炭素回収利用製品の製造方法について、上記の製造システムの説明と同様、主に
図1を参照しながら説明する。
【0043】
本実施形態の製造方法は、例えば、先に詳述した本実施形態の製造システム1を用いて、石炭Sのガス化過程で生成するガスを原料として二酸化炭素回収利用製品(CCU製品:
図1中のメタンMを参照)を製造する方法である。以下の説明では、既に説明した本実施形態の製造システム1を用いてCCU製品を製造する例について、上記と同じ符号を付与して説明するとともに、既に説明したシステム上の詳細な説明は省略する場合がある。
【0044】
即ち、本実施形態の製造方法は、石炭SにバイオマスBを混合することでガス化用石炭原料CBを調整する混合工程(1)と、ガス化用石炭原料CBをガス化して原料ガスG1を生成するガス化工程(2)と、ガス化工程(2)で生成された原料ガスG1をシフト反応させることで、原料ガスG1を水素G2及び二酸化炭素G3を含むガスに改質するシフト反応工程(3)と、シフト反応工程(3)で改質された原料ガスG1から二酸化炭素G3を部分回収して製品原料ガス(
図1中のメタン原料ガスG4を参照)を生成する二酸化炭素分離工程(4)と、二酸化炭素G3が分離された製品原料ガス(同上)を製品化する製品化工程(5)と、を備え、概略構成される。
【0045】
そして、本実施形態の製造方法は、二酸化炭素分離工程(4)が、製品原料ガス(同上)の組成が、次式{(水素)/(二酸化炭素)当量比=2.70~4.40}で表される範囲となるように、二酸化炭素G3の回収量を調整し、且つ、混合工程(1)が、二酸化炭素分離工程(4)で生成される製品原料ガス中の炭素がバイオマス由来となるように、石炭Sに対するバイオマスの混合比を決定する。
【0046】
本実施形態の製造方法においては、上述した製造システム1の説明における二酸化炭素分離装置5の場合と同様、二酸化炭素分離工程(4)が、原料ガスG1から二酸化炭素G3を部分回収することで、製品原料ガスとしてメタン原料ガスG4を生成させる例を説明する。
同様に、本実施形態においては、二酸化炭素分離工程(4)が、メタン原料ガスG4の組成が、次式{(水素ガス)/(二酸化炭素)当量比=3.60~4.40}で表される範囲となるように、二酸化炭素G3の回収量を調整し、且つ、混合工程(1)が、二酸化炭素分離工程(4)で生成されるメタン原料ガスG4中の炭素がバイオマスB由来となるように、石炭Sに対するバイオマスBの混合比を決定し、製品化工程(5)が、メタネーション反応により、二酸化炭素回収利用製品としてメタンMを製造する例を挙げて説明する。
また、本実施形態においては、上位同様、石炭Sのガス化プロセスに適用した場合の製造方法を例示して説明する
【0047】
混合工程(1)においては、例えば、
図1中に示した混合装置2を用いて、石炭Sに対し、バイオマスBを混合することで、ガス化用石炭原料CBを調整する。
本実施形態では、詳細を後述するように、混合工程(1)において、二酸化炭素分離工程(4)で生成されるメタン原料ガスG4中の炭素がバイオマスB由来となるように、石炭Sに対するバイオマスBの混合比を決定する構成とされている。
【0048】
ガス化工程(2)においては、例えば、
図1中に示したガス化炉3を用いて、ガス化用石炭原料CBをガス化して、一酸化炭素(CO)を主成分とする原料ガスG1を生成する。
ガス化工程(2)は、例えば、ガス化用石炭原料CBと酸素とを高温下で反応させることにより、原料ガスG1を生成する。
【0049】
上述したように、
図1においては、本実施形態の製造方法で用いる製造システム1に備えられる混合装置2とガス化炉3とが一体化された例を示している。即ち、本実施形態における混合工程(1)及びガス化工程(2)は、石炭ガス化プロセス中に組み込まれた構成となる。
【0050】
シフト反応工程(3)は、例えば、
図1中に示したシフト反応器4を用いて、ガス化工程(2)で生成された原料ガスG1をシフト反応させることで、原料ガスG1を水素(H
2)G2及び二酸化炭素(CO
2)G3を含むガスに改質する。
シフト反応工程(3)におけるシフト反応は、上記同様、下記式(1)で表される。
CO+H
2O → CO
2+H
2 ・・・(1)
【0051】
二酸化炭素分離工程(4)は、例えば、
図1中に示した二酸化炭素分離装置5を用いて、シフト反応工程(3)で改質された原料ガスG1から二酸化炭素G3を部分回収してメタン原料ガスG4を生成する。
【0052】
本実施形態の二酸化炭素分離工程(4)においては、メタン原料ガスG4の組成が、次式{(水素)/(二酸化炭素)当量比=3.60~4.40}で表される範囲となるように、二酸化炭素G3の回収量を調整する。これにより、二酸化炭素分離工程(4)の下流側の製品化工程(5)において、メタネーション(メタン化)反応に必要な水素(H2)及び二酸化炭素(CO2)の等量比がバランスするので、未反応の二酸化炭素を含まないCCU製品(メタンM)が得られる。
【0053】
製品化工程(5)は、例えば、
図1中に示した製品化装置6を用いて、二酸化炭素G3が分離されたメタン原料ガスG4を製品化し、CCU製品とする。即ち、製品化工程(5)は、メタン原料ガスG4から、メタネーション反応によってメタンMを生成させる。
製品化工程(5)におけるメタネーション反応は、下記式(2)で表される。
CO
2+4H
2→CH
4+2H
2O ・・・(2)
【0054】
本実施形態の製造方法は、上述した製造システム1の説明と同様、二酸化炭素分離工程(4)において、メタン原料ガスG4の組成が、次式{(水素)/(二酸化炭素)当量比=3.60~4.40}で表される範囲となるように、二酸化炭素G3の回収量を調整するとともに、混合工程(1)が、二酸化炭素分離工程(4)で生成されるメタン原料ガスG4中の炭素がバイオマスB由来となるように、石炭Sに対するバイオマスBの混合比を決定する方法とされている。即ち、本実施形態の製造方法では、メタン原料ガスG4の組成を最適化する機能と、石炭Sに対するバイオマスBの混合比を最適化する機能の両方を備えることで、工程が増大することなく、カーボンニュートラル(CO2フリー)なCCU製品であるメタンMを生産性よく製造することが可能となる。
【0055】
本実施形態の製造方法によれば、上記同様、石炭由来の炭素ではなく、バイオマスB由来の炭素を含むメタン原料ガスG4からメタンMを製造するものであり、脱炭素の付加価値を有するメタンMが得られるものなので、CCU製品を優れた生産性で製造できる産業上のメリットの他、環境保護の観点からも非常に有用である。
【0056】
また、本実施形態の製造方法によれば、二酸化炭素分離工程(4)における二酸化炭素G3の回収量を上記のように調整することで、メタネーション反応において二酸化炭素が過剰となるのを防止できるので、製品化工程(5)の後に、さらに二酸化炭素分離工程を設置する必要が無いので、工程が煩雑になったりするのを回避できる。
【0057】
なお、本実施形態の製造方法においても、上述した製造システム1の説明と同様、二酸化炭素分離工程(4)における二酸化炭素G3の回収量を、製品原料ガスG4の組成、即ち、H2/CO2当量比が、次式{(水素)/(二酸化炭素)当量比=2.70~4.40}で表される範囲を満たすように調整することで、メタンMのみならず、各種のCCU製品を製造することが可能となる。例えば、上記のH2/CO2当量比を概ね4.00とした場合には、上記式(2)に示した反応式でCCU製品であるメタンMを製造することができる。
【0058】
また、例えば、上記のH2/CO2当量比を概ね3.00とした場合には、下記式(3)で表される反応式でCCU製品であるメタノール(CH3OH)を製造することが可能となる。
CO2+3H2→CH3OH+H2O ・・・(3)
【0059】
また、例えば、上記のH2/CO2当量比を概ね3.00とした場合には、下記式(4)で表される反応式により、CCU製品であるFT油(CnH2n+2)を製造することが可能となる。
nCO2+(3n+1)H2→CnH2n+2+2nH2O ・・・(4)
但し、上記式(4)中における「n」は、1以上の整数である。
【0060】
本実施形態の製造方法によれば、上記手順及び条件を採用することで、工程が増大することなく、カーボンニュートラルなCCU製品であるメタンM等を生産性よく製造することが可能となる。
【0061】
<二酸化炭素回収利用製品の製造方法及び製造システムのシミュレーション>
以下、本発明に係る二酸化炭素回収利用製品の製造方法及び製造システムを用いてCCU製品を製造する場合のシミュレーション結果について、
図2~4を参照しながら説明する。
図2~4は、本実施形態の製造方法(及び製造システム)について、特定の条件によるシミュレーションを行った一例を示す系統図である。
【0062】
本シミュレーションにおいては、石炭としてアダロ炭を用い、これと混合するバイオマスとしてブラックペレットを用いて、CCU製品としてメタンを製造する場合について、以下に説明するように条件を変更しながら、市販のソフトウェアを用いてシミュレーションを実施した。
なお、以下の説明における「%」は、特に指定のない限り「質量%」を表すものとする。
【0063】
また、以下に説明する各シミュレーションにおいては、二酸化炭素分離装置(二酸化炭素分離工程)から排出されるメタン原料ガス中の炭素がバイオマス由来となるように、石炭とバイオマスとの混合比を調整した。
また、上記の二酸化炭素分離装置(二酸化炭素分離工程)においては、メタン原料ガスの組成が、H2/CO2当量比で4.00となるように、二酸化炭素を部分回収した。
さらに、以下の各シミュレーションにおいては、二酸化炭素分離装置(二酸化炭素分離工程)から排出されるメタン原料ガスの組成を基に、製品化装置(製品化工程)から排出されるガスの組成を算出した。
【0064】
[シミュレーション(1)]
シミュレーション(1)においては、
図2の系統図に示す製造システムにより、以下に説明する各条件でメタンを製造するシミュレーションを実施した。本シミュレーションでは、石炭の投入量を、投入炭素(C)換算で21(t/h)とし、これと混合するバイオマスの投入量を、投入炭素換算で11(t/h)とすることで、これらの混合比を{石炭:バイオマス=69:31}とした。
また、本シミュレーションでは、石炭とバイオマスとが混合された原料ガスの搬送ガスとして窒素を用いるとともに、ガス化炉内のパージガスとしても窒素を用いた。
【0065】
この結果、製品化装置(製品化工程)であるバイオリアクターから排出されるメタネーション反応後の合流ガスは、排出炭素換算で11(t/h)であり、また、H2/CO2当量比は4.0であった。
また、バイオリアクターから排出されるガスのうち、メタンの量は、排出ガス全量に対して56%で、二酸化炭素が0.1%であり、その他、窒素が41%、一酸化炭素が2.2%であった。
【0066】
[シミュレーション(2)]
シミュレーション(2)においては、
図3の系統図に示す製造システムにより、以下に説明する各条件でメタンを製造するシミュレーションを実施した。本シミュレーションでは、石炭の投入量を、投入炭素換算で20(t/h)とし、これと混合するバイオマスの投入量を、投入炭素換算で10(t/h)とすることで、これらの混合比を{石炭:バイオマス=70:30}とした。
また、本シミュレーションでは、石炭とバイオマスとが混合された原料ガスの搬送ガスとして二酸化炭素(CO
2)を用いるとともに、ガス化炉内のパージガスとして窒素を用いた。この際の、搬送ガスに用いる二酸化炭素の投入量は、投入炭素換算で5.7(t/h)とした。
【0067】
この結果、製品化装置(製品化工程)であるバイオリアクターから排出されるメタネーション反応後の合流ガスは、排出炭素換算で10(t/h)であり、また、H2/CO2当量比は4.0であった。
また、バイオリアクターから排出されるガスのうち、メタンの量は、排出ガス全量に対して79%で、二酸化炭素が0.2%であり、その他、窒素が17%、一酸化炭素が3.5%であった。
【0068】
[シミュレーション(3)]
シミュレーション(3)においては、
図4の系統図に示す製造システムにより、以下に説明する各条件でメタンを製造するシミュレーションを実施した。本シミュレーションでは、石炭の投入量を、投入炭素換算で21(t/h)とし、これと混合するバイオマスの投入量を、投入炭素換算で10(t/h)とすることで、これらの混合比を{石炭:バイオマス=70:30}とした。
また、本シミュレーションでは、石炭とバイオマスとが混合された原料ガスの搬送ガスとして二酸化炭素(CO
2)を用いるとともに、ガス化炉内のパージガスとしても二酸化炭素を用いた。この際の、搬送ガス及びパージガスに用いる二酸化炭素の投入量は、投入炭素換算で7.4(t/h)とした。
【0069】
この結果、製品化装置(製品化工程)であるバイオリアクターから排出されるメタネーション反応後の合流ガスは、排出炭素換算で10(t/h)であり、また、H2/CO2当量比は4.0であった。
また、バイオリアクターから排出されるガスのうち、メタンの量は、排出ガス全量に対して90%で、二酸化炭素が0.2%であり、その他、窒素が4.9%、一酸化炭素が4.2%であった。
【0070】
[シミュレーションによる評価]
上記のシミュレーション結果より、本発明に係る製造システムを用い、本発明に係る製造方法でメタンを製造することで、二酸化炭素の残存量が極めて少ないカーボンニュートラルなCCU製品であるメタンを製造できることが確認できた。より具体的には、石炭とバイオマスとの混合比を、概ね{石炭:バイオマス=7:3}程度に調整することにより、バイオマス由来であるカーボンニュートラルなメタンが得られることが確認できた。
なお、上記の効果は、搬送ガスやパージガスの種類等に左右されることなく、十分に得られることが確認できた。
【0071】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態の二酸化炭素回収利用製品の製造方法によれば、二酸化炭素分離工程が、製品原料ガスにおける水素/二酸化炭素の当量比が所定範囲となるように二酸化炭素の回収量を調整し、且つ、混合工程が、二酸化炭素分離工程で生成される製品原料ガス中の炭素がバイオマス由来となるように、石炭に対するバイオマスの混合比を決定する方法を採用している。
上記のように、バイオマスの混合比を調整し、且つ、二酸化炭素を最適な回収量で分離しながら製品原料ガスを生成させることで、工程が増大することなく、カーボンニュートラルなメタン等の二酸化炭素回収利用製品を生産性よく製造することが可能となる。
【0072】
また、本実施形態の二酸化炭素回収利用製品の製造システム1によれば、二酸化炭素分離装置5が、製品原料ガスにおける水素/二酸化炭素の当量比が所定範囲となるように二酸化炭素の回収量を調整し、且つ、混合装置2が、二酸化炭素分離装置5で生成される製品原料ガス中の炭素がバイオマス由来となるように、石炭に対するバイオマスの混合比を決定する構成を採用している。
上記構成により、バイオマスの混合比を調整し、且つ、二酸化炭素を最適な回収量で分離しながら製品原料ガスを生成させることで、簡便な構成によって、カーボンニュートラルなメタン等の二酸化炭素回収利用製品を生産性よく製造することが可能となる。
【0073】
<本発明の他の形態>
なお、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の二酸化炭素回収利用製品の製造方法及び製造システムは、バイオマスの混合比を調整し、且つ、二酸化炭素を最適な回収量で分離しながら製品原料ガスを生成させることで、簡便な構成によって、カーボンニュートラルな二酸化炭素回収利用製品を生産性よく製造することが可能なものである。従って、本発明は、例えば、石炭ガス化プロセスや、製鉄プロセス、火力発電プラント、各種の化学プラント等から排出される二酸化炭素(CO2)を回収し、CCU製品の製造に利用する用途において非常に好適である。
【符号の説明】
【0075】
1…二酸化炭素回収利用製品(CCU製品)の製造システム(製造システム)
2…混合装置
3…ガス化炉
4…シフト反応器
5…二酸化炭素分離装置
6…製品化装置
B…バイオマス
CB…ガス化用石炭原料
M…メタン(二酸化炭素回収利用製品(CCU製品))
S…石炭
G1…原料ガス
G2…水素
G3…二酸化炭素
G4…メタン原料ガス(製品原料ガス)