(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121858
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】植栽計画評価システム、植栽計画評価装置、植栽計画評価方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240902BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029062
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】渡部 陽介
(72)【発明者】
【氏名】松岡 達也
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC11
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】大規模開発において効率的に植栽計画を立案すること。
【解決手段】植栽計画評価システムは、計画地における植栽計画を取得する取得部と、前記計画地における日照時間と、前記計画地における天空率とを算出する算出部と、前記日照時間と、前記天空率と、植栽植物ごとに環境条件が対応付けられた植栽植物情報とに基づいて、前記植栽計画に含まれる植栽植物が前記計画地に適した植栽植物であるか否かを評価する評価部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計画地における植栽計画を取得する取得部と、
前記計画地における日照時間と、前記計画地における天空率とを算出する算出部と、
前記日照時間と、前記天空率と、植栽植物ごとに環境条件が対応付けられた植栽植物情報とに基づいて、前記植栽計画に含まれる植栽植物が前記計画地に適した植栽植物であるか否かを評価する評価部と、
を備える植栽計画評価システム。
【請求項2】
前記算出部は、前記計画地における周辺建物の形状および配置に基づいて前記日照時間と、前記植栽計画に含まれる植栽地内の緑地構造および配置に基づいて前記天空率とを算出する、
請求項1に記載の植栽計画評価システム。
【請求項3】
前記算出部は、前記植栽地における所定範囲内の前記日照時間の平均値および前記天空率の平均値を算出し、
前記評価部は、前記日照時間の平均値および前記天空率の平均値と、前記植栽植物情報とに基づいて、前記植栽計画に含まれる植栽植物が前記計画地に適した植栽植物であるか否かを評価する
請求項2に記載の植栽計画評価システム。
【請求項4】
前記植栽計画に含まれる植栽植物が前記計画地に適した植栽植物でない場合に、代替の植栽植物の候補を前記植栽植物情報から抽出する抽出部、
をさらに備える請求項3に記載の評価システム。
【請求項5】
計画地における植栽計画を取得する取得部と、
前記計画地における日照時間と、前記計画地における天空率とを算出する算出部と、
前記日照時間と、前記天空率と、植栽植物ごとに環境条件が対応付けられた植栽植物情報とに基づいて、前記植栽計画に含まれる植栽植物が前記計画地に適した植栽植物であるか否かを評価する評価部と、
を備える植栽計画評価装置。
【請求項6】
植栽計画評価装置のコンピュータが実行する植栽計画評価方法であって、
計画地における植栽計画を取得する取得過程と、
前記計画地における日照時間と、前記計画地における天空率とを算出する算出過程と、
前記日照時間と、前記天空率と、植栽植物ごとに環境条件が対応付けられた植栽植物情報とに基づいて、前記植栽計画に含まれる植栽植物が前記計画地に適した植栽植物であるか否かを評価する評価過程と、
を有する植栽計画評価方法。
【請求項7】
植栽計画評価装置のコンピュータに、
計画地における植栽計画を取得する取得ステップと、
前記計画地における日照時間と、前記計画地における天空率とを算出する算出ステップと、
前記日照時間と、前記天空率と、植栽植物ごとに環境条件が対応付けられた植栽植物情報とに基づいて、前記植栽計画に含まれる植栽植物が前記計画地に適した植栽植物であるか否かを評価する評価ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植栽計画評価システム、植栽計画評価装置、植栽計画評価方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
都市再開発等の大規模開発では、グリーンインフラストラクチャー推進を背景に大規模緑化されるケースが増加している。例えば、都心再開発では、高層ビルが立ち並ぶ条件下での植栽計画の立案が求められる。特に、高層ビルの隣接地での植栽計画は、高層ビルによる日陰、強風等の過酷な環境条件に適応可能な植栽植物を選定したり、適切な位置に配置したりする必要がある。
例えば、非特許文献1には、温熱環境と景観とに配慮した樹木配置、非特許文献2には、温熱環境と生態系ネットワークとを考慮した緑地配置について開示されている。また、例えば、非特許文献3には、主要な植栽植物の生育環境などの定性的な知見が開示され、非特許文献4には、一部植物についての日照条件の環境耐性について開示されている。また、特許文献1には、建物形状及び樹木種が類似する既存建物の下での実際の樹木生育評価をデータベース化し、計画建物の環境条件下での植物の生育を予測、可否判定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】藤原邦彦、浅輪貴史、清野友規、“熱放射環境と景観の両面に配慮した都市のオープンスペースにおける樹木配置の多目的最適化”、日本建築学会技術報告集28巻68号、320-325、<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijt/28/68/28_320/_pdf>
【非特許文献2】渡部陽介、佐々木澄、小野梓、横田樹広、“都市緑地整備による生態系ネットワーク効果と温熱環境改善効果の統合評価システムの開発”、第43回環境システム研究論文発表会講演集、51-56
【非特許文献3】公益財団法人 日本緑化センター、一般社団法人 日本植木協会、“緑化樹木ガイドブック改訂版”、一般財団法人 建設物価調査会
【非特許文献4】近藤三雄、“都市高速道路に係わる道路緑化に関する研究-特に高架下空間の日照状態と緑化について”、道路と自然28、42-49
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1-4を用いても、植栽計画における過酷な環境条件下での植物の選定・配置は、既知知見と植栽計画の図面やリストを目視で照らし合わせて適性を確認する必要があり、煩雑である。また、都市緑化には、様々な植物が用いられるが、特許文献1では樹木に限定されており、草本については考慮されていない。また、特許文献1では、草本など林縁や林床に生育する植物に大きな影響を与える植栽計画の緑地構造や配置については考慮されていない。このように、大規模開発において効率的に植栽計画を立案することができないという課題があった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、大規模開発において効率的に植栽計画を立案することができる植栽計画評価システム、植栽計画評価装置、植栽計画評価方法、およびプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の一態様は、計画地における植栽計画を取得する取得部と、前記計画地における日照時間と、前記計画地における天空率とを算出する算出部と、前記日照時間と、前記天空率と、植栽植物ごとに環境条件が対応付けられた植栽植物情報とに基づいて、前記植栽計画に含まれる植栽植物が前記計画地に適した植栽植物であるか否かを評価する評価部と、を備える植栽計画評価システムである。
【0008】
また、本発明の一態様は、計画地における植栽計画を取得する取得部と、前記計画地における日照時間と、前記計画地における天空率とを算出する算出部と、前記日照時間と、前記天空率と、植栽植物ごとに環境条件が対応付けられた植栽植物情報とに基づいて、前記植栽計画に含まれる植栽植物が前記計画地に適した植栽植物であるか否かを評価する評価部と、を備える植栽計画評価装置である。
【0009】
また、本発明の一態様は、植栽計画評価装置のコンピュータが実行する植栽計画評価方法であって、計画地における植栽計画を取得する取得過程と、前記計画地における日照時間と、前記計画地における天空率とを算出する算出過程と、前記日照時間と、前記天空率と、植栽植物ごとに環境条件が対応付けられた植栽植物情報とに基づいて、前記植栽計画に含まれる植栽植物が前記計画地に適した植栽植物であるか否かを評価する評価過程と、を有する植栽計画評価方法である。
【0010】
また、本発明の一態様は、栽計画評価装置のコンピュータに、計画地における植栽計画を取得する取得ステップと、前記計画地における日照時間と、前記計画地における天空率とを算出する算出ステップと、前記日照時間と、前記天空率と、植栽植物ごとに環境条件が対応付けられた植栽植物情報とに基づいて、前記植栽計画に含まれる植栽植物が前記計画地に適した植栽植物であるか否かを評価する評価ステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によれば、大規模開発において効率的に植栽計画を立案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係る植栽計画評価システムの構成の一例を示すシステム構成図である。
【
図2】第1の実施形態に係る植栽計画評価装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係る植栽植物情報の一例を示す図である。
【
図4】第1の実施形態に係るモデル管理装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】第1の実施形態に係る衛星データ管理装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】第1の実施形態に係る植栽計画評価処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施形態>
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
[植栽計画評価システムの構成]
まず、第1の実施形態に係る植栽計画評価システムSYSについて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る植栽計画評価システムSYSの構成の一例を示すシステム構成図である。
植栽計画評価システムSYSは、植栽計画評価装置1と、モデル管理装置2と、衛星データ管理装置3と、を含んで構成される。
植栽計画評価装置1と、モデル管理装置2と、衛星データ管理装置3とは、ネットワークNWを介して通信可能に接続される。
【0015】
植栽計画評価装置1は、計画地における植栽計画を取得すると、当該植栽計画に含まれる植栽植物が計画地に適した植栽植物であるか否かを評価する機能を有する。
具体的には、植栽計画評価装置1は、計画地における植栽計画を取得する。植栽計画評価装置1は、計画地における日照時間と、計画地における天空率とを算出する。植栽計画評価装置1は、日照時間と、天空率と、植栽植物ごとに環境条件が対応付けられた植栽植物情報とに基づいて、植栽計画に含まれる植栽植物が計画地に適した植栽植物であるか否かを評価する。
【0016】
より具体的には、植栽計画評価装置1は、3D都市モデル情報を取得し、計画地の日照時間を算出する。3D都市モデルは、実世界(物理空間)における都市を仮想的な世界(サイバー空間)にいて再現した3次元の地理空間データであり、例えば、建物の形状、配置等を含むモデルである。また、植栽計画評価装置1は、3D衛星データを取得し、植栽計画における植栽地内の緑地構造、配置に基づく天空率を算出する。3D衛星データは、地表面とその上にある地物表面の標高とからなる三次元データで、建物や樹木等の高さを含むモデルである。植栽計画評価装置1は、日照時間と、天空率と、植栽植物ごとに環境条件が対応付けられた植栽植物情報とに基づいて、植栽計画に含まれる植栽植物が計画地に適した植栽植物であるか否かを評価する。
【0017】
モデル管理装置2は、3D都市モデルを管理するサーバ装置としての機能を有する。
衛星データ管理装置3は、3D衛星データを管理するサーバ装置としての機能を有する。
【0018】
[植栽計画評価装置の構成]
次いで、植栽計画評価装置1の構成について説明する。
図2は、第1の実施形態に係る端末装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
植栽計画評価装置1は、通信部11と、制御部12と、記憶部13と、入力部14と、出力部15と、を含んで構成される。通信部11と、制御部12と、記憶部13と、入力部14と、出力部15とは、バスを介して相互に接続される。
【0019】
入力部14は、マウス、キーボード、タッチパネルなどの入力装置である。
出力部15は、表示部、スピーカなどの出力装置である。
【0020】
通信部11は、ネットワークを介してモデル管理装置2および衛星データ管理装置3と通信する。通信部11は、制御部12によって制御され、制御部12から出力される各種情報を他の装置に送信する。通信部11は、他の装置から送信されたコンテンツなどの各種情報を受信し、受信した各種情報を制御部12に出力する。
【0021】
制御部12は、植栽計画評価装置1の各部の処理を制御し、植栽計画評価装置1の機能を発揮する。制御部12は、専用のハードウェアで構成されてもよいが、汎用のコンピュータシステムで構成されてもよい。コンピュータシステムは、少なくとも演算処理装置と記憶媒体を備える。演算処理装置として、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサが適用されうる。当該記憶媒体として記憶部(不図示)とフラッシュメモリ(不図示)が用いられる。演算処理装置は、例えば、フラッシュメモリに予め記憶されたプログラムを読み出し、読み出したプログラムを記憶部に展開する。演算処理装置は、記憶部に展開されたプログラムを実行して制御部12の機能を実現する。
【0022】
なお、ここで言うCPUは、プロセッサ一般のことを示すものであって、狭義のいわゆるCPUと呼ばれるデバイスのことだけではなく、例えばGPUやDSP等も含む。また、ここで言うCPUは、一つのプロセッサで実現されることに限られず、同じ、または異なる種類の複数のプロセッサを組み合わせることで実現されてもよい。
【0023】
制御部12は、取得部121と、算出部122と、評価部123と、出力処理部124と、植栽植物情報更新部125と、を含んで構成される。
取得部121は、計画情報取得部1211と、3D都市モデル取得部1212と、3D衛星データ取得部1213と、を含んで構成される。
【0024】
計画情報取得部1211は、ユーザから入力さえる計画情報を取得する。計画情報は、計画地の植栽計画である。植栽計画には、植栽植物の植物種、植栽地内の緑地構造、植栽の配置等が含まれる。計画情報取得部1211は、取得した計画情報を計画情報記憶部131に記憶させる。
【0025】
3D都市モデル取得部1212は、通信部11を介してモデル管理装置2から3D都市モデルを取得する。3D都市モデル取得部1212は、取得した3D都市モデルを3D都市モデル記憶部132に記憶させる。
【0026】
3D衛星データ取得部1213は、通信部11を介して衛星データ管理装置3から3D衛星データを取得する、3D衛星データ取得部1213は、取得した3D衛星データを3D衛星データ記憶部133に記憶させる。
【0027】
算出部122は、日照時間算出部1221と、天空率算出部1222と、を含んで構成される。
日照時間算出部1221は、計画情報記憶部131から計画情報を読み出し、3D都市モデル記憶部132から3D都市モデルを読み出す。日照時間算出部1221は、3D都市モデルから計画地を含む周辺建物の形状、配置に基づき日影解析を行う。具体的には、日照時間算出部1221は、植栽地を含む外構空間における夏至、春分、秋分の一日あたりの平均日照時間をそれぞれ算出する。日照時間算出部1221は、算出した平均日照時間を、所定閾値に基づいて複数のクラスのうちのいずれに属するかを分級する。日照時間算出部1221は、例えば、日照時間が4時間以上である場合にクラス「I」、日照時間が2時間30分以上4時間未満である場合にクラス「II」、日照時間が1時間以上2時間30分未満である場合にクラス「III」、日照時間が20分以上1時間未満である場合にクラス「IV」、日照時間が20分未満である場合にクラス「V」などのように、算出した日照時間に基づいて分級する。日照時間算出部1221は、日照時間の分級結果に基づいて、日照時間分布図を生成する。日照時間算出部1221は、生成した日照時間分布図を評価部123に出力する。
【0028】
天空率算出部1222は、計画情報記憶部131から計画情報を読み出し、3D衛星データ記憶部133から3D衛星データを読み出す。天空率算出部1222は、3D衛星データから計画地を含む周辺建物や樹木等の高さに基づき天空率を算出する。天空率算出部1222は、算出した天空率を、所定閾値に基づいて複数のクラスのうちのいずれに属するかを分級する。天空率算出部1222は、例えば、天空率が35%以上である場合にクラス「I」、天空率が25%以上35%未満である場合にクラス「II」、天空率が15%以25%未満である場合にクラス「III」、天空率が5%以上15%未満である場合にクラス「IV」、天空率が5%未満である場合にクラス「V」などのように、算出した天空率に基づいて分級する。天空率算出部1222は、天空率の分級結果に基づいて、天空率分布図を生成する。天空率算出部1222は、生成した天空率分布図を評価部123に出力する。
【0029】
なお、算出部122は、日照時間、天空率などの光環境に加えてまたは代えて、土厚、水分などの土壌環境、勾配などの微地形、風速などの風環境などの各環境条件のパラメータを算出してもよい。この場合、算出部122は、算出したそれぞれのパラメータについての所定閾値に基づいて複数のクラスのうちのいずれに属するかを分級すればよい。
【0030】
評価部123は、平均算出部1231と、適正判定部1232と、不適植栽植物抽出部1233と、不適リスト生成部1234と、代替植栽植物抽出部1235と、代替リスト生成部1236と、を含んで構成される。
【0031】
平均算出部1231は、日照時間算出部1221から入力された日照時間分布図と、天空率算出部1222から入力された天空率分布図と、計画情報記憶部131から読みだした植栽計画とに基づいて、日照時間の平均値および天空率の平均値を算出する。具体的には、平均算出部1231は、日照時間分布図と、天空率分布図と、植栽計画に含まれる植栽植物を表す植物データ(ポリゴン、もしくはポイントなど)をデジタル地図上で重ね合わせ、植栽地の近傍、例えば半径5mの範囲の日照時間、天空率の平均値などの環境条件のパラメータの平均値をそれぞれ算出する。平均算出部1231は、算出した日照時間の平均値、天空率の平均値などの環境条件のパラメータの平均値を適正判定部1232に出力する。
【0032】
適正判定部1232は、平均算出部1231から入力された日照時間の平均値、天空率の平均値などの環境条件のパラメータの平均値と、植栽植物情報記憶部134から読みだした植栽植物情報とに基づいて、計画地において植栽計画に含まれる植栽植物が適した植栽植物であるか否かを判定する。具体的には、適正判定部1232は、植栽植物情報を参照し、植栽計画に含まれる植栽植物の環境条件が植栽植物情報に含まれる環境条件の適正範囲内か否かを判定する。
【0033】
具体的には、適正判定部1232は、植栽計画に含まれる植栽植物の環境条件が植栽植物情報に含まれる環境条件の適正範囲内である場合、「適正」と判定する。一方、適正判定部1232は、植栽計画に含まれる植栽植物の環境条件が植栽植物情報に含まれる環境条件の適正範囲内でない場合、すなわち環境条件の適正範囲外である場合、「不適」と判定する。適正範囲内とは、例えば、植栽計画に含まれる植栽植物の環境条件が、植栽植物情報に含まれる該当植栽植物の環境条件と一致するクラスである場合のことである。
【0034】
より具体的には、適正判定部1232は、植栽植物情報を参照し、植栽計画に含まれる植栽植物の環境条件が、植栽植物情報に含まれる環境条件の適正範囲内か否かを判定する。このことにより、適正判定部1232は、適正範囲であれば、植栽計画に含まれる植栽植物が計画地に適した植栽植物であると評価することができ、適正範囲でなければ、植栽計画に含まれる植栽植物が計画地に適した植栽植物ではないと評価することができる。
【0035】
なお、適正範囲は、植栽植物情報に含まれる該当植栽植物の環境条件のクラスを含む複数のクラスであってもよい。例えば、植栽植物情報に含まれる該当植栽植物の環境条件がクラスIIであれば、適正範囲をクラスI、クラスII、クラスIIIのように複数のクラスによって予め設定されてもよい。
【0036】
適正判定部1232は、計画地における植栽計画の植栽植物の適正か否かの判定結果を、植栽計画および算出部122が算出した環境条件のパラメータと対応付けてリスト記憶部135に記憶させる。
【0037】
不適植栽植物抽出部1233は、リスト記憶部135から計画地における植栽計画の植栽植物の適正か否かの判定結果を読み出し、「不適」と判定された植栽植物を抽出する。不適植栽植物抽出部1233は、抽出した「不適」と判定された植栽植物を表す抽出結果を不適リスト生成部1234に出力する。
【0038】
不適リスト生成部1234は、不適植栽植物抽出部1233が抽出した「不適」と判定された植栽植物のリストである不適リストを生成する。不適リスト生成部1234は、生成した不適リストを植栽計画と対応付けてリスト記憶部135に記憶させる。
【0039】
代替植栽植物抽出部1235は、リスト記憶部135から読み出した不適リストと、植栽植物情報記憶部134から読み出した植栽植物情報とに基づいて、代替植栽植物を抽出する。具体的には、代替植栽植物抽出部1235は、不適リストに含まれる植栽植物ごとに、当該植栽植物の環境条件が適正範囲内となる植栽植物の植物種または植物名を植栽植物情報から代替植栽植物の候補として抽出する。代替植栽植物抽出部1235は、抽出結果を代替リスト生成部1236に出力する。
【0040】
代替リスト生成部1236は、代替植栽植物抽出部1235が抽出した不適リストに含まれる植栽植物ごとの代替植栽植物の候補のリストを代替リストとして生成する。代替リスト生成部1236は、生成した代替リストを植栽計画と対応付けてリスト記憶部135に記憶させる。
【0041】
出力処理部124は、リスト記憶部135から不適リストを読み出し、通信部11または出力部15を介して不適リストを出力する。当該不適リストは、リスト形式であってもよいし、図面形式であってもよい。また、出力処理部124は、リスト記憶部135から代替リストを読み出し、通信部11または出力部15を介して代替リストを出力する。当該代替リストは、リスト形式であってもよいし、図面形式であってもよい。
【0042】
植栽植物情報更新部125は、植栽植物の生育実績として、植栽植物名、植栽植物の種別、生育環境タイプ、各種環境条件などを定期、あるいは不定期に通信部11、入力部14を介してユーザまたは他のサーバ装置から取得して植栽植物情報記憶部134が記憶する植栽植物情報を構築、更新する。
【0043】
記憶部13は、計画情報記憶部131と、3D都市モデル記憶部132と、3D衛星データ記憶部133と、植栽植物情報記憶部134と、リスト記憶部135と、を含んで構成される。
【0044】
計画情報記憶部131は、計画情報を記憶する。
3D都市モデル記憶部132は、3D都市モデルを記憶する。
3D衛星データ記憶部133は、3D衛星データを記憶する。
植栽植物情報記憶部134は、植栽植物情報を記憶する。
【0045】
リスト記憶部135は、計画地における植栽計画の植栽植物の適正か否かの判定結果を、植栽計画および算出部122が算出した環境条件のパラメータと対応付けて記憶する。また、リスト記憶部135は、不適リストを植栽計画と対応付けて記憶する。また、リスト記憶部135は、代替リストを植栽計画と対応付けて記憶する。
【0046】
次いで、植栽植物情報記憶部134が記憶する植栽植物情報について説明する。
図3は、第1の実施形態に係る植栽植物情報の一例を示す図である。
植栽植物情報は、都市緑化において用いられる樹木・草本などの植栽植物について、植栽植物ごとの生育環境に適した光環境条件、土壌条件、微地形条件、風環境条件などの環境条件が対応付けられた情報である。例えば、植栽植物情報は、光環境条件のパラメータとして日照時間や天空率が用いられる。また、植栽植物情報は、土壌条件のパラメータとして土厚、水分が用いられる。また、植栽植物情報は、微地形環境条件のパラメータとして勾配が用いられる。また、植栽植物情報は、風環境条件のパラメータとして風速が用いられる。
【0047】
本実施形態に係る植栽植物情報における各環境条件の各パラメータは、数値データそのものではなく、数値データを所定閾値によって複数段階、例えば5段階で分級されたクラスを表す値を用いる。
【0048】
図示する例において、植栽植物情報は、「植物名」ごとに、「植物種」と、「生育環境タイプ」と、「光環境条件」の各パラメータと、「土壌環境条件」の各パラメータと、「微地形環境条件」の各パラメータと、「風環境条件」の各パラメータとが対応付けられた情報である。
【0049】
例えば、植栽植物情報の「植物名」は、植栽植物の名称を表す。また、「植物種」は、詳細植物の種類、例えば、「高木(常緑)」、「高木(落葉)」、「中低木(常緑)」、「草本」などの種類を表す。「生育環境タイプ」は、植栽植物の生育環境を表し、例えば、「常緑樹林」、「落葉樹林」、「草地」などのタイプを表す。「光環境条件」は、「日照時間」と「天空率」との各パラメータによって表される。「日照時間」と「天空率」との各パラメータは、それぞれの数値と所定閾値とに応じたクラスI、クラスII、クラスIII、クラスIV、クラスVのいずれかによって表される。「土壌環境条件」は、「土厚」と「水分」との各パラメータによって表される。「土厚」と「水分」との各パラメータは、それぞれの数値と所定閾値とに応じたクラスI、クラスII、クラスIII、クラスIV、クラスVのいずれかによって表される。「微地形環境条件」は、「勾配」のパラメータによって表される。「勾配」のパラメータは、勾配の数値と所定閾値とに応じたクラスI、クラスII、クラスIII、クラスIV、クラスVのいずれかによって表される。「風環境条件」は、「風速」のパラメータによって表される。「風速」のパラメータは、風速の数値と所定閾値とに応じたクラスI、クラスII、クラスIII、クラスIV、クラスVのいずれかによって表される。
【0050】
[モデル管理装置]
次いで、モデル管理装置2の構成について説明する。
図4は、第1の実施形態に係るモデル管理装置2の構成の一例を示すブロック図である。
モデル管理装置2は、通信部20と、制御部22と、3D都市モデル記憶部24と、を含んで構成される。
【0051】
通信部20は、ネットワークを介して植栽計画評価装置1と通信する。通信部20は、制御部22によって制御され、制御部22から出力される各種情報を他の装置に送信する。通信部20は、他の装置から送信された各種情報を受信し、受信した各種情報を制御部22に出力する。
【0052】
制御部22は、モデル管理装置2の各部の処理を制御し、モデル管理装置2の機能を発揮する。
制御部22は、3D都市モデル提供部221を含んで構成される。3D都市モデル提供部221は、3D都市モデル記憶部24から3D都市モデルを読み出す。3D都市モデル提供部221は、読み出した3D都市モデルを、通信部20を介して植栽計画評価装置1に提供する。
【0053】
3D都市モデル記憶部24は、3D都市モデルを記憶する。
【0054】
[衛星データ管理装置]
次いで、衛星データ管理装置3の構成について説明する。
図5は、第1の実施形態に係る衛星データ管理装置3の構成の一例を示すブロック図である。
衛星データ管理装置3は、通信部30と、制御部32と、3D衛星データ記憶部34と、を含んで構成される。
【0055】
通信部30は、ネットワークを介して植栽計画評価装置1と通信する。通信部30は、制御部32によって制御され、制御部32から出力される各種情報を他の装置に送信する。通信部30は、他の装置から送信された各種情報を受信し、受信した各種情報を制御部32に出力する。
【0056】
制御部32は、衛星データ管理装置3の各部の処理を制御し、衛星データ管理装置3の機能を発揮する。
制御部32は、3D衛星データ提供部321を含んで構成される。3D衛星データ提供部321は、3D衛星データ記憶部34から3D衛星データを読み出す。3D衛星データ提供部321は、読み出した3D衛星データを、通信部30を介して植栽計画評価装置1に提供する。
【0057】
3D衛星データ記憶部34は、3D衛星データを記憶する。
【0058】
[植栽計画評価処理]
次いで、植栽計画評価処理の流れについて説明する。
図6は、第1の実施形態に係る植栽計画評価処理の一例を示すフローチャートである。
ステップS101において、植栽計画評価装置1は、ユーザからの植栽計画を含む計画情報の入力を受け付け、計画情報を取得する。次いで、植栽計画評価装置1は、ステップS103の処理を実行する。
【0059】
ステップS103において、植栽計画評価装置1は、モデル管理装置2または3D都市モデル記憶部132から3D都市モデルを取得する。次いで、植栽計画評価装置1は、ステップS105の処理を実行する。
ステップS105において、植栽計画評価装置1は、衛星データ管理装置3または3D衛星データ記憶部133から3D衛星データを取得する。次いで、植栽計画評価装置1は、ステップS107の処理を実行する。
【0060】
ステップS107において、植栽計画評価装置1は、植栽地を含む外構空間における夏至、春分、秋分の一日あたりの平均日照時間をそれぞれ算出する。植栽計画評価装置1は、算出した平均日照時間を、所定閾値に基づいて複数のクラスのうちのいずれに属するかを分級する。植栽計画評価装置1は、日照時間の分級結果に基づいて、日照時間分布図を生成する。また、植栽計画評価装置1は、3D衛星データから計画地を含む周辺建物や樹木等の高さに基づき天空率を算出する。植栽計画評価装置1は、算出した天空率を、所定閾値に基づいて複数のクラスのうちのいずれに属するかを分級する。植栽計画評価装置1は、天空率の分級結果に基づいて、天空率分布図を生成する。次いで、植栽計画評価装置1は、ステップS109の処理を実行する。
【0061】
ステップS109において、植栽計画評価装置1は、日照時間分布図と、天空率分布図と、植栽計画に含まれる植栽植物を表す植物データ(ポリゴン、もしくはポイントなど)をデジタル地図上で重ね合わせ、植栽地の近傍、例えば半径5mの範囲の日照時間、天空率の平均値などの環境条件のパラメータの平均値をそれぞれ算出する。植栽計画評価装置1は、植栽植物情報を参照し、植栽計画に含まれる植栽植物の環境条件が植栽植物情報に含まれる環境条件の適正範囲内か否かを判定する。次いで、植栽計画評価装置1は、ステップS111の処理を実行する。
【0062】
ステップS111において、植栽計画評価装置1は、ステップS109における判定結果に基づいて、「不適」の植栽植物を抽出する。次いで、植栽計画評価装置1は、ステップS113の処理を実行する。
ステップS113において、植栽計画評価装置1は、「不適」の植栽植物を含む、不適リストを生成する。次いで、植栽計画評価装置1は、ステップS115の処理を実行する。
【0063】
ステップS115において、植栽計画評価装置1は、「不適」の植栽植物の代替植栽植物の候補を植栽植物情報から抽出する。次いで、植栽計画評価装置1は、ステップS117の処理を実行する。
ステップS117において、植栽計画評価装置1は、代替植栽植物の候補を含む代替リストを生成する。そして、
図6に係る植栽計画評価処理を終了する。
【0064】
このように、本実施形態に係る植栽計画評価システムSYSは、計画地における日照時間と、前記計画地における天空率とを算出する算出部122と、日照時間と、天空率と、植栽植物ごとに環境条件が対応付けられた植栽植物情報とに基づいて、植栽計画に含まれる植栽植物が計画地に適した植栽植物であるか否かを評価する評価部123と、を備える。
【0065】
これにより、植栽計画評価システムは、環境ストレスによる植栽植物の生育不良を低減させることができる。また、最適な植栽植物を選定して植栽計画を立案することができる。そのため、大規模開発において効率的に植栽計画を立案することができる。
【0066】
また、算出部122は、計画地における周辺建物の形状および配置に基づいて日照時間と、植栽計画に含まれる植栽地内の緑地構造および配置に基づいて天空率とを算出する。
【0067】
これにより、植栽計画評価システムは、日照不足などの光環境条件による植栽植物の生育不良を低減した植栽計画を立案することができる。
【0068】
また、算出部122は、植栽地における所定範囲内の日照時間の平均値および天空率の平均値を算出し、評価部123は、日照時間の平均値および天空率の平均値と、植栽植物情報とに基づいて、植栽計画に含まれる植栽植物が計画地に適した植栽植物であるか否かを評価する。
【0069】
これにより、植栽計画評価システムは、計画地の周辺建物の構造や配置を考慮した植栽計画を立案することができる。
【0070】
また、植栽計画に含まれる植栽植物が計画地に適した植栽植物でない場合に、代替の植栽植物の候補を植栽植物情報から抽出する抽出部(代替植栽植物抽出部1235)、をさらに備える。
【0071】
これにより、植栽計画評価システムは、計画地における生育環境に適した植栽植物を選定することができる。
【0072】
なお、上述した実施形態における植栽計画評価装置1の一部、例えば、計画情報取得部1211と、3D都市モデル取得部1212と、3D衛星データ取得部1213と、日照時間算出部1221と、天空率算出部1222と、平均算出部1231と、適正判定部1232と、不適植栽植物抽出部1233と、不適リスト生成部1234と、代替植栽植物抽出部1235と、代替リスト生成部1236と、出力処理部124と、植栽植物情報更新部125と、の少なくとも一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この制御機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、植栽計画評価装置1に内蔵されたコンピュータシステムであって、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0073】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0074】
また、上述した実施形態における植栽計画評価装置1の一部、または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。植栽計画評価装置1の各機能ブロックは個別にプロセッサ化してもよいし、一部、または全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【0075】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0076】
2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として「持続可能な開発目標(Sustainable DevelopmentGoals:SDGs)」がある。本実施形態に係る植栽評価システム、植栽評価装置、植栽評価方法、およびプログラムは、このSDGsの17の目標のうち、例えば「15.陸の豊かさを守ろう」の目標などの達成に貢献し得る。
【符号の説明】
【0077】
SYS 植栽計画評価システム
1 植栽計画評価装置
11 通信部
12 制御部
121 取得部
1211 計画情報取得部
1212 3D都市モデル取得部
1213 3D衛星データ取得部
122 算出部
1221 日照時間算出部
1222 天空率算出部
123 評価部
1231 平均算出部
1232 適正判定部
1233 不適植栽植物抽出部
1234 不適リスト生成部
1235 代替植栽植物抽出部
1236 代替リスト生成部
124 出力処理部
125 植栽植物情報更新部
13 記憶部
131 計画情報記憶部
132 3D都市モデル記憶部
133 3D衛星データ記憶部
134 植栽植物情報記憶部
135 リスト記憶部
14 入力部
15 出力部
2 モデル管理装置
20 通信部
22 制御部
221 3D都市モデル提供部
24 3D都市モデル記憶部
3 衛星データ管理装置
30 通信部
32 制御部
321 3D衛星データ提供部
34 3D衛星データ記憶部