IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川崎重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-エンジンシステム 図1
  • 特開-エンジンシステム 図2
  • 特開-エンジンシステム 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121951
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】エンジンシステム
(51)【国際特許分類】
   F02D 23/00 20060101AFI20240902BHJP
   F02B 37/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
F02D23/00 J
F02B37/00 302F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029212
(22)【出願日】2023-02-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「グリーンイノベーション基金事業/次世代船舶の開発/水素燃料船の開発」委託研究の研究成果に係る産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 尚
(72)【発明者】
【氏名】前田 義人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 祐太
(72)【発明者】
【氏名】阪本 智浩
(72)【発明者】
【氏名】今野 海航
(72)【発明者】
【氏名】中山 恭太郎
(72)【発明者】
【氏名】平山 永遠
【テーマコード(参考)】
3G005
3G092
【Fターム(参考)】
3G005EA03
3G005EA24
3G005EA26
3G005FA07
3G092AA17
3G092AA18
3G092DB03
3G092DC08
3G092EA11
3G092FA05
(57)【要約】
【課題】EGRを実行するか否かにより過給機の切り替えを行うことができるエンジンシステムを提供する。
【解決手段】一実施形態に係るエンジンシステム1は、エンジン2、主過給機3およびEGR過給機5を含む。また、エンジンシステム1は、第1並列給気路41、第2並列給気路61、主給気路21、主排気路22、第1並列排気路43、第2並列排気路63、EGR通路71、第1ジェットアシスト路81および第2ジェットアシスト路83を含む。さらに、エンジンシステム1は、第1給気遮断弁42、第2給気遮断弁62、第1排気遮断弁44、第2排気遮断弁64、第1放風弁46、第2放風弁66、EGRブロワ73、EGR遮断弁72,74、第1ジェットアシスト弁82および第2ジェットアシスト弁84を制御する制御装置9を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主給気路および主排気路が接続されたレシプロエンジンと、
前記主給気路と前記主排気路とを接続するEGR通路に設けられたEGRブロワおよび少なくとも1つのEGR遮断弁と、
第1並列給気路により前記主給気路と接続された第1圧縮機、および第1並列排気路により前記主排気路と接続された第1タービンを含む主過給機と、
第2並列給気路により前記主給気路と接続された第2圧縮機、および第2並列排気路により前記主排気路と接続された第2タービンを含むEGR過給機と、
前記第1並列給気路および前記第1並列排気路にそれぞれ設けられた第1給気遮断弁および第1排気遮断弁と、
前記第2並列給気路および前記第2並列排気路にそれぞれ設けられた第2給気遮断弁および第2排気遮断弁と、
前記第1給気遮断弁の上流側で前記第1並列給気路から分岐する第1放風路に設けられた第1放風弁と、
前記第2給気遮断弁の上流側で前記第2並列給気路から分岐する第2放風路に設けられた第2放風弁と、
前記第1圧縮機へジェットアシストエアを導く第1ジェットアシスト路に設けられた第1ジェットアシスト弁と、
前記第2圧縮機へジェットアシストエアを導く第2ジェットアシスト路に設けられた第2ジェットアシスト弁と、
前記EGRブロワ、前記少なくとも1つのEGR遮断弁、前記第1給気遮断弁、前記第1排気遮断弁、前記第2給気遮断弁、前記第2排気遮断弁、前記第1放風弁、前記第2放風弁、前記第1ジェットアシスト弁および前記第2ジェットアシスト弁を制御する制御装置と、
を備える、エンジンシステム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1給気遮断弁、前記第1排気遮断弁、前記第1放風弁、前記第2放風弁、前記第1ジェットアシスト弁および前記第2ジェットアシスト弁が閉じられ、前記第2給気遮断弁、前記第2排気遮断弁および前記少なくとも1つのEGR遮断弁が開かれたEGR実行モードからEGR不実行モードに切り替える際、
第1に、前記第1ジェットアシスト弁および前記第2ジェットアシスト弁を開いた後に、前記第1放風弁および前記第1排気遮断弁を開き、
第2に、前記第2ジェットアシスト弁を閉じた後に、前記第1放風弁を閉じるとともに前記第1給気遮断弁を開きながら、前記第2給気遮断弁および前記第2排気遮断弁を閉じるとともに前記第2放風弁を開き、
第3に、前記EGRブロワを停止し、
第4に、前記少なくとも1つのEGR遮断弁および前記第1ジェットアシスト弁を閉じる、請求項1に記載のエンジンシステム。
【請求項3】
前記EGRブロワの下流側から上流側へ排気ガスを導くEGR還流路に設けられた、前記制御装置により制御されるEGR還流弁をさらに備え、
前記制御装置は、前記第1給気遮断弁および前記第1排気遮断弁が開かれ、前記第2給気遮断弁、前記第2排気遮断弁、前記少なくとも1つのEGR遮断弁、前記EGR還流弁、前記第1放風弁、前記第2放風弁、前記第1ジェットアシスト弁および前記第2ジェットアシスト弁が閉じられたEGR不実行モードからEGR実行モードに切り替える際、
第1に、前記EGRブロワを稼働させるとともに前記EGR還流弁を開き、
第2に、前記第1ジェットアシスト弁および前記第2ジェットアシスト弁を開いた後に、前記第1放風弁、前記第2排気遮断弁および前記第2放風弁を開き、
第3に、前記第2給気遮断弁を開きながら前記第2放風弁を閉じ、
第4に、前記少なくとも1つのEGR遮断弁を開きながら、前記EGR還流弁、前記第1給気遮断弁および前記第1排気遮断弁を閉じ、
第5に、前記第1ジェットアシスト弁および前記第2ジェットアシスト弁を閉じた後に、前記第1放風弁を閉じる、請求項1または2に記載のエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レシプロエンジンおよび複数の過給機を含むエンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レシプロエンジンおよび複数の過給機を含むエンジンシステムが知られている。例えば、特許文献1には、主過給機および副過給機がレシプロエンジンに対して並列に接続されたエンジンシステムが開示されている。
【0003】
より詳しくは、特許文献1のエンジンシステムでは、レシプロエンジンに主給気路が接続され、前記主給気路に第1並列給気路により主過給機の第1圧縮機が接続されるとともに第2並列給気路により副過給機の第2圧縮機が接続されている。また、第2並列給気路からは放風路が分岐しており、前記放風路に放風弁が設けられている。さらに、主過給機の第1タービンは第1排気路によりレシプロエンジンと接続され、副過給機の第2タービンは第2排気路によりレシプロエンジンと接続されている。第2並列給気路には放風路の分岐点よりも下流側に給気遮断弁が設けられ、第2排気路には排気遮断弁が設けられている。
【0004】
特許文献1のエンジンシステムでは、主過給機と副過給機の双方を使用する状態から給気遮断弁および排気遮断弁を閉じて副過給機を停止する際に、第2圧縮機の吐出圧に応じて放風弁が開閉される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2015/162840号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、EGR(Exhaust Gas Recirculation)を実行可能なエンジンシステムにおいて複数の過給機を用いる場合、EGRを実行するか否かで過給機を切り替えることが考えられる。すなわち、複数の過給機として、EGR不実行モードで使用する主過給機と、EGR実行モードで使用するEGR過給機が用いられる。このようにすれば、それぞれのモードで最適な過給機効率となるような過給機を選定することができる。これに対し、特許文献1のエンジンシステムでは過給機の切り替えを行うことはできない。
【0007】
そこで、本開示は、EGRを実行するか否かにより過給機の切り替えを行うことができるエンジンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、主給気路および主排気路が接続されたレシプロエンジンと、前記主給気路と前記主排気路とを接続するEGR通路に設けられたEGRブロワおよび少なくとも1つのEGR遮断弁と、第1並列給気路により前記主給気路と接続された第1圧縮機、および第1並列排気路により前記主排気路と接続された第1タービンを含む主過給機と、第2並列給気路により前記主給気路と接続された第2圧縮機、および第2並列排気路により前記主排気路と接続された第2タービンを含むEGR過給機と、前記第1並列給気路および前記第1並列排気路にそれぞれ設けられた第1給気遮断弁および第1排気遮断弁と、前記第2並列給気路および前記第2並列排気路にそれぞれ設けられた第2給気遮断弁および第2排気遮断弁と、前記第1給気遮断弁の上流側で前記第1並列給気路から分岐する第1放風路に設けられた第1放風弁と、前記第2給気遮断弁の上流側で前記第2並列給気路から分岐する第2放風路に設けられた第2放風弁と、前記第1圧縮機へジェットアシストエアを導く第1ジェットアシスト路に設けられた第1ジェットアシスト弁と、前記第2圧縮機へジェットアシストエアを導く第2ジェットアシスト路に設けられた第2ジェットアシスト弁と、前記EGRブロワ、前記少なくとも1つのEGR遮断弁、前記第1給気遮断弁、前記第1排気遮断弁、前記第2給気遮断弁、前記第2排気遮断弁、前記第1放風弁、前記第2放風弁、前記第1ジェットアシスト弁および前記第2ジェットアシスト弁を制御する制御装置と、を備える、エンジンシステムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、EGRを実行するか否かにより過給機の切り替えを行うことができるエンジンシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るエンジンシステムの概略構成図である。
図2】EGR実行モードからEGR不実行モードへ切り替える際のタイミングチャートである。
図3】EGR不実行モードからEGR実行モードへ切り替える際のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に、一実施形態に係るエンジンシステム1を示す。このエンジンシステム1は、レシプロエンジン2、主過給機3、EGR過給機5および制御装置9を含む。エンジンシステム1では、EGRを実行するか否かが切り替えられる。
【0012】
EGRを実行するか否かはオペレータにより切り替えられてもよいし、自動運転によって切り替えられてもよい。例えば、エンジンシステム1が船舶に搭載される場合、港湾内などNOxの排出を抑えるべき領域ではEGRが実行される。ただし、エンジンシステム1は、陸上の発電設備に組み込まれてもよい。この場合、レシプロエンジン2が2種類の燃料を使用する二元燃料エンジンであれば、燃料切り替え時に燃焼最適化のためにEGRが実行される。
【0013】
レシプロエンジン2は、クランクシャフトと、クランクシャフトの軸方向に一列または二列で並ぶ複数のシリンダを含む。レシプロエンジン2は、2ストロークエンジンであってもよいし、4ストロークエンジンであってもよい。また、レシプロエンジン2での燃焼サイクルはオットーサイクルでもディーゼルサイクルでもよい。
【0014】
レシプロエンジン2には、主給気路21および主排気路22が接続されている。例えば、主給気路21は、前記クランクシャフトの軸方向に延びる給気マニホールドと、前記給気マニホールドと前記複数のシリンダとを接続する複数の分岐路を含む。同様に、主排気路22は、前記クランクシャフトの軸方向に延びる排気マニホールドと、前記排気マニホールドと前記複数のシリンダとを接続する複数の分岐路を含む。
【0015】
主過給機3はEGR不実行モードで使用され、EGR過給機5はEGR実行モードで使用される。主過給機3は第1圧縮機31および第1タービン32を含み、EGR過給機5は第2圧縮機51および第2タービン52を含む。
【0016】
第1圧縮機31は第1並列給気路41により主給気路21と接続され、第2圧縮機51は第2並列給気路61により主給気路21と接続されている。また、第1タービン32は第1並列排気路43により主排気路22と接続され、第2タービン52は第2並列排気路63により主排気路22と接続されている。
【0017】
第1並列給気路41および第2並列給気路61には第1給気遮断弁42および第2給気遮断弁62がそれぞれ設けられ、第1並列排気路43および第2並列排気路63には第1排気遮断弁44および第2排気遮断弁64がそれぞれ設けられている。
【0018】
第1圧縮機31には流入路3aを通じて空気が供給され、第1タービン32からは流出路3bを通じて排気ガスが排出される。同様に、第2圧縮機51には流入路5aを通じて空気が供給され、第2タービン52からは流出路5bを通じて排気ガスが排出される。
【0019】
さらに、第1並列給気路41からは、第1給気遮断弁42の上流側で第1放風路45が分岐している。第1放風路45の先端は大気中に開放されている。第1放風路45には第1放風弁46が設けられている。
【0020】
同様に、第2並列給気路61からは、第2給気遮断弁62の上流側で第2放風路65が分岐している。第2放風路65の先端は大気中に開放されている。第2放風路65には第2放風弁66が設けられている。
【0021】
第1圧縮機31には第1ジェットアシスト路81も接続されている。第1ジェットアシスト路81は、圧縮空気を貯留するタンクから第1圧縮機31へジェットアシストエアを導くものである。第1ジェットアシスト路81には第1ジェットアシスト弁82が設けられている。
【0022】
同様に、第2圧縮機51には第2ジェットアシスト路83も接続されている。第2ジェットアシスト路83は、圧縮空気を貯留するタンクから第2圧縮機51へジェットアシストエアを導くものである。第2ジェットアシスト路83には第2ジェットアシスト弁84が設けられている。
【0023】
上述した主給気路21と主排気路22とはEGR通路71によって互いに接続されている。EGR通路71には、EGRブロワ73が設けられているとともに、EGRブロワ73の上流側および下流側にEGR遮断弁72,74が設けられている。なお、EGR遮断弁72,74の一方は省略されてもよい。
【0024】
EGR通路71には、EGRブロワ73の下流側から上流側へ排気ガスを導くEGR還流路75が接続されている。EGR還流路75にはEGR還流弁76が設けられている。
【0025】
制御装置9は、第1給気遮断弁42、第2給気遮断弁62、第1排気遮断弁44、第2排気遮断弁64、第1放風弁46、第2放風弁66、第1ジェットアシスト弁82、第2ジェットアシスト弁84、EGRブロワ73、EGR遮断弁72,74およびEGR還流弁76を制御する。なお、図1では、図面の簡略化のために一部の信号線の作図を省略する。
【0026】
制御装置9に関し、本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、および/または、それらの組み合わせ、を含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウエアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウエアである。ハードウエアは、本明細書に開示されているハードウエアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウエアであってもよい。ハードウエアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、またはユニットはハードウエアとソフトウエアの組み合わせであり、ソフトウエアはハードウエアおよび/またはプロセッサの構成に使用される。
【0027】
次に、制御装置9が行う制御について説明する。本実施形態では、制御装置9が圧力センサ91,92,93と電気的に接続されている。圧力センサ91は第1並列給気路41に設けられ、第1圧縮機31の出口圧力を検出する。圧力センサ92は、第2並列給気路61に設けられ、第2圧縮機51の出口圧力を検出する。圧力センサ93は、主給気路21に設けられ、レシプロエンジン2への供給圧力を検出する。
【0028】
まず、図2を参照して、EGR実行モードからEGR不実行モードに切り替える場合を説明する。EGR実行モードでは、第1給気遮断弁42、第1排気遮断弁44、第1放風弁46、第2放風弁66、第1ジェットアシスト弁82、第2ジェットアシスト弁84およびEGR還流弁76が閉じられ、第2給気遮断弁62、第2排気遮断弁64およびEGR遮断弁72,74が開かれる。EGR不実行モードでは、第1給気遮断弁42および第1排気遮断弁44が開かれ、第1放風弁46、第2給気遮断弁62、第2排気遮断弁64、第2放風弁66、EGR遮断弁72,74、EGR還流弁76、第1ジェットアシスト弁82および第2ジェットアシスト弁84が閉じられる。
【0029】
制御装置9は、EGR過給機5から主過給機3への過給機切替指令を受けたとき(時刻t1)、第1ジェットアシスト弁82および第2ジェットアシスト弁84を開いた後に、第1放風弁46を所定の開度まで開く。第2ジェットアシスト弁84を開くことによってEGR過給機5の回転数が上昇するため、制御装置9は、EGR過給機5の回転数が安定した後に(時刻t2)、第1排気遮断弁44を開く。例えば、制御装置9は、時刻t1から所定時間が経過したときに、EGR過給機5の回転数が安定したと判定してもよい。
【0030】
次に、制御装置9は、切替条件が成立したときに(時刻t3)、第2ジェットアシスト弁84を閉じる。本実施形態では、切替条件が、圧力センサ91で検出される第1圧縮機31の出口圧力が、圧力センサ93で検出されるレシプロエンジン2への供給圧力よりも高くなることである。
【0031】
その後、制御装置9は、第1放風弁46を閉じるとともに第1給気遮断弁42を開きながら、第2給気遮断弁62および第2排気遮断弁64を閉じるとともに第2放風弁66を所定の開度まで開く。制御装置9は、第1給気遮断弁42が全開となると(時刻t4)、EGRブロワ73を減速し、第2給気遮断弁62が全閉となると第2放風弁66を閉じる。制御装置9は、EGRブロワ73が停止した後に(時刻t5)、EGR遮断弁72,74を閉じ、EGR遮断弁72,74が全閉となったときに(時刻t6)、第1ジェットアシスト弁82を閉じる。
【0032】
次に、図3を参照して、EGR不実行モードからEGR実行モードに切り替える場合を説明する。
【0033】
制御装置9は、主過給機3からEGR過給機5への過給機切替指令を受けたとき(時刻t11)、EGRブロワ73を稼働させるとともにEGR還流弁76を開く。EGRブロワ73の回転数が目標回転数となったとき(時刻t12)、制御装置9は、第1ジェットアシスト弁82および第2ジェットアシスト弁84を開く。その後、制御装置9は、第2排気遮断弁64を開くとともに、第1放風弁46および第2放風弁66を所定の開度まで開く。
【0034】
次に、制御装置9は、切替条件が成立したときに(時刻t13)、第2給気遮断弁62を開きながら第2放風弁66を閉じる。本実施形態では、切替条件が、圧力センサ92で検出される第2圧縮機51の出口圧力が、圧力センサ93で検出されるレシプロエンジン2への供給圧力よりも高くなることである。
【0035】
その後、制御装置9は、第2給気遮断弁62が全開となると(時刻t14)、EGR遮断弁72,74を開きながら、EGR還流弁76、第1給気遮断弁42および第1排気遮断弁44を閉じる。制御装置9は、EGR遮断弁72,74が全開となると(時刻t15)、第1ジェットアシスト弁82および第2ジェットアシスト弁84を閉じ、その後に第1放風弁46を閉じる。第1放風弁46が全閉となった後は(時刻t16)、制御装置9は、例えば主給気路21におけるEGR通路71の合流点よりも下流側での給気中の酸素濃度に基づいてEGRブロワ73を制御する。
【0036】
以上説明したように、本実施形態のエンジンシステム1では、EGR不実行モードでは第1給気遮断弁42および第1排気遮断弁44を開くとともに第2給気遮断弁62および第2排気遮断弁64を閉じることでEGR過給機5を停止させて主過給機3を稼働させることができ、EGR実行モードでは第1給気遮断弁42および第1排気遮断弁44を閉じるとともに第2給気遮断弁62および第2排気遮断弁64を開くことで主過給機3を停止させてEGR過給機5を稼働させることができる。すなわち、EGRを実行するか否かにより過給機の切り替えを行うことができる。これにより、主過給機3をEGR不実行モードで最適な過給機効率となるように選定することができるとともに、EGR過給機5をEGR実行モードで最適な過給機効率となるように選定することができる。しかも、第1放風弁46、第2放風弁66、第1ジェットアシスト弁82および第2ジェットアシスト弁84を制御装置9で制御することにより、過給機の切り替え時のサージング(給気が過給機を逆流する現象)を防止することができる。
【0037】
特に本実施形態では、図2に示すような制御によりEGR実行モードからEGR不実行モードへ切り替える際に主過給機3側でのサージングを防止することができるとともに、図3に示すような制御によりEGR不実行モードからEGR実行モードへ切り替える際にEGR過給機5側でのサージングを防止することができる。
【0038】
<変形例>
本開示は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0039】
例えば、EGR過給機5は直列に接続された複数の過給機で構成されてもよい。
【0040】
<まとめ>
第1の態様として、本開示は、主給気路および主排気路が接続されたレシプロエンジンと、前記主給気路と前記主排気路とを接続するEGR通路に設けられたEGRブロワおよび少なくとも1つのEGR遮断弁と、第1並列給気路により前記主給気路と接続された第1圧縮機、および第1並列排気路により前記主排気路と接続された第1タービンを含む主過給機と、第2並列給気路により前記主給気路と接続された第2圧縮機、および第2並列排気路により前記主排気路と接続された第2タービンを含むEGR過給機と、前記第1並列給気路および前記第1並列排気路にそれぞれ設けられた第1給気遮断弁および第1排気遮断弁と、前記第2並列給気路および前記第2並列排気路にそれぞれ設けられた第2給気遮断弁および第2排気遮断弁と、前記第1給気遮断弁の上流側で前記第1並列給気路から分岐する第1放風路に設けられた第1放風弁と、前記第2給気遮断弁の上流側で前記第2並列給気路から分岐する第2放風路に設けられた第2放風弁と、前記第1圧縮機へジェットアシストエアを導く第1ジェットアシスト路に設けられた第1ジェットアシスト弁と、前記第2圧縮機へジェットアシストエアを導く第2ジェットアシスト路に設けられた第2ジェットアシスト弁と、前記EGRブロワ、前記少なくとも1つのEGR遮断弁、前記第1給気遮断弁、前記第1排気遮断弁、前記第2給気遮断弁、前記第2排気遮断弁、前記第1放風弁、前記第2放風弁、前記第1ジェットアシスト弁および前記第2ジェットアシスト弁を制御する制御装置と、を備える、エンジンシステムを提供する。
【0041】
上記の構成によれば、EGR不実行モードでは第1給気遮断弁および第1排気遮断弁を開くとともに第2給気遮断弁および第2排気遮断弁を閉じることでEGR過給機を停止させて主過給機を稼働させることができ、EGR実行モードでは第1給気遮断弁および第1排気遮断弁を閉じるとともに第2給気遮断弁および第2排気遮断弁を開くことで主過給機を停止させてEGR過給機を稼働させることができる。すなわち、EGRを実行するか否かにより過給機の切り替えを行うことができる。これにより、主過給機をEGR不実行モードで最適な過給機効率となるように選定することができるとともに、EGR過給機をEGR実行モードで最適な過給機効率となるように選定することができる。しかも、第1放風弁、第2放風弁、第1ジェットアシスト弁および第2ジェットアシスト弁を制御装置で制御することにより、過給機の切り替え時のサージングを防止することができる。
【0042】
第2の態様として、第1の態様において、前記制御装置は、前記第1給気遮断弁、前記第1排気遮断弁、前記第1放風弁、前記第2放風弁、前記第1ジェットアシスト弁および前記第2ジェットアシスト弁が閉じられ、前記第2給気遮断弁、前記第2排気遮断弁および前記少なくとも1つのEGR遮断弁が開かれたEGR実行モードからEGR不実行モードに切り替える際、第1に、前記第1ジェットアシスト弁および前記第2ジェットアシスト弁を開いた後に、前記第1放風弁および前記第1排気遮断弁を開き、第2に、前記第2ジェットアシスト弁を閉じた後に、前記第1放風弁を閉じるとともに前記第1給気遮断弁を開きながら、前記第2給気遮断弁および前記第2排気遮断弁を閉じるとともに前記第2放風弁を開き、第3に、前記EGRブロワを停止し、第4に、前記少なくとも1つのEGR遮断弁および前記第1ジェットアシスト弁を閉じてもよい。EGR実行モードからEGR不実行モードへ切り替える際に主過給機側でのサージングを防止することができる。
【0043】
第3の態様として、第1または第2の態様において、上記のエンジンシステムは、前記EGRブロワの下流側から上流側へ排気ガスを導くEGR還流路に設けられた、前記制御装置により制御されるEGR還流弁をさらに備え、前記制御装置は、前記第1給気遮断弁および前記第1排気遮断弁が開かれ、前記第2給気遮断弁、前記第2排気遮断弁、前記少なくとも1つのEGR遮断弁、前記EGR還流弁、前記第1放風弁、前記第2放風弁、前記第1ジェットアシスト弁および前記第2ジェットアシスト弁が閉じられたEGR不実行モードからEGR実行モードに切り替える際、第1に、前記EGRブロワを稼働させるとともに前記EGR還流弁を開き、第2に、前記第1ジェットアシスト弁および前記第2ジェットアシスト弁を開いた後に、前記第1放風弁、前記第2排気遮断弁および前記第2放風弁を開き、第3に、前記第2給気遮断弁を開きながら前記第2放風弁を閉じ、第4に、前記少なくとも1つのEGR遮断弁を開きながら、前記EGR還流弁、前記第1給気遮断弁および前記第1排気遮断弁を閉じ、第5に、前記第1ジェットアシスト弁および前記第2ジェットアシスト弁を閉じた後に、前記第1放風弁を閉じてもよい。この構成によれば、EGR不実行モードからEGR実行モードへ切り替える際にEGR過給機側でのサージングを防止することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 エンジンシステム
2 レシプロエンジン
21 主給気路
22 主排気路
3 主過給機
31 第1圧縮機
32 第1タービン
41 第1並列給気路
42 第1給気遮断弁
43 第1並列排気路
44 第1排気遮断弁
5 EGR過給機
51 第2圧縮機
52 第2タービン
61 第2並列給気路
62 第2給気遮断弁
63 第2並列排気路
64 第2排気遮断弁
71 EGR通路
72,74 EGR遮断弁
73 EGRブロワ
81 第1ジェットアシスト路
82 第1ジェットアシスト弁
83 第2ジェットアシスト路
84 第2ジェットアシスト弁
9 制御装置
図1
図2
図3