特開 2024-121959 穴閉塞用蓋体

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024121959

(43)【公開日】2024-09-09

(54)【発明の名称】穴閉塞用蓋体

(51)【国際特許分類】

   F16J 13/14 20060101AFI20240902BHJP

   B62D 25/24 20060101ALI20240902BHJP

【ＦＩ】

F16J13/14

B62D25/24 A

【審査請求】未請求

【請求項の数】5

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023029226

(22)【出願日】2023-02-28

(71)【出願人】

【識別番号】512304076

【氏名又は名称】富士ゴム工業株式会社

(71)【出願人】

【識別番号】000005348

【氏名又は名称】株式会社ＳＵＢＡＲＵ

(74)【代理人】

【識別番号】110002907

【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】八木澤 正規

(72)【発明者】

【氏名】金久保 哲也

【テーマコード（参考）】

3D203

3J046

【Ｆターム（参考）】

3D203AA01

3D203CA07

3D203DA70

3J046AA07

3J046AA13

3J046AA14

3J046BA04

3J046BC15

3J046CA03

3J046DA10

(57)【要約】

【課題】挿入力量を小さく設定し作業性等の向上に寄与すると共に抜去力量の低下を抑えて水密性等の機能低下を抑止し得る穴閉塞用蓋体を提供する。
【解決手段】車体パネルの穴を閉塞する蓋体であって、平板形状の蓋本体と、内周面と外周斜面とを有する柱状壁部と、蓋本体と柱状壁部とを連結し屈曲自在な連結屈曲部と、装着時に穴の開口周縁を覆い、穴に対し位置決めする溝を有するヒレ部とを備え、蓋本体は中央領域の厚肉部と、厚肉部の周縁に薄肉に形成したフランジ部とを有し、厚肉部は外側に露呈する第１円形凸部と、内側に配置される第２円形凸部とを有し、第１円形凸部の直径と第２円形凸部の直径は、同径又は第１円形凸部の方が第２円形凸部より大径である。
【選択図】図３

【特許請求の範囲】

【請求項1】

車両の車体パネルに設けられる穴を閉塞するための穴閉塞用蓋体であって、
第１平面と第２平面とを有する平板形状からなる蓋本体と、
前記蓋本体の前記第２平面に直交し第１の方向に延出する内周面と、前記内周面の先端側周縁から前記蓋本体に近付く方向であってかつ前記蓋本体の径方向外方に向けて斜行して延出する外周斜面とを有し、前記蓋本体の外周縁部近傍を取り巻くように配設される柱状壁部と、
前記蓋本体の外周縁と前記柱状壁部の内周縁とを連結し、屈曲自在に形成される連結屈曲部と、
前記柱状壁部の前記外周斜面の先端側周縁から径方向外方に向けて突出して形成され、当該穴閉塞用蓋体が前記穴に取り付けられたときには、前記穴の開口周縁を全周に亘って覆うと共に、前記穴に対する当該穴閉塞用蓋体の位置決めを行う位置決め用溝を有するヒレ部と、
を具備し、
前記蓋本体は、中央領域において円形状に形成される厚肉部と、前記厚肉部から前記蓋本体の径方向外方に向けて形成されかつ前記厚肉部より薄肉に形成されるフランジ部とを有し、
前記厚肉部は、前記蓋本体の前記第１平面から当該第１平面に直交する方向に突出し前記蓋本体の外側に露呈する第１円形凸部と、前記蓋本体の前記第２平面から前記第１の方向に突出し前記蓋本体の内側に配置される第２円形凸部とを有して形成され、
前記第１円形凸部の直径と前記第２円形凸部の直径とは、同径であるか又は前記第１円形凸部の方が前記第２円形凸部よりも大径に形成されていることを特徴とする穴閉塞用蓋体。

【請求項2】

前記第１円形凸部の基点と前記第２円形凸部の基点とを結ぶ仮想直線に直交し、前記仮想直線の中点から前記蓋本体の径方向に延びる仮想垂線は、前記柱状壁部の前記外周斜面と交わることを特徴とする請求項１に記載の穴閉塞用蓋体。

【請求項3】

前記連結屈曲部は、前記フランジ部の外周縁を取り巻くように形成され、
前記連結屈曲部の外周面と前記ヒレ部の内周面との間には、前記蓋本体の外側に向けた開口と、前記開口に対向する部位に形成された平面状の床面と、を有する環状溝部が前記フランジ部の全周に亘って形成されていることを特徴とする請求項１に記載の穴閉塞用蓋体。

【請求項4】

前記連結屈曲部は、前記フランジ部から前記第１の方向に離れる方向であってかつ前記蓋本体の径方向外方に向けて斜行して延出して形成されており、
前記連結屈曲部と前記フランジ部の外周縁との連結部位よりも、前記連結屈曲部と前記柱状壁部の内周縁との連結部位の方が薄肉に形成されていることを特徴とする請求項１に記載の穴閉塞用蓋体。

【請求項5】

前記蓋本体と、前記柱状壁部と、前記連結屈曲部と、前記ヒレ部とは、弾性を有する素材を用いて一体に形成されていることを特徴とする請求項１に記載の穴閉塞用蓋体。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

この発明は、自動車等の車両において、車体パネル等に水抜き等を目的として設けられている穴を閉塞するための穴閉塞用蓋体に関する発明である。

【背景技術】

【0002】

従来、自動車等の車両における車体パネル等には、例えば水抜き等を目的として比較的小径の穴が、例えば床面等の所定の位置に設けられることがある。さらに、車両においては、この種の穴に対して、着脱自在に構成される蓋体（例えばプラグ，栓ともいう）を配設されているのが一般である。

【0003】

一般に、車両における当該蓋体は、例えば車両の製造工程において作業者が手作業によって車体パネル等の穴へ装着している。そして、車体パネル等の穴に装着された蓋体は、車両が工場出荷された後において、当該車両が運用される際には、当該穴を水密的に閉塞する機能を有する。

【0004】

また、車両においては、当該車両を運用する使用者（ユーザ）若しくは整備工場の作業員等が、適宜、所定のタイミングで水抜き等の作業を行うことがある。そのような水抜き等の作業時には、使用者若しくは作業員等は、当該穴に装着されている蓋体を取り外して、所定の作業を行った後、再度、同穴に同蓋体を装着するといった作業を行う。

【0005】

一般に、この種の蓋体は、水密性等の機能を確保する観点から蓋体の抜去力量を極力大きく設定する（装着後に抜去し難くする）ことが望まれている。しかしながら、その一方で、蓋体の挿抜を伴う作業性等を考慮した場合は、蓋体の挿入力量及び抜去力量は極力小さく設定する（挿入及び抜去し易くする）ことが望ましいことが知られている。

【0006】

そこで、この種の従来の蓋体においては、作業性等を向上させるための工夫として、例えば実公平２－８８６７号公報，特開２０１５－８１６５９号公報等によって、種々の提案がなされている。

【0007】

これら上記実公平２－８８６７号公報，上記特開２０１５－８１６５９号公報等によって開示されている従来の蓋体の構成によれば、抜去力量及び挿入力量を小さく設定することができるので、各種メンテナンス等を行う際の作業性等を向上させることができるという効果が得られる。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0008】

【特許文献1】実公平２－８８６７号公報

【特許文献2】特開２０１５－８１６５９号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0009】

ところが、上記実公平２－８８６７号公報，上記特開２０１５－８１６５９号公報等によって開示されている蓋体の構成では、抜去力量及び挿入力量を小さく設定した結果、蓋体が装着状態にあるときの水密性等の機能を低下させてしまうという問題点が生じる。

【0010】

本発明は、挿入力量を小さく設定して作業性等の向上に寄与することができると同時に、抜去力量の低下を抑えて水密性等の機能低下を抑止することができる穴閉塞用蓋体を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0011】

上記目的を達成するために、本発明の一態様の穴閉塞用蓋体は、車両の車体パネルに設けられる穴を閉塞するための穴閉塞用蓋体であって、第１平面と第２平面とを有する平板形状からなる蓋本体と、前記蓋本体の前記第２平面に直交し第１の方向に延出する内周面と、前記内周面の先端側周縁から前記蓋本体に近付く方向であってかつ前記蓋本体の径方向外方に向けて斜行して延出する外周斜面とを有し、前記蓋本体の外周縁部近傍を取り巻くように配設される柱状壁部と、前記蓋本体の外周縁と前記柱状壁部の内周縁とを連結し、屈曲自在に形成される連結屈曲部と、前記柱状壁部の前記外周斜面の先端側周縁から径方向外方に向けて突出して形成され、当該穴閉塞用蓋体が前記穴に取り付けられたときには、前記穴の開口周縁を全周に亘って覆うと共に、前記穴に対する当該穴閉塞用蓋体の位置決めを行う位置決め用溝を有するヒレ部と、を具備し、前記蓋本体は、中央領域において円形状に形成される厚肉部と、前記厚肉部から前記蓋本体の径方向外方に向けて形成されかつ前記厚肉部より薄肉に形成されるフランジ部とを有し、前記厚肉部は、前記蓋本体の前記第１平面から当該第１平面に直交する方向に突出し前記蓋本体の外側に露呈する第１円形凸部と、前記蓋本体の前記第２平面から前記第１の方向に突出し前記蓋本体の内側に配置される第２円形凸部とを有して形成され、前記第１円形凸部の直径と前記第２円形凸部の直径とは、同径であるか又は前記第１円形凸部の方が前記第２円形凸部よりも大径に形成されている。

【発明の効果】

【0012】

本発明によれば、挿入力量を小さく設定して作業性等の向上に寄与することができると同時に、抜去力量の低下を抑えて水密性等の機能低下を抑止することができる穴閉塞用蓋体を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【0013】

【図1】本発明の一実施形態の穴閉塞用蓋体の外観を示す外観斜視図

【図2】図１の矢印［２］方向から見た平面図

【図3】図１の［３］－［３］線に沿う縦断面図

【図4】図１の［４］－［４］線に沿って切断した部分斜視図

【図5】図１の穴閉塞用蓋体を車体パネル等の穴に装着する際の作用を示す拡大半断面図（穴閉塞用蓋体の穴への装着直前のようす）

【図6】図１の穴閉塞用蓋体を車体パネル等の穴に装着する際の作用を示す拡大半断面図（図５の後、穴閉塞用蓋体の穴への装着途中のようす）

【図7】図１の穴閉塞用蓋体を車体パネル等の穴に装着する際の作用を示す拡大半断面図（図６の後、穴閉塞用蓋体の穴への装着途中のようす）

【図8】図１の穴閉塞用蓋体を車体パネル等の穴に装着する際の作用を示す拡大半断面図（図７の後、穴閉塞用蓋体の穴への装着完了状態）

【発明を実施するための形態】

【0014】

以下、図示の実施の形態によって本発明を説明する。以下の説明に用いる各図面は模式的に示すものであり、各構成要素を図面上で認識できる程度の大きさで示すために、各部材の寸法関係や縮尺等を構成要素毎に異ならせて示している場合がある。したがって、本発明は、各図面に記載された各構成要素の数量や各構成要素の形状や各構成要素の大きさの比率や各構成要素の相対的な位置関係等に関して、図示の形態のみに限定されるものではない。

【0015】

図１は、本発明の一実施形態の穴閉塞用蓋体の外観を示す外観斜視図である。図２は、図１の矢印［２］方向から見た平面図である。なお、図２においては、穴閉塞用蓋体の内部構造の断面の一部を合わせて図示している（点線参照）。図３は、図１の［３］－［３］線に沿う縦断面図である。図４は、図１の［４］－［４］線に沿って切断した部分斜視図である。図５～図７は、図１の穴閉塞用蓋体を車体パネル等の穴に装着する際の作用を順を追って示す図である。なお、図５～図7においては、本実施形態の穴閉塞用蓋体の断面の左半部のみを拡大して示している。このうち、図５は穴閉塞用蓋体を車体パネル等の穴に装着する直前の状態を示している。図６は図５の状態の後、穴閉塞用蓋体の一部が車体パネル等の穴に挿入された状態を示している。図７は図６の状態の後、穴閉塞用蓋体の一部が車体パネル等の穴にさらに挿入された状態を示している。図８は図７の状態の後、穴閉塞用蓋体の車体パネル等の穴への装着完了状態を示している。

【0016】

まず、本発明の一実施形態の穴閉塞用蓋体の構成を、図１～図４を用いて以下に説明する。

【0017】

本実施形態の穴閉塞用蓋体（以下、単に蓋体と略記する）１０は、例えば自動車等の車両における車体パネル等において、水抜き等を目的として設けられる穴を閉塞するために適用される部材である。この蓋体１０は、車体パネル等に設けられ装着対象となる所定の穴（不図示）に対し着脱自在に構成されている。装着対象となる所定の穴については、図１～図４においては図示を省略している。当該所定の穴については、図５～図７を用いて行う蓋体１０の作用説明の際に後述する。

【0018】

蓋体１０は、図１等に示すように、全体として略円形の平板形状に形成されている。なお、この場合において、装着対象とする所定の穴（不図示）の形状は、略円形状であると想定している。

【0019】

詳述すると、蓋体１０は、図１等に示すように、蓋本体１１と、柱状壁部１２と、連結屈曲部１３と、ヒレ部１４とを有して形成されている。これらの各部位（即ち、蓋本体１１と、柱状壁部１２と、連結屈曲部１３と、ヒレ部１４）は、いずれも弾性を有する素材を用いて形成され、かつ一体に形成されている。弾性を有する素材としては、具体的には、例えば弾性を有する樹脂部材又はゴム部材等が適用される。

【0020】

蓋本体１１は、図２～図４に示すように、第１平面１１ａｔと第２平面１１ａｕとを有する略平板形状からなる部位である。ここで、蓋本体１１における第１平面１１ａｔは、当該蓋体１０が装着対象とする所定の穴（不図示）に取り付けられたときに、外側に露呈する平面を指す。また、蓋本体１１における第２平面１１ａｕは、当該蓋体１０が装着対象とする所定の穴（不図示）に取り付けられたときに、内側に配置される平面を指す。

【0021】

蓋本体１１は、厚肉部１１ａと、フランジ部１１ｂとを有して形成されている。ここで、厚肉部１１ａは、略中央領域において略円形状に形成されている。また、フランジ部１１ｂは、厚肉部１１ａから当該蓋本体１１の径方向に沿って外方に向けて形成されている。そして、フランジ部１１ｂは、厚肉部１１ａよりも薄肉に形成されている。

【0022】

さらに、厚肉部１１ａは、第１円形凸部１１ａａと、第２円形凸部１１ａｂとを有して形成されている。第１円形凸部１１ａａは、蓋本体１１の第１平面１１ａｔから当該第１平面１１ａｔに直交する方向（図１の矢印Ｘ参照）に沿って外方に向かう方向（図１の矢印Ｘ２方向）に突出して形成されている。これにより、第１平面１１ａｔは、蓋本体１１の外側に露呈している。

【0023】

第２円形凸部１１ａｂは、蓋本体１１の第２平面１１ａｕから当該第２平面１１ａｕに直交する方向（図１の矢印Ｘ参照）に沿って内側に向かう第１の方向（図１の矢印Ｘ１方向）に向けて突出して形成されている。これにより、第２平面１１ａｕは、蓋本体１１の内側に配置されている。

【0024】

この場合において、図３に示すように、第１円形凸部１１ａａの直径Ｄ１と、第２円形凸部１１ａｂの直径Ｄ２とは、略同径となるように、又は第１円形凸部１１ａａの直径Ｄ１の方が、第２円形凸部１１ａｂの直径Ｄ２よりも大径に形成されている（Ｄ１＞Ｄ２）。本実施形態において図示する例示は、第１円形凸部１１ａａの直径Ｄ１が、第２円形凸部１１ａｂの直径Ｄ２よりも大径に形成した例を示している。

【0025】

柱状壁部１２は、内周面１２ａと、外周斜面１２ｂとを有して形成され、全体として略円筒形に形成されている。この柱状壁部１２は、蓋本体１１の外周縁部近傍を取り巻くように配設されている。

【0026】

内周面１２ａは、蓋本体１１の第２平面１１ａｕに直交する第１の方向Ｘ１（図３参照）に向けて延出する壁面である。外周斜面１２ｂは、内周面１２ａの先端側周縁から蓋本体１１に近付く方向であって、蓋本体１１の径方向外方に向けて斜行して延出する壁面である。

【0027】

外周斜面１２ｂの先端側外周縁には、当該蓋体１０が装着対象となる所定の穴（不図示）に取り付けられたときに、当該所定の穴（不図示）の開口周縁の内面側を係止する係止爪部１２ｃが形成されている。

【0028】

なお、本実施形態の蓋体１０は、装着対象とする所定の穴の開口サイズに応じたサイズのものが適用される。この場合において、例えば、当該蓋体１０を適用する装着対象の所定の穴の開口直径は、柱状壁部１２の外周斜面１２ｂの中程部位の直径Ｄ３（図３参照）以下であり、かつ同外周斜面１２ｂの先端側周縁部位の直径Ｄ４（図３参照）以上であることが好ましい（Ｄ３≧Ｄ４）。

【0029】

連結屈曲部１３は、蓋本体１１のフランジ部１１ｂの外周縁と柱状壁部１２の内周縁とを連結し、屈曲自在に形成される部位である。連結屈曲部１３は、フランジ部１１ｂの外周縁を取り巻くように、当該フランジ部１１ｂと一体に形成されている。

【0030】

また、連結屈曲部１３は、フランジ部１１ｂの外周縁から第１の方向Ｘ１に向けて離れる方向であって、蓋本体１１の径方向外方に向けて斜行して延出して形成されている。そして、図３に示すように、連結屈曲部１３の肉厚は、フランジ部１１ｂの外周縁との第１連結部位１３ａの肉厚ｔ１よりも、柱状壁部１２の内周縁との第２連結部位１３ｂの肉厚ｔ２方が薄肉に形成されている（ｔ１＞ｔ２）。

【0031】

ヒレ部１４は、柱状壁部１２の外周斜面１２ｂの先端側周縁から径方向外方に向けて突出して形成されている。そして、ヒレ部１４は、当該蓋体１０が装着対象となる所定の穴（不図示）に取り付けられたときに、当該所定の穴（不図示）の開口周縁を全周に亘って覆うと共に、当該所定の穴（不図示）に対する蓋体１０の位置決めを行う位置決め用溝１４ａを有して形成されている。

【0032】

さらに、連結屈曲部１３の外周面１３ｃとヒレ部１４の内周面１４ｃとの間には、環状溝部１５が形成されている。この環状溝部１５は、蓋本体１１の外側に向けた開口１５ａと、開口１５ａに対向する部位に形成された平面状の床面１５ｂとを有して形成されている。そして、環状溝部１５は、フランジ部１１ｂの全周に亘って形成されている。この場合において、柱状壁部１２は、環状溝部１５の床面１５ｂよりも第１の方向Ｘ１に向けて離間した位置に配設されている。

【0033】

なお、上述したように、第１円形凸部１１ａａと第２円形凸部１１ａｂとは略同径となるように、又は第１円形凸部１１ａａの直径Ｄ１の方が、第２円形凸部１１ａｂの直径Ｄ２よりも大径に形成されている。この場合において、第１円形凸部１１ａａの直径Ｄ１と第２円形凸部１１ａｂの直径Ｄ２とが極端に異なっていることは好ましくはない。

【0034】

例えば、第１円形凸部１１ａａの直径Ｄ１に対して、第２円形凸部１１ａｂの直径Ｄ２が極端に小径に設定されている場合において、装着作用の際に、厚肉部１１ａに対して挿入力量が加わったとすると、フランジ部１１ｂの変形を均等に維持することができないことになってしまう。

【0035】

そこで、第１円形凸部１１ａａの直径Ｄ１と第２円形凸部１１ａｂの直径Ｄ２とは、例えば、次のように設定されているのが好ましい。

【0036】

ここで、図３に示すように、第１円形凸部１１ａａの基点Ａ１と、第２円形凸部１１ａｂの基点Ａ２とを結ぶ直線を仮想直線Ｌ１とする。この場合において、基点Ａ１は、第１円形凸部１１ａａの直径Ｄ１を規定する基準点とする。また、基点Ａ２は、第２円形凸部１１ａｂの直径Ｄ２を規定する基準点とする。また、当該仮想直線Ｌ１に直交する直線であって、仮想直線Ｌ１の中点Ａ３から蓋本体１１の径方向外方に延びる直線を仮想垂線Ｌ２とする。

【0037】

この場合において、仮想垂線Ｌ２が柱状壁部１２の外周斜面１２ｂと常に交わるように、仮想直線Ｌ１の傾斜を設定するのが好ましい。つまり、仮想直線Ｌ１の傾斜は、上述したように、基点Ａ１，Ａ２によって規定されている。このことから、第１円形凸部１１ａａの直径Ｄ１に対して、第２円形凸部１１ａｂの直径Ｄ２が極端に小径に設定されている場合において、仮想垂線Ｌ２は、柱状壁部１２の外周斜面１２ｂに交わらない状態が現出する。また、第１円形凸部１１ａａの直径Ｄ１に対して、第２円形凸部１１ａｂの直径Ｄ２が大径に設定された場合にも、同様に仮想垂線Ｌ２が、柱状壁部１２の外周斜面１２ｂに交わらない状態が現出する。

【0038】

したがって、仮想垂線Ｌ２が柱状壁部１２の外周斜面１２ｂと常に交わる範囲内となるように、仮想直線Ｌ１の傾斜、即ち、第１円形凸部１１ａａの直径Ｄ１と第２円形凸部１１ａｂの直径Ｄ２とを設定するのが好ましい。

【0039】

このように構成される本実施形態の蓋体１０を、車体パネル等の装着対象となる所定の穴に装着する際の作用を、図５～図７を用いて以下に簡単に説明する。なお、図５～図７においては、図面の繁雑化を避けるために、車体パネル等２０及び当該車体パネル等２０における装着対象とする所定の穴２０ａを二点鎖線で示している。

【0040】

まず、図５に示すように、車体パネル等２０における装着対象とする所定の穴２０ａに対して蓋体１０を載置する。このとき、所定の穴２０ａの開口周縁に対して、柱状壁部１２の外周斜面１２ｂの一部が当接するように載置する（図５に示す状態）。

【0041】

この場合において、柱状壁部１２には、外周斜面１２ｂが設けられている。このことから、蓋体１０は、所定の穴２０ａの開口周縁に対して、概略的に位置決めされた状態で載置されることになる。ここで、例えば、蓋体１０が所定の穴２０ａの平面に対して傾いた状態で載置されていたとしても、当該蓋体１０の略中心領域は、所定の穴２０ａの開口中心に略一致するように位置決めされる。

【0042】

図５に示す状態において、使用者（ユーザ）等は、蓋体１０の蓋本体１１の第１円形凸部１１ａａの略中央部領域に対して、例えば指等を用いて、図５の矢印Ｐ方向からの押圧力を加える。すると、蓋体１０は、全体として同矢印Ｐ方向に移動する。このとき、柱状壁部１２の外周斜面１２ｂは、開口周縁に常に当接しながら、矢印Ｐ方向に進もうとする。しかしながら、外周斜面１２ｂの直径は、柱状壁部１２が矢印Ｐ方向に進むにしたがって大径となる。このため、柱状壁部１２は、図６に示すように、外周斜面１２ｂと開口周縁との当接部位を回動中止として矢印Ｒ１方向に撓む。

【0043】

このとき、連結屈曲部１３においては、フランジ部１１ｂとの第１連結部位１３ａ（肉厚ｔ１）よりも、柱状壁部１２との第２連結部位１３ｂ（肉厚ｔ２）を薄肉に形成している（ｔ１＞ｔ２）ので、柱状壁部１２との第２連結部位１３ｂの方が先に撓む。したがって、蓋本体１１の厚肉部１１ａの第１円形凸部１１ａａに押圧力Ｐが加わったとき、蓋体１０は、図５の状態から図６の状態に変位する。

【0044】

図６に示す状態において、蓋体１０に対する押圧力Ｐがそのまま加わり続けて、外周斜面１２ｂが所定の穴２０ａの開口周縁に沿って移動すると、やがて、図７に示す状態になる。

【0045】

図７に示す状態においては、ヒレ部１４の先端部位が、車体パネル等２０における所定の穴２０ａの開口周縁に当接する状態になる。この状態から、さらに、押圧力Ｐが加わると、ヒレ部１４の先端部位は、所定の穴２０ａの開口周縁との当接を維持したまま、図７の矢印Ｒ２方向に撓む。そして、ヒレ部１４は、やがて、図８に示すように、所定の穴２０ａの開口周縁の外面側を覆う状態になる。

【0046】

一方、図７の状態から図８の状態に移行すると、外周斜面１２ｂと所定の穴２０ａの開口周縁との当接が外れる状態になる。すると、このとき、外周斜面１２ｂは、図７の矢印Ｒ３方向へ自身の弾性力によって回動する。これにより、図７の状態から図８の状態に移行する。

【0047】

図８に示す状態になると、係止爪部１２ｃが、所定の穴２０ａの開口周縁の内面側を係止する位置に配置される。同時に、所定の穴２０ａの開口周縁が位置決め用溝１４ａに入り込む。この状態において、ヒレ部１４は、上述したように、所定の穴２０ａの開口周縁の外面側を覆っている。

【0048】

このようにして、蓋体１０は、所定の穴２０ａに対して位置決めされる。また、図８の装着完了状態になったとき、蓋体１０は、柱状壁部１２の弾性力が所定の穴２０ａの開口周縁を常に押圧している。したがって、蓋体１０は、所定の穴２０ａに対する所定の装着状態が安定して維持される。そして、この装着完了状態にあるとき、蓋体１０は、柱状壁部１２の係止爪部１２ｃとヒレ部１４とによって形成される位置決め用溝１４ａが、所定の穴２０ａの開口周縁を挟み込む構造となっている。したがって、このときの抜去力量は低下すること無く維持されている。

【0049】

以上説明したように上記一実施形態によれば、車両の車体パネルに設けられる穴（２０ａ）を閉塞するための蓋体１０において、蓋本体１１は、略中央領域に円形状に形成される厚肉部１１ａと、この厚肉部１１ａから蓋本体１１の径方向外方に向けて当該厚肉部１１ａより薄肉に形成されるフランジ部１１ｂとによって形成している。

【0050】

このように、蓋本体１１の略中央領域に厚肉部１１ａを形成し、当該厚肉部１１ａの周縁部に薄肉のフランジ部１１ｂを形成した構成により、当該蓋体１０を所定の穴（２０ａ）に装着する際に、使用者（ユーザ）が指等により挿入力量を加えるための押圧位置を確実かつ容易に認識することができる。

【0051】

また、このように蓋本体１１を構成したので、厚肉部１１ａに挿入力量が加わったときには、略中央領域の厚肉部１１ａの形状が安定的に維持されると同時に、周縁部のフランジ部１１ｂに対しては、扶養された挿入力量が均一に加わる。したがって、フランジ部１１ｂを均等に変形させることができる。

【0052】

さらに、厚肉部１１ａは、第１平面１１ａｔ側（外側面）の第１円形凸部１１ａａと、第２平面１１ａｕ側（内側面）の第２円形凸部１１ａｂとを有して形成している。この場合において、第１円形凸部１１ａａの直径Ｄ１と第２円形凸部１１ａｂの直径Ｄ２とは、同径であるか又は第１円形凸部１１ａａの方が第２円形凸部１１ａｂよりも大径に形成している（Ｄ１＞Ｄ２）。この構成により、蓋体１０を所定の穴（２０ａ）へ装着する際の厚肉部１１ａに加わる挿入力量を、より均等にフランジ部１１ｂへと伝達することができるようになる。

【0053】

またさらに、厚肉部１１ａの両面（１１ａｔ，１１ａｕ）に第１円形凸部１１ａａと第２円形凸部１１ａｂとを設ける構成としたので、厚肉部１１ａの一方の面側のみへの突出量を抑えることができる。

【0054】

例えば、第１平面１１ａｔ側のみに凸状部を設ける場合に比べて、蓋体１０の外側への突出量を抑えることができる。したがって、蓋体１０の装着状態において、蓋体１０が車体パネル等の平面から突出することを抑えることができる。

【0055】

なお、第２平面１１ａｕ側のみに凸状部を設ける構成とした場合には、蓋体１０の外側の押圧位置が明示できないことになるので、少なくとも第１平面１１ａｔ側に第１円形凸部１１ａａを設ける形態が望ましい。

【0056】

一方、蓋体１０は、蓋本体１１と、柱状壁部１２と、連結屈曲部１３とを一体に形成し、柱状壁部１２は、第１の方向Ｘ１に延出する内周面１２ａと、内周面１２ａの先端側周縁から延出する外周斜面１２ｂとを有して形成している。

【0057】

このように、柱状壁部１２に外周斜面１２ｂを設ける構成としたので、蓋体１０の所定の穴（２０ａ）に対して、外周斜面１２ｂが当接するように載置するのみで、当該所定の穴（２０ａ）に対する蓋体１０の位置決めを確実かつ容易に行うことができる。

【0058】

詳述すると、柱状壁部１２の外周斜面１２ｂの一部が、装着対象とする所定の穴（２０ａ）の開口周縁に当接して載置される。これにより、当該所定の穴（２０ａ）の略中心位置と蓋体１０の略中心位置とを容易に略一致させて載置することができる。したがって、蓋体１０の装着作業の効率化に寄与することができる。

【0059】

また、蓋本体１１の外周縁と柱状壁部１２の内周縁とは、屈曲自在に形成される連結屈曲部１３によって連結する構成としている。この場合において、連結屈曲部１３は、フランジ部１１ｂの外周縁との第１連結部位１３ａ（肉厚ｔ１）よりも、柱状壁部１２の内周縁との第２連結部位１３ｂ（肉厚ｔ２）の方が薄肉に形成されている（ｔ１＞ｔ２）。

【0060】

このような構成とすることで、連結屈曲部１３は、柱状壁部１２の内周縁との第２連結部位１３ｂの方が先に容易に撓み屈曲する構成とされる。したがって、より少ない挿入力量にて、柱状壁部１２を容易に変形させることができる。

【0061】

他方、蓋体１０が所定の穴（２０ａ）に装着された状態となったときには、ヒレ部１４は、所定の穴（２０ａ）の開口周縁を全周に亘って覆うと共に、所定の穴（２０ａ）に対する蓋体１０の位置決めを位置決め用溝１４ａによって行う構成としている。

【0062】

蓋体１０は、この状態（装着状態）とされたとき、連結屈曲部１３の外周面とヒレ部１４の内周面との間に、フランジ部１１ｂの外周縁の全周に沿って環状溝部１５が形成されている。そして、この環状溝部１５よりも、第１の方向Ｘ１に向けて離間した位置に柱状壁部１２が形成されている。

【0063】

このような構成とすることで、蓋体１０の装着時においては、環状溝部１５の一部を形成する連結屈曲部１３が挿入力量を受けて撓みやすい構造となっている一方、装着状態となった時には、肉厚部分を有する柱状壁部１２が所定の穴（２０ａ）の開口周縁を押圧する構造となっている。したがって、この構成により、蓋体１０の抜去力量の低下を抑えることができる。

【0064】

さらに、装着状態においては、ヒレ部１４が所定の穴（２０ａ）の開口周縁を全周に亘って覆うと共に、所定の穴（２０ａ）の開口周縁は、位置決め用溝１４ａに配置されるので、蓋体１０の装着状態は、より安定した状態が維持される。

【0065】

なお、本実施形態においては、穴閉塞用蓋体（蓋体１０）の装着対象とする穴は、略円形状であるものとして想定している。しかしながら、装着対象とする穴の形状は、略円形状であるとは限らない。

【0066】

装着対象とする穴が略円形状以外の形状である場合には、穴閉塞用蓋体１０の形状を当該穴形状に合わせて形成することにより、本発明の穴閉塞用蓋体の構成は、如何なる形状の穴に対しても適用することができる。

【0067】

このように、本実施形態によれば、蓋体１０の所定の穴（２０ａ）への装着時における挿入力量を小さく設定することができ、作業性等の向上に寄与することができる。これと同時に、蓋体１０を所定の穴（２０ａ）に装着した状態における抜去力量の低下を抑えることができ、よって水密性等の機能低下を抑止することができる。

【0068】

本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用を実施することができることは勿論である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせによって、種々の発明が抽出され得る。例えば、上記一実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。この発明は、添付のクレームによって限定される以外にはそれの特定の実施態様によって制約されない。

【符号の説明】

【0069】

１０…穴閉塞用蓋体
１１…蓋本体
１１ａ…厚肉部
１１ｂ…フランジ部
１２…柱状壁部
１２ａ…内周面
１２ｂ…外周斜面
１２ｃ…係止爪部
１３…連結屈曲部
１３ａ…第１連結部位
１３ｂ…第２連結部位
１３ｃ…外周面
１４…ヒレ部
１４ａ…位置決め用溝
１４ｃ…内周面
１５…環状溝部
１５ａ…開口
１５ｂ…床面
２０…車体パネル等
２０ａ…所定の穴

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】