(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121901
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】乗物用内装材
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20240902BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240902BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20240902BHJP
B32B 5/28 20060101ALI20240902BHJP
B27N 3/04 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B60R13/02 B
B32B27/00 E
B32B7/022
B32B5/28 A
B27N3/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029127
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 泰弘
【テーマコード(参考)】
2B260
3D023
4F100
【Fターム(参考)】
2B260BA07
2B260BA15
2B260BA19
2B260CD09
2B260CD10
3D023BA01
3D023BB08
3D023BC01
3D023BD03
3D023BE04
3D023BE07
4F100AJ02A
4F100AJ02B
4F100AJ02C
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK07C
4F100AK42A
4F100AK42B
4F100AK42C
4F100AK47A
4F100AK47B
4F100AK47C
4F100AK47D
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA13A
4F100BA13B
4F100BA13C
4F100DG01A
4F100DG01B
4F100DG01C
4F100DH02A
4F100DH02B
4F100DH02C
4F100EJ172
4F100EJ422
4F100GB31
4F100GB33
4F100HB00B
4F100JA04A
4F100JB16A
4F100JB16D
4F100JK01A
(57)【要約】
【課題】高い耐衝撃性を確保しながら、意匠面において天然素材独自の素材感や風合いを損ねることなく利用することができる乗物用内装材を提供する。
【解決手段】板状をなし、熱可塑性樹脂、植物性繊維、および、前記熱可塑性樹脂よりも融点が高く、かつ、前記植物性繊維より引張弾性率が高い高強力繊維を含む乗物用内装材20であって、乗物室内の意匠面21Aを構成する意匠側層22と、前記意匠側層22の乗物室外側に配された反対側層23とを備え、前記意匠側層22における前記植物性繊維の含有割合が前記反対側層よりも高く、前記反対側層23における前記高強力繊維の含有割合が前記意匠側層よりも高い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状をなし、熱可塑性樹脂、植物性繊維、および、前記熱可塑性樹脂よりも融点が高く、かつ、前記植物性繊維より引張弾性率が高い高強力繊維を含む乗物用内装材であって、
乗物室内の意匠面を構成する意匠側層と、前記意匠側層の乗物室外側に配された反対側層とを備え、
前記意匠側層における前記植物性繊維の含有割合が前記反対側層よりも高く、前記反対側層における前記高強力繊維の含有割合が前記意匠側層よりも高い、乗物用内装材。
【請求項2】
前記意匠面の反対面に熱可塑性樹脂からなる成形体が一体に設けられており、
前記反対側層は、前記反対面を構成する反対外側層と、前記反対外側層と前記意匠側層との間に位置する反対内側層とから構成されおり、
前記反対外側層は前記高強力繊維を含まない、請求項1に記載の乗物用内装材。
【請求項3】
前記反対内側層は前記植物性繊維および前記熱可塑性樹脂を含まない請求項2に記載の乗物用内装材。
【請求項4】
前記意匠面は透光性の保護層を介して視認可能とされている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の乗物用内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、乗物用内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
植物性繊維が熱可塑性樹脂により結着された構造の繊維ボードが知られている(例えば特許文献1)。この種の繊維ボードは、軽量でありながら高い剛性を備えており、車両のドアトリム等の乗物用内装材として広く使用されている。また、植物性繊維に併せて高強力繊維を混合させることで、剛性だけでなく耐衝撃性を兼ね備えた繊維含有樹脂成形体が知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-314592号公報
【特許文献2】特開2020-44747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、植物性繊維が含まれた繊維ボードの天然素材独自の素材感や風合いを、乗物用内装材の意匠として利用したいという要望がある。しかしながら、繊維ボードの耐衝撃性を向上させるべく高強力繊維を配合し、その配合割合を高めた場合、意匠面において天然素材が有する素材感や風合いが低下する場合がある。
【0005】
本明細書に開示される技術は上記事情に鑑みて達成されたものであって、高い耐衝撃性を確保しながら、意匠面において天然素材独自の素材感や風合いを損ねることなく利用することができる乗物用内装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために達成された本明細書に開示の技術は、板状をなし、熱可塑性樹脂、植物性繊維、および、前記熱可塑性樹脂よりも融点が高く、かつ、前記植物性繊維より引張弾性率が高い高強力繊維を含む乗物用内装材であって、乗物室内の意匠面を構成する意匠側層と、前記意匠側層の乗物室外側に配された反対側層とを備え、前記意匠側層における前記植物性繊維の含有割合が前記反対側層よりも高く、前記反対側層における前記高強力繊維の含有割合が前記意匠側層よりも高い。
【0007】
上記構成によれば、意匠側層において植物性繊維の含有割合を前記反対側層よりも高く設定することにより、意匠側層において剛性を確保するとともに、天然素材独自の素材感や風合いを損なわず、意匠面として利用することが可能となる。一方、反対側層において高強力繊維の含有割合を意匠側層より高く設定することにより、乗物用内装材としての耐衝撃性を確保することができる。
【0008】
前記意匠面の反対面に熱可塑性樹脂からなる成形体が一体に設けられており、前記反対側層は、前記反対面を構成する反対外側層と、前記反対外側層と前記意匠側層との間に位置する反対内側層とから構成されおり、前記反対外側層は前記高強力繊維を含まない構成としてもよい。
【0009】
上記構成によれば、乗物用内装材の板状部に対する成形体の取付強度を高めることができる。
【0010】
前記反対内側層は前記植物性繊維および前記熱可塑性樹脂を含まなくてもよい。このような構成によれば、反対外側層が高強力繊維を含まない場合でも、反対内側層を高強力繊維で構成することにより、乗物用内装材全体として耐衝撃性を確保することができる。
【0011】
前記意匠面は透光性の保護層を介して視認可能とされていてもよい。このような構成によれば、意匠側層表面の意匠性を生かしつつ、意匠側層の表面を保護することができる。
【発明の効果】
【0012】
本明細書に開示される技術によれば、高い耐衝撃性を確保しながら、意匠面において天然素材独自の素材感や風合いを損ねることなく利用することができる乗物用内装材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図4】オーナメントボードに設けられたクリップ座の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
実施形態1を
図1および
図2によって説明する。各図において、IN及びOUTの矢印は車室内(乗物室内)側及び車室外(乗物室外)側を示す場合がある。なお、本明細書に開示される技術は、下記の実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0015】
本実施形態の乗物用内装材は、
図1に示す車両用のドアトリム10である。本ドアトリム10は、車両のサイドドアの車室内側部分を構成するものであり、ドアインナパネルに対して車室内側から取り付けられるものである。本ドアトリム10は、概して矩形状をなすトリムボード11を主体として構成され、そのトリムボード11に加えて、トリムボード11上に設けられたインサイドハンドル12、アームレスト13、ドアポケット14、スピーカーグリル15等の各種機能部品を含んで構成される。
【0016】
トリムボード11は、複数のボード部材が互いに組み付けられたものであり、主として、アッパボード17、ロアボード18、オーナメントボード20、および、アームレストボード19等によって構成されている。このうちオーナメントボード20は、アッパボード17とアームレストボード19との間に配置されており、車両ドアの前後方向にわたって延在している。オーナメントボード20の表面(車室内面)は表皮材によって被覆されておらず、後述する基材21が有する素材感や風合いを意匠として生かした構成とされている。なお、オーナメントボード20以外のボード部材は、板状の基材の表面が表皮材により被覆された構成とされている。
【0017】
オーナメントボード20は、所定の厚みを有する板状の部材からなる。オーナメントボード20は、
図2に示すように、板状の基材21と、基材21の車室内面(意匠面21A)に積層された不織布からなる着色層25と、この着色層25の車室内面および基材21の車室外面(反対面の一例)21Bに積層された透明、または半透明のフィルム層(保護層の一例)26と、を備えている。フィルム層26は防水性および防臭性を有し、基材21の表面を保護するとともに、クリア塗装のような効果を奏して、基材21の意匠性を高める機能を備えている。フィルム層26を構成するフィルムとしては、例えば、ポリプロピレンーナイロンーポリプロピレンの三層フィルムを例示することができる。
【0018】
なお、着色層25およびフィルム層26は基材21の表面の凹凸に対して極薄とされており、基材21の表面の素材感や風合いを生かしつつ、基材21の表面を視認可能なものとされている。
【0019】
上述したオーナメントボード20の基材21は、植物性繊維と、高強力繊維とを含み、これらの繊維同士、または、これら繊維の一方および他方が結着材としての熱可塑性樹脂に接合されてなる。
【0020】
植物性繊維は、植物に由来する繊維である。植物性繊維としては、例えば、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、各種針葉樹(スギ及びヒノキ等)、広葉樹及び綿花等の各種植物体から得られた繊維が挙げられる。これらの植物性繊維は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。植物性繊維としては、ケナフ繊維が好ましい。ケナフは成長が極めて早い一年草であり、優れた二酸化炭素吸収性を有するため、大気中の二酸化炭素量の削減、森林資源の有効利用等に貢献できる。また、植物性繊維として用いる植物体の部位は特に限定されず、繊維を採取できればよく、非木質部、茎部、根部、葉部及び木質部等の植物体を構成するいずれの部位であってもよい。更に、特定部位のみを用いてもよく2ヶ所以上の異なる部位を併用してもよい。
【0021】
熱可塑性樹脂は、主に、バインダー樹脂として機能するものであり、種々の熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂(メタクリレート及び/又はアクリレート等を用いて得られた樹脂)、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂及びABS樹脂等が挙げられる。このうち、ポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体(エチレン・プロピレンブロック共重合体、エチレン・プロピレンランダム共重合体)等が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン及びポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル樹脂、並びに、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
高強力繊維は、上述した熱可塑性樹脂よりも融点が高く、かつ、上述した植物性繊維よりも引張弾性率が高い樹脂からなる。高強力繊維は、JIS L 1013に準じて測定される引張弾性率が、4000MPa以上であることが好ましい。高強力繊維としては、合成繊維、特に熱可塑性樹脂繊維を好適に用いることができる。具体的には、高強力繊維としては、高強力ポリエステル繊維(高強力ポリエチレンテレフタラート繊維等、PET繊維と称する)、芳香族ポリアミド繊維(メタ型アラミド繊維など)、脂肪族ポリアミド繊維(ナイロン66、ナイロン6、ナイロン46等)を例示することができる。ポリアミド繊維としては、脂肪族ポリアミド繊維よりも高耐熱性の芳香族ポリアミド繊維がより好ましい。また、基材21の生産性の観点から、一般的にポリアミド繊維より廉価なPET繊維が特に好ましい。PET繊維としては、非強化のポリエチレンテレフタラート樹脂(引張弾性率:3000~3700MPa程度)より引張弾性率が高い、エアバッグやシートベルト等にも用いられる高強力繊維を好適に用いることができる。
【0023】
ところで、植物性繊維と熱可塑性樹脂からなり剛性を有する基材に、高強力繊維を加えることで耐衝撃性を付与しようとする場合、基材中の高強力繊維の含有割合が少ないと、基材中における高強力繊維の分散状態が不均一となり易く、得られる耐衝撃性にばらつきが生じる場合がある。また、近年ますます耐衝撃性を高くしたいという要望がある。しかし、基材中の高強力繊維の含有割合が高まると、意匠面において、植物性繊維により得られる天然素材独自の素材感や風合いが低下するという問題がある。
【0024】
そこで本実施形態では、オーナメントボード20の基材21を、板厚方向において、植物性繊維、熱可塑性樹脂、および、高強力繊維の含有割合が異なる構成とした。具体的には、本実施形態の基材21は、
図2に示すように、植物性繊維、熱可塑性樹脂、および、高強力繊維の含有割合が異なる2種類の層を積層させた構成とされている。以下、2つの層のうち車室内側に配される層を意匠側層22とし、意匠側層22の車室外側に積層される層を反対側層23と称することとする。
【0025】
意匠側層22は、例えば側突時等の乗員の安全性を高めるべく割れ難さ(耐衝撃性)を確保しつつ、ドアトリム10の意匠面21Aとして良好な意匠性を備える層であって、植物性繊維の含有割合が高く、高強力繊維の含有割合が低い層とされる。意匠側層22における植物性繊維、熱可塑性樹脂、高強力繊維の含有割合は、意匠側層22全体の質量(植物性繊維、熱可塑性樹脂、および高強力繊維を合計した質量)に対し、それぞれ30~50質量%、30~55質量%、15~25質量%、合計100質量%とすることが好ましい。
【0026】
植物性繊維の含有割合が30質量%未満の場合、意匠面21Aにおいて天然素材が有する独自の素材感や風合いが低下する傾向がある。また、植物性繊維の含有割合が50質量%を超えると、高強力繊維の含有割合が低下するため、意匠側層22としての耐衝撃性が不十分となる場合がある。
【0027】
熱可塑性樹脂の含有割合が30質量%より低くなると、繊維同士の結着力が弱くなり、剛性が低下する。また、熱可塑性樹脂の含有割合が55質量%より高くなると、高強力繊維の含有割合が低下するため、意匠側層22としての耐衝撃性が不十分となる場合がある。
【0028】
また高強力繊維は、意匠面21Aの意匠性(自然素材独自の素材感や風合い)を損ねることなく意匠側層22としての耐衝撃性を確保するためには、15~25質量%とすることが好ましい。
【0029】
本実施形態における意匠側層22の具体的な一例としては、植物性繊維(ケナフ繊維)、熱可塑性樹脂(ポリプロピレン)、高強力繊維(PET繊維)の含有割合が、意匠側層22全体の質量に対し、それぞれ45質量%、40質量%、15質量%とされる。また意匠側層22の目付は、1200g/m2とされる。
【0030】
ところで、基材21全体として十分な剛性、および、耐衝撃性の両方を備えるためには、基材21全体において、植物性繊維、熱可塑性樹脂、高強力繊維の含有割合を、当該基材21全体の質量(植物性繊維、熱可塑性樹脂、および高強力繊維を合計した質量)に対し、それぞれ25~45質量%、25~50質量%、20~35質量%、合計100質量%とすることが好ましい。
【0031】
反対側層23は、上述した意匠側層22を含む基材21全体としてこのような条件を満たすように設定される層であって、高強度繊維の含有割合が意匠側層22と比較して高い層とされる。すなわち、意匠側層22と比較して耐衝撃性が高い層とされる。反対側層23における植物性繊維、熱可塑性樹脂、高強力繊維の含有割合は、反対側層23全体の質量(植物性繊維、熱可塑性樹脂、および高強力繊維を合計した質量)に対し、それぞれ5~30質量%、15~30質量%、45~75質量%、合計100質量%とすることが好ましい。特に、それぞれ10~25質量%、20~25質量%、50~70質量%、合計100質量%とすることがより好ましい。
【0032】
本実施形態における反対側層23の具体的な一例としては、植物性繊維(ケナフ繊維)、熱可塑性樹脂(ポリプロピレン)、高強力繊維(PET繊維)の含有割合が、反対側層23全体の質量に対し、それぞれ10質量%、20質量%、70質量%とされる。また、反対側層23の目付は、300g/m2とされる。
【0033】
なお、意匠側層22および反対側層23は互いに近い密度とされており、意匠側層22および反対側層23の厚さの比は、約4:1とされている。
【0034】
このような本実施形態によれば、比較的に剛性が高い意匠側層22と、比較的に耐衝撃性が高い反対側層23とにより、基材21全体として十分な剛性および耐衝撃性を備える基材21とすることができる。しかも、意匠側層22には高い含有割合で植物性繊維が含まれているから、意匠側層22が有する天然素材独自の素材感や風合いをオーナメントボード20の意匠として利用することができる。
【0035】
また、高強力繊維の含有割合が、基材21全体の高強力繊維の含有割合よりも高い反対側層23を設けたことにより、単一層で基材を構成する場合よりも少ない量の高強度繊維で、基材21全体として要求される耐衝撃性が得られるようになった。これにより、単一層で構成する場合よりも高強度繊維の全体量を低減させ、基材21の軽量化と材料コストの低減が可能となった。
【0036】
さらに、基材21(意匠側層22)の車室内面(意匠面21A)は透光性または半透光性のフィルム層26を介して視認可能とされているから、意匠側層22の表面の意匠性を生かしつつ、意匠側層22の表面を保護することができる。
【0037】
<実施形態2>
実施形態2を
図1および
図3~
図4を参照して説明する。本実施形態のオーナメントボード20の車室外面(反対面の一例)21Bには、クリップ座(成形体の一例)28が設けられている。クリップ座28は、例えば、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂によって形成され、
図4に示すように、基材21の車室外面21Bから突出する形で基材21と一体に設けられている。なお、
図4においては、着色層25およびフィルム層26の表示を省略している。
【0038】
このクリップ座28は、基材21の基となるプレボードを成形型にセットし、プレスした状態で、成形型に設けたクリップ座成形空間内に溶融樹脂を射出することで成形される。オーナメントボード20は、このクリップ座28に取り付けたクリップを介してドアインナパネル(図示せず)に対して取り付けられる構成とされている。
【0039】
ところで、クリップ座28を基材21に対して射出成形により一体に設ける場合、基材21の取付面(車室外面21B)に実施形態1で記載した高強度繊維が含まれていると、クリップ座28の基材21に対する取付強度が低下する場合がある。
【0040】
そこで本実施形態では、実施形態1で記載した反対側層23を、基材21の車室外面21Bを構成する反対外側層23Aと、この反対外側層23Aと意匠側層22との間に位置する反対内側層23Bとの2層構造とし、反対外側層23Aを、高強度繊維を含まない構成、つまり、植物性繊維および熱可塑性樹脂のみで構成した。また、耐衝撃性を確保するために、反対内側層23Bを、高強度繊維のみで構成した。
【0041】
具体的には、意匠側層22は上記実施形態1と同様であり、意匠側層22における植物性繊維、熱可塑性樹脂、高強力繊維の含有割合は、意匠側層22全体の質量(植物性繊維、熱可塑性樹脂、および高強力繊維を合計した質量)に対し、それぞれ30~50質量%、30~55質量%、15~25質量%、合計100質量%とすることが好ましい。
【0042】
本実施形態における意匠側層22の具体的な一例としては、植物性繊維(ケナフ繊維)、熱可塑性樹脂(ポリプロピレン)、高強力繊維(PET繊維)の含有割合が、意匠側層22全体の質量に対し、それぞれ45質量%、40質量%、15質量%とされる。また意匠側層22の目付は、1200g/m2とされる。
【0043】
一方、反対外側層23Aにおける植物性繊維、熱可塑性樹脂、高強力繊維の含有割合は、反対外側層23A全体の質量に対し、それぞれ45~55質量%、45~55質量%、0質量%、合計100質量%とすることが好ましい。
【0044】
また、反対内側層23Bにおける植物性繊維、熱可塑性樹脂、高強力繊維の含有割合は、反対内側層23B全体の質量に対し、それぞれ0質量%、0質量%、100質量%とすることが好ましい。
【0045】
本実施形態における反対外側層23Aの具体的な一例としては、植物性繊維(ケナフ繊維)、熱可塑性樹脂(ポリプロピレン)、高強力繊維(PET繊維)の含有割合が、反対外側層23A全体の質量に対し、それぞれ50質量%、50質量%、0質量%とされる。また、反対外側層23Aの目付は、200g/m2とされる。
【0046】
また本実施形態における反対内側層23Bの具体的な一例としては、植物性繊維(ケナフ繊維)、熱可塑性樹脂(ポリプロピレン)、高強力繊維(PET繊維)の含有割合が、反対内側層23B全体の質量に対し、それぞれ0質量%、0質量%、100質量%とされる。また、反対内側層23Bの目付は、200g/m2とされる。
【0047】
なお、意匠側層22、反対内側層23B、反対外側層23Aは互いに近い密度とされており、意匠側層22、反対内側層23B、反対外側層23Aの厚さの比は、約6:1:1とされている。
【0048】
このような本実施形態によれば、上記実施形態1と同様の作用効果に加えて、基材21の車室外面21Bにクリップ座28が一体に設けられる場合でも、反対外側層23Aが高強度繊維を含まない構成としたことにより、クリップ座28の基材21に対する取付強度を高くすることができる。
【0049】
また、反対内側層23Bを植物性繊維および熱可塑性樹脂を含まず、高強度繊維で構成したことにより、反対側層23、ひいては、基材21全体の耐衝撃性を確保することができる。
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0050】
(1)上記実施形態では、車両用内装材としてのドアトリムを例示したが、本明細書に開示される技術は車両用のドアトリムに限らず、ピラーガーニッシュ、天井材、コンソールボックス、ダッシュボード、各種インストルメントパネル、デッキトリム等、種々変更して適用することができる。
【0051】
(2)基材の目付は上記実施形態に限るものでなく、用途に応じて適宜変更することができる。
【0052】
(3)乗物用内装材は、本発明の目的を損なわない限り、繊維および熱可塑性樹脂の他の成分(例えば、着色剤、フィラー、添加剤等)を含んでもよい。
【符号の説明】
【0053】
10:ドアトリム、11:トリムボード(乗物用内装材)、20:オーナメントボード(乗物用内装材)、21:基材、21A:意匠面、21B:車室外面(反対面)、22:意匠側層、23:反対側層、23A:反対外側層、23B:反対内側層、25:着色層、26:フィルム層(保護層)、28:クリップ座(成形体)