IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フスコ オートモーティブ ホールディングス エル・エル・シーの特許一覧

<>
  • 特開-機械的カム位相システム及び方法 図1
  • 特開-機械的カム位相システム及び方法 図2
  • 特開-機械的カム位相システム及び方法 図3
  • 特開-機械的カム位相システム及び方法 図4
  • 特開-機械的カム位相システム及び方法 図5
  • 特開-機械的カム位相システム及び方法 図6
  • 特開-機械的カム位相システム及び方法 図7
  • 特開-機械的カム位相システム及び方法 図8
  • 特開-機械的カム位相システム及び方法 図9
  • 特開-機械的カム位相システム及び方法 図10
  • 特開-機械的カム位相システム及び方法 図11
  • 特開-機械的カム位相システム及び方法 図12
  • 特開-機械的カム位相システム及び方法 図13
  • 特開-機械的カム位相システム及び方法 図14
  • 特開-機械的カム位相システム及び方法 図15
  • 特開-機械的カム位相システム及び方法 図16
  • 特開-機械的カム位相システム及び方法 図17
  • 特開-機械的カム位相システム及び方法 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012186
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】機械的カム位相システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   F01L 9/30 20210101AFI20240118BHJP
   F01L 1/344 20060101ALI20240118BHJP
   F16D 41/08 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
F01L9/30
F01L1/344
F16D41/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023115995
(22)【出願日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】63/389,699
(32)【優先日】2022-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/395,564
(32)【優先日】2022-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515138399
【氏名又は名称】フスコ オートモーティブ ホールディングス エル・エル・シー
【氏名又は名称原語表記】HUSCO Automotive Holdings LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】マイケル クジャク
(72)【発明者】
【氏名】オースティン シュミット
(72)【発明者】
【氏名】トッド ウォレンバーグ
【テーマコード(参考)】
3G018
【Fターム(参考)】
3G018BA31
3G018CA09
3G018DA18
3G018DA21
3G018DA24
3G018DA29
3G018DA30
3G018DA65
3G018DA70
(57)【要約】      (修正有)
【課題】カム位相器のためのシステム及び方法を提供すること。
【解決手段】カム位相器100は、第1の合わせ面205を含む駆動部材105と、第2の合わせ面210を含む被駆動部材110と、第1の合わせ面205と第2の合わせ面210との間に配置されるロック機構115と、を含む。ロック機構115は、ロック機構115にロードする被駆動部材110に加えられる外部の力に応答して、第1の合わせ面205と第2の合わせ面210と接触するように動作可能である。カム位相器100は、更に係合部材を含む。係合部材は、ロック機構115を選択的に作動させて駆動部材105に対する被駆動部材110の回転を可能にするように構成される。カム位相器100は、入力機構から追加的な力を受け取るように構成され、前記追加的な力を被駆動部材110に選択的に伝達して、ロック機構をアンロードするように構成される応答機構を含んでもよい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部材と、
被駆動部材と、
ロック機構にロードする前記被駆動部材に加えられる第1のトルクに応答して、前記駆動部材と前記被駆動部材とに接触するように動作可能である、前記ロック機構と、
前記ロック機構を選択的に作動させて前記駆動部材に対する前記被駆動部材の回転を可能にするように構成される係合部材と、
入力機構から第2のトルクを受け取るように構成され、前記第2のトルクを前記被駆動部材に選択的に伝達して、前記ロック機構をアンロードし、前記ロック機構がロック状態からロック解除状態に移動できるようにするように構成される応答機構と、
を備えることを特徴とするカム位相器。
【請求項2】
前記駆動部材は第1の合わせ面を含み、前記被駆動部材は第2の合わせ面を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のカム位相器。
【請求項3】
前記ロック機構は、前記第1の合わせ面と前記第2の合わせ面との間に配置される、
ことを特徴とする請求項2に記載のカム位相器。
【請求項4】
前記駆動部材はクランクシャフトに結合するように構成され、前記被駆動部材はカムシャフトに結合するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のカム位相器。
【請求項5】
前記ロック機構は、第1のロック部材及び第2のロック部材を含むことができ、
前記第1のロック部材及び前記第2のロック部材は、付勢要素によって互いに離れるように付勢される、
ことを特徴とする請求項1に記載のカム位相器。
【請求項6】
前記第1のロック部材及び前記第2のロック部材のそれぞれは、ころ軸受として構成される、
ことを特徴とする請求項5に記載のカム位相器。
【請求項7】
前記係合部材は、第1の表面から延びる1つ又は複数のタブを含み、
前記1つ又は複数のタブは、前記ロック機構と係合して前記ロック機構をロック解除するように構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のカム位相器。
【請求項8】
前記応答機構は、遊星歯車列を含む応答ギアボックスとして構成されている、
ことを特徴とする請求項7に記載のカム位相器。
【請求項9】
前記係合部材は、前記第1の表面の反対側の第2の表面から延びるポストを含み、
前記ポストは、前記遊星歯車列の遊星歯車を受けるように構成されている、
ことを特徴とする請求項8に記載のカム位相器。
【請求項10】
前記遊星歯車列は、前記応答ギアボックスの前記遊星歯車列のサンギアを形成する第1の歯と、前記入力機構と係合するように構成された第2の歯と、を有するモジュラーギアを含む、
ことを特徴とする請求項8に記載のカム位相器。
【請求項11】
前記応答ギアボックスの前記遊星歯車列のリングギアは、前記被駆動部材を受け入れるように構成された切り欠きを画定する、
ことを特徴とする請求項8に記載のカム位相器。
【請求項12】
前記応答機構は、前記第2のトルクを前記係合部材に選択的に伝達して、前記ロック機構をロック解除するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のカム位相器。
【請求項13】
前記ロック機構がアンロード状態にあるとき、前記係合部材は前記ロック機構を変位させることができる、
ことを特徴とする請求項1に記載のカム位相器。
【請求項14】
前記ロック機構が前記アンロード状態にあり、前記係合部材が前記ロック機構を変位させると、前記被駆動部材は前記駆動部材に対して変位することができる、
ことを特徴とする請求項13に記載のカム位相器。
【請求項15】
前記入力機構によって加えられる前記第2のトルクに応答して、前記応答機構は、第1の出力トルクを前記係合部材に伝達し、第2の出力トルクを前記被駆動部材に伝達し、
前記第1の出力トルクと前記第2の出力トルクは、反対の回転方向に加えられる、
ことを特徴とする請求項1に記載のカム位相器。
【請求項16】
第1の合わせ面を含む駆動部材と、
第2の合わせ面を含む被駆動部材と、
前記第1の合わせ面と前記第2の合わせ面との間に配置され、ロック機構にロードする前記被駆動部材に加えられる第1のトルクに応答して、前記第1の合わせ面と前記第2の合わせ面と接触するように動作可能である、前記ロック機構と、
前記ロック機構を選択的に作動させて前記駆動部材に対する前記被駆動部材の回転を可能にするように構成される係合部材と、
入力機構からの第2のトルクを前記被駆動部材に選択的に伝達して前記ロック機構をアンロードし、前記第2のトルクを前記係合部材に選択的に伝達して前記ロック機構をロック解除するように構成される、遊星歯車列を含む応答ギアボックスと、
を備えることを特徴とするカム位相器。
【請求項17】
前記係合部材は、第1の表面から延びる1つ又は複数のタブを含み、前記1つ又は複数のタブは、前記ロック機構と係合して前記ロック機構をロック解除するように構成される、
ことを特徴とする請求項16に記載のカム位相器。
【請求項18】
前記係合部材は、前記第1の表面の反対側の第2の表面から延びる1つ又は複数のポストを含み、
前記1つ又は複数のポストは、前記遊星歯車列の1つ又は複数の遊星歯車を受けるように構成されている、
ことを特徴とする請求項17に記載のカム位相器。
【請求項19】
前記遊星歯車列は、前記応答ギアボックスの前記遊星歯車列のサンギアを形成する第1の歯と、前記入力機構のためのリングギアを構成する第2の歯と、を有するモジュラーギアを含む、
ことを特徴とする請求項16に記載のカム位相器。
【請求項20】
入力機構を介して応答機構に入力トルクを加え、
前記応答機構の遊星歯車を介してカム位相器の係合部材に第1の方向に第1の出力トルクを生成し、
前記応答機構のリングギアを介して前記カム位相器の被駆動部材に前記第1の方向とは反対の第2の方向に第2の出力トルクを生成する、
ことを含み、
前記1つ又は複数の遊星歯車は前記係合部材に取り付けられ、
前記被駆動部材は前記リングギアの一部の内部に固定されており、前記リングギアの回転により前記被駆動部材に対応する回転が生じる、
ことを特徴とする前記カム位相器を動作させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2022年7月15日に出願された「機械的カム位相システム及び方法」のタイトルを有する米国仮特許出願第63/389,699、及び、2022年8月5日に出願された「機械的カム位相システム及び方法」のタイトルを有する米国仮特許出願第63/395,564に基づくものであり、その優先権を主張するものであり、その全体は参照によりここに援用されているものとする。
【0002】
<連邦政府の支援による研究に関する言明>
該当無し。
【背景技術】
【0003】
回転システム(例えば、エンジン、モータなど)は、駆動部材と、駆動部材によって回転駆動される被駆動部材とを含んでもよい。場合によっては、駆動部材と被駆動部材との間にロック機構を配置して、それらの間の相対運動を制御することができる。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、一般に、カム位相のシステム及び方法に関し、特に、カム位相器の構成要素の相対回転を可能にするためにカム位相器のロック機構をロック解除するシステム及び方法に関する。
【0005】
本開示の一態様によれば、カム位相器は、駆動部材と被駆動部材を含むことができる。ロック機構は、前記ロック機構にロードする前記被駆動部材に加えられる第1のトルクに応答して、前記駆動部材と前記被駆動部材とに接触するように動作可能である。係合部材は、前記ロック機構を選択的に作動させて前記駆動部材に対する前記被駆動部材の回転を可能にするように構成されることができる。応答機構は、入力機構から第2のトルクを受け取るように構成されることができる。前記応答機構は、前記第2のトルクを前記被駆動部材に選択的に伝達して、前記ロック機構をアンロードし、前記ロック機構がロック状態からロック解除状態に移動できるようにするように構成されることができる。
【0006】
幾つかの非限定的な例では、前記駆動部材はクランクシャフトに結合するように構成され、前記被駆動部材はカムシャフトに結合するように構成されることができる。前記駆動部材は第1の合わせ面を含むことができ、前記被駆動部材は第2の合わせ面を含むことができる。前記ロック機構は、前記第1の合わせ面と前記第2の合わせ面との間に配置されることができる。前記ロック機構は、第1のロック部材及び第2のロック部材を含むことができ、前記第1のロック部材及び前記第2のロック部材は、付勢要素によって互いに離れるように付勢されることができる。幾つかの場合には、前記第1のロック部材及び前記第2のロック部材のそれぞれは、ころ軸受として構成されることができる。
【0007】
幾つかの非限定的な例では、前記係合部材は、第1の表面から延びる1つ又は複数のタブを含むことができる。前記1つ又は複数のタブは、前記ロック機構と係合して前記ロック機構をロック解除するように構成されることができる。幾つかの場合には、前記応答機構は、遊星歯車列を含む応答ギアボックスとして構成されることができる。前記係合部材は、前記第1の表面の反対側の第2の表面から延びるポストを含むことができ、前記ポストは、前記遊星歯車列の遊星歯車を受けるように構成されている。前記遊星歯車列は、前記応答ギアボックスの前記遊星歯車列のサンギアを形成する第1の歯と、前記入力機構と係合するように構成された第2の歯と、を有するモジュラーギアを含むことができる。前記応答ギアボックスの前記遊星歯車列のリングギアは、前記被駆動部材を受け入れるように構成された切り欠きを画定することができる。
【0008】
幾つかの非限定的な例では、前記応答機構は、前記第2のトルクを前記係合部材に選択的に伝達して、前記ロック機構をロック解除するように構成されることができる。前記ロック機構がアンロード状態にあるとき、前記係合部材は前記ロック機構を変位させることができる。前記ロック機構が前記ロック機構を変位させると、前記被駆動部材は前記駆動部材に対して変位することができる。
【0009】
幾つかの非限定的な例では、前記入力機構によって加えられる前記第2のトルクに応答して、前記応答機構は、第1の出力トルクを前記係合部材に伝達し、第2の出力トルクを前記被駆動部材に伝達することができる。前記第1の出力トルクと前記第2の出力トルクは、反対の回転方向に加えられることができる。
【0010】
本開示の別の態様によれば、カム位相器は、第1の合わせ面を含む駆動部材と、第2の合わせ面を含む被駆動部材と、を含むことができる。ロック機構は、前記第1の合わせ面と前記第2の合わせ面との間に配置されることができ、前記ロック機構にロードする前記被駆動部材に加えられる第1のトルクに応答して、前記第1の合わせ面と前記第2の合わせ面と接触するように動作可能である。係合部材は、前記ロック機構を選択的に作動させて前記駆動部材に対する前記被駆動部材の回転を可能にするように構成されることができる。応答ギアボックスは、入力機構からの第2のトルクを前記被駆動部材に選択的に伝達して前記ロック機構をアンロードするように構成される遊星歯車列を含むことができ、前記遊星歯車列は、前記第2のトルクを前記係合部材に選択的に伝達して前記ロック機構をロック解除するように構成されることができる。
【0011】
幾つかの非限定的な例では、前記係合部材は、第1の表面から延びる1つ又は複数のタブを含むことができる。前記1つ又は複数のタブは、前記ロック機構と係合して前記ロック機構をロック解除するように構成されることができる。幾つかの場合には、前記係合部材は、前記第1の表面の反対側の第2の表面から延びる1つ又は複数のポストを含むことができる。前記1つ又は複数のポストは、前記遊星歯車列の1つ又は複数の遊星歯車を受けるように構成されることができる。幾つかの場合には、前記遊星歯車列は、前記応答ギアボックスの前記遊星歯車列のサンギアを形成する第1の歯と、前記入力機構のためのリングギアを構成する第2の歯と、を有するモジュラーギアを含むことができる。
【0012】
本開示の更に別の側面によれば、カム位相器を動作させる方法が提供される。前記方法によれば、入力機構を介して応答機構に入力トルクを加えることができる。前記応答機構の1つ又は複数の遊星歯車を介してカム位相器の係合部材に第1の方向に第1の出力トルクを生成することができる。前記応答機構のリングギアを介して前記カム位相器の被駆動部材に前記第1の方向とは反対の第2の方向に第2の出力トルクを生成することができる。前記1つ又は複数の遊星歯車は前記係合部材に取り付けられることができる。前記被駆動部材は前記リングギアの一部の内部に固定されることができ、前記リングギアの回転により前記被駆動部材に対応する回転が生じる。
【0013】
本開示の前述及び他の態様及び利点は、以下の説明から明らかになるであろう。この説明では、本明細書の一部を形成する添付図面が参照され、そこには、本開示の好ましい構成が例示として示されている。しかしながら、そのような構成は必ずしも本開示の全範囲を表すものではないため、本開示の範囲を解釈するために特許請求の範囲及び本明細書を参照する。
【0014】
以下の詳細な説明を考慮すると、本発明はよりよく理解され、上記以外の特徴、態様及び利点が明らかになるであろう。このような詳細な説明は、以下の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本開示の一態様によるカム位相器の概略図である。
図2図2は、ロード状態における、図1のカム位相器の一部の概略図である。
図3図3は、アンロード状態における、図2のカム位相器の一部の概略図である。
図4図4は、エンドキャップを取り外した状態における、図1のカム位相器の一部の上面図である。
図5図5は、図1のカム位相器の正面分解図である。
図6図6は、図1のカム位相器の背面分解図である。
図7図7は、図1のカム位相器の断面図である。
図8図8は、図1のカム位相器の応答ギアボックスの分解図である。
図9図9は、図1のカム位相器のエンドキャップの上面図である。
図10図10は、図1のカム位相器の上面図である。
図11図11は、図1のカム位相器のクレードルロータの斜視図である。
図12図12は、図1のカム位相器のクレードルロータの底面図である。
図13図13は、図1のカム位相器の係合部材の底面斜視図である。
図14図14は、図1のカム位相器の係合部材の上面斜視図である。
図15図15は、図14の係合部材と共に使用する係合スリーブの斜視図である。
図16図16は、図1のカム位相器の断面図である。
図17図17は、本開示の別の態様によるカム位相器の別の例の一部の斜視図である。
図18図18は、本開示の別の態様によるカム位相器の別の例の一部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の考察は、当業者が本発明の態様を作成及び使用できるようにするために提示される。図示された実施形態に対する様々な修正は当業者には容易に明らかであり、本明細書の一般原理は、本発明の実施形態から逸脱することなく他の実施形態及び用途に適用することができる。従って、本発明の実施形態は、示された実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示される原理及び特徴と一致する最も広い範囲が与えられるべきである。以下の詳細な説明は、図面を参照して読まれるべきであり、異なる図面の同様の要素には同様の参照番号が付けられている。必ずしも縮尺どおりではない図面は、選択された実施形態を示しており、本発明の実施形態の範囲を限定することを意図するものではない。当業者は、本明細書に提供される非限定的な例には多くの有用な代替例があり、本発明の実施形態の範囲内に含まれることを認識するであろう。
【0017】
本発明の実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載されるか、又は以下の図面に示される構成要素の構成の詳細及び配置に限定されないことを理解されたい。
【0018】
以下の説明における参照番号は、読者が様々なコンポーネントが最初に示される図面を素早く識別できるように整理されている。特に、要素が最初に登場する図面は、通常、対応する参照番号の左端の数字によって示される。例えば、「カム位相器100」シリーズの参照番号によって識別される要素は、おそらく図1に最初に現れるであろう。「200」シリーズの参照番号によって識別される要素は、おそらく図2に最初に現れるであろう。
【0019】
本発明は、他の実施形態も可能であり、様々な方法で実施又は実行することができる。また、本明細書で使用される表現及び用語は説明を目的としたものであり、限定するものとみなすべきではないことを理解されたい。本明細書における「含む」("including")、「備える」("comprising")、又は「有する」("having")及びそれらの変形の使用は、その後に列挙される項目及びその等価物、並びに追加の項目を包含することを意味する。別段の指定又は制限がない限り、「取り付けられた」("mounted")、「接続された」("connected")、「支持された」("supported")、及び「結合された」("coupled")という用語、及びそれらの変形は、広く使用され、直接的及び間接的の両方についての、取り付け、接続、支持、及び結合を包含する。更に、「接続された」及び「結合された」は、物理的又は機械的な接続又は結合に限定されない。
【0020】
本明細書における「軸方向」という用語及びその変形例は、特定のコンポーネント又はシステムについての、対称軸、中心軸、又は長手方向にほぼ沿って延びる方向を指す。例えば、構成要素の軸方向に延びる構造は、その構成要素についての、対称軸又は長手方向に平行な方向にほぼ沿って延びてもよい。同様に、本明細書における用語「半径方向」及びその変形例の使用は、対応する軸方向に対してほぼ垂直な方向を指す。例えば、構成要素の半径方向に延びる特徴は、一般に、その構成要素の長手方向又は中心軸に垂直な方向に少なくとも部分的に沿って延びてもよい。本明細書における用語「円周方向」及びその変形の使用は、物体の円周の周り、対称軸の周り、中心軸の周り、又は特定のコンポーネント若しくはシステムの長手方向の周りにほぼ延びる方向を指す。
【0021】
上で一般的に述べたように、ロック機構は、回転システム(例えば、カム位相システム)における駆動部材と被駆動部材との間の相対運動を制御するために使用することができる。ロック機構は、被駆動部材を駆動部材に回転的にロックするロック構成と、被駆動部材が被駆動部材に対して回転できるようにする(例えば、カム位相角を調整するため)ロック解除構成との間で移動することができる。動作条件によっては、ロック機構がロックされた構成のままになる可能性がある。ロック機構が固着するリスクを最小限に抑える1つの方法は、ロック解除位置において、ロック機構と、駆動部材又は被駆動部材の少なくとも一方との間に隙間を設けることである。しかし、これにより通常、回転システムに遊びが生じ、システムに望ましくない誤差が生じ、駆動部材と被駆動部材を互いに対して正確に位置決めする(例えば、所望のカム位相角を達成する)ことがより困難になる可能性がある。従って、カム位相調整システムの文脈では、そのようなシステムは、位相角をシフトするために位相器をロック解除するために必要なトルクを最小限に抑えながら、最小限の滑りで位相器をロックする能力を最大化し、全体のシステム及びコンポーネントの耐久性を最大化することの間でバランスを達成するのに苦労する可能性がある。本開示の態様は、ロック部材と駆動部材及び被駆動部材のそれぞれとの間に隙間を導入することなくロック部材をロック解除できるようにすることによって、これらの欠点に対処することができる。
【0022】
例えば、カム位相システムは、駆動部材(例えば、クランクシャフトに結合するように構成された本体又はスプロケットハブ)及び被駆動部材(例えば、カムシャフトに結合するように構成されたクレードルロータ)を含むことができ、これらは互いに対して選択的に回転して、それらの間の位相角を調整することができる。ロック機構は、駆動部材と被駆動部材との間に配置され、(例えば、ロック機構の選択的なロック及びロック解除によって)駆動部材と被駆動部材との間の相対回転の大きさ及び方向を選択的に制御することができる。
【0023】
ロック機構は、応答機構を介して入力機構(例えば、アクチュエータ)によって操作することができる。応答機構は、入力機構から被駆動部材及びロック機構をロック及びロック解除するように構成された係合部材に入力トルクを伝達するように構成することができる。より具体的には、ロック機構が駆動部材と被駆動部材との間にロードされた(例えば、完全に圧縮された)状態でロック機構がロック状態にある場合、応答機構は、ロック機構にかかる圧縮力を低減することによって、第1のトルク(例えば、第1の出力トルク)を被駆動部材に伝達して、ロック機構をアンロードすることができる。アンロード状態では、駆動部材と被駆動部材との間のバックラッシをゼロにするために、ある程度の圧縮力がロック機構に残ってもよい。同様に、応答機構は、第2のトルク(例えば、第2の出力トルク)を係合部材に伝達して、ロック機構をロック解除し、駆動部材と被駆動部材との間の相対回転を可能にすることができる。第1のトルクは、第2のトルクの適用時に、係合部材がロック機構にかかる残留力に打ち勝ち、ロック機構のロック要素をロック解除位置に移動できるように、ロック機構がアンロードされることが理解される。第1のトルクと第2のトルクは、反対の回転方向に加えることができる。
【0024】
場合によっては、入力機構と応答機構との間に速度整合ギアボックスを設けることができる。応答機構は、上記の原理に従ってさまざまな方法で配置できることが理解される。1つの特定の例では、応答機構は応答ギアボックスとして構成することができる。応答ギアボックスは、サンギア、遊星キャリア、リングギアを備えた遊星歯車列を構成できる。サンギアは、入力機構から入力トルクを受けるように結合することができる。速度整合ギアボックスが設けられる場合、応答ギアボックスは、応答ギアボックスのサンギアと速度整合ギアボックスの出力ギア(例えば、リングギア)の両方を形成するモジュラーギアを含むことができる。遊星キャリアは係合部材に結合することができる。リングギアは、リングギアと被駆動部材とが互いに回転的にロックされるように、被駆動部材に結合することができる。他の非限定的な例では、応答機構は異なって形成されることができる。
【0025】
図1は、本開示の一例によるカム位相器100の非限定的な例を示す。カム位相器100は、ロック機構115によって選択的に回転可能に結合された駆動部材105及び被駆動部材110を含んでもよい。幾つかの非限定的な例では、駆動部材105は、駆動部材105が装置と一体となって移動するように、駆動部材105にエネルギーを入力するように構成された装置に結合されてもよい。例えば、駆動部材105は、第1の回転構成要素、例えば、エンジン(例えば、内燃機関)のクランクシャフトに結合されて、それと共に回転してもよい。被駆動部材110は、別の第2の回転構成要素、例えば、モータのカムシャフトに結合されてもよいが、駆動部材105と共に及び/又は駆動部材105に対して変位することが可能であってもよい(例えば、クランクシャフトに対する角度及び/又は位相を修正する)。
【0026】
一般に、ロック機構115は、駆動部材105と被駆動部材110との間に配置されてもよい。ロック機構115は、駆動部材105と被駆動部材110との間の相対運動を選択的に可能にすることができる。一例では、ロック機構115は、ロック位置とロック解除位置との間で移動可能であってもよい。ロック解除位置では、ロック機構115は、被駆動部材110が駆動部材105に対して変位できるようにしてもよい。即ち、被駆動部材110は、所定の限界(例えば、+/-30度)まで、駆動部材105に対して回転することができる。ロック状態では、ロック機構115は、駆動部材105と被駆動部材110との間の相対運動を防止してもよい。すなわち、ロック状態では、駆動部材105及び被駆動部材110は、互いに同期して回転するように回転的にロックされることができる。
【0027】
幾つかの非限定的な例では、係合部材120は、ロック機構115と選択的に係合してもよく、駆動部材105及び被駆動部材110から独立して移動可能であってよく、又は、駆動部材105及び被駆動部材110に対して移動可能であってよい。例えば、係合部材120は、係合部材120に結合された入力機構125(例えば、アクチュエータ及び/又は遊星歯車列)によって入力される力に応答して選択的に移動可能であってよい。係合部材120は、(例えば、入力機構125を介して)選択的に変位してもよく、これに応答して、係合部材120は、ロック機構115に、所望の方向(例えば、時計回り又は反時計回り)に係合及び変位させて、ロック機構115をロック位置とロック解除位置との間で移行させてもよい。ロック機構115がいずれかの方向に変位すると、被駆動部材110が駆動部材105に対して対応する方向(例えば、時計回り又は反時計回り)に回転することが可能になる。
【0028】
動作中、被駆動部材110は、ロック機構115にロードを加える外部の力(例えば、第1の力又はトルク)を受けてもよい。例えば、被駆動部材110が結合される装置は、被駆動部材110に力を及ぼしてもよい。幾つかの非限定的な例では、力は複数の方向に発生してもよい。幾つかの非限定的な例では、力は、交互に変わる方向及び可変の大きさで被駆動部材110に周期的に加えられてもよい。
【0029】
幾つかの非限定的な例では、力が被駆動部材110に作用すると、ロック機構115に加えられる対応するロードにより、駆動部材105と被駆動部材110との間でロック機構115が圧縮されることができる。ロック機構115に加えられるこの圧縮は、ロック機構115が、例えば係合部材120によってロック位置とロック解除位置との間で移動することを実質的に防止することができる。即ち、駆動部材105と被駆動部材110との間のロック機構115の圧縮は、ロック機構115を効果的に「ロック」し、係合部材120がロック機構115を選択的に変位させることを実質的に防止することができる。従って、特定の動作条件では、被駆動部材110に加えられる力により、ロック機構115をロード状態にしてもよく、ロード状態においては、係合部材120は、ロック機構115を選択的に変位させ、ロック位置とロック解除位置との間でロック機構115を移行させることが実質的に防止される。ロック機構がロック位置にあるとき、駆動部材105と被駆動部材110は、同時に(すなわち、同じ回転速度で)回転するように互いに回転的にロックされることができる。
【0030】
幾つかの非限定的な例では、ロック機構は、駆動部材105と被駆動部材110が互いに対して回転できるように、アンロードしたりロック解除したりすることができる。すなわち、被駆動部材110に力を加えることで生じるロック機構115の圧縮は、被駆動部材110に力を入力することによって解放されてもよい(例えば、ロック機構115の圧縮が緩和されてもよい)。従って、入力機構125が被駆動部材110に追加の力(例えば、モータを介して被駆動部材110に加えられる第1の力に加えて第2の入力される力又はトルク)を選択的に加えることができるように、入力機構125は被駆動部材110に結合されてもよく、これによって、ロック機構115をアンロードして、ロック機構115の動きをロック解除する。例えば、入力機構125を介したロック機構115のアンロードに続いて、入力機構125は係合部材120を作動(例えば、回転)させることができ、これによって、ロック機構115に力を加えてロック解除し、駆動部材105に対する被駆動部材110の調整を可能にする。従って、アンロード状態では、ロック機構115をロック解除して、駆動部材105と被駆動部材110が互いに相対的に(例えば、異なる回転速度で)回転できるようにすることができる。入力機構によって提供される力は、駆動部材105と被駆動部材110の回転速度及び/又は位置の差の大きさを制御することができる。
【0031】
アンロード状態では、ロック機構115は駆動部材105と被駆動部材110の両方と接触したままであることができ、システム内の遊びを減少させることができることが理解される。従って、アンロード状態では、ロック機構115と駆動部材105及び被駆動部材110との間の圧縮力は、ロード状態に存在する圧縮力と比較して、実質的に除去することができる。例えば、アンロード時には、ロック機構115にかかる圧縮力は、ロード状態に存在する圧縮力の、約50%未満、約25%未満、約10%未満、約5%未満、又は約2%未満に低減されてもよい。
【0032】
幾つかの非限定的な例では、カム位相器100は、機械的カム位相調整用途に適用されてもよい。例えば、駆動部材105は内燃機関のクランクシャフトに回転可能に結合され、被駆動部材110は内燃機関のカムシャフトに回転可能に結合されてよい。幾つかの非限定的な例では、係合部材120は、係合部材120に力を入力するように構成された入力機構125(例えば、アクチュエータ及び/又は遊星歯車列)に結合されてもよい。幾つかの非限定的な例では、入力機構125は、係合部材120に力を入力して係合部材120をロック機構115へ所定の量及び/又は距離だけ変位させ、駆動部材105に対する被駆動部材110の回転をロック解除するように構成されてもよい。結果として生じるロック機構115の変位により、希望の方向に被駆動部材110を駆動部材105に対して回転できるように(つまり、カムシャフトはクランクシャフトに対して選択的に回転できるように)してもよく、これによって、所望の量のカム位相調整(つまり、カムシャフトとクランクシャフト間の回転オフセット)を達成する。
【0033】
図2及び図3に示す例では、駆動部材105は、ロック機構115に隣接して配置された第1の合わせ面205を含むことができる。被駆動部材110は、ロック機構115の反対側に隣接して配置された第2の合わせ面210を含むことができる。図示された非限定的な例では、ロック機構115は、第1の合わせ面205と第2の合わせ面210との間に配置されてもよい。ロック機構115は、付勢要素225を介して互いに離れるように付勢された第1のロック部材215及び第2のロック部材220を含むことができる。幾つかの例では、付勢要素225は、ばね、弾性材料、及び/又は他の付勢材料、及び/又は弾性材料の形態であってもよい。1つの特定の例では、225はコイルバネの形態であってもよい。幾つかの非限定的な例では、第1のロック部材215及び第2のロック部材220は、ベアリング要素の形態であってもよい。幾つかの非限定的な例では、第1のロック部材215及び第2のロック部材220は、ころ軸受の形態であってもよい。幾つかの非限定的な例では、第1のロック部材215及び第2のロック部材220は、第1の合わせ面205と第2の合わせ面210との間の空洞に適合するように構成された、又は、それらの間に楔止めできる任意の形態をとってもよい。場合によっては、駆動部材105と被駆動部材110との間に複数のロック機構115を配置することができる。
【0034】
機械的カム位相調整用途におけるカム位相器100の動作の非限定的な一例を、図2及び図3を引き続き参照して説明する。一般に、動作中、力(例えば、カムトルクパルス)が被駆動部材110に加えられてもよい。例えば、被駆動部材110は、カムシャフトに作用する吸気バルブ及び排気バルブから生じるカムトルクパルスを受けてもよい。被駆動部材110に作用するカムトルクパルスは、内燃機関の動作中に方向及び大きさが(例えば、周期的に)変化してもよい。これらのトルクパルスからのエネルギーはカム位相器100によって収集されることができ、これによって、駆動部材105と被駆動部材110を相互に回転させてカム位相角を調整することができる。ロック機構115を選択的にロック及びロック解除することによって、被駆動部材110は、(例えば、カムタイミングを進めたり遅らせたりするために)駆動部材105に対して特定の方向に回転するように拘束されることができる。例えば、第1のロック部材をロック解除することによって、被駆動部材110は、駆動部材に対して第1の方向に回転して、カムタイミングを進めることができる。逆に、第2のロック部材220をロック解除することによって、被駆動部材110は、駆動部材105に対して反対の第2の方向に回転して、カムタイミングを遅らせることができる。
【0035】
より具体的には、動作中、力240で示されるように、カム位相器100に第1の方向に第1の力(例えば、回転モーメント力、トルク)が加えられてもよい。図示された非限定的な例では、力は、例えば反時計回りの方向に被駆動部材110に作用するトルクパルスであってもよい。被駆動部材110に第1の方向に力が加えられると、力の矢印230で示すように、圧縮力「F」によって第1のロック部材215にロードが加えられてもよい。例えば、圧縮力「F」は、第1のロック部材215と、第1の合わせ面205及び第2の合わせ面210の両方との間の接触によって生じてもよい。被駆動部材110に対するトルクの結果として第1のロック部材215に加えられる圧縮力は、第1のロック部材215を「ロック」することができ、その結果、(例えば、第1のロック部材215の材料特性のために)第1のロック部材215の一時的な弾性変形が生じる可能性がある。その結果、係合部材120による第1のロック部材215の変位が実質的に阻止され、駆動部材105と被駆動部材110との間の相対回転が阻止されてよい。
【0036】
しかしながら、第2のロック部材220は、上述の第1のロック部材215と同様に予めロックされていてもよいが、力の矢印235で示すように、第2のロック部材220に加えられる残留力「F_rem」の結果として、ロックされたままであってもよい。残留力は、第2のロック部材220が駆動部材105と被駆動部材110との間で部分的に圧縮されたままであることの結果であってもよい。このような部分的な圧縮は、力の矢印240によって示される方向に加えられる十分な力の欠如によって生じてもよい(例えば、反時計回り方向のカムパルスが時計回り方向のカムパルスよりも小さい)。従って、第1のロック部材215及び第2のロック部材220の両方は、第1の合わせ面205と第2の合わせ面210との間で、(例えば、ロード状態で)ロック及び/又は圧縮されてもよく、これによって、係合部材120が第2のロック部材220を解放して(例えば、ロック解除して)、駆動部材105に対する被駆動部材110の相対移動を可能にしてしまうことを防止する。同様の原理が、トルク240が反対方向(例えば、図2及び図3の反時計回り)に加えられて、第2のロック部材220を圧縮し第1のロック部材215を圧縮解除する場合にも適用されることが理解される。
【0037】
第2のロック部材220から残りの力を除去するために、カム位相器100は、力240と同じ方向に追加の力(すなわち、力の矢印305によって示される「T_act」)を加えてもよい。追加の力T_actは、入力機構125(例えば、アクチュエータ/遊星歯車列)を介して被駆動部材110上に生成されてもよい。例えば、入力機構125は、一連の歯車セット(例えば、遊星歯車セット)を介してアクチュエータから力を伝達してもよく、これにより、アクチュエータによって加えられる力を倍増(例えば、2~10倍)することができ、第1のロック部材215を更に圧縮することができる。次に、被駆動部材110の回転運動により、第2の合わせ面210が、(例えば、第2の合わせ面210の形状のために)第2のロック部材220との接触点で第2のロック部材220から傾く、角度が付く、又は離れるように移動し、これによって、第2のロック部材220は更に圧縮解除することができ、その結果、残りの力が第2のロック部材220から実質的に除去される。従って、第2のロック部材220は、現在アンロード状態にあると言われ、係合部材120によって「ロック解除」することができ、駆動部材105に対する被駆動部材110の相対運動を可能にする。上で一般的に述べたように、係合部材120からの力が残りの力を克服できるようにするために、残りの力は部分的にのみ除去されてもよいことが理解される。従って、ロック解除されているときであっても、第2のロック部材220が駆動部材105と被駆動部材110との間で部分的に圧縮されることができる。このようにして、第2のロック部材220は、駆動部材105及び被駆動部材110の両方と接触したままとなり、それによってシステム内の遊びが減少する。
【0038】
図4は、カム位相器100の一例を示す。カム位相器100は、外面上にスプロケット410を画定する本体405(例えば、スプロケットハブ)を含んでもよい。一例では、スプロケット410は、チェーン、プーリ、ギア、及び/又は他の装置と相互作用するように構成されてもよい。1つの特定の例では、スプロケット410は、カム位相器100を車両のクランクシャフトに機械的に連結するために、車両のタイミングチェーンと係合するように構成されてもよい。一例では、カム位相器100の本体405の一部が駆動部材105を画定しうる一方、クレードルロータ415の一部が被駆動部材110を画定しうる。1つの特定の例では、クレードルロータ415は、カムシャフトの相対運動を可能にするためにカムシャフトに機械的に接続されてもよい。同様に、ロック機構115は、クレードルロータ415とカム位相器100の本体405との間に挟まれてもよい。
【0039】
図4に示されるように、第1のロック部材215及び第2のロック部材220は、1つ又は複数の保持フィッティング425(例えば、ロック機構支持体)を介してカム位相器100内の所定の位置に境界付けられ、及び/又は維持される。一例では、保持フィッティング425は更に、付勢要素225の各端部の取り付け位置として機能するように構成されてもよい。従って、付勢要素225は、保持フィッティング425を通じて第1及び第2のロック部材215、220に外向きの付勢力を加えてもよい。理解されるように、付勢要素225は、第1及び第2のロック部材215、220を外側に付勢して被駆動部材110及び駆動部材105と接触させ、カム位相器100における望ましくない隙間及び/又は遊びを回避するように構成されている。
【0040】
図5図8は、カム位相器100の構成要素を示すカム位相器100の様々な異なる図を示す。例えば、カム位相器100は、入力機構125の一部を形成し、1つ又は複数の遊星歯車列を有する速度整合ギアボックス505を含んでもよく、これは、例えば、「制御された相対回転運動のためのシステム及び方法」というタイトルの米国特許出願第17/608,442号に記載され、米国特許出願第17/608,442号の全てが本明細書に参照によって援用されている。速度整合ギアボックス505は、入力機構125から入力される力を、応答機構に伝達することができ、応答機構は、被駆動部材110を回転させてロック機構115のロード及びアンロードを制御し、係合部材120を回転させてロック機構115のロック及びロック解除を制御するように構成されている。応答機構は様々な方法で構成できることが理解される。一例では、応答機構は応答ギアボックス800として構成されることができる。より具体的には、応答ギアボックス800は遊星ギアボックスとして構成することができる。同様に、カム位相器100は、(図8に示す)速度整合ギアボックス505のリングギア及び応答ギアボックス800のサンギアの両方として機能するモジュラーギア510を含んでもよい。場合によっては、モジュラーギアは、速度整合ギアボックスのリングギアを画定する第1の部分と、応答ギアボックスのサンギアを画定する別個の第2の部分とを含むことができ、これらは互いに結合することができる。
【0041】
一例では(図7に示す)、速度整合ギアボックス505の1つ又は複数の遊星歯車は、モジュラーギア510の内歯705と噛み合い及び/又は相互作用することができ、応答ギアボックス800の1つ又は複数の遊星歯車520は、モジュラーギア510の外歯710と噛み合い及び/又は相互作用することができる。従って、アクチュエータ(例えば、電気、空気圧、油圧、機械及び/又は他のアクチュエータ)を介して速度整合ギアボックス505内で生成された回転は、同様に、モジュラーギア510を介して応答ギアボックス800に回転を与えてもよい。一例では、応答ギアボックス800は、被駆動部材110を画定するクレードルロータ415にトルク及び/又は力を加えるように構成される。従って、クレードルロータ415に加えられるトルクにより、第1及び第2のロック部材215、220のロード状態からアンロード状態への移行が可能になる。
【0042】
一例では、速度整合ギアボックス505(例えば、モジュラーギア510)と本体405との間に保持クリップ515を配置して、速度整合ギアボックス505をカム位相器100に結合し、その中での軸方向の移動を防止することができる。更に、リングギア530(例えば、エンドキャップ)をカム位相器100に固定するために、リングギア530とカム位相器100の本体405との間に(図5に示す)スナップリング525を配置してもよい。
【0043】
図8に示されるように、応答ギアボックス800は、モジュラーギア510、クレードルロータ415、ロック機構115、係合部材120、1つ又は複数の遊星歯車520、及びリングギア530を含む遊星歯車列の形態であってもよい。一例では、応答ギアボックス800は、入力機構125(例えば、アクチュエータ及び/又は速度整合ギアボックス505)から入力を受け取るように構成されている。入力はモジュラーギア510の回転を生成してもよく、これにより、遊星歯車520及び係合部材120(すなわち、遊星歯車520の遊星キャリアとして機能するスパイダーローター)に回転が生成され、これにより、係合部材120を介して第1及び/又は第2のロック部材215及び220に加えられるトルクが増加する。遊星歯車520はリングギア530(すなわち、エンドキャップ)と噛み合うため、リングギア530の対応する回転は、増加したトルク値(例えば、2~10倍の入力トルク)で達成することができる。他の場合には、リングギア530の回転は、例えば、入力トルク以下の、異なるトルク値で達成することができる。従って、クレードルロータ415(例えば、被駆動部材110)がリングギア530に結合されているため、追加のトルクがクレードルロータ415に加えられ、これにより、(例えば、ロック機構115をロック及びロック解除するために)第1及び/又は第2のロック部材215、220をロード状態からアンロード状態に移行させてもよい。同時に、場合によっては、本体405は、ロック解除されているそれぞれのロック部材215、220に抵抗力を与えることができ、そのロック部材に残っている力をアンロードすることができる。次に、係合部材120は、ロック機構115をロック状態からロック解除状態に選択的に作動させて、クレードルロータ415、ひいてはカムシャフトの相対回転を可能にしてもよい。
【0044】
図9に示されるように、リングギア530は、カム位相器100のエンドキャップ905の形態であってもよい。エンドキャップ905は、クレードルロータ415を固定するように構成された切り欠き910を画定してもよい。一例では、切り欠き910は、クレードルロータ415をエンドキャップ905に回転的にロックするように構成された一連のロック開口915を含む。対応して、クレードルロータ415は、クレードルロータ415がリングギア530と共に回転するように、エンドキャップ905にロックされるように構成される。一例では、(図11及び図12に示す)クレードルロータ415は、本体1105及びベース1110を含む。ベース1110は、リングギア530のロック開口915に連動及び/又は対応するように構成された1つ又は複数の突出ローブ1115を含み、クレードルロータ415がリングギア530にロックできるようにする。一例では、エンドキャップ905は、クレードルロータ415の取付穴1125に対応する開口920を含んでもよい。開口920は、カムシャフト及び/又は他の構成要素の一部がカム位相器100に接続できるように構成されてもよい。例えば、締結具を取付穴1125及び開口920を通して挿入し、カムシャフトと係合し、トルクをカムシャフトに伝達することができる。締結具からの力によって、クレードルロータ415をエンドキャップ905に回転可能に固定することもできることが理解される。
【0045】
図10に示されるように、エンドキャップ905は、エンドキャップ905の外周から突出する1つ又は複数のタブ925を含む。タブ925は、所定の回転角度を超えるリングギア530の過剰回転を禁止するように構成されてもよい。例えば、1つ又は複数のタブ925は、カム位相器100の本体405の一対のリッジ1005によって画定されるチャネル1010内で移動するように構成されてもよい。一例では、リングギア530が回転すると、タブ925がリッジ1005の端部に近づく。タブ925がリッジ1005に接触すると、リングギア530は同じ方向にそれ以上回転することが禁止される(すなわち、反対方向の回転は許可される)。従って、この段階では、リングギア530は同じ方向への更なる回転がロックされる。
【0046】
図11及び図12は、クレードルロータ415の一例を示す。前述したように、クレードルロータ415は、本体1105及びベース1110を含み、これらは一緒になって、1つ又は複数の切り欠き1120を画定し、これは、1つ又は複数の遊星歯車520が、クレードルロータ415を通って突き出て、モジュラーギア510と噛み合い、クレードルロータ415の回転を生成することを可能にするように構成される。一例では、クレードルロータ415の本体1105は、カム位相器100の被駆動部材110を画定する。別の例では、応答ギアボックス800は、モジュラーギア510がクレードルロータ415内に収まるように構成され、カム位相器100の全体的な設置面積(例えば、その軸方向又は半径方向の寸法)を低減するように設計されてもよい。前述したように、クレードルロータ415のベース1110は取付穴1125を画定し、これは、車両のカムシャフトを結合し、カム位相器100とカムシャフトとを接続するように構成された締結具を受け入れてもよい。従って、クレードルロータ415の回転は、カムシャフトの回転に直接対応することができる。
【0047】
図13図15は、係合部材120の例を示す。一例では、係合部材120は、1つ又は複数のポスト1310を含む第2の表面1305を有する環状リング形状を画定してもよい。ポスト1310は、遊星歯車520の開口1315を介して1つ又は複数の遊星歯車520を受け入れるように構成されてもよく、その結果、係合部材120は応答ギアボックス800の遊星キャリアとして機能する。換言すれば、係合部材120は、係合部材(すなわち、第1及び第2のロック部材215、220を作動させるため)と、応答ギアボックス800の遊星歯車列の遊星キャリアとの両方として、機能してもよい。従って、カム位相器100の全体的なサイズを縮小してもよい。
【0048】
そのために、係合部材120は、ロック及びロック解除のためにロック機構115と係合するように構成された1つ又は複数のタブ1410を含む第1の表面1405を更に含んでもよい。場合によっては、タブ1410は、製造時の寸法公差を考慮して、それぞれがスリーブ1415を受け入れるように任意に構成されてもよい。一例では、スリーブ1415は、開口部1510を画定してもよく、タブ1410が開口部1510内に位置決めされたとき(すなわち、タブ1410が開口部1510を介してスリーブ1415内に突出するとき)、タブ1410を取り囲むように構成されてもよい。一例では、係合部材120は、1つ又は複数のタブ1410を介して(すなわち、オプションのスリーブ1415を介して)、ロック機構115の第1のロック部材215及び/又は第2のロック部材220と接触するように構成され、ロック機構115をロック解除する。例えば、タブ1410は、ロック機構115の第1及び/又は第2のロック部材215、220に力を加えて、ロック機構115をロック解除することができる。前述したように、係合部材120は、応答ギアボックス800の遊星歯車列を介して移動させてもよい。更に、入力が入力機構125を介して受け取られると、追加の力又はトルクが係合部材120内に生成されてもよい。
【0049】
図16は、カム位相器100の使用例を示す。一例では、入力機構125は、モジュラーギア510に入力を伝達する。換言すれば、アクチュエータは速度整合ギアボックス505に力を加え、モジュラーギア510に第1の方向の回転を生成するように機能する。(例えば、速度整合ギアボックス505のリングギア及び応答ギアボックス800のサンギアとして機能するために)モジュラーギア510は内歯と外歯の両方を有するので、モジュラーギアは遊星歯車520を回転させ、これにより、リングギア530の回転を駆動する。従って、追加の入力される力がリングギア530に生成されてもよく、これは、クレードルロータ415に伝達されて、ロック機構115の一部をアンロードし、係合部材120がロック機構115をロック解除できるようにする。従って、係合部材120は、クレードルロータ415とカムシャフトとの相対回転をロック解除することができる。
【0050】
一例では、リングギア530内で生成されるトルクの方向は、カムシャフトの所望の位相の回転方向と反対である。例えば、カムシャフトが時計回りに位相を変えることが望ましい場合、リングギア530は反時計回りに回転するように構成され、その逆も同様である。他の例では、リングギア530内で生成されるトルクは、カムシャフトの所望の位相の回転と同じ方向であってもよい。
【0051】
図17は、カム位相器1700の別の例を示す。認識されるように、カム位相器1700は、前述の例と共通の多くの構成要素を共有し、同様の方法で動作する。簡潔にするために、これらの共通の特徴については、以下では再度詳細に説明しない。むしろ、同じ名前又は番号が付けられた特徴に関する前述の説明は、別段の指示がない限り、カム位相器カム位相器1700の構成例にも適用される。
【0052】
カム位相器1700は、前述の遊星歯車520の代わりに、1つ又は複数のピボットギア1705を備えた応答機構(すなわち、応答ギアボックス)を含んでもよい。ピボットギア1705は、前述した係合部材120及び/又はリングギア530の所定量の移動(例えば、回転)のみを可能にするように構成されてもよい。更に、ピボットギア1705は、係合部材120及びクレードルロータ415へのトルク伝達の増大を可能にすることができる。
【0053】
図18は、カム位相器1800の別の例を示す。認識されるように、カム位相器1800は、前述の例と共通の多くの構成要素を共有し、同様の方法で動作する。簡潔にするために、これらの共通の特徴については、以下では再度詳細に説明しない。むしろ、同じ名前又は番号が付けられた特徴に関する前述の説明は、別段の指示がない限り、カム位相器カム位相器1800の構成例にも適用される。
【0054】
カム位相器1800は、係合部材120から突出する対応するピボット点1810の周りを回転するように構成されたピボット部1805を備えた応答機構を含んでよい。一例では、ピボット部1805は、モジュラーギア510から入力される力を受け取ることに基づいて、係合部材120に出力される力(例えば、第1の出力される力又はトルク)を生成することができる。別の例では、ピボット部1805は、クレードルロータ415に追加の出力される力(例えば、第2の出力される力又はトルク)を生成することができ、これにより、クレードルロータ415(すなわち、被駆動部材110)に加えられる実効トルクが増加し、残留力を除去する。第1及び第2の出力トルクは、反対の回転方向とすることができる。
【0055】
この明細書では、明確かつ簡潔な明細書を作成できる方法で実施形態が説明されているが、本発明から離れることなく実施形態を様々に組み合わせたり分離したりできることが意図されており、理解されるであろう。例えば、本明細書に記載されるすべての好ましい特徴は、本明細書に記載される本発明のすべての態様に適用可能であることが理解されるであろう。
【0056】
従って、本発明を特定の実施形態及び例に関連して説明してきたが、本発明は必ずしもそのように限定されるものではなく、他の多くの実施形態、実施例、使用、及び修正、並びに、実施形態、実施例、及び使用からの逸脱が添付の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。本明細書で引用される各特許及び刊行物の全開示は、あたかもそのような特許又は刊行物のそれぞれが参照により個別に本明細書に組み込まれるかのように、参照により組み込まれる。
【0057】
本発明の様々な特徴及び利点は、特許請求の範囲に記載されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【外国語明細書】