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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121863
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/275 20180101AFI20240902BHJP
   F21V 5/00 20180101ALI20240902BHJP
   F21V 5/04 20060101ALI20240902BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20240902BHJP
【FI】
F21S41/275
F21V5/00 510
F21V5/04 600
F21W102:13
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029069
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】浅川 陽一
(57)【要約】
【課題】出射光量の減少を抑え、且つ、ロービーム用にも使用し易いレンズ部材を有した車両用灯具を提供する。
【解決手段】車両用灯具は、光源と、光源からの光を導入のうえ出射する光学レンズ24とを備え、光学レンズ24は、第1焦点F1を形成する単一のコリメートレンズ部24aと、単一のコリメートレンズ部24aの周縁部から後方に延びる筒状部24bと、筒状部24bのうち後方から断面視して略円弧状に広がる全反射レンズ部24cとを有し、全反射レンズ部24cは、第1焦点F1よりも後方に第2焦点を形成する略円弧状の広がり角度を有する第1反射部24c1と、第1反射部24c1よりも下部に位置して広がり角度が第1反射部24c1よりも大きく第1焦点F1よりも前方に第3焦点を形成する第2反射部24c2とを有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源からの光を導入のうえ出射する光学レンズと、を備えた車両用灯具であって、
前記光学レンズは、第1焦点を形成する単一のコリメートレンズ部と、前記コリメートレンズ部の周縁部から光出射方向の反対側となる後方に延びる筒状部と、前記筒状部の後方側から略円弧状に広がる全反射レンズ部と、を有し、
前記全反射レンズ部は、前記第1焦点よりも前記後方に第2焦点を形成する略円弧状の広がり角度を有する第1反射部と、前記第1反射部よりも下部に位置して前記広がり角度が前記第1反射部よりも大きく前記第1焦点よりも前記光出射方向に第3焦点を形成する第2反射部と、を有する
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記光学レンズは、前記光出射側に配光を広げるためのカットレンズ部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記光源は、前記第1反射部及び前記第2反射部の焦点よりも高さ方向の上側に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記全反射レンズ部は、
前記第1反射部より上部に位置し、前記後方の端部から略円弧状に広がり、前記広がり角度が前記第1反射部よりも小さく、前記第2焦点よりも前記後方に焦点を形成する上部反射部、及び、前記第2反射部より下部に位置し、前記後方の端部から略円弧状に広がり、前記広がり角度が前記第2反射部よりも大きく、前記第3焦点よりも前記光出射方向に焦点を有する下部反射部の少なくとも1つの補助反射部を備え、
前記補助反射部は、厚み幅が前記第1及び第2反射部よりも小さい
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、略盃形状となる外形を有したレンズ部材が提案されている(特許文献1参照)。このレンズ部材は、中央のコリメートレンズ部と、コリメートレンズ部から光出射側と反対方向に延びる筒状部と、コリメートレンズ部の左右に配置される全反射面を有する全反射レンズ部とを備えている。全反射レンズ部は、光の出射側に向けて略円弧状に広がるように形成されている。さらに、このレンズ部材は、上下で異なる形状となっており、複数の焦点を有するものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2020-510295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の車両用灯具は、上下で異なる形状とされていることから、上下の境目において筒状部や全反射レンズ部に段差が形成されてしまう。ここで、筒状部の段差は、光源からの光がレンズ部材内に進入する際の反射面として作用してしまうことがあり、出射光量の減少につながってしまう。さらに、レンズ部材は、適切な配光を形成するために、上側が左右に大きく下側が左右に小さい構成とされている。このため、全反射レンズ部における段差は、光を上方向に反射してしまう反射面となってしまい、特にロービーム用には使用し難いものであった。
【0005】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、出射光量の減少を抑え、且つ、ロービーム用にも使用し易いレンズ部材を有した車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る車両用灯具は、光源と、前記光源からの光を導入のうえ出射する光学レンズと、を備えた車両用灯具であって、前記光学レンズは、第1焦点を形成する単一のコリメートレンズ部と、前記コリメートレンズ部の周縁部から光出射方向の反対側となる後方に延びる筒状部と、前記筒状部の後方側から略円弧状に広がる全反射レンズ部と、を有し、前記全反射レンズ部は、前記第1焦点よりも前記後方に第2焦点を形成する略円弧状の広がり角度を有する第1反射部と、前記第1反射部よりも下部に位置して前記広がり角度が前記第1反射部よりも大きく前記第1焦点よりも前記光出射方向に第3焦点を形成する第2反射部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、出射光量の減少を抑え、且つ、ロービーム用にも使用し易いレンズ部材を有した車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る車両用灯具を示す分解斜視図である。
図2図1に示した第4光学レンズの一例を示す前方斜視図である。
図3図1に示した第4光学レンズの一例を示す後方斜視図である。
図4図2及び図3に示した第4光学レンズの一部を後方から示す拡大図である。
図5図2及び図3に示した第4光学レンズの第1のA1-A1断面を示す概略図である。
図6図2及び図3に示した第4光学レンズの第2のA1-A1断面を示す概略図である。
図7図2及び図3に示した第4光学レンズの第1のA2-A2断面を示す概略図である。
図8図2及び図3に示した第4光学レンズの第2のA2-A2断面を示す概略図である。
図9】第1変形例に係る光学レンズを示す前方正面図である。
図10】第1変形例に係る光学レンズを示す後方正面図である。
図11】第2変形例に係る光学レンズを示す前方正面図である。
図12】第2変形例に係る光学レンズを示す後方正面図である。
図13】比較例に係るレンズ部材を示す前方斜視図である。
図14】比較例に係るレンズ部材を示す後方斜視図である。
図15図13及び図14のC1-C1断面を示す概略図である。
図16図13及び図14のC2-C2断面を示す概略図である。
図17図13に示した第1レンズ部と第2レンズ部との位置関係を示す上方視状態の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示を好適な実施形態に沿って説明するが、これに先立って、比較例に係る車両用灯具を説明する。
【0010】
図13は、比較例に係るレンズ部材を示す前方斜視図であり、図14は、比較例に係るレンズ部材を示す後方斜視図である。図15は、図13及び図14のC1-C1断面を示す概略図であり、図16は、図13及び図14のC2-C2断面を示す概略図である。なお、図15及び図16においては、説明の便宜上、一部構成について二点鎖線で示すものとする。また、図示の関係上、断面のハッチングについては省略する。
【0011】
図13及び図14に示すレンズ部材100は、中央のコリメートレンズ部110と、コリメートレンズ部110の光出射側(前方)と反対方向(後方)に延びる筒状部120と、コリメートレンズ部110の左右に配置される全反射面を有する全反射レンズ部130と、光の出射面140とを備えている。光源LS(図15及び図16、並びに後述の図17参照)は、コリメートレンズ部110に正対するように対向配置されている。
【0012】
このようなレンズ部材100は、図15及び図16に示すように、光源LSからの光をコリメートレンズ部110から受け入れ、平行化したうえで出射面140から出射する。また、レンズ部材100は、光源LSからの光を筒状部120から受け入れ、全反射レンズ部130での反射により平行化したうえで出射面140から出射する。
【0013】
ここで、図13に示すように、レンズ部材100は、右上部101と左下部102とで第1レンズ部100aを構成し、左上部103と右下部104とで第2レンズ部100bを構成している。
【0014】
図17は、図13に示した第1レンズ部100aと第2レンズ部100bとの位置関係を示す上方視状態の概念図である。なお、図17においては第1レンズ部100aを二点鎖線で示すものとする。
【0015】
図17に示すように、第1レンズ部100aと第2レンズ部100bとは左右にズレた配置となっている。このため、第1レンズ部100aの焦点Faと第2レンズ部100bとの焦点Fbとについても左右にズレて位置することとなる。図17に示すように、光源LSは、上面視して2つの焦点Fa,Fbの間となる位置に設けられている。
【0016】
このような光源LSとレンズ部材100とを有する車両用灯具は、レンズ部材100が2つの焦点Fa,Fbを有することで、それぞれで像を形成することができ、これを利用して、例えばカットオフラインを持つ配光パターンを形成することができる。
【0017】
ここで、レンズ部材100は、図15に示す断面(上部断面)及び図16に示す断面(下部断面)において、左右で焦点が異なる2つのレンズが組み合わせた形状となっている。特に、レンズ部材100は、図15に示す上部断面の方が図16に示す下部断面よりも左右方向に大きくなっている。このような構成であるため、図14に示すように、レンズ部材100は、筒状部120内に段差RS1が形成されてしまい、光源LSからの光の一部が段差RS1で反射してしまう。よって、筒状部120から取り込む光量が減少して、出射光量の減少にもつながってしまう。さらに、図13に示すように、レンズ部材100は、全反射レンズ部130にも段差RS2が形成されてしまう。この段差RS2は、レンズ部材100内の光を上方向に反射するものとなることから、特にロービーム用には使用し難くなってしまう。
【0018】
一方で、本件発明者は、比較例に係るレンズ部材100について以下を見出している。まず、図15に示すように、光源LSは焦点Fa,Fbに位置しておらず、光源LSに対して焦点Fa,Fbが左右にシフトした状態となっている。ここで、光源LSから出射される光は、焦点Fa,Fbを通過するライン(平行光に沿うライン)La,Lb上の位置Fa1,Fa2,Fb1,Fb2を通ってレンズ部材100に入射し平行光とされる。このため、光源LSからの光L1は、位置Fa1から出射された場合と光学的に見て等価であるといえる。他の光L2~L4も同様である。このため、位置Fa1,Fa2,Fb1,Fb2は仮想光源ともいえ、図15に示すレンズ部材100の上部は、光源(ここでは仮想光源)より光出射側の反対側となる後方に焦点Fa,Fbがシフトした構成であるともいえる。
【0019】
図16に示すように、レンズ部材100の下部についても焦点Fa,Fb上に光源LSが位置しておらず、光源LSに対して焦点Fa,Fbが左右にシフトしている。ここで、光源LSから出射される光は、上記と同様に、ラインLa,Lb上の位置Fa3,Fa4,Fb3,Fb4から出射された光と光学的に見て等価といえ、位置Fa3,Fa4,Fb3,Fb4は仮想光源ともいえる。従って、図16に示すレンズ部材100の下部は、光源(ここでは仮想光源)より光出射側となる前方に焦点Fa,Fbがシフトした構成であるともいえる。
【0020】
本件発明者は、比較例に係るレンズ部材100について上記を見出し、このような光源と焦点との前後関係を利用することで、比較例に係るレンズ部材100と同様の配光を実現しつつ、出射光量の減少を抑え、ロービーム用にも使用し易いレンズ部材を備えた車両用灯具を発明している。
【0021】
以下、本開示の実施形態に係る車両用灯具を説明するが、本発明は実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0022】
図1は、本実施形態に係る車両用灯具を示す分解斜視図である。図1に示すように、本実施形態に係る車両用灯具1は、所定の回路が形成され複数の光源10を搭載した基板Bと、複数の光学レンズ20を有した光学部材OPとを備え、これらがネジSにより互いに連結されて構成されている。
【0023】
複数の光源10は、第1~第7光源11~17を備えている。また、複数の光学レンズ20は、各光源11~17に対応して設けられた第1~第7光学レンズ21~27を有する。各光源11~17と各光学レンズ21~27とは、それぞれ照明ユニットY1~Y7を構成している。本実施形態において第1~第5照明ユニットY1~Y5はロービーム用のユニットであり、第6及び第7照明ユニットY6,Y7はハイビーム用のユニットである。
【0024】
図1に示す例において、複数の光源10は上下2列に並んで配置されている。第1~第3光源11~13は上段に左右方向に並んで配置されており、第4~第7光源14~17は、下段に左右方向に並んで配置されている。また、複数の光源10のうち、上下段それぞれの最も一側(右側)に配置される第1光源11と第4光源14とは上下方向に同列状に配置されている。同様に、上下段それぞれの一側から2つ目に配置される第2光源12と第5光源15についても上下方向に同列状に配置されている。第3光源13と第6光源16とについても同様である。このような複数の光源10は、基板B上又は基板B外に配置される点灯制御回路(不図示)によって点灯制御される。
【0025】
図1に示す例において、複数の光学レンズ20は上下2列に並んで配置されている。第1~第3光学レンズ21~23は、第1~第3光源11~13のそれぞれに対応して、上段に左右方向に並んで配置されている。これら光学レンズ21~23は、シリンドリカルレンズによって構成されている。また、光学レンズ21~23のうち、第1光学レンズ21が最も後方に奥まって配置されており、第3光学レンズ23が最も前方に突出して配置されている。第2光学レンズ22は、双方の光学レンズ21,23の前後方向の中間位置に配置されている。
【0026】
第4~第7光学レンズ24~27は、第4~第7光源14~17のそれぞれに対応して、下段に左右方向に並んで配置されている。図2は、図1に示した第4光学レンズ24の一例を示す前方斜視図であり、図3は、図1に示した第4光学レンズ24の一例を示す後方斜視図である。なお、図2及び図3は第4光学レンズ24のみを図示するが、第5~第7光学レンズ25~27についても同様の構成となっている。また、本実施形態においては、第4~第7光学レンズ24~27の全てが図2及び図3に示すような構成であることを想定して説明するが、特にこれに限らず、いずれかが図2及び図3に示す構成であって他が図2及び図3に示す構成でなくともよい。
【0027】
図2及び図3に示す第4光学レンズ24は、断面視して(すなわち、後述の図5及び図6に示す断面であって上下方向に垂直となる断面において)概略盃形状となるレンズ部材である。このような第4光学レンズ24は、単一のコリメートレンズ部24aと、筒状部24bと、全反射レンズ部24cと、出射部24dとを有して構成されている。
【0028】
コリメートレンズ部24aは、図3に示す単一の焦点(第1焦点)F1を形成するレンズ部である。筒状部24bは、コリメートレンズ部24aの周縁部から光出射方向(前方)と反対側となる後方側に筒状に延びるものである。全反射レンズ部24cは、筒状部24bのうちコリメートレンズ部24aの後方側から略円弧状に広がる部位である。出射部24dは、光が出射される部位である。出射部24dは、光出射側に配光を広げるためのカットレンズ部24eを有している。カットレンズ部24eは、図2に示すように、例えば上下方向に延びるシリンドリカルレンズによって構成され、左右方向に複数個並んで配置されている。
【0029】
図4は、図2及び図3に示した第4光学レンズ24の一部を後方から示す拡大図である。図5及び図6は、図2及び図3に示した第4光学レンズ24のA1-A1断面を示す概略図であり、図7及び図8は、図2及び図3に示した第4光学レンズ24のA2-A2断面を示す概略図である。図4に示す光源14は、例えばコリメートレンズ部24aの焦点距離FL(図5及び図6参照)だけ離れた位置において、高さ方向には第1焦点F1よりもやや上側に設けられている。なお、光源14は、後述する第2焦点F2及び第3焦点F3に対してもやや上側となる位置に設けられることとなる(すなわち、高さ方向には、第1~第3焦点F1~F3が同じである)。
【0030】
このような照明ユニットY4では、図5図8に示すように、光源14からの光のうち一部がコリメートレンズ部24aに入射する。コリメートレンズ部24aは、入射した光を平行化する。平行化された光は図2に示す出射部24dに到達し出射部24dのカットレンズ部24eにて配光が広がるように屈折させられることとなる。
【0031】
また、光源14からの光のうち他の一部は筒状部24bに入射する。筒状部24bに入射した光は全反射レンズ部24cにおいて反射されて平行化される。平行化された光は図2に示す出射部24dに到達し出射部24dのカットレンズ部24eにて配光が広がるように屈折させられることとなる。
【0032】
さらに、図2図3、及び図5図8に示すように、本実施形態において全反射レンズ部24cは、第1反射部24c1と第2反射部24c2とを有している。第1反射部24c1は、第1焦点F1よりも後方に焦点(第2焦点)F2を形成する略円弧状の広がり角度θ1を有するものである。第2反射部24c2は、第1反射部24c1よりも下部に位置して広がり角度θ2が第1反射部24c1の広がり角度θ1よりも大きく第1焦点F1よりも光出射方向に焦点(第3焦点)F3を有するものである。
【0033】
ここで、本件発明者が鋭意検討した結果、全反射レンズ部24cについて上部側で焦点を後方側とし、下部側で焦点を前方側とすれば、比較例と同様の配光を形成できることを見出した。
【0034】
詳細に説明すると、図5及び図6に示す上面視において、コリメートレンズ部24aにて平行化される光は第1焦点F1を通過してコリメートレンズ部24aに入射する。これに対して、第1反射部24c1のうち右側部分にて平行化される光は、図5に示すように、第1焦点F1よりも後方に位置する第2焦点F2を通過して第1反射部24c1に入射する。また、第1反射部24c1のうち左側部分にて平行化される光についても、図6に示すように、第1焦点F1よりも後方に位置する第2焦点F2を通過して第1反射部24c1に入射する。
【0035】
同様に、図7及び図8に示すように、コリメートレンズ部24aにて平行化される光は第1焦点F1を通過してコリメートレンズ部24aに入射する。これに対して、第2反射部24c2のうち右側部分にて平行化される光は、図7に示すように、第1焦点F1よりも前方に位置する第3焦点F3を通過して第2反射部24c2に入射する。また、第2反射部24c2のうち左側部分にて平行化される光についても、図8に示すように、第1焦点F1よりも前方に位置する第3焦点F3を通過して第2反射部24c2に入射する。
【0036】
このように、本実施形態に係る光学レンズ24は、上部において焦点F2を光源14(図5及び図6において符号F1の位置)よりも後方にシフトさせており、下部において焦点F3を光源14(図7及び図8において符号F1の位置)よりも前方にシフトさせている。
【0037】
ここで、本実施形態に係る光学レンズ24は、第1反射部24c1と第2反射部24c2とによって焦点F2,F3をシフトさせる一方、第1焦点F1を有する単一のコリメートレンズ部24aを有している。この結果、比較例のような筒状部120に段差RS1が生じる構成とせず、光源14からの光を筒状部24bから好適に取り込めるようになっている。
【0038】
加えて、焦点(第2焦点F2)を後方にシフトさせる場合には全反射レンズ部24cの広がり角度θ1は小さくなり、焦点(第3焦点F3)を前方にシフトさせる場合には全反射レンズ部24cの広がり角度θ2は大きくなる。この結果、光学レンズ24は上部おいて左右に小さくなり下部において左右に大きくなる。よって、光学レンズ24内の光を下方向に反射する段差RS(図2及び図3参照)が形成されても、上方向に反射する反射面は形成されない。従って、光学レンズ24はロービーム用にも使用し易いものとすることができる。
【0039】
次に、本実施形態に係る車両用灯具1の動作を説明する。例えば車両運転者が夜間の運転時においてロービームを選択したとする。この場合、点灯制御回路によって図1に示す第1~第5光源11~15が点灯する。第1~第3光源11~13からの光は、第1~第3光学レンズ21~23を介して出射される。さらに、第4及び第5光源14,15からの光は、第4及び第5光学レンズ24,25を介して出射される。
【0040】
ここで、第4光源14からの光の一部は、図5図8に示すように、単一のコリメートレンズ部24aを入射して平行化されて、出射部24dから出射される。特に、第4光学レンズ24は、単一のコリメートレンズ部24aを有して筒状部24bに段差RS1が形成されていないことから、光源14からの光を筒状部24bにて好適に入射でき、段差RS1を有する場合と比較して出射光量の減少を抑制できることとなる。
【0041】
また、第4光源14からの光の他の一部は、図5図8に示すように、筒状部24bに入射して全反射レンズ部24cにて平行化されて、出射部24dから出射される。特に、全反射レンズ部24cは、上部において広がり角度θ1が小さい第1反射部24c1を有し、下部において広がり角度θ2が大きい第2反射部24c2を有している。このような広がり角度θ1,θ2によって、光学レンズ24は、上部において第2焦点F2が後方にシフトしており、下部において第3焦点F3が前方にシフトしている。よって、比較例と同様の配光を形成できるだけでなく、広がり角度θ1,θ2の相違によって下部よりも上部について左右方向に小さい構成とできる。この結果、図2及び図3に示す段差RSは上方向に反射する反射面として形成されず、光学レンズ24はロービーム用にも使用し易いものとなる。なお、第5光源15及び第5光学レンズ25についても同様である。
【0042】
さらに、車両運転者が夜間の運転時においてハイビームを選択したとする。この場合、さらに、点灯制御回路によって図1に示す第6及び第7光源16,17が追加で点灯させられる。第6及び第7光源16,17からの光は、第6及び第7光学レンズ26,27を介して出射される。第6及び第7光学レンズ26,27については、第4光学レンズ24と同様である。よって、出射光量の減少を抑制でき、比較例と同様の配光を形成できる。なお、第6及び第7光学レンズ26,27については上方向に反射する反射面は形成されず、ロービーム用に使用し易いものであるが、ハイビーム用のものとして使用されてもよい。
【0043】
このようにして、本実施形態に係る車両用灯具1によれば、全反射レンズ部24cは、第1反射部24c1と、第1反射部24c1よりも下部の第2反射部24c2とを有し、第1反射部24c1は第1焦点F1よりも後方に第2焦点F2を有し、第2反射部24c2は第1反射部24c1よりも広がり角度θ2が大きく前方に第3焦点F3を有するため、比較例のような右上部101と左下部102との第1レンズ部100a及び左上部103と右下部104との第2レンズ部100bという段差RS1,RS2が生じる構成を採用することなく、焦点Fa,Fbを左右にずらした比較例の構成と同様の配光を実現することができる。この結果、単一のコリメートレンズ部24aを有して筒状部24bに段差RS1を形成する必要がなく、光源14からの光を効率良く取り込んで出射光量の減少を抑制することとなる。さらに、広がり角度θ1,θ2は下部側の第2反射部24c2の方が大きいことから、段差RSによる反射面は光を下方向に反射するものとなり、光学レンズ24はロービーム用にも使用し易いものとなる。従って、光量の減少を抑え、且つ、ロービーム用にも使用し易いレンズ部材24を有した車両用灯具1を提供することができる。
【0044】
また、光学レンズ24は、光出射側に配光を広げるためのカットレンズ部24eを有するため、配光を広げて適切な配光パターンの形成に寄与することができる。
【0045】
また、光源14は、第1反射部24c1及び第2反射部24c2の焦点F2,F3よりも高さ方向の上側に設けられているため、光の出射方向をやや下側に向けることができ、段差RSによって光を上方向に反射することのない光学レンズ24において、よりロービーム配光を形成し易くすることができる。
【0046】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、公知・周知技術を組み合わせてもよい。
【0047】
例えば、本実施形態において第1~第3焦点F1~F3は高さが同じである旨を説明したが、これに限らず、高さは異なっていてもよい。
【0048】
また、本実施形態において光源14は、第1~第3焦点F1~F3よりも高さ方向のやや上側に設けられているが、特にハイビーム用の第6及び第7照明ユニットY6,Y7については、上側に設けられていなくともよい。
【0049】
また、本実施形態においては図1に示すように、複数の光源10と光学レンズ20とが一体とされたものを例示したが、特にこれに限られるものではなく、複数の光源と単一のレンズとによって車両用灯具が構成される等であってもよい。
【0050】
さらに、光学レンズ24については上下2段に異なる構成とされているが、特に2段に限られるものではない。図9は第1変形例に係る光学レンズを示す前方正面図であり、図10は第1変形例に係る光学レンズを示す後方正面図である。図9及び図10に示すように、第1変形例に係る光学レンズ30は、図10に示すように単一のコリメートレンズ部30aを有している。コリメートレンズ部30aは、単一の焦点を有する。さらに、光学レンズ30は、図9及び図10に示すように、第1~第4反射部30c1~30c4を備えている。第1反射部30c1は、所定の広がり角度を有し、コリメートレンズ部30aの焦点よりも後方となる焦点を形成するものである。第2反射面30c2は、第1反射部30c1の下部において第1反射部30c1よりも大きい広がり角度を有し、コリメートレンズ部30aの焦点よりも後方となる焦点を形成するものである。第3反射部(補助反射部)30c3は、第1反射部30c1の上部に位置し、後方の端部から略円弧状に広がる部位である。この第3反射部30c3は、第1反射部30c1よりも小さい広がり角度を有し、第2焦点F2(図5及び図6参照)よりも更に後方となる焦点を形成するものである。第4反射部(補助反射部)30c4は、第2反射部30c2の下部に位置し、後方の端部から略円弧状に広がる部位である。この第4反射部30c4は、第2反射部30c2よりも大きい広がり角度を有し、第2反射部30c2の第3焦点F3(図7及び図8参照)よりも更に前方となる焦点を形成するものである。このように、光学レンズ30は、2段に限らず、4段であってもよい。なお、4段は一例であって3段又は5段以上であってもよい。
【0051】
ここで、第3及び第4反射部30c3,30c4は、厚み幅が第1及び第2反射部30c1,30c2よりも小さくされている。このため、補助的に更に拡散した又はスポット的な配光パターンの形成に寄与することができる。
【0052】
さらに、光学レンズ30は以下のように構成されていてもよい。図11は第2変形例に係る光学レンズを示す前方正面図であり、図12は第2変形例に係る光学レンズを示す後方正面図である。図11及び図12に示すように、第2変形例に係る光学レンズ40は、図12に示すように単一の焦点を有する単一のコリメートレンズ部40aを有している。さらに、光学レンズ40は、第1~第6反射部40c1~40c6を備えている。第2変形例に係る光学レンズ40においては上から第4、第3、第1、第2、第5及び第6反射部40c1~40c6の順に配置されている。第1~第6反射部40c1~40c6についても、広がり角度は、第4反射部40c4が最も小さく、第3、第1、第2、及び第5反射部40c3~40c5の順に大きくなり、第6反射部40c6が最も大きくなっている。よって、第1~第6反射部40c1~40c6の焦点は、広がり角度に応じた前後関係となっている。加えて、第2変形例に係る光学レンズ40は、各反射部40c1~40c6の境界が高さ方向に対して垂直となっておらず、角度θ3を有した構造となっている。さらに、第2変形例に係る光学レンズ40は、カットレンズ部40eについても角度θ3に応じて傾いている。第2変形例に係る光学レンズ40は、例えば角度θ3を利用してカットオフラインを形成する等、斜めに傾いた配光を形成するのに好適なものとすることができる。
【0053】
なお、第2変形例においても第3~第6反射部40c3~40c6は、厚み幅が第1及び第2反射部40c1,40c2よりも小さくされており、補助的な配光パターンを形成できる点は第1変形例と同じである。
【符号の説明】
【0054】
1 :車両用灯具
10 :複数の光源
11~17 :光源
20 :複数の光学レンズ
21~27,30,40 :光学レンズ
24a,30a,40a :コリメートレンズ部
24b :筒状部
24c :全反射レンズ部
24c1,30c1,40c1 :第1反射部
24c2,30c2,40c2 :第2反射部
24d :出射部
24e :カットレンズ部
30c3,40c3 :第3反射部(補助反射部)
30c4,40c4 :第4反射部(補助反射部)
40c5 :第5反射部(補助反射部)
40c6 :第6反射部(補助反射部)
F1 :第1焦点
F2 :第2焦点
F3 :第3焦点
θ1,θ2 :広がり角度
図1
図2
図3
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