(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012189
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】多孔質構造電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/30 20060101AFI20240118BHJP
C08J 9/28 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
G01N27/30 B
C08J9/28 102
C08J9/28 CER
C08J9/28 CEZ
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116126
(22)【出願日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】111126470
(32)【優先日】2022-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】514024712
【氏名又は名称】台湾ナノカーボンテクノロジー股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】TAIWAN CARBON NANO TECHNOLOGY CORPORATION
【住所又は居所原語表記】10F.-2, No. 66, Shengyi 5th Rd., Zhubei City, Hsinchu County, Hsinchu Science Park, Taiwam
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李 家宏
(72)【発明者】
【氏名】李 光哲
(72)【発明者】
【氏名】黄 健曜
(72)【発明者】
【氏名】蔡 群賢
(72)【発明者】
【氏名】李 庭鵑
(72)【発明者】
【氏名】蔡 群栄
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA39
4F074AC02
4F074AE04
4F074CB32
4F074CB47
4F074CC10X
4F074CC28Y
4F074CC29Y
4F074DA49
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ガス透過性及び液体不透過性を備える多孔質構造電極の製造方法を提供する。
【解決手段】ガス透過性及び液体不透過性を備える多孔質構造電極の製造方法であって、ステップ1~6を含む。ステップ1であって、親水性の触媒材料、カーボンナノチューブ材料、親水性基を有する材料及びカーボンブラック材料を混合して第1スラリーを得て、第1スラリーに対して撹拌し、ステップ2であって、第1スラリー及び乳化材料を混合して第2スラリーを得て、第2スラリーに対して撹拌し、ステップ3であって、第2スラリーに対してフィルム形成処理を行ってフィルム状材料を得て、ステップ4であって、フィルム状材料を第1温度に加熱して溶媒を除去し、ステップ5であって、ステップ3、4を少なくとも1回を繰り返し、ステップ6であって、フィルム状材料を第2温度に加熱してフィルム状材料を固化させ且つ穴を残す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス透過性及び液体不透過性を備える多孔質構造電極の製造方法であって、
親水性の触媒材料、カーボンナノチューブ材料、親水性基を有する材料及びカーボンブラック材料を混合して第1スラリーを得て、前記第1スラリーに対して撹拌し、ただし、前記カーボンナノチューブ材料の比表面積は少なくとも前記カーボンブラック材料より大きいステップ1と、
前記第1スラリー及び乳化材料を混合して第2スラリーを得て、前記第2スラリーに対して撹拌するステップ2と、
前記第2スラリーに対してフィルム形成処理を行ってフィルム状材料を得るステップ3と、
前記フィルム状材料を第1温度に加熱して溶媒を除去するステップ4と、
ステップ3、4を少なくとも1回を繰り返すステップ5と、
前記フィルム状材料を第2温度に加熱して前記フィルム状材料から液体を除去して、穴を残し、前記フィルム状材料を固化させ、ただし、前記第2温度は前記第1温度より高いステップ6とを含み、
前記第1スラリーに対する前記親水性の触媒材料の重量パーセントは50wt.%~85wt.%であり、前記第1スラリーに対する前記カーボンナノチューブ材料の重量パーセントは0.01wt.%~10wt.%であり、前記第1スラリーに対する前記親水性基を有する材料の重量パーセントは7wt.%~30wt.%であり、前記第1スラリーに対する前記カーボンブラック材料の重量パーセントは5wt.%~30wt.%であり、前記第2スラリーに対する前記乳化材料の重量パーセントは2wt.%~20wt.%である多孔質構造電極の製造方法。
【請求項2】
前記親水性の触媒材料は、触媒と水の混合物であり、前記触媒は、白金担持カーボン(Pt/C)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、二酸化イリジウム(IrO2)、二酸化ルテニウム(RuO2)、ランタンニッケル酸化物(LaNiO3)、ランタンコバルト酸化物(LaCoO3)、一酸化コバルト(CoO)、四酸化三コバルト(Co3O4)、二酸化マンガン(MnO2)、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、酸化第2鉄(Fe2O3)又はそれらの組み合わせから選ばれる請求項1に記載の多孔質構造電極の製造方法。
【請求項3】
前記親水性基を有する材料は、アルコール溶媒又はケトン溶媒であり、前記アルコール溶媒は、メチルアルコール(methyl alcohol)、エチルアルコール(ethyl alcohol)、エチレングリコール(ethylene glycol)、ジエチレングリコール(diethylene giycol)、ポリエチレングリコール(polyethylene giycol)、プロピレングリコール(propylene giycol)、グリセロール(glycerol)、n-プロピルアルコール(n-propl alcohol)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、ジアセトンアルコール(diacetone alcohol)、n-ブチルアルコール(n-butyl alcohol)、イソブチルアルコール(isobutyl alcohol)、ペンタエリトリトール(pentaerythritol)からなる群から選ばれ、前記ケトン溶媒は、アセトン(acetone)、メチルエチルケトン(methyl eehyl ketone)、ジイソブチルケトン(diisobutyl ketone)、n-メチルピロリドン(n-methylpyrrolidone)、イソホロン(isophorone)からなる群から選ばれる請求項1に記載の多孔質構造電極の製造方法。
【請求項4】
前記乳化材料は、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)エマルション、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)エマルション、ポリトリフルオロエチレン(PCTFE)エマルション、フッ素化エチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)エマルション、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)エマルション、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)エマルション、ポリウレタン(polyurethane、PU)エマルション、ポリプロピレン(PP)エマルション、ポリカーボネート(PC)エマルション、ポリスチレン(PS)エマルション、ポリメタクリル酸メチル(acrylic、PMMA)エマルション、ポリアミド(polyamide、PA)エマルション、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)エマルション、ポリ酢酸ビニル(PVAc)エマルション、シリコーンゴム(silicon rubber)エマルション、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)エマルション、スチレン(Styrene)エマルション、ポリブタジエン(PB)エマルション、塩化ビニルアクリル酸共重合体(PVC)エマルション、熱可塑性エラストマー・ポリスチレン・ブタジエン(SBS)エマルション、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)エマルション、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)エマルションからなる群から選ばれる請求項1に記載の多孔質構造電極の製造方法。
【請求項5】
前記第1温度は、25℃~200℃である請求項1に記載の多孔質構造電極の製造方法。
【請求項6】
前記第2温度は、200℃~500℃である請求項1に記載の多孔質構造電極の製造方法。
【請求項7】
前記第1スラリーは細孔形成剤を含まない請求項1に記載の多孔質構造電極の製造方法。
【請求項8】
前記第1スラリー及び前記第2スラリーの水分含有量は50wt.%より大きい請求項1に記載の多孔質構造電極の製造方法。
【請求項9】
ステップ3を行うごとに、前記第2スラリーの水分含有量は10wt.%~25wt.%低減される請求項1に記載の多孔質構造電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質構造電極の製造方法に関し、特に、ガス透過性及び液体不透過性を備える多孔質構造電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質構造を有するカーボンブラック材料は、電気化学セル、又はガスセンサーの電極(例えば、ガス拡散電極(Gas diffusion electrode))に用いられ、関連する技術は特許文献1~2又は特許文献3~7などに見られる。
【0003】
当該電極の導電率、ガス透過性及び疎水性(液体不透過性)が前記装置の性能に影響を与えるため、どのようにして当該電極の特性を高められるかは、当業者の共通の目標である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】アメリカ出願開示特許第US20200083541A1号
【特許文献2】アメリカ出願開示特許第US20200161720A1号
【特許文献3】アメリカ登録特許第US10637068B2号
【特許文献4】アメリカ登録特許第US9871255B2号
【特許文献5】アメリカ登録特許第US10355283B2号
【特許文献6】アメリカ登録特許第US9972876B2号
【特許文献7】アメリカ出願開示特許第US20090130504A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ガス透過性及び液体不透過性を備える多孔質構造電極の製造方法を提供することを目的とし、製造される多孔質構造電極は良好な導電性を備え、ガス透過性及び液体不透過性を有している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、次のステップを含むガス透過性及び液体不透過性を備える多孔質構造電極の製造方法を提供する。ステップ1であって、親水性の触媒材料、カーボンナノチューブ材料、親水性基を有する材料及びカーボンブラック材料を混合して第1スラリーを得て、当該第1スラリーに対して撹拌し、ただし、当該カーボンナノチューブ材料の比表面積は少なくとも当該カーボンブラック材料より大きく、ステップ2であって、当該第1スラリー及び乳化材料を混合して第2スラリーを得て、当該第2スラリーに対して撹拌し、ステップ3であって、当該第2スラリーに対してフィルム形成処理を行ってフィルム状材料を得て、ステップ4であって、当該フィルム状材料を第1温度に加熱して溶媒を除去し、ステップ5であって、ステップ3、4を少なくとも1回を繰り返し、ステップ6であって、当該フィルム状材料を第2温度に加熱して当該フィルム状材料から液体を除去して、穴を残し、当該フィルム状材料を固化させ、ただし、当該第2温度は当該第1温度より高く、ここで、当該第1スラリーに対する当該親水性の触媒材料の重量パーセントは50wt.%~85wt.%であり、当該第1スラリーに対する当該カーボンナノチューブ材料の重量パーセントは0.01wt.%~10wt.%であり、当該第1スラリーに対する当該親水性基を有する材料の重量パーセントは7wt.%~30wt.%であり、当該第1スラリーに対する当該カーボンブラック材料の重量パーセントは5wt.%~30wt.%であり、当該第2スラリーに対する当該乳化材料の重量パーセントは2wt.%~20wt.%である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例の第1スラリーの模式的な写真である。
【
図2】
図2は、各実験例及び比較例の各ステップにおける重量の変化である。
【
図3】
図3は、各実験例及び比較例の防水・ガス透過性試験で使用される装置の模式図である。
【
図4A】
図4Aは、各実験例及び比較例で気泡を観察した結果である。
【
図4B】
図4Bは、各実験例及び比較例で気泡を観察した結果である。
【
図4C】
図4Cは、各実験例及び比較例で気泡を観察した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書では、一部の実施例において特定の順番でステップを行うが、依然として別の合理的な順番でこれらのステップを行うことができる。異なる実施例又は例において、次に説明される一部の特徴を置き換え又は削除することができる。なお、一部の追加の操作は記載される方法より前、その途中又はその後に行われてもよく、当該方法の別の実施例では、一部の操作を置き換え又は省略してもよいということが理解できるだろう。
【0009】
特に指定がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用されるサイズ、数及び物性に係る全ての数値は、あらゆる場合において用語「約」で修飾されるものと理解されるべきである。したがって、逆の説明がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で記載されている数値パラメータはいずれも近似値であり、当業者は本明細書で開示されている内容を利用して所望の特性を得ることができ、これらの近似値を適宜変更することもできる。端点で示される数値の範囲を使用する場合、当該範囲内の全ての数値及び当該範囲内のあらゆる範囲を含み、例えば、1~5は、1、1.2、1.5、1.7、2、2.75、3、3.80、4、5などの数値を含む。
【0010】
本発明では、ガス透過性及び液体不透過性を備える多孔質構造電極の製造方法が開示され、一実施例では、当該製造方法は次のステップを含む。ステップ1であって、親水性の触媒材料、カーボンナノチューブ材料、親水性基を有する材料及びカーボンブラック材料を混合して第1スラリーを得て、当該第1スラリーに対して撹拌し、ただし、当該カーボンナノチューブ材料の比表面積は少なくとも当該カーボンブラック材料より大きく、ステップ2であって、当該第1スラリー及び乳化材料(emulsified material)を混合して第2スラリーを得て、当該第2スラリーに対して撹拌し、ステップ3であって、当該第2スラリーに対してフィルム形成処理(film forming process)を行ってフィルム状材料を得て、ステップ4であって、当該フィルム状材料を第1温度に加熱して溶媒を除去し、ステップ5であって、ステップ3、4を少なくとも1回を繰り返し、ステップ6であって、当該フィルム状材料を第2温度に加熱して当該フィルム状材料から液体を除去して、穴を残し、当該フィルム状材料を固化させ、ただし、当該第2温度は当該第1温度より高い。
【0011】
次に、当該方法をより詳細に説明する。
【0012】
ステップ1では、撹拌で当該親水性の触媒材料、当該カーボンナノチューブ材料、当該親水性基を有する材料及び当該カーボンブラック材料を混合して当該第1スラリーを得る。混合の時間は、当該第1スラリーを定常状態にするのに十分でなければならない。一例では、当該第1スラリーが定常状態にあるのは、
図1の写真に示されるとおりである。且つ一例では、当該時間は10分以内である。
【0013】
成分をみると、当該第1スラリーの総重量を100重量パーセントとすると(以下、wt.%と略す)、当該第1スラリーの総重量は、当該親水性の触媒材料、当該カーボンナノチューブ材料、当該親水性基を有する材料及び当該カーボンブラック材料の重量の合計である。
【0014】
一実施例では、当該第1スラリーに対する当該親水性の触媒材料の重量パーセントは50wt.%~85wt.%である。当該親水性の触媒材料の比率が高すぎると、スラリーは凝集物として成形できず、当該親水性の触媒材料の比率が低すぎると、電極の電気化学的特性は悪い(電流密度が低い)。
【0015】
当該第1スラリーに対する当該カーボンナノチューブ材料の重量パーセントは0.01wt.%~10wt.%である。当該カーボンナノチューブ材料の比率が高すぎると、スラリーは凝集物として成形できず、当該カーボンナノチューブ材料の比率が低すぎると,電極の電気化学的特性は悪い(電流密度が低い)。
【0016】
当該第1スラリーに対する当該親水性基を有する材料の重量パーセントは7wt.%~30wt.%である。当該親水性基を有する材料の比率が高すぎると、解乳化(demulsify)反応の進行が加速され、凝集物内の材料は他の成分と充分かつ均一に混合できず、且つ凝集物は大量の溶媒を吸着できず、当該親水性基を有する材料の比率が低すぎると、当該親水性基を有する材料は他の成分と充分かつ均一に混合できず、そのために役に立てる凝集物を生成できない。
【0017】
当該第1スラリーに対する当該カーボンブラック材料の重量パーセントは5wt.%~30wt.%であり、好ましくは7wt.%~25wt.%であり、より好ましくは10wt.%~20wt.%であり、当該カーボンナノチューブ材料の重量パーセントは0.01wt.%~10wt.%であり、好ましくは0.1wt.%~5wt.%であり、より好ましくは0.2wt.%~4wt.%である。
【0018】
本発明では、当該カーボンナノチューブ材料の比表面積は少なくとも当該カーボンブラック材料より大きくならなければならない。当該カーボンナノチューブ材料の比表面積が当該カーボンブラック材料より小さい場合、当該第1スラリーの粘度を高めることができず、且つ、後に形成された当該第2スラリーは大量の溶媒を吸着できず、また、当該フィルム形成処理後の当該フィルム状材料の溶媒保持率は高くならず、そして、最終的に製造される当該多孔質構造電極の密度は高く(空隙率が低い)、且つ電流密度は低い。一実施例では、当該カーボンナノチューブ材料の比表面積は200m2/g~3000m2/gであり、好ましくは300m2/g~3000m2/gであり、より好ましくは750m2/g~3000m2/gであり、当該カーボンブラック材料の比表面積は20m2/g~3000m2/gであり、好ましくは250m2/g~3000m2/gであり、より好ましくは700m2/g~3000m2/gである。
【0019】
当該親水性の触媒材料は少なくとも親水性の触媒と水の混合物であり、当該触媒は、白金担持カーボン(Pt/C)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、二酸化イリジウム(IrO2)、二酸化ルテニウム(RuO2)、ランタンニッケル酸化物(LaNiO3)、ランタンコバルト酸化物(LaCoO3)、一酸化コバルト(CoO)、四酸化三コバルト(Co3O4)、二酸化マンガン(MnO2)、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、酸化第2鉄(Fe2O3)又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0020】
当該親水性基を有する材料は、アルコール溶媒又はケトン溶媒であってもよく、当該アルコール溶媒は、メチルアルコール(methyl alcohol)、エチルアルコール(ethyl alcohol)、エチレングリコール(ethylene glycol)、ジエチレングリコール(diethylene giycol)、ポリエチレングリコール(polyethylene giycol)、プロピレングリコール(propylene giycol)、グリセロール(glycerol)、n-プロピルアルコール(n-propl alcohol)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、ジアセトンアルコール(diacetone alcohol)、n-ブチルアルコール(n-butyl alcohol)、イソブチルアルコール(isobutyl alcohol)、ペンタエリトリトール(pentaerythritol)又はそれらの組み合わせであってもよく、当該ケトン溶媒は、アセトン(acetone)、メチルエチルケトン(methyl eehyl ketone)、ジイソブチルケトン(diisobutyl ketone)、n-メチルピロリドン(n-methylpyrrolidone)、イソホロン(isophorone)又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0021】
当該第1スラリーが定常状態になった後、ステップ2では、当該第1スラリー及び当該乳化材料を混合して当該第2スラリーを形成させ、当該乳化材料は、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)エマルション、ポリトリフルオロエチレン(PCTFE)エマルション、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)エマルション、フッ素化エチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)エマルション、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)エマルション、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)エマルション、ポリウレタン(polyurethane、PU)エマルション、ポリプロピレン(PP)エマルション、ポリカーボネート(PC)エマルション、ポリスチレン(PS)エマルション、ポリメタクリル酸メチル(acrylic、PMMA)エマルション、ポリアミド(polyamide、PA)エマルション、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)エマルション、ポリ酢酸ビニル(PVAc)エマルション、シリコーンゴム(silicon rubber)エマルション、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)エマルション、スチレン(Styrene)エマルション、ポリブタジエン(PB)エマルション、塩化ビニルアクリル酸共重合体(PVC)エマルション、熱可塑性エラストマー・ポリスチレン・ブタジエン(SBS)エマルション、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)エマルション、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)エマルション又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0022】
当該乳化材料の比率が高すぎると、電極の電気化学的特性を悪化させ(電流密度は低い)、当該乳化材料の比率が低すぎると、スラリーは凝集物として成形できない。また、当該第1スラリーの粘度は当該乳化材料より高く、一例では、当該第1スラリーの粘度は18750cPである。
【0023】
当該第1スラリー及び当該乳化材料を混合した後、当該第2スラリーに対して撹拌する。撹拌混合のプロセスは2つの段階を含み、第1段階では、当該第1スラリーと当該乳化材料は解乳化されていない定常状態を保つ段階であり、当該第1段階の時に、スラリーは大量の溶媒を安定的に吸着し、引き続き撹拌すると第2段階に入り、当該乳化材料は最終的にスラリーにおいて解乳化し、当該第2段階の時に、スラリーの粘度は大幅に上昇し、且つスラリーはさらに大量の溶媒を吸着して、スラリーの体積は大幅に増加し、最終的には、当該第2スラリーは溶媒を吸着している凝集物として形成される。当該第2スラリーを撹拌する過程では、定常状態を保ってから(第1段階)解乳化する(第2段階)のはエマルション中の粒子及び当該第1スラリーの粒子を充分に混合させ、そして定常状態から解乳化に入る段階では、スラリー中の高い比表面積を有する溶質の表面には、大量の溶媒を吸着させるためである。ステップ2の終了後、当該凝集物は大きい体積、及び高い溶媒吸着能を備える。言い換えれば、当該凝集物には液体で高粘度の混合物が大量に、均一に吸着されていると理解することができる。
【0024】
本発明では、当該多孔質構造電極の製造材料は細孔形成剤を含まず、さらに、当該第1スラリーは細孔形成剤を含まず、且つ当該第2スラリーも細孔形成剤を含まない。細孔形成剤を添加すれば、当該多孔質構造電極には一部の当該細孔形成剤が残り、当該多孔質構造電極の本来の表面構造特性を変えてしまい、表面の疎水性を低下させてしまう他に、残った細孔形成剤が内部の導電経路に影響を与えるため、抵抗は上がり電気化学的特性は低下してしまう。
【0025】
ステップ3では、当該凝集物に対して当該フィルム形成処理を行って当該フィルム状材料を得る。当該フィルム形成処理は、ローラー装置(例えば、ローラー式ミキシングミル(Mixing Mill))及びフィルムカレンダーを用いて行うことができ、当該フィルム形成処理を経た後、当該凝集物はフィルム状材料として成形される。続いて、ステップ4では、当該フィルム状材料を当該第1温度に加熱し、一例では、当該第1温度は25℃~200℃である。さらに、場合によって、例えば、電極の所望の厚さに基づいて、ステップ3及びステップ4を少なくとも1回を繰り返してもよく、一例では、ステップ3及びステップ4を1回~20回繰り返してもよい。
【0026】
ステップ6では、当該フィルム状材料が所望の厚さになった時に、当該フィルム状材料を当該第2温度に加熱し、当該第2温度は200℃~500℃であり、当該第2温度に加熱する目的は当該フィルム状材料から液体を除去し、穴を残し、当該フィルム状材料を固化させることである。
【0027】
本発明では、高い比表面積の当該カーボンナノチューブ材料及び当該カーボンブラック材料を用いることで、当該第1スラリー及び当該第2スラリーは混合後に、水分含有量(溶媒吸着量)がいずれも50wt.%より大きくあり得る。且つステップ3(即ち、当該フィルム形成処理)を行うごとに、当該第2スラリーの水分含有量は10wt.%~25wt.%低減される。
【0028】
次に、複数の実験例(E-1、E-2)を挙げて本発明の一部の態様を説明し、これにより当業者は本発明を一層知ることができよう。以下に開示される実験例はいずれも本発明の方法を説明するためのもので、これらの実験例を本発明の範囲に対する限定として見なすことができない。また以下に、比較例(C-1、C-2、C-3、C-4)として、工程は同じであるが異なる成分で製造された多孔質構造電極を記載している。
【0029】
実験例及び比較例で触媒材料としては二酸化マンガン(MnO2)を用い、カーボンブラック材料としてはVulcan XC72Rを用い、親水性基を有する材料としては有機溶媒であるエチルアルコール(ethyl alcohol)を用い、乳化材料としては水と相溶性のあるPTFEエマルションを用いる。比較例ではいずれもカーボンナノチューブ材料を用いず、さらに、比較例-3(C-3)では、細孔形成剤としてPSボールを加え、比較例-4(C-4)ではカーボンナノファイバーを加え、カーボンナノファイバー材料としてはVGCF-Hを用いる。実験例及び比較例の詳細な成分は表1に示されるとおりである。実験例-1(E-1)では、当該第1スラリーに対する当該触媒材料(即ち当該触媒と溶媒の合計)の重量パーセントは74wt.%であり、当該第1スラリーに対する当該カーボンナノチューブ材料の重量パーセントは0.9wt.%であり、当該第1スラリーに対する当該親水性基を有する材料の重量パーセントは12.5wt.%であり、当該第1スラリーに対する当該カーボンブラック材料の重量パーセントは12.5wt.%であり、当該第2スラリーに対する当該乳化材料の重量パーセントは11wt.%である。実験例-2(E-2)では、当該第1スラリーに対する当該触媒材料(即ち当該触媒と溶媒の合計)の重量パーセントは73.3wt.%であり、当該第1スラリーに対する当該カーボンナノチューブ材料の重量パーセントは1.9wt.%であり、当該第1スラリーに対する当該親水性基を有する材料の重量パーセントは12.4wt.%であり、当該第1スラリーに対する当該カーボンブラック材料の重量パーセントは12.4wt.%であり、当該第2スラリーに対する当該乳化材料の重量パーセントは11wt.%である。
【0030】
各実験例及び比較例の各ステップでの含水又は脱水の事情を知るために、重さを計測する。且つ、各実験例及び比較例では、電流密度試験及び防水・ガス透過性試験も行う。
【0031】
図2が参照されるとおり、各実験例及び比較例の各ステップにおける重量の変化であり、
図2から分かるように、比較例-1(C-1)では水分含有量がほぼ変わらず、比較例-2(C-2)~比較例-4(C-4)では各ステップ後の水分含有量がいずれも実験例-1(E-1)及び実験例-2(E-2)より大きい。言い換えれば、実験例-1(E-1)及び実験例-2(E-2)では比較的優れた保水率を備え、即ち溶媒が高い含有量で吸着されており、こうなれば、後の焼成工程を経て、実験例-1(E-1)及び実験例-2(E-2)に大量の穴が残る。
【0032】
電流密度試験では、各実験例及び比較例の多孔質構造電極を、電気化学セルの陰極(負極)として発泡ニッケルに設置し、二酸化イリジウム(IrO2)を電気化学セルの陽極(正極)とし、電解質は水酸化カリウム(KOH)溶液であり、計測されたバルク抵抗及び電流密度を表2に示す。結果から分かるように、実験例-1(E-1)及び実験例-2(E-2)のバルク抵抗及び電流密度はいずれも比較例(C-1)-1~比較例-4(C-4)より優れている。
【0033】
図3が参照されるとおり、各実験例及び比較例の防水・ガス透過性試験で使用される装置の模式図であり、装置10は、キャビティ11と、接続配管12と、ガス供給装置13と、気圧計14とを含む。キャビティ11は円筒状であり、キャビティ11は上半空間11aと、下半空間11bとを含み、各実験例及び比較例で得た多孔質構造電極20を上半空間11aと下半空間11bとの間に置き、キャビティ11の底部開口111は接続配管12によってガス供給装置13に接続される。計測する時、ガス供給装置13はガスを下半空間11bに提供し、気圧計14を接続配管12に接続して、当該ガスの圧力を計測し、且つ、水を上半空間11aに注入する。これにより、水及びガスが多孔質構造電極20の上方及び下方を満たして、多孔質構造電極20を電気化学セル又はガスセンサーの電極に用いる時の環境をシミュレートする。水及びガスが多孔質構造電極20を通過したかどうかを観察することで、多孔質構造電極20のガス透過性及び液体不透過性を知る。
【0034】
各実験例及び比較例は、いずれも液体が多孔質構造電極20を通過しなかったため、液体不透過性が合格したのである。ガス透過性については、結果を表2に示す。実験例-1(E-1)及び実験例-2(E-2)では、気圧が約0.5kPa以下である時に気泡が見られるようになり(キャビティ11の上部開口112から観察する)、実験例-1(E-1)では、異なるガス圧力における表面の気泡については
図4Aの写真を参照できる。比較例-1(C-1)では気圧が約4kPaである時に気泡が見られるようになり、比較例-2(C-2)では、異なるガス圧力における表面の気泡については
図4Bの写真を参照できる。比較例-2(C-2)、比較例-4(C-4)では、気圧が約1kPa~2kPaである時に気泡が見られるようになり、比較例-4(C-4)では、異なるガス圧力における表面の気泡については
図4Cの写真を参照できる。比較例-3(C-3)では、気圧が増加する時に、そのまま割れてしまったのである。
【0035】
また、実験例-1(E-1)及び実験例-2(E-2)では、さらに粘度を計測し、それぞれ、15500cP、18750cPである。
【0036】
以上から分かるように、本発明の方法から得た多孔質構造電極は、良好なガス透過性及び液体不透過性を備え、且つ電気的特性として、良好な電流密度を有している。