IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社キーエンスの特許一覧

<>
  • 特開-プロセス量測定装置 図1
  • 特開-プロセス量測定装置 図2
  • 特開-プロセス量測定装置 図3
  • 特開-プロセス量測定装置 図4
  • 特開-プロセス量測定装置 図5
  • 特開-プロセス量測定装置 図6
  • 特開-プロセス量測定装置 図7
  • 特開-プロセス量測定装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121924
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】プロセス量測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/56 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
G01N25/56 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029166
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】槻木 伸一
(72)【発明者】
【氏名】川口 泰範
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 智之
【テーマコード(参考)】
2G040
【Fターム(参考)】
2G040AA04
2G040AB03
2G040BA12
2G040BA23
2G040BB04
2G040CA01
2G040CA10
2G040DA02
2G040GA05
2G040HA03
2G040HA05
2G040ZA08
(57)【要約】
【課題】空圧機器に供給される圧縮空気の乾燥が十分であるか否かを空圧機器側で判断可能にすることで、空圧機器の故障を未然に防止する。
【解決手段】プロセス量測定装置1は、配管を通過する圧縮気体の圧力に応じた圧力信号を生成する圧力測定素子31と、配管を通過する圧縮気体の温度及び湿度を測定する温湿度計32と、供給源における圧縮気体の圧力の入力を受け付ける受付部54と、圧力測定素子31により生成した圧力信号と、温湿度計32により測定した温度及び湿度と、受付部を54介して受け付けた供給源における圧縮気体の圧力とに基づいて供給源における露点を推定する露点推定部55と、露点推定部55により推定した露点を表示する表示部61と、を備えている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給源から供給される圧縮気体が供給される供給管に設置されるプロセス量測定装置であって、
前記供給管に接続される配管を通過する圧縮気体の圧力に応じた圧力信号を生成する圧力測定素子と、
配管を通過する圧縮気体の温度及び湿度を測定する温湿度計と、
供給源における圧縮気体の圧力の入力を受け付ける受付部と、
前記圧力測定素子により生成した圧力信号と、前記温湿度計により測定した温度及び湿度と、前記受付部を介して受け付けた前記供給源における圧縮気体の圧力とに基づいて当該供給源における露点を推定する露点推定部と、
前記露点推定部により推定した露点を表示する表示部と、を備えるプロセス量測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセス量測定装置において、
前記露点推定部により推定した露点と、予め設定されている閾値とに基づいてON/OFF信号を生成し、出力する、プロセス量測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載のプロセス量測定装置において、
前記露点推定部により推定した露点と、予め設定されている閾値とに基づく判定結果が前記表示部に表示される、プロセス量測定装置。
【請求項4】
請求項1に記載のプロセス量測定装置において、
前記圧力測定素子及び前記温湿度計は、共通の筐体に収容されている、プロセス量測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載のプロセス量測定装置において、
配管における圧縮気体の流量を測定するための流量測定素子をさらに備え、
前記流量測定素子は、前記筐体に収容されている、プロセス量測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載のプロセス量測定装置において、
前記露点推定部は、前記流量測定素子により測定された流量が所定流量以下の時には、露点の推定処理を実行しないように構成されている、プロセス量測定装置。
【請求項7】
請求項5に記載のプロセス量測定装置において、
前記表示部は、前記流量測定素子により測定された流量が所定流量以下の時には、露点を表示しないように構成されている、プロセス量測定装置。
【請求項8】
請求項5に記載のプロセス量測定装置において、
前記露点推定部は、推定した露点を、前記流量測定素子により測定された流量に重み付けすることによって補正する、プロセス量測定装置。
【請求項9】
請求項1に記載のプロセス量測定装置において、
前記表示部には、前記温湿度計により測定した温度及び湿度が表示される、プロセス量測定装置。
【請求項10】
請求項1に記載のプロセス量測定装置において、
前記露点推定部により推定した露点を、当該露点を推定した時刻と関連付けて記憶する記憶部をさらに備えている、プロセス量測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮気体が通過する配管に設置されるプロセス量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば各種製品を製造する製造現場では空圧機器が使用されている。一般的に、空圧機器には圧縮空気が供給される配管が接続されており、この配管には、圧縮空気の供給元が接続されている。
【0003】
特許文献1では、コンプレッサよりも低圧な圧縮空気を生成するブロワが供給元に設置されている。ブロワの吸気温度、吸気湿度、圧力を測定して低圧エアの露点を演算し、ブロワから空圧機器へ圧縮空気を供給する配管の測定温度と、上記低圧エアの露点とを比較して結露の有無を判断し、結露しないと判定された場合には、ブロワから低圧空気を供給し、結露すると判定された場合には、コンプレッサの高圧空気を低圧空気に混合して供給するようにしている。また、コンプレッサで圧縮された空気をドライヤに流して乾燥させるようにしており、ドライヤ後の露点を計測するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-99361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示されているように、圧縮空気の供給元では、空気を圧縮すると湿度が上昇するためドライヤで乾燥した後の圧縮空気を空圧機器に供給することが行われている。供給元に設置されているドライヤは冷却式が一般的であり、設定した圧力下露点まで圧縮空気の温度を下げることで結露させ、圧縮空気中の水分を除去している。
【0006】
ところが、圧縮した空気は温度が上昇しており、また夏場は周囲の温度が上昇するため、ドライヤの冷却能力が不足する場合がある。ドライヤの冷却能力が不足すると、圧縮空気の温度を露点まで低下させることができず、圧縮空気を十分に乾燥させることができなくなる。また、ドライヤの故障で圧縮空気を乾燥させることができなくなることもある。乾燥が不十分な圧縮空気が空圧機器に供給されると、空圧機器で圧力が低下して断熱膨張により空気の温度が下がった時に空圧機器内に水が結露して溜まり、空圧機器の故障の原因となる。
【0007】
この点、特許文献1では、ブロワの吸気温度、吸気湿度、圧力を測定して低圧エアの露点を演算し、また、ドライヤ後の露点を計測するようにしているが、これは供給元における演算及び計測である。圧縮空気が乾燥しているか否かは供給先の空圧機器側で問題になる事項であり、特許文献1のものではドライヤが能力不足であったり、故障していたりすることを空圧機器側で判断することはできない。
【0008】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、空圧機器に供給される圧縮空気の乾燥が十分であるか否かを空圧機器側で判断可能にすることで、空圧機器の故障を未然に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本態様では、供給源から供給される圧縮気体が通過する供給管に設置されるプロセス量測定装置を前提とすることができる。プロセス量測定装置は、供給管に接続される配管を通過する圧縮気体の圧力に応じた圧力信号を生成する圧力測定素子と、配管を通過する圧縮気体の温度及び湿度を測定する温湿度計と、供給源における圧縮気体の圧力の入力を受け付ける受付部とを備えている。プロセス量測定装置は、さらに、前記圧力測定素子により生成した圧力信号と、前記温湿度計により測定した温度及び湿度と、前記受付部を介して受け付けた前記供給源における圧縮気体の圧力とに基づいて当該供給源における露点を推定する露点推定部と、前記露点推定部により推定した露点を表示する表示部と、を備えている。
【0010】
この構成によれば、供給源から離れた所に設置されるプロセス量測定装置で圧縮気体の露点が推定され、推定された露点が表示部に表示される。よって、例えば空圧機器に圧縮空気を供給している場合、供給源側ではなく、空圧機器側で設定した露点で正常に動作しているか否かを判断できる。
【0011】
前記露点推定部により推定した露点と、予め設定されている閾値とに基づいてON/OFF信号を生成し、出力してもよい。また、前記露点推定部により推定した露点と、予め設定されている閾値とに基づく判定結果を前記表示部に表示させることができる。これにより、ドライヤの設定露点と、空圧機器側の露点とを比較してドライヤの故障や能力不足を発見することができる。
【0012】
前記圧力測定素子及び前記温湿度計は、共通の筐体に収容されていてもよい。また、配管における圧縮気体の流量を測定するための流量測定素子をさらに備えている場合には、前記流量測定素子も前記筐体に収容することができる。すなわち、圧力の測定箇所、温度の測定箇所、湿度の測定箇所を全部接近させることができるので、空圧機器側における露点の推定精度が向上する。
【0013】
前記露点推定部は、前記流量測定素子により測定された流量が所定流量以下の時には、露点の推定処理を実行しないように構成されていてもよい。また、前記表示部は、前記流量測定素子により測定された流量が所定流量以下の時には、露点を表示しないように構成されていてもよい。すなわち、圧縮気体の流量が少ない低流量時には露点の推定精度が低下してしまうので、低流量時に露点の推定処理や表示を非実行にすることで、信頼性の低い露点を提示せずに済む。
【0014】
前記露点推定部は、推定した露点を、前記流量測定素子により測定された流量に重み付けすることによって補正することもできる。すなわち、配管を通過する圧縮気体の流量が多い方がより精度を高めることができるので、流量が多い方の計測値に重み付けを行うことで、精度の高い露点を推定できる。
【0015】
前記表示部には、前記温湿度計により測定した温度及び湿度が表示されてもよい。また、前記露点推定部により推定した露点を、当該露点を推定した時刻と関連付けて記憶する記憶部をさらに備えていてもよく、これにより露点の時系列データを取得できる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、供給源から供給される圧縮気体が通過する配管に設置されるプロセス量測定装置で圧縮空気の露点を推定して表示できるので、空圧機器に供給される圧縮空気の乾燥が十分であるか否かを空圧機器側で判断でき、圧縮空気が結露することによる空圧機器の故障を未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るプロセス量測定装置が使用される工場を模式的に示した図である。
図2】プロセス量測定装置の運用時を説明する図である。
図3】プロセス量測定装置の正面図である。
図4】弁が開いているプロセス量測定装置の縦断面図である。
図5】弁が閉じているプロセス量測定装置の縦断面図である。
図6】プロセス量測定装置のブロック図である。
図7】温湿度計の配設構造を示す断面図である。
図8】露点表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係るプロセス量測定装置1が使用される工場300を模式的に示した図である。工場300には、製品の組み立て、搬送、部材の加工等を行うための複数の装置301が設置されている。装置301には、圧縮気体としての圧縮空気を使用するエアブロー装置、エアシリンダー装置、吸着搬送装置、着座装置等が設けられており、これらは流体機器の一種である空圧機器と呼ぶことができ、1台の装置301に一または複数の空圧機器が設けられることがある。
【0020】
圧縮空気は、コンプレッサ302及びドライヤ303を用いて得られる。すなわち、コンプレッサ302は、空気を吸入して大気圧以上の所定圧力となるように圧縮するための機器である。コンプレッサ302で圧縮された圧縮空気は、湿度が上がっているため、ドライヤ303に供給して乾燥させる。ドライヤ303は冷却装置を備えており、冷却装置が圧縮空気を冷却する冷却能力を発揮するようになっている。ドライヤ303の下流側には空気タンク304が接続されている。ドライヤ303を経て乾燥した圧縮空気は空気タンク304に一旦貯留される。空気タンク304の出口部には、装置301まで延びる供給管100が接続されている。供給管100は、複数の分岐部を有しており、分岐部よりも下流側が各装置301に接続される。このように、1台のコンプレッサ302及びドライヤ303によって得られた圧縮空気は、供給管100を通過した後、複数の装置301に供給されて各装置301で使用される。
【0021】
尚、コンプレッサ302、ドライヤ303及び空気タンク304は、工場300内に設置されていてもよいし、工場300外に設置されていてもよいし、工場300から離れたところに設置されていてもよい。コンプレッサ302、ドライヤ303及び空気タンク304により、圧縮空気の供給源310が構成されている。
【0022】
プロセス量測定装置1は、装置301が有する空圧機器で使用される作動気体(圧縮空気)のプロセス量を測定するための装置である。プロセス量には、例えば流量、圧力等が含まれているが、これら以外の状態量が含まれていてもよい。各装置301に供給管100の分岐部よりも下流側部分が接続されており、供給管100における分岐部よりも下流側部分にそれぞれプロセス量測定装置1が設置されている。
【0023】
装置301ごとにプロセス量測定装置1が設置されることになるので、1台の装置301で使用される圧縮空気の流量や圧力をプロセス量測定装置1で測定することが可能になる。空圧機器が一つだけ設けられている装置301の場合は、当該一の空圧機器で使用される圧縮空気の流量がプロセス量測定装置1によって測定され、また、空圧機器が複数設けられている装置301の場合は、当該複数の空圧機器で使用される圧縮空気の合計の流量がプロセス量測定装置1によって測定されることになる。
【0024】
図2に示すように、プロセス量測定装置1は、供給管100に設置されて運用される。プロセス量測定装置1を運用する際、電源供給部101とプロセス量測定装置1とを接続線102によって接続する。プロセス量測定装置1を作動させるための電力が電源供給部101から供給される。また、電源供給部101からは制御信号が出力される。電源供給部101から出力された制御信号は、接続線102を介してプロセス量測定装置1に入力される。この場合、測定された流量は、逐次、プロセス量測定装置1内に記憶される。測定された流量を外部に送信してもよい。尚、図示しないが、プロセス量測定装置1は、パーソナルコンピュータ等と接続して運用することもできる。この場合、測定された流量等の情報は、逐次、PC120に記憶させることが可能である。
【0025】
図3は、プロセス量測定装置1を正面(前面)から見た図であり、図4は、プロセス量測定装置1の縦断面図である。プロセス量測定装置1は、上下方向に長い筐体10を備えている。この実施形態の説明では、図3及び図4の左側をプロセス量測定装置1の左側といい、図3及び図4の右側をプロセス量測定装置1の右側というものとするが、これは実施形態の説明を容易にするために定義するだけであり、プロセス量測定装置1の使用時の方向を限定するものではない。
【0026】
圧縮空気は、矢印A方向(図3の左側から右側へ向かう方向)に流れている。図4及び図5に示すように、プロセス量測定装置1は、圧縮空気の流路を形成する配管20と、配管20を通過する圧縮空気の流量に応じた測定信号を生成する流量測定素子30と、配管20を通過する圧縮空気の圧力に応じた圧力信号を生成する圧力測定素子31と、配管20を通過する圧縮空気の温度及び湿度を測定する温湿度計32とを備えている。流量測定素子30、圧力測定素子31及び温湿度計32は、図6のブロック図にも示している。温湿度計32を構成している湿度計としては、例えば容量式や抵抗式のものを用いることができる。温湿度計32は、図7にも示しており、筐体10に収容される基板11に実装されている。尚、基板11が収容される筐体とは別に、表示部が設けられる筐体を有していてもよい。
【0027】
配管20は、筐体10の上下方向中間部において左右方向に延びている。配管20の左端(上流端)は筐体10の左側面から外部に開放されていて、プロセス量測定装置1よりも上流側の供給管100と接続されている。配管20の右端(下流端)は筐体10の右側面から外部に開放されていて、プロセス量測定装置1よりも下流側の供給管100と接続されている。
【0028】
流量測定素子30、圧力測定素子31及び温湿度計32を互いに接近させることができる。圧力測定素子31は、配管20を通過する圧縮空気が接触するように配設されており、これにより、配管20を通過する圧縮空気の圧力に応じた圧力信号を生成することが可能になる。また、温湿度計32も配管20を通過する圧縮空気が接触するように配設されており、これにより、配管20を通過する圧縮空気の温度及び湿度を測定することが可能になる。温湿度計32が測定した温度及び湿度は、露点推定部55に入力される。尚、図示しないが、制御ユニット50に温湿度取得部を設けてもよい。この場合、温湿度計32から出力された信号に基づいて温湿度取得部が温度及び湿度を取得し、露点推定部55に入力する。
【0029】
図7は、温湿度計32の配設構造を示す断面図である。配管20には、温湿度計32の検出面に達するまで延びる2つの空気通路20cが設けられている。空気通路20cは、配管20によって形成される流路において偏流による圧力差が生じる部分と連通しており、配管20を通過する圧縮空気は、空気通路20cによって温湿度計32まで導かれる。温湿度計32の検出面の前方には透湿シートからなる第1カバー部材33及び第2カバー部材34が設けられている。第1カバー部材33は、第2カバー部材34に比べて粗い透湿フィルタで構成されている。第1カバー部材33及び第2カバー部材34を設けることで、圧縮空気に含まれているドレンやオイルミストが温湿度計32の検出面に付着するのを抑制でき、測定精度の悪化が回避できる。尚、温湿度計32は、配管20内に配設してもよい。
【0030】
図4に示す流量測定素子30は、熱式の流量測定素子で構成されている。流量測定素子30は、一対の板状の測温抵抗体を平行に並べた構成となっており、両測温抵抗体が配管20内において偏流が均等になる位置に配置されている。このような熱式の流量測定素子30は従来から周知であるため、詳細な説明は省略する。
【0031】
また、熱式の流量測定素子30の代わりに、超音波式の流量測定素子を用いてもよい。この超音波式の流量測定素子も従来から周知であるため、詳細な説明は省略する。超音波式の流量測定素子30を用いる場合、圧縮空気の質量流量を測定するため、配管20における圧縮空気の圧力を測定する圧力測定素子31(図6に示す)を設ける必要がある。
【0032】
プロセス量測定装置1は、シャットオフバルブを構成する弁40も備えている。すなわち、配管20の流れ方向中間部の下側には、弁収容空間21が形成されている。弁収容空間21は、配管20における弁収容空間21よりも上流側の空間20aと連通している。弁収容空間21の上部には、隔壁部22が設けられている。隔壁部22は、弁収容空間21と、配管20における弁収容空間21よりも下流側の空間20bとを区画する部分である。隔壁部22の下部には、弁収容空間21と下流側の空間20bとを連通可能にする連通孔22aが形成されている。
【0033】
弁40は、弁収容空間21内で上下方向に移動可能に配設されている。弁40が上へ移動した状態で連通孔22aの周縁部に対して下から当接して当該連通孔22aを閉塞し、この位置で弁40が閉になる。一方、弁40が下へ移動した状態で連通孔22aの周縁部から下へ離れて当該連通孔22aが開放され、この位置で弁40が開になる。
【0034】
弁40の動作機構として、パイロット式にするとともに、キープソレノイドを用いている。パイロットバルブ及びキープソレノイドは、例えばソレノイドモジュール41や筐体10に組み込まれている。配管20の空間20a内の圧力及び大気圧は、図示しない通路を介してソレノイドモジュール41に導かれるようになっており、作動室42は、パイロットバルブにより空間20aと大気圧の2種類を切り替えて動作制御している。
【0035】
ソレノイドモジュール41のキープソレノイドは、プランジャー及びコイルを有しており、プランジャーを動かすときだけコイルに電流を流し、プランジャーを所望位置に動かした後は、コイルに電流を流さなくても、プランジャーの位置を維持することが可能に構成されている。このキープソレノイドによってパイロットバルブを開閉動作させることにより、作動室42に所望の圧力を供給し、弁40を上下方向に移動させることができるようになっている。
【0036】
図6は、プロセス量測定装置1のブロック図である。プロセス量測定装置1は、制御ユニット50を備えている。制御ユニット50は、制御部51と、流量取得部52と、圧力取得部53と、受付部54と、露点推定部55と、記憶部56とを備えている。また、制御ユニット50には、図示しないがリアルタイムクロックや電池等が内蔵されており、日時と紐付けて各種測定データ等を記憶部56に記憶することができるようになっている。これにより、常時データを読み出さなくても、蓄積データに基づいて各種グラフ表示や数値表示、換算表示等を行うことができる。また、記憶部56に記憶されている蓄積データは外部機器に出力することができる。
【0037】
制御部51、流量取得部52、圧力取得部53、受付部54及び露点推定部55は、記憶部56等に予め記憶されたプログラムに従って動作するマイクロコンピュータや入出力インターフェース、通信モジュール等によって構成されている。制御部51、流量取得部52、圧力取得部53、受付部54及び露点推定部55の全てが同じマイクロコンピュータ等によって構成されていてもよいし、異なるマイクロコンピュータ等によって構成されていてもよい。
【0038】
さらに、プロセス量測定装置1は、操作部60と表示部61を備えている。操作部60は、ユーザによって操作される複数の操作ボタン等を含んでおり、図3に示すように筐体10の前面の下側部分に配設されている。操作部60のユーザによる操作は、制御ユニット50の受付部54で受け付けられる。例えば、ユーザが操作部60を操作することで、供給源310における圧縮空気の圧力を入力することができる。この場合、ユーザが供給源310における圧縮空気の圧力を別の測定器等で把握した後、操作部60を操作して圧力の入力操作を行うと、入力した値が受付部54によって受け付けられる。受け付けられた圧力の値は記憶部56に記憶されるとともに、露点推定部55に入力される。
【0039】
表示部61は、例えば有機ELディスプレイや液晶ディスプレイ等で構成されており、制御部51によって制御される。表示部61は、筐体10の前面において操作部60の上方に配設されている。表示部61の形状は特に限定されるものではないが、この実施形態では、上下方向に長い形状とされている。尚、パーソナルコンピュータを用いた運用形態の場合、表示部61の表示内容をパーソナルコンピュータのモニタに表示させることもできる。
【0040】
制御部51は、外部から入力された信号や、当該制御部51でリーク判定したことに対応する信号に基づいてソレノイドモジュール41のキープソレノイドを制御する。キープソレノイドを制御することで、弁40を開から閉、閉から開にすることができる。
【0041】
流量取得部52は、流量測定素子30により生成する測定信号を受信し、当該測定信号に基づく流量を取得する部分である。熱式の流量測定素子30の場合、測温抵抗体からの放散熱量に係る測定信号を生成し、この放散熱量に係る測定信号を流量取得部52が受信すると、放熱熱量と流量との関係式を用いて配管20における圧縮空気の流量を演算し、取得することができる。流量測定素子が超音波式の場合は、例えば2つの超音波素子を設けておき、これら2つの超音波素子間での伝搬時間差を流量取得部52が取得し、取得した伝搬時間差を用いて配管20における圧縮空気の流量を演算し、取得することができる。また、流量取得部52によりある時点における瞬間流量を取得することができる。瞬間流量をある期間で積算することにより、積算流量を演算することができる。
【0042】
圧力取得部53は、圧力測定素子31により生成する測定信号を受信し、当該測定信号に基づく圧力を取得する部分である。圧力測定素子31としては、例えばひずみゲージや静電容量式のもの等で構成されており、圧縮空気の圧力を電気信号に変換して出力するように構成されている。この場合、圧力取得部53は圧力測定素子31から出力される電気信号に基づいて圧力を取得することができる。
【0043】
露点推定部55は、圧力測定素子31により生成した圧力信号と、温湿度計32により測定した温度及び湿度と、受付部54を介して受け付けた供給源310における圧縮空気の圧力とに基づいて当該供給源310における露点を推定する。露点を推定する際には、周知の演算式を用いればよく、演算式に、圧力測定素子31により生成した圧力信号と、温湿度計32により測定した温度及び湿度と、受付部54を介して受け付けた供給源310における圧縮空気の圧力とを代入することで、供給源における露点が得られる。
【0044】
露点推定部55は、推定した露点を、流量測定素子30により測定された流量に重み付けすることによって補正するように構成されている。すなわち、流量が過渡的に変動した場合、各部の流路圧損で圧力が変わり、これに伴い湿度も変化する。圧力測定素子31の計測応答性は早いが、温湿度計32が配設されている空間は分流構成としているため、低流量時には温湿度計32が配設されている空間の空気の入れ替わりが遅く、応答性が遅くなる。この応答性の差が計測誤差となる為、なるべく応答性が早い大流量時の重みを増やした方精度が高くなる。つまり、配管20を通過する圧縮空気の流量が多い方がより精度を高めることができるので、流量が多い方の計測値に重み付けを行うことで、精度の高い露点を推定できる。例えば、(瞬時流量×露点)/積算流量といった演算式を用いることで、流量測定素子30により測定された流量に重み付けすることができる。
【0045】
露点推定部55により推定した露点は、当該露点を推定した時刻と関連付けて記憶部56に記憶される。これにより、推定した露点の時系列データを取得できる。
【0046】
露点推定部55により推定した露点は、表示部61に表示される。図8は、露点を表示した露点表示画面400を示している。露点表示画面400は制御部51が生成して表示部61に表示させる。露点表示画面400には、配管20を通過する圧縮空気の温度を表示する温度表示領域401と、露点推定部55により推定した露点を表示する露点表示領域402と、配管20を通過する圧縮空気の湿度を表示する湿度表示領域403とが設けられている。温度表示領域401及び湿度表示領域403には、温湿度計32で測定された温度及び湿度がそれぞれ表示される。温度表示領域401及び湿度表示領域403は必要に応じて設ければよく、省略してもよい。また、露点表示画面400には、流量取得部52が取得した流量と、圧力取得部53が取得した圧力とのうち、少なくとも一方を表示してもよい。
【0047】
露点推定部55により推定した露点と、予め設定されている閾値とに基づく判定結果が表示部61に表示されるように構成することもできる。例えば露点推定部55により推定した露点が閾値を超えている場合には、当該閾値を超えていることを記号やアイコン、文字等で表示部61に表示する。また、露点推定部55により推定した露点が閾値以下の場合に、当該閾値以下であることを記号やアイコン、文字等で表示部61に表示してもよい。
【0048】
露点推定部55は、流量測定素子30により測定された流量を取得し、取得した流量が所定流量以下の時には、露点の推定処理を実行しないように構成されている。すなわち、圧縮空気の流量が少ない低流量時には露点の推定精度が低下してしまうので、低流量時に露点の推定処理を非実行にすることで、信頼性の低い露点を提示せずに済む。
【0049】
また、同様な理由から、表示部61は、流量測定素子30により測定された流量が所定流量以下の時には、露点を表示しないように構成されている。すなわち、露点推定部55は、圧縮空気の流量に関わらず、露点を推定してもよいが、透湿シートの詰まりで低流量時の誤差が大きくなる低流量時には露点の推定精度が低下してしまうので、低流量時に露点の表示処理を非実行にすることで、信頼性の低い露点を提示せずに済む。
【0050】
また、プロセス量測定装置1の制御部51は、露点推定部55により推定した露点と、予め設定されている閾値とに基づいてON/OFF信号を生成し、プロセス量測定装置1の外部へ出力する。これにより、露点推定部55により推定した露点とドライヤ303の設定露点とを比較することができるので、ドライヤ303の故障や能力不足を把握することが可能となる。例えばプロセス量測定装置1から出力された露点に基づいて、ドライヤ303の故障や能力不足を自動的に判定することもできる。
【0051】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本発明の実施形態に係るプロセス量測定装置1は、圧力測定素子31により生成した圧力信号と、温湿度計32により測定した温度及び湿度と、受付部54を介して受け付けた供給源310における圧縮空気の圧力とに基づいて当該供給源310における露点を露点推定部55によって推定し、露点推定部55により推定した露点を表示部61に表示させることができる。これにより、圧縮空気の乾燥が十分であるか否かを判断できるので、圧縮空気が結露することによる空圧機器の故障を未然に防止できる。
【0052】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上説明したように、本開示に係るプロセス量測定装置は、例えば各種空圧機器が設置された工場等で利用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 プロセス量測定装置
31 圧力測定素子
32 温湿度計
54 受付部
55 露点推定部
61 表示部
310 供給源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8