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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121902
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】血液浄化装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
A61M1/36 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029130
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑樹
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077GG02
4C077KK19
(57)【要約】
【課題】血液浄化器における中空糸の収容容器に衝撃を与えることなく簡易な構成で、プライミング時の血液浄化器内の気泡を除去する。
【解決手段】血液浄化器と、動脈側血液回路と、静脈側血液回路と、透析液流路130と、排液流路と、ポンプと、手動絞り機構160とを備える。手動絞り機構160は、透析液流路に設けられ、プライミング時に透析液流路の流路断面積を手動で可逆的に変更することにより血液浄化器120に流入するプライミング液の圧力に抑揚を付与可能である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液浄化器と、
前記血液浄化器に接続され、前記血液浄化器に血液を流入させるための動脈側血液回路と、
前記血液浄化器に接続され、前記血液浄化器から血液を流出させるための静脈側血液回路と、
前記血液浄化器に透析液を供給する透析液流路と、
前記血液浄化器から排出された排液を流す排液流路と、
前記透析液流路に設けられ、透析液を送り出すポンプと、
前記透析液流路に設けられ、プライミング時に前記透析液流路の流路断面積を手動で可逆的に変更することにより前記血液浄化器に流入するプライミング液の圧力に抑揚を付与可能な手動絞り機構とを備える、血液浄化装置。
【請求項2】
血液浄化器と、
前記血液浄化器に接続され、前記血液浄化器に血液を流入させるための動脈側血液回路と、
前記血液浄化器に接続され、前記血液浄化器から血液を流出させるための静脈側血液回路と、
前記血液浄化器に透析液を供給する透析液流路と、
前記血液浄化器から排出された排液を流す排液流路と、
前記動脈側血液回路に設けられ、血液を送り出すポンプと、
前記動脈側血液回路に設けられ、プライミング時に前記動脈側血液回路の流路断面積を手動で可逆的に変更することにより前記血液浄化器に流入するプライミング液の圧力に抑揚を付与可能な手動絞り機構とを備える、血液浄化装置。
【請求項3】
前記手動絞り機構は、片手で把持された状態で前記抑揚を付与可能に構成されている、請求項1または2に記載の血液浄化装置。
【請求項4】
前記手動絞り機構は、片手で一緒に把持可能なグリップ部およびレバー部を含み、
前記レバー部は、前記グリップ部から離れる方向に回動するように付勢されており、
前記レバー部が前記グリップ部に向けて手動で引き付けられて回動することにより前記流路断面積が絞られ、
前記レバー部の引き付けが解除されて前記レバー部が回動して元の位置に戻ることにより、前記流路断面積の絞りが開放される、請求項3に記載の血液浄化装置。
【請求項5】
前記手動絞り機構の手動動作タイミングの目安を計測して表示する計測表示部をさらに備える、請求項4に記載の血液浄化装置。
【請求項6】
前記計測表示部は、前記手動絞り機構によって前記流路断面積が変更される位置の上流側に設けられており、該設けられた位置における前記プライミング液の圧力を計測して表示する、請求項5に記載の血液浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透析治療においては、血液浄化を行なう前に、複数の中空糸を内部に有する血液浄化器の内部に生理食塩液もしくは無菌化された透析液を循環させて血液流路および透析液流路を洗浄する工程が存在し、当該工程はプライミングと呼ばれる。プライミングの目的としては、中空糸の内側の血液流路および中空糸の外側の透析液流路の洗浄に加えて、血液流路に残留する気泡の除去がある。微細な気泡が血液流路に残留した場合、血液浄化時において気泡により血液成分が刺激されて凝固反応が促進するほか、体内に空気が入り込むことによる血管栓塞で心筋梗塞や脳卒中の原因になる場合があり、プライミングによる気泡の除去は非常に重要であることが知られている。
【0003】
透析治療において血液流路における気泡の除去は上述した通り重要であるが、透析液流路についても気泡の除去を行なうことが望ましい。その理由は、透析治療においては、中空糸を介して血液流路および透析液流路における2つの液体の層を作り出し、この2層間の濃度差によって中空糸の側面の孔を通じて物質交換させるため、中空糸の内側も外側も湿潤状態であることが好ましいからである。透析液側において気泡が残存していた場合、透析を行なう際に血液流路と透析液流路との間で気泡の体積分だけ物質交換が行なわれなくなるため、透析の効率が低下する。
【0004】
プライミング工程後に気泡排出工程を行なう装置の構成を開示した先行技術文献として、特開2019―047854号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載された装置においては、血液回路におけるプライミング液が充填された任意部位に陰圧を発生させ得る陰圧発生手段を備えており、プライミング工程後に血液回路内に残留した微小気泡を排出することが可能な制御手段を有している。また、特開2020-096876号公報(特許文献2)には、プライミング時においてバルブを定期的に動作させることにより脈動効果を生み出して気泡を除去する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019―047854号公報
【特許文献2】特開2020-096876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された装置は、プライミング工程後に陰圧発生工程を設けることで血液ポンプにより微細な気泡を血液流路から排出することが開示されているが、陰圧発生手段を制御する制御手段が必要となって構成が複雑であるとともに、プライミング時の血液浄化器内の透析液側の気泡の除去については考慮されていない。特許文献2に記載された方法では、透析液側の気泡の除去を目的として透析液ポンプを操作する方法が開示されているものの、定期的な脈動効果によるものであり、適時の圧力差を利用して空気の除去を行なうことができなかった。
【0007】
また、血液浄化器内の透析液流路は目視で確認することが可能なため、仮に血液浄化器内の透析液流路に気泡が残存していた場合、従来は、血液浄化器を傾けたり、血液浄化器を物理的に殴打して気泡を除去する「たたき出し」を行なうことで気泡の脱離を試みていた。
【0008】
しかし、高密度に複数の中空糸を内部に有する血液浄化器においては、表面張力の影響で中空糸から気泡が脱離しにくいため、強い衝撃を与えることにより気泡の脱離を試見た場合、血液浄化器における中空糸の収容容器が破損することがあった。
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、血液浄化器における中空糸の収容容器に衝撃を与えることなく簡易な構成で、プライミング時の血液浄化器内の気泡を除去可能な血液浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1局面に基づく血液浄化装置は、血液浄化器と、動脈側血液回路と、静脈側血液回路と、透析液流路と、排液流路と、ポンプと、手動絞り機構とを備える。動脈側血液回路は、血液浄化器に接続され、血液浄化器に血液を流入させるために設けられている。静脈側血液回路は、血液浄化器に接続され、血液浄化器から血液を流出させるために設けられている。透析液流路は、血液浄化器に透析液を供給する。排液流路は、血液浄化器から排出された排液を流す。ポンプは、透析液流路に設けられ、透析液を送り出す。手動絞り機構は、透析液流路に設けられ、プライミング時に透析液流路の流路断面積を手動で可逆的に変更することにより血液浄化器に流入するプライミング液の圧力に抑揚を付与可能である。
【0011】
本発明の第2局面に基づく血液浄化装置は、血液浄化器と、動脈側血液回路と、静脈側血液回路と、透析液流路と、排液流路と、ポンプと、手動絞り機構とを備える。動脈側血液回路は、血液浄化器に接続され、血液浄化器に血液を流入させるために設けられている。静脈側血液回路は、血液浄化器に接続され、血液浄化器から血液を流出させるために設けられている。透析液流路は、血液浄化器に透析液を供給する。排液流路は、血液浄化器から排出された排液を流す。ポンプは、動脈側血液回路に設けられ、血液を送り出す。手動絞り機構は、動脈側血液回路に設けられ、プライミング時に動脈側血液回路の流路断面積を手動で可逆的に変更することにより血液浄化器に流入するプライミング液の圧力に抑揚を付与可能である。
【0012】
本発明の一形態においては、手動絞り機構は、片手で把持された状態で上記抑揚を付与可能に構成されている。
【0013】
本発明の一形態においては、手動絞り機構は、片手で一緒に把持可能なグリップ部およびレバー部を含む。レバー部は、グリップ部から離れる方向に回動するように付勢されている。レバー部がグリップ部に向けて手動で引き付けられて回動することにより上記流路断面積が絞られる。レバー部の引き付けが解除されてレバー部が回動して元の位置に戻ることにより、上記流路断面積の絞りが開放される。
【0014】
本発明の一形態においては、血液浄化装置は、手動絞り機構の手動動作タイミングの目安を計測して表示する計測表示部をさらに備える。
【0015】
本発明の一形態においては、計測表示部は、手動絞り機構によって上記流路断面積が変更される位置の上流側に設けられており、この設けられた位置におけるプライミング液の圧力を計測して表示する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、血液浄化器における中空糸の収容容器に衝撃を与えることなく簡易な構成で、プライミング時の血液浄化器内の気泡を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態1に係る血液浄化装置の構成を示す回路図である。
図2】本発明の実施形態1に係る血液浄化装置が備える手動絞り機構の構成を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態1に係る血液浄化装置が備える手動絞り機構の構成を示す断面図である。
図4】本発明の実施形態1に係る血液浄化装置におけるプライミング時の血液浄化器内の透析液側の気泡を除去している状態を示す斜視図である。
図5】本発明の実施形態2に係る血液浄化装置の透析液流路に手動絞り機構を装着している状態を示す斜視図である。
図6】本発明の実施形態2に係る血液浄化装置の手動絞り機構によって透析液流路の流路面積を絞った状態を示す断面図である。
図7】本発明の実施形態3に係る血液浄化装置の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の各実施形態に係る血液浄化装置について図面を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0019】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る血液浄化装置の構成を示す回路図である。図1に示すように、本発明の実施形態1に係る血液浄化装置100は、血液浄化器120と、動脈側血液回路110と、静脈側血液回路112と、透析液流路130と、排液流路140と、血液ポンプ111と、透析液ポンプ150と、手動絞り機構160とを備える。血液浄化装置100は、計測表示部166をさらに備える。ただし、計測表示部166は、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0020】
血液浄化器120は、たとえば中空糸膜からなる半透膜125を内部に含んでいる。血液浄化器120は、血液入口121および血液出口122を有している。血液入口121には、動脈側血液回路110が接続されている。血液出口122には、静脈側血液回路112が接続されている。
【0021】
血液浄化器120は、透析液入口123および排液出口124をさらに有している。透析液入口123には、透析液流路130が接続されている。排液出口124には、排液流路151が接続されている。
【0022】
動脈側血液回路110は、血液浄化器120に血液を流入させるために設けられている。動脈側血液回路110には、血液を送り出す血液ポンプ111が設けられている。静脈側血液回路112は、血液浄化器120から血液を流出させるために設けられている。
【0023】
動脈側血液回路110、静脈側血液回路112、透析液流路130および排液流路140の各々は、チューブであり、ポリ塩化ビニルなどからなる。
【0024】
透析液流路130を流れた透析液は、血液浄化器120内に供給される。透析液ポンプ150は、透析液流路130に設けられ、透析液流路130内の透析液を送り出す。排液流路140は、血液浄化器120から排出された排液を流す。
【0025】
図2は、本発明の実施形態1に係る血液浄化装置が備える手動絞り機構の構成を示す斜視図である。図3は、本発明の実施形態1に係る血液浄化装置が備える手動絞り機構の構成を示す断面図である。
【0026】
図2および図3に示すように、手動絞り機構160は、透析液流路130に設けられている。手動絞り機構160は、筒状部161と、グリップ部162と、レバー部163と、回動軸163aと、弁部164と、接続部165とを含む。
【0027】
筒状部161は、筒状の形状を有し、両端が透析液流路130と接続されることにより、筒状部161の内部が透析液流路となる。筒状部161の両端の各々と透析液流路130とは、接続部165によって液密に接続されている。接続部165の構成は特に限定されない。
【0028】
グリップ部162は、把持可能な形状を有し、筒状部161の外周面から延出している。グリップ部162の根元部の近傍に、グリップ部162の延出方向と直交する方向に延在するように回動軸163aが接続されている。
【0029】
レバー部163は、グリップ部162の根元部からグリップ部162との間隔が次第に大きくなるように延出している。レバー部163は、回動軸163aを中心に回動可能に設けられている。レバー部163は、グリップ部162から離れる方向に回動するように図示しないばねなどの付勢手段によって付勢されている。
【0030】
弁部164は、筒状部161の内部に配置され、レバー部163の根元部と接続されていることにより、レバー部163の回動に伴って回動軸163aを中心に回動可能である。弁部164は、レバー部163の延出方向に対して略反対方向に延出している。
【0031】
グリップ部162およびレバー部163は、片手で一緒に把持可能に構成されている。たとえば、人差し指と中指とをレバー部163にかけるようにして、他の指と手のひらでグリップ部162を支えることにより、片手で一緒に把持可能である。レバー部163がグリップ部162に向けて手動で引き付けられて回動することにより、弁部164が筒状部161の内部を閉塞するように位置して、筒状部161の内部の透析液流路の流路断面積が絞られる。なお、弁部164によって筒状部161の内部が完全に閉塞可能な構成であってもよいし、弁部164によって筒状部161の内部を完全には閉塞できない構成であってもよい。
【0032】
レバー部163の引き付けが解除されてレバー部163が回動して元の位置に戻ることにより、筒状部161の内部の透析液流路の流路断面積の絞りが開放される。このように、レバー部163の引き付け状態に応じて、弁部164が回動軸163aを中心に回動することにより、筒状部161の内部の透析液流路の流路断面積を可逆的に変更可能である。
【0033】
すなわち、手動絞り機構160は、透析液流路の流路断面積を手動で可逆的に変更可能である。プライミング時に、手動絞り機構160が透析液流路130の流路断面積を手動で可逆的に変更することにより血液浄化器120に流入するプライミング液の圧力に抑揚を付与可能である。プライミング液としては、透析液であってもよいし、生理食塩液でもよい。
【0034】
具体的には、レバー部163が引き付けられて弁部164によって透析液流路の流路断面積が絞られることにより、透析液流路における弁部164の上流側におけるプライミング液の圧力が上昇し、レバー部163の引き付けが解除されて透析液流路の流路断面積の絞りが開放されることにより、上昇していたプライミング液の圧力が元の圧力に戻る。このように、レバー部163を繰り返し操作することにより、血液浄化器120に流入するプライミング液の圧力の上昇と下降とを繰り返させて抑揚を付与することができる。
【0035】
計測表示部166は、筒状部161の外周面におけるグリップ部162とは反対側の位置に固定されている。本実施形態においては、計測表示部166は、圧力計である。計測表示部166は、透析液流路における、手動絞り機構160によって流路断面積が変更される位置の上流側に設けられ、透析液流路内の圧力を計測して表示する。すなわち、計測表示部166は、透析液流路における弁部164が位置する位置より上流側に配置され、当該配置場所における筒状部161の内部のプライミング液の圧力を計測して表示する。
【0036】
なお、計測表示部166は、圧力計に限られず、たとえば、手動絞り機構160による透析液流路の流路断面積の絞り開始時からの経過時間を計測して表示するタイマーであってもよい。
【0037】
図4は、本発明の実施形態1に係る血液浄化装置におけるプライミング時の血液浄化器内の透析液側の気泡を除去している状態を示す斜視図である。図4に示すように、本発明の実施形態1に係る血液浄化装置100においては、手動絞り機構160は、片手で把持された状態で上記抑揚を付与可能に構成されている。プライミング時に、他方の片手で血液浄化器120を握って傾けた状態で振りつつ、レバー部163の引き付けと引き付けの解除とを繰り返すことにより、血液浄化器120に流入するプライミング液の圧力に抑揚を付与し、血液浄化器内の透析液側の気泡Gを除去することができる。また、弁部164の開閉機構が直接的にレバー部163によって制御されるため、弁部164とレバー部163とが分離した間接的な形態よりも感覚的に圧力の抑揚を調節可能であり、気泡Gの除去を効果的に行なうことができる。
【0038】
また、計測表示部166の表示を確認しつつ、レバー部163の動作タイミングを計ることができる。具体的には、レバー部163を引き付けた後、計測表示部166が計測したプライミング液の圧力が上側閾値を超えたときに、レバー部163の引き付けを解除し、計測表示部166が計測したプライミング液の圧力が下側閾値を下回ったときに、レバー部163を引き付けることにより、血液浄化器120に流入するプライミング液の圧力に効果的な抑揚を付与して、血液浄化器120内の透析液側の気泡Gを効率よく除去可能である。
【0039】
このように、計測表示部166は、手動絞り機構160の手動動作タイミングの目安を計測して表示する。なお、手動絞り機構160がタイマーである場合は、レバー部163を引き付けた時点から一定時間経過時点でレバー部163の引き付けを解除し、レバー部163の引き付けを解除した時点から一定時間経過時点でレバー部163を引き付けることにより、血液浄化器120に流入するプライミング液の圧力に効果的な抑揚を付与して、血液浄化器内の透析液側の気泡Gを効率よく除去可能である。
【0040】
本実施形態に係る血液浄化装置100は、手動絞り機構160によって血液浄化器120内の透析液側の気泡Gを効率よく除去することができるため、従来行なわれていた血液浄化器を物理的に殴打して気泡を除去する「たたき出し」を行なう必要がない。そのため、プライミング時に血液浄化器120を破損するリスクを低減することができる。
【0041】
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2に係る血液浄化装置について図面を参照して説明する。なお、本発明の実施形態2に係る血液浄化装置は、手動絞り機構の構成が、本発明の実施形態1に係る血液浄化装置100と異なるため、本発明の実施形態1に係る血液浄化装置100と同様の構成については同一の参照符号を付してその説明を繰り返さない。
【0042】
図5は、本発明の実施形態2に係る血液浄化装置の透析液流路に手動絞り機構を装着している状態を示す斜視図である。図6は、本発明の実施形態2に係る血液浄化装置の手動絞り機構によって透析液流路の流路面積を絞った状態を示す断面図である。
【0043】
図5および図6に示すように、本発明の実施形態2に係る血液浄化装置における手動絞り機構260は、透析液流路130に設けられている。手動絞り機構260は、半筒状部261と、グリップ部162と、レバー部163と、回動軸163aと、押圧部264と、開閉部265とを含む。
【0044】
半筒状部261は、半筒状の形状を有し、半筒状の開閉部265が開閉可能に取り付けられている。半筒状部261は、閉じた状態の開閉部265とともに筒状の形状をなし、透析液流路130であるチューブに装着可能に構成されている。半筒状部261の内周面に、凸部261pが形成されている。
【0045】
押圧部264は、凸部261pとともに透析液流路130であるチューブを押圧可能な位置に配置され、レバー部163の根元部と接続されていることにより、レバー部163の回動に伴って回動軸163aを中心に回動可能である。押圧部264は、レバー部163の延出方向に対して略反対方向に延出している。
【0046】
レバー部163がグリップ部162に向けて手動で引き付けられて回動することにより、押圧部264が透析液流路130であるチューブを凸部261pとともに閉塞するように位置して、透析液流路130の流路断面積が絞られる。なお、押圧部264によって透析液流路130であるチューブが完全に閉塞可能な構成であってもよいし、押圧部264によって透析液流路130であるチューブを完全には閉塞できない構成であってもよい。
【0047】
レバー部163の引き付けが解除されてレバー部163が回動して元の位置に戻ることにより、透析液流路130であるチューブの流路断面積の絞りが開放される。このように、レバー部163の引き付け状態に応じて、押圧部264が回動軸163aを中心に回動することにより、透析液流路130であるチューブの流路断面積を可逆的に変更可能である。
【0048】
すなわち、手動絞り機構260は、透析液流路130の流路断面積を手動で可逆的に変更可能である。プライミング時に、手動絞り機構260が透析液流路130の流路断面積を手動で可逆的に変更することにより血液浄化器120に流入するプライミング液の圧力に抑揚を付与可能である。
【0049】
本発明の実施形態2に係る血液浄化装置においても、手動絞り機構260によってプライミング時の血液浄化器120内の透析液側の気泡を除去することができる。
【0050】
実施形態1,2においては、手動絞り機構160,260が片手で把持可能に構成されている場合について説明したが、片手ではなく両手で把持してもよい。この場合、血液浄化器120を血液浄化装置100付近に存在するスタンドなどに固定した状態、または血液浄化器120を平板上に載置した状態で、手動絞り機構160,260を操作する必要があるが、両手で強くレバー部163を握りこむことが可能となり、透析液流路130において安定して圧力の高い状態を作り出すことができ、圧力の抑揚により気泡を効率よく除去可能である。
【0051】
実施形態1,2においては、弁部164または押圧部264がレバー部163の略反対方向に延出している場合について説明したが、弁部164または押圧部264は流路の断面積を手動で可逆的に変更可能であればこの形態に限られない。つまり、弁部164または押圧部264は、必ずしもレバー部163の略反対方向に延出している必要はない。たとえばレバー部163を回動した際に、筒状部161の内部または半筒状部261内の透析液流路130における透析液の流れる方向に対して略垂直に、弁部164または押圧部264が位置するように設けられていてもよい。
【0052】
実施形態1,2においては、レバー部163を引き付けてない状態でも流路が透析液流路130のみを設けた場合よりも流路が狭くなっている場合について説明したが、レバー部163を引き付けてない状態では流路を妨げないように構成されていてもよい。この場合、たとえば、レバー部163を引き付けてない状態とレバー部163を引き付けて最大まで透析液流路130が絞られた状態との圧力差を大きくできるため、より気泡の脱離を効率的に行なうことができる。
【0053】
実施形態2において、半筒状の開閉部265を有する半筒状部261を説明したが、開閉するためのヒンジおよびチューブを装着した後に固定する形態は特に限定されない。さらに、半筒状部261は半筒状に変えて略円筒状の形態でもよく、半筒状の開閉部265がない形態であってもよい。たとえば、特に軟質なチューブである透析液流路130を手動絞り機構260にはめ込みが可能な、縦断面視C字状の形状であってもよい。
【0054】
実施形態1,2においては、レバー部163と弁部164とが一体化されている形態を説明したが、必ずしも一体でなくてもよく、レバー部163に該当する部材による操作と略同時に弁部164が動作する形態であれば構成は制限されない。たとえば、レバー部163と弁部164とが、部材としては分離されているが電気的に接続されており、レバー部163の操作による電気信号が弁部164を動作させるための機構に送信されることにより、当該弁部164を動作させるための機構が弁部164を動作させて、流路断面積を調節する形態であってもよい。
【0055】
(実施形態3)
以下、本発明の実施形態3に係る血液浄化装置について図面を参照して説明する。なお、本発明の実施形態3に係る血液浄化装置は、手動絞り機構が血液回路に設けられている点が、本発明の実施形態2に係る血液浄化装置と異なるため、本発明の実施形態2に係る血液浄化装置と同様の構成については同一の参照符号を付してその説明を繰り返さない。
【0056】
図7は、本発明の実施形態3に係る血液浄化装置の構成を示す回路図である。図7に示すように、本発明の実施形態3に係る血液浄化装置300は、血液浄化器120と、動脈側血液回路110と、静脈側血液回路112と、透析液流路130と、排液流路140と、血液ポンプ111と、透析液ポンプ150と、手動絞り機構260とを備える。
【0057】
本発明の実施形態3に係る血液浄化装置300においては、手動絞り機構260は、動脈側血液回路110に設けられ、プライミング時に動脈側血液回路110の流路断面積を手動で可逆的に変更することにより血液浄化器120に流入するプライミング液の圧力に抑揚を付与可能である。
【0058】
本発明の実施形態3に係る血液浄化装置300においては、血液浄化器120における中空糸の収容容器に衝撃を与えることなく簡易な構成で、プライミング時の血液浄化器120内の血液側の気泡を除去することができる。
【0059】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。実施形態1~3において、互いに組み合わせ可能な構成は、互いに組み合わされていてもよい。
【符号の説明】
【0060】
100,300 血液浄化装置、110 動脈側血液回路、111 血液ポンプ、112 静脈側血液回路、120 血液浄化器、121 血液入口、122 血液出口、123 透析液入口、124 排液出口、125 半透膜、130 透析液流路、140,151 排液流路、150 透析液ポンプ、160,260 手動絞り機構、161 筒状部、162 グリップ部、163 レバー部、163a 回動軸、164 弁部、165 接続部、166 計測表示部、261 半筒状部、261p 凸部、264 押圧部、265 開閉部、G 気泡。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7