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特開2024-121958無線通信装置、無線通信プログラム、及び無線通信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121958
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】無線通信装置、無線通信プログラム、及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 56/00 20090101AFI20240902BHJP
   H04B 1/40 20150101ALI20240902BHJP
【FI】
H04W56/00 130
H04B1/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029223
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】堤 直崇
【テーマコード(参考)】
5K011
5K067
【Fターム(参考)】
5K011GA01
5K011KA03
5K067DD25
5K067EE02
5K067HH22
(57)【要約】
【課題】 より省電力で無線通信ネットワークシステムとの間の通信制御を行う
【解決手段】 本発明は、無線通信ネットワークシステムに接続可能な無線通信装置に関する。そして、本発明の無線通信装置は、無線送信部と、無線受信部と、通信制御手段と、通信制御手段が無線受信部を介して、無線通信ネットワークシステムから一定周期ごとのビーコン周期タイミングに送信される時刻同期のためのビーコン受信に関するビーコン受信履歴情報を記憶する動作記憶手段と、ビーコン受信履歴情報に基づき、各ビーコン周期タイミングについてビーコン受信試行を行うか否かを判断するビーコン受信判定処理を行い、ビーコン受信試行を行うと判定したビーコン周期タイミングでのみ通信制御手段を制御してビーコン受信試行させるビーコン処理手段とを有することを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信ネットワークシステムに接続可能な無線通信装置において、
無線信号を送出する無線送信部と、
無線信号を受信する無線受信部と、
前記無線送信部及び前記無線受信部を制御して前記無線通信ネットワークシステムに接続して通信する通信制御を行う通信制御手段と、
前記通信制御手段が前記無線受信部を介して、前記無線通信ネットワークシステムから一定周期ごとのビーコン周期タイミングに送信される時刻同期のためのビーコン受信に関するビーコン受信履歴情報を記憶する動作記憶手段と、
前記動作記憶手段が記憶している前記ビーコン受信履歴情報に基づき、各前記ビーコン周期タイミングについてビーコン受信試行を行うか否かを判断するビーコン受信判定処理を行い、前記ビーコン受信判定処理の結果ビーコン受信試行を行うと判定した前記ビーコン周期タイミングでのみ前記通信制御手段を制御してビーコン受信試行させるビーコン処理手段と
を有することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記ビーコン受信履歴情報には、前記ビーコン周期タイミングが到来した回数をカウントするビーコン周期回数と、前記通信制御手段がビーコン受信試行を行った回数をカウントするビーコン受信試行回数と、前記通信制御手段がビーコン受信に成功した回数を示すビーコン受信成功回数とが含まれることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記ビーコン処理手段は、前記ビーコン受信成功回数と前記ビーコン受信試行回数とに基づいてビーコン受信精度を算出し、前記ビーコン受信精度が所定の閾値以上の高い場合に一部の前記ビーコン周期タイミングについてビーコン受信試行を行わないと判断するビーコンスキップモードで動作することを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記ビーコン処理手段は、前記ビーコンスキップモードで動作する間は、前記ビーコン周期回数が所定の倍数値の倍数に該当する前記ビーコン周期タイミングでビーコン受信試行を行わないと判断し、前記ビーコン周期回数が前記倍数値の倍数に該当しない前記ビーコン周期タイミングでビーコン受信試行を行うと判断することを特徴とする請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記ビーコン処理手段は、前記ビーコンスキップモードで動作する間は、前記ビーコン周期回数が所定の倍数値の倍数に該当する前記ビーコン周期タイミングでビーコン受信試行を行うと判断し、前記ビーコン周期回数が前記倍数値の倍数に該当しない前記ビーコン周期タイミングでビーコン受信試行を行わないと判断することを特徴とする請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記通信制御手段は、
ビーコン受信試行を行った結果に基づいて、次の前記ビーコン周期タイミングまでの間に前記無線通信ネットワークシステムからの信号受信を待機する信号受信待機時刻を決定し、
ビーコン受信試行を行わなかった前記ビーコン周期タイミングであっても、前記ビーコン受信試行を行わなかった前記ビーコン周期タイミングでビーコン受信試行を行ったとみなして、次の前記ビーコン周期タイミングまでの間における前記信号受信待機時刻を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項7】
無線信号を送出する無線送信部と、無線信号を受信する無線受信部とを有し、無線通信ネットワークシステムに接続可能な無線通信装置に搭載されたコンピュータを、
前記無線送信部及び前記無線受信部を制御して前記無線通信ネットワークシステムに接続して通信する通信制御を行う通信制御手段と、
前記通信制御手段が前記無線受信部を介して、前記無線通信ネットワークシステムから一定周期ごとのビーコン周期タイミングに送信される時刻同期のためのビーコン受信に関するビーコン受信履歴情報を記憶する動作記憶手段と、
前記動作記憶手段が記憶している前記ビーコン受信履歴情報に基づき、各前記ビーコン周期タイミングについてビーコン受信試行を行うか否かを判断するビーコン受信判定処理を行い、前記ビーコン受信判定処理の結果ビーコン受信試行を行うと判定した前記ビーコン周期タイミングでのみ前記通信制御手段を制御してビーコン受信試行させるビーコン処理手段と
して機能させることを特徴とする無線通信プログラム。
【請求項8】
無線通信ネットワークシステムに接続可能な無線通信装置が行う無線通信方法において、
前記無線通信装置は、無線信号を送出する無線送信部と、無線信号を受信する無線受信部と、通信制御手段と、動作記憶手段と、ビーコン処理手段とを備え、
前記通信制御手段は、前記無線送信部及び前記無線受信部を制御して前記無線通信ネットワークシステムに接続して通信する通信制御を行い、
前記動作記憶手段は、前記通信制御手段が前記無線受信部を介して、前記無線通信ネットワークシステムから一定周期ごとのビーコン周期タイミングに送信される時刻同期のためのビーコン受信に関するビーコン受信履歴情報を記憶し、
前記ビーコン処理手段は、前記動作記憶手段が記憶している前記ビーコン受信履歴情報に基づき、各前記ビーコン周期タイミングについてビーコン受信試行を行うか否かを判断するビーコン受信判定処理を行い、前記ビーコン受信判定処理の結果ビーコン受信試行を行うと判定した前記ビーコン周期タイミングでのみ前記通信制御手段を制御してビーコン受信試行させる
ことを特徴とする無線通信方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、無線通信プログラム、及び無線通信方法に関し、例えば、低消費電力で広いエリアの無線通信を必要とする装置に適用し得る。
【背景技術】
【0002】
従来、低消費電力で広いエリアをカバーする無線通信方式として、LoRaWAN(Long Range Wide Area Network)(登録商標)が存在する(非特許文献1)。以下では、LoRaWANについては単に「LoRa」とも呼ぶものとする。
【0003】
従来の非特許文献1に示すLoRaWANを適用した通信システムでは、無線通信を行う子機(以下、「無線子機」又は単に「端末」とも呼ぶ)が、ゲートウェイ(基地局)及びネットワークサーバを介して上位装置(例えば、アプリケーションサーバ)と通信可能な構成となっている。以下では、無線子機からゲートウェイ又はネットワークサーバへの方向の通信をアップリンク通信と呼び、ゲートウェイ又はネットワークサーバから無線子機への方向の通信をダウンリンク通信と呼ぶものとする。
【0004】
LoRaWANでは、無線子機におけるバッテリー持続性(省電力性)とダウンリンク通信の柔軟性に応じて、クラスA、B、Cの3つの通信方式が用意されている。
【0005】
クラスAは、無線子機のアップリンクデータ送信の直後にのみ無線子機に対してダウンリンクの指示が実行できる方式である。
【0006】
クラスCは、無線子機においてアップリンクデータを送信している時以外は常時上位側からのダウンリンク受信が可能な方式である。
【0007】
クラスBは、無線子機において、ゲートウェイから所定の周期(以下、「ビーコン周期」と呼ぶ)ごとに送信されるビーコンを受信することにより上位側と時刻同期を行い、当該時刻同期に基づいた同期タイミング(PingSlotタイミング)でダウンリンク受信を可能とする方式である。クラスBに対応した無線子機は、上記のビーコン周期によるビーコン信号受信タイミングまたはPingSlotタイミングのみ無線受信可能な状態で待機し、その他のタイミングでは省電力にて動作することができる。
【0008】
次に、LoRaWANのクラスBに対応する無線子機における通信制御について説明する。クラスBに対応する無線子機は、ゲートウェイを経由してネットワークサーバと接続し、ネットワークサーバとの間でJoinRequest~JoinAcceptのやり取りによりセッションキーを作成した後、DeviceTimeReqというMACコマンドにてネットワークサーバへ現在時刻を要求する。ネットワークサーバは、無線子機からの要求に対してDeviceTimingAnsを返答する。これにより、無線子機は現在時刻を知り、次のビーコン周期を予測することができる。そして、無線子機は、予測したタイミングで無線信号を受信することで初回のビーコン信号を受け取ることができる。また、無線子機では、次回以降のビーコン周期では同初回のビーコン信号を受信したタイミングから128秒のビーコン信号を受信することでゲートウェイとの間でタイミングを同期することが出来る。無線子機は同期できたことを次のアップリンクフレームにクラスBビットを立てて送信することで、ネットワークサーバへ無線子機がクラスBで動作していることを通知する。ネットワークサーバは同クラスBビットのフレームを無線子機から受け取ったことで無線子機がクラスBで動作していることを期待し、次回以降アプリケーションからのダウンリンク要求が発生した場合には、無線子機との同期タイミングであるPingSlotタイミングにてダウンリンクを送信する。無線子機は前述のビーコン周期によるビーコン信号受信タイミングまたはPingSlotタイミングのみ無線受信処理を実施し、その他のタイミングでは無線子機のCPUをスリープモードにすることで省電力にて動作することができると規定している。
【0009】
上記のように、LoRaWANクラスB方式を用いることで、無線子機は、ビーコン信号の受信処理またはPingSlotタイミングの受信処理、及びその他の送信処理以外は省電力で動作(例えば、CPUをスリープすること等により省電力で動作)する。これにより、LoRaWANクラスB方式を適用したシステムにおける無線子機は、バッテリー駆動により数年~十年といった長期の運用が可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「LoRaWAN(TM)Specificationv1.1」、LoRaAlliance(TM)、[2022年1月28日検索],[Online]、INTERNET、<URL: https://lora-alliance.org/resource_hub/lorawan-specification-v1-1/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように、LoRaWANクラスB方式を用いることで、無線子機を長期的にバッテリー駆動させることが可能となっているが、LoRaWANを適用したLPWAに属する無線子機は、1日以上の周期でデータ通信タイミングが発生する様なアプリケーションの使い方が一般的である。従って、LoRaWANを適用したLPWAに属する無線子機では、通常時(ほとんどの時間帯)は省電力動作状態(スリープ状態)であり、データ通信は発生しないことが想定される。
【0012】
しかしながら、LoRaWANクラスB方式を用いた無線子機では、データ通信が発生しない時間帯でも、同期制御に関する処理(例えば、ビーコン信号の受信処理やPingSlotタイミングの受信処理等)については継続的に行う必要があるため、データ通信自体(例えば、アップリンク通信やダウンリンク通信)で消費する電力量に比して、同期制御等の通信制御により消費される電力量が著しく大きいという問題がある。
【0013】
以上のような問題に鑑みて、より省電力で無線通信ネットワークシステムとの間の通信制御を行う無線通信装置、無線通信プログラム、及び無線通信方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の本発明は、無線通信ネットワークシステムに接続可能な無線通信装置において、無線信号を送出する無線送信部と、無線信号を受信する無線受信部と、前記無線送信部及び前記無線受信部を制御して前記無線通信ネットワークシステムに接続して通信する通信制御を行う通信制御手段と、前記通信制御手段が前記無線受信部を介して、前記無線通信ネットワークシステムから一定周期ごとのビーコン周期タイミングに送信される時刻同期のためのビーコン受信に関するビーコン受信履歴情報を記憶する動作記憶手段と、前記動作記憶手段が記憶している前記ビーコン受信履歴情報に基づき、各前記ビーコン周期タイミングについてビーコン受信試行を行うか否かを判断するビーコン受信判定処理を行い、前記ビーコン受信判定処理の結果ビーコン受信試行を行うと判定した前記ビーコン周期タイミングでのみ前記通信制御手段を制御してビーコン受信試行させるビーコン処理手段とを有することを特徴とする。
【0015】
第2の本発明の無線通信プログラムは、無線信号を送出する無線送信部と、無線信号を受信する無線受信部とを有し、無線通信ネットワークシステムに接続可能な無線通信装置に搭載されたコンピュータを、前記無線送信部及び前記無線受信部を制御して前記無線通信ネットワークシステムに接続して通信する通信制御を行う通信制御手段と、前記通信制御手段が前記無線受信部を介して、前記無線通信ネットワークシステムから一定周期ごとのビーコン周期タイミングに送信される時刻同期のためのビーコン受信に関するビーコン受信履歴情報を記憶する動作記憶手段と、前記動作記憶手段が記憶している前記ビーコン受信履歴情報に基づき、各前記ビーコン周期タイミングについてビーコン受信試行を行うか否かを判断するビーコン受信判定処理を行い、前記ビーコン受信判定処理の結果ビーコン受信試行を行うと判定した前記ビーコン周期タイミングでのみ前記通信制御手段を制御してビーコン受信試行させるビーコン処理手段として機能させることを特徴とする。
【0016】
第3の本発明の無線通信方法は、無線通信ネットワークシステムに接続可能な無線通信装置が行う無線通信方法において、前記無線通信装置は、無線信号を送出する無線送信部と、無線信号を受信する無線受信部と、通信制御手段と、動作記憶手段と、ビーコン処理手段とを備え、前記通信制御手段は、前記無線送信部及び前記無線受信部を制御して前記無線通信ネットワークシステムに接続して通信する通信制御を行う通信制御手段と、前記動作記憶手段は、前記通信制御手段が前記無線受信部を介して、前記無線通信ネットワークシステムから一定周期ごとのビーコン周期タイミングに送信される時刻同期のためのビーコン受信に関するビーコン受信履歴情報を記憶し、前記ビーコン処理手段は、前記動作記憶手段が記憶している前記ビーコン受信履歴情報に基づき、各前記ビーコン周期タイミングについてビーコン受信試行を行うか否かを判断するビーコン受信判定処理を行い、前記ビーコン受信判定処理の結果ビーコン受信試行を行うと判定した前記ビーコン周期タイミングでのみ前記通信制御手段を制御してビーコン受信試行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、より省電力で無線通信ネットワークシステムとの間の通信制御を行う無線通信装置、無線通信プログラム、及び無線通信方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る無線子機(無線通信装置)の機能的構成について示したブロック図である。
図2】実施形態に係る通信システムの全体構成の例について示したブロック図である。
図3】実施形態に係る無線子機においてビーコンを受信するための制御処理(ビーコン受信制御処理)について状態遷移図の形式で示した図である。
図4】実施形態に係る無線子機で接続試行処理が成功した場合に行われる処理について示したフローチャートである。
図5】実施形態に係る無線子機でビーコン周期タイミングが到来した場合の処理(ビーコン周期イベント)について示したフローチャートである。
図6】実施形態に係る無線子機で行われるビーコンスキップモードルーチン処理の詳細について示したフローチャートである。
図7】実施形態に係る無線子機で行われるビーコン受信処理の詳細について示したフローチャートである。
図8】実施形態に係る無線子機で行われるビーコンスキップモード判定処理の詳細について示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(A)主たる実施形態
以下、本発明による無線通信装置、無線通信プログラム、及び無線通信方法の一実施形態を、図面を参照しながら詳述する。この実施形態では、無線通信装置、無線通信プログラム、及び無線通信方法を無線子機に適用した例について説明する。
【0020】
(A-1)実施形態の構成
図2は、実施形態に係る通信システムの全体構成の例について示したブロック図である。
【0021】
図2に示す通信システム1には、アプリケーションサーバ10、ネットワークサーバ20、基地局としてのゲートウェイ30、及び無線通信装置としての無線子機40が配置されている。
【0022】
通信システム1に設置する各装置の数は限定されないものであるが、説明を簡易とするために、この実施形態の通信システム1では、少なくとも図2に示すようにアプリケーションサーバ10、ネットワークサーバ20、ゲートウェイ30及び無線子機40が各1台ずつ配置されているものとして説明する。
【0023】
なお、この実施形態では、原則として、通信システム1を構成する各装置は、LoRaAlliance(登録商標)が定める標準仕様に従った通信を行う構成となっている。すなわち、本明細書において、通信システム1を構成する各装置は、以下に特に説明のない処理(動作)については、LoRaAllianceが定める仕様に基づく処理(動作)を行うものとして説明する。なお、以下では、「LoRa標準」という場合は、LoRaAllianceが定める仕様を指すものとする。
【0024】
無線子機40は、主として自身に搭載又は接続される各種センサーの検出情報や、自身に接続される電気機器などから収集した情報等を、通信システム1の上位側(アプリケーションサーバ10側)に送信するものである。無線子機40はゲートウェイ30と無線により接続される。以下では、無線子機40とゲートウェイ30との間の無線通信の区間を「LoRa無線区間」と呼ぶものとする。
【0025】
ゲートウェイ30は、無線子機40から無線にて受信した各種情報をネットワークサーバ20側へ中継する。ゲートウェイ30とネットワークサーバ20との接続構成は限定されないものであるが、例えば、有線(例えば、種々のLANケーブル等)で接続する構成としてもよいし、無線(例えば、種々の無線LAN等)で接続する構成としてもよい。
【0026】
ネットワークサーバ20は、ゲートウェイ30から受信した無線子機40からの各種データを、アプリケーションサーバ10へ中継する。ネットワークサーバ20及びアプリケーションサーバ10間の接続は、上記同様に有線又は無線でも良く、接続に用いる規格、方式も限定されない。また、ネットワークサーバ20は、無線子機40の識別子の管理や、通信の暗号化等を行う。つまり、この実施形態の通信システム1では、ゲートウェイ30とネットワークサーバ20が協同して1つの無線通信ネットワークシステムを形成し、無線子機40を接続させる構成となっている。
【0027】
アプリケーションサーバ10は、ネットワークサーバ20経由で受信した無線子機40からの各種情報に基づいて任意の処理を実行するものである。例えば、アプリケーションサーバ10は、無線子機40から送信されたデータを蓄積して処理する。
【0028】
次に、無線子機40によるビーコン受信制御の概要について説明する。
【0029】
無線子機40は、外部装置(ネットワークサーバ20やゲートウェイ30等)から見た場合LoRa標準のクラスBで動作しているように振る舞うが、省電力のため、外部装置(ネットワークサーバ20やゲートウェイ30等)に影響を与えない範囲でLoRa標準と異なる動作を行う。
【0030】
上記の通り、LoRa標準ではクラスBに対応する無線子機は、ゲートウェイとの時刻同期のために、ビーコン周期ごとにゲートウェイからのビーコン受信を試行する状態(可能な状態)で待機(以下、この待機状態を「受信待機状態」と呼ぶ)となる。以下では、無線子機40におけるビーコン周期ごとに訪れるビーコン受信のタイミング(つまり、完全にLoRa標準のクラスBで動作する無線子機におけるビーコン受信のタイミング)を「ビーコン周期タイミング」と呼ぶものとする。そして、無線子機40では、外部装置(ゲートウェイ30、ネットワークサーバ20)との通信に影響を及ぼさないと推定できる範囲で、一部のビーコン周期タイミングについて受信待機状態を取らない(ビーコン受信試行しない)ことで省電力化を図る。以下では、無線子機40がビーコン周期タイミングになっても受信待機状態を取らない処理を「スキップ」とも呼ぶものとする。
【0031】
具体的には、この実施形態の無線子機40では、全てのビーコン周期タイミングについて受信待機状態をとる動作モード(以下、「通常モード」と呼ぶ)と、一部のビーコン周期タイミングについて受信待機状態をとらない(スキップする)動作モード(以下、「ビーコンスキップモード」と呼ぶ)のいずれかで動作するものとする。この実施形態では、無線子機40は、原則として通常モード(ビーコンスキップモードをOFFの状態)でビーコン受信を行い、所定の条件を満たしている間のみビーコンスキップモードに移行(ビーコンスキップモードをON)するものとする。無線子機40において、ビーコンスキップモードで動作する際にスキップするビーコン周期タイミングを決定する方法(若しくは受信待機状態をとるビーコン周期タイミングを決定する方法)の詳細については後述する。
【0032】
次に、無線子機40が行うビーコン受信制御の概要について説明する。
【0033】
この実施形態の無線子機40では、ビーコン受信制御のためにビーコン周期回数A、ビーコン受信試行回数B、及びビーコン受信成功回数Cの3つのカウンタが用いられるものとする。また、無線子機40では、ビーコン受信制御のために記録ビーコン回数O(オー)、ビーコン受信精度閾値P及び倍数値Rの3つのパラメータが用いられるものとする。
【0034】
ビーコン周期回数Aは、ビーコン周期タイミングが到来した回数を数えるためのカウンタである。つまり、ビーコン周期回数Aは、スキップされたビーコン周期タイミングでも、ビーコン周期タイミングが到来するごとにインクリメント(1加算)されるカウンタである。
【0035】
ビーコン受信試行回数Bは、無線子機40においてビーコン受信を試行した回数(ビーコン受信を試行すると判断されたビーコン周期タイミングの数)を数えるためのカウンタである。
【0036】
ビーコン受信成功回数Cは、無線子機40において、ビーコン受信を試行した結果、ビーコン受信に成功した回数(正常にビーコン受信ができた回数)を数えるためのカウンタである。
【0037】
記録ビーコン回数Oは、履歴を記録するビーコン周期タイミングの数(ビーコン周期回数Aの上限値)を示すものであり任意の値を設定可能である。例えば、記録ビーコン回数Oが20[回]と設定されている場合、無線子機40は、ビーコン周期回数Aが20回以上(A≧O)となるまで、ビーコン周期回数Aをインクリメントする。そして、無線子機40は、ビーコン周期回数Aが20回以上(A≧O)となると、ビーコン受信精度(ビーコン受信成功回数C/ビーコン受信試行回数B)を算出し、ビーコン周期回数Aをクリア(ゼロに設定)する。つまり、無線子機40は、ビーコン周期回数Aが記録ビーコン回数O以上となる度に、ビーコン受信精度を算出する。
【0038】
ビーコン受信精度閾値Pは、無線子機40においてビーコンスキップモードに移行するか否かを判定する際の閾値として用いられるパラメータであり任意の値を設定可能である。無線子機40は、ビーコン受信精度を算出する度に、算出したビーコン受信精度とビーコン受信精度閾値Pとを比較し、その比較結果に基づいて動作モードを決定する。例えば、ビーコン受信精度閾値Pが95[%]であった場合を想定する。この場合、無線子機40は、ビーコン受信精度が95[%]以上であった場合にビーコンスキップモードで動作することを決定し、ビーコン受信精度が95[%]未満であった場合は、通常モードで動作すると決定するようにしてもよい。
【0039】
倍数値Rは、無線子機40がビーコンスキップモードで動作している間に、ビーコン周期タイミングごとにビーコン受信をスキップするか否かを判断するためのパラメータであり任意の値を設定可能である。無線子機40は、ビーコン周期回数Aが倍数値Rの倍数となるビーコン周期タイミングについてスキップし、それ以外のビーコン周期タイミングについてビーコン受信する(スキップしない)とするようにしてもよい。例えば、倍数値Rが3に設定されている場合を想定する。この場合、無線子機40は、ビーコン周期回数Aが、3の倍数(3、6、9、12、15、18)となるビーコン周期タイミングでスキップし、それ以外のタイミングでビーコン受信するようにしてもよい。
【0040】
次に、無線子機40の機能的構成について図1を用いて説明する。
【0041】
図1に示す通り、無線子機40は、システムデータ記憶部41、タイマ制御部42、ビーコン処理部43、動作記憶部44、MAC制御部45、無線送信部46、無線受信部47及び無線アンテナ48を有している。
【0042】
無線子機40は、ソフトウェアにより実現可能な構成要素(例えば、システムデータ記憶部41、タイマ制御部42、ビーコン処理部43、動作記憶部44、及びMAC制御部45)を含む要素)については、例えば、図示しないコンピュータにプログラム(実施形態に係る無線通信プログラムを含む)をインストールすることにより実現するようにしてもよい。上記のコンピュータは、例えば、プロセッサ、一次メモリ(揮発性メモリ)、二次メモリ(不揮発性メモリ)等により構成される。なお、システムデータ記憶部41と動作記憶部44については、いずれも上記の二次メモリ(不揮発性メモリ)を割り当てるようにしてもよいが、動作記憶部44だけは一次メモリ(揮発性メモリ)を割り当てるようにしてもよい。
【0043】
システムデータ記憶部41は、無線子機40を動作させる上で使用するシステムデータ(例えば、種々のパラメータ等を含む)等を記録するための記録手段である。この実施形態において、システムデータ記憶部41には、少なくとも記録ビーコン回数O、ビーコン受信精度閾値P及び倍数値Rのパラメータが記録されるものとする。
【0044】
タイマ制御部42は、タイマ機能を担っており、設定されたタイムアウト時間を計時し、経過したタイミングでタイムアウト時間の設定元の要素(ビーコン処理部43等)にタイムアウト(発火)の返答(通知)を行う。
【0045】
ビーコン処理部43は、ビーコン受信に関する制御処理を行うビーコン処理手段の機能を担っている。ビーコン処理部43は、通常モードで動作する場合は、LoRa標準のクラスBのタイミング(全てのビーコン周期タイミング)で、MAC制御部45にビーコン受信試行を指示して実行させる。MAC制御部45は、ビーコン処理部43からビーコン受信試行の指示があると、LoRa標準に従った所定期間の間だけビーコンを受信可能とするように無線受信部47等を制御する。ビーコン処理部43は、ビーコン受信精度(ビーコン受信成功回数C/ビーコン受信試行回数B)がビーコン受信精度閾値P以上となるとビーコンスキップモードへの遷移を判断し、一部のビーコン周期タイミングをスキップする処理を行う。
【0046】
動作記憶部44は、無線子機40を動作させる上で使用する変数・カウンタ等を保持する動作記憶手段としての機能を担っている。この実施形態において、動作記憶部44には、少なくともビーコン周期回数A、ビーコン受信試行回数B及びビーコン受信成功回数Cのカウンタが保持されるものとする。
【0047】
MAC制御部45は、無線送信部46及び無線受信部47を制御して無線通信ネットワークシステムと無線通信する通信制御手段の機能(直接的にはゲートウェイ30と無線通信する機能)を担っている。MAC制御部45は、基本的には、LoRa標準に規定されたメディアアクセスコントール(MAC)の機能を実現するものである。MAC制御部45は、無線送信部46や無線受信部47等を制御することによりメディアアクセスコントロールの機能を実現する。具体的には、MAC制御部45は、当該無線子機40のネットワーク参加シーケンス(ネットワークサーバ20に対する接続試行)を実施し、生成した暗号鍵等を使用してネットワークサーバ20との間でセキュアに通信する通信制御処理等を行う。
【0048】
無線送信部46は、無線アンテナ48を用いて無線信号を送信する機能を担っている。無線送信部46は、例えば、MAC制御部45から指示されたデータを、LoRa変調方式に従って無線変調を行い、無線信号を送信する。
【0049】
無線受信部47は、無線アンテナ48を用いて無線信号を受信する機能を担っている。無線受信部47は、例えば、受信した電波を、LoRa変調方式に従って復調を行い、データとしてMAC制御部45に供給する。
【0050】
無線アンテナ48は、LoRa無線区間(無線子機40)との電波送受信を行うためのアンテナである。
【0051】
(A-2)実施形態の動作
次に、以上のような構成を有するこの実施形態における無線子機40の動作(この実施形態の無線通信方法を含む)について説明する。
【0052】
図3は、無線子機40におけるビーコン受信制御処理について状態遷移図の形式で示した図である。
【0053】
図3の状態遷移図では、無線子機40は状態X1~状態X3のいずれかの状態に遷移するものとして図示している。
【0054】
図3において、状態X1は、無線子機40が「初期状態」であることを表している。また、図3において、状態X2は、無線子機40がビーコンの受信を開始し、ゲートウェイ30と時刻同期している「ビーコン信号初期同期中」の状態(通常モードで動作する状態)を表している。さらに、図3において、状態X3は、無線子機40においてビーコン信号を用いた同期処理が完了した「ビーコン信号同期完了」の状態(ビーコンスキップモードで動作する状態)を表している。
【0055】
[状態X1(初期状態)における動作]
無線子機40では、初期状態(状態X1)となると、MAC制御部45により、ネットワークサーバ20へのJoinシーケンス処理(LoRa標準プロトコルにおけるJoinシーケンス処理)を試みる処理(以下、「接続試行処理」とも呼ぶ)が行われる。具体的には、無線子機40(MAC制御部45)は、ネットワークサーバ20へJoinRequest信号を送信し、ネットワークサーバ20からJoinAcceptの返答を受けることでネットワークサーバ20に接続する。
【0056】
MAC制御部45のJoinRequest信号に対して、ネットワークサーバ20から応答(JoinAccept信号)があり、正常に受信された場合は、接続試行処理が成功ということになる。接続試行処理が成功すると、無線子機40(MAC制御部45)は、状態X1(初期状態)から状態X2(ビーコン信号初期同期中の状態)に遷移する(ステップS1)。また、接続試行処理が成功すると、MAC制御部45は、ネットワークサーバ20にDeviceTimeReqを送信して現在時刻を要求し、DeviceTimingAnsの返答を受け、現在時刻を取得する。以後、MAC制御部45及びビーコン処理部43では、現在時刻に基づいて次回以後のビーコン周期タイミングを予測することができることになる。
【0057】
一方、MAC制御部45のJoinRequest信号に対して、ネットワークサーバ20から応答(JoinAccept信号)が無い場合は、接続試行処理が失敗(中断)ということになる(ステップS2)。この場合、MAC制御部45は、状態X1(初期状態)を維持し、任意の周期で接続試行処理(JoinRequest信号の送信)を繰り返すことになる。
【0058】
[状態X2(ビーコン信号初期同期中)における動作]
接続試行処理が成功して状態X2(ビーコン信号初期同期中;通常モード)に遷移すると、ビーコン処理部43は、LoRa標準のクラスBに従ったタイミング(全てのビーコン周期タイミング)で、MAC制御部45にビーコン受信試行を実行させる。そして、ビーコン処理部43は、ビーコン周期回数Aが記録ビーコン回数O以上となった場合、ビーコン受信精度(ビーコン受信成功回数C/ビーコン受信試行回数B)を算出する。そして、ビーコン処理部43は、ビーコン受信精度がビーコン受信精度閾値P以上の場合に、状態X3(ビーコン信号同期完了;ビーコンスキップモード)に遷移(ステップS5)し、ビーコン受信精度がビーコン受信精度閾値P未満の場合は状態X2(ビーコン信号初期同期中;通常モード)を維持する(ステップS4)。
【0059】
また、ビーコン処理部43は、状態X2(ビーコン信号初期同期中;通常モード)の間に、連続してN回ビーコン受信が失敗した場合(正常なビーコン受信が確認できない場合)、状態X1(初期状態)に遷移すると判断し、MAC制御部45に接続試行処理を実行させる(ステップS3)。Nの値については限定されないものであるが、例えば、3回程度と設定するようにしてもよい。
【0060】
[状態X3(ビーコン信号同期完了)における動作]
状態X3(ビーコン信号同期完了;ビーコンスキップモード)に遷移すると、ビーコン処理部43は、ビーコン周期回数Aが倍数値Rの倍数となる回でのみMAC制御部45を制御してビーコン受信試行を実行させる。MAC制御部45は、状態X3(ビーコン信号同期完了)で動作する間、ビーコン処理部43によりビーコン周期タイミングがスキップされた場合でも、ビーコン受信処理されたとみなし、ビーコン受信処理された場合と同様に他のスケジュール設定処理(例えば、Pingslotのスケジュール設定処理等のLoRa標準に基づくスケジュール設定処理)を行う。例えば、MAC制御部45は、状態X3(ビーコン信号同期完了)で動作している間に、ビーコン処理部43によりビーコン周期タイミングがスキップされた場合でも、スキップしたビーコン周期タイミングでビーコン受信処理を実行した場合と同様に、次のビーコン周期タイミングまでの間にPingslot(ダウンリンク受信可能な状態で待機する処理)をスケジュール設定する処理を行う。このとき、MAC制御部45は、スキップしたビーコン周期タイミングでビーコン受信処理が成功したとみなして次のビーコン周期タイミングまでの間のPingslotの予定時刻を設定するようにしてもよいし、スキップしたビーコン周期タイミングでビーコン受信処理が失敗したとみなして次のビーコン周期タイミングまでの間のPingslotの予定時刻を設定するようにしてもよい。これにより、MAC制御部45は、状態X3(ビーコンスキップモード)で動作する間においても、ダウンリンク受信が可能となる。
【0061】
また、ビーコン処理部43は、状態X3においても、ビーコン周期回数Aが記録ビーコン回数O以上となるごとに、ビーコン受信精度(ビーコン受信成功回数C/ビーコン受信試行回数B)を算出し、ビーコン受信精度がビーコン受信精度閾値P以上であれば状態X3を維持し(ステップS7)、ビーコン受信精度がビーコン受信精度閾値P未満であれば、状態X2に遷移する(ステップS6)。
【0062】
さらに、ビーコン処理部43は、状態X3(ビーコン信号同期完了;ビーコンスキップモード)の間に、連続してN回ビーコン受信が失敗した場合(正常なビーコン受信が確認できない場合)、状態X1(初期状態)に遷移すると判断し、MAC制御部45に接続試行処理を実行させる(ステップS8)。
【0063】
次に、図3に示すような状態遷移図のビーコン受信制御処理を実現するための具体的な処理の例について、図4図8のフローチャートを用いて説明する。
【0064】
図4は、無線子機40で接続試行処理が成功した場合に行われる処理(ステップS1で行われる処理)について示したフローチャートである。
【0065】
接続試行処理が成功すると、ビーコン処理部43は、各カウンタ(ビーコン周期回数A、ビーコン受信試行回数B及びビーコン受信成功回数C)をクリア(0に設定)する(S101)。
【0066】
そして、ビーコン処理部43は、MAC制御部45がネットワークサーバ20から受信したDeviceTimingAns(DeviceTimeReqに対する応答)の内容に基づいて現在時刻を把握し、次のビーコン周期タイミングを算出し(S102)、算出したビーコン周期(次のビーコン周期タイミング)をタイマ制御部42にセットして(S103)処理を終了する。
【0067】
図5は、ビーコン周期タイミングが到来(タイマ制御部42がタイムアウト/発火)した場合における無線子機40の処理(以下、「ビーコン周期イベント」と呼ぶ)について示したフローチャートである。
【0068】
ビーコン周期イベントを開始すると、ビーコン処理部43は、適切な動作モード(通常モード又はビーコンスキップモードのいずれかの動作モード)を判断する処理(以下、「ビーコンスキップモードルーチン処理」と呼ぶ)を行う(S201)。ビーコンスキップモードルーチン処理の詳細については後述する。
【0069】
次に、ビーコン処理部43は、今回のビーコン周期タイミングについてスキップするか否かを判定する処理(以下、「ビーコンスキップモード判定処理」と呼ぶ)を行う(S202)。ビーコンスキップモード判定処理では、今回のビーコン周期タイミングについてビーコン受信試行を行う(スキップしない)という判定結果を示す「False」、又は今回のビーコン周期タイミングについてスキップする(ビーコン受信試行を行わない)という判定結果を示す「True」のいずれかが出力される。ビーコンスキップモード判定処理の詳細については後述する。
【0070】
次に、ビーコン処理部43は、ビーコンスキップモード判定処理の判定結果がFalseで且つ、現在状態X1(初期状態)でないという条件に該当するか否か判断し(S203)、上記条件に該当する場合は後述するステップS204から動作し、そうでない場合には後述するステップS206から動作する。
【0071】
上述のステップS203において上記条件に該当すると判定された場合、ビーコン処理部43は、今回のビーコン周期タイミングについてビーコン受信する処理(以下、単に「ビーコン受信処理」と呼ぶ)を行う(S204)。
【0072】
次に、ビーコン処理部43は、次のビーコン周期タイミングを取得するためにビーコン周期をタイマ制御部42に設定して(S205)ビーコン周期イベントの処理を終了する。
【0073】
一方、上述のステップS203で、上記条件に該当しないと判断された場合、ビーコン処理部43は、現在状態X1(初期状態)であるか否かを確認し(S206)、現在状態X1(初期状態)である場合にはそのままビーコン周期イベントの処理を終了し、現在状態X1(初期状態)でない場合には上述のステップS207の処理に移行する。
【0074】
ステップS206で状態X1(初期状態)であるか否かを確認するのは、後述するステップS201のビーコンスキップモードルーチン処理にて状態X1(初期状態)へ遷移する場合があるためである。ステップS201のビーコンスキップモードルーチン処理にて状態X1(初期状態)へ遷移している場合、無線子機40は、次周期のビーコン周期タイミングはセットせずに終了し、その後接続試行処理から再始動することになる。
【0075】
上述のステップS206で現在状態X1(初期状態)でないと判定された場合(すなわち状態X3である場合)、ビーコン処理部43は、MAC制御部45に対して、現在時刻でビーコン受信処理を行った場合(ビーコン受信が成功又は失敗した場合)と同様に、他のスケジュール設定処理(例えば、Pingslotのスケジュール設定処理等のLoRa標準に基づくスケジュール設定処理)を実行させ(S207)、ステップS205の処理に移行する。
【0076】
次に、上述のステップS201におけるビーコンスキップモードルーチン処理の詳細について説明する。
【0077】
図6は、ビーコンスキップモードルーチン処理の詳細について示したフローチャートである。
【0078】
ビーコン処理部43は、ビーコンスキップモードルーチン処理を開始すると、まず、ビーコン周期回数Aをインクリメント(1加算)する(S301)。
【0079】
次に、ビーコン処理部43は、ビーコン受信試行回数BがNより大きいか否かを判断し(S302)、ビーコン受信試行回数BがNより大きい場合後述するステップS303から動作し、そうでない場合は、ビーコンスキップモードルーチン処理を終了する。
【0080】
上述のステップS302で、ビーコン受信試行回数BがNより大きいと判断された場合、ビーコン処理部43は、ビーコン周期回数Aが記録ビーコン回数O以上であるか否かを判断し(S303)、ビーコン周期回数Aが記録ビーコン回数O以上である場合は後述するステップS304に移行し、そうでない場合はビーコンスキップモードルーチン処理を終了する。
【0081】
上述のステップS302で、ビーコン周期回数Aが記録ビーコン回数O以上と判断された場合、ビーコン処理部43は、ビーコン受信精度(ビーコン受信成功回数C/ビーコン受信試行回数B)を算出し、算出したビーコン受信精度がビーコン受信精度閾値P以上であるか否かを判断する(S304)。ビーコン処理部43は、ビーコン受信精度がビーコン受信精度閾値P以上である場合後述するステップS305から動作し、そうでない場合は後述するステップS307から動作する。
【0082】
上述のステップS304においてビーコン受信精度がビーコン受信精度閾値P以上であると判定された場合、ビーコン処理部43は、ビーコンスキップモードをON(すでにONの場合はそのまま)とする(S305)。
【0083】
次に、ビーコン処理部43は、各カウンタ(ビーコン周期回数A、ビーコン受信試行回数B及びビーコン受信成功回数C)をクリア(0に初期化)し(S306)、ビーコンスキップモードルーチン処理を終了する。
【0084】
一方上述のステップS304においてビーコン受信精度がビーコン受信精度閾値P未満と判断された場合、ビーコン処理部43は、ビーコン受信試行回数Bが0回であるか否かを判断し(S307)、ビーコン受信試行回数Bが0回である場合後述するステップS308から動作し、そうでない場合は後述するステップS309から動作する。
【0085】
上述のステップS307において、ビーコン受信試行回数Bが0回であると判断された場合、無線子機40(ビーコン処理部43、MAC制御部45)は、状態X1(初期状態)に遷移する(S308)。ステップS307の時点でビーコン受信試行回数Bが0回であるということは、連続してN回ビーコン受信を失敗(ビーコン受信を試みて失敗)したということになる。
【0086】
次に、ビーコン処理部43は、ビーコンスキップモードをOFF(すでにOFFの場合はそのまま)とし(S309)、その後、上述のステップS306に移行して各カウンタをクリアしてからビーコンスキップモードルーチン処理を終了する。
【0087】
次に、上述のステップS204におけるビーコン受信処理の詳細について説明する。
【0088】
図7は、ビーコン受信処理の詳細について示したフローチャートである。
【0089】
ビーコン受信処理を開始すると、ビーコン処理部43は、ビーコン受信試行回数Bをインクリメント(1加算)する(S401)。
【0090】
次に、ビーコン処理部43は、MAC制御部45に対してビーコン受信を指示し(S402)、その結果(ビーコン受信成功又は失敗の結果)を確認する(S403)。なお、このとき、MAC制御部45は、ビーコン受信処理の結果(ビーコン受信の成功又は失敗)に基づいて、次のビーコン周期タイミング以外のスケジュール設定処理(例えば、Pingslotのスケジュール設定処理等のLoRa標準に基づくスケジュール設定処理)を実行する。
【0091】
ビーコン処理部43は、ビーコン受信の結果が成功だった場合、ビーコン受信成功回数Cをインクリメントして(S404)、ビーコン受信処理を終了し、ビーコン受信の結果が失敗だった場合、そのまま(ビーコン受信成功回数Cをインクリメントせずに)ビーコン受信処理を終了する。
【0092】
次に、上述のステップS202におけるビーコンスキップモード判定処理の詳細について説明する。
【0093】
図8は、ビーコンスキップモード判定処理の詳細について示したフローチャートである。
【0094】
ビーコンスキップモード判定処理を開始すると、ビーコン処理部43は、現在の動作モードがビーコンスキップモードとなっているか否かを判断し(S501)、ビーコンスキップモードである場合には後述するステップS502に移行し、そうでない場合(通常モードの場合)には後述するステップS504に移行する。
【0095】
現在の動作モードがビーコンスキップモードである場合、ビーコン処理部43は、ビーコン周期回数Aが倍数値Rの倍数に該当するか否かを判定する(S502)。
【0096】
例えば、ビーコン処理部43は、AをRで除算した余りが0である場合(MOD(A,R)=0である場合)には、ビーコン周期回数Aが倍数値Rの倍数に該当すると判断するようにしてもよい。
【0097】
上述のステップS502において、ビーコン周期回数Aが倍数値Rの倍数に該当する場合、ビーコン処理部43は、今回のビーコン周期タイミングはスキップするという判断結果としてTrueを出力(S503)してビーコンスキップモード判定処理を終了する。
【0098】
一方、ビーコン周期回数Aが倍数値Rの倍数に該当しない場合、若しくはビーコンスキップモードでない場合(通常モードである場合)、ビーコン処理部43は、今回のビーコン周期タイミングでビーコン受信する(スキップしない)という判断結果としてFalseを出力(S504)してビーコンスキップモード判定処理を終了する。
【0099】
以上のように、無線子機40では、一部のビーコン周期タイミングについてビーコン受信試行をスキップすることで、省電力化を図っている。
【0100】
なお、ゲートウェイ30と無線子機40とのビーコン同期精度がより高い通信環境において、ビーコン受信精度閾値Pを高くすることで、より消費電力の抑止効果を奏する可能性があるが、無線子機40のクロック精度によっては長い期間ビーコン受信なしで自走のクロックにて動作することで、実データ受信時のタイミングの精度が落ちる可能性が考えられる。そのため、無線子機40の性能と通信環境にあわせたパラメータ設定が望ましい。
【0101】
(A-3)実施形態の効果
この実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0102】
この実施形態の無線子機40は、外部装置(ネットワークサーバ20やゲートウェイ30等)から見た場合LoRa標準のクラスBで動作しているように振る舞うが、外部装置に影響を与えない範囲で、一部のビーコン周期タイミングについてスキップしている。これにより、この実施形態の無線子機40はビーコン受信の制御に必要となる消費電力を従来(LoRa標準のクラスBに完全準拠する場合)よりも低減することができる。
【0103】
(B)他の実施形態
本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するような変形実施形態も挙げることができる。
【0104】
(B-1)上記の実施形態では、無線子機40がLoRaWANに接続する例について示したが、他のビーコン信号を基準として同期する無線通信ネットワークシステムに接続する構成としても、同様の方式にて消費電力の削減効果が得られる。
【0105】
(B-2)上記の実施形態では、無線子機40(ビーコン処理部43)は、ビーコン周期回数Aが倍数値Rの倍数となるビーコン周期タイミングをスキップしていたが、逆にビーコン周期回数Aが倍数値Rの倍数となるビーコン周期タイミング以外をスキップするようにしてもよい。例えば、無線子機40(ビーコン処理部43)は、倍数値Rが3であれば、ビーコン周期回数Aが3、6、9、12、15、18、・・・のビーコン周期タイミングでのみビーコン受信を試行し、それ以外のビーコン周期タイミングをスキップするようにしてもよい。
【0106】
(B-3)上記の実施形態では、無線子機40(ビーコン処理部43)は、ビーコン周期回数Aが倍数値Rを用いて、スキップするビーコン周期タイミングを判断していたが、その他のパラメータを用いるようにしてもよい。例えば、倍数値Rではなく、スキップするビーコン周期タイミングとスキップしないビーコン周期タイミングの比率を表す「スキップ閾値Q」に置き換えるようにしてもよい。例えば、ビーコン処理部43において、スキップ閾値Q=25%が適用される場合、スキップするビーコン周期タイミングの割合を25%とする(4回に1回の割合でスキップする)ようにしてもよい。
【0107】
(B-4)上記の実施形態では、倍数値Rについては固定値としたが、動的に変動する値としてもよい。例えば、ビーコン受信精度に応じて倍数値Rを変動させるようにしてもよい。具体的には、例えば、ビーコン受信精度が95%以上96%未満の場合は倍数値R=3、ビーコン受信精度が97%以上98%未満の場合は倍数値R=4、ビーコン受信精度が98%以上99%未満の場合は倍数値R=5、ビーコン受信精度が99%以上の場合は倍数値R=6のようにビーコン受信精度が高いほど倍数値Rの値を大きく取るようにしてもよい。
【符号の説明】
【0108】
1…通信システム,10…アプリケーションサーバ,20…ネットワークサーバ,30…ゲートウェイ,40…無線子機(無線通信装置),41…システムデータ記憶部,42…タイマ制御部,43…ビーコン処理部,44…動作記憶部,45…MAC制御部,46…無線送信部,47…無線受信部,48…無線アンテナ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8