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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121865
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0587 20100101AFI20240902BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240902BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20240902BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240902BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M4/13
H01M10/0566
H01M10/052
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029071
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】浅利 太久哉
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AJ05
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ14
5H029HJ00
5H029HJ04
5H029HJ07
5H029HJ12
5H050AA02
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA03
5H050FA05
5H050HA00
5H050HA04
5H050HA07
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】ハイレート劣化が好適に抑制された非水電解質二次電池を提供すること。
【解決手段】ここで開示される非水電解質二次電池の一態様では、巻回電極体20a,20b,20cの巻回軸WLが伸びる方向における負極活物質層24aの長さSは200mm以上であり、負極活物質層24aにおける非水電解液13の液浸透速度は0.02μL/s~0.05μL/sであり、巻回軸WLが伸びる方向において、正極活物質層22aの端部と、負極活物質層24aの端部との距離Bは、0mmより大きく、5mm以下であり、満充電状態において、巻回電極体20a,20b,20cにおける正極活物質層22aおよび負極活物質層24aの空隙に対する、非水電解液13の割合は130%以下である。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の正極と、帯状の負極とが、帯状のセパレータを介して巻回された巻回電極体と、
非水電解液と、
前記巻回電極体および前記非水電解液を収容する電池ケースと、
を備え、
前記正極は、正極活物質層を含み、
前記負極は、負極活物質層を含み、
前記巻回電極体の巻回軸が伸びる方向における前記負極活物質層の長さは200mm以上であり、
前記負極活物質層における前記非水電解液の液浸透速度は0.02μL/s~0.05μL/sであり、
前記巻回軸が伸びる方向において、前記正極活物質層の端部と、前記負極活物質層の端部との距離は、0mmより大きく、5mm以下であり、
満充電状態において、
前記巻回電極体における前記正極活物質層および前記負極活物質層の空隙の体積に対する、前記非水電解液の体積の割合は130%以下である、非水電解質二次電池。
【請求項2】
満充電状態において、
前記電池ケース内の空間の体積に対する、前記非水電解液の体積の割合は、65~80%である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
満充電状態において、
前記巻回電極体の高さを100%としたとき、前記非水電解液の液面高さは、10%以下である、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
SOC20%において、
前記巻回電極体の高さを100%としたとき、前記非水電解液の液面高さは、7%以下である、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、巻回軸方向における長さが大きい巻回電極体を備えた大型の非水電解質二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-074818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者検討によると、特に上述したような非水電解質二次電池では、非水電解液の移動経路が長く、ハイレート劣化を抑制するという観点から、まだまだ改善の余地があることがわかった。
【0005】
本開示は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、ハイレート劣化が好適に抑制された非水電解質二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を実現すべく、本開示は、帯状の正極と、帯状の負極とが、帯状のセパレータを介して巻回された巻回電極体と、非水電解液と、上記巻回電極体および上記非水電解液を収容する電池ケースと、を備え、上記正極は、正極活物質層を含み、上記負極は、負極活物質層を含み、上記巻回電極体の巻回軸が伸びる方向における上記負極活物質層の長さは200mm以上であり、上記負極活物質層における上記非水電解液の液浸透速度は0.02μL/s~0.05μL/sであり、上記巻回軸が伸びる方向において、上記正極活物質層の端部と、上記負極活物質層の端部との距離は、0mmより大きく、5mm以下であり、満充電状態において、上記巻回電極体における上記正極活物質層および上記負極活物質層の空隙の体積に対する、上記非水電解液の体積の割合は130%以下である、非水電解質二次電池を提供する。詳細については後述するが、かかる構成の非水電解質二次電池によると、ハイレート劣化を好適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る非水電解質二次電池を模式的に示す斜視図である。
図2図1中のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
図3図1中のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。
図4図1中のIV-IV線に沿う模式的な横断面図である。
図5】封口板に取り付けられた巻回電極体を模式的に示す斜視図である。
図6】正極第2集電部と負極第2集電部が取り付けられた巻回電極体を模式的に示す斜視図である。
図7】一実施形態に係る巻回電極体の構成を示す模式図である。
図8図2中のVIII-VIII線に沿う模式的な断面図である。
図9】非水電解液の液面高さと巻回電極体の高さとの関係について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、ここで開示される技術のいくつかの実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、「A以上B以下」を意味する。また、「Aを超える」および「B未満」の意を包含するものとする。
【0009】
なお、本技術において「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な蓄電デバイス一般をいい、リチウム二次電池、リチウムポリマー電池等のいわゆる蓄電池、ならびに電気二重層キャパシタ等の蓄電素子を包含する用語である。また、「非水電解質二次電池」とは、電荷担体として非水系の電解質を用いて充放電を実現する二次電池であり、電解質は、ゲル状電解質、および非水電解質のいずれであってもよい。本技術の利益より享受できる構成として、例えば、常温(例えば25℃)において液状を呈し、非水溶媒中に電荷担体となる支持塩(電解質塩)を溶解させた非水電解液であってよい。かかる非水電解質二次電池の一例としては、リチウムイオン二次電池や、ナトリウムイオン二次電池等が挙げられる。また、「活物質」とは、二次電池において電荷担体となる化学種を可逆的に吸蔵および放出し得る物質をいう。また、本技術において「SOC」とは、充電深度(State of Charge)を意味し、可逆的に充放電可能な稼動電圧の範囲において、その上限となる電圧が得られる充電状態を100%とし、下限となる電圧が得られる充電状態を0%としたときの充電状態を示す。以下、非水電解質二次電池(あるいは、非水電解液二次電池)がリチウムイオン二次電池である場合を例にして、本技術について説明する。
【0010】
<電池の構成>
図1は、本実施形態に係る非水電解質二次電池(以下、単に「電池100」ともいう)の斜視図である。図2は、図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。図3は、図1のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。図4は、図1のIV-IV線に沿う模式的な横断面図である。以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表し、図面中の符号X、Y、Zは、電池100の短辺方向、短辺方向と直交する長辺方向、上下方向を、それぞれ表すものとする。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、電池100の設置形態を何ら限定するものではない。
【0011】
図2に示すように、電池100は、ケース10(電池ケース)と、電極体群20と、を備えている。また、本実施形態に係る電池100は、ケース10と電極体群20の他に、正極端子30と、正極外部導電部材32と、負極端子40と、負極外部導電部材42と、外部絶縁部材92と、正極集電部50と、負極集電部60と、正極内部絶縁部材70と、負極内部絶縁部材80と、を備えている。封口板14は、正極端子30および負極端子40を有している。また、図示は省略するが、本実施形態に係る電池100は、さらに非水電解液13を備えている。電池100は、ここではリチウムイオン二次電池である。電池100は、角型二次電池である。
【0012】
ケース10は、電極体群20を収容する筐体である。ケース10は、ここでは扁平かつ有底の直方体形状(角型)の外形を有する。ケース10は、六面体形状の角型の外形を有する。ケース10は、本実施形態のように扁平形状であってもよいし、扁平形状でなくてもよい(例えば、立方体形状等であってもよい)。ケース10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。ケース10は、所定の強度を有する金属製であることが好ましい。ケース10を構成する金属材料の一例として、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等が挙げられる。
【0013】
そして、ケース10は、ケース本体12と、封口板14と、ガス排出弁17を備えている。ケース本体12は、一つの面が開口12hとなった扁平な角型の容器である。具体的には、ケース本体12は、図1に示すように、開口12と、略矩形状の底壁12aと、底壁12aの短辺から上方Uに延びて相互に対向する一対の第2側壁12cと、底壁12aの長辺から上方Uに延びて相互に対向する一対の第1側壁12bと、を備えている。第1側壁12bの面積は、第2側壁12cの面積よりも大きい。そして、開口12hは、上記一対の第1側壁12bと一対の第2側壁12cに囲まれたケース本体12の上面に形成されている。封口板14は、ケース本体12の開口12hを塞ぐようにケース本体12に取り付けられている。封口板14は、平面視において略矩形状の板材である。封口板14は、ケース本体12の底壁12aと対向している。ケース10は、ケース本体12の開口12hの周縁に封口板14が接合(例えば、溶接接合)されることによって形成される。封口板14の接合は、例えばレーザ溶接等の溶接によって行うことができる。具体的には、一対の第2側壁12cの各々は、封口板14の短辺と接合され、一対の第1側壁12bの各々は、封口板14の長辺と接合される。
【0014】
図1および図2に示すように、ガス排出弁17は、封口板14に形成されている。ガス排出弁17は、ケース10内の圧力が所定値以上になった際に開口して、ケース10内のガスを排出するように構成される。本実施形態におけるガス排出弁17は、封口板14の外面から電極体群20側に向って窪んだ平面略円形の凹部である。かかるガス排出弁17の底面には、封口板14の厚みよりも薄い薄肉部が形成される。このガス排出弁17は、ケース内圧が所定値以上になった際に薄肉部が破断する。これによって、ケース10内のガスを外部に排出し、上昇したケース内圧を低減できる。
【0015】
また、封口板14には、上記ガス排出弁17の他に、注液孔15と、2つの端子挿入穴18、19と、が設けられている。注液孔15は、ケース本体12の内部空間と連通しており、電池100の製造工程において非水電解液を注液するために設けられた開口である。注液孔15は、封止部材15aにより封止されている。かかる封止部材15aとしては、例えば、ブラインドリベットが好適である。これによって、ケース10の内部で封止部材15aを強固に固定できる。また、端子挿入穴18、19は、封口板14の長辺方向Yの両端部にそれぞれ形成されている。端子挿入穴18、19は、封口板14を上下方向Zに貫通している。図2に示すように、長辺方向Yの一方(左側)の端子挿入穴18には正極端子30が挿入される。また、長辺方向Yの他方(右側)の端子挿入穴19には負極端子40が挿入される。
【0016】
図5は、封口板14に取り付けられた電極体群20を模式的に示す斜視図である。また、図6は、正極第2集電部52と負極第2集電部62が取り付けられた巻回電極体20aを模式的に示す斜視図である。本実施形態では、複数個(ここでは3個)の巻回電極体20a,20b,20cがケース10の内部に収容される。なお、1つのケース10の内部に収容される電極体の数は特に限定されず、1つであってもよいし、2つ以上(複数)であってもよい。なお、図5に示すように、各々の電極体の長辺方向Yの一方側(図5の左側)には正極集電部50が配置され、長辺方向Yの他方(図5の右側)には負極集電部60が配置される。そして、巻回電極体20a,20b,20cの各々は、並列に接続されている。ただし、巻回電極体20a,20b,20cは、直列に接続されていてもよい。電極体群20は、ここでは樹脂製シートからなる電極体ホルダ29(図3参照)に覆われた状態でケース10のケース本体12の内部に収容される。
【0017】
図7は、巻回電極体20aを模式的に示す斜視図である。なお、以下では巻回電極体20aを例として詳しく説明するが、電極体20b、20cについても同様の構成とすることができる。
【0018】
図7に示すように、巻回電極体20aは、正極22と負極24とセパレータ26とを有する。巻回電極体20aは、帯状の正極22と帯状の負極24とが2枚の帯状のセパレータ26を介して積層され、巻回軸WLを中心として巻回された巻回電極体である。巻回電極体20a(20b,20c)は、巻回軸WLが電池ケース10の底壁12aと平行な向きに配置されていることが好ましい。
【0019】
巻回電極体20aは、扁平形状を有している。他の実施形態では、巻回電極体は円筒状等であってもよいが、本実施形態のように、扁平形状であることが好ましい。巻回電極体20aは、巻回軸WLが長辺方向Yと略平行になる向きで、ケース本体12の内部に配置されている。具体的には、図3に示すように、巻回電極体20aは、ケース本体12の底壁12aおよび封口板14と対向する一対の湾曲部(R部)20rと、一対の湾曲部20rを連結し、ケース本体12の第2側壁12cに対向する平坦部20fとを有している。平坦部20fは、第2側壁12cに沿って延びている。
【0020】
正極22は、図7に示すように、正極集電体22cと、当該正極集電体22cの少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層22aおよび正極保護層22pと、を有する。ただし、正極保護層22pは必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。正極集電体22cは、帯状である。正極集電体22cは、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。正極集電体22cは、ここでは金属箔、具体的にはアルミニウム箔である。
【0021】
正極集電体22cの長辺方向Yの一方の端部(図7の左端部)には、複数の正極タブ22tが設けられている。複数の正極タブ22tは、帯状の正極22の長手方向に沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。複数の正極タブ22tは、巻回軸WLの軸方向の一方側(図7の左側)に向かって、セパレータ26よりも外側に突出している。なお、正極タブ22tは、巻回軸WLの軸方向の他方(図7で示すと右側)に設けられていてもよいし、巻回軸WLの軸方向の両側の各々に設けられていてもよい。正極タブ22tは、正極集電体22cの一部であり、金属箔(アルミニウム箔)からなっている。ただし、正極タブ22tは、正極集電体22cとは別の部材であってもよい。正極タブ22tの少なくとも一部には、正極活物質層22aおよび正極保護層22pが形成されずに、正極集電体22cが露出した領域が形成される。
【0022】
図4に示すように、複数の正極タブ22tは、巻回軸WLの軸方向の一方の端部(図4の左端部)で積層され、正極タブ群23を構成する。そして、複数の正極タブ22tの各々は、外方側の端が揃うように折り曲げられている。これにより、ケース10への収容性を向上して電池100を小型化することができる。図2に示すように、正極タブ群23は、正極集電部50を介して正極端子30と電気的に接続される。具体的には、正極タブ群23と正極第2集電部52とは接続部Jにおいて接続される(図4参照)。そして、正極第2集電部52は、正極第1集電部51を介して正極端子30と電気的に接続される。なお、複数の正極タブ22tのサイズ(長辺方向Yに沿った長さおよび長辺方向Yに直交する幅、図7参照)は、正極集電部50に接続される状態を考慮し、例えばその形成位置等によって、適宜調整することができる。ここでは、湾曲させたときに外方側の端が揃うように、複数の正極タブ22tの各々のサイズが相互に異なっている。
【0023】
図7に示すように、正極活物質層22aは、帯状の正極集電体22cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。正極活物質層22aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質(例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物)を含んでいる。正極活物質層22aの固形分全体を100質量%としたときに、正極活物質は、概ね80質量%以上、典型的には90質量%以上、例えば95質量%以上を占めていてもよい。正極活物質層22aは、正極活物質以外の任意成分、例えば、導電材、バインダー、各種添加成分等を含んでいてもよい。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等の炭素材料を使用し得る。バインダーとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。
【0024】
正極保護層22pは、図7に示すように、長辺方向Yにおいて正極集電体22cと正極活物質層22aとの境界部分に設けられている。正極保護層22pは、ここでは正極集電体22cの巻回軸WLの軸方向の一方の端部(図7の左端部)に設けられている。ただし、正極保護層22pは、軸方向の両端部に設けられていてもよい。正極保護層22pは、正極活物質層22aに沿って、帯状に設けられている。正極保護層22pは、無機フィラー(例えば、アルミナ)を含んでいる。正極保護層22pの固形分全体を100質量%としたときに、無機フィラーは、概ね50質量%以上、典型的には70質量%以上、例えば80質量%以上を占めていてもよい。正極保護層22pは、無機フィラー以外の任意成分、例えば、導電材、バインダー、各種添加成分等を含んでいてもよい。導電材およびバインダーは、正極活物質層22aに含み得るとして例示したものと同じであってもよい。
【0025】
負極24は、図7に示すように、負極集電体24cと、負極集電体24cの少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24aと、を有する。負極集電体24cは、帯状である。負極集電体24cは、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。負極集電体24cは、ここでは金属箔、具体的には銅箔である。
【0026】
負極集電体24cの巻回軸WLの軸方向の一方の端部(図7の右端部)には、複数の負極タブ24tが設けられている。複数の負極タブ24tは、帯状の負極24の長手方向に沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。複数の負極タブ24tの各々は、軸方向の一方側(図7の右側)に向かって、セパレータ26よりも外側に突出している。ただし、負極タブ24tは、軸方向の他方の端部(図7の左端部)に設けられていてもよいし、軸方向の両端部の各々に設けられていてもよい。負極タブ24tは、負極集電体24cの一部であり、金属箔(銅箔)からなっている。ただし、負極タブ24tは、負極集電体24cとは別の部材であってもよい。負極タブ24tの少なくとも一部には、負極活物質層24aが形成されずに、負極集電体24cが露出した領域が設けられている。
【0027】
図4に示すように、複数の負極タブ24tは、軸方向の一方の端部(図4の右端部)で積層されて負極タブ群25を構成する。負極タブ群25は、軸方向において、正極タブ群23と対称的な位置に設けられていることが好ましい。そして、複数の負極タブ24tの各々は、外方側の端が揃うように折り曲げられている。これにより、ケース10への収容性を向上して、電池100を小型化することができる。図2に示すように、負極タブ群25は、負極集電部60を介して負極端子40と電気的に接続されている。具体的には、負極タブ群25と負極第2集電部62とは接続部Jにおいて接続される(図4参照)。そして、負極第2集電部62は、負極第1集電部61を介して負極端子40と電気的に接続される。複数の正極タブ22tと同様に、ここでは、湾曲させたときの外方側の端が揃うように、複数の負極タブ24tの各々サイズが相互に異なっている。
【0028】
図7に示すように、負極活物質層24aは、帯状の負極集電体24cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。負極活物質層24aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質(例えば、炭素材料やシリコン系材料)を含んでいる。ここで、かかる炭素材料の一例としては、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、非晶質炭素、これらの組み合わせ等が挙げられる。また、かかるシリコン系材料の一例としては、シリコン、シリコン酸化物(シリカ)、これらの組み合わせ等が挙げられる。シリコン系材料は、例えば他の金属元素(例えば、アルカリ土類金属)や、その酸化物等を含有していてもよい。負極活物質層24aの固形分全体を100質量%としたときに、負極活物質は、概ね80質量%以上、典型的には90質量%以上、例えば95質量%以上を占めていてもよい。負極活物質層24aは、負極活物質以外の任意成分、例えば、バインダー、分散剤、各種添加成分等を含んでいてもよい。バインダーとしては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム類を使用し得る。分散剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロース類を使用し得る。また、負極活物質層24aの電極密度は、例えば0.8g/cm以上であり、非水電解液の液浸透速度が遅く、ここで開示される技術を適用する対象として好ましいという観点から、好ましくは1.0g/cm以上であり、より好ましくは1.3g/cm以上である。また、負極活物質層24aの電極密度の上限は、例えば3.0g/cm以下であり、2.0g/cm以下であってもよい。
【0029】
セパレータ26は、図7に示すように、正極22の正極活物質層22aと、負極24の負極活物質層24aと、を絶縁する部材である。セパレータ26としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂からなる樹脂製の多孔性シートが好適である。セパレータ26は、樹脂製の多孔性シートからなる基材部と、基材部の少なくとも一方の表面上に設けられ、無機フィラーを含む耐熱層(Heat Resistance Layer:HRL)と、を有していてもよい。無機フィラーとしては、例えば、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、チタニア等を使用し得る。
【0030】
非水電解質(非水電解液)は従来と同様でよく、特に制限はない。非水電解質は、典型的には、非水溶媒と支持塩(電解質塩)とを含有する。非水溶媒としては、一般的なリチウムイオン二次電池の電解液に用いられる各種のカーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の有機溶媒を、特に限定なく用いることができる。具体例として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、モノフルオロエチレンカーボネート(MFEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、モノフルオロメチルジフルオロメチルカーボネート(F-DMC)、トリフルオロジメチルカーボネート(TFDMC)等が例示される。このような非水溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0031】
支持塩としては、例えば、LiPF、LiBF、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)等のリチウム塩(好ましくはLiPF)を好適に用いることができる。支持塩の濃度は、0.7mol/L以上1.3mol/L以下が好ましい。
【0032】
なお、上記非水電解質は、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、上述した成分以外の成分、例えば、オキサラト錯体等の被膜形成剤;ビフェニル(BP)、シクロヘキシルベンゼン(CHB)等のガス発生剤;増粘剤;等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0033】
特に限定されないが、非水電解質(非水電解液)の粘度は、概ね10~100mPa・s程度(例えば、20~50mPa・s程度)とすることができる。かかる粘度は、例えば市販の粘度計によって測定することができる。
【0034】
正極端子30は、図2に示すように、封口板14の長辺方向Yの一方の端部(図2の左端部)に形成された端子挿入穴18に挿入されている。正極端子30は、金属製であることが好ましく、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金からなることがより好ましい。一方、負極端子40は、封口板14の長辺方向Yの他方の端部(図2の右端部)に形成された端子挿入穴19に挿入されている。なお、負極端子40は、金属製であることが好ましく、例えば銅または銅合金からなることがより好ましい。これらの電極端子(正極端子30、負極端子40)は、ここでは、ケース10の同じ面(具体的には封口板14)からそれぞれ突出している。ただし、正極端子30および負極端子40は、ケース10の異なる面からそれぞれ突出していてもよい。また、端子挿入穴18、19に挿入された電極端子(正極端子30、負極端子40)は、カシメ加工などによって封口板14に固定されていることが好ましい。
【0035】
上述した通り、正極端子30は、図2に示すように、ケース本体12の内部で正極集電部50(正極第1集電部51、正極第2集電部52)を介して、各々の巻回電極体20a,20b,20cの正極22(図7参照)と電気的に接続される。正極端子30は、正極内部絶縁部材70およびガスケット90によって、封口板14と絶縁される。なお、正極内部絶縁部材70は、正極第1集電部51と封口板14との間に介在するベース部70aと、当該ベース部70aから巻回電極体20a側に突出する突出部70bとを備えている。そして、端子挿入穴18を通じてケース10の外部に露出した正極端子30は、封口板14の外部において正極外部導電部材32と接続される。一方、負極端子40は、図2に示すように、ケース本体12の内部で負極集電部60(負極第1集電部61、負極第2集電部62)を介して、各々の巻回電極体20aの負極24(図7参照)と電気的に接続される。負極端子40は、負極内部絶縁部材80およびガスケット90によって、封口板14と絶縁される。なお、正極内部絶縁部材70と同様に、負極内部絶縁部材80も、負極第1集電部61と封口板14との間に介在するベース部80aと、当該ベース部80aから巻回電極体20a側に突出する突出部80bとを備えている。そして、端子挿入穴19を通じてケース10の外部に露出した負極端子40は、封口板14の外部において負極外部導電部材42と接続される。そして、上述した外部導電部材(正極外部導電部材32、負極外部導電部材42)と封口板14の外面との間には、外部絶縁部材92が介在している。かかる外部絶縁部材92によって外部導電部材32、42と封口板14とを絶縁できる。
【0036】
また、上述した内部絶縁部材(正極内部絶縁部材70、負極内部絶縁部材80)の突出部70b、80bは、封口板14と巻回電極体20aとの間に配置される。かかる内部絶縁部材の突出部70b、80bによって、上方への巻回電極体20aの移動が規制され、封口板14と巻回電極体20aとの接触を防止できる。
【0037】
続いて、本実施形態に係る電池100を特徴付ける構成について説明する。先ず、上述したように、本実施形態に係る電池100は、帯状の正極22と、帯状の負極24とが、帯状のセパレータ26を介して巻回された巻回電極体20a,20b,20cと、非水電解液13と、巻回電極体20a,20b,20cおよび非水電解液13を収容する電池ケース10と、を備えている。また、正極22は、正極活物質層22aを含み、負極24は、負極活物質層24aを含む。巻回電極体20a,20b,20cの巻回軸WLが伸びる方向(図7の巻回軸方向WD方向に対応)における負極活物質層24aの長さ(図7のSに対応)は200mm以上である。また、負極活物質層24aにおける非水電解液の液浸透速度は0.02μL/s~0.05μL/sである。巻回軸が伸びる方向(即ち、巻回軸方向WD方向)において、正極活物質層22aの端部と、負極活物質層24aの端部との距離(図8のBに対応)は、0mmより大きく、5mm以下である。そして、満充電状態(即ち、SOC100%)において、巻回電極体20a,20b,20cにおける正極活物質層22aおよび負極活物質層24aの空隙の体積に対する、非水電解液の体積の割合は130%以下である。
【0038】
本発明者の検討によると、特に上述したような大型の非水電解質二次電池では、電極幅が広いことで非水電解液の移動経路(電極体中央と電極体外との経路)が長くなり、ハイレート特性が低下し易い(換言すると、ハイレート劣化が生じ易い)ことがわかった。ここで、かかるハイレート劣化は、以下のような要因によって生じ得る。先ず、電池の充電を行う際には電極が膨張し、該電池の厚み方向の変化が制限されている環境下(例えば、電池ケースに入っている状態や、電池の膨張収縮を抑制するために外圧が掛けられている状態等)では、電極間に含まれる非水電解液が押し出される。また、電池の放電を行う際には電極が収縮し、押し出された非水電解液は戻ってくるが、戻りきる前に再度充電が開始されると、非水電解液は再び押し出されてしまう。これを繰り返すことによって、非水電解液の移動が電極の膨張収縮に追いつけなくなり、非水電解液に濃度勾配が生じる(換言すると、塩濃度ムラが生じる)ようになる。かかる濃度勾配によって、電池に抵抗の高い箇所(例えば、巻回電極体の巻回軸方向における両端部)が生じ、その箇所からLi析出や電極活物質の劣化が生じるおそれがある。このようにして、ハイレート劣化が生じ得る。そして、本発明者の検討によると、かかるハイレート劣化は、非水電解液中の支持塩が分散するところ(例えば、非水電解液や、正極と負極との未対向部等)が多い程、生じ易いことがわかった。例えば、図8では、正極22と負極24との対向部をA、正極22と負極24との未対向部をB、電極が存在しない領域をCとしているが、特に領域Bに非水電解液が溜まりやすく、支持塩が分散し易いとされる。また、巻回電極体の中心部と巻回軸方向における端部とで、塩濃度ムラがより生じやすいことがわかった。そして、かかる塩濃度ムラは、電極の液浸透速度(浸み込み速度)にも関係しており、液浸透速度が遅い負極を用いた場合に生じ易い傾向にあることもわかった。これは、非水電解液の液浸透速度が遅い負極では、非水電解液が戻らないことによるハイレート劣化が生じ易いことに起因し得る。
【0039】
そこで、本発明者は、かかるハイレート劣化が生じやすい、負極活物質層の巻回軸方向における負極活物質の長さが200mm以上であり、該負極活物質層における非水電解液の液浸透速度が0.02μL/s~0.05μL/sである巻回電極体を備えた非水電解質二次電池に焦点を充てて、鋭意検討した結果、非水電解液の量を適切な量とし(具体的には、満充電状態(即ち、SOC100%)において、巻回電極体における正極活物質層および負極活物質層の空隙の体積に対する、非水電解液の体積の割合は130%以下とし、正極と負極との未対向部を適切な範囲とする(具体的には、巻回軸が伸びる方向において、正極活物質層の端部と、負極活物質層の端部との距離を、0mmより大きく、5mm以下とする)ことによって、ハイレート劣化が好適に抑制されることを見出し、本開示を完成するに至った。なお、上記説明は、実験結果に基づく本発明者の考察であり、ここで開示される技術は、上記説明に限定して解釈されるものではない。
【0040】
上述したように、本開示の技術を適用する対象として好適である(換言すると、ハイレート劣化が生じ易い)という観点から、巻回電極体20a(20b,20c)の巻回軸WLが伸びる方向(即ち、巻回軸方向WD)における負極活物質層24aの長さ(図7のSに対応)を200mm以上に規定している。負極活物質層24aの長さSは、本開示の技術を適用する態様としてより好適であるという観点から、好ましくは300mm以上であり、例えば400mm以上であってもよい。また、負極活物質層24aの長さSの上限は、例えば600mm以下であり、500mm以下であってもよい。なお、負極活物質層24aの長さSは、例えば定規等で測定することができる。
【0041】
上述したように、本開示の技術を適用する対象として好適であるという観点から、負極活物質層24aにおける非水電解液の液浸透速度を0.02μL/s~0.05μL/sに規定している。かかる液浸透速度は、本開示の技術を適用する態様としてより好適であるという観点から、好ましくは0.03μL/s~0.05μL/sである。なお、非水電解液の液浸透速度の測定方法は、例えば後述の実施例の該当欄を参照することができる。また、負極活物質層24aにおける非水電解液の液浸透速度は、例えば負極活物質層24aの電極密度を変更する等によって容易に調整することができる。あるいは、負極活物質の種類を適宜変更すること等によっても、容易に調整することができる。
【0042】
ここで、図8は、図2中のVIII-VIII線に沿う模式的な断面図である。上述したように、ここで開示される技術では、ハイレート劣化を好適に抑制するという観点から、巻回軸WLが伸びる方向(即ち、巻回軸方向WD)において、正極活物質層22aの端部と、負極活物質層24aの端部との距離(図8のBに対応)を、0mmより大きく、5mm以下に規定している。負極24の未対向部では、対向する正極22が存在しないことと、圧がかかりにくいことから、対向部以上に非水電解液を保持し易い傾向にある。したがって、かかる未対向部をできる限り小さくし、該未対向部に保持され得る非水電解液の量を低減させることによって、塩濃度ムラを低減(即ち、ハイレート劣化を抑制)することができる。正極活物質層22aの端部と、負極活物質層24aの端部との距離は、例えば1mm以上であってもよいし、1.5mm以上であってもよい。また、かかる距離の上限は、例えば4mm以下であってもよいし、3mm以下であってもよい。かかる距離は、例えば定規等で測定することができる。また、本実施形態のように正極22,負極24が、それぞれ正極タブ22t,負極タブ24tを有する場合、正極活物質層22aの端部,負極活物質層24aの端部は、それぞれ正極タブ22t,負極タブ24tを除くものとする。なお、図8では、基材層を27、耐熱層を28と表記している。
【0043】
また、上述したように、ここで開示される技術では、ハイレート劣化を好適に抑制するという観点から、満充電状態(即ち、SOC100%)において、巻回電極体20a(20b,20c)における正極活物質層22aおよび負極活物質層24aの空隙の体積に対する、非水電解液の体積の割合を130%以下に規定している。換言すると、満充電状態において、巻回電極体20a(20b,20c)における正極活物質層22aおよび負極活物質層24aの空隙の体積を100%としたとき、非水電解液の体積の割合を130%以下に規定している。かかる非水電解液の体積とは、満充電状態において、巻回電極体内外に存在する非水電解液のことを意味する。非水電解液の量が多すぎると、巻回電極体内外に存在する非水電解液が多くなるため、支持塩が逃げ易くなる傾向にあるため、好ましくない。したがって、巻回電極体内外に存在する非水電解液の体積の割合を130%以下に規定している。かかる非水電解液の体積の割合は、例えば120%以下であってもよいし、115%以下であってもよい。また、かかる非水電解液体積の割合の上限は、電池100における充放電をスムーズに進行させるという観点から、100%以上であることが好ましい。
【0044】
ここで、正極活物質層22aおよび負極活物質層24aの空隙の体積(以下、単に「電極空隙の体積」ともいう)は、例えば水銀圧入ポロシメーターによる測定や、電極密度および電極活物質・副材料の真密度から計算して算出することができる。かかる水銀圧入ポロシメーターによる測定は、この種の従来公知の方法に従って実施することができる。また、電極密度および電極活物質・副材料の真密度から計算して算出する方法は、例えば以下のように実施することができる。具体的には、負極活物質層24aの空隙の体積は、負極活物質層24aの重量を、負極活物質層24aを構成する負極活物質や副材料(例えば、負極活物質以外の各種添加剤)の真密度から、負極活物質層24aの密度を引いた値で割ることで算出することができる。また、正極活物質層22aの空隙の体積は、正極活物質層22aの重量を、正極活物質層22aを構成する正極活物質や副材料(例えば、正極活物質以外の各種添加剤)の真密度から、正極活物質層22aに密度を引いた値で割ることで算出することができる。そして、負極活物質層24aの空隙の体積と、正極活物質層22aに密度とを合計することによって、電極空隙の体積とすることができる。
【0045】
また、例えば、予め組み立てられた電池に関しては、以下のようにして非水電解液の体積/電極空隙の体積(%)を算出することができる。先ず、満充電状態において電池を解体し、巻回電極体外の非水電解液を回収し、その体積を測定する。そして、巻回電極体内の非水電解液については、該巻回電極体の乾燥前後の重量差からその体積を算出する。なお、乾燥前後の重量差を求める方法については、そのまま乾燥させてしまうと巻回電極体内に指示塩が残存してしまうおそれがあるため、乾燥前の重量を測定後、溶媒(例えば、ジメチルカーボネート(DMC)等)によって洗浄し、支持塩が残存しない状態としてから、乾燥させ、重量を測定することが好ましい。そして、巻回電極体外の非水電解液の体積と、該巻回電極体の乾燥前後の重量差から算出した体積とを合計することで、非水電解液の体積を算出することができる。なお、非水電解液の体積は、室温(例えば、25℃)において測定された値を採用することができる。そして、電極空隙の体積は、上記乾燥後の巻回電極体に対して水銀圧入ポロシメーター等を用いて測定することができる。
【0046】
また、例えば、満充電時(即ち、SOC100%)において、非水電解液の体積/電極空隙の体積(%)がX%となるようにする方法の一例としては、以下の方法が挙げられる。先ず、予め上述したような方法によって電極空隙の密度を算出し、注液時に、非水電解液の体積/電極空隙の体積(%)がX%がとなるように非水電解液を注入する。これによって、満充電時において、非水電解液が、非水電解液の体積/電極空隙の体積=X%となるように調整することができる。
【0047】
好適は一態様では、満充電状態(即ち、SOC100%)において、電池ケース10内の空間の体積に対する、非水電解液の体積の割合は、65~80%である。かかる非水電解液の体積とは、満充電状態において、巻回電極体内外に存在する非水電解液のことを意味する。かかる構成によると、巻回電極体内外に存在する非水電解液に逃げる支持塩の量を好適に抑制することができるため、ハイレート劣化を抑制するという観点から好ましい。かかる非水電解液の体積の割合は、例えば70%以上であってもよく、77%以下(例えば、75%以下)であってもよい。なお、かかる電池ケース10の空間の体積とは、電池ケース10の体積と、電極空隙の体積と、セパレータ26内部の空隙の体積とを合計したものから、巻回電極体20a,20b,20cの体積と、電池ケース10内に存在する各部材(例えば、電極集電部や絶縁部材等)の体積と、非水電解液の体積とを引いたものである。また、かかる非水電解液の体積としては、満充電状態の電池を解体して巻回電極体内外の非水電解液を回収し、例えば室温(例えば、25℃)において測定された体積の値を採用することができる。
【0048】
また、例えば、満充電時(即ち、SOC100%)において、非水電解液の体積/電池ケース内の空間の体積(%)がY%となるようにする方法の一例としては、以下の方法が挙げられる。先ず、予め上述したような方法によって電池ケース内の空間の体積を算出し、注液時に、非水電解液の体積/電池ケース内の空間の体積(%)がY%がとなるように非水電解液を注入する。これによって、満充電時において、非水電解液が、非水電解液の体積/電池ケース内の空間の体積=Y%となるように調整することができる。
【0049】
ここで、図9は、非水電解液13の液面高さと巻回電極体20a(20b,20c)の高さとの関係について説明するための説明図である。なお、巻回電極体20a(20b,20c)の高さは、電池ケース10の底壁12aに対する垂直方向において、下端を0%、上端を100%とするものとする。また、巻回電極体20a(20b,20c)の高さとは、例えば、巻回軸方向WDに対して垂直、かつ、厚み方向Xに対して垂直な方向における長さということもできる。好適な一態様では、満充電状態(即ち、SOC100%)において、巻回電極体20a(20b,20c)の高さ(図9のPに対応)を100%としたとき、非水電解液13の液面高さ(図9のQに対応)は、10%以下である。巻回電極体20a(20b,20c)の外部に存在する非水電解液13の量が多いと、それだけ支持塩が逃げ易くなるため、ハイレート劣化を抑制するという観点から好ましくない。そのため、上述にように、例えば満充電時において、非水電解液13の液面高さQが適切な範囲に調整されている(換言すると、巻回電極体20a,20b,20cの外部に存在する非水電解液13の量が適切な範囲に調整されている)ことが好ましい。かかる観点から、満充電状態において、上記非水電解液13の液面高さQは、7%以下がより好ましく、5%以下や3%以下がさらに好ましい。また、満充電状態において、上記非水電解液13の液面高さQは、例えば0.5%以上や1%以上とすることができる。なお、当業者は、予め予備試験等を行うことで注液時に注液する非水電解液13の量を調整することによって、満充電状態(即ち、SOC100%)において、巻回電極体20a(20b,20c)の高さを100%としたとき、非水電解液13の液面高さQを10%以下に調整することができる。
【0050】
好適な一態様では、SOC20%(放電時)において、巻回電極体20a(20b,20c)の高さ(図9のPに対応)を100%としたとき、非水電解液13の液面高さ(図9のQに対応)は、7%以下である。巻回電極体20a,20b,20cの外部に存在する非水電解液13の量が多いと、それだけ支持塩が逃げ易くなるため、ハイレート劣化を抑制するという観点から好ましくない。そのため、上述にように、例えばSOC20%において、非水電解液13の液面高さQが適切な範囲に調整されている(換言すると、巻回電極体20a,20b,20cの外部に存在する非水電解液13の量が適切な範囲に調整されている)ことが好ましい。かかる観点から、SOC20%において、上記非水電解液13の液面高さQは、5%以下がより好ましく、3%以下や1%以下がさらに好ましい。また、SOC20%において、上記非水電解液13の液面高さQは、例えば0.1%以上や0.5%以上とすることができる。SOC20%における非水電解液13の液面高さQは、例えば充放電後に十分な時間(例えば、1週間程度)置き、非水電解液の移動が完全に終わった時点で測定されることが好ましい。なお、当業者は、予め予備試験等を行うことで注液時に注液する非水電解液の量を調整することによって、SOC20%(放電時)において、巻回電極体20a(20b,20c)の高さを100%としたとき、非水電解液13の液面高さを7%以下に調整することができる。
【0051】
また、満充電状態(あるいは、SOC20%)における非水電解液の液面高さQは、電池100に対してCTスキャン等を行うことによって測定することができる。
【0052】
ここで開示される技術は、例えば大型電池以外の電池にも適用され得るが、特に大型電池(例えば、高容量電池)が適用対象として好適である。ここで、かかる大型電池が備える巻回電極体の外寸の一例としては、縦:50mm~100mm,横:200mm~300mm,幅:10mm~40mmが挙げられる。なお、上述した縦,横,幅とはそれぞれ、巻回電極体20aを例に挙げて説明すると、巻回電極体20aの短辺方向における長さ(図7のZ方向における長さ),巻回電極体20aの長辺方向における長さ(図7のY方向における長さ),巻回電極体20aの厚み(図6のX方向における厚み)ということができる。また、電池100の容量は、例えば50Ah以上であり、好ましくは100Ah以上であり、150Ah以上、200Ah以上とすることもできる。
【0053】
<電池の製造方法>
次に、本実施形態に係る電池100の製造方法の一例について説明する。本実施形態に係る電池100の作製においては、巻回軸WLが伸びる方向における負極活物質層24aの長さは200mm以上であり、負極活物質層24aにおける非水電解液の液浸透速度は0.02μL/s~0.05μL/sであり、かつ、巻回軸WLが伸びる方向において、正極活物質層22aの端部と、負極活物質層24aの端部との距離は、0mmより大きく、5mm以下であるようにすることを特徴とする。本実施形態に係る電池100は、例えば、巻回電極体20a,20b,および20cを用意し、ケース10に挿入し、封口することにより、作製することができる。より具体的には、先ず、図5に示すように、各々の電極体の正極タブ群23に正極第2集電部52を接合し、負極タブ群25に負極第2集電部62を接合する。そして、図4に示すように、各々の電極体を、平坦部同士が対向するように配列する。各々の電極体の上方に封口板14を配置し、正極第2集電部52と電極体の一方の側面20eとが対向するように、各々の電極体の正極タブ群23を折り曲げる。これによって、正極第1集電部51と正極第2集電部52とが接続される。同様に、負極第2集電部62と電極体の他方の側面20hとが対向するように、各々の電極体20の負極タブ群25を折り曲げる。これによって、負極第1集電部61と負極第2集電部62とが接続される。この結果、正極集電部50と負極集電部60を介して封口板14に電極体が取り付けられる。次いで、封口板14に取り付けられた各々の電極体を、電極体ホルダ29(図3参照)で覆った後にケース本体12の内部に収容する。この結果、電極体20の平坦部がケース本体12の長側壁12b(すなわち、ケース10の扁平面)と対向する。また、上側の湾曲部20rが封口板14と対向し、下側の湾曲部20rがケース本体12の底壁12aと対向する。そして、ケース本体12の上面の開口12hを封口板14で塞いだ後に、ケース本体12と封口板14とを接合(溶接)することによってケース10を構築する。その後、封口板14の注液孔15からケース10の内部に所定の量だけ非水電解液を注入し、注液孔15を封止部材15aで塞ぐ。以上のようにして、電池100を得ることができる。
【0054】
<電池の用途>
電池100は各種用途に利用可能であるが、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。電池100は、電池反応のバラつきが低減されているため、組電池の構築に好適に用いることができる。
【0055】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本開示は、他にも種々の形態にて実施することができる。本開示は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0056】
以上のとおり、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項(item)に記載のものが挙げられる。
項1:帯状の正極と、帯状の負極とが、帯状のセパレータを介して巻回された巻回電極体と、非水電解液と、上記巻回電極体および前記非水電解液を収容する電池ケースと、を備え、上記正極は、正極活物質層を含み、上記負極は、負極活物質層を含み、上記巻回電極体の巻回軸が伸びる方向における上記負極活物質層の長さは200mm以上であり、上記負極活物質層における上記非水電解液の液浸透速度は0.02μL/s~0.05μL/sであり、上記巻回軸が伸びる方向において、上記正極活物質層の端部と、上記負極活物質層の端部との距離は、0mmより大きく、5mm以下であり、満充電状態において、上記巻回電極体における上記正極活物質層および上記負極活物質層の空隙に対する、上記非水電解液の割合は130%以下である、非水電解質二次電池。
項2:満充電状態において、上記電池ケース内の空間の体積に対する、上記非水電解液の体積の割合は、65~80%である、項1に記載の非水電解質二次電池。
項3:満充電状態において、上記巻回電極体の高さを100%としたとき、上記非水電解液の液面高さは、10%以下である、項1または項2に記載の非水電解質二次電池。
項4:SOC20%において、上記巻回電極体の高さを100%としたとき、上記非水電解液の液面高さは、7%以下である、項1~項3のいずれか一つに記載の非水電解質二次電池。
【0057】
以下、本発明に関する試験例を説明するが、本発明をかかる試験例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0058】
[試験例]
【0059】
<各サンプルの作製>
(セパレータの作成)
セパレータとして、厚み12μmの湿式の微多孔性ポリエチレンシートを用意した。また、かかるセパレータの両表面には、厚み2μmの耐熱層が形成されていた。
【0060】
(負極板の作製)
負極活物質としての黒鉛と、バインダーとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と、カルボキシメチルセルロース(CMC)とを、負極活物質:CMC:SBR=98.3:0.7:1の重量比となるように混合し、溶媒としてイオン交換水を適量加え、負極活物質層形成用スラリーを調製した。その後、乾燥、ロールプレスを行うことによって負極板を得た。なお、各サンプルについて、上記ロールプレスのプレス圧を変化させ、負極活物質層の電極密度を異ならせることによって、それぞれ表1に示す非水電解液の液浸透速度となるように調整した。
【0061】
なお、負極活物質層における非水電解液の液浸透速度は、次のようにして測定した。具体的には、室温(例えば、25℃)、所定の圧力下(例えば、0.1MPa下)で、負極活物質層の片面の上に、マイクロシリンジにて非水電解液を1μL滴下し、かかる液滴が負極活物質層内に浸み込む(即ち、負極活物質層上の液滴がなくなる)までの時間を計測し、非水電解液1μLが浸み込む速度として算出した。
【0062】
(正極板の作製)
正極活物質としてのリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi0.6Co0.2Mn0.2,NCM622)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、正極活物質:導電材:バインダー=97.5:1.5:1となるように混合し、溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を適量加え、正極活物質層形成用スラリーを調製した。この正極活物質層形成用スラリーを、アルミニウム箔製の正極集電体上に目付重量10mg/cmとなるように塗布した。その後、乾燥、ロールプレスを行い、正極板を得た。
【0063】
次に、正極板と、負極板とをセパレータが介在するように積層し、扁平形状にプレスすることによって、巻回電極体を得た。2枚のセパレータとしては、共に上記で作製したものを用いた。なお、各サンプルについて、正極活物質層の端部と、負極活物質層の端部との距離が、それぞれ表1に示す距離となるように調整した。そして、巻回電極体に集電板を溶接した後、かかる巻回電極体を角型の電池ケースに収容し、非水電解液を注液した。非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジメチルカーボネート(DMC)とをEC:EMC:DMC=3:4:3の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてLiPFを1.1mol/Lの濃度で溶解させた。なお、各サンプルについて、注液時に、非水電解液の体積/電極空隙の体積(%)が、それぞれ表1に示す値となるように、非水電解液を注入した。かかる電極密度の体積は、ここでは上記で説明したように、電極活物質層の密度と、電極活物質・副材料の真密度とから算出した。その後、電池ケースを封止することによって、各サンプルに係る評価用リチウムイオン二次電池を得た。なお、満充電時における、非水電解液の体積/電池ケース内の空間の体積(%)については、予め測定した電池ケース内の空間と、注液した非水電解液の体積とから、算出した。結果を、表1の「非水電解液の体積/電池ケース内の空間の体積(%)」の欄に記載した。
【0064】
<各評価用リチウムイオン二次電池の評価>
上記のとおり作製した各評価用リチウム二次電池を25℃の恒温槽内に置き、初回充電を行った。初回充電は、各評価用リチウム二次電池を、0.3Cの電流値で4.1Vまで定電流充電した。その後、0.3Cの電流値で3.0Vまで定電流放電した。さらに、かかる各評価用リチウム二次電池に定電流-定電圧充電(0.2Cの電流値で4.1Vまで定電流充電した後、電流値が1/50Cになるまで定電圧充電)を行い、満充電状態とした。その後、0.2Cの電流値で3.0Vまで定電流放電した。このときの放電容量を測定し、初期容量とした。
【0065】
(サイクル特性の評価)
各評価用リチウムイオン二次電池を25℃の恒温槽内に置いた。各評価用リチウムイオン二次電池に対して、4.1Vまで2Cで定電流充電および3.0Vまで2Cで定電流放電を1サイクルとする充放電を200サイクル繰り返した。その後、上記と同じ方法で放電容量を測定し、このときの放電容量を、200サイクル充放電後の電池容量として求めた。(200サイクル充放電後の電池容量/初期容量)×100として、容量維持率(%)を求めた。結果を表1の「サイクル特性」の欄に示した。
【0066】
(ハイレート特性の評価)
各評価用リチウムイオン二次電池のハイレート特性(ハイレート耐性)を評価するために、抵抗上昇率(%)を測定した。かかる測定は、25℃で行った。具体的には、各評価用リチウムイオン二次電池のSOCを60%に調整した後、10C(40A)の定電流で10秒間充電し、2C(8A)の定電流で400秒間放電する充放電サイクルを30回繰り返すハイレートサイクル試験を行った。そして、かかるハイレートサイクル試験後におけるIV抵抗と初期のIV抵抗とに基づいて抵抗上昇率(=[ハイレートサイクル試験後におけるIV抵抗/初期のIV抵抗]×100)を算出した。なお、IV抵抗は、10Cで10秒間の放電を行ったときの電流(I)-電圧(V)プロット値の一次近似直線の傾きから求めた。かかる測定は、室温(例えば、25℃)で行った。結果を表1の「抵抗上昇率」の欄に示した。また、かかる抵抗上昇率の値に基づいて、ハイレート特性の評価を行った。具体的には、かかる抵抗上昇率が1.05倍以下である場合を「◎」、1.05倍超1.10倍未満である場合を「〇」、1.10倍以上である場合を「×」として評価した。結果を表1の「ハイレート特性」の欄に示した。
【0067】
【表1】
【0068】
表1に示すように、巻回軸方向における負極活物質層の長さが200mm以上であり、負極活物質層における非水電解液の液浸透速度は0.02μL/s~0.05μL/sであり、巻回軸方向において、正極活物質層の端部と、負極活物質層の端部との距離が、0mmより大きく、5mm以下であり、かつ、満充電状態において、巻回電極体における正極活物質層および負極活物質層の空隙に対する、非水電解液の割合が130%以下である(あるいは、満充電状態において、電池ケース内の空間に対する、非水電解液の体積の割合が、65~80%の範囲内である)サンプル1~4に係る評価用リチウムイオン二次電池によると、満充電状態において、巻回電極体における正極活物質層および負極活物質層の空隙に対する、非水電解液の割合が130%超である(あるいは、満充電状態において、電池ケース内の空間に対する、非水電解液の体積の割合が、65~80%の範囲外である)サンプル5に係る評価用リチウムイオン二次電池や、巻回軸方向において、正極活物質層の端部と、負極活物質層の端部との距離が5mm超であるサンプル6に係る評価用リチウムイオン二次電池と比較して、ハイレート劣化をより好適に抑制できる)ことが確認された。
【0069】
また、サンプル7および8に係る評価用リチウムイオン二次電池では、負極活物質層における非水電解液の液浸透速度が0.07μL/sと優れているため、ハイレート特性(ハイレート耐性)に関しては課題が生じていないことがわかる。即ち、負極活物質層における非水電解液の液浸透速度が、0.07μL/s未満(具体的には、0.02μL/s~0.05μL/s)である非水電解質二次電池は、ここで開示される技術を適用する対象として好適であるということができる。一方、サイクル特性(ここでは、200サイクル後の容量維持率)に関しては、サンプル1~4に係る評価用リチウムイオン二次電池と比較して低いため、課題があることがわかる。
【符号の説明】
【0070】
10 電池ケース
12 ケース本体
14 封口板
15 注液孔
15a 封止部材
17 ガス排出弁
18,19 端子挿入穴
20 電極体群
20a~20c 巻回電極体
22 正極
23 正極タブ群
24 負極
25 負極タブ群
26 セパレータ
27 基材層
28 耐熱層
30 正極端子
32 正極外部導電部材
40 負極端子
42 負極外部導電部材
50 正極集電部
60 負極集電部
70 正極内部絶縁部材
80 負極内部絶縁部材
90 ガスケット
92 外部絶縁部材
100 電池(非水電解質二次電池)
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
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図9