(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121871
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】電動車両の制御システム
(51)【国際特許分類】
B60W 10/26 20060101AFI20240902BHJP
B60K 6/44 20071001ALI20240902BHJP
B60L 7/14 20060101ALI20240902BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20240902BHJP
B60L 50/61 20190101ALI20240902BHJP
【FI】
B60W10/26 900
B60K6/44 ZHV
B60L7/14
B60L50/16
B60L50/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029080
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】平田 健敏
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202AA10
3D202BB19
3D202CC00
3D202CC04
3D202CC58
3D202DD16
3D202DD22
3D202FF12
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC08
5H125AC12
5H125AC24
5H125BC13
5H125CB03
5H125EE30
5H125EE51
(57)【要約】
【課題】燃料成分の流出を抑制できる電動車両の制御システムを提供する。
【解決手段】電動車両の制御システムは、電動車両に搭載される内燃機関と、前記内燃機関を駆動する回転電機と、前記回転電機に電力を供給する駆動用電池と、前記電動車両を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記内燃機関の潤滑油の希釈状態を取得し、前記希釈状態に応じて前記駆動用電池の充電率が満充電となる第1判定値を変化させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両に搭載される内燃機関と、
前記内燃機関を駆動する回転電機と、
前記回転電機に電力を供給する駆動用電池と、
前記電動車両を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記内燃機関の潤滑油の希釈状態を取得し、前記希釈状態に応じて前記駆動用電池が満充電と判定する第1判定値を変化させる、
電動車両の制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記内燃機関の潤滑油の希釈割合を取得し、前記希釈割合が高くなるほど、前記第1判定値を低くする、
請求項1に記載の電動車両の制御システム。
【請求項3】
前記内燃機関の排気を浄化する触媒と、
前記駆動用電池を前記電動車両の外部の機器から充電する外部充電装置と、
をさらに備え、
前記制御装置は、前記外部充電装置による充電中の前記触媒の温度を取得し、前記触媒の温度が第1温度よりも低い場合、前記第1判定値をさらに低くする、
請求項1に記載の電動車両の制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記駆動用電池の充電率が前記第1判定値よりも高い第2判定値以上である場合、前記希釈割合に応じて、前記回転電機によって前記内燃機関を非燃焼状態で駆動する第1モータリング制御、および前記回転電機によって前記内燃機関を燃焼状態で駆動する第2モータリング制御のいずれか一方を実行する、
請求項1に記載の電動車両の制御システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記希釈割合が所定割合以上の場合に前記第2モータリング制御を実行する、
請求項4に記載の電動車両の制御システム。
【請求項6】
前記内燃機関の排気を浄化する触媒をさらに備え、
前記制御装置は、前記触媒の温度を取得し、前記温度が第2温度以上である場合、前記第1モータリング制御に切り替える、
請求項5に記載の電動車両の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動車両の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関と、内燃機関を駆動する回転電機とを有する電動車両の制御システムが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1の電動車両の制御システムは、内燃機関の潤滑油が燃料によって希釈化されると、内燃機関を燃焼運転させて潤滑油を燃焼させている。特許文献1の電動車両の制御システムでは、この間に回転電機を駆動し充電している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、駆動用電池は、満充電となると充電できなくなる。駆動用電池が充電できなくなると、例えば電動車両の回生ブレーキが使用できなくなる。このため、従来の電動車両の制御システムでは、回転電機によって内燃機関を駆動するモータリングを実行し、回生分の電力を消費している。このとき、内燃機関の潤滑油が希釈化されていると、潤滑油に含まれる燃料成分が排気に流れ出る。
【0005】
本開示の課題は、燃料成分の流出を抑制できる電動車両の制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る電動車両の制御システムは、電動車両に搭載される内燃機関と、前記内燃機関を駆動する回転電機と、前記回転電機に電力を供給する駆動用電池と、前記電動車両を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記内燃機関の潤滑油の希釈状態を取得し、前記希釈状態に応じて前記駆動用電池の充電率が満充電となる第1判定値を変化させる。
【0007】
この電動車両の制御システムは、潤滑油の希釈状態に応じて第1判定値を変化させることができる。これによって、この電動車両の制御システムは、希釈状態に応じて満充電時の駆動用電池の充電割合が変化する。この結果、この電動車両の制御システムは、内燃機関の潤滑油が希釈化された状態でモータリング制御を実行することを抑制できる。この結果、この電動車両の制御システムは、燃料成分の流出を抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、燃料成分の流出を抑制できる電動車両の制御システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態による電動車両のシステム図。
【
図2】本開示の一実施形態による内燃機関のシステム図。
【
図3】本開示の一実施形態による制御装置が実行する制御手順を示すフローチャート。
【
図4】本開示の一実施形態による制御装置が実行する満充電制御による制御手順を示すフローチャート。
【
図5】本開示の一実施形態による制御装置が実行する制御手順の一例を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1に示すように、電動車両Cの制御システム3は、内燃機関1と、モータ(FrM)2と、発電機(GEN:回転電機の一例)4と、駆動用電池(BT)6と、トランスアクスル8と、車両制御装置(制御装置の一例)12と、内燃機関1を制御するエンジン制御装置14と、電動車両Cのユーザが操作するアクセルペダル16と、モータ2および発電機4を制御するインバータ18と、外部電源に接続可能な充電器(外部充電装置の一例)20と、を備える。このほか、電動車両Cの制御システム3は、例えば家電などの外部機器に電力を供給可能な給電装置22と、ユーザが充電を指示する充電ボタン(図示なし)などを備えてもよい。本実施形態では電動車両Cは、充電器20によって外部電源からの電力を駆動用電池6に蓄電可能なプラグインハイブリッド車(PHEV)である。
【0012】
図2に示すように、内燃機関1は、ポート噴射弁30と、点火プラグ32と、触媒34と、吸気カム36と、排気カム38と、ピストン40と、温度センサ42と、を有する。本実施形態では、内燃機関1は、混合気に点火プラグ32によって点火するガソリンエンジンである。触媒34は、ガソリンエンジンの排気を浄化する三元触媒である。温度センサ42は、触媒34の触媒温度Tを検知するセンサである。
【0013】
内燃機関1は、ピストン40、吸気カム36、および排気カム38、などの摺動部材の潤滑を補助する潤滑油Oが注入される。潤滑油Oは、気筒50などに付着した燃料成分によって、希釈されることもある。
【0014】
図1に示すように、発電機4は、内燃機関1に接続され、内燃機関1を駆動可能である。発電機4は、駆動用電池6からの電力によって力行する間は、内燃機関1を駆動するモータリングを行う。一方、発電機4は、内燃機関1の運転中において内燃機関1に駆動されて発電する。したがって、発電機4は、力行と発電が可能なモータ・ジェネレータである。
【0015】
駆動用電池6は、DC-DCコンバータ24を介してモータ2および発電機4に電力を出力するとともに、モータ2および発電機4が発生した電力が入力される。DC-DCコンバータ24は、昇圧回路を有し、駆動用電池6の電圧Bvを昇圧する。さらに駆動用電池6は、充電器20を介して外部電力が入力される。本実施形態の駆動用電池6は、リチウムイオン電池等の二次電池で構成され、複数の電池セルをまとめて構成された図示しない電池モジュールを有する。
【0016】
駆動用電池6は、電池モニタリングユニット(BMU)6aを有する。電池モニタリングユニット6aは、駆動用電池6の充電状態の一例として電池モジュールの充電率(State Of Charge、以下、SOCと記す)を演算する。そのほか電池モニタリングユニット6aは、電池モジュールの劣化状態(State Of Health 以下 SOH)、および電池温度Btmpの検出を行ってもよい。電池モニタリングユニット6aは、駆動用電池6の電圧Bv、充電率SOC、劣化状態SOH、および電池温度Btmpを取得し、車両制御装置12に送信する。
【0017】
トランスアクスル8は、複数のギヤとクラッチ8aを有する。内燃機関1は、トランスアクスル8を介して発電機4と、車軸10と連結される。トランスアクスル8は、クラッチ8aが開放状態の場合、内燃機関1と車軸10との動力伝達が遮断され、クラッチ8aが接続状態の場合、内燃機関1の動力が車軸10を介して車輪C1に伝達される。モータ2は、トランスアクスル8を介して車軸10と連結される。
【0018】
本実施形態の電動車両Cは、EVモード、シリーズモード、パラレルモード、充電モードなどの各モードを有する。電動車両Cは、EVモードの場合、駆動用電池6からの電力によってモータ2を駆動する。電動車両Cは、シリーズモードの場合、内燃機関1によって発電機4を駆動し、発電機4によって発電した電力を用いてモータ2を駆動する。電動車両Cは、パラレルモードの場合、クラッチ8aを接続し、内燃機関1の動力を用いて車軸10を駆動する。電動車両Cは、充電モードでは、内燃機関1によって発電機4を駆動し、発電機4によって発電した電力を駆動用電池6に蓄電する。電動車両Cは、アクセルペダル16の踏み込み状態や充電ボタンの操作状態に応じて、車両制御装置12が各モードを切り替え、インバータ18を介してモータ2および発電機4を制御するとともに、エンジン制御装置14に内燃機関1を制御させる。
【0019】
車両制御装置12は、駆動用電池6の充電率SOCが第1判定値SOCt1となると満充電と判定し、充電器20による充電、または発電機4による発電を停止させる。また、車両制御装置12は、充電率SOCが第2判定値SOCt2より大きい場合、発電機4によって内燃機関1を駆動させるモータリングを行う満充電制御を実行する。これによって車両制御装置12は、電動車両Cが減速する際のモータ2の回生によって発生する電力を発電機4に消費させる。このとき、車両制御装置12は、発電機4によって内燃機関1を非燃焼状態で駆動する第1モータリング制御、および発電機4によって内燃機関1を燃焼状態で駆動する第2モータリング制御のいずれか一方を実行する。車両制御装置12は、第1モータリング制御などの信号をエンジン制御装置14に発信し、エンジン制御装置14に内燃機関1を制御させる。車両制御装置12は、実際には、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等とを含むマイクロコンピュータによって構成されるECU(Electrоnic Control Unit)である。車両制御装置12は、メモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、電動車両Cの様々な制御を実行する。
【0020】
また、車両制御装置12は、駆動用電池6のコントロールユニット(図示せず)と電気的に接続され、駆動用電池6の充電率SOC、電池温度Btmpなどの情報を、駆動用電池6のコントロールユニットから取得可能である。
【0021】
エンジン制御装置14は、内燃機関1が備える各種装置と電気的に接続され、内燃機関1を制御する制御装置である。エンジン制御装置14は、実際には、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等とを含むマイクロコンピュータによって構成されるECU(Electrоnic Control Unit)である。エンジン制御装置14は、メモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、内燃機関1の様々な制御を実行する。なお、内燃機関1の制御はエンジン制御装置14のほか、車両制御装置12によって実行してもよい。
【0022】
次に、
図3のフローチャートを用いて、本実施形態の車両制御装置12の制御手順について説明する。
【0023】
ステップS1では車両制御装置12は、潤滑油Oの希釈割合(希釈状態の一例)Dを取得する。希釈割合Dは、潤滑油Oの量に対して燃料成分の混入量の割合である。車両制御装置12は、エンジン始動回数、潤滑油Oの油温、内燃機関1の稼働時間、内燃機関1の水温などから希釈割合Dを推定する。車両制御装置12は、希釈割合Dを取得するとステップS2に処理を進める。
【0024】
ステップS2において車両制御装置12は、希釈割合Dが所定割合Dtより大きいか否か判断する。所定割合Dtは、満充電制御において潤滑油Оに含まれる燃料成分が排気から流出する状態か否かによって決定される値である。すなわち、所定割合Dtは、所定割合Dtよりも希釈割合Dが大きい場合、満充電制御を実行した場合に燃料成分が触媒34を通過して電動車両Cの外部へ流出する可能性があるか否かを決定する閾値である。車両制御層落ち12は、希釈割合Dが所定割合Dtよりも大きいと判断した場合(ステップS2 YES)、ステップS3に処理を進める。
【0025】
ステップS3では、車両制御装置12は、満充電と判定する充電率SOCである第1判定値SOCt1を下げる。車両制御装置12は、希釈割合Dが所定割合Dtよりも大きくなるほど、第1判定値SOCt1を低い値としてもよい。満充電と判定する第1判定値SOCt1が低くなるほど、満充電制御を実行する第2判定値SOCt2と第1判定値SOCt1までの差分が大きくなる。これによって、車両制御装置12は、満充電制御の実行機会を減らすことができる。この結果、車両制御装置12は、燃料成分の流出を抑制できる。車両制御装置12は、第1判定値SOCt1を下げるとステップS4に処理を進める。
【0026】
ステップS4では、車両制御装置12は、触媒温度Tが第1温度T1以下か否か判断する。本実施形態では、車両制御装置12は、充電器20によって外部電源に接続され、駆動用電池6が充電されている場合にステップS4の処理を実行する。第1温度T1は、触媒34が燃料成分を浄化可能な温度か否かによって決定される温度である。本実施形態では、第1温度T1は、三元触媒が半活性化状態となる温度(例えば300℃程度)である。外部電源による充電中は、外気温度が低いと触媒温度Tも低下しやすい。車両制御装置12は、触媒温度Tが第1温度T1以下であると判断した場合(ステップS4 YES)、ステップS5の処理を進める。
【0027】
ステップS5では、車両制御装置12は、第1判定値SOCt1をさらに下げる。触媒温度Tが第1温度D1よりも低い場合、満充電制御によって燃料成分が流出する可能性が高まる。このため、車両制御装置12は、第1判定値SOCt1をさらに下げることによって、満充電制御の実行機会をさらに減らすことができる。車両制御装置12は、第1判定値SOCt1をさらに下げると、ステップS6に処理を進める。
【0028】
ステップS6では、車両制御装置12は、充電器20による駆動用電池6の充電、または発電機4による駆動用電池6の充電が開始され、充電率SOCが第1判定値SOCt1となったか否か判断する。車両制御装置12は、充電率SOCが第1判定値SOCt1となったと判断した場合(ステップS6 YES)、ステップS7に処理を進める。
【0029】
ステップS7では車両制御装置12は、充電器20による充電、または発電機4による充電を停止する。車両制御装置12は、充電を停止するとステップS8に処理を進める。
【0030】
ステップS8では車両制御装置12は、充電率SOCが第2判定値SOCt2以上か否か判断する。第2判定値SOCt2は、満充電制御が必要となる充電率SOCである。第2判定値SOCt2は、第1判定値SOCt1よりも高い充電率SOCである。車両制御装置12は、充電率SOCが第2判定値SOCt2以上であると判断した場合(ステップS8 YES)、ステップS9に処理を進める。
【0031】
ステップS9では車両制御装置12は、電動車両Cがモータ2の回生による減速状態であるか否か判断する。車両制御装置12は、減速状態であると判断した場合(ステップS8 YES)、ステップS10に処理を進める。ステップS10では車両制御装置12は、満充電制御を実行する。
【0032】
ステップS2において車両制御装置12が希釈割合Dを所定割合以下と判断した場合(ステップS2 NO)、車両制御装置12は、ステップS6に処理を進める。すなわち、車両制御装置12は、第1判定値SOCt1を下げずにステップS6に処理を進める。ステップS4において車両制御装置12が、触媒温度Tが第1温度T1より大きいと判断した場合(ステップS4 NO)、車両制御装置12は、ステップS6に処理を進める。
【0033】
ステップS6において車両制御装置12が充電率SOCを第1判定値SOCt1となっていないと判断した場合(ステップS6 NO)、車両制御装置12は、ステップS1に処理を進める。すなわち、車両制御装置12は、充電率SOCが第1判定値SOCt1となるまで、ステップS1からステップS6の処理を繰り返す。これによって、車両制御装置12は、希釈割合Dと触媒温度Tとに基づいて第1判定値SOCt1を変化させる。
【0034】
ステップS8において車両制御装置12が充電率SOCを第2判定値SOCt2となっていないと判断した場合(ステップS8 NO)、車両制御装置12は、ステップS1に処理を進める。すなわち、車両制御装置12は、充電率SOCが第2判定値SOCt2となり満充電制御を実行するまで、ステップS1からステップS8の処理を繰り返す。
【0035】
ステップS9において車両制御装置12が減速状態でないと判断した場合(ステップS9 NO)、車両制御装置12は、ステップS1に処理を進める。
【0036】
次に
図4のフローチャートを用いて車両制御装置12が実行する満充電制御の制御手順を説明する。
【0037】
ステップS20では車両制御装置12は、満充電制御において希釈割合Dを取得し、希釈割合Dが所定割合Dt以上か否か判断する。車両制御装置12は、希釈割合Dが所定割合Dt以下の場合(ステップS20 YES)、ステップS21に処理を進める。
【0038】
ステップS21では、車両制御装置12は、非燃焼モータリングを実行する。非燃焼モータリングによって触媒34に供給された燃焼成分は、触媒34によって浄化される。車両制御装置12は、非燃焼モータリングを実行すると、ステップS22に処理を進める。
【0039】
ステップS22では、車両制御装置12は、減速か終了したか否か判断する。車両制御装置12は、減速が終了したと判断した場合(ステップS22 YES)、ステップS23に処理を進め、満充電制御を停止する。一方、車両制御装置12は、減速が終了していないと判断した場合(ステップS22 NO)、ステップS9に処理を進めて満充電制御を継続する。
【0040】
ステップS20において車両制御装置12が希釈割合Dを所定割合Dtより小さいと判断した場合(ステップS20 YES)、車両制御装置12は、ステップS13に処理を進める。
【0041】
ステップS24では車両制御装置12は、触媒温度Tが第2温度T2以上か否か判断する。第2温度T2は、満充電制御においても燃料成分が浄化できる程度に触媒34が活性化している温度である。本実施形態では、第2温度T2は、三元触媒が完全活性化状態(例えば、600から700℃程度)する温度である。車両制御装置12は、触媒温度Tが第2温度T2以上の場合(ステップS24 YES)、ステップS25に処理を進め、非燃焼モータリングを実行する。
【0042】
車両制御装置12は、触媒温度Tが第2温度T2未満の場合(ステップS24 NO)、ステップS25に処理を進める。車両制御装置12は、ステップS25において、燃焼モータリングを実行する。すなわち、車両制御装置12は、希釈割合Dに応じて非燃焼モータリングと、燃焼モータリングのいずれか一方を実行する。燃焼モータリングでは燃料成分は内燃機関1によって燃焼する。これによって、燃料成分の流出が抑制される。車両制御装置12は、ステップS25の処理を実行するとステップS22に処理を進める。
【0043】
次に
図5のタイミングチャートを用いて、上記制御手順を用いた一例について説明する。なお、本実施形態では、充電器20による外部電源を用いた充電が実行される例について説明する。
【0044】
時刻t1からt2の内燃機関1の稼働状態に示すように、内燃機関1が稼働すると希釈割合Dが変化する。希釈割合Dは、内燃機関1が冷態状態で加減速を繰り返すと大きくなる。時刻t2に示すように、希釈割合Dが所定割合Dtを超えると(
図3のステップS2 YESの状態)、車両制御装置12は、第1判定値SOCt1を下げる。
【0045】
時刻t2から時刻t3に示すように、この状態で外部電源から駆動用電池6が充電されると、充電率SOCが上昇する。時刻t3に示すように、充電率SOCが第1判定値SOCt1となると、車両制御装置12は、充電を停止する(
図3のステップS6 YESの状態)。
【0046】
時刻t3から時刻t4に示すように、充電率SOCが第2判定値SOCt2となった場合、かつモータ2によって回生され電動車両Cが減速すると、車両制御装置12は、満充電制御をオンにすることで満充電制御を開始する(
図3のステップS8およびステップS9 YESの状態)。時刻t4の希釈割合Dに示すように、このとき希釈割合Dは所定割合Dtより大きい(
図4のステップS20 YESの状態)。また、時刻t4の触媒温度Tに示すように、触媒温度Tは第2温度T2未満である(
図4のステップS24 NO)。このため、車両制御装置12は、燃焼モータリングを実行する。
【0047】
時刻t4から時刻t5の触媒温度Tに示すように、燃焼モータリングによって触媒温度Tは上昇する。時刻t5に示すように、触媒温度Tが第2温度T2以上となると(
図4のステップS24 YESの状態)、車両制御装置12は燃焼モータリングから非燃焼モータリングに切り替える。時刻t6に示すように、電動車両Cの減速が終了すると車両制御装置12は、満充電制御を終了する。
【0048】
時刻t7から時刻t8に示すように、再び駆動用電池6が充電されると、充電率SOCが上昇する。しかし、このとき希釈割合Dが所定割合Dt以下である(
図3のステップS2 NOの状態)。この場合、本実施形態の車両制御装置12は、満充電となる第1判定値SOCt1に第2判定値SOCt2を利用する。時刻t8に示すように、車両制御装置12は、第2判定値SOCt2となった場合、充電を終了する。時刻t9から時刻t10に示すように、希釈割合Dが所定割合Dt以下の状況において車両制御装置12が満充電制御を開始すると、車両制御装置12は非燃焼モータリングを実行する。
【0049】
以上説明した通り、本開示によれば、燃料成分の流出を抑制できる電動車両Cの制御システム3を提供できる。
【0050】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0051】
(a)上記実施形態では、内燃機関1は、ガソリンエンジンを例に説明したが本開示はこれに限定されない。内燃機関1は、ディーゼルエンジンなどであってもよい。
【0052】
(b)上記実施形態では、温度センサ42によって触媒温度Tを検知する例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されない。触媒温度Tは、内燃機関1の運転時間などから推定してもよい。
【0053】
(c)上記実施形態では、車両制御装置12は、エンジン始動回数、潤滑油Oの油温、内燃機関1の稼働時間、内燃機関1の水温などから希釈割合Dを推定したが、本開示は、これに限定されない。車両制御装置12は、オイルレベルセンサ(図示なし)などから潤滑油Oの量と燃料の混入量を取得し、希釈割合Dを取得してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1:内燃機関,3:制御システム.4:発電機,6:駆動用電池
12:車両制御装置,20:充電器,34:触媒,C:電動車両
D:希釈割合,D1:第1温度,Dt:所定割合,O:潤滑油
SOC:充電率,SOCt1:第1判定値,SOCt2:第2判定値
T:触媒温度,T1:第1温度,T2:第2温度
О:潤滑油