(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121876
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】自動車部品管理システム、および、自動車部品管理方法
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20240902BHJP
G06Q 10/20 20230101ALI20240902BHJP
【FI】
G01M17/007 J
G06Q10/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029088
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 大成
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】自動車部品について高精度で異常検出する。
【解決手段】実施形態の自動車部品管理システムは、情報を記憶する電子記憶媒体と、所定のセンサから、対象の自動車における所定の部品が正常な状態である場合の前記部品に関する所定の状態データである正常状態データを取得する取得部と、前記電子記憶媒体に、前記正常状態データ、および、電子署名を書き込む書込処理部と、前記自動車に搭載されたセンサから前記部品に関する新たな状態データを取得し、前記新たな状態データと、前記電子記憶媒体から読み出された前記正常状態データと、に基づいて、前記部品の異常を検出する異常検出部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を記憶する電子記憶媒体と、
所定のセンサから、対象の自動車における所定の部品が正常な状態である場合の前記部品に関する所定の状態データである正常状態データを取得する取得部と、
前記電子記憶媒体に、前記正常状態データ、および、電子署名を書き込む書込処理部と、
前記自動車に搭載されたセンサから前記部品に関する新たな状態データを取得し、前記新たな状態データと、前記電子記憶媒体から読み出された前記正常状態データと、に基づいて、前記部品の異常を検出する異常検出部と、を備える自動車部品管理システム。
【請求項2】
前記異常検出部によって前記部品の異常が検出された場合、前記自動車の表示部に異常検出情報を表示させる表示制御部を、さらに備える請求項1に記載の自動車部品管理システム。
【請求項3】
前記書込処理部は、前記電子記憶媒体に、前記正常状態データ、および、電子署名を書き込む場合に、さらに、前記部品が正常な状態であることを確認した作業者の識別情報を書き込む、請求項1に記載の自動車部品管理システム。
【請求項4】
前記電子記憶媒体は、紙媒体の車検証にICチップが埋め込まれて構成されている電子車検証における前記ICチップである、請求項1に記載の自動車部品管理システム。
【請求項5】
前記所定の状態データは、音データである、請求項1に記載の自動車部品管理システム。
【請求項6】
所定のセンサから、対象の自動車における所定の部品が正常な状態である場合の前記部品に関する所定の状態データである正常状態データを取得する取得ステップと、
情報を記憶する電子記憶媒体に、前記正常状態データ、および、電子署名を書き込む書込処理ステップと、
前記自動車に搭載されたセンサから前記部品に関する新たな状態データを取得し、前記新たな状態データと、前記電子記憶媒体から読み出した前記正常状態データと、に基づいて、前記部品の異常を検出する異常検出ステップと、を含む自動車部品管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、自動車部品管理システム、および、自動車部品管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の部品(例えば、エンジン、マフラー、ブレーキなど)の異常(故障、改造など)を検出する技術がある。例えば、サーバで、自動車のマフラーの正常時の音データを記録しておき、その後に取得した音データを正常時の音データと比較することで、マフラーの異常を検出するという技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-79792号公報
【特許文献2】特開2017-58351号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「クルマのSOSサイン!13の「異音」と疑うべきトラブルとは」、[online]、2021年7月29日、[令和5年2月7日検索]、インターネット、<URL:https://www.webcartop.jp/2021/07/743271/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来技術では、サーバに記録されている正常時の音データについて改ざんの可能性などの点で信頼性に欠けるので、異常検出の精度について改善の余地がある。
【0006】
そこで、本発明の実施形態は、自動車部品について高精度で異常検出が可能な自動車部品管理システム、および、自動車部品管理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の自動車部品管理システムは、情報を記憶する電子記憶媒体と、所定のセンサから、対象の自動車における所定の部品が正常な状態である場合の前記部品に関する所定の状態データである正常状態データを取得する取得部と、前記電子記憶媒体に、前記正常状態データ、および、電子署名を書き込む書込処理部と、前記自動車に搭載されたセンサから前記部品に関する新たな状態データを取得し、前記新たな状態データと、前記電子記憶媒体から読み出された前記正常状態データと、に基づいて、前記部品の異常を検出する異常検出部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態の自動車部品管理システムの全体構成の概要を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態の電子署名付きデータの概要を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態の自動車部品管理システムにおける処理の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を用いて、本発明の自動車部品管理システム、および、自動車部品管理方法の実施形態について説明する。本実施形態では、自動車の部品(例えば、エンジン、マフラー、ブレーキなど)の異常(故障、改造など)を検出するために、部品の所定の状態データを用いる。以下では、所定の状態データとして、音データの場合を例にとる。
【0010】
図1は、実施形態の自動車部品管理システムSの全体構成の概要を示すブロック図である。自動車部品管理システムSは、自動車1と、車検場Vに設置されているサーバ2およびセンサ3(所定のセンサ)と、電子車検証4と、を備える。
【0011】
センサ3は、自動車1の部品に関する音を検出して音データを出力するセンサであり、例えば、マイクロフォンである。
【0012】
電子車検証4は、紙媒体の車検証にIC(Integrated Circuit)チップ41が埋め込まれて構成されている。ICチップ41は、処理部と記憶部を有する集積回路である。ICチップ41における記憶領域のうち、一部は車検証用のデータを記憶するために使用されるが、残りの部分は本実施形態で用いるデータを記憶するために使用することができる。
【0013】
サーバ2は、コンピュータ装置であり、処理部21と、通信部22と、リーダライタ23と、記憶部24と、入力部25と、出力部26と、を備える。
【0014】
リーダライタ23は、電子車検証4のICチップ41に対して情報のリード(読み出し)とライト(書き込み)を行うことが可能な装置である。
【0015】
処理部21は、各種演算処理を行う手段であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。処理部21は、取得部211と、書込処理部212と、を備える。
【0016】
取得部211は、各種構成から各種情報を取得する。例えば、車検場Vにおいて、作業者(検査者)が自動車1を検査し、部品が正常な状態(つまり、故障、改造等をされていない状態)であると確認された場合に、取得部211は、センサ3から、その部品に関する音データを取得し、正常音データ241(正常状態データ)として記憶部24に記憶させる。
【0017】
書込処理部212は、リーダライタ23を介して、電子車検証4のICチップ41に、正常音データ、電子署名データ等(後述のデータ51~55)を書き込む。
【0018】
ここで、
図2は、実施形態の電子署名付きデータ5の概要を示すブロック図である。
図2の電子署名付きデータ5は、書込処理部212によってICチップ41に書き込まれたデータのイメージを表している。
【0019】
電子署名付きデータ5は、正常音データ51と、検査日時データ52と、車検場ID(Identifier)データ53と、作業者IDデータ54と、電子署名データ55と、を含む。
【0020】
正常音データ51は、記憶部24の正常音データ241と同様である。
検査日時データ52は、車検場Vで自動車1が検査された日時のデータである。
【0021】
車検場IDデータ53は、車検場Vの識別情報である。
作業者IDデータ54は、自動車1を検査し、部品が正常な状態であることを確認した作業者の識別情報である。
【0022】
電子署名データ55は、電子署名を行うためのデータである。電子署名は、例えば、公開鍵暗号方式で行われる。その場合、電子署名データ55には、例えば、公開鍵、ハッシュ値、タイムスタンプなどが含まれる。また、この公開鍵に対応する秘密鍵は、自動車1の記憶部12に記憶されている。
【0023】
図1に戻って、通信部22は、外部装置と通信するための通信インターフェースである。
【0024】
記憶部24は、情報を記憶する手段であって、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などから構成される。記憶部24は、例えば、正常音データ241を記憶する。
【0025】
入力部25は、情報を入力する手段であって、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなどである。
【0026】
出力部26は、情報を出力する手段であって、例えば、表示部、音声出力部などである。
【0027】
自動車1は、制御部11と、記憶部12と、表示部13と、入力部14と、センサ15と、通信部16と、リーダライタ17と、を備える。
【0028】
記憶部12は、各種情報を記憶する手段であって、例えば、ECU(Electronic Control Unit)の一部である。記憶部12は、例えば、リーダライタ17によって取得された、電子車検証4のICチップ41に記憶されている電子署名付きデータ5を記憶する。その場合、例えば、制御部11は、電子署名付きデータ5について、記憶部12に記憶されている秘密鍵によって復号化を行ってから記憶部12に記憶させる。以下、記憶部12には、電子署名付きデータ5における正常音データ51等(データ51~54)が復号化済みで記憶されているものとする。
【0029】
表示部13は、情報を表示する手段であって、例えば、タッチパネル付きの表示装置である。
【0030】
入力部14は、情報を入力する手段であって、例えば、表示部13におけるタッチパネルである。
【0031】
センサ15は、部品に関する音を検出して音データを出力するセンサであり、例えば、マイクロフォンである。
【0032】
通信部16は、外部装置と通信するための通信インターフェースである。
【0033】
リーダライタ17は、電子車検証4のICチップ41に対して情報のリードとライトを行うことが可能な装置である。
【0034】
制御部11は、各種制御(情報処理)を行う手段であって、例えば、ECUの一部である。制御部11は、異常検出部111と、表示制御部112と、を備える。
【0035】
異常検出部111は、自動車1のエンジン駆動中に、センサ15から部品に関する新たな音データを取得し、新たな音データと、記憶部12に記憶されている正常音データと、に基づいて、部品の異常を検出する。例えば、部品がマフラーの場合、故障が発生すると異音(例えば「カラカラ」という音)が発生するときがある。そのとき、正常音データと異なり、新たな音データには異音が含まれているので、異常検出部111は、それらの差異に基づいてマフラーの異常を検出する。
【0036】
異常検出の手法としては、例えば、機械学習であってもよいし、あるいは、ルールベースであってもよいし、その他の手法であってもよい。ルールベースの場合、例えば、正常音データの波形と新たな音データの波形を比較し、波形の形状(尖り具合等)や振幅値などの差異によって、異常検出を行う。
【0037】
表示制御部112は、異常検出部111によって部品の異常が検出された場合、表示部13に異常検出情報(例えば、部品名、故障の種類など)を表示させる。
【0038】
次に、
図3を参照して、実施形態の自動車部品管理システムSにおける処理について説明する。
図3は、実施形態の自動車部品管理システムSにおける処理の流れを示すシーケンス図である。
【0039】
まず、車検場Vの作業者(車検者)は、自動車1の検査を実施する。そして、部品が正常な状態であると確認された場合、ステップS1において、センサ3は、その部品に関する音データをサーバ2に送信する。これを受けて、サーバ2の取得部211は、その音データを取得し、記憶部24に正常音データ241として記憶する。
【0040】
次に、ステップS2において、サーバ2の書込処理部212は、リーダライタ23を介して、電子車検証4のICチップ41に、正常音データ51等(データ51~54)を書き込む。これを受けて、ステップS3において、電子車検証4のICチップ41は、正常音データ51等を記憶する。
【0041】
次に、ステップS4において、サーバ2の書込処理部212は、リーダライタ23を介して、電子車検証4のICチップ41に、電子署名データ55を書き込む。これを受けて、ステップS3において、電子車検証4のICチップ41は、電子署名データ55を記憶する。これにより、ICチップ41には、電子署名付きデータ5(
図2)が記憶される。
【0042】
次に、ステップS6において、電子車検証4のICチップ41は、自動車1の制御部11からの要求に応じて、電子署名付きデータ5を制御部11に送信する。これを受けて、ステップS7において、制御部11は、電子署名付きデータ5を記憶部12に記憶させる(正常音データ51等は復号化しておく)。
【0043】
次に、ステップS8において、制御部11は、センサ15にデータ送信を要求する。
【0044】
次に、ステップS9において、センサ15は、その部品に関する音を検出し、音データを制御部11に送信する。
【0045】
次に、ステップS10において、異常検出部111は、センサ15から取得した音データと、記憶部12に記憶されている正常音データ51と、に基づいて、部品の異常を検出する検出処理を実行する。
【0046】
次に、ステップS11において、異常検出部111は、部品の異常を検出したか否かを判定し、Yesの場合はステップS12に進み、Noの場合は処理を終了する。
【0047】
ステップS12において、制御部11の表示制御部112は、表示部13に異常検出情報(例えば、部品名、故障の種類など)を表示させる。これにより、自動車1に乗車しているユーザは、異常検出情報が表示されている表示部13を見ることで、その部品の異常を認識し、自動車1の走行中であれば停車させたり、自動車1の修理を手配したりなどの対応をとることができる。
【0048】
このように、本実施形態の自動車部品管理システムSによれば、以下の作用効果を奏する。まず、自動車1の部品の正常音データを含む電子署名付きデータ5を、電子車検証4のICチップ41を経由して自動車1の記憶部12に記憶させる。その後、自動車1のセンサ15から取得した音データと、記憶部12に記憶された正常音データと、に基づいて、部品の異常を検出する。
【0049】
これにより、自動車部品について高精度で異常検出をすることができる。つまり、単なる正常音データではなく、正常音データを含む電子署名付きデータ5を用いることで、正常音データが改ざんされている可能性を大幅に低減し、正常音データの信頼性を高めることができる。具体的には、例えば、電子署名付きデータ5に作業者IDデータ54が含まれていることで、正常音データを取得したときの作業者を特定できる。
【0050】
また、部品の異常を検出した場合に、運転者へ異常(故障、改造等)を知らせることで、交通事故などの問題を抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態の自動車部品管理システムSで実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録して提供することができる。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0052】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0053】
例えば、上述の実施形態では、部品の状態データとして、音データの場合を例にとったが、これに限定されない。部品の状態データは、部品の正常時と異常時で差異のあるデータであればよく、ほかに、例えば、温度データ、においデータ、振動データ、画像データなどであってもよい。
【0054】
温度データの場合、例えば、部品(冷却システムなど)の正常時と異常時の温度差で部品の異常を検出できる。
【0055】
また、においデータの場合、例えば、部品(ベルト、ホースなど)の正常時と異常時のうち、異常時にのみ異臭が含まれていることで部品の異常を検出できる。
【0056】
また、振動データの場合、例えば、部品(エンジンなど)の正常時と異常時の振動の大きさの差で部品の異常を検出できる。
【0057】
また、画像データの場合、例えば、部品(車体など)の異常時には正常時にない変形があることで、部品の異常を検出できる。
【0058】
また、部品の状態データを記憶する電子記憶媒体は、電子車検証4のICチップ41に限定されず、ICカードなどの他の電子記憶媒体であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…自動車、2…サーバ、3…センサ、4…電子車検証、5…電子署名付きデータ、11…制御部、12…記憶部、13…表示部、14…入力部、15…センサ、16…通信部、17…リーダライタ、21…処理部、22…通信部、23…リーダライタ、24…記憶部、25…入力部、26…出力部、41…ICチップ、51…正常音データ、52…検査日時データ、53…車検場IDデータ、54…作業者IDデータ、55…電子署名データ、111…異常検出部、112…表示制御部、211…取得部、212…書込処理部、V…車検場