(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121859
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】稲病害の防除方法及び催芽装置
(51)【国際特許分類】
A01C 1/08 20060101AFI20240902BHJP
C02F 1/461 20230101ALI20240902BHJP
A01C 1/02 20060101ALI20240902BHJP
C25B 1/26 20060101ALI20240902BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240902BHJP
C25B 9/21 20210101ALI20240902BHJP
C25B 15/031 20210101ALI20240902BHJP
C25B 15/029 20210101ALI20240902BHJP
【FI】
A01C1/08
C02F1/461 Z
A01C1/02 Z
C25B1/26 C
C25B9/00 C
C25B9/21
C25B15/031
C25B15/029
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029063
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】二階堂 勝
【テーマコード(参考)】
2B051
4D061
4K021
【Fターム(参考)】
2B051AA01
2B051AB01
2B051BA09
2B051BB01
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4D061DA02
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4K021DB06
4K021DB31
4K021DB36
4K021DB53
(57)【要約】
【課題】ばか苗病等の病害発生を抑制しつつ、発芽率の低下や苗の生育不良の発生を抑制できる稲病害の防除方法、及び催芽装置を提供することを目的とする。
【解決手段】種籾と次亜塩素酸水を収容する浸漬槽10と、浸漬槽10に収容された次亜塩素酸水の温度を調整する温度調整機構12と、生成する次亜塩素酸水のpH及び有効塩素濃度を調整する機構を備えた次亜塩素酸水生成装置16と、を備える催芽装置1を用い、次亜塩素酸水生成装置16から浸漬槽10に供給される次亜塩素酸水により、催芽処理中の浸漬槽10内の次亜塩素酸水のpHを3.0~7.0、有効塩素濃度を10~60mg/Lに調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸漬槽内で次亜塩素酸水に種籾を浸漬して発芽させる催芽処理を含む、稲病害の防除方法であって、
催芽処理中の次亜塩素酸水の温度を25~32℃、pHを3.0~7.0、有効塩素濃度を10~60mg/Lに保持する、稲病害の防除方法。
【請求項2】
前記浸漬槽内の種籾1kg当たりの次亜塩素酸水の容積(L)の比が、1.0~3.0である、請求項1に記載の稲病害の防除方法。
【請求項3】
次亜塩素酸水生成装置を用いて、前記次亜塩素酸水生成装置から前記浸漬槽に次亜塩素酸水を供給することにより、前記浸漬槽内の次亜塩素酸水のpH及び有効塩素濃度の保持を行い、
前記次亜塩素酸水生成装置が、次亜塩素酸水とアルカリ性水を生成し、生成した次亜塩素酸水とアルカリ性水を混合することにより、次亜塩素酸水のpH及び有効塩素濃度を調整する機構を備えている、請求項1に記載の稲病害の防除方法。
【請求項4】
前記次亜塩素酸水生成装置が、
電解液を収容する電解液室、
第1隔膜により前記電解液室に対して仕切られた陽極室、
第2隔膜により前記電解液室に対して仕切られた陰極室、
前記第1隔膜に近接対向して前記陽極室に設けられた陽極、
前記第2隔膜に近接対向して前記陰極室に設けられた第1陰極、
前記電解液室に設けられ、前記第1隔膜を介して前記陽極に対向する第2陰極、及び
前記第2陰極と前記第1隔膜との間に設けられ、前記電解液室内を、前記陽極室側の第1電解液室、及び前記陰極室側の第2電解液室に分離する第3隔膜、を備え、
前記第2電解液室には、前記第3隔膜に近接対向して前記第2陰極が設けられる電解セルと、
前記陽極、前記第1陰極、及び前記第2陰極に給電する給電部と、
前記給電部から前記第1陰極及び/又は第2陰極へ通電するスイッチと、
前記電解セルにおける電解液の電解によって前記陽極室で生成する次亜塩素酸水と前記陰極室で生成するアルカリ性水を混合する生成水混合部と、を備えている、請求項3に記載の稲病害の防除方法。
【請求項5】
種籾と次亜塩素酸水を収容する浸漬槽と、
前記浸漬槽に収容された次亜塩素酸水の温度を調整する温度調整機構と、
次亜塩素酸水生成装置と、を備え、
前記次亜塩素酸水生成装置は、生成する次亜塩素酸水のpH及び有効塩素濃度を調整する機構を備え、
前記次亜塩素酸水生成装置から前記浸漬槽に供給される次亜塩素酸水により、催芽処理中の前記浸漬槽内の次亜塩素酸水のpHが3.0~7.0、有効塩素濃度が10~60mg/Lに調整される、催芽装置。
【請求項6】
前記浸漬槽内の次亜塩素酸水のpHを測定するpHセンサ、及び前記浸漬槽内の次亜塩素酸水の有効塩素濃度を測定する塩素濃度センサの少なくとも一方をさらに備える、請求項5に記載の催芽装置。
【請求項7】
前記次亜塩素酸水生成装置が、次亜塩素酸水とアルカリ性水を生成し、生成した次亜塩素酸水とアルカリ性水を混合することにより、次亜塩素酸水のpH及び有効塩素濃度を調整する機構を備えている、請求項6に記載の催芽装置。
【請求項8】
前記次亜塩素酸水生成装置が、
電解液を収容する電解液室、
第1隔膜により前記電解液室に対して仕切られた陽極室、
第2隔膜により前記電解液室に対して仕切られた陰極室、
前記第1隔膜に近接対向して前記陽極室に設けられた陽極、
前記第2隔膜に近接対向して前記陰極室に設けられた第1陰極、
前記電解液室に設けられ、前記第1隔膜を介して前記陽極に対向する第2陰極、及び
前記第2陰極と前記第1隔膜との間に設けられ、前記電解液室内を、前記陽極室側の第1電解液室、及び前記陰極室側の第2電解液室に分離する第3隔膜、を備え、
前記第2電解液室には、前記第3隔膜に近接対向して前記第2陰極が設けられる電解セルと、
前記陽極、前記第1陰極、及び前記第2陰極に給電する給電部と、
前記給電部から前記第1陰極及び/又は第2陰極へ通電するスイッチと、
前記電解セルにおける電解液の電解によって前記陽極室で生成する次亜塩素酸水と前記陰極室で生成するアルカリ性水を混合する生成水混合部と、を備えている、請求項7に記載の催芽装置。
【請求項9】
前記浸漬槽から次亜塩素酸水の一部を抜き出して前記浸漬槽に戻す循環ラインをさらに備え、前記次亜塩素酸水生成装置で生成された次亜塩素酸水が、前記循環ラインを流れる次亜塩素酸水に合流されてpH及び有効塩素濃度が調整される、請求項5~8のいずれか一項に記載の催芽装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、稲病害の防除方法及び催芽装置に関する。とりわけ、次亜塩素酸水を用いた種籾の催芽による病害発生の防除が可能な稲病害の防除方法、及びそれに最適な催芽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種籾は、ばか苗病菌等の菌で汚染されていることがある。そのため、浸種及び催芽に用いる種籾は、病害発生を抑制するために事前に殺菌処理が施される。従来、殺菌処理には化学農薬が用いられていたが、近年では、残留性の高い農薬の使用量を削減する目的で温湯消毒が広く採用されている。
【0003】
温湯消毒は有効な種子消毒方法であるが、種籾に損傷を与えない境界付近の温度で処理しているため、完全にばか苗病菌等の菌を殺菌できない場合がある。また、浸種や催芽の段階でも作業環境から混入した菌による再感染が起こりやすい。そこで、浸種処理及び催芽処理に有効塩素濃度10~60mg/Lの次亜塩素酸水を用い、処理中の有効塩素濃度を7mg/L以上に保つ方法が提案されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-062826号公報
【特許文献2】特開2022-106003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、催芽に次亜塩素酸水を用いると、病害発生の防除効果が得られる一方で、発芽率の低下や、苗の生育不良が生じることがある。特許文献1、2では、浸種及び催芽に用いる次亜塩素酸水の有効塩素濃度以外の水質変動が苗の生育に与える影響については検討されていない。
【0006】
本発明は、ばか苗病等の病害発生を抑制しつつ、発芽率の低下や苗の生育不良の発生を抑制できる稲病害の防除方法、及び催芽装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が、次亜塩素酸水を用いた催芽処理による発芽率の低下や苗の生育不良について詳細に検討したところ、次亜塩素酸水を用いた催芽では、水道水や井水を用いた催芽に比べて、処理中のpHが急激に低下していることが判明した。そして、さらに検討を進めた結果、催芽処理中の次亜塩素酸水のpHを適切にコントロールすれば、病害発生を抑制しつつ、発芽率の低下及び苗の生育不良の発生を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1]浸漬槽内で次亜塩素酸水に種籾を浸漬して発芽させる催芽処理を含む、稲病害の防除方法であって、
催芽処理中の次亜塩素酸水の温度を25~32℃、pHを3.0~7.0、有効塩素濃度を10~60mg/Lに保持する、稲病害の防除方法。
[2]前記浸漬槽内の種籾1kg当たりの次亜塩素酸水の容積(L)の比が、1.0~3.0である、[1]に記載の稲病害の防除方法。
[3]次亜塩素酸水生成装置を用いて、前記次亜塩素酸水生成装置から前記浸漬槽に次亜塩素酸水を供給することにより、前記浸漬槽内の次亜塩素酸水のpH及び有効塩素濃度の保持を行い、
前記次亜塩素酸水生成装置が、次亜塩素酸水とアルカリ性水を生成し、生成した次亜塩素酸水とアルカリ性水を混合することにより、次亜塩素酸水のpH及び有効塩素濃度を調整する機構を備えている、[1]又は[2]に記載の稲病害の防除方法。
[4]前記次亜塩素酸水生成装置が、
電解液を収容する電解液室、
第1隔膜により前記電解液室に対して仕切られた陽極室、
第2隔膜により前記電解液室に対して仕切られた陰極室、
前記第1隔膜に近接対向して前記陽極室に設けられた陽極、
前記第2隔膜に近接対向して前記陰極室に設けられた第1陰極、
前記電解液室に設けられ、前記第1隔膜を介して前記陽極に対向する第2陰極、及び
前記第2陰極と前記第1隔膜との間に設けられ、前記電解液室内を、前記陽極室側の第1電解液室、及び前記陰極室側の第2電解液室に分離する第3隔膜、を備え、
前記第2電解液室には、前記第3隔膜に近接対向して前記第2陰極が設けられる電解セルと、
前記陽極、前記第1陰極、及び前記第2陰極に給電する給電部と、
前記給電部から前記第1陰極及び/又は第2陰極へ通電するスイッチと、
前記電解セルにおける電解液の電解によって前記陽極室で生成する次亜塩素酸水と前記陰極室で生成するアルカリ性水を混合する生成水混合部と、を備えている、[3]に記載の稲病害の防除方法。
[5]種籾と次亜塩素酸水を収容する浸漬槽と、
前記浸漬槽に収容された次亜塩素酸水の温度を調整する温度調整機構と、
次亜塩素酸水生成装置と、を備え、
前記次亜塩素酸水生成装置は、生成する次亜塩素酸水のpH及び有効塩素濃度を調整する機構を備え、
前記次亜塩素酸水生成装置から前記浸漬槽に供給される次亜塩素酸水により、催芽処理中の前記浸漬槽内の次亜塩素酸水のpHが3.0~7.0、有効塩素濃度が10~60mg/Lに調整される、催芽装置。
[6]前記浸漬槽内の次亜塩素酸水のpHを測定するpHセンサ、及び前記浸漬槽内の次亜塩素酸水の有効塩素濃度を測定する塩素濃度センサの少なくとも一方をさらに備える、[5]に記載の催芽装置。
[7]前記次亜塩素酸水生成装置が、次亜塩素酸水とアルカリ性水を生成し、生成した次亜塩素酸水とアルカリ性水を混合することにより、次亜塩素酸水のpH及び有効塩素濃度を調整する機構を備えている、[6]に記載の催芽装置。
[8]前記次亜塩素酸水生成装置が、
電解液を収容する電解液室、
第1隔膜により前記電解液室に対して仕切られた陽極室、
第2隔膜により前記電解液室に対して仕切られた陰極室、
前記第1隔膜に近接対向して前記陽極室に設けられた陽極、
前記第2隔膜に近接対向して前記陰極室に設けられた第1陰極、
前記電解液室に設けられ、前記第1隔膜を介して前記陽極に対向する第2陰極、及び
前記第2陰極と前記第1隔膜との間に設けられ、前記電解液室内を、前記陽極室側の第1電解液室、及び前記陰極室側の第2電解液室に分離する第3隔膜、を備え、
前記第2電解液室には、前記第3隔膜に近接対向して前記第2陰極が設けられる電解セルと、
前記陽極、前記第1陰極、及び前記第2陰極に給電する給電部と、
前記給電部から前記第1陰極及び/又は第2陰極へ通電するスイッチと、
前記電解セルにおける電解液の電解によって前記陽極室で生成する次亜塩素酸水と前記陰極室で生成するアルカリ性水を混合する生成水混合部と、を備えている、[7]に記載の催芽装置。
[9]前記浸漬槽から次亜塩素酸水の一部を抜き出して前記浸漬槽に戻す循環ラインをさらに備え、前記次亜塩素酸水生成装置で生成された次亜塩素酸水が、前記循環ラインを流れる次亜塩素酸水に合流されてpH及び有効塩素濃度が調整される、[5]~[8]のいずれかに記載の催芽装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ばか苗病等の病害発生を抑制しつつ、発芽率の低下及び苗の生育不良の発生を抑制できる稲病害の防除方法、及び催芽装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の一例に係る催芽装置を示した概略構成図である。
【
図2】
図1の催芽装置に用い得る次亜塩素酸水生成装置の一例を示した概略構成図である。
【
図3】実施形態の他の例に係る催芽装置を示した概略構成図である。
【
図4】実施形態の他の例に係る催芽装置を示した概略構成図である。
【
図5】参考例1の浸種及び催芽における浸漬槽内の次亜塩素酸水の有効塩素濃度の変化を示したグラフである。
【
図6】参考例1及び比較例1の浸種及び催芽における浸漬槽内の次亜塩素酸水のpH変化を示したグラフである。
【
図7】実施例1及び比較例3の浸種及び催芽における浸漬槽内の次亜塩素酸水の有効塩素濃度の変化を示したグラフである。
【
図8】実施例1及び比較例2、3の浸種及び催芽における浸漬槽内の次亜塩素酸水のpH変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書においては、以下の定義が適用される。
「~」で表される数値範囲は、特に断りのない限り、~の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
「有効塩素濃度」は、「厚生労働省・消費者庁発行、「第9版 食品添加物公定書」第635ページ定量法、2018」に記載されている方法によって測定される値を意味する。
「近接」とは、一方が他方に、隣接、接触、又は密着していることをいう。
「隣接」とは、一方が他方に一定の距離を保って対向している状態で、互いの距離が0.3mm以下、好ましくは0.2mm以下で対向している状態をいう。
【0012】
[催芽装置]
以下、本発明の稲病害の防除方法に好適に用い得る催芽装置について、一例を示し、図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0013】
図1は、実施形態の一例に係る催芽装置1を示した概略構成図である。
催芽装置1は、浸漬槽10と、温度調整機構12と、次亜塩素酸水生成装置16と、濾過器18と、pHセンサ20と、塩素濃度センサ22と、制御装置24と、を備えている。
【0014】
(浸漬槽)
浸漬槽10は、次亜塩素酸水に種籾を浸漬するための槽であり、種籾と次亜塩素酸水を収容可能な容器であれば、特に限定されない。
浸漬槽10としては、例えば、種籾が入ったアミ袋を配置するための開口が上部に形成された容器が用いることができ、上部の開口を閉止できる容器であってもよい。
浸漬槽10の底に、水が通過し得る隙間もしくは穴を有する物体、例えばスノコ床等の格子状の物体を設けると、底に配置された種籾にも水が到達しやすくなる点で好ましい。
【0015】
(温度調整機構)
温度調整機構12は、浸漬槽10内の次亜塩素酸水の温度を調整する機構である。
図1に示す例の温度調整機構12は、浸漬槽10に収容された次亜塩素酸水の一部を浸漬槽10の側部から抜き出し、浸漬槽10の上方から戻すための第1循環ラインL1と、第1循環ラインL1に設けられた循環ポンプ26と、第1循環ラインL1の循環ポンプ26よりも下流に設けられた温調部28と、を備えている。第1循環ラインL1における浸漬槽10の上方側の端には、シャワーボックス14が接続されている。
【0016】
この例の温度調整機構12では、循環ポンプ26を駆動させることによって浸漬槽10から次亜塩素酸水の一部が第1循環ラインL1に抜き出され、温調部28において次亜塩素酸水の温度が所望の温度に調節される。そして、温度調整後の次亜塩素酸水がシャワーボックス14から散水されて浸漬槽10に戻される。これにより、処理中の浸漬槽10内の次亜塩素酸水の温度を所望の温度に保持することができる。
なお、温度調整機構12は、浸漬槽10内の次亜塩素酸水の温度を調整できればよく、
図1に示す構成には限定されない。
【0017】
温調部28としては、第1循環ラインL1を流れる次亜塩素酸水の温度を所望の温度に調節できるものであればよく、例えば、ヒーター、熱交換器等を例示できる。
シャワーボックス14としては、浸漬槽10に上方から次亜塩素酸水をシャワー状に散水できるものであればよく、公知のシャワーボックスを適宜採用できる。浸漬槽10に上方からシャワー状の次亜塩素酸水を戻すことにより、浸漬槽10内の次亜塩素酸水が撹拌され、種籾が呼吸するのに充分な量の酸素が効率良く取り込まれやすくなる。
【0018】
図1に示す例では、浸漬槽10に収容された次亜塩素酸水の一部を浸漬槽10の上部から抜き出し、浸漬槽10の上方から戻すための第2循環ラインL2が設けられている。また、この第2循環ラインL2には、上流側から循環ポンプ17、濾過器18、次亜塩素酸水生成装置16がこの順に設けられている。
【0019】
(濾過器)
濾過器18を設け、浸種や催芽の処理中に次亜塩素酸水に溶け込む不要な成分を取り除くことにより、次亜塩素酸水生成装置16を構成する電極や隔膜への悪影響を取り除くことができる。
濾過器18としては、浸種や催芽の処理中に次亜塩素酸水に溶け込む不要な成分を除去できるものであればよく、例えば、メッシュフィルター、BAGフィルター、糸巻フィルター、不織布フィルターなどを例示できる。
【0020】
(次亜塩素酸水生成装置)
次亜塩素酸水生成装置16は、次亜塩素酸水を生成する装置であって、生成する次亜塩素酸水のpH及び有効塩素濃度を調整する機構を備える。
第2循環ラインL2を流れる次亜塩素酸水に、次亜塩素酸水生成装置16からpH及び有効塩素濃度を調整した次亜塩素酸水を合流させて浸漬槽10に戻すことにより、処理中の浸漬槽10内の次亜塩素酸水のpH及び有効塩素濃度を所望の範囲にコントロールすることができる。
【0021】
次亜塩素酸水生成装置16としては、次亜塩素酸水とアルカリ性水を生成し、生成した次亜塩素酸水とアルカリ性水を混合することにより、次亜塩素酸水のpH及び有効塩素濃度を調整する機構を備えているものが好ましい。このような調整機構を備えた次亜塩素酸水生成装置16を用いることにより、催芽処理中の浸漬槽10内の次亜塩素酸水のpH及び有効塩素濃度を所望の範囲に調整しやすくなり、発芽率の低下や苗の生育不良の発生を抑制することが容易になる。
【0022】
図2は、本発明の催芽装置に好適に用い得る次亜塩素酸水生成装置16の一例を示した概略構成図である。
図2に示す例の次亜塩素酸水生成装置16は、電解セル41を備えている。
【0023】
電解セル41は、いわゆる3室型の電解セルである。電解セル41の内部は、陽極側の隔膜である第1隔膜43a、及び陰極側の隔膜である第2隔膜44aにより、それら隔膜間の電解液室45と、電解液室45の両側に位置する陽極室43及び陰極室44との3室に仕切られている。
【0024】
陽極室43の内部には第1隔膜43aと近接対向して陽極43bが設けられ、陰極室44の内部には第2隔膜44aと近接対向して第1陰極44bが設けられている。
陽極43bと第1陰極44bは、ほぼ等しい大きさの矩形形状に形成され、電解液室45、第1隔膜43a及び第2隔膜44aを間に挟んで、互いに対向している。
【0025】
電解液室45は、第3隔膜45aにより、陽極室43側の第1電解液室45cと陰極室44側の第2電解液室45dに仕切られている。
第2電解液室45dには、第3隔膜45aと近接対向して第2陰極45bが設けられている。第2陰極45bは、陽極43b及び第1陰極44bとほぼ等しい大きさの矩形形状に形成されている。
【0026】
第1電解液室45cの下部には、電解液を供給するための第1電解液供給口45f、上部には、第1電解液室45cを流れた電解液を排出するための第1電解液排出口45hが設けられている。
第2電解液室45dの下部には、電解液を供給するための第2電解液供給口45g、上部には、第2電解液室45dを流れた電解液を排水するための第2電解液排出口45iが設けられている。
第1電解液室45cと第2電解液室45dに対する電解液の供給及び排出は、各々独立して行うことができ、電解液の供給量を別々に制御することができる。
【0027】
陽極室43の下部には、水を供給するための第1給水口43f、上部には、陽極室43を流れた水を排水するための第1排水口43hが設けられている。
陰極室44の下部には、水を供給するための第2給水口44f、上部には、陰極室44を流れた水を排水するための第2排水口44hが設けられている。
【0028】
陽極側の隔膜である第1隔膜43aは、陰イオン交換膜からなる。
陰イオン交換膜としては、例えば炭化水素系ポリマー等からなる多孔質のポリマーに陽イオン基を固定し、正に帯電させ、陰イオンだけを通過可能とした陰イオン交換膜を例示できる。
【0029】
陰極側の隔膜である第2隔膜44aは、陽イオン交換膜からなる。
陽イオン交換膜としては、例えば炭化水素系ポリマー、フッ素系ポリマー等からなる多孔質のポリマーに陰イオン基を固定し、負に帯電させ、陽イオンだけを通過可能とした陽イオン交換膜を例示できる。
【0030】
第3隔膜45aは、イオン透過の選択性がなく陽イオン及び陰イオンの通過が可能な微細孔を有する中性膜からなる。
中性膜としては、不織布や、ガラス布等の多孔質基材にアルミニウム酸化物を含む被覆層を設けた多孔質隔膜を例示できる。
【0031】
陽極43bとしては、次亜塩素酸水の生成に用いられる公知の電極を使用することができる。例えば多数の透孔が形成されたチタンの金属板にIr、Pt等の触媒を塗布した不溶性電極を例示できる。第1陰極44b、及び第2陰極45bとしては、例えば多数の透孔が形成されたチタンの金属板を例示でき、前記金属板にIr、Pt等の触媒を塗布した不溶性電極でもよい。
【0032】
次亜塩素酸水生成装置16は、電解セル41の電解液室45に、電解液として、塩素イオンを含む電解質、例えば、塩水を供給する電解液供給部48と、陽極室43及び陰極室44に電解原水、例えば、水道水や井水を供給する給水部51と、陽極43bに正電圧、第1陰極44b及び/又は第2陰極45bに負電圧をそれぞれ印加する給電部47をさらに備えている。
【0033】
給電部47は、電解に必要な電流を供給する電源47aと、電源47aから第1陰極44b又は第2陰極45bに通電するためのスイッチ47bと、電源47aとスイッチ47bを制御する制御部47cとを有する。
電源47aとしては定電流電源が好ましい。
電源47aの正極は、配線を介して電解セル41の陽極43bと接続されている。電源47aの負極は、スイッチ47b及び2本の配線を介して第1陰極44b及び第2陰極45bと接続されている。スイッチ47bを切り替えることにより、第1陰極44bと第2陰極45bのいずれかに負電圧を印加することができる。なお、第1陰極44b及び第2陰極45bを、それぞれON/OFFスイッチを介して電源47aの負極と接続し、各ON/OFFスイッチで第1陰極44bと第2陰極45bへの通電を別々に制御してもよい。
【0034】
電解液供給部48は、電解液55aとして例えば20質量%塩化ナトリウム水溶液(塩水)を貯溜した塩水タンク(電解液タンク)55と、塩水タンク55から電解液室45の下方に塩水を導く供給配管48aと、供給配管48aに設けられた送液ポンプ59と、電解液室45の上方から塩水を排出する排水配管48fとを備えている。
【0035】
供給配管48aは、第1電解液供給口45fに接続された、第1電解液室45cに電解液を供給する第1電解液供給ラインとしての供給配管48bと、第2電解液供給口45gに接続された、第2電解液室45dに電解液を供給する第2電解液供給ラインとしての供給配管48cに分岐している。これにより、第1電解液室45cと第2電解液室45dには電解液が別々に供給される。
【0036】
第1電解液室45cの第1電解液排出口45hには、第1電解液室45c内を流れた電解液を排水する第1電解液排出ラインとしての排水配管48dが接続されている。第2電解液室45dの第2電解液排出口45iには、第2電解液室45d内を流れた電解液を排水する第2電解液排出ラインとしての排水配管48eが接続されている。排水配管48dと排水配管48eは合流されて排水配管48fとなっている。排水配管48dと排水配管48eは合流させなくてもよいが、合流させたほうが排水配管48fを流れる電解液のアルカリ度を下げることができる。
【0037】
給水部51は、水を供給する給水源49と、給水源49の出口付近に設けられた開閉バルブ58と、給水源49から陽極室43及び陰極室44の下部に水を導く第1給水配管51aと、第1排水口43hと接続され、陽極室43を流れた水を陽極室43の上部から排出する第1排水ラインとしての第1排水配管51bと、第2排水口44hと接続され、陰極室44を流れた水を陰極室44の上部から排出する第2排水ラインとしての第2排水配管51cと、を備えている。
【0038】
第1給水配管51aは、第1給水ラインとしての第2給水配管51eと、第2給水ラインとしての第3給水配管51fに分岐している。第2給水配管51eは、第1給水口43fと接続されて陽極室43に水を供給する。第3給水配管51fは、第2給水口44fと接続されて陰極室44に水を供給する。第1排水配管51bは、第2排水配管51cの中途部に接続され、生成水混合部60を構成している。
その他、各配管には、開閉バルブあるいは流量調整弁を設けてもよい。
【0039】
以下、
図2に示す例の次亜塩素酸水生成装置16において、次亜塩素酸水とアルカリ性水を生成し、生成した次亜塩素酸水とアルカリ性水を混合して、次亜塩素酸水のpH及び有効塩素濃度を調整する動作について説明する。
【0040】
送液ポンプ59を作動させ、塩水タンク55から電解セル41の電解液室45の第1電解液室45c及び第2電解液室45dに塩水を供給する。また、給水源49から陽極室43及び陰極室44に水を給水する。
【0041】
スイッチ47bを操作して正電圧及び負電圧を陽極43b及び第1陰極44bにそれぞれ印加すると、第1電解液室45c及び第2電解液室45dへ流入した塩水中に電離しているナトリウムイオンは、第1陰極44bに引き寄せられ、第2隔膜44aを通過して第1陰極44bに到達する。第1陰極44bでは、ナトリウムイオンの量に対応した下記式で表される水の電気分解が起こり、陰極室44内に水素ガスが発生する。
2H2O+2Na+→2e-+H2+2NaOH
ナトリウムイオンは陰極室44内で水酸化ナトリウムとなり、アルカリ性水が生成される。生成したアルカリ性水は水素ガスとともに第2排水配管51cに流出する。
【0042】
第1電解液室45c及び第2電解液室45dの塩水中に電離している塩素イオンは、第1隔膜43aを通過して陽極43bに到達する。そして、下記式に示すように、陽極43bで塩素イオンが酸化されて塩素ガスが生成する。
2Cl-→Cl2+2e-
その後、下記式に示すように、塩素ガスは陽極室43内で直ちに水と反応して次亜塩素酸と塩酸を生じる。
Cl2+H2O→HClO+HCl
【0043】
このようにして生成された次亜塩素酸水は、陽極室43から第1排水配管51bに流出する。
第2排水配管51cに流出したアルカリ性水と、第1排水配管51bに流出した次亜塩素酸水は生成水混合部60で混合され、中性~弱アルカリ性付近にpH制御された次亜塩素酸水となる。
【0044】
また、スイッチ47bを操作して正電圧及び負電圧を陽極43b及び第2陰極45bにそれぞれ印加すると、第1電解液室45c及び第2電解液室45dへ流入した塩水中に電離しているナトリウムイオンは、第2陰極45bに引き寄せられる。そして、第2陰極45bにおける塩水の電気分解により、第2電解液室45dにおいて水素ガスを含む水酸化ナトリウム水溶液(アルカリ性水)が生成される。第2電解液室45d内で生成したアルカリ性水は、排水配管48eに流出した後、排水配管48dの電解液と混合されて排水配管48fから排出される。
第2電解液室45d内で生成したアルカリ性水は第1電解液室45cに流入しないため、第1電解液室45c内の第1隔膜43aは、強アルカリに晒されず、劣化しにくい。
【0045】
正電圧及び負電圧を陽極43b及び第2陰極45bにそれぞれ印加した状態では、第1電解液室45c及び第2電解液室45d内の塩水中に電離している塩素イオンは、陽極43bに引き寄せられる。そして、陽極43bで塩素イオンが酸化され、塩素ガスが発生し、陽極室43内で次亜塩素酸水が生成される。生成した次亜塩素酸水は第1排水配管51bに流出し、生成水混合部60で第2排水配管51cからの排水と混合される。
この場合の第2排水配管51cからの排水はアルカリ性水ではないため、第1陰極44bに負電圧を印加する場合に比べてpHが低い強酸性~弱酸性の次亜塩素酸水となる。
【0046】
このように、
図2に示す例の次亜塩素酸水生成装置16では、第1陰極44bと第2陰極45bへの通電比率を制御することにより、次亜塩素酸水生成装置16で生成される次亜塩素酸水のpH及び有効塩素濃度を調整できる。そのため、第1陰極44bと第2陰極45bへの通電比率を制御しつつ、生成水混合部60から排出される次亜塩素酸水を、第2循環ラインL2を流れる次亜塩素酸水に混合することにより、浸漬槽10内の次亜塩素酸水のpH及び有効塩素濃度を所望の範囲に保持することができる。
【0047】
(pHセンサ、塩素濃度センサ及び制御装置)
図1に示す例の催芽装置1においては、浸漬槽10内の次亜塩素酸水のpHを測定するためのpHセンサ20と、浸漬槽10内の次亜塩素酸水の有効塩素濃度を測定するための塩素濃度センサ22が、浸漬槽10に設けられている。
また、
図1に示す例では、pHセンサ20で測定されたpHと、塩素濃度センサ22で測定された有効塩素濃度に基づき、次亜塩素酸水生成装置16で生成される次亜塩素酸水のpH及び有効塩素濃度を自動的に制御する制御装置24が設けられている。
【0048】
催芽処理における制御装置24による制御方法は、例えば以下のステップ(S1)及びステップ(S2)を含む方法を例示できる。
(S1)pHセンサ20と塩素濃度センサ22によるpH及び有効塩素濃度の測定結果から、それぞれの時間当たりの変化率を算出し、催芽処理の終了時点のpHと有効塩素濃度を推定する。
(S2)処理終了時点のpHと有効塩素濃度の推定値が、pHは3.0~7.0、有効塩素濃度は10~60mg/Lの範囲内の所定の値となるように、次亜塩素酸水生成装置16の電解電流値、及び第1陰極44bと第2陰極45bへの通電比率を調節する。
【0049】
催芽装置1の動作については、後述の催芽処理の説明において詳述する。
催芽装置1は、種籾の催芽に用いられる装置であるが、温湯消毒後の冷却や浸種に利用してもよい。
【0050】
[稲病害の防除方法]
本発明の稲病害の防除方法は、浸漬槽内で次亜塩素酸水に種籾を浸漬して発芽させる催芽処理を含む方法であって、催芽処理中の次亜塩素酸水の温度を25~32℃、pHを3.0~7.0、有効塩素濃度を10~60mg/Lに保持することを特徴とする。
【0051】
本発明の稲病害の防除方法は、以下の工程(i)~(iii)を含み得る。
(i)種籾を消毒(種子消毒)する工程。
(ii)消毒後の種籾に対して浸種処理を行う工程。
(iii)浸種処理後の種籾に対して催芽処理を行う工程。
【0052】
(工程(i))
種子消毒に用いる種籾は、アミ袋等の水が内部に浸入する袋を用いて袋詰めすることが好ましい。
消毒方法としては、温湯消毒や、残効性のない低農薬を用いた消毒を例示でき、残留性の高い農薬の使用量を削減できることから温湯消毒が好ましい。
温湯消毒には、例えば58~62℃の水を用いることができる。
【0053】
温湯消毒を行った場合は、消毒後の種籾を冷水に浸漬し、流水しながら冷却する。
冷却に用いる水としては、次亜塩素酸水が好ましい。次亜塩素酸水を用いて種籾を冷却することにより、水由来の菌による感染を防止しやすく、また温湯消毒後も生存している耐熱菌の殺菌効果も得られる。また、浸種、催芽時に使用する次亜塩素酸水の有効塩素濃度の低下を抑制する効果も期待される。
また、工程(i)において農薬で種籾を消毒し、農薬が残留した場合でも、消毒後の種籾を次亜塩素酸水に浸漬し、流水しながら処理することにより、残留した農薬を分解することができる。
【0054】
作業性の観点からは、種籾の冷却には、浸種や催芽に用いる装置とは別に用意した冷却用の容器を用いることが好ましいが、浸種や催芽に用いる装置を冷却に利用してもよい。例えば本発明に係る催芽装置の浸漬槽を種籾の冷却に利用してもよい。
【0055】
(工程(ii))
次に、消毒後の種籾を浸漬槽内で10~15℃の水に浸漬し、積算温度(=温度×処理日数)で65~90℃・日、浸種処理を行う。
浸種には、種籾への菌の再感染、および悪臭の発生を防止するため、次亜塩素酸水を使用することが好ましい。
なお、浸種に使用する水は次亜塩素水には限定されず、水道水、井水等を使用してもよい。
【0056】
浸種処理中は、次亜塩素酸水の温度を10~15℃、pHを3.0~7.0、有効塩素濃度を10~60mg/Lに保持することが好ましい。浸種処理中の有効塩素濃度を前記範囲に保持することにより、種籾への菌の再感染を抑制しやすく、病害発生を抑制しやすい。また、浸種処理中pHを前記範囲に保持することにより、発芽率の低下及び苗の生育不良の発生をさらに抑制しやすくなる。
【0057】
浸種処理中の次亜塩素酸水のpHは、発芽率の低下及び苗の生育不良の発生を抑制しやすいことから、より好ましくは4.0以上、さらに好ましくは4.5以上、特に好ましくは5.0以上に保持する。また、pHの上限については、より好ましくは6.5以下である。浸種処理中の次亜塩素酸水のpHは、5.0~6.5の範囲に保持されることが好ましい。
浸種処理中の次亜塩素酸水の有効塩素濃度は、充分な殺菌効果が得られやすいことから、好ましくは15mg/L以上、より好ましくは20mg/L以上に保持する。浸種処理中の次亜塩素酸水の有効塩素濃度は、20~60mg/Lの範囲に保持されることが好ましい。
【0058】
浸種処理中の浸漬槽内の種籾1kg当たりの次亜塩素酸水の容積(L)の比(容比)は、1.0~3.0が好ましい。容比が前記下限値以上であれば、処理中の有効塩素濃度を前記範囲に保持しやすい。容比が前記上限値以下であれば、次亜塩素酸の過剰供給による苗の成長障害の発生リスクを低減しやすい。
農家での生産性に優れる観点では、前記容比は、1.25~2.5がより好ましい。
【0059】
浸種処理において、処理中の次亜塩素酸水のpH及び有効塩素濃度を前記範囲に保持する場合、次亜塩素酸水生成装置を用いて、次亜塩素酸水生成装置から浸漬槽に次亜塩素酸水を供給することによって、浸漬槽内の次亜塩素酸水のpH及び有効塩素濃度を制御することが好ましい。
また、この場合、次亜塩素酸水生成装置としては、次亜塩素酸水とアルカリ性水を生成し、生成した次亜塩素酸水とアルカリ性水を混合することにより、次亜塩素酸水のpH及び有効塩素濃度を調整する機構を備える次亜塩素酸水生成装置を用いることが好ましい。
【0060】
浸種処理には、後述の催芽処理に用いる催芽装置を使用することができる。
例えば、
図1に示す催芽装置1を用いて浸種処理を行ってもよい。催芽装置1を用いた浸種処理は、処理中の浸漬槽10内の次亜塩素酸水Wの保持温度を10~15℃に設定する以外は、後述の催芽装置1を用いた催芽処理と同様に行える。
【0061】
(工程(iii))
次に、浸種処理後の種籾を浸漬槽内で25~32℃の次亜塩素酸水に浸漬して催芽処理を行う。
催芽処理中は、次亜塩素酸水の温度を25~32℃、pHを3.0~7.0、有効塩素濃度を10~60mg/Lに保持する。
【0062】
本発明者の検討により、浸種に次亜塩素酸水を使用しても処理中のpH変化は小さいが、催芽に次亜塩素酸水を使用すると、種籾の呼吸によって次亜塩素酸水のpHは急激に低下することが分かった。このような催芽処理中のpHの急激な低下は、水道水や井水を用いた催芽処理では見られず、次亜塩素酸水を用いた催芽処理に特有のものである。そして、次亜塩素酸水を用いた催芽処理において、処理中の次亜塩素酸水のpHが3.0未満まで下がると、水道水や井水を用いた催芽処理に比べ、発芽率の低下や、苗の生育不良が発生する。
これに対し、催芽処理中の次亜塩素酸水のpHを3.0~7.0、有効塩素濃度を10~60mg/Lに保持すると、病害発生を充分に抑制しつつ、発芽率の低下及び苗の生育不良の発生を抑制することができる。
【0063】
催芽処理中の次亜塩素酸水の温度は、25~32℃であり、農家の生産性を考慮すると、30~32℃が好ましい。
催芽処理中の次亜塩素酸水のpHは、3.0~7.0であり、発芽率の低下及び苗の生育不良の発生を抑制しやすいことから、好ましくは4.0以上、より好ましくは4.5以上、さらに好ましくは5.0以上に保持する。pHの上限については、好ましくは6.5以下である。催芽処理中の次亜塩素酸水のpHは、5.0~6.5の範囲に保持されることが好ましい。
催芽処理中の次亜塩素酸水の有効塩素濃度は、10~60mg/Lであり、充分な殺菌効果が得られやすいことから、好ましくは15mg/L以上、より好ましくは20mg/L以上、さらに好ましくは30mg/L以上に保持する。催芽処理中の次亜塩素酸水の有効塩素濃度は、20~60mg/Lの範囲に保持されることが好ましく、30~60mg/Lの範囲に保持されることがより好ましい。
催芽処理における種籾の浸漬時間は、1~2日程度が好ましいが、種籾の催芽状態を確認し、1mm程度の白い芽が見えたら、催芽作業を終了し、2、3回冷水の次亜塩素酸水に交換して、芽止めを行う。
【0064】
催芽処理中の浸漬槽内の種籾1kg当たりの次亜塩素酸水の容積(L)の比(容比)は、浸種処理中の容比と同じ理由から、1.0~3.0が好ましく、1.25~2.5がより好ましい。
【0065】
催芽処理においては、次亜塩素酸水生成装置を用いて、次亜塩素酸水生成装置から浸漬槽に次亜塩素酸水を供給することによって、浸漬槽内の次亜塩素酸水のpH及び有効塩素濃度を前記範囲に保持することが好ましい。
この場合、次亜塩素酸水生成装置は、次亜塩素酸水とアルカリ性水を生成し、生成した次亜塩素酸水とアルカリ性水を混合することにより、次亜塩素酸水のpH及び有効塩素濃度を調整する機構を備えていることが好ましい。
【0066】
一例として、
図1に示す催芽装置1を用いた催芽処理について説明する。
まず、浸種処理後の種籾が袋詰めされた袋Aを浸漬槽10内に配置し、さらに浸漬槽10内に次亜塩素酸水W(pH3.0~7.0、有効塩素濃度10~60mg/L)を供給し、種籾を次亜塩素酸水Wに浸漬させる。
浸種処理に催芽装置1を使用した場合は、浸種処理後の装置内の次亜塩素酸水Wを全量新しい次亜塩素酸水(pH3.0~7.0、有効塩素濃度10~60mg/L)に交換する。
【0067】
催芽処理中は、温度調整機構12において、循環ポンプ26を駆動させて浸漬槽10内の次亜塩素酸水Wの一部を循環ラインL1に抜き出し、温調部28で温度を25~32℃に調節して、シャワーボックス14から散水して浸漬槽10に戻す。これにより、浸種処理中の浸漬槽10内の次亜塩素酸水Wの温度を25~32℃に保持する。
【0068】
また、循環ポンプ17を駆動させて浸漬槽10内の次亜塩素酸水Wの一部を循環ラインL2に抜き出し、濾過器18で濾過して不要な成分を除去する。さらに、次亜塩素酸水生成装置16においてアルカリ性水と混合されてpH及び有効塩素濃度が調整された次亜塩素酸水を、循環ラインL2を流れる次亜塩素酸水Wに合流させ、浸漬槽10に戻す。これにより、催芽処理中の浸漬槽10内の次亜塩素酸水WのpHを3.0~7.0、有効塩素濃度を10~60mg/Lに保持する。
【0069】
浸種処理及び催芽処理における浸漬槽10内の次亜塩素酸水WのpH及び有効塩素濃度の制御は、制御装置24によって自動化することができる。
一例としては、制御装置24において、pHセンサ20と塩素濃度センサ22による、浸漬槽10内の次亜塩素酸水WのpH及び有効塩素濃度の測定結果から、それらpH及び有効塩素濃度の時間当たりの変化率を算出する。次に、例えば浸種処理では1日経過時、催芽処理では処理終了時のpHと有効塩素濃度の値を推定する。そして、pH及び有効塩素濃度の推定値が、pHは3.0~7.0、有効塩素濃度は10~60mg/Lの範囲内の所定の値となるように、次亜塩素酸水生成装置16の電解電流値や、第1陰極44bと第2陰極45bへの通電比率を制御する。
【0070】
[他の実施形態]
本発明は、前述の催芽装置1、及び催芽装置1を用いた稲病害の防除方法には限定されない。
例えば、催芽装置は、
図3に示すように、制御装置24を備えてない以外は催芽装置1と同様の構成の催芽装置2であってもよい。
図4に示すように、第2循環ラインL2を設けず、第1循環ラインL1に、循環ポンプ26、温調部28、濾過器18、次亜塩素酸水生成装置16をこの順に設ける以外は、催芽装置1と同様の構成の催芽装置3であってもよい。
【0071】
催芽装置は、浸漬槽内の次亜塩素酸水のpHを測定するpHセンサと、浸漬槽内の次亜塩素酸水の有効塩素濃度を測定する塩素濃度センサのいずれか一方、又は両方を備えていなくてもよい。この場合は、浸漬槽内の次亜塩素酸水のpHおよび有効塩素濃度の測定を手動で行い、次亜塩素酸水生成装置16の電解電流値や、第1陰極44bと第2陰極45bへの通電比率を手動で設定する。
また、次亜塩素酸水生成装置で生成した次亜塩素酸水を、循環ラインを流れる次亜塩素酸水に合流させるのではなく、浸漬槽に直接供給する催芽装置としてもよい。
【0072】
催芽装置における次亜塩素酸水生成装置は、
図2に例示した次亜塩素酸水生成装置16には限定されない。例えば、次亜塩素酸ナトリウム水溶液に酸を混合するか、又は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液に炭酸ガスを吹き込むことにより、次亜塩素酸水のpH及び有効塩素濃度を調整する機構を備えた次亜塩素酸水生成装置であってもよい。
【0073】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【実施例0074】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0075】
[参考例1]
種籾は、比重1.13以上で塩水選した「はえぬき」を使用した。塩水選後の種籾を水洗いして塩分を除去した後、水分含有量が15%以下になるように充分乾燥してから、3.8kgずつアミ袋に入れた。
次に、市販の温湯処理機(タイガーカワシマ、YS-200L)を用いて、60℃、10分の条件で種籾の温湯消毒を行った。温湯消毒後、直ちに種籾が入ったアミ袋を温湯処理機から引き上げ、充分に大きな容器に収容された12℃の次亜塩素酸水(pH6.5、有効塩素濃度50mg/L)に浸し、次亜塩素酸水を流水しながらアミ袋を手で揉みほぐし、内部の種籾まで充分に冷却した。
【0076】
次に、ばか苗病の感染率が97%である自然感染種子50gを入れたアミ状の小袋4個(合計計200g)を、冷却後の3.8kgの種籾の入ったアミ袋内に入れた。この自然感染種子を加えたアミ袋(合計4kg)を10袋用意し、次亜塩素酸水で充分に消毒した浸漬槽内のスノコ床上に隙間なく並べた。次いで、pH6.5、有効塩素濃度50mg/Lの次亜塩素酸水100Lを浸漬槽に供給し、浸漬槽内の種籾1kg当たりの次亜塩素酸水の容積(L)の比(容比)を2.5とした。次亜塩素酸水を循環させながら、12℃で7日間浸種処理(積算温度84℃・日)を行った。浸種処理中は、
図5に示すように、浸漬槽内の次亜塩素酸水の有効塩素濃度が10mg/Lになった時点で、浸漬槽内の水の全量を新しい次亜塩素酸水(pH6.5、有効塩素濃度50mg/L)に交換した。
浸種終了後、浸漬槽内の水を全量排水し、新しい次亜塩素酸水(pH6.5、有効塩素濃度50mg/L)に入れ替え、32℃で20時間催芽処理を行った。催芽処理中は新たな水への交換は行わなかった。
【0077】
[比較例1]
浸種処理及び催芽処理において、次亜塩素酸水の代わりに水道水を用いた以外は、参考例1と同様にして温湯消毒から催芽までの処理を行った。
【0078】
[評価方法]
(1)保菌率
催芽処理後の各アミ袋から、発芽した種籾50粒をランダムに採取し、Fusarium属菌の選択培地であるFo-G2培地に置床して、人工気象器を用いて25℃で7日間培養した。7日後に各種籾について菌糸の伸長の有無を確認し、下記式を用いて保菌率(%)を算出した。
保菌率(%)=(NA/N)×100
ただし、前記式中の各記号は以下の意味を示す。
N:採取した種籾の総数
NA:菌糸の伸長が確認された種籾の総数
【0079】
(2)発芽率、徒長苗率、充実度
催芽処理後の各アミ袋から、発芽した種籾400粒をランダムに採取し、育苗箱の10分の1サイズのプラスチック容器に400粒/箱となるように播種し、人工気象器内で2葉期まで育苗した後、下記式を用いて発芽率、徒長苗率及び充実度をそれぞれ算出した。
発芽率(%)=(苗立ち数/400)×100
徒長苗率(%)=(徒長苗の数/苗立ち数)×100
充実度=NC/NB
ただし、前記式中の各記号は以下の意味を示す。
NB:徒長苗を除いた苗の平均長さ(cm)
NC:徒長苗を除いた苗の乾物重量(mg)の平均値
「充実度」は、苗の品質の指標となる値であり、充実度の値が高いほど発根力やその後の苗の生長が良くなる傾向がある。
【0080】
参考例1及び比較例1の浸種及び催芽における浸漬槽内の水のpHの変化を
図6に示す。また、参考例1及び比較例1における保菌率、発芽率、発病苗率及び充実度の結果を表1に示す。
【0081】
【0082】
表1に示すように、浸種処理及び催芽処理に水道水を用いた比較例1では、催芽処理後の種籾の保菌率が高く、ばか苗病の発生比率が高かった。
浸種処理及び催芽処理に次亜塩素酸水を用いた参考例1では、次亜塩素酸水の殺菌効果により、水道水を用いた比較例1に比べて保菌率が低く、ばか苗病の発生比率が低かった。一方、参考例1では、比較例1よりも発芽率が低く、苗の充実度も低かった。これは、催芽処理中に水のpHを制御しない場合、
図6に示すように、水道水(比較例1)に比べて、次亜塩素酸水(参考例1)では処理中のpHが3.0未満まで急激に低下することが原因であると考えられる。
【0083】
[実施例1]
種籾は、比重1.13以上で塩水選した「はえぬき」を使用した。塩水選後の種籾を水洗いして塩分を除去した後、水分含有量が15%以下になるように充分乾燥してから、3.8kgずつアミ袋に入れた。
次に、市販の温湯処理機(タイガーカワシマ、YS-200L)を用いて、60℃、10分の条件で種籾の温湯消毒を行った。温湯消毒後、直ちに種籾が入ったアミ袋を温湯処理機から引き上げ、充分に大きな容器に収容された12℃の次亜塩素酸水(pH6.5、有効塩素濃度50mg/L)に浸し、次亜塩素酸水を流水しながらアミ袋を手で揉みほぐし、内部の種籾まで充分に冷却した。
【0084】
浸種工程及び催芽工程には
図1に例示した催芽装置1を用いた。
ばか苗病の感染率が97%である自然感染種子50gを入れたアミ状の小袋4個(合計計200g)を、冷却後の3.8kgの種籾の入ったアミ袋に入れた。この自然感染種子を加えたアミ袋(合計4kg)を20袋用意し、次亜塩素酸水で充分に消毒した浸漬槽内のスノコ床上に隙間なく並べた。次いで、pH6.5、有効塩素濃度50mg/Lの次亜塩素酸水100Lを浸漬槽に供給し、浸漬槽内の種籾1kg当たりの次亜塩素酸水の容積(L)の比(容比)を1.25とした。次亜塩素酸水を循環させながら、12℃で7日間浸種処理(積算温度84℃・日)を行った。浸種処理の間は、
図2に例示した次亜塩素酸水生成装置16を用いて、
図7及び
図8に示すように、浸漬槽内の次亜塩素酸水のpHが5.0未満にならず、且つ有効塩素濃度が20mg/L未満にならないように、浸漬槽内の次亜塩素酸水のpH及び有効塩素濃度を制御した。
【0085】
浸種終了後、浸漬槽内の水を全量排水し、新しい次亜塩素酸水(pH6.5、有効塩素濃度50mg/L)に入れ替え、次亜塩素酸水を循環させながら32℃で20時間催芽処理を行った。催芽処理の間は、
図2に例示した次亜塩素酸水生成装置16を用いて、
図7及び
図8に示すように、浸漬槽内の次亜塩素酸水のpHが5.0未満にならず、且つ有効塩素濃度が20mg/L未満にならないように、浸漬槽内の次亜塩素酸水のpH及び有効塩素濃度を制御した。
【0086】
[比較例2]
実施例1と同様の方法で種籾の温湯消毒及び冷却を行った。
次に、次亜塩素酸水の代わりに水道水を用い、比較例3で浸漬槽内の次亜塩素酸水の有効塩素濃度が10mg/Lとなったタイミングで、全量を新しい水道水に交換する以外は、実施例1と同様にして浸種処理を行った。
浸種終了後、浸漬槽内の水を全量排水し、新しい水道水に入れ替え、32℃で20時間催芽処理を行った。催芽処理中は新たな水道水への交換は行わなかった。
【0087】
[比較例3]
実施例1と同様の方法で種籾の温湯消毒及び冷却を行った。
次に、次亜塩素酸水生成装置によるpH及び有効塩素濃度の制御は行わずに、浸漬槽内の次亜塩素酸水の有効塩素濃度が10mg/Lとなった時点で全量を新しい次亜塩素酸水(pH6.5、有効塩素濃度50mg/L)に交換する以外は、実施例1と同様にして浸種処理を行った。
浸種終了後、浸漬槽内の水を全量排水し、新しい次亜塩素酸水(pH6.5、有効塩素濃度50mg/L)に入れ替え、32℃で20時間催芽処理を行った。催芽処理中は新たな次亜塩素酸水への交換は行わなかった。
【0088】
実施例1及び比較例2、3における保菌率、発芽率、発病苗率及び充実度の結果を表2に示す。
【0089】
【0090】
表2に示すように、催芽処理中の次亜塩素酸水のpHを3.0~7.0、有効塩素濃度を10~60mg/Lに保持した実施例1では、保菌率及び徒長苗率が低かった。特に、実施例1の保菌率及び徒長苗率は、催芽処理中の次亜塩素酸水のpH及び有効塩素濃度をコントロールしていない比較例2と比べても非常に低く、殺菌効果及び感染予防効果が極めて高かった。また、実施例1の発芽率及び苗の充実度は、催芽処理に水道水を用いた比較例2と同等であり、発芽率及び苗の充実度の低下も抑制されていた。
【0091】
水道水を用いた比較例2では、発芽率や苗の充実度は高いものの、保菌率及び徒長苗率が高く、充分な殺菌効果及び感染予防効果が得られなかった。
催芽処理中の次亜塩素酸水のpH及び有効塩素濃度を適切にコントロールしなかった比較例3では、発芽率及び苗の充実度の低下が見られた。
1…催芽装置、10…浸漬槽、12…温度調整機構、14…シャワーボックス、16…次亜塩素酸水生成装置、18…濾過器、20…pHセンサ、22…塩素濃度センサ、24…制御装置、28…温調部、L1…第1循環ライン、L2…第2循環ライン、W…次亜塩素酸水、A…種籾が袋詰めされた袋。