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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121919
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】気体流量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/00 20220101AFI20240902BHJP
   G01F 1/69 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
G01F1/00 T
G01F1/00 Y
G01F1/69 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029155
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】呉 哲庸
(72)【発明者】
【氏名】川口 泰範
【テーマコード(参考)】
2F030
2F035
【Fターム(参考)】
2F030CB02
2F030CC11
2F030CD17
2F030CE04
2F030CE09
2F030CE17
2F035EA00
(57)【要約】
【課題】シャットオフバルブや表示部等の機能要素を気体流量計に設ける場合に、気体流量計が気体の流れ方向に大型化するのを回避して気体流量計の設置自由度を向上させる。
【解決手段】気体流量計1は、配管20に配置され、流れ方向と交差する所定方向に駆動されることにより流路を開閉する弁40と、配管20を流通する気体の流量に応じた測定信号を生成する流量測定素子30と、流量測定素子30により生成された測定信号に基づいて気体の流量を決定する流量決定部52と、配管20と弁40との側方に設けられ、流量決定部52により決定された流量に関する情報を表示する表示部61とを備えている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体の流れ方向の両端に接続口が形成され、気体の流路を形成する配管と、
前記配管に配置され、前記流れ方向と交差する所定方向に駆動体により駆動されることにより前記流路を開閉する弁と、
前記配管を流通する気体の流量に応じた測定信号を生成する流量測定素子と、
前記流量測定素子により生成された測定信号に基づいて気体の流量を決定する流量決定部と、
前記配管と前記弁との側方に設けられ、前記流量決定部により決定された流量に関する情報を表示する表示部と、
前記流量決定部により決定された流量または外部入力に基づいて前記駆動体を制御する弁制御部と、を備える気体流量計。
【請求項2】
請求項1に記載の気体流量計において、
前記配管及び前記弁と、前記表示部とが並ぶ方向に沿って見たとき、前記表示部の一部と前記配管とが重複するように配置されている、気体流量計。
【請求項3】
請求項2に記載の気体流量計において、
前記表示部の前記所定方向の寸法は、前記配管の前記所定方向の寸法よりも長く設定され、
前記配管及び前記弁と、前記表示部とが並ぶ方向に沿って見たとき、前記表示部の上下方向中間部と前記配管とが重複するように配置されている、気体流量計。
【請求項4】
請求項1に記載の気体流量計において、
ユーザによって操作される操作部をさらに備え、
前記操作部と前記表示部とは、前記所定方向に並ぶように設けられている、気体流量計。
【請求項5】
請求項1に記載の気体流量計において、
前記配管及び前記弁と、前記表示部とが並ぶ方向と同方向に前記流量測定素子と、前記表示部とが並んでいる、気体流量計。
【請求項6】
請求項1に記載の気体流量計において、
前記弁が開であって、気体のリーク状態において、前記流量測定素子により生成する測定信号に基づく流量をリーク流量として決定するリーク量決定部をさらに備え、
前記弁制御部は、前記弁が開である時に前記リーク量決定部によって決定された瞬間流量値が所定の間、リーク判定閾値を下回った場合に、前記弁を閉にするように前記駆動体を制御する、気体流量計。
【請求項7】
請求項1に記載の気体流量計において、
前記弁はパイロット式である、気体流量計。
【請求項8】
請求項7に記載の気体流量計において、
前記駆動体はキープソレノイドを有している、気体流量計。
【請求項9】
請求項8に記載の気体流量計において、
前記キープソレノイドが組み込まれたソレノイドモジュールを備えており、
前記ソレノイドモジュールは、前記配管を挟んで前記弁と反対側に設けられている、気体流量計。
【請求項10】
請求項9に記載の気体流量計において、
前記ソレノイドモジュールには、前記キープソレノイドによって操作されるパイロット弁が組み込まれている、気体流量計。
【請求項11】
請求項10に記載の気体流量計において、
前記駆動体はパイロット弁を外部から操作可能な操作レバーを有している、気体流量計。
【請求項12】
請求項9に記載の気体流量計において、
前記配管、前記流量測定素子及び前記表示部を有する本体部をさらに備え、
前記ソレノイドモジュールは、前記本体部に対して着脱自在に取り付けられている、気体流量計。
【請求項13】
請求項1に記載の気体流量計において、
前記配管内における前記弁よりも前記流れ方向下流に配置される整流板をさらに備え、
前記流量測定素子は、前記配管における前記整流板よりも前記流れ方向下流に配置され、前記整流板を通過した気体の流量に応じた測定信号を生成する、気体流量計。
【請求項14】
請求項1に記載の気体流量計において、
前記流量測定素子は、直列に接続され、温度に応じた抵抗値を示す複数の測温抵抗体を含み、
前記気体流量計は、
前記複数の測温抵抗体と直列に接続され、抵抗値の基準となる基準抵抗体と、
前記複数の測温抵抗体の両端及び前記基準抵抗体の両端の各々に接続される各差動回路と、をさらに備え、
前記流量決定部は、前記各差動回路を介して得られる、前記複数の測温抵抗体により生成された測定信号と、前記基準抵抗体により生成された基準信号とに基づいて気体の流量を決定する、気体流量計。
【請求項15】
請求項1に記載の気体流量計において、
前記流量測定素子は、2つの超音波素子を含み、
前記気体流量計は、前記配管を通過する気体の圧力に応じた圧力信号を生成する圧力測定素子をさらに備え、
前記流量決定部は、前記2つの超音波素子により生成された測定信号と、前記圧力測定素子により生成された圧力信号とに基づいて気体の質量流量を決定する、気体流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、気体の流量を測定可能な気体流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば各種製品を製造する製造現場では空圧機器が使用されている。一般的に、空圧機器には圧縮空気が供給される配管が接続されており、この配管には、圧縮空気の供給源が接続されている。
【0003】
特許文献1には、空圧機器の不使用期間中に測定した流量をリーク量として取得し、取得したリーク量に基づいて空圧機器の使用期間中及び不使用期間中のリーク積算量をそれぞれ算出可能に構成された気体流量計が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-109358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、世界的にカーボンニュートラルに向けた取り組みが活発化しており、エネルギー消費量を把握して削減し、その結果を確認することの要求が高まっている。製造現場で使用される圧縮空気は、製造現場における全エネルギー消費量の大きな割合を占めており、この圧縮空気のリークを削減することで、エネルギー消費量の削減が可能になる。
【0006】
そこで、気体流量計にシャットオフバルブを設けておき、外部からの信号入力または流量閾値による制御によって空圧機器の不使用期間中にシャットオフバルブを閉に切り替えることでリーク量を削減することが考えられる。また、気体流量計では、測定した流量を表示する表示部を設ける必要がある。
【0007】
つまり、シャットオフバルブや表示部等の機能要素を気体流量計に設ける必要があるが、複数の機能要素を流量測定素子等と一体的に設けようとすると、気体の流れ方向に大型化してしまうおそれがある。気体流量計が気体の流れ方向に大型化すると、気体流量計の設置が制限される場面が生じることがあるので、気体の流れ方向の大型化はできるだけ回避したい。
【0008】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、シャットオフバルブや表示部等の機能要素を気体流量計に設ける場合に、気体流量計が気体の流れ方向に大型化するのを回避して気体流量計の設置自由度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本態様に係る気体流量計は、気体の流れ方向の両端に接続口が形成され、気体の流路を形成する配管と、前記配管に配置され、前記流れ方向と交差する所定方向に駆動体により駆動されることにより前記流路を開閉する弁と、前記配管を流通する気体の流量に応じた測定信号を生成する流量測定素子と、前記流量測定素子により生成された測定信号に基づいて気体の流量を決定する流量決定部と、前記配管と前記弁との側方に設けられ、前記流量決定部により決定された流量に関する情報を表示する表示部と、前記流量決定部により決定された流量または外部入力に基づいて前記駆動体を制御する弁制御部とを備えている。また、例えば、前記配管内における前記弁よりも前記流れ方向下流に配置される整流板をそなえていてもよく、この場合、前記流量測定素子は、前記整流板よりも下流に設けることができる。
【0010】
この構成によれば、配管の流路を流れる気体が整流板によって整流されてから流量測定素子に到達するので、流量測定素子による測定精度が向上する。一方、弁を駆動体によって駆動して流路を閉じることで、例えば気体のリーク量を削減することができ、エネルギー消費量の削減が可能になる。この弁が気体の流れ方向と交差する方向に駆動されるものなので、弁を設けることによって気体流量計が気体の流れ方向に大型化することはない。また、流量測定素子により生成された測定信号に基づいて決定された流量に関する情報は表示部に表示されることになるが、この表示部は、配管と弁との側方に設けられているので、表示部を設けることによって気体流量計が気体の流れ方向に大型化することはない。
【0011】
要するに、シャットオフバルブとなる弁及び流量に関する情報を表示する表示部を設けて機能を充実させる場合に、気体流量計が気体の流れ方向に大型化してしまうのを回避できる。
【0012】
前記配管及び前記弁と、前記表示部とが並ぶ方向に沿って見たとき、前記表示部の一部と前記配管とが重複するように配置されていてもよい。
【0013】
前記表示部の前記所定方向の寸法を前記配管の前記所定方向の寸法よりも長く設定することで、表示部の表示面積を広く確保することができる。この場合、前記配管及び前記弁と、前記表示部とが並ぶ方向に沿って見たとき、前記表示部の上下方向中間部と前記配管とが重複するように配置されていてもよい。
【0014】
気体流量計は、ユーザによって操作される操作部をさらに備えていてもよい。この場合、前記操作部と前記表示部とは、前記所定方向に並ぶように設けることができる。これにより、気体の流れ方向の大型化を回避できる。
【0015】
前記配管及び前記弁と、前記表示部とが並ぶ方向と同方向に前記流量測定素子と、前記表示部とが並んでいてもよい。
【0016】
気体流量計は、前記弁が開であって、気体のリーク状態において、前記流量測定素子により生成する測定信号に基づく流量をリーク流量として決定するリーク量決定部をさらに備えていてもよい。前記弁制御部は、前記弁が開である時に前記リーク量決定部によって決定された瞬間流量値が所定の間、リーク判定閾値を下回った場合に、前記弁を閉にするように前記駆動体を制御することができる。
【0017】
前記弁はパイロット式であってもよい。この弁を駆動するための前記駆動体はキープソレノイドを有していてもよい。キープソレノイドを用いることで、弁を駆動するときにのみ電流を供給すればよいので、消費電力を少なくすることができる。
【0018】
前記気体流量計は、前記キープソレノイドが組み込まれたソレノイドモジュールを備えていてもよい。前記ソレノイドモジュールは、前記配管を挟んで前記弁と反対側に設けることができ、これにより、気体の流れ方向の大型化を回避できる。
【0019】
また、前記ソレノイドモジュールには、前記キープソレノイドによって操作されるパイロット弁が組み込まれていてもよい。また、前記駆動体はパイロット弁を外部から操作可能な操作レバーを有していてもよい。これにより、キープソレノイドによらず、ユーザが任意のタイミングでパイロット弁を操作することが可能になる。
【0020】
気体流量計は、前記配管、前記整流板、前記流量測定素子及び前記表示部を有する本体部をさらに備えていてもよい。この場合、前記ソレノイドモジュールは、前記本体部に対して着脱自在に取り付けることができる。これにより、例えばキープソレノイドが故障した場合に、ソレノイドモジュールのみを交換して修理することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、気体の流れ方向と交差する方向に駆動される弁を設けてリーク量を削減可能にするとともに、配管と弁との側方に表示部を設けて流量に関する情報を表示可能にする場合に、気体流量計の気体の流れ方向の大型化を回避して設置自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る気体流量計を単独で運用する場合を示す図である。
図2】気体流量計を電力モニタと接続して運用する場合を示す図である。
図3】気体流量計を電力モニタ及びパーソナルコンピュータと接続して運用する場合を示す図である。
図4】気体流量計の正面図である。
図5】弁が開いている気体流量計の縦断面図である。
図6】弁が閉じている気体流量計の縦断面図である。
図7】気体流量計のブロック図である。
図8】ソレノイドモジュールの斜視図である。
図9】FIG.9Aはパイロット弁が閉じているソレノイドモジュールの断面図であり、FIG.9Bはパイロット弁が開いているソレノイドモジュールの断面図である。
図10】整流板及び流量測定素子の取付構造を示す斜視図である。
図11】温湿度計の配設構造を示す断面図である。
図12】リーク防止量の演算処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る気体流量計1の使用状態を示す図である。気体流量計1は、各種製品を製造する製造装置(図示せず)で使用される気体の流量を測定する機器である。製造装置には、圧縮空気(気体の一例)を使用するエアブロー装置、エアシリンダー装置、吸着搬送装置、着座装置等が設けられており、これらは流体機器の一種である空圧機器と呼ぶことができ、1台の製造装置に一または複数の空圧機器が設けられることがある。1台の製造装置に1台の気体流量計1が設置され、1台の製造装置で使用される圧縮空気の流量を測定する。空圧機器が一つだけ設けられている製造装置の場合は、当該一の空圧機器で使用される圧縮空気の流量が気体流量計1によって測定され、また、空圧機器が複数設けられている製造装置の場合は、当該複数の空圧機器で使用される圧縮空気の合計の流量が気体流量計1によって測定されることになる。1台の気体流量計1によって複数の製造装置で使用される圧縮空気の流量を測定してもよく、気体流量計1の使用形態は特に限定されるものではない。
【0025】
圧縮空気は、コンプレッサ及びドライヤを用いて得られるものであり、コンプレッサ及びドライヤを作動させるのに電力が必要であることから、圧縮空気を消費するということは電力を消費するのと同様に、エネルギーを消費することになる。
【0026】
気体流量計1は、製造装置の空圧機器に接続されるエア供給管100に接続されて使用される。図1では気体流量計1を単体で運用する場合を示している。気体流量計1を単体で運用する場合、電源供給部101と気体流量計1とを接続線102によって接続する。気体流量計1を作動させるための電力が電源供給部101から供給される。また、電源供給部101からは制御信号が出力される。電源供給部101から出力された制御信号は、接続線102を介して気体流量計1に入力される。この場合、測定された流量は、逐次、気体流量計1内に記憶される。尚、測定された流量を外部に送信してもよい。
【0027】
また、図2に示すように、気体流量計1は、電力モニタ110と接続して運用することもできる。すなわち、製造装置では、圧縮空気以外にも電力が消費される場合があり、電力モニタ110は、製造装置で消費された電力量を検出する機器である。気体流量計1と電力モニタ110とは、通信線111によって接続される。電力モニタ110で検出された電力量に関する情報は、通信線111を介して気体流量計1に送信される。電力モニタ110を作動させるための電力は、通信線111を介して気体流量計1から送られる。この場合、測定された流量、電力モニタ110で検出された電力量は、逐次、気体流量計1内に記憶される。尚、測定された流量、電力モニタ110で検出された電力量を外部に送信してもよい。
【0028】
また、図3に示すように、気体流量計1は、電力モニタ110及びパーソナルコンピュータ120(以下、PC120という)と接続して運用することもできる。この場合、イーサネット(Ethernet)モジュール121を、気体流量計1と、電力モニタ110及びPC120との間に介在させて複数の通信線122により、気体流量計1と、電力モニタ110及びPC120とを通信可能に接続する。この場合、測定された流量、電力モニタ110で検出された電力量は、逐次、PC120に記憶させることが可能である。
【0029】
図4は、気体流量計1を正面から見た図である。図5は、弁40が開いているときの気体流量計1の縦断面図であり、図6は、弁40が閉じているときの気体流量計1の縦断面図である。また、図7は、気体流量計1のブロック図である。
【0030】
図4に示すように、気体流量計1は、上下方向に長い筐体10を備えている。この実施形態の説明では、図4及び図5の左側を気体流量計1の左側といい、図4及び図5の右側を気体流量計1の右側というものとする。また、気体流量計1の正面を前面、気体流量計1の背面を後面といい、気体流量計1の前後方向をこのように定義する。この方向の定義は、実施形態の説明を容易にするためのものであり、気体流量計1の使用時の方向を限定するものではない。
【0031】
圧縮空気は、矢印A方向(図4の左側から右側へ向かう方向)に流れている。図5に示すように、気体流量計1は、圧縮空気の流路を形成する配管20と、配管20における圧縮空気の流量に応じた測定信号を生成する流量測定素子30と、配管20を通過する圧縮空気の圧力に応じた圧力信号を生成する圧力測定素子31と、配管20を通過する圧縮空気の温度及び湿度を測定する温湿度計32とを備えている。
【0032】
配管20は、筐体10の上下方向中間部において左右方向に延びている。従って、配管20の管軸線は左右方向に延びることになり、気体流量計1が設置されている状態では、配管20の管軸線が水平になっていることがある。一方、配管20の径方向は管軸線と直交することになり、例えば上下方向、前後方向が配管20の径方向となる。配管20の左端(上流端)には第1接続口20Aが形成され、配管20の右端(下流端)には第2接続口20Bが形成されている。第1接続口20Aは、筐体10の左側面から外部に開放されていて、上流側のエア供給管100と接続されている。第2接続口20Bは、筐体10の右側面から外部に開放されていて、下流側のエア供給管100と接続されている。
【0033】
流量測定素子30は、熱式の流量測定素子で構成されている。流量測定素子30は、気体の流れ方向に延びる一対の板状の測温抵抗体30aを、気体の流れ方向に直交する方向に並べた構成となっている。一対の測温抵抗体30aは互いに平行である。このような熱式の流量測定素子30は従来から周知であるため、詳細な説明は省略する。
【0034】
この実施形態では、配管20が金属製であり、熱伝導率が高くなっている。測温抵抗体30aが配管20の熱の影響を受ないようにするため、測温抵抗体30aは、配管20を構成する材料よりも熱伝導率が低い材料(断熱材)で構成されたホルダ30c(図5に示す)によって保持されている。
【0035】
また、熱式の流量測定素子30の代わりに、超音波式の流量測定素子を用いてもよい。この超音波式の流量測定素子も従来から周知であるため、詳細な説明は省略する。超音波式の流量測定素子を用いる場合、圧縮空気の質量流量を測定するため、配管20における圧縮空気の圧力を測定する圧力測定素子31を設ける必要がある。
【0036】
気体流量計1は、配管20に配置され、当該配管20における圧縮空気の流路を開閉する弁(主弁)40も備えている。すなわち、配管20の流れ方向中間部の下側には、弁収容空間Sが形成されている。弁収容空間Sは、配管20における弁収容空間Sよりも上流側の空間20aと連通している。弁収容空間Sの上部には、隔壁部22が設けられている。隔壁部22は、弁収容空間Sと、配管20における弁収容空間Sよりも下流側の空間20bとを区画する部分である。隔壁部22の下部には、弁収容空間Sと下流側の空間20bとを連通可能にする連通孔22aが形成されている。
【0037】
配管20及び弁40は、上下方向に並んでいる。一方、後述する表示部61は配管20及び弁40の前に位置付けれているので、配管20及び弁40と、表示部61とが並ぶ方向は気体流量計1の前後方向となる。気体流量計1を前後方向に沿って見たとき、表示部61の一部と配管20とが重複するように配置されている。具体的には、表示部61の上下方向の寸法は、配管20の上下方向の寸法よりも長く設定されており、表示部61の表示面積を十分に広く確保可能にしている。気体流量計1を前後方向に沿って見たとき、表示部61の上下方向中間部と配管20とが互いに重複し、表示部61の上部は配管20の上部よりも上方に配置され、表示部61の下部は配管20の下部よりも下方に配置されることになる。
【0038】
弁40は、例えば円板状に形成されており、弁収容空間S内で上下方向に移動可能に配設されている。配管20の圧縮空気の流れ方向は左右方向であることから、弁40の移動方向は流れ方向と交差する方向になる。弁40が上へ移動した状態で連通孔22aの周縁部に対して下から当接して当該連通孔22aを閉塞し、この位置で弁40が閉になる。一方、弁40が下へ移動した状態で連通孔22aの周縁部から下へ離れて当該連通孔22aが開放され、この位置で弁40が開になる。
【0039】
弁40は、上下方向に延びる支軸40aを有している。支軸40aは、配管20の下側に設けられた支持部材40bによって上下方向にのみ移動可能に支持されている。支軸40aの下部には、ピストン40cが設けられている。ピストン40cは、支持部材40bの内部に形成された作動室S1に収容されている。
【0040】
弁40は、ソレノイドモジュール41からなる駆動体によって配管20の圧縮空気の流れ方向と交差する上下方向(所定方向)に駆動される。この実施形態では、弁40の動作機構として、パイロット式にするとともに、キープソレノイド43を用いている。
【0041】
図8及び図9に示すように、ソレノイドモジュール41は、パイロット弁42及びキープソレノイド43を備えるとともに、パイロット弁42及びキープソレノイド43が収容されるケース44も備えている。図5に示すように、ソレノイドモジュール41は、配管20の上方、即ち、配管20を挟んで弁40と反対側に設けられている。配管20の一次圧及び二次圧は、空気通路S2、S3を介してソレノイドモジュール41のパイロット弁42に導かれるようになっており、パイロット弁42の動作によって生じる作動圧は、図示しない空気通路を介して作動室S1に導かれてピストン40cに作用するようになっている。
【0042】
図9に示すように、ソレノイドモジュール41のキープソレノイド43は、プランジャー43a及びコイル43bを有しており、プランジャー43aを動かすときだけコイル43bに電流を流し、プランジャー43aを所望位置に動かした後は、コイル43bに電流を流さなくても、プランジャー43aの位置を維持することが可能に構成されている。
【0043】
ケース44には、キープソレノイド43の駆動力をパイロット弁42に伝達するためのリンク45が収容されている。すなわち、キープソレノイド43のプランジャー43aの進退方向は、気体流量計1の前後方向と一致しており、また、パイロット弁42の動作方向も気体流量計1の前後方向と一致している。ケース44内におけるプランジャー43aの先端部に対応する部分には、リンク45が配置されている。リンク45は、プランジャー43aの進退方向と交差する方向、即ち左右方向に延びる姿勢となっており、当該リンク45の左右方向中間部は、上下方向に延びる軸45aによって支持されている。
【0044】
リンク45は軸45a周りに揺動可能になっている。リンク45における軸45aよりもキープソレノイド43側の部分が、プランジャー43aの先端部に当接し、リンク45における軸45aよりもパイロット弁42側の部分が、パイロット弁42の入力部42aに当接するようになっている。したがって、キープソレノイド43のプランジャー43aの進退方向の力はリンク45を介してパイロット弁42に入力されてパイロット弁42を操作することが可能になっている。このように、キープソレノイド43とパイロット弁42とを平行に配置し、リンク45を介して力を伝達するようにしたので、ソレノイドモジュール41の小型化が可能になる。
【0045】
また、図8に示すように、ソレノイドモジュール41は、パイロット弁42を外部から操作可能な操作レバー46を有している。操作レバー46は、ケース44の外部に配置されており、ユーザによる操作が可能になっている。操作レバー46の基端部は、上下方向に延びる支軸46a周りに回動可能にケース44に対して支持されている。操作レバー46の回動力がキープソレノイド43を介することなく、パイロット弁42に伝達され、これにより、パイロット弁42を操作レバー46の回動操作によって閉じたり、開いたりすることができる。操作レバー46の回動力は、リンク45に直接伝達されてリンク45を動作させ、リンク45の動作によってパイロット弁42が操作される。尚、操作レバー46の回動力がパイロット弁42に直接伝達されるように構成されていてもよい。
【0046】
また、操作レバー46は、リンク45ではなく、キープソレノイド43のプランジャー43aの先端を操作することもできる。例えば、操作レバー46を回動させると、操作レバー46と内部で連結されたプランジャー制動部材(プランジャー43aの先端とリンク45の間に配置されている)がプランジャー43aの先端側に接近する。プランジャー43aの先端が飛び出そうとしても、プランジャー制動部材に先に当たって止まるため、リンク45に接触できなくなり、その結果、リンク45はパイロット弁に伝達できないので、パイロット弁は弁閉動作ができなくなり、結果、弁開状態が維持される。
【0047】
このキープソレノイド43によってパイロット弁42を開閉動作させることにより、作動室S1に所望の圧力を供給し、弁40を上下方向に移動させることができるようになっている。キープソレノイド43の動作監視用としてリンク45に接点を設けてもよい。これにより、リンク45の動作を介してキープソレノイド43の動作を取得することができ、キープソレノイド43が正常に動作しているか否かを判定する判定情報として用いることができる。
【0048】
配管20は、交換可能な整流板21を備えている。整流板21は、配管20内における弁40よりも流れ方向下流に配置されており、弁40の上方に位置付けられている。整流板21は配管20内を通過する気体を整流するための部材であり、その具体的な構成は特に限定されるものではないが、例えば、配管20内において流れ方向と直交する方向に延びるように配置される板状部21aと、取付基部21bとを備えた構成とすることができる。図10に示すように、配管20には、板状部21aを挿通するための整流板挿通孔20eが形成されている。板状部21aが整流板挿通孔20eに挿通された状態で、取付基部21bが配管20に対して締結部材(図示せず)によって締結される。板状部21aには、当該板状部21aを厚み方向(気体の流れ方向)に貫通する複数の貫通孔21cが形成されている。気体が貫通孔21cを通過することによって整流される。これにより、流量の検出精度が向上する。
【0049】
流量測定素子30及び整流板21は、表示部61の後方に位置付けられている。すなわち、流量測定素子30及び整流板21と、表示部61とは、前後方向に並ぶように設けられている。また、圧力測定素子31及び温湿度計32も表示部61の後方に位置付けられている。
【0050】
図5に示すように、流量測定素子30の両測温抵抗体30aは、配管20内において偏流が均等になる位置、すなわち、配管20における整流板21よりも流れ方向下流に配置されている。従って、流量測定素子30は、整流板21を通過した気体の流量に応じた測定信号を生成する部材である。また、測温抵抗体30aが配管20内に生じたドレンの影響を受けないように、配管20内において上側部分に配置されている。
【0051】
図10に示すように、配管20には、流量測定素子30を挿通するための素子挿通孔20dが形成されている。流量測定素子30が素子挿通孔20dに挿通された状態で、流量測定素子30の取付基部30bが配管20に対して締結部材(図示せず)によって締結される。
【0052】
また、メンテナンスなどの時に安全面を考慮して下流側に接続される配管内の圧を抜くために、一般的に装置の根元に残圧開放弁(リリーフバルブ)が設けられている。この残圧開放弁の上流側に弁40があれば特に問題は無いが、残圧開放弁の下流側に弁40がある場合、残圧開放弁を開いても、気体流量計1内の圧が抜けない。このことに対応するために、気体流量計1には、残圧開放用のチェック弁(図示せず)を設けることができる。チェック弁は、一次側と二次側とを連通させる連通路に配置されており、一次圧が抜けて二次圧が一次圧よりも高くなると、二次側からの圧縮空気の圧力によって閉から開に切り替わり、二次側から一次側へ圧縮空気の流通が可能になる。したがって、弁40を閉じていても、上流側の圧力が低下に応じて弁40よりも下流側の圧力も追従させて低下させることが可能となる。
【0053】
図7に示すように、気体流量計1は、制御ユニット50を備えている。制御ユニット50は、制御部51と、流量決定部52と、演算部53と、記憶部54と、圧力決定部55とを備えている。また、制御ユニット50には、図示しないがリアルタイムクロックや電池等が内蔵されており、日時と紐付けて各種測定データ等を記憶部54に記憶することができるようになっている。これにより、常時データを読み出さなくても、後述するように、蓄積データに基づいて各種グラフ表示や数値表示、換算表示等を行うことができる。
【0054】
制御部51、流量決定部52、演算部53及び圧力決定部55は、記憶部54等に予め記憶されたプログラムに従って動作するマイクロコンピュータや入出力インターフェース、通信モジュール等によって構成されている。制御部51、流量決定部52及び演算部53の全てが同じマイクロコンピュータ等によって構成されていてもよいし、異なるマイクロコンピュータ等によって構成されていてもよい。
【0055】
気体流量計1は、操作部60と表示部61を備えている。操作部60は、ユーザによって操作される複数の操作ボタン等を含んでおり、図4に示すように筐体10の前面の下側部分に位置している。操作部60のユーザによる操作は、制御部51で受け付けられる。
【0056】
表示部61は、例えば有機ELディスプレイや液晶ディスプレイ等で構成されており、制御部51によって制御される。表示部61は縦長形状とされており、上下方向の寸法が左右方向の寸法よりも長く設定されている。前後方向に沿って見たとき、表示部61の左端部よりも配管20の左端部が外方へ突出しており、また、表示部61の右端部よりも配管20の右端部が外方へ突出している。
【0057】
表示部61には、後述する流量決定部52により決定された流量に関する情報等が表示される。表示部61は、筐体10の前面において操作部60の上方に配設されており、従って、操作部60と表示部61とは、上下方向に並ぶように設けられることになる。また、配管20と弁40との前方(側方)に表示部61が設けられている。表示部61の形状は特に限定されるものではない。また、表示部61の上方に操作部60が設けられていてもよい。また、表示部61がタッチ操作パネルを有していてもよい。尚、図3に示す運用形態の場合、表示部61の表示内容をPC120のモニタに表示させることもできる。
【0058】
図5に示すように、気体流量計1の本体部1Aは、配管20、整流板21、流量測定素子30及び表示部61を有する部分である。ソレノイドモジュール41は、気体流量計1の上部に配置され、本体部1Aに対して着脱自在に取り付けられている。例えばネジやビス等の締結部材によってソレノイドモジュール41を本体部1Aに締結しておくことにより、ソレノイドモジュール41の故障時に当該ソレノイドモジュール41を新品に交換することができる。交換時、ソレノイドモジュール41が本体部1Aの上部に位置しているので作業性は良好である。尚、ソレノイドモジュール41側にパイロット弁42が組み込まれ、本体部1Aに弁40が組み込まれているので、本体部1A側の空気通路S2と、ソレノイドモジュール41側の空気通路S3とを接続する必要があるが、本実施形態では、空気通路S2、S3同士の接続部分にOリング等のシール材Bが設けられており、気密性が確保されている。
【0059】
図7に示すように、制御部51は弁制御部51aを有している。弁制御部51aは、流量決定部52により決定された流量または外部入力に基づいて、ソレノイドモジュール41のキープソレノイド43を制御する。キープソレノイド43を制御することで、弁40を開から閉、閉から開にすることができるので、弁制御部51aは、弁40を制御する部分であると言うこともできる。弁制御部51aが弁40を制御するので、弁40が開であるか、閉であるかを示す開閉情報は、弁制御部51aが取得できる。弁40の開閉情報に基づいて、弁40が閉である期間を取得できる。例えば弁40が開から閉に切り替わったタイミングから開に切り替わったタイミングまでの時間を弁制御部51aが計測することで、弁40が閉である期間を取得できる。尚、弁40が開であるか、閉であるかを接点によって検出し、これを開閉情報として弁制御部51aが取得してもよい。
【0060】
流量決定部52は、流量測定素子30により生成する測定信号を受信し、当該測定信号に基づいて気体の流量を取得し、決定する部分である。熱式の流量測定素子30の場合、測温抵抗体30aからの放散熱量に係る測定信号を生成し、この放散熱量に係る測定信号を流量決定部52が受信すると、放熱熱量と流量との関係式を用いて配管20における圧縮空気の流量を演算することができる。例えば、ヒータが間欠的に駆動して、ヒータ側の測温抵抗体30aと気体側の測温抵抗体30aとが温度に依存する抵抗値を示すことで、各々の測温抵抗体30aに流れる電流と抵抗値とに応じた測定信号を生成する。流量測定素子が超音波式の場合は、例えば2つの超音波素子を設けておき、これら2つの超音波素子間での伝搬時間差を流量決定部52が取得し、取得した伝搬時間差を用いて配管20における圧縮空気の流量を演算し、決定することができる。
【0061】
ここで、熱式の流量測定素子30として複数の測温抵抗体30aを用いる場合、各々の測温抵抗体30aに電流を供給するための定電流回路を個別に設けると、各々の定電流回路の温特や規制電流値のバラつきにより測定誤差を生じるおそれがある。そこで、複数の測温抵抗体30aを抵抗値の基準となる高精度抵抗器とともに直列に接続するとともに、各測温抵抗体30a及び高精度抵抗器の各々には、両端に生じる電圧を測定するための差動回路が接続される。高精度抵抗器は、温特が小さなものが選択される。また、高精度抵抗器は、複数の測温抵抗体30aと同程度の抵抗値を有するものであってもよい。複数の測温抵抗体30aを高精度抵抗器とともに直列に接続されるので、高精度抵抗器の両端に生じる電圧を基準信号として差動回路で測定することで、複数の測温抵抗体30aに流れる電流を測定信号として高精度に測定することができる。また、複数の測温抵抗体30aの各々の両端に生じる電圧を各々の差動回路で測定して、高精度抵抗器の両端に生じる電圧との比を求めることで、つまり、測定信号と基準信号との比を求めることで、複数の測温抵抗体30aの各々の抵抗値を測定することができる。各測温抵抗体30a及び高精度抵抗器の各々に接続される各々の差動回路は、差動アンプと差動ADC(Analog Digital Converter)とを有する。各測温抵抗体30aや高精度抵抗器の各々の両端が、各差動アンプの差動入力に接続される。また、各差動アンプの差動出力が各差動ADCの差動入力と接続される。各差動ADCは、各測温抵抗体30aや高精度抵抗器の各々の両端に生じる電圧に相当する測定信号や基準信号のデジタル値を生成する。
【0062】
流量決定部52は、リーク量決定部52aを備えている。リーク量決定部52aは、弁40が開であって、圧縮空気のリーク状態において、流量測定素子30により生成する測定信号に基づく流量をリーク流量として取得し、決定する部分である。具体的には、リーク量決定部52aは、弁40が開から閉にされるときの瞬間流量値を瞬間リーク流量として決定する。
【0063】
演算部53は、リーク量決定部52aがリーク流量を決定すると、弁40が閉である期間と、リーク量決定部52aにより決定したリーク流量とに基づいて、リーク防止量を演算する。演算部53がリーク防止量を演算する際、瞬間リーク流量を、弁40が閉である期間分だけ積算すればよい。弁40が閉である期間は、上述したように弁制御部51aによって取得でき、弁制御部51aによって取得した期間を演算部53が使用すればよい。尚、演算部53が、弁40が閉である期間を計測し、取得してもよい。
【0064】
また、演算部53は、弁40が閉である期間以外の期間についても、流量測定素子30により生成する測定信号に基づく流量を積算して積算流体量を取得できる。したがって、流量測定素子30により生成する測定信号に基づく流量を積算する期間は、弁40が閉である期間に限られるものではなく、任意の期間(所定期間)とすることができる。
【0065】
温湿度計32を構成している湿度計としては、例えば容量式や抵抗式のものを用いることができる。温湿度計32は、図11にも示しており、筐体10に収容される基板11に実装されている。基板11は、表示部61の後方、配管20の後方に配置され、上下方向に延びている。基板11には、上記マイクロコンピュータ等も実装されている。
【0066】
配管20には、温湿度計32の検出面に達するまで前後方向に延びる2つの空気通路20cが設けられている。空気通路20cは、配管20によって形成される流路において偏流による圧力差が生じる部分と連通しており、配管20を通過する圧縮空気は、空気通路20cによって温湿度計32まで導かれる。温湿度計32の検出面の前方には透湿シートからなる第1カバー部材33及び第2カバー部材34が設けられている。第1カバー部材33は、第2カバー部材34に比べて粗い透湿フィルタで構成されている。第1カバー部材33及び第2カバー部材34を設けることで、圧縮空気に含まれているドレンやオイルミストが温湿度計32の検出面に付着するのを抑制でき、測定精度の悪化が回避できる。第1カバー部材33及び第2カバー部材34のうち、一方を省略してもよい。尚、温湿度計32は、配管20内に配設してもよく、この場合、整流板21よりも下流側、即ち整流された気体が流通している部分に配設することが可能である。
【0067】
圧力決定部55は、圧力測定素子31により生成する測定信号を受信し、当該測定信号に基づく圧力を取得する部分である。圧力測定素子31としては、例えばひずみゲージや静電容量式のもの等で構成されており、圧縮空気の圧力を電気信号に変換して出力するように構成されている。この場合、圧力決定部55は圧力測定素子31から出力される電気信号に基づいて圧力を取得することができる。この実施形態では、圧力測定素子31が、整流板21よりも下流側の圧力を検出するように配置されている。これにより、配管20の下流部近傍の圧力を安定して測定可能になる。
【0068】
以下、図12に示すフローチャートに基づいて、リーク防止量の演算処理手順の一例を説明する。この例では、演算部53は、弁40が開である場合、瞬間リーク流量を、弁40が開である期間分だけ積算することによって開状態にあるときのリーク量とすることが可能になっている。
【0069】
スタート後のステップSA1では、圧縮空気の流通が可能な状態、即ち弁40が開である状態となっていることを確認する。弁40が開になっている場合にはステップSA2に進む。ステップSA2では、弁制御部51aが弁40を開から閉にする要求(弁閉要求)を受け付ける。弁閉要求は、演算部53が所定のタイミングになった時点で弁制御部51aに対して出してもよいし、外部の制御機器またはユーザが弁制御部51aに対して出してもよい。
【0070】
ステップSA3では、リーク量決定部52aが流量測定素子30により生成する測定信号に基づく流量を瞬間流量として取得し、記憶部54等に一時的に記憶する。ステップSA3の段階では弁40が閉になっていない。
【0071】
瞬間流量の取得後、ステップSA4では、弁制御部51aが弁40を開から閉にする制御(弁閉制御)を実行する。これによって弁40が閉に切り替わるのであるが、ステップSA5では、上記開閉情報に基づいて、弁40が閉に切り替わったか否かを弁制御部51aが判定する。弁40が閉に切り替わっていない場合には、何らかの不具合が発生している可能性があるので、ステップSA6に進んで弁制御部51aがエラーを出力し、終了する。一方、弁40が閉に切り替わった場合にはステップSA7に進み、リーク量決定部52aは、ステップSA3で取得した瞬間流量を瞬間リーク流量として記憶部54等に一時的に記憶する。
【0072】
ステップSA8では、ステップSA7でリーク量決定部52aが取得した瞬間リーク流量を演算部53が得る。そして、演算部53は、瞬間リーク流量を、弁40が閉である期間分だけ積算してリーク量を得る。ステップSA9では、弁制御部51aが弁40を閉から開にする要求(弁開要求)を受け付ける。弁開要求は、演算部53が所定のタイミングになった時点で弁制御部51aに対して出してもよいし、外部の制御機器またはユーザが弁制御部51aに対して出してもよい。
【0073】
ステップSA10では、リーク量決定部52aが流量測定素子30により生成する測定信号に基づく流量を瞬間リーク流量として取得し、記憶部54等に一時的に記憶する。ステップSA10の段階では弁40が開になっていない。
【0074】
瞬間リーク流量の取得後、ステップSA11では、弁制御部51aが弁40を閉から開にする制御(弁開制御)を実行する。これによって弁40が開に切り替わるのであるが、ステップSA12では、上記開閉情報に基づいて、弁40が開に切り替わったか否かを制御部51が判定する。弁40が開に切り替わっていない場合には、何らかの不具合が発生している可能性があるので、ステップSA13に進んで制御部51がエラーを出力し、終了する。一方、弁40が開に切り替わった場合にはステップSA14に進み、リーク量決定部52aは、ステップSA10で取得した瞬間リーク流量を瞬間リーク防止流量として記憶部54等に一時的に記憶する。
【0075】
ステップSA15では、ステップSA14でリーク量決定部52aが取得した瞬間リーク防止流量を演算部53が得る。そして、演算部53は、瞬間リーク防止流量を、弁40が閉である期間分だけ積算してリーク防止量を得る。得られたリーク防止量は、表示部61に表示させることができる。尚、リーク防止量・リーク流量は、弁40が開いている間・閉まっている間に積算して記憶することも可能である。
【0076】
(自動シャットオフ機能)
次に、弁40の弁制御部51aによる開閉制御について説明する。弁制御部51aは、弁40が開である時にリーク量決定部52aによって取得された瞬間流量値が所定の間、リーク判定閾値を下回った場合に、ソレノイドモジュール41を制御し、弁40を閉にしてリークを自動的に防止する。このとき、リーク量決定部52aは、空圧機器の停止時に流量測定素子30により生成する測定信号に基づく流量を所定期間取得して平均化した流量をリーク流量として取得し、取得したリーク流量よりも高い値をリーク判定閾値として自動設定する。尚、自動設定は、任意のタイミングで実行できる。このように、リーク判定閾値を自動で設定するので、PC120(図3に示す)等の外部機器による設定は不要である。
【0077】
また、空圧機器の動作停止時のリーク流量は徐々に増加することが想定される。リーク流量が徐々に増加すると、予め定めたリーク判定閾値を超えたときに弁40を閉にできなくなる。このような状況を検知するために、弁40が一定期間動作していないことを判定し、弁40が一定期間動作していない場合には、そのことをユーザに報知する。
【0078】
空気圧機器のリーク量が徐々に増加することに気づけるようにリーク量が増加したことを警報として出力や通信で外部に通知し、設定したリーク量増加警報値とバルブを閉める直接流量値と比較することでリークが増加したことを検知できるようにしてもよい。
【0079】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態に係る気体流量計1によれば、配管20の流路を流れる気体が整流板21によって整流されてから流量測定素子30に到達するので、流量測定素子30による測定精度が向上する。一方、弁40をソレノイドモジュール41によって駆動して配管20の流路を閉じることで、例えば気体のリーク量を削減することができ、エネルギー消費量の削減が可能になる。
【0080】
リーク量を削減するための弁40が気体の流れ方向と交差する方向に駆動されるものなので、弁40を設けることによって気体流量計1が気体の流れ方向に大型化することはない。また、流量測定素子30により生成された測定信号に基づいて決定された流量に関する情報は表示部61に表示されることになるが、この表示部61は、配管20と弁40との前方に設けられているので、表示部61を設けることによって気体流量計1が気体の流れ方向に大型化することはない。要するに、シャットオフバルブとなる弁40及び流量に関する情報を表示する表示部61を設けて気体流量計1の機能を充実させる場合に、気体流量計1が気体の流れ方向に大型化してしまうのを回避できる。
【0081】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上説明したように、本開示に係る気体流量計は、例えば圧縮空気の流量を測定する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0083】
1 気体流量計
1A 本体部
20 配管
21 整流板
30 流量測定素子
40 弁
41 ソレノイドモジュール(駆動体)
42 パイロット弁
43 キープソレノイド
46 操作レバー
51a 弁制御部
52 流量決定部
52a リーク量決定部
60 操作部
61 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12