IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アトリスの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121942
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】情報提供システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20240101AFI20240902BHJP
【FI】
G06Q50/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029199
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】504411683
【氏名又は名称】株式会社アトリス
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長嶺 亮
(72)【発明者】
【氏名】網野 貴文
(72)【発明者】
【氏名】菊田 貫志
(72)【発明者】
【氏名】工藤 早苗
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC35
5L050CC35
(57)【要約】
【課題】住民であるユーザが有用又は必要な手続きを適時に実行することを可能にすると共に、役所においても住民であるユーザにとって有用又は必要な手続きを適時に案内することを可能にする。
【解決手段】この情報提供システムは、複数の部門毎の部門システムからユーザのデータを抽出してユーザ単位で管理するデータ管理部と、前記ユーザに関する入力を受け付けると共に得られた出力を前記ユーザに提供するフロントユーザインタフェースを提供するユーザインタフェース用コンピュータと、前記データ管理部で管理されるデータに従って、前記ユーザが実行し得る手続を定義するコンテンツデータを管理するコンテンツ管理部と、前記ユーザインタフェース用コンピュータからの入力に従い、前記コンテンツデータを参照して前記ユーザが実行可能な手続を判定する判定エンジンとを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部門毎の部門システムからユーザのデータを抽出してユーザ単位で管理するデータ管理部と、
前記ユーザに関する入力を受け付けると共に得られた出力を前記ユーザに提供するフロントユーザインタフェースを提供するユーザインタフェース用コンピュータと、
前記データ管理部で管理されるデータに従って、前記ユーザが実行し得る手続を定義するコンテンツデータを管理するコンテンツ管理部と、
前記ユーザインタフェース用コンピュータからの入力に従い、前記コンテンツデータを参照して前記ユーザが実行可能な手続を判定する判定エンジンと
を備えることを特徴とする情報提供システム。
【請求項2】
前記判定エンジンは、
前記ユーザが実行し得る手続を前記ユーザに提示するか否かを決定するための提示ルールに関する提示ルールデータと、
前記ユーザが前記手続を実行することを選択した場合に行われる審査のルールに関する審査ルールデータと
を有しており、
前記判定エンジンは、前記提示ルールデータに従い、前記コンテンツデータの中から前記ユーザに対応する手続を判定する、請求項1に記載の情報提供システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報提供システムに関し、より詳しくは、都道府県や市区町村の役所(市役所、区役所、役場等)などにおける事務処理及びユーザ(住民)の各種手続きを支援するための情報提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで市区町村の役所等において、住民であるユーザは、行政サービスに対する権利を行使するための手続き(申請や義務を果たすための届出)をリアル空間(役所の住民窓口等)において、且つ分野別・業種別の縦割りの枠組みの中で個々に行わなければならなかった。しかしデジタル社会が到来した今日、ガバナンスギャップが生じている状況にあり、今後はサイバー空間での対応や機能ベースで役割や担い手を見直さねばならず、これらの転換を支えるためのデジタル技術の活用や新しい情報処理システムの開発が求められている。
【0003】
住民の暮らしと安全を守る地方自治の目的のため、全国の市区町村の役所は住民に関する情報を管理し効率的に事務の履行を行うために情報処理システムを導入し、ユーザである住民の申請や届出等の手続きは紙処理でのプロセスをベースとした情報処理システムを用いて事務処理され、個々の業務システム内で管理されている。一例として住民基本台帳の情報は、住所地の市町村の役所における住民の基礎情報として管理運用され今日に至るが、住民基本台帳ネットワークの開発により全国の市町村及び都道府県、国の間でデジタル情報が共有され公共分野での手続きにおける住民票の添付が不要となった。これを機に行政分野においてのデジタル技術を活用した提案が様々なされており(例えば特許文献1参照)、ユーザ視点の行政サービス提供は住民に対する効果が高いことを示している。
【0004】
しかし、基礎自治体である市区町村の役所における事務処理は、あくまでも申請主義の旧態依然としているのが現状である。縦割り行政の下、ユーザ視点のサービス変革が求められるも、今もなお事務処理側の担い手視点で、紙書類の業務の手順を基にした業務個別のフローから一向に転換できない状況にある。そこで国もSociety5.0(サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムによる実現)を目指し、GovTech(ガブテック)を推進する中で行政サービスの効率化・最適化・利便性向上のためのデジタル技術の活用を推進しているところである。しかしながら、既存の行政分野のシステムはそもそもデータの流れを全体俯瞰したアーキテクチャ視点でのシームレスなシステムが存在しておらず、遅々として進展しない。いわば役所等の縦割り紙処理の台帳管理プロセスベースとしたシステム発想となっているため、同一ユーザに対する異なる種類の手続きは、住民のニーズに反して個別に処理されているのが実情である。一方、手続き者である住民(ユーザ自身)も、制度を理解し何を手続きすればよいのか必ずしも認識しているわけではないため、手続きの抜け落ち漏れや権利の未履行が発生しやすい状況を招いている。それでも残念ながら、住民一人ひとりに完全に合致したデータドリブン発想(データ主導型)の仕組みは未だに提供されていない。
【0005】
その主な理由は、担い手である市町村の職員も情報処理システムも住民からの申請・届出が事務処理の起点である。加えて業務単位の台帳管理システムであるため、業務を横断したデータ主導型の判定は困難である。エキスパートと呼ばれる各制度の個別要件を理解し提案できる人材は年々減少し、同様の役割を果たせる仕組みもない。分散管理している住民情報のリアルタイムでの情報収集もまた困難である。
【0006】
例えば、ある住民に子供が産まれた場合、住民は、先ず自身の権利義務等に関しインターネットや役所のホームページ等を通じて情報収集を行って自身に関連する権利義務や享受可能な行政サービスを調べ、手続きを行う。しかし、このような情報取得に関し住民に依拠した状況は、住民の情報収集能力によって、住民間で行政サービスを受ける機会に差が生じてしまうことになり、住民間の公平性の観点から問題がある。役所においても、そのような不公平を軽減するため、享受可能な行政サービスを的確に案内することが求められるが、行政サービスを得る要件が住民間で異なることから、そのような的確な案内は必ずしも容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-32525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑み、サイバー空間とリアル空間をつなぐ機能ベースの仕組みとして、住民であるユーザが必要な手続きを先読み型(プロアクティブ)で適時に案内提示し、手続を実行することを支援すると共に、担い手である役所においても事務処理プロセスの自動化による効率化とオペレーショナルリスクの低減、データマネジメントを強化するためのフロントと、業務システム双方に対して極めて効率的に事務処理を実現させるための仕組みを提供する。本発明は、現状の課題であるサイロ型(縦割り)の業務システムであっても、法令ドリブンでユーザである住民、担い手である職員双方に有用な情報処理システムとして既存の情報処理システム環境を転換させ、必要とするデータの提供を容易にするものである。
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明に係る情報提供システムは、複数の部門毎の部門システムからユーザのデータを抽出してユーザ単位で管理するデータ管理部と、前記ユーザに関する入力を受け付けると共に得られた出力を前記ユーザに提供するフロントユーザインタフェースを提供するユーザインタフェース用コンピュータと、前記データ管理部で管理されるデータに従って、前記ユーザが実行し得る手続を定義するコンテンツデータを管理するコンテンツ管理部と、前記ユーザインタフェース用コンピュータからの入力に従い、前記コンテンツデータを参照して前記ユーザが実行可能な手続を判定する判定エンジンとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、住民であるユーザが有用又は必要な手続きを適時に実行することを可能にすると共に、役所においても住民であるユーザにとって有用又は必要な手続きを適時に案内することを可能にする情報提供システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る情報提供システム1を説明する概略図である。
図2】コンテンツ管理部14において管理されるライフイベント定義データの一例を示す。
図3】サービス定義データの管理画面、及びサービス手続定義データの管理画面の一例を示す。
図4】サービス定義データの管理画面、及びサービス手続定義データの管理画面の一例を示す。
図5】行政サービス手続データの詳細を管理する管理画面の一例を示す。
図6】データの提示及び審査に必要となるデータセットとしてのデータカタログデータ及び提示及び審査に利用されるインタフェースに関するインタフェース情報の管理画面の一例を示す。
図7】提示ルールデータ(プロアクティブルールデータ)の管理画面の一例を示している。
図8】審査ルールデータ(一次審査ルールデータ)の管理画面の一例を示している。
図9】判定エンジン13の構成を説明するブロック図である。
図10】判定エンジン13の構成を説明するブロック図である。
図11】本実施の形態の情報提供システム1の動作を説明するフローチャートである。
図12】ユーザに適用可能な手続をフロントユーザインタフェース用コンピュータ11において提示する手順について説明するフローチャートである。
図13】選択された手続に関する一次審査を実行する手順について説明するフローチャートである。
図14】ユーザがフロントユーザインタフェース用コンピュータ11においてライフイベント及び識別番号を含む受付データを入力する手順を実行する場合における入出力画面の一例である。
図15】ユーザがフロントユーザインタフェース用コンピュータ11においてライフイベント及び識別番号を含む受付データを入力する手順を実行する場合における入出力画面の一例である。
図16】ユーザがフロントユーザインタフェース用コンピュータ11においてライフイベント及び識別番号を含む受付データを入力する手順を実行する場合における入出力画面の一例である。
図17】ユーザがフロントユーザインタフェース用コンピュータ11においてライフイベント及び識別番号を含む受付データを入力する手順を実行する場合における入出力画面の一例である。
図18】ユーザがフロントユーザインタフェース用コンピュータ11においてライフイベント及び識別番号を含む受付データを入力する手順を実行する場合における入出力画面の一例である。
図19】ユーザがフロントユーザインタフェース用コンピュータ11においてライフイベント及び識別番号を含む受付データを入力する手順を実行する場合における入出力画面の一例である。
図20】ユーザがフロントユーザインタフェース用コンピュータ11においてライフイベント及び識別番号を含む受付データを入力する手順を実行する場合における入出力画面の一例である。
図21】ユーザがフロントユーザインタフェース用コンピュータ11においてライフイベント及び識別番号を含む受付データを入力する手順を実行する場合における入出力画面の一例である。
図22】ユーザがフロントユーザインタフェース用コンピュータ11においてライフイベント及び識別番号を含む受付データを入力する手順を実行する場合における入出力画面の一例である。
図23】ユーザがフロントユーザインタフェース用コンピュータ11においてライフイベント及び識別番号を含む受付データを入力する手順を実行する場合における入出力画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではない。
【0013】
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0014】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る情報提供システム1を説明する。この情報提供システム1は、例えば市区町村の役所において、住民としてのユーザに対し情報提供を行うためのシステムであり得る。ユーザ(住民)は、役所に来庁し、情報提供システム1を操作する職員の介在の下、本システム1にアクセスしてライフイベント(出生、死亡、婚姻、離婚、転入、転出、転居、世帯変更等)及び、人格識別IDを入力することで、その世帯で必要な各種申請・届出を提示し、その手続きにおける入力支援を受けることができる。
【0015】
また、ユーザは、遠隔地にある端末装置2(パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォンなど)を用いてネットワークNW(専用線等)を介して本システム1にアクセスすることで、同様の各種申請・届出の提示、手続における入力支援を受けることもできる。なお、市区町村の役所は本システムが適用され得る団体の一例であり、類似の性質を有する各種団体(例えばNGO、組合、教育機関、社団法人、財団法人、私企業など)と、その構成員との間で本システムは利用され得る。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態の情報提供システム1は、端末装置2との間で情報の送受信を実行するためのフロントユーザインタフェース用コンピュータ11を備えている。このフロントユーザインタフェース用コンピュータ11は、ネットワーク(LAN、WAN、イントラネット、等)を介してデータ管理部12、判定エンジン13及びコンテンツ管理部14と接続される。
【0017】
フロントユーザインタフェース用コンピュータ11、データ管理部12、判定エンジン13及びコンテンツ管理部14により情報提供システム1が構成される。フロントユーザインタフェース用コンピュータ11は、データ管理部12にアクセスして、該当ユーザに関し参照可能なデータを参照すると共に、判定エンジン13からの判定結果を表示する機能を有する。
【0018】
データ管理部12は、当該住民の人格識別IDをキーとして、住民基本台帳システム、並びに役所の各種部門(例えば、戸籍住民課、税務課、高齢福祉課、障害福祉課、生活福祉課、介護保険課、国保年金課、子育て支援課、など)に設置された各種部門システムA、B、C、D…から、住民基本台帳システム及び各種部門システムのコンテンツ管理部14で規定されるデータカタログに基づき、必要なデータを抽出し統合する。一般に、組織・制度単位で個別にユーザの識別情報を管理すると共に、制度単位で管理されている属性情報を各種部門の基幹系システムが管理している。データ管理部12は、判定エンジン13で生成した手続き情報を役所に設置されてある総合行政システムへ連携する。総合行政システムからは、コンテンツ管理部14で規定されてあるサービス定義の設定値に基づき、各種サービスの管轄部門へ連携する。住民基本台帳システムは、住民基本台帳を構成する基礎データベースを有している。なお、中間サーバを介してデータ管理部と各部門システムが接続可能にもされ得る。
【0019】
判定エンジン13は、データ管理部12で世帯単位で取得された住民のデータと、コンテンツ管理部14で管理されたコンテンツデータとに従い、当該住民が実行可能な各種申請及び届出に関する情報の有無を判定する。判定エンジン13は、フロントユーザインタフェース用コンピュータ11から入力されたデータと、データ管理部12において住民単位で管理されている統合データを、コンテンツ管理部14で管理されているコンテンツデータ(ルールデータ)に照らし合わせ、ルールに合致するか否かを判定する。
【0020】
コンテンツ管理部14は、一例として、ライフイベントを定義するライフイベント定義データ、行政が住民に提供するサービスを規定するサービス定義データ、各サービスを住民が受ける権利を得たり、権利を手放したり、権利内容を変更するために必要な手続き・申請・届出等の手続を規定するサービス手続定義データを管理する。これと共にコンテンツ管理部14は、判定エンジン13において定義された申請・届出等の手続がユーザに適用可能かを判定するのに必要なルールデータを、コンテンツデータとして登録・編集・管理する。
【0021】
ルールデータは、住民の各々が行った申請・届出が承認されるための実体的要件、形式的要件、時期的要件、手続的要件等を示すデータである。コンテンツ管理部14は、住民・世帯に手続きを提示し、手続き情報を生成するための、コンテンツデータ(手続定義及びルールデータ)を登録・編集・管理する。コンテンツ管理部14が、判定エンジン13とは独立してコンテンツデータを管理することで、ルールの追加・変更・廃止等が生じた場合、これに柔軟に対応し、ルールの差し替え等を行うことができる。
【0022】
住民基本台帳システムにて管理される基礎情報(人格情報)の異動のきっかけとなる出来事をライフイベントとし、その種類を定義する。図2に、コンテンツ管理部14において管理されるライフイベント定義データの一例を示す。図2の管理画面では、ライフイベントの各々に対し、ライフイベントを識別するライフイベントコードと、ライフイベント名が付与され、一覧データとして管理されている。また、編集画面では、ライフイベントコード及びライフイベント名の編集が可能である。
【0023】
サービス定義データ及びサービス手続定義データにより定義された申請・届出等の手続は、そのカテゴリ毎に分類した形で登録・編集・管理される。定義された申請・届出等の手続は、例えば、制度分類(税・医療保険・年金・障害者福祉・介護保険・児童福祉など)と関連付けられて、それぞれの制度を利用するための属性情報に対する手続(新規申請・変更・廃止など)として定義される。図3及び図4に、サービス定義データの管理画面、及びサービス手続定義データの管理画面の一例を示す。
【0024】
図3のサービス定義データの管理画面では、各種行政サービスを、例えば行政サービスコード、行政サービス名、概要、担当部署等のデータにより定義している。また、編集画面では、これらのデータが適宜管理者により編集可能とされている。このような管理・編集画面は、コンテンツ管理部14を構成するコンピュータ(図示せず)のディスプレイにおいて表示され得る。
【0025】
図4のサービス手続定義データの管理画面は、行政サービス手続の各々に関し、行政サービス名、行政サービス手続名コード、及び行政サービス手続の名前である行政サービス手続名のデータが付与され、一覧データとして管理されている。また、編集画面では、行政サービス名、行政サービス手続名コード、及び行政サービス手続名が適宜編集可能にされている。図5は、行政サービス手続データの詳細を管理する管理画面の一例を示す。この管理画面では、行政サービス手続の各々を、行政サービス名、行政サービス手続名コード、行政サービス手続名に加え、対応するライフイベントを関連付けた上で管理している。また、編集画面により、この管理内容を適宜編集することも可能である。
【0026】
図6に、データの提示及び審査に必要となるデータセットとしてのデータカタログデータ及び提示及び審査に利用されるインタフェースに関するインタフェース情報の管理画面の一例を示す。この管理画面では、サービス手続のデータの提示及び審査に必要なデータセットとしてのデータカタログを、行政サービス手続名コード、行政サービス手続名、対象者、データカタログ名により管理している。また、編集画面により、この管理内容を適宜編集することも可能である。
【0027】
ルールデータは、提示ルールデータと審査ルールデータとに分類され得る。ルールデータ(提示ルールデータ、審査ルールデータ)はいずれも、定義記述部とルール記述部とからなる。定義記述部は、手続の概要などを文字列で記述すると共に、手続の種類に関する区分値を設定したものとすることができる。また、ルール記述部は、そのルールの概要を文字列で記述すると共に、ルールを数式で表現した評価式を含み得る。
【0028】
提示ルールデータは、ある住民・世帯に対し各種手続を提示するか否かを決定するために利用されるルールデータであり、ある住民・世帯が提示ルールデータを満たすと判定エンジン13により判定された場合に、当該手続が住民に対しフロントユーザインタフェース用コンピュータ11を介して提示される(ディスプレイ等に表示される)。提示ルールデータは、満たすべき条件を定量的に表現したものであってもよいし、定性的に表現したものであってもよい。
【0029】
図7は、提示ルールデータ(プロアクティブルールデータ)の管理画面の一例を示している。この管理画面では、提示ルールを、行政サービス名、行政サービス手続名コード、行政サービス手続名、対応するライフイベント及びルールコードにより管理している。また、編集画面によりこの管理画面を適宜編集することも可能とされている。
【0030】
審査ルールデータは、手続の種類毎に、あるユーザが手続を実行する上で必要なデータ項目及び、その値の条件を示したルールデータであり、手続単位で記述される。審査ルールデータは、一例として、ヘッダ部に手続の種類を示す識別記号が含められ、ペイロード部には審査項目ごとに記載した審査条件を含められ得る。あるユーザが審査ルールデータを満たすと判定エンジン13により判定がされた場合に、当該手続に関し一次審査を当該ユーザが条件に合致したと判定される。
【0031】
図8は、審査ルールデータ(一次審査ルールデータ)の管理画面の一例を示している。この管理画面では、審査ルール(一次審査ルールデータ)を、行政サービス名、行政サービス手続名コード、行政サービス手続名、対応するルールコード、及び評価項目により管理している。また、編集画面によりこの管理画面を適宜編集することも可能とされている。
【0032】
図9及び図10のブロック図を参照して、判定エンジン13の構成を説明する。図9に示すように、判定エンジン13は、一例として、提示ルールに関する判定を行うための構成として、入力部131、データ記憶部132、提示ルール適用部133、出力部134、比較部135、提示ルール入力部136を備えている。また、図10に示すように、判定エンジン13は、一例として、審査ルールに関する判定を行うための構成として、入力部141、データ記憶部142、審査ルール適用部143、出力部144、比較部145、審査ルール入力部146を備えている。
【0033】
入力部131は、フロントユーザインタフェース用コンピュータ11からのデータを入力するための入力インタフェースを提供する。データ記憶部132は、入力部131から入力されたデータを記憶する記憶部である。提示ルール適用部133は、入力部131から入力されたデータに係るユーザに対応するサービス定義データ及び提示ルールデータをコンテンツ管理部14から抽出する。
【0034】
比較部135は、データ記憶部132に記憶されるユーザのデータと、提示ルール入力部136から入力され提示ルール適用部133で抽出された提示ルールデータとを比較し、その一致/不一致を判定する。両者が合致する場合、出力部134は、当該ルールデータに対応するサービス定義データをフロントユーザインタフェース用コンピュータ11に向けて出力する。
【0035】
入力部141は、フロントユーザインタフェース用コンピュータ11からのデータを入力するための入力インタフェースを提供する。データ記憶部142は、入力部141から入力されたデータを記憶する記憶部である。審査ルール適用部143は、入力部141から入力されたデータに係るユーザに対応するサービス定義データ及び審査ルールデータを抽出する。比較部145は、データ記憶部142に記憶されるユーザのデータと、審査ルール入力部146から入力され審査ルール適用部143で抽出された審査ルールデータとを比較し、一次審査の合否を判定する。出力部144は、判定の結果をフロントユーザインタフェース用コンピュータ11に向けて出力する。なお、入力部141、出力部144、データ記憶部142は、入力部131、出力部134、データ記憶部132と共用されてもよい。
【0036】
判定エンジン13は、フロントユーザインタフェース用コンピュータ11から入力されたデータと、コンテンツ管理部14のコンテンツデータとに従い、ユーザが実行可能な手続を提示すると共に、ユーザが入力した申請・届出に関するデータに基づき、当該申請・届出に関し審査(一次審査)を実行する。具体的には、判定エンジン13は、ユーザが選択したライフイベント情報と住民情報に基づき、コンテンツ管理部14に格納されているコンテンツデータ中の提示ルールデータを参照して、当該ユーザに適用可能な手続をフロントユーザインタフェース用コンピュータ11において提示する。また判定エンジン13は、ユーザが選択した手続に対し審査ルールデータを適用して、当該ユーザに関して当該手続の一次審査の合否を判定する。
【0037】
フロントユーザインタフェース用コンピュータ11の役割について更に詳細に説明する。フロントユーザインタフェース用コンピュータ11にアクセスしてきたユーザ、又はオペレータは、以下のようなデータの入力作業を実行することができる。
(i)受付に関する情報の登録(例:受付番号の発行(自動発行も可)、手続者(来庁者)の情報の入力、日付(受付日・申請日)など)
(ii)ライフイベントに関する情報の登録(例:ライフイベント(出生、婚姻、離婚、死亡等)の特定、ライフイベントの対象の世帯構成員の特定、ライフイベント発生日、届出日等)
(iii)事前ヒアリング項目の入力(転入時等、役所内で把握できない情報について、データ管理部12等への出力の前にユーザに対し事前にヒアリングを行って得られた情報)
【0038】
フロントユーザインタフェース用コンピュータ11におけるライフイベントの提示があると、判定エンジン13は、当該ユーザに関する判定の結果として、選択可能な手続の種類と、それに必要なデータセットを返信する。フロントユーザインタフェース用コンピュータ11では、このような提示に従い、ユーザが希望する手続を選択することが可能である。具体的には、フロントユーザインタフェース用コンピュータ11において以下のような手順で手続の選択処理が実行され得る。
(i)データ管理部12より、提示判定に必要な住民データが取得される。
(ii)判定エンジン13での判定処理後、選択可能手続を示す手続一覧データ、及び選択可能な手続に必要なデータセットが、判定エンジン13からフロントユーザインタフェース用コンピュータ11に返送される。データセットには、手続き単位での手続用データ項目等が含まれ得る。
(iii)フロントユーザインタフェース用コンピュータ11のディスプレイに、手続一覧データが表示され、ユーザに選択を促す。
【0039】
ユーザにより、手続一覧データの中からユーザにより希望する手続の選択がなされると、その選択動作に含まれるユーザの識別情報(人格識別ID等)に従い、データ管理部12から対応する住民データ及び連携データが読み出され、判定エンジン13に転送される。判定エンジン13は、受信された住民データ及び連携データに従い、対応するコンテンツデータを読み出す。選択された手続毎に、コンテンツデータに含まれる審査ルールデータと手続に係る入力データとが照合され、これにより判定エンジン13により一次審査が実行される。その結果がフロントユーザインタフェース用コンピュータ11に出力・表示される。
【0040】
次に、図11のフローチャートを参照して、本情報提供システム1の動作を説明する。まず、本システム1のフロントユーザインタフェース用コンピュータ11に対し、本システム1による情報提供の対象となるユーザが、自身に関する各種申請・届出を自ら行う(ライフイベントの提示:ステップS11)。ユーザは提示されたライフイベントを指定し、ライフイベント当事者のユーザ識別情報を入力する(ステップS12)。
【0041】
フロントユーザインタフェース用コンピュータ11は、ライフイベント当事者として指定された住民の世帯について、データ管理部12を介して、住民データを抽出し、そのデータを判定エンジン13に照会する。
【0042】
判定エンジン13は、住民・世帯データとコンテンツ管理部14にて管理されてある提示ルールデータに基づいて、当該ユーザが可能な手続を手続一覧データとして提示する(ステップS17)。ユーザは、手続一覧データの中から希望する手続を選択し(ステップS18)、必要な入力を行う(ステップS19)。
【0043】
判定エンジン13は、入力された人格情報をもとに、データ管理部12を介して、選択した各手続きにおいて、関係する各種基幹システムからその住民に関し、当該手続きに必要なデータを抽出し、取得したデータを手続き項目の値としてセットし、セットした項目の値について、審査ルールデータを適用して、当該手続に関し一次審査を実行することができる。一次審査実行後、生成された手続データはフロントユーザインタフェース用コンピュータ11を介して、既存の総合行政システムや各種基幹システムへ連携され各部門業務へ引き継がれる。
【0044】
図12のフローチャートを参照して、ユーザに適用可能な手続をフロントユーザインタフェース用コンピュータ11において提示する手順について説明する。まず、ユーザがフロントユーザインタフェース用コンピュータ11においてライフイベント及び識別番号を含む受付データを入力する(ステップS111)。入力された受付データは判定エンジン13に出力され、データ記憶部132に記憶される。判定エンジン13内の比較部135は、データ記憶部132に記憶された受付データから属性データを抽出し(ステップS112)、属性データに合致するデータをコンテンツ管理部14が管理するコンテンツデータの中から抽出する(ステップS113)。
【0045】
合致するデータが抽出(検出)された場合(ステップS114のYes)、提示ルール適用部133は、そのデータに対応するルールデータの中から提示ルールデータを抽出し(ステップS115)、その提示ルールデータの評価を行った後(ステップS116)、評価結果をフロントユーザインタフェース用コンピュータ11に出力する(ステップS117)。
【0046】
次に、図13のフローチャートを参照して、選択された手続に関する一次審査を実行する手順について説明する。申請・届出が可能な手続がユーザにより選択され、その手続のためのデータが入力されると、その入力データは、入力部141を介して、受付データとしてデータ記憶部142に記憶される。判定エンジン13内の比較部145は、データ記憶部142に記憶された受付データから属性データを抽出し(ステップS122)、属性データに対応する審査ルールデータを抽出し、その審査ルールを入力データに適用する(ステップS124)。審査ルールの適用の結果、入力データの一次審査の合否の結果がフロントユーザインタフェース用コンピュータ11に出力される(ステップS125)。
【0047】
このように、本実施の形態の情報提供システム1では、データ管理部12により、ユーザの識別番号毎に各種部門システムに関するデータが管理されると共に、ユーザの各々において各種の権利義務が発生し、それに対応する申請・届出が可能になっているか否かが、コンテンツ管理部14においてコンテンツデータとして管理されているルールデータに基づいて判定される。
【0048】
図14図22を参照して、ユーザがフロントユーザインタフェース用コンピュータ11においてライフイベント及び識別番号を含む受付データを入力する手順を実行する場合における入出力画面の一例を説明する。まず、ユーザは、フロントユーザインタフェース用コンピュータ11において、図14に例示されるような画面からログインし、受付データの入力を開始する。図14は、ユーザが直接来庁して担当職員が入力を実行する場合にける開始画面の一例である。
【0049】
図14の開始画面においてログインが完了すると、図15のようなライフイベントの選択画面に移行する。担当職員又はユーザは、対応するライフイベントを選択して、図16の画面に移行する。図16の画面では、本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、その他身分証、等)、手続者の特定(申請者本人または同一世帯員、代理人、その他)、手続者氏名が入力され、次の図17の画面に移行する。図17の画面では、基礎情報の異動のきっかけとなったライフイベントの発生の日時、その届出日時、手続者の姓の変更の有無等が入力され、図18の画面に移行する。
【0050】
図18の画面では、検索条件に合致した世帯の一覧が表示され、世帯一覧から該当する世帯を指定すると、続く図19の画面では、当該世帯の世帯構成員の一覧が表示される。表示された世帯構成員の中から、今回の当該ライフイベントが起こった当事者を選択することができる。
【0051】
続く図20の画面では、当該ライフイベントの申請・届出に関し事前ヒアリングすべき事項が表示されるので、担当職員又はユーザは、表示された質問事項に回答する。質問の回答後、ここまでの入力内容をインプット情報とし、提示ルール判定がなされ、図21の画面では、当該ライフイベントに関し、当該当事者または、その世帯に該当する手続が列記される。担当職員又はユーザは、ユーザの希望等に従い、実行する手続を選択する。
【0052】
選択し、次へ進むと、図22のような申請情報入力画面が表示され、そこで、その手続きにおける人格情報(手続者・申請者・対象者・関係者)を指定し、「完了」ボタンが押されることにより判定エンジンに手続情報を作成する上で必要な情報が送られ、判定エンジンにて手続(申請・届出)情報を自動生成し、その生成した手続き情報を図23の画面にて表示し、最終同意確認(電子サインなど)をもって手続が完了する。
住民の手続き完了後、手続きデータは庁内各部門システムへ連携される。
【0053】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…情報提供システム
2…端末装置
11…フロントユーザインタフェース用コンピュータ
12…データ管理部
13…判定エンジン
14…コンテンツ管理部
131、141…入力部
132、142…データ記憶部
133…提示ルール適用部
134、144…出力部
135、145…比較部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23