(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121953
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】プロテクタおよびワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 11/00 20060101AFI20240902BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20240902BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
H02G11/00
H02G3/04 062
B60R16/02 623T
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029215
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸次
(72)【発明者】
【氏名】土田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】柴田 友容
【テーマコード(参考)】
5G357
5G371
【Fターム(参考)】
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD02
5G357DD10
5G357DE03
5G357DE05
5G357DE08
5G371AA01
5G371BA01
5G371CA01
(57)【要約】
【課題】グリスを引き延ばし易くすると共に、グリス溜まりの発生を抑制することができるプロテクタおよびワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【解決手段】プロテクタ1は、収容空間部4が設けられたケース10と、収容空間部4を積層方向Zの一方側から覆うようにケース10に取り付けられるカバー20と、を備え、ケース10の周壁12は、幅方向Yの一方側に位置され配索材Wのうち折返し部W3の一端部と接続され延在方向Xに沿って延在する第1直線部W1と対向する第1周壁12aと、幅方向Yの他方側に位置され配索材Wのうち折返し部W3の他端部と接続され延在方向Xに沿って延在する第2直線部W2と対向する第2周壁12bと、を含み、底壁11と第1周壁12aとの間の内面角部13、および底壁11と第2周壁12bとの間の内面角部13は、それぞれ配索材Wの外周面C1に沿った曲面状に形成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
延在方向に沿って延在する底壁と、前記底壁の周縁部から前記延在方向と交差する積層方向の一方側に突出した周壁と、を有し、前記周壁の内側に車両に配索される配索材の折返し部が収容される収容空間部が設けられたケースと、
前記収容空間部を前記積層方向の一方側から覆うように前記ケースに取り付けられるカバーと、
を備え、
前記ケースおよび前記カバーには、前記収容空間部と外部とを連通し、前記配索材が前記収容空間部内に導入または前記収容空間部外に引き出される一対の開口部が設けられ、
前記周壁は、前記延在方向および前記積層方向と交差する幅方向の一方側に位置され前記配索材のうち前記折返し部の一端部と接続され前記延在方向に沿って延在する第1直線部と対向する第1周壁と、前記幅方向の他方側に位置され前記配索材のうち前記折返し部の他端部と接続され前記延在方向に沿って延在する第2直線部と対向する第2周壁と、を含み、
前記底壁と前記第1周壁との間の内面角部、および前記底壁と前記第2周壁との間の内面角部は、それぞれ前記配索材の外周面に沿った曲面状に形成される、
プロテクタ。
【請求項2】
前記周壁は、前記第1周壁と前記第2周壁とに接続され前記折返し部と対向する第3周壁を含み、
前記底壁と前記第3周壁との間の内面角部についても、前記配索材の外周面に沿った曲面状に形成される、
請求項1に記載のプロテクタ。
【請求項3】
前記配索材は、複数の電線と、前記複数の電線を収容する円筒状のコルゲートチューブと、を含み、
前記内面角部は、それぞれ前記コルゲートチューブの外周面に沿った曲面状に形成される、
請求項1または2に記載のプロテクタ。
【請求項4】
導電性を有する配索材と、
前記配索材を保護するプロテクタと、を備え、
前記プロテクタは、
延在方向に沿って延在する底壁と、前記底壁の周縁部から前記延在方向と交差する積層方向の一方側に突出した周壁と、を有し、前記周壁の内側に車両に配索される前記配索材の折返し部が収容される収容空間部が設けられたケースと、
前記収容空間部を前記積層方向の一方側から覆うように前記ケースに取り付けられるカバーと、
を備え、
前記ケースおよび前記カバーには、前記収容空間部と外部とを連通し、前記配索材が前記収容空間部内に導入または前記収容空間部外に引き出される一対の開口部が設けられ、
前記周壁は、前記延在方向および前記積層方向と交差する幅方向の一方側に位置され前記配索材のうち前記折返し部の一端部と接続され前記延在方向に沿って延在する第1直線部と対向する第1周壁と、前記幅方向の他方側に位置され前記配索材のうち前記折返し部の他端部と接続され前記延在方向に沿って延在する第2直線部と対向する第2周壁と、を含み、
前記底壁と前記第1周壁との間の内面角部、および前記底壁と前記第2周壁との間の内面角部は、それぞれ前記配索材の外周面に沿った曲面状に形成される、
ワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテクタおよびワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のワイヤハーネスのプロテクタに関する技術として、例えば、特許文献1には、車両に配索される配索材の折返し部が収容される収容空間部が設けられたケースと、収容空間部を積層方向の一方側から覆うようにケースに取り付けられるカバーと、を備えたプロテクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に記載のワイヤハーネスでは、例えば、ケース内には配索材の摺動を円滑に行わせるためのグリスが塗布されているが、ケースにおける底壁と周壁との間の内面角部と配索材との間に隙間が設けられているため、グリスが配索材によって引き延ばされず、グリス溜まりが発生してしまう虞があった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、グリスを引き延ばし易くすると共に、グリス溜まりの発生を抑制することができるプロテクタおよびワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るプロテクタは、延在方向に沿って延在する底壁と、前記底壁の周縁部から前記延在方向と交差する積層方向の一方側に突出した周壁と、を有し、前記周壁の内側に車両に配索される配索材の折返し部が収容される収容空間部が設けられたケースと、前記収容空間部を前記積層方向の一方側から覆うように前記ケースに取り付けられるカバーと、を備え、前記ケースおよび前記カバーには、前記収容空間部と外部とを連通し、前記配索材が前記収容空間部内に導入または前記収容空間部外に引き出される一対の開口部が設けられ、前記周壁は、前記延在方向および前記積層方向と交差する幅方向の一方側に位置され前記配索材のうち前記折返し部の一端部と接続され前記延在方向に沿って延在する第1直線部と対向する第1周壁と、前記幅方向の他方側に位置され前記配索材のうち前記折返し部の他端部と接続され前記延在方向に沿って延在する第2直線部と対向する第2周壁と、を含み、前記底壁と前記第1周壁との間の内面角部、および前記底壁と前記第2周壁との間の内面角部は、それぞれ前記配索材の外周面に沿った曲面状に形成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るプロテクタおよびワイヤハーネスは、ケースにおける底壁と第1周壁との間の内面角部、および底壁と第2周壁との間の内面角部は、それぞれ配索材の外周面に沿った曲面状に形成される。この構成により、プロテクタおよびワイヤハーネスは、例えば、ケースにおける内面角部と配索材とがグリスを介して密着し、ひいては内面角部のそれぞれと配索材との間の隙間を少なくすることができる。この結果、プロテクタおよびワイヤハーネスは、グリスを引き延ばし易くすると共に、グリス溜まりの発生を抑制することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るプロテクタが適用されるワイヤハーネスの例示的な斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るプロテクタのケースの例示的な斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るプロテクタが適用されるワイヤハーネスの例示的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、下記実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。なお、本明細書では、序数は、部品や、部材、部位、位置、方向等を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0010】
[実施形態]
図1は、実施形態に係るプロテクタ1が適用されるワイヤハーネスWHの斜視図である。
図1に示される本実施形態のプロテクタ1は、車両に配索されるワイヤハーネスWHに組み込まれるものである。ここで、ワイヤハーネスWHは、例えば、車両に搭載される各機器間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる複数の配索材Wを束にして集合部品とし、コネクタ等で複数の配索材Wを各機器に接続するようにしたものである。本実施形態のワイヤハーネスWHは、導電性を有する配索材Wと、配索材Wを保護するプロテクタ1と、を備えている。プロテクタ1は、例えば、車両に搭載された不図示のスライドシートやスライドドア等に配索される配索材Wの一部を余長部分として内部に収容して保護するものである。なお、ワイヤハーネスWHは、この他、さらに、コルゲートチューブや、グロメット、電気接続箱、固定具、コネクタなど種々の構成部品を含んで構成されてもよい。
【0011】
なお、以下の説明では、互いに交差する第1方向、第2方向、及び、第3方向のうち、第1方向を「延在方向X」といい、第2方向を「幅方向Y」といい、第3方向を「積層方向Z」という。ここでは、延在方向Xと幅方向Yと積層方向Zとは、相互に略直交する。延在方向Xは、典型的には、プロテクタ1の長手方向、プロテクタ1に対する配索材Wの挿通方向、車両前後方向等に相当する。幅方向Yは、典型的には、プロテクタ1における後述するケース10とカバー20(
図3参照)との幅方向、車両上下方向(鉛直方向)等に相当する。積層方向Zは、典型的には、プロテクタ1におけるケース10とカバー20との積層方向、プロテクタ1の厚さ方向、車両幅方向等に相当する。また、以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、プロテクタ1が車両に組み付けられた状態での方向として説明する。
【0012】
配索材Wは、例えば、車両において、スライドシートに設けられた電装品に対して電力を供給するものである。配索材Wは、例えば、複数の電線E(
図3参照)が束ねられた電線束E1と、当該電線束E1を覆う筒状の外装材としてのコルゲートチューブCと、を含んで構成される。配索材Wは、電線束E1にコルゲートチューブCが装着された装着状態において、相対的に高い柔軟性、良好な屈曲性を有する。本実施形態の配索材Wは、電線束E1にコルゲートチューブCが装着された装着状態において、外力を加えていない自然の状態(略直線状態)から、外力を加えて屈曲させた屈曲状態にすると、屈曲された部分が弾性変形し屈曲部分に弾性反力が生じて元の状態に戻ろうとするものである。
【0013】
配索材Wは、プロテクタ1の内部に設けられた収容空間部4(
図2参照)に一部が収容された状態で、当該配索材Wの一部が、スライドシートのスライド方向のうち一方のスライド移動に伴ってプロテクタ1の内側に導入され、スライド方向のうち他方のスライド移動に伴って、プロテクタ1の外側に引き出される。配索材Wは、一方の端部が、スライドシートに設けられた電装品に電気的に接続され、他方の端部が、車両に搭載されたバッテリ等に電気的に接続される。
【0014】
プロテクタ1は、延在方向Xに沿って延在し、延在方向Xの一端部に一対の開口部2、3が設けられている。開口部2、3は、プロテクタ1の内部に配索材Wの一部が収容された収容状態において、それぞれに配索材Wが挿通される。プロテクタ1は、スライドシートのスライド方向のうち、一方のスライド移動に伴って、配索材Wが一方の開口部2から導入され、スライド方向のうち、他方のスライド移動に伴って、配索材Wが当該開口部2から引き出される。配索材Wは、プロテクタ1の内部に一部が収容された収容状態で、一方の端部について、開口部2を介したプロテクタ1内外への出し入れが可能に構成されている。一方、配索材Wは、プロテクタ1の内部に一部が収容された収容状態で、他方の端部について、開口部3を介したプロテクタ1内外への出し入れが規制されている。プロテクタ1は、例えば、後述するケース10およびカバー20の幅方向Yが鉛直方向(車両上下方向)に沿う縦置きの状態で設置され、延在方向Xの両端部に設けられた一対の取付部14、16がボルト等の締結部材によって車体に締結される。
【0015】
図2は、プロテクタ1のケース10の斜視図であり、
図3は、ワイヤハーネスWHの断面図である。
図2、3に示されるように、プロテクタ1は、例えば、ケース10と、カバー20と、を含んで構成される。ケース10およびカバー20は、例えば、絶縁性を有する合成樹脂等によって形成される。カバー20は、ケース10に対して積層方向Zの一方側に積層された状態で組付けられる。ケース10とカバー20とは、互いに別体で形成され、例えば、係止機構30による爪嵌合(スナップフィット)によって互いに一体化される。プロテクタ1は、ケース10とカバー20とが相互に組み付けられることで、全体として略直方体状に形成される。ケース10は、ベース等とも称される。
【0016】
ケース10は、例えば、底壁11と、底壁11の周縁部に設けられた周壁12と、を有している。底壁11および周壁12は、プロテクタ1の内部空間部としての上述した収容空間部4を区画するための構造体である。収容空間部4は、配索材Wが収容される空間部である。底壁11は、例えば、平板状に形成され、延在方向Xに沿って延在している。底壁11の外面には、積層方向Zに沿って突出した複数のビード18(
図1参照)が設けられている。複数のビード18は、ケース10を補強するためのものであり、例えば、延在方向Xおよび幅方向Yに沿って延びた格子状に形成される。
【0017】
周壁12は、底壁11の周縁部から積層方向Zの一方側に突出している。周壁12は、例えば、幅方向Yの一方側に位置される第1周壁12aと、幅方向Yの他方側に位置される第2周壁12bと、延在方向Xの他端部側(開口部2、3とは反対側)に位置される第3周壁12cと、を含んで構成される。第1周壁12aおよび第2周壁12bは、延在方向Xに沿って直線状に延在している。第3周壁12cは、第1周壁12aおよび第2周壁12bの延在方向Xの他端部と接続され、延在方向Xの他方側に凸の状態で円弧状(半円状)に湾曲している。周壁12は、ケース側周壁等とも称され、底壁11は、ケース側底壁等とも称される。
【0018】
また、ケース10の延在方向Xの一端部には、配索材Wが引き回される配線引き回し部15が設けられている。配線引き回し部15は、第1周壁12aの延在方向Xの一端部と接続され、延在方向Xの一方側に凸の状態で円弧状(半円状)に湾曲している。配線引き回し部15は、積層方向Zの一方側(カバー20側)に向けて開放される略U字状の断面を有しており、カバー20側の不図示の配線引き回し部と積層方向Zに重ねられる。一対の配線引き回し部15の内部空間部は、配索材Wが挿通される挿通空間部として機能し、当該挿通空間部の一端部は上述した開口部2を構成し、他端部は上述した収容空間部4と連通している。
【0019】
また、ケース10の延在方向Xの両端部には、一対の取付部14、16が設けられている。取付部14は、第3周壁12cから延在方向Xの他方側(開口部2、3とは反対側)に突出した状態に設けられ、カバー20側の不図示の取付部と積層方向Zに重ねられる。一対の取付部14には、上述したプロテクタ1と車体とを締結するボルト等の締結部材が積層方向Zに貫通する取付穴14aが設けられている。取付部16は、底壁11の延在方向Xの一端部に設けられ、カバー20側の不図示の取付部と積層方向Zに重ねられる。一対の取付部16には、上述したプロテクタ1と車体とを締結するボルト等の締結部材が積層方向Zに貫通する取付穴16aが設けられている。
【0020】
また、取付部16の周囲には、上述した配線引き回し部15の中壁部15aが設けられている。中壁部15aは、底壁11から積層方向Zの一方側(カバー20側)に突出しており、上述した開口部2と開口部3とを接続するように円弧状に湾曲している。開口部2は、中壁部15aにおける収容空間部4とは反対側の一端部に設けられ、開口部3は、中壁部15aにおける収容空間部4側の他端部に設けられている。また、中壁部15aの他端部には、底壁11から積層方向Zの一方側に突出した凸部17が設けられている。凸部17は、例えば、上述したコルゲートチューブCの外周面に形成される環状凹部と係合または嵌合する部分である。
【0021】
本実施形態では、ケース10には、延在方向Xに互いに間隔をあけて複数の凸部17が設けられている。このような構成において、本実施形態では、複数の凸部17とコルゲートチューブCの外周面に形成される環状凹部との係合によってコルゲートチューブCが装着された配索材Wの他方の端部がケース10に対して固定されている。これにより、配索材Wは、プロテクタ1の内部に一部が収容された収容状態で、他方の端部について、開口部3を介したコルゲートチューブCのプロテクタ1内外への出し入れが規制されている。なお、配索材Wの他方の端部については、コルゲートチューブC内の複数の電線Eが開口部3を介してプロテクタ1の外側に引き出されうる。
【0022】
カバー20(
図3参照)は、ケース10に組み付けられ、当該ケース10における収容空間部4を覆う(塞ぐ)ものである。カバー20は、例えば、カバー側底壁21と、カバー側底壁21の周縁部に設けられたカバー側周壁22と、を有している。カバー側底壁21およびカバー側周壁22は、プロテクタ1の内部空間部としての上述した収容空間部4を区画するための構造体である。カバー側底壁21は、例えば、平板状に形成され、ケース10の底壁11と対向するように延在方向Xに沿って延在している。カバー側底壁21の外面には、ケース10と同様に、積層方向Zに沿って突出した格子状の複数のビードが設けられうる。
【0023】
カバー側周壁22は、カバー側底壁21の周縁部から積層方向Zの他方側(ケース10側)に突出している。カバー側周壁22は、例えば、幅方向Yの一方側に位置されるカバー側第1周壁22aと、幅方向Yの他方側に位置されるカバー側第2周壁22bと、カバー側第1周壁22aおよびカバー側第2周壁22bと接続される不図示のカバー側第3周壁と、を含んで構成される。カバー側第1周壁22aおよびカバー側第2周壁22bは、延在方向Xに沿って直線状に延在している。カバー側第1周壁22aは、ケース10側の第1周壁12aの外側に重ねられ、カバー側第2周壁22bは、ケース10側の第2周壁12bの外側に重ねられる。また、カバー側第3周壁は、ケース10側の第3周壁12cの外側に重ねられる。カバー側第1周壁22aは、例えば、車両の床面と対向する。
【0024】
係止機構30は、例えば、ケース10側に設けられた爪部と、カバー20側に設けられた係止穴と、を有している。爪部には、積層方向Zの他方側を向いた係止面が設けられ、係止穴には、係止面と積層方向Zに対向する被係止面が設けられる。係止機構30は、爪部に対して係止穴が幅方向Yの外側から係止(係合)される。そして、爪部の係止面と係止穴の被係止面とが係止されることで、カバー20のケース10に対する積層方向Zの一方側への移動(抜け)が制限される。
【0025】
収容空間部4は、プロテクタ1内に形成され、一対の開口部2、3(
図2参照)を介して外部と連通している。収容空間部4に配索された配索材Wは、積層方向Zから見た場合に、幅方向Yの両側に直線状態にある第1直線部W1および第2直線部W2がそれぞれ配置され、幅方向Yの中央側に第1直線部W1および第2直線部W2を連結しかつ折返し状態にある折返し部W3が配置される。折返し部W3は、収容空間部4に収容された配索材Wのうち、延在方向Xの一方側から他方側にU字状に折り返された部分である。第1直線部W1は、収容空間部4に収容された配索材Wのうち、折返し部W3の一端部と接続され第1周壁12aと対向するように延在方向Xに沿って延在する部分である。第2直線部W2は、収容空間部4に収容された配索材Wのうち、折返し部W3の他端部と接続され第2周壁12bと対向するように延在方向Xに沿って延在する部分である。
【0026】
折返し部W3は、例えば、スライドシートのスライド移動に伴い、延在方向Xに沿って移動する。具体的には、折返し部W3は、スライドシートのスライド移動に伴って開口部2から出し入れされた場合に、配線引き回し部15の中壁部15aと近接する第1位置P1と、周壁12の第3周壁12cと近接する第2位置P2と、の間で延在方向Xに沿って移動可能である。配索材Wは、スライドシートのスライド移動に伴い、収容空間部4内で第1位置P1と第2位置P2との間で摺動する。このため、収容空間部4内で摺動する配索材Wの外周面C1(
図3参照)には、摺動を円滑に行わせるためのグリスGが塗布されている。
【0027】
ここで、本実施形態では、底壁11と第1周壁12aとの間の内面角部13、および底壁11と第2周壁12bとの間の内面角部13は、それぞれ配索材Wの外周面C1に沿った曲面状に形成されている。すなわち、本実施形態では、配索材Wと内面角部13との間にグリスGが塗布(介在)されていない状態で、それぞれの内面角部13が配索材Wの外周面C1と隙間無く密着する形状に形成されている。言い換えると、内面角部13には、略直角の基部から配索材Wに向けて曲面状に突出した凸部が設けられている。内面角部13は、第1周壁12aおよび第2周壁12bの延在方向Xの一端部と他端部との間に渡るように連続して曲面状に形成される。また、本実施形態では、内面角部13は、配索材WのうちコルゲートチューブCの外周面C1に沿った曲面状に形成される。
【0028】
また、本実施形態では、底壁11と第3周壁12cとの間の内面角部13についても、配索材Wの外周面C1に沿った曲面状に形成されている。すなわち、本実施形態では、内面角部13は、ケース10の周縁部に沿って、言い換えると第1周壁12a、第2周壁12b、第3周壁12c、および配線引き回し部15(
図2参照)に沿って連続して曲面状に形成される。第1周壁12a、第2周壁12b、第3周壁12c、および配線引き回し部15のそれぞれと底壁11との間の内面角部13は、スライドシートのスライド移動に伴って、配索材Wが延在方向Xに沿って摺動する部分である。
【0029】
したがって、本実施形態によれば、曲面状の内面角部13によってケース10の角Rを拡大して配索材Wとの接触面積を増やすことができ、ひいては内面角部13と配索材Wとの間の隙間を少なくすることができる。これにより、グリスGが配索材Wによって引き延ばされず、内面角部13にグリス溜まりが発生してしまうことを抑制できる。また、内面角部13と配索材Wとの間の隙間を少なくすることができるため、例えば、グリスGの塗布量を削減することができるという利点もある。また、グリスGの塗布量を削減しても配索材WによってしっかりとグリスGが引き延ばされるため、従来技術と同様(同等)に、配索材Wの摺動を円滑に行わせることができる。また、グリス溜まりも解消されるため、例えば、ケース10およびカバー20の幅方向Yが鉛直方向(車両上下方向)に沿う縦置きの状態で設置された場合にも、グリスGがケース10とカバー20との間から漏れ出てしまうことを抑制できる。
【0030】
以上のように、本実施形態のプロテクタ1およびワイヤハーネスWHは、底壁11と、底壁11の周縁部から積層方向Zの一方側に突出した周壁12と、を有し、周壁12の内側に車両に配索される配索材Wの折返し部W3が収容される収容空間部4が設けられたケース10と、収容空間部4を積層方向Zの一方側から覆うようにケース10に取り付けられるカバー20と、を備え、ケース10およびカバー20には、収容空間部4と外部とを連通し、配索材Wが収容空間部4内に導入または収容空間部4外に引き出される一対の開口部2、3が設けられ、周壁12は、幅方向Yの一方側に位置され配索材Wのうち折返し部W3の一端部と接続され延在方向Xに沿って延在する第1直線部W1と対向する第1周壁12aと、幅方向Yの他方側に位置され配索材Wのうち折返し部W3の他端部と接続され延在方向Xに沿って延在する第2直線部W2と対向する第2周壁12bと、を含み、底壁11と第1周壁12aとの間の内面角部13、および底壁11と第2周壁12bとの間の内面角部13は、それぞれ配索材Wの外周面C1に沿った曲面状に形成される。この構成により、プロテクタ1およびワイヤハーネスWHは、例えば、ケース10における内面角部13と配索材WとがグリスGを介して密着し、ひいては内面角部13のそれぞれと配索材Wとの間の隙間を少なくすることができる。この結果、プロテクタ1およびワイヤハーネスWHは、グリスGを引き延ばし易くすると共に、グリス溜まりの発生を抑制することができる。
【0031】
また、本実施形態のプロテクタ1およびワイヤハーネスWHは、周壁12は、第1周壁12aと第2周壁12bとに接続され折返し部W3と対向する第3周壁12cを含み、底壁11と第3周壁12cとの間の内面角部13についても、配索材Wの外周面C1に沿った曲面状に形成される。この構成により、プロテクタ1およびワイヤハーネスWHは、例えば、底壁11と第3周壁12cとの間の内面角部13と配索材WとがグリスGを介して密着し、ひいてはグリスGをより一層引き延ばし易くすると共に、グリス溜まりの発生をより一層抑制することができる。
【0032】
また、本実施形態のプロテクタ1およびワイヤハーネスWHは、配索材Wは、複数の電線Eと、複数の電線Eを収容する円筒状のコルゲートチューブCと、を含み、内面角部13は、それぞれコルゲートチューブCの外周面C1に沿った曲面状に形成される。この構成により、プロテクタ1およびワイヤハーネスWHは、例えば、ケース10における内面角部13とコルゲートチューブCとがグリスGを介して密着し、ひいては内面角部13のそれぞれとコルゲートチューブCとの間の隙間を少なくすることができる。この結果、プロテクタ1およびワイヤハーネスWHは、グリスGを引き延ばし易くすると共に、グリス溜まりの発生を抑制することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、ケース10の内面角部13は、コルゲートチューブCの外周面C1に沿った曲面状に形成された場合が例示されたが、この例には限定されず、例えば、配索材Wの電線Eや電線束E1の外周面に沿った曲面状に形成されてもよい。また、ケース10の底壁11と第3周壁12cとの間の内面角部13は、配索材Wの外周面C1に沿った曲面状では無く、略直角に形成されてもよい。また、プロテクタ1は、例えば、ケース10およびカバー20の幅方向Yが水平方向(車両幅方向)に沿う横置きの状態で設置されてもよい。
【0034】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 プロテクタ
2、3 開口部
4 収容空間部
10 ケース
11 底壁
12 周壁
12a 第1周壁
12b 第2周壁
12c 第3周壁
13 内面角部
20 カバー
C コルゲートチューブ
C1 外周面
E 電線
W 配索材
W1 第1直線部
W2 第2直線部
W3 折返し部
WH ワイヤハーネス
X 延在方向
Y 幅方向
Z 積層方向