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特開2024-12187廃プラスチック熱分解油の連続精製方法および精製装置
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  • 特開-廃プラスチック熱分解油の連続精製方法および精製装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012187
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】廃プラスチック熱分解油の連続精製方法および精製装置
(51)【国際特許分類】
   C10G 17/095 20060101AFI20240118BHJP
   C10G 45/02 20060101ALI20240118BHJP
   C10G 67/08 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C10G17/095
C10G45/02
C10G67/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116099
(22)【出願日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】10-2022-0086933
(32)【優先日】2022-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】515215276
【氏名又は名称】エスケー ジオ セントリック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ヒ ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム カ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム オク ユン
(72)【発明者】
【氏名】パク ヨン ム
(72)【発明者】
【氏名】イ ジェ ファン
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA02
4H129CA22
4H129KA03
4H129KA06
4H129KA08
4H129KB02
4H129KC03X
4H129KC03Y
4H129KC05X
4H129KC28X
4H129KD15Y
4H129KD22Y
4H129KD24Y
4H129MB11A
4H129MB14B
4H129MB16C
4H129NA01
4H129NA04
4H129NA17
4H129NA25
4H129NA32
(57)【要約】      (修正有)
【課題】様々な工程トラブルを解決することができる廃プラスチック熱分解油の連続精製方法および精製装置を提供する。
【解決手段】廃プラスチック熱分解油を第1反応器に流入させ、弱酸点触媒下で第1温度でイソ脱ろう(isodewaxing;IDW)反応を行う第1ステップと、前記第1ステップの生成物を第2反応器に流入させ、水素化処理触媒下で第2温度で水素化処理して脱塩素化反応を行う第2ステップと、前記第2ステップの生成物を第3反応器に流入させ、水素化処理触媒下で第3温度で水素化処理して脱窒反応を行う第3ステップと、を含む、廃プラスチック熱分解油の連続精製方法とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチック熱分解油を第1反応器に流入させ、弱酸点触媒下で第1温度でイソ脱ろう(isodewaxing;IDW)反応を行う第1ステップと、
前記第1ステップの生成物を第2反応器に流入させ、水素化処理触媒下で第2温度で水素化処理して脱塩素化反応を行う第2ステップと、
前記第2ステップの生成物を第3反応器に流入させ、水素化処理触媒下で第3温度で水素化処理して脱窒反応を行う第3ステップと、
を含む、廃プラスチック熱分解油の連続精製方法。
【請求項2】
前記廃プラスチック熱分解油は、流動点が10℃以上であり、沸点が180℃以上のC10以上の炭化水素オイルを30重量%以上、およびオレフィンを30体積%以上含む、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の連続精製方法。
【請求項3】
前記第1ステップの生成物の流動点は-20~0℃である、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の連続精製方法。
【請求項4】
前記弱酸点触媒は、γ-Al、カオリン(Kaoline)、TiO、およびZrOから選択される少なくとも1つ以上の触媒を含む、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の連続精製方法。
【請求項5】
前記弱酸点触媒は、少なくともBET比表面積200m/g以上、平均気孔サイズ5nm以上、全気孔体積0.5cc/g以上の特徴を有する、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の連続精製方法。
【請求項6】
前記第1温度は250~450℃である、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の連続精製方法。
【請求項7】
前記第1ステップは、不活性雰囲気下で、反応圧力5~70barおよびGOR(gas/oil ratio)300~3000の条件で行われる、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の連続精製方法。
【請求項8】
第1ステップにより廃プラスチック熱分解油中のα-オレフィンが内部オレフィンに転換され、このときの重量損失が5%以下である、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の連続精製方法。
【請求項9】
前記第2温度は100~300℃であり、前記第3温度は300~450℃である、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の連続精製方法。
【請求項10】
前記第2ステップおよび第3ステップの水素化処理時の反応圧力は100bar未満である、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の連続精製方法。
【請求項11】
前記第2ステップおよび第3ステップの水素化処理時の液体の時間当たりの空間速度(LHSV)の比が1:0.1~1:0.8である、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の連続精製方法。
【請求項12】
廃プラスチック熱分解油が流入し、弱酸点触媒下で第1温度でイソ脱ろう(isodewaxing;IDW)反応が行われる第1反応器と、
前記第1反応器から流体および水素ガスが流入し、水素化処理触媒下で第2温度で水素化処理されて脱塩素化反応が行われる第2反応器と、
前記第2反応器から流体および水素ガスが流入し、水素化処理触媒下で第3温度で水素化処理されて脱窒反応が行われる第3反応器と、
を含む、廃プラスチック熱分解油の連続精製装置。
【請求項13】
前記第1反応器は、弱酸点触媒が充填された固定床反応器(fixed bed reactor)である、請求項12に記載の廃プラスチック熱分解油の連続精製装置。
【請求項14】
前記第2反応器および第3反応器は、水素化処理触媒が充填された固定床反応器(fixed bed reactor)である、請求項12に記載の廃プラスチック熱分解油の連続精製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工程トラブルを最小化することができる廃プラスチック熱分解油の連続精製方法および精製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃プラスチックは、石油を原料として製造されたものであり、リサイクル度が低く、ゴミとして廃棄処分されていることが多い。このような廃棄物は、自然状態で分解され難く、焼却過程で大量の大気汚染および危険物質が発生するなど、環境的に多くの問題を引き起こし、社会問題となっている。
【0003】
プラスチックの最大の問題は、生分解性がほとんどないという点である。自然環境で分解されて無くなるのに数百年の時間がかかり、その過程で細かく砕けてマイクロプラスチックに変わり、生物に様々な問題を引き起こし得るため、廃プラスチック処理技術の重要性が大幅に増加している。廃プラスチックを再使用する方法の1つは、熱分解により廃プラスチックをオイルに転換し、このようなオイルで従来の石油系オイルを代替することである。
【0004】
廃プラスチック熱分解油は、原油(Crude Oil)から製造されるオイルと比較して塩素または金属などの不純物含量が高いため、ガソリン、ディーゼル油などの付加価値の高い燃料として直接使用することができず、精製工程を経なければならない。
精製工程の例として、オイルを水素化処理触媒下で水素化処理した後、生成物に含まれた塩素成分を吸着剤により吸着除去する精製工程が行われている。
【0005】
しかし、水素化処理触媒下でオイルと水素を反応させる場合、精製されたオイルとともに生成される塩化水素などの塩素化合物と窒素化合物が反応してアンモニウム塩(NHCl)を生成する。このアンモニウム塩は、反応器の腐食を引き起こし、耐久性を減少させるだけでなく、差圧の発生、それによる工程効率の低下などの様々な工程トラブルを引き起こす。
【0006】
また、廃プラスチック熱分解油は、様々な沸点および様々な分子量分布を有する炭化水素オイル混合物であり、前記沸点および分子量分布に応じて熱分解油の物性や特性が異なる。特に、廃プラスチック熱分解油は、高い流動点を有しており、常温でワックスまたは固形分状態で存在することになり、このため、精製工程で熱分解油の輸送や保管に困難があり、反応器や配管の閉塞などの様々な工程トラブルが発生する。
【0007】
上記の問題を解決するために、従来の廃プラスチック熱分解油を触媒により低分子化する方法が知られているが、熱分解油の引火点が低くなり、輸送や保管時の安全性に問題があり、ガス成分が多く生成され、熱分解油の回収率が低下するという問題がある。他の方法として、熱分解油の供給路に一定の熱を供給してワックスまたは固形分を溶融させて反応を行うことができるが、零下の天気、寒い冬など、外部温度による影響で均一な熱伝達が難しいため、一定の効果を期待できないという問題があり、ワックスまたは固形分により反応器や配管が閉塞するかまたは工程トラブルが発生するという問題がある。また、配管、パイプ、または反応器全体を加熱しなければならないため、多量の熱エネルギーが必要であり、熱分解油を加熱した状態で輸送することは安定性の面でも危険が伴い、輸送の最終時点で熱分解油が再び固化するという問題がある。
【0008】
したがって、廃プラスチック熱分解油の不純物の低減および高品位化のための精製工程における工程トラブルを最小化することができる廃プラスチック熱分解油の連続精製方法および精製装置が必要な状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示の目的は、プラスチック熱分解油の不純物の低減および高い流動点による様々な工程トラブルを解決することができる廃プラスチック熱分解油の連続精製方法および精製装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、廃プラスチック熱分解油を第1反応器に流入させ、弱酸点触媒下で第1温度でイソ脱ろう(isodewaxing;IDW)反応を行う第1ステップと、前記第1ステップの生成物を第2反応器に流入させ、水素化処理触媒下で第2温度で水素化処理して脱塩素化反応を行う第2ステップと、前記第2ステップの生成物を第3反応器に流入させ、水素化処理触媒下で第3温度で水素化処理して脱窒反応を行う第3ステップと、を含む、廃プラスチック熱分解油の連続精製方法を提供する。
【0011】
一実施形態において、前記廃プラスチック熱分解油は、流動点が10℃以上であり、沸点が180℃以上のC10以上の炭化水素オイルを30重量%以上、およびオレフィンを30体積%以上含んでもよい。
【0012】
一実施形態において、前記第1ステップの生成物の流動点は-20~0℃であってもよい。
一実施形態において、前記弱酸点触媒は、γ-Al、カオリン(Kaoline)、TiO、およびZrOから選択される少なくとも1つ以上の触媒を含んでもよい。
【0013】
一実施形態において、前記弱酸点触媒は、少なくともBET比表面積200m/g以上、平均気孔サイズ5nm以上、全気孔体積0.5cc/g以上の特徴を有してもよい。
【0014】
一実施形態において、前記第1温度は250~450℃であってもよい。
一実施形態において、前記第1ステップは、不活性雰囲気下で、反応圧力5~70barおよびGOR(gas/oil ratio)300~3000の条件で行われてもよい。
【0015】
一実施形態において、第1ステップにより廃プラスチック熱分解油中のα-オレフィンが内部オレフィンに転換され、このときの重量損失が5%以下であってもよい。
【0016】
一実施形態において、前記第2温度は100~300℃であり、前記第3温度は300~450℃であってもよい。
一実施形態において、前記第2ステップおよび第3ステップの水素化処理時の反応圧力は100bar未満であってもよい。
【0017】
一実施形態において、前記第2ステップおよび第3ステップの水素化処理時の液体の時間当たりの空間速度(LHSV)の比が1:0.1~1:0.8であってもよい。
【0018】
また、本開示は、廃プラスチック熱分解油が流入し、弱酸点触媒下で第1温度でイソ脱ろう(isodewaxing;IDW)反応が行われる第1反応器と、前記第1反応器から流体および水素ガスが流入し、水素化処理触媒下で第2温度で水素化処理されて脱塩素化反応が行われる第2反応器と、前記第2反応器から流体および水素ガスが流入し、水素化処理触媒下で第3温度で水素化処理されて脱窒反応が行われる第3反応器と、を含む、廃プラスチック熱分解油の連続精製装置を提供する。
【0019】
一実施形態において、前記第1反応器は、弱酸点触媒が充填された固定床反応器(fixed bed reactor)であってもよい。
一実施形態において、前記第2反応器および第3反応器は、水素化処理触媒が充填された固定床反応器(fixed bed reactor)であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本開示に係る廃プラスチック熱分解油の連続精製方法および精製装置は、熱分解油の精製工程で発生する工程トラブルを最小化し、運転安定性を向上させることができる。
【0021】
本開示に係る廃プラスチック熱分解油の連続精製方法および精製装置は、工程トラブルを最小化するとともに、熱分解油に含まれた塩素および金属などの不純物を効果的に低減することができる。
【0022】
本開示に係る廃プラスチック熱分解油の連続精製方法および精製装置は、廃プラスチック熱分解油の分子量分布の減少や変化なしに異性化反応のみを誘導して流動点を0℃以下に改善することができ、低温流動性に優れた付加価値の高いオイルを生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示の一実施形態に係る第1反応器、第2反応器、および第3反応器を含む廃プラスチック熱分解油の連続精製装置を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書で用いられる技術用語および科学用語において、他の定義がない限り、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が通常理解している意味を有する。
【0025】
本明細書で用いられる用語の単数の形態は、特に指示しない限り、複数の形態も含むものと解釈されてもよい。
本明細書で用いられる数値範囲は、下限値および上限値とその範囲内での全ての値、定義される範囲の形態と幅から論理的に誘導される増分、そのうち限定された全ての値および互いに異なる形態に限定された数値範囲の上限および下限の全ての可能な組み合わせを含む。本明細書において、特に定義しない限り、実験誤差または値の四捨五入により発生し得る数値範囲外の値も定義された数値範囲に含まれる。
【0026】
本明細書で言及される「含む」は、「備える」、「含有する」、「有する」、「特徴とする」などの表現と等価の意味を有する開放型記載であって、追加的に列挙されていない要素、材料、または工程を排除するものではない。
【0027】
本明細書において、特に言及せずに用いられた%の単位とは、他の定義がない限り、重量%を意味し、体積%の単位とは、1atm、25℃での体積%を意味する。
【0028】
本明細書において、特に言及せずに用いられたppmの単位とは、他の定義がない限り、質量ppmを意味する。
本明細書において、特に言及せずに用いられた沸点(boiling point、bp)とは、1atmでの沸点を意味する。
【0029】
本明細書において、特に言及せずに用いられるイソ脱ろう(isodewaxing;IDW)反応とは、オレフィン中の二重結合位置移動反応または構造異性化反応を全て含む反応を意味する。
本開示において、「金属」は、元素状態またはイオン状態で、金属とケイ素のような半金属(metalloid)を全て含む。
【0030】
本開示は、廃プラスチック熱分解油を第1反応器に流入させ、弱酸点触媒下で第1温度でイソ脱ろう(isodewaxing;IDW)反応を行う第1ステップと、前記第1ステップの生成物を第2反応器に流入させ、水素化処理触媒下で第2温度で水素化処理して脱塩素化反応を行う第2ステップと、前記第2ステップの生成物を第3反応器に流入させ、水素化処理触媒下で第3温度で水素化処理して脱窒反応を行う第3ステップと、を含む、廃プラスチック熱分解油の連続精製方法を提供する。
【0031】
前記第1ステップの弱酸点触媒下でのイソ脱ろう(isodewaxing;IDW)反応により熱分解油の流動点を0℃以下に改善するとともに、塩素および金属などの不純物を低減することができ、前記第2ステップおよび第3ステップの原料として流動点が0℃以下に改善された廃プラスチック熱分解油を導入することで工程トラブルを防止し、運転安定性を向上させることができる。また、低温性状が向上した熱分解油を導入することで、水素化処理工程をより穏やかな条件で行っても不純物を効果的に除去することができ、工程トラブルを最小化することができる。
【0032】
また、前記第1ステップから第3ステップが連続して行われ、この際、前記第1ステップで廃プラスチック熱分解油の流動点を0℃以下に改善し、第2ステップで塩素を先に除去した後、第3ステップで窒素を主に除去することで、従来の水素化処理工程の欠点である反応器内のアンモニウム塩(NHCl)の生成および蓄積を最小化し、反応器の閉塞を防止することができる。精製工程を工程トラブルなしに長時間安定的に行うことができ、低温流動性に優れた付加価値の高いオイルを生産することができる。
【0033】
具体的に説明すると、前記廃プラスチック熱分解油は、廃プラスチックを熱分解して生成された炭化水素オイル混合物であってもよく、この際、廃プラスチックは、廃合成樹脂、廃合成繊維、廃合成ゴム、廃ビニルなどの合成高分子化合物と関連した固相または液相のゴミであってもよい。前記炭化水素オイル混合物は、炭化水素オイルの他に、塩素化合物、窒素化合物、金属化合物などの不純物を含んでもよく、炭化水素中に塩素、窒素、または金属が結合した化合物形態の不純物を含んでもよく、オレフィン形態の炭化水素を含んでもよい。
【0034】
前記廃プラスチック熱分解油は、様々な不純物を含み、例えば、窒素300ppm以上、塩素30ppm以上、金属30ppm以上、オレフィン20体積%以上、および共役ジオレフィン(Conjugated diolefin)1体積%以上を含んでもよい。前記廃プラスチック熱分解油中に存在する炭化水素オイル混合物は、H-ナフサ(~C8、bp<150℃):Kero(C9~C17、bp150~265℃)、LGO(C18~C20、bp265~340℃)、およびVGO/AR(C21~、bp>340℃)が10:90~40:60の重量比、または20:80~30:70の重量比であってもよいが、前記不純物含量や炭化水素オイルの組成は一例として提示されたものにすぎず、前記廃プラスチック熱分解油の組成が必ずしもこれに限定されるものではない。
【0035】
本開示の一例において、前記廃プラスチック熱分解油は、流動点が10℃以上であり、沸点が180℃以上のC10以上の炭化水素オイルを30重量%以上、およびオレフィンを30体積%以上含んでもよい。沸点が高い炭化水素オイルの含量が高くなるほど流動点も高くなり、具体的に、沸点が180℃以上のC10以上の炭化水素オイルが30重量%以上含まれると、流動点が10℃以上と常温で固体として存在することになり、より具体的に、沸点が340℃以上のワックス(wax)に該当する炭化水素オイルが30重量%以上含まれると、流動点が25℃以上に高くなる。前記廃プラスチック熱分解油中のオレフィンは、大半がα-オレフィン(alpha-olefin)であり、直鎖状炭化水素構造を含む。流動点と関連した低温性状において、炭化水素構造に応じて低温性状が変わり、例えば、Aromatic>Naphthene>Branched hydrocarbon>Linear hydrocarbonの順に低温性状が変わる。廃プラスチック熱分解油は、主に直鎖状炭化水素(Linear hydrocarbon)で構成されており、同一の炭化水素分布を有する一般の原油(Crude Oil)に比べて相対的に低温性状が劣る。すなわち、廃プラスチック熱分解油は、高い流動点およびオレフィンの高い体積%により常温で固体として存在することになり、これは輸送や工程安定性の面で様々な問題を引き起こす。
【0036】
前記廃プラスチック熱分解油を弱酸点触媒下でイソ脱ろう(isodewaxing;IDW)反応を行う第1ステップにより熱分解油の流動点と関連した低温性状を改善することができ、塩素および金属などの不純物を低減することができる。前記弱酸点触媒下でイソ脱ろう反応を行うことで、廃プラスチック熱分解油中の直鎖状α-オレフィンが直鎖状内部オレフィンに転換され、流動点と関連した低温性状を改善することができる。従来の原油(Crude Oil)などの様々な石油系オイル中の直鎖状α-オレフィンを直鎖状内部オレフィンに転換するための触媒としてゼオライト(Zeolite)、粘土(Clay)などの強酸点触媒が用いられてきたが、廃プラスチック熱分解油には不純物である窒素(N)が過剰に含まれており、これは強酸点触媒の不活性化を引き起こす致命的な問題がある。そこで、本開示では、弱酸点触媒を用いることで、従来の強酸点触媒とは異なり、触媒の不活性化を防止することができ、流動点を0℃以下に改善することができる。また、弱酸点触媒を用いることで、熱分解油に含まれた塩素または金属などの不純物を低減することができる。
【0037】
本開示の一例において、前記第1ステップの生成物の流動点は-30~0℃であってもよい。反応温度条件やその他の条件を制御することで、オレフィンの二重結合位置移動度および構造異性化度を調節して流動点を改善することができる。具体的に、前記流動点は-25~0℃、より具体的には-20~0℃であってもよいが、これは一例として提示されたものにすぎず、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0038】
本開示の一例において、前記弱酸点触媒は、γ-Al、カオリン(Kaoline)、TiO、およびZrOから選択される少なくとも1つ以上の触媒を含んでもよい。弱酸点を有する触媒であれば、従来の公知の様々な弱酸点触媒を用いてもよく、廃プラスチック熱分解油中に含まれた炭化水素オイル混合物の鎖長分布、異性体の含有有無、分子サイズなどを考慮し、適切な弱酸点触媒を選択して用いてもよい。具体的に、弱酸点触媒のうちγ-Al、ZrOであってもよく、より具体的にはγ-Alであってもよい。
【0039】
本開示の一例において、前記弱酸点触媒は、少なくともBET比表面積150m/g以上、平均気孔サイズ5nm以上、全気孔体積0.3cc/g以上であってもよい。上記範囲を満たす弱酸点触媒を用いる場合、比表面積、気孔サイズ、気孔体積特性に応じてイソ脱ろう(isodewaxing;IDW)反応効率が向上することができる。具体的に、BET比表面積は180~400m/g(より具体的には200~300m/g)であり、平均気孔サイズは6~20nm(より具体的には7~15nm)であり、全気孔体積は0.4~2.0cc/g(より具体的には0.5~1.3cc/g)であってもよい。
【0040】
前記弱酸点触媒は、熱分解油の流動点と関連した低温性状を改善するとともに、弱酸点触媒が塩素および金属などの不純物を吸着することで、熱分解油中の塩素または金属含量を低減することができる。また、第2ステップおよび第3ステップの水素化処理工程を工程トラブルなしに安定的に行うことができ、不純物含量が最小化された高品質の精製油を得ることができる。前記精製油は、不純物含量が極めて低く、塩素5ppm(重量)以下、窒素10ppm(重量)以下、金属10ppm(重量)以下であってもよい。
【0041】
塩素および金属などの不純物が吸着した弱酸点触媒は、300℃以上の高温で焼結のような熱処理により再生されてもよい。一例によると、第1反応器は、複数で構成されてもよい。1つの第1反応器を介して熱分解油を供給し、低温性状を改善する第1ステップの工程が連続的に行われ、一定時間の経過後、他の第1反応器にスイッチングされ、熱分解油を供給し、第1ステップの工程が連続的に行われてもよい。活性が減少した1つの第1反応器は、上述したように高温での熱処理により再生され、再生された弱酸点触媒を含む第1反応器は、再びスイッチングされ、第1ステップの工程が行われてもよい。
【0042】
本開示の一例において、前記第1温度は250~450℃であってもよい。反応温度により二重結合移動度を調節することができ、例えば、反応温度が約250℃以上に増加するにつれ、二重結合位置移動反応も増加し、約350℃以上では構造異性化反応がともに起こることができる。また、約250℃以上では塩素または金属を効果的に除去することができ、温度が高くなるにつれ、塩素または金属不純物の除去効果に優れることができる。450℃以上の温度帯ではクラッキング反応もさらに発生し、クラッキング反応とは主に触媒によるβ-切断(beta-scission)反応を意味し、これにより、分子量分布の減少や変化が起こるという問題がある。前記第1温度は、具体的には270~400℃、より具体的には300~375℃であってもよい。
【0043】
本開示の一例において、第1ステップにより、廃プラスチック熱分解油中のα-オレフィンが内部オレフィンまたは分岐オレフィンに転換され、このときの重量損失が5%以下であってもよい。前述したように、前記温度範囲で二重結合位置移動反応や構造異性化反応が起こり、熱分解油中のα-オレフィンが内部オレフィンに転換されることができる。前記温度範囲で反応を行うことで、クラッキング反応などの副反応を抑制し、分子量分布の減少や変化を最小化することができ、このときの重量損失(重量減量)が5%以下であってもよい。前記重量損失は、具体的には3重量%以下、より具体的には2重量%以下であってもよい。
【0044】
本開示の一例において、前記第1ステップは、不活性雰囲気下で、反応圧力5~70barおよびGOR(gas/oil ratio)100~3000の条件で行われてもよい。70bar以上の高い圧力条件では反応活性が低下する一方、5bar以下の低い反応圧力では原料の損失があり得るため、適切な範囲に調節することが良い。前記イソ脱ろう(isodewaxing;IDW)反応は、通常の骨格異性化反応に求められる水素の供給なしに不活性雰囲気で行われてもよい。不活性キャリアガスの流量は反応活性を制御する要因の1つであり、反応は触媒と反応物との接触により行われるため、反応を制御するために滞留時間(retention time)を考慮することができる。不活性キャリアガスの流量が大きくなると、触媒と反応物との間の滞留時間が短くなるため、二重結合位置移動反応が相対的に少なくなるが、骨格異性化、クラッキングなどの副反応の可能性が相対的に減少する。これに対し、不活性キャリアガスの流量が減少すると、二重結合位置移動反応が相対的に多くなるが、副反応による副産物量も相対的に増加する可能性がある。特に、二重結合の移動反応温度が高い場合、副反応の傾向が増加し得るため、キャリアガスの流量を適切な範囲に調節することが良い。具体的に、前記反応圧力は、5~50bar(より具体的には10~40bar)であり、前記GORは、400~2500(より具体的には500~2000)の範囲内で行われてもよい。
【0045】
前記廃プラスチック熱分解油の連続精製方法は、前記第1ステップの後、前記第1ステップの生成物を第2反応器に流入させ、水素化処理触媒下で第2温度で水素化処理して脱塩素化反応を行う第2ステップ、および前記第2ステップの生成物を第3反応器に流入させ、水素化処理触媒下で第3温度で水素化処理して脱窒反応を行う第3ステップにより、熱分解油中の塩素および金属などの不純物を効果的に除去することができる。前述したように、前記第2ステップおよび第3ステップの原料として、前記第1ステップの生成物である、流動点が0℃以下に改善され、不純物が低減された廃プラスチック熱分解油を導入することで、水素化処理工程中の工程トラブルの発生を最小化することができ、運転安定性を向上させることができる。流動点が0℃以下に改善された廃プラスチック熱分解油を導入することで、低温性状が向上し、水素化処理工程をより穏やかな条件で行っても不純物を効果的に除去することができ、精製装置を長時間安定的に運転することができる。
【0046】
前記第2ステップおよび第3ステップの水素化処理時に除去される各成分の種類は、反応温度に応じて決められることができる。前記第2ステップの水素化処理は、第2温度で行われ、塩素を主に除去し、前記第3ステップの水素化処理は、第2温度よりも高い第3温度で行われ、窒素を主に除去することができる。
【0047】
前記第2ステップおよび第3ステップの水素化処理が連続して行われ、この際、第2ステップで塩素を先に除去した後、第3ステップで窒素を主に除去することで、反応器内のアンモニウム塩(NHCl)の生成および蓄積を最小化し、反応器の閉塞を防止することができる。また、前述したように、前記第1ステップの生成物である流動点が0℃以下に改善された廃プラスチック熱分解油には塩素含量がさらに低減されることで、第2ステップおよび第3ステップで後続した水素化処理を行うことで反応器または配管の閉塞をさらに防止することができるため、運転安定性を著しく向上させることができる。
【0048】
本開示の一例において、前記第2温度は100℃超過300℃未満であり、前記第3温度は300℃超過450℃未満であってもよい。前記第2温度の範囲で水素化処理する場合、塩素を集中的に除去することができ、その他にオレフィンも効果的に除去することができる。前記第2温度は120~250℃、より具体的には150~230℃であってもよい。前記第3温度の範囲で水素化処理する場合、窒素を集中的に除去することができ、その他に塩素、硫黄、酸素などのその他の不純物も除去することができる。前記第3温度は、具体的には350~420℃、より具体的には370~400℃であってもよい。前記第2温度と第3温度との差は50~350℃、具体的には50~280℃、より具体的には50~200℃であってもよいが、これは例示にすぎず、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0049】
具体的に説明すると、前記第2ステップの水素化処理は、第2温度で行われ、廃プラスチック熱分解油から塩素が除去され、一部のオレフィンと金属不純物もともに除去されることができる。前記水素化処理触媒下で廃プラスチック熱分解油の水素添加反応が起こり、廃プラスチック熱分解油から大半の塩素が除去され、塩化水素が生成される。さらに、廃プラスチック熱分解油からオレフィンの一部が除去され、その他の金属不純物が除去される。このように、その他の不純物の除去、および脱塩素化したオイル、塩化水素、および未反応水素を含む流体が生成される。
【0050】
前記第3ステップの水素化処理は、第3温度で行われ、前記流体から窒素が除去された精製油を生成することができる。前記流体中の塩化水素、未反応の水素ガスとともに、窒素、酸素、硫黄などを含む不純物が全て除去されることができ、この過程で塩化水素、アンモニア、水蒸気、硫化水素などを含む混合ガスが生成されることができる。前記混合ガスを排出して除去し、前記精製油を混合ガスから気液分離して回収することができる。
【0051】
本開示の一例において、前記第2ステップおよび第3ステップの水素化処理時の反応圧力は100bar未満であってもよい。100bar以上の高い圧力条件ではアンモニウム塩(NHCl)の生成が促進されるという問題があり、過度に低い圧力条件では塩素および窒素を含む不純物を効果的に除去できないという問題がある。具体的に、前記反応圧力は30bar~90barであってもよく、より具体的には50bar~80barであってもよい。
【0052】
本開示の一例において、前記第2ステップおよび第3ステップの水素化処理時の液体の時間当たりの空間速度(LHSV)の比が1:0.1~1:0.8、具体的には1:0.2~1:0.7、より具体的には1:0.3~1:0.7であってもよい。それを満たす場合、第2ステップおよび第3ステップの水素化処理により効果的に不純物を除去することができ、水素化処理触媒の活性を高活性に長期間維持することができ、工程効率が向上するという効果がある。
【0053】
前記水素化処理触媒は、廃プラスチック熱分解油の炭化水素オイルに水素が添加される水添反応が行われるようにする触媒であれば、公知の種々のものが用いられてもよい。具体例として、水素化処理触媒は、水素化脱硫触媒、水素化脱窒素触媒、水素化脱塩素触媒、および水素化脱金属触媒などから選択されるいずれか1つまたは2つ以上を含んでもよい。このような触媒は、脱金属化反応が行われると同時に、前述した温度などの条件に応じて脱窒素化反応または脱塩素化反応が行われるようにする。具体的な一実施形態として、前記水素化処理触媒能を有する活性金属を含んでもよく、好ましくは、支持体に活性金属が担持されてもよい。前記活性金属は、求められる触媒能を有するものであればよく、例えば、モリブデン、ニッケルなどから選択されるいずれか1つ以上を含んでもよい。前記支持体は、活性金属を担持可能な耐久性を有するものであればよく、例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコン、ナトリウム、およびマンガンチタンなどから選択されるいずれか1つまたは2つ以上を含む金属;前記金属の酸化物;およびカーボンブラック、活性炭素、グラフェン、カーボンナノチューブ、および黒鉛などから選択されるいずれか1つまたは2つ以上を含む炭素系材料;などから選択されるいずれか1つまたは2つ以上を含んでもよい。具体的な一実施形態として、前記水素化処理触媒は、全重量に対してニッケル0.1~10重量%およびモリブデン0.1~30重量%を含む活性金属が担持された支持体である触媒であってもよい。ただし、これは例示にすぎず、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0054】
前記廃プラスチック熱分解油の連続精製方法により最終的に得られる精製油は、不純物含量が極めて低く、例えば、塩素5ppm(重量)以下、窒素10ppm(重量)以下、金属10ppm(重量)以下、硫黄10ppm(重量)以下、酸素0.1重量%以下、オレフィン10体積%以下、共役ジオレフィン(Conjugated diolefin)0.2体積%以下であってもよい。ただし、これは例示にすぎず、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0055】
また、本開示は、廃プラスチック熱分解油が流入し、弱酸点触媒下で第1温度でイソ脱ろう(isodewaxing;IDW)反応が行われる第1反応器と、前記第1反応器から流体および水素ガスが流入し、水素化処理触媒下で第2温度で水素化処理され、塩素が除去された流体が生成される第2反応器と、前記第2反応器から流体および水素ガスが流入し、水素化処理触媒下で第2温度よりも高い第3温度で水素化処理され、不純物が除去された精製油が生成される第3反応器と、を含む、廃プラスチック熱分解油の連続精製装置を提供する。図1に示すように、前記第1反応器、第2反応器、および第3反応器を含む連続精製装置を介して、熱分解油の流動点を0℃以下に改善するとともに、塩素および金属などの不純物を低減することができ、工程トラブルを防止して運転安定性を向上させることができる。
【0056】
前記第1反応器は、固定床反応器であってもよい。固定床反応器は、生産性が高いという長所があり、連続方式で運転されることができる。前記第1反応器は、流入口を含んでもよく、弱酸点触媒が充填された前記固定床反応器内に廃プラスチック熱分解油が流入し、反応条件を調節してイソ脱ろう反応を行うことができる。
【0057】
前記固定床反応器内に不活性キャリアガスを供給することができる。前記不活性キャリアガスとして、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、その混合物などの当該技術分野で周知の様々なキャリアガスを特に限定なく選択して供給することができ、具体的には窒素ガスを供給することができる。
【0058】
第1反応器は、複数で構成されてもよい。複数の第1反応器は、並列式に配置されてもよく、フィードである廃プラスチック熱分解油が1つの第1反応器に供給され、低温性状を改善する第1ステップの工程が行われてもよい。一定時間の経過後、他の第1反応器にスイッチングされ、フィードである廃プラスチック熱分解油を供給し、第1ステップの工程が連続的に行われてもよい。活性が減少した1つの第1反応器は、高温での熱処理により再生され、再生された弱酸点触媒を含む第1反応器は、再びスイッチングされ、第1ステップの工程が連続的に行われてもよい。
【0059】
前記第1反応器は、第1パイプを介して第2反応器と連結され、前記第1パイプを介して前記第1反応器から前記第2反応器に廃プラスチック熱分解油が流入する。第1反応器が複数で構成されることで、前記第1パイプも複数で構成されてもよく、第1反応器のスイッチングによりスイッチングされた第1反応器に結合した第1パイプを介して、連続的に第2反応器に低温性状が改善された熱分解油が流入する。
【0060】
前記第2反応器内には、水素化処理触媒が備えられている第2反応領域が存在する。前記反応領域に廃プラスチック熱分解油および水素ガスが流入し、第2温度で水素化処理され、廃プラスチック熱分解油から塩素が除去され、一部のオレフィンおよび金属不純物もともに除去されることができる。
【0061】
前記第2反応器は、別のガス排出口が存在しなくてもよく、これにより、前記第2反応器の生成物である脱塩素化したオイル、塩化水素、および未反応水素を含む流体は、そのまま第3反応器に流入することができる。
前記第2反応器は、第2パイプを介して第3反応器と連結され、前記第2パイプを介して前記第2反応器から生成物が第3反応器に流入する。
【0062】
前記第3反応器内には、水素化処理触媒が備わっている第3反応領域が存在する。前記第3反応領域に前記第2反応器から流体および水素ガスが流入し、第3温度で水素化処理され、流体から不純物が除去されることができる。
【0063】
前記第3反応器内には、第3反応領域の上部に混合ガスが排出されるガス排出口を備えることができ、第3反応領域の下部に不純物が除去された精製油が排出されるオイル排出口を備えることができる。第3温度で水素化処理された流体中の混合ガスがガス排出口を通して排出されることで、不純物が除去された精製油が生成されることができる。
【0064】
前記廃プラスチック熱分解油の連続精製装置にさらに説明されていない事項は、前述した廃プラスチック熱分解油の連続精製方法に記載された内容を参照すればよい。
【0065】
以下、実施例を通じて本開示をより詳細に説明するが、これらはより詳細に説明するためのものであり、権利範囲が下記の実施例により限定されるものではない。
【0066】
実施例1
廃プラスチック熱分解油原料として、窒素(N)1,000ppm、塩素(Cl)700ppm、金属(M)35ppmの高濃度不純物を含有する炭化水素オイル混合物を準備した。前記炭化水素オイル混合物には、ナフサ(bp<180℃、~C8)が20重量%含まれ、KERO 28重量%、LGO 16重量%、VGO 36重量%が含まれていることをSimdsit分析により確認し、全olefinは、Br Index分析により全オイル中に40体積%で含まれ、流動点が37℃であることを確認した。
【0067】
廃プラスチック熱分解油を第1反応器に導入し、イソ脱ろう(isodewaxing;IDW)反応を行った。具体的に、第1反応器にアルミナ触媒(Saint Gobain Norpro社の製品名SA6275)6gを導入し、触媒上端部および下端部をガラスウール(glass wool)で塞ぎ、反応器の残りの部分をシリカビーズ(silica bead)で充填した後、熱電対(thermocouple)を触媒が充填された部分と接触するように設置した。この際、アルミナとしては、260m/gのBET比表面積、10nmの平均気孔サイズ、および0.83cc/gの全気孔体積の特性を有するものを用いた。
【0068】
N2 5barの条件下で、反応器を5℃/minの速度で昇温し、250℃で3時間維持し、触媒の表面に存在する水または吸着ガスを除去した。その後、温度を250℃に下げ、廃プラスチック熱分解油をGOR 700の条件で導入し、空間速度(WHSV)が1hr-1のレベルで運転してイソ脱ろう(isodewaxing;IDW)反応を行った。
【0069】
前記第1反応器で生成されたイソ脱ろう(isodewaxing;IDW)反応生成物を第2反応器に導入した後に水素化処理した。前記第2反応器の内部に水素化処理触媒であるNiMo/γ-Al、CoMo/γ-Alが備えられ、第2反応器の内部に第1反応器から廃プラスチック熱分解油および水素ガスがそれぞれ流入し、250℃、80bar、H/Oil ratio 840、およびLHSV 0.4h-1の条件で水素化処理し、廃プラスチック熱分解油から塩素成分が除去され、副生成物である塩化水素が生成された。さらに、前記反応により廃プラスチック熱分解油から塩素成分の他に、オレフィンおよび金属不純物などがともに除去された。
【0070】
前記第2反応器で生成された塩素成分が除去された廃プラスチック熱分解油、塩化水素、および未反応水素ガスを含む流体を第3反応器に導入した後に水素化処理した。
【0071】
前記第3反応器の内部に前記第2反応器の水素化処理触媒と同様のものが備えられ、前記第3反応器の内部に流体および水素ガスがそれぞれ流入し、370℃、85bar、H/Oil ratio 840、およびLHSV 0.7h-1の条件で水素化処理し、前記流体から窒素成分が除去され、副生成物であるアンモニアが生成された。さらに、窒素成分の他に、除去されていない微量の塩素成分、硫黄成分、酸素成分などのその他の残りの不純物がともに除去された。
【0072】
そして、前記第3反応器の内部に存在するアンモニア、除去されていない微量の塩化水素、水、硫化水素、水素などを含む混合ガスは、前記第3反応器のガス排出口を通して排出され、不純物が除去された精製油は、前記第3反応器のオイル排出口を通して回収した。
【0073】
実施例2~実施例4
実施例1において、各反応器の温度および圧力を表1に記載された条件で運転したことを除いては、実施例1と同様の方法で不純物が除去された精製油を回収した。
【0074】
実施例5
実施例1において、第2反応器を160℃、85bar、第3反応器を320℃、90barの条件で運転したことを除いては、実施例1と同様の方法で不純物が除去された精製油を回収した。
【0075】
実施例6
実施例1において、第1反応器を500℃の条件で運転したことを除いては、実施例1と同様の方法で不純物が除去された精製油を回収した。
【0076】
実施例7
実施例1において、第2反応器の反応条件を第3反応器と同様にしたことを除いては、実施例1と同様の方法で不純物が除去された精製油を回収した。
【0077】
比較例1
実施例1において、前記第2反応器に流入する廃プラスチック熱分解油としてイソ脱ろう(isodewaxing;IDW)反応を行っていない廃プラスチック熱分解油を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で不純物が除去された精製油を回収した。
【0078】
比較例2
実施例1において、前記イソ脱ろう(isodewaxing;IDW)反応触媒として強酸点触媒であるゼオライト(Zeolite)を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で不純物が除去された精製油を回収した。前記ゼオライト(Zeolite)触媒は、NHZSM-5(CBV2314、Zeolyst Co.)を550℃で4時間熱処理して得られたHZSM-5を用いた。
【0079】
評価例
イソ脱ろう(isodewaxing;IDW)反応生成物である廃プラスチック熱分解油の流動点、二重結合位置移動反応の選択度および副反応有無をSimidist、GC-MSで分析した。また、水素化反応後の流動点を測定し、水素化反応が流動点に及ぼす影響性を評価した。
【0080】
最終的に回収された廃プラスチック熱分解油の塩素(Cl)含量(ppm)および窒素(N)含量(ppm)は、ICP、XRF分析法により測定された。
【0081】
廃プラスチック熱分解油を連続的に精製するために精製装置を連続運転しつつ、原料および反応物の固形化による反応器の差圧(DP)増加および閉塞による工程トラブルの発生頻度をチェックして工程安定性を評価した。具体的に、前記連続精製装置を30日間連続運転する工程を5回繰り返し、工程トラブルが発生する平均回数を測定した。平均値が少数点で測定される場合には四捨五入して表記した。
上記測定結果を下記表1に示した。
【0082】
【表1】
【0083】
-流動点:第1反応器を通過した後の廃プラスチック熱分解油の流動点
-流動点:精製工程を全て経た精製油の流動点
-Cl:廃プラスチック熱分解油原料中の塩素含量
-Cl:第1反応器を通過した後の廃プラスチック熱分解油中の塩素含量
-M:廃プラスチック熱分解油原料中の金属含量
-M:第1反応器を通過した後の廃プラスチック熱分解油中の金属含量
【0084】
流動点
廃プラスチック熱分解油フィード(feed)の流動点は37℃と高いレベルであったが、実施例1の反応温度250℃でイソ脱ろう反応により流動点を8℃に改善できることを確認した。また、実施例2~4から、反応温度の増加に伴い流動点が次第に低くなる傾向を確認することができる。骨格異性化反応が開始される反応温度320℃では、流動点が3℃であり、より活発な骨格異性化反応およびクラッキング反応を伴う反応温度380℃および450℃では、流動点がそれぞれ-7℃および-15℃に著しく減少することを確認することができる。
また、実施例1~5の水素化処理工程前/後の流動点を比較すると、水素化処理工程は、熱分解油の流動点に大きな影響を及ぼさないことを確認した。
【0085】
重量減量
320℃以下では分子構造内の二重結合の位置移動だけが起こり、その後、320℃からの反応温度区間では骨格異性化反応が起こり、2重量%の重量減量が引き起こされることを確認することができる。380℃後にはクラッキング反応などの副反応が起こり、重量減量が徐々に増加することを確認することができ、特に実施例6の500℃では重量減量が36重量%以上発生するため好ましくないことを確認することができる。
【0086】
塩素および金属含量/工程トラブルの平均発生回数
実施例1では、前記第1反応器を通過した後の廃プラスチック熱分解油中の塩素含量が663ppmと一定レベル低減されたことを確認することができる。また、実施例2~4では、イソ脱ろう工程である第1ステップを高温で行うほど塩素低減効果が大きいことを確認することができ、実施例4では、450℃で行う場合、塩素含量が529ppmと測定され、前記イソ脱ろう工程により塩素含量が約100ppm以上低減されたことを確認することができる。
【0087】
特に、実施例1~5では、第1反応器を通過した後の廃プラスチック熱分解油中の金属含量がいずれも2ppm以下と測定され、前記イソ脱ろう工程により金属不純物の大半が数ppmレベルに低減されたことを確認することができ、金属除去効果に著しく優れることが分かる。これに対し、比較例1の場合、イソ脱ろう工程を省略した場合、塩素および金属含量が全く低減されないことを確認することができ、これにより、工程トラブルの平均発生回数が12回と相対的に多いことを確認することができる。
【0088】
実施例7の場合、工程トラブルの平均発生回数が9回と相対的に多いことを確認することができ、これは、第2反応器および第3反応器のいずれも370℃、85barの過酷な条件で水素化処理を行うことで、アンモニウム塩(NHCl)の生成による反応器の閉塞が主な原因であると見られる。
比較例2の場合にも、強酸点触媒を用いることで触媒の不活性化が発生し、工程トラブルの平均発生回数が8回と実施例1~5に比べて相対的に多いことを確認することができる。
【0089】
以上、実施例および比較例について説明したが、本開示は、上記の実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造されてもよく、本開示が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本開示の技術的思想や必須の特徴を変更せずに他の具体的な形態で実施可能であることを理解することができる。したがって、以上で記述された実施例は、全ての面で例示的なものであって、限定的なものではないことを理解しなければならない。
図1