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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121982
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】放射光導光型温度計
(51)【国際特許分類】
   G01J 5/0818 20220101AFI20240902BHJP
   G01J 5/0821 20220101ALI20240902BHJP
   G01J 5/02 20220101ALI20240902BHJP
   G01J 5/0813 20220101ALI20240902BHJP
   G01J 5/08 20220101ALI20240902BHJP
【FI】
G01J5/0818
G01J5/0821
G01J5/02 J
G01J5/0813
G01J5/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029256
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000133526
【氏名又は名称】株式会社チノー
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】寺田 大亮
【テーマコード(参考)】
2G066
【Fターム(参考)】
2G066BA25
2G066BA38
(57)【要約】
【課題】放射温度計は、測温対象物が放射する放射光の輝度を測定して温度を求めるため、放射輝度が高ければ温度が高くなる。
【課題を解決するための手段】測温対象物から放射される光が大気中での乱反射などによる減衰を低減し、第一導光体内を介し測温対象物表面との間での多重反射によって実効放射率が高められて第二導光体に導かれるように構成された多重反射機構を有することで前記問題を解決する放射光導光型温度計を提供する。この放射光導光型温度計は、実効放射率が高められ、実効的な放射輝度を上げることができ、測定可能な温度下限を上げることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測温対象物からの放射光を導く第一導光体(A)と、
第一導光体(A)より端面積が小さな第一導光体(A)からの放射光を導く第二導光体(B)と、
第二導光体(B)に導かれた放射光に基づいて測温対象物の温度を測定するための温度測定部(C)と、
からなり、
第一導光体(A)中の放射光が第一導光体(A)を介し測温対象物表面との間での多重反射によって実効放射率が高められて第二導光体(B)に導かれるように構成された多重反射機構(D)を有する
放射光導光型温度計。
【請求項2】
多重反射機構(D)は、第一導光体(A)から第二導光体(B)への放射光受渡領域に設けられた放射光を反射するミラー手段(E)である請求項1に記載の放射光導光型温度計。
【請求項3】
多重反射機構(D)は、第一導光体(A)の側面に設けられた放射光を反射するミラー手段(E)である請求項1又は2のいずれか一に記載の放射光導光型温度計。
【請求項4】
前記ミラー手段(E)は、金属面である請求項2又は3のいずれか一に記載の放射光導光型温度計。
【請求項5】
前記ミラー手段(E)は、第一導光体(A)の中心部分屈折率Aと非中心部屈折率Bとの関係が下記式となる構成である請求項2又は3のいずれか一に記載の放射光導光型温度計。
A>B
【請求項6】
前記ミラー手段(E)は、第一導光体(A)と第二導光体(B)とは密着しており、第一導光体(A)の中心部分屈折率Aと、第二導光体(B)の中心部分屈折率Cとの関係が下記式となる構成である請求項2又は3のいずれか一に記載の放射光導光型温度計。
A≦C
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測温対象物から放射され第一導光体と第二導光体で導かれた放射光に基づいて、測温対象物の温度を測定する放射光導光型温度計に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
直接測温対象物を覗けない場所や狭い場所など放射温度計の光学系で直接対象物が観察できない場合には、光ファイバを使用し、測温対象物から放射される放射光を導いて測定して温度を求める放射温度計が使われている。
【0003】
特許文献1には、中心部に光ガイド層を有し被測定物体からの光を受光する石英系ガラスロッドと、この石英系ガラスロッドの出射側に結合された石英系光ファイバを備えた光検出装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には内面を高反射率とした両端面開放の筒状のキャビティと、内面を高反射率にした筒状のキャビティの被測温物体表面から遠い側の端面を中心に小孔を有する閉鎖端面とした2種類のキャビティを用いて放射輝度測定することにより被測温物体の温度を測定する放射温度計が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58-37527号
【0006】
【特許文献2】特開昭54-85079号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の明細書の実施例では、石英ロッドと光ファイバがコネクタを介して結合されると記載されている。放射温度計は、所定の波長の放射強度の測定結果から被測定物の温度を求める。通常、放射輝度が大きくなると求められる温度は高くなる。石英ロッドからファイバへ受け渡されるときに光ファイバへ入り込めずに一部の光が漏れてしまうと、測定できる放射輝度が下がってしまう。放射輝度の検出処理部には放射輝度の検出下限強度が存在することが一般的であるため、漏れ光があると、測定可能な温度下限が上がり測定範囲が狭くなるという問題があった。
【0008】
特許文献2では、冷延や熱延など鋼板の温度測定などの測定を放射率及び表面性状が未知の高温物体の温度を正確に測定できるものの、両端面開放のキャビティと、片側に小孔を設けて閉鎖したキャティの2種のキャビティを用いて複数回測定を行う必要がある。また、特許文献2にはキャビティと被測温物体間、キャビティ内空間、キャビティと放射温度計間の空間について特に記載がないが、上記のように製鉄所などでの使用が想定されていることから通常の大気と考えられる。そのような製造現場では、大気中に塵芥の浮遊は多いことが普通であるため、特に片側に小孔を設けて閉鎖したキャビティは、被測温物体から放射された赤外線などの光線がキャビティと被測温物体表面間を多重反射する際に前記塵芥で乱反射されてしまって減衰し、多重反射による見かけ上の放射率の向上効果が薄れてしまうという問題がある。
【0009】
そこで本発明では、測温対象物から放射される光の大気中の塵芥での乱反射などによる減衰を低減し、第一導光体内を介し測温対象物表面との間での多重反射によって実効放射率を高めた前記放射光を第二導光体に導くように構成された多重反射機構を有することで前記問題を解決する放射光導光型温度計を提供する。この放射光導光型温度計は、実効放射率が高められ、実効的な放射輝度を上げることができ、測定可能な温度下限を下げる(広げる)ことができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上のような放射光導光型温度計に関する課題を解決するために、本願では、第一の発明として、
測温対象物からの放射光を導く第一導光体(A)と、
第一導光体(A)より端面積が小さな第一導光体(A)からの放射光を導く第二導光体(B)と、
第二導光体(B)に導かれた放射光に基づいて測温対象物の温度を測定するための温度測定部(C)と、
からなり、
第一導光体(A)中の放射光が第一導光体(A)を介し測温対象物表面との間での多重反射によって実効放射率が高められて第二導光体(B)に導かれるように構成された多重反射機構(D)を有する
放射光導光型温度計を提供する。
【0011】
第二の発明として、第一の発明を基礎として、
多重反射機構(D)は、第一導光体(A)から第二導光体(B)への放射光受渡領域に設けられた放射光を反射するミラー手段(E)である放射光導光型温度計を提供する。
【0012】
第三の発明として、第一又は第二の発明のいずれか一を基礎として、
多重反射機構(D)は、第一導光体(A)の側面に設けられた放射光を反射するミラー手段(E)である放射光導光型温度計を提供する。
【0013】
第四の発明として、第一から第三の発明のいずれか一を基礎として、
前記ミラー手段(E)は、金属面である放射光導光型温度計を提供する。
【0014】
第五の発明として、第一から第四の発明のいずれか一を基礎として、
前前記ミラー手段(E)は、第一導光体(A)の中心部分屈折率Aと非中心部屈折率Bとの関係がA>Bとなる構成である放射光導光型温度計を提供する。
【0015】
第六の発明として、第一から第五の発明のいずれか一を基礎として、
前記ミラー手段(E)は、第一導光体(A)と第二導光体(B)とは密着しており、第一導光体(A)の中心部分屈折率Aと、第二導光体(B)の中心部分屈折率Cとの関係がA≦Cとなる構成である放射光導光型温度計を提供する。
【0016】
さらに、第一の発明から第六の発明の計算機である放射光導光型放射温度計の動作方法と、読み込み可能な動作プログラムも提供する。また、動作プログラムは記録媒体に記録されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
以上の構成を有する本発明の放射光導光型温度計によって、測温対象物から放射される光の大気中の塵芥での乱反射などによる減衰を低減し、第一導光体内を介し測温対象物表面との間での多重反射によって実効放射率を高めた放射光を第二導光体に導くように構成された多重反射機構を有することで前記問題を解決する放射光導光型温度計を提供する。この放射光導光型温度計は、実効放射率が高められ、実効的な放射輝度を上げることができ、測定可能な温度下限を下げる(広げる)ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1a】実施形態1にかかる発明の概略構成断面図例1
図1b】実施形態1にかかる発明の多重反射機構(D)の一例
図1c】実施形態1にかかる発明の第一導光体と多重反射機構と第二導光体の概略構成の別例を示す図
図1d】実施形態1にかかる発明の概略構成断面図例2
図2】実施形態1にかかる発明の動作フローチャート図
図3】実施形態1にかかる発明のハードウェア図
図4a】本発明の放射輝度と温度の較正曲線の説明図
図4b】本発明の放射輝度-温度較正曲線において測温対象物の放射率が測温誤差に与える影響の説明図
図5a】実施形態2のミラー手段の説明図1
図5b】実施形態2のミラー手段の説明図2
図5c】実施形態2のミラー手段の構造例
図6a】実施形態3のミラー手段の説明図1
図6b】実施形態3のミラー手段の説明図2
図6c】実施形態3のミラー手段の説明図3
図6d】実施形態3のミラー手段の説明図4
図6e】実施形態3のミラー手段の説明図5
図6f】実施形態3のミラー手段の説明図6
図7a】実施形態6にかかる発明の概略構成図1
図7b】実施形態6にかかる発明のミラー手段の構造例
図7c】実施形態6にかかる発明の概略構成図2
図8】本発明の全体説明図
図9】本発明の計算機部分のハードウェア図
【発明を実施するための形態】
【0019】
<全実施形態の説明の前提>
<本発明を構成し得るハードウェアについて>
本件発明は、原則的に電子計算機を利用する発明であるが、少なくとも一部はソフトウェアによって実現され、ハードウェアによっても実現され、ソフトウェアとハードウェアの協働によっても実現される。この場合に、ソフトウェアはハードウェア資源を利用して各種演算を行い求められるデータや情報を通じて諸機能を実現する。ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されていると言える。
【0020】
本件発明の各構成要件の全部又は一部を実現するハードウェアでは、計算機の基本的構成であるCPU、メモリ、バス、入出力装置、各種周辺機器、ユーザーインターフェイスなどによって構成される。各種周辺機器には、記憶装置、インターネット等インターフェイス、インターネット等機器、LAN機器、Wifi(登録商標)機器、ディスプレイ、ディスプレイインターフェイス、キーボード、マウス、スピーカ、マイク、カメラ、ビデオ、テレビ、CD装置、DVD装置、ブルーレイ装置、USBメモリ、USBメモリインターフェイス、着脱可能タイプのハードディスク、一般的なハードディスク、プロジェクタ装置、SSD、電話、ファックス、コピー機、印刷装置、ムービー編集装置、各種センサ装置などが含まれうる。
【0021】
また、本システムは、必ずしも一つの筐体によって構成されている必要はなく、複数の筐体を通信で結合して構成されるものであってもよい。また、通信は、LANであってもWAN、Wifi(登録商標)、ブルートゥース(登録商標)、赤外線通信、超音波通信、近距離無線通信(NFC)、携帯電話網であってもよく、さらに、一部が国境を跨いで設置されていてもよい。
【0022】
<全実施形態における本願発明の自然法則の利用性の充足>
【0023】
本発明は、計算機とソフトウェアとの協働で機能するものである。本発明では、測温対象からの放射光を第一導光体(A)へ導き、多重反射機構は第一導光体(A)中の放射光が第一導光体(A)を介し測温対象物表面との間での多重反射によって実効放射率を高めることによって放射輝度を増して第二導光体(B)へ導き、第二導光体(B)に導かれた放射光に基づいて温度測定部(C)が測温対象の温度を測定する処理を行う。放射輝度から温度を求める温度測定部(C)は後記するように計算機であり、物理法則であるプランクの法則などに基づいて演算処理を行うため、本願発明は自然法則を利用した発明である。
【0024】
<ハードウェア構成>
【0025】
図8に本装置の全体構成の概略及び、本装置を使用した例として、プラズマCVD(化学気相成長法)装置の下部電極温度を測定する場合を示す。図8にはCVDチャンバ(0820)と、そのチャンバ内に配置されている上部電極(0821)、下部電極(0822)、下部電極(0822)上に設置された加工試料(0823)が示されている。下部電極(0822)は中央付近が外部からくりぬかれ、本発明の第一導光体(A)(0801)を収めたスリーブ(0806)が差し込まれている。スリーブ(0806)内には第一導光体(A)(0801)と第二導光体(B)(0802)との間に、図示されていない多重反射機構(D)(含むミラー手段(E))が配されている。シリコンウェハやガラス基板などである加工試料(0823)を準備する。加工試料(0823)をCVDチャンバ(0820)内の下部電極(0822)の所定の位置に設置し、チャンバ内を排気して所定の真空度としたのちCVD用の材料ガスを導入し、上部電極(0821)と下部電極(0822)間に高周波電圧を印加して放電を発生させる。電極間の高周波放電によって生じたプラズマによって加工試料(0823)表面にシリコン膜が堆積されるが、その時の加工試料の温度によって堆積速度と膜質が変わるため、下部電極には冷却装置(水冷用の配管)や逆に加熱するためのヒータなどとともに、温度管理用の温度計として本発明の温度計が設置されている。下部電極(0822)の温度を裏面側から放射される放射光を第一導光体(A)(0801)、多重反射機構(D)(ミラー手段(E)を含む)、第二導光体(B)(0802)によって、温度測定部(C)(0803)へと導く。温度測定部(C)(0803)では導かれた放射光の放射輝度を測定し、数値化した輝度に基づいて、温度測定部(C)(0803)を構成する計算機の処理によって温度を取得する。インターネット回線(0850)を介して、取得した温度を示す情報はサーバ装置(0851)へ送信され保持される。CVDチャンバ(0820)を含むプラズマCVD装置を操作する作業者はインターネット回線に接続されたPC(0852)からサーバ装置(0851)へアクセスし温度情報を取得して閲覧し、CVD装置による成膜作業の進捗状況を確認する。なおインターネット回線ではなく施設内などのLAN回線でもよいし、温度測定部(C)にディスプレイを設置して温度を表示させてもよいし、温度情報を保持する温度情報保持手段を設けてもよい。また本発明の温度計はプラズマCVD装置だけではなく、他の温度測定の目的に供しうるものである。特に放射光を受光する第一導光体(A)と温度測定部(C)との間を離さなければならないような、狭所や、温度測定部(C)を腐食するような腐食環境や、温度測定部(C)へ損傷を与えうる高温や電磁波にさらされる環境での温度測定に適する。
【0026】
図9は本発明の各実施形態の放射光導光型温度計における計算機部分のハードウェア構成の一例を示す図である。PCに準じた構成とした場合を例として、本実施形態における放射光導光型温度計のハードウェア構成について、図9を用いて説明する。図9はハードウェア構成を説明するための図であるため、個々のプログラムやデータの記載は省略している。なお、本システムにサーバを用いる場合には、サーバもPCに準じた構成としてもよく、以降のハードウェア構成の説明と同様であるため、説明を省略する。
【0027】
この図にあるように、計算機は、マザーボード上に構成されるチップセット、CPU、不揮発性メモリ、メインメモリ、各種バス、BIOS(またはUEFI)、USBやLANなどの各種周辺機器や通信回線接続用インターフェイス、リアルタイムクロック等や、グラフィックカードなどの拡張カードからなる。これらはオペレーティングシステムやデバイスドライバ(USBなどの各種インターフェイス、カメラ、マイク、スピーカ又はヘッドホン、ディスプレイなどの各種機器組込み用)、各種プログラムなどと協働して動作する。USB端子(またはPS/2ポート)経由で接続されるキーボードやマウスなどの入力信号も用いて、本発明を構成する各種プログラムや各種データはこれらのハードウェア資源を効率的に利用して各種の処理を実行するように構成されている。LAN端子などを通じてインターネット回線へ接続される。インターネット回線への接続にWiFi(登録商標)を使用して接続したり、携帯電話回線網を介して接続したりしてもよい。
【0028】
以下ハードウェアとしてコンピュータを構成する主な部品について、例として説明する。なおこれらの例に本発明は限定されない。
≪チップセット≫
【0029】
「チップセット」は、計算機のマザーボードに実装され、CPUの外部バスと、マザーボードに搭載された不揮発性メモリや周辺機器を接続する標準バスとの連絡機能、つまりブリッジ機能を集積した大規模集積回路(LSI)のセットである。古くは、CPUと接続しメインメモリやグラフィックス処理用のチップ(GPU)を搭載したグラフィックスカードとの間のように高速性を求められる処理を行うノースブリッジと、ノースブリッジと接続し比較的低速なインターフェイスとの間の処理をするサウスブリッジの2チップ構成であった。近年は、CPUにノースブリッジ機能が統合され、以前のサウスブリッジのみとなったが、引き続きチップセットとも呼ばれる。本明細書ではCPUにノースブリッジの機能が内蔵されたサウスブリッジのみの1チップ構成で説明する。なお前記のようにノースブリッジとサウスブリッジの2チップ構成の場合でも、サウスブリッジの機能をもCPUに統合したチップセットなしの場合でも、本発明の効果は変わらない。
【0030】
(サウスブリッジ)
チップセットが1構成チップ時のサウスブリッジは、PCI Expressインターフェイス(スロット)、SATA(Serial ATA)またはeSATAインターフェイス、USBインターフェイス、LAN(Ethernet)インターフェイス、リアルタイムクロックなどとのI/O機能やサウンド機能を担う。1チップ構成時のチップセットは、ディスプレイや、USB/LAN端子などの外部接続や、HDDやSSDとの接続用のSATAなどや、PCI Expressなどのインターフェイスを制御する処理を行うチップであり、CPUとはポイント・ツー・ポイントのハードウェアインターフェイス(例えばDMI:Direct Media Interface)で接続される。チップによっては、不揮発性メモリ(HDDなど)のRAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks:複数のHDDなどをひとつのドライブのように認識・表示させる技術)をサポートする。
また近年使われることが少なくなった、高速な動作が必要でない、あるいは不可能であるようなPS/2ポート、フロッピーディスクドライブ、RS-232Cなどのシリアルポート、プリンタ向けのIEEE1284などのパラレルポート、ISAバスなどをサポートする場合には、サウスブリッジにLow Pin Countバスで接続するスーパーI/Oチップと呼ばれる別のLSIが使われる。
【0031】
≪バス≫
バスにはパラレルバスとシリアルバスとがある。パラレルバスは、ビット数分の信号線を用意して、クロックに同期させて伝送する。クロック信号の専用線をデータ線と平行して設け、受信側でのデータ復調の同期を行う。シリアルバスは、1ビットずつデータを転送する。
マザーボード上の周辺機器や各種制御部と、CPU(MPU)と、を繋ぐためにバスが用いられる。CPU内部でCPUコアとキャッシュメモリなどを接続する内部バスに対し、CPUとCPU外のメモリ等を接続するためのバスは外部バスと呼ばれる。CPUに内蔵されたメモリコントローラとメインメモリとの間をつなぐ外部バスは、例えばDDR4-SDRAM(Double-Data-Rate4 Synchronous Dynamic Random Access Memory)を使用するDDR4規格対応の場合は64bit幅のパラレルバスである。DDR4規格の一例としてDDR4-3200メモリ規格対応であれば、メモリ最大動作周波数3200MHz×バス幅64(bit)÷8(bit→Byte変換)=25.6(GB/s)の帯域幅となる。CPUとサウスブリッジ間の接続には上記のようにDMI(Direct Media Interface)などのポイント・ツー・ポイント接続が使われる。
PCI ExpressやSATA等の外部接続用の拡張バスはチップセットによって連結される。パラレルバスとしては、GPIB、IDE/(パラレル)ATA、SCSI、PCIなどがある。
シリアルバスは、1ビットずつデータを転送する。高速化に限界があるため、PCIの改良版PCI Expressでは、ポイント・ツー・ポイント配線とシリアル転送方式を採用している。USBや、SATAもデータ転送はシリアルである。
【0032】
≪CPU≫
【0033】
CPUはメインメモリ上にあるプログラムと呼ばれる命令列を順に読み込んで解釈・実行することで信号からなる情報を同じくメインメモリ上に出力する。CPUは計算機内での演算を行なう中心として機能する。なお、CPUは演算の中心となるCPUコア部分と、その周辺部分とから構成され、CPU内部にレジスタ、キャッシュメモリ(1次、2次、3次)や、キャッシュメモリとCPUコアとを接続する内部バス、メモリコントローラ、タイマー、サウスブリッジとの接続バスとのインターフェイスなどが含まれる。CPUにグラフィック機能(GPU)を統合している場合は、グラフィックスインターフェイスやCPUコアと接続する内部バスなども含まれる。GPUを内蔵したCPUで外付けグラフィックスボードを使用する場合は、CPUに内蔵されたグラフィックインターフェイス(PCI Expressなど)に接続される。
なお、CPUコアは一つのCPU(チップ)に複数備えられていてもよい。実施形態での説明は2コアタイプのものであるが、これに限定されない。またCPUチップを複数備える構成であってもよい。CPU内にプログラムを内蔵することもできる。
【0034】
≪不揮発性メモリ≫
【0035】
(HDD)
【0036】
ハードディスクドライブの基本構造は、磁気ディスク、磁気ヘッド、および磁気ヘッドを搭載するアームから構成される。外部インターフェイスは、SATA(過去ではATA)やSAS(Serial Attached SCSI、過去ではSCSI)などを採用することができる。HDDのインターフェイスは大きくは前記のATA系とSCSI系に二分される。ATA系は物理的に接続された相手に一方的にデータを送る方式であり、マザーボード上のBIOS(またはUEFI)に依存するために、CPUの処理時間を常に要求する。SCSI系は接続された相手の状態を確認しながら正確にデータを送る方式であり、HDD内に制御用システムを備えるため、CPUの負荷を抑えられる。ATA系は廉価で大容量であるが、SCSI系はサーバ向けのシステムから発展し、高速性や拡張性の高さで優れ、SCSIコマンドをマルチスレッドで処理できるため、高負荷環境下でも高い信頼度をもつ。
HDDは容量単価に優れるが、上記のように可動部を含むためアクセスに時間を要することや機械的故障の懸念があることから、高い信頼性を要求されるサーバ装置向けなどでRAIDを使い、複数台のHDDに同時に分散して読み書きしたり、複数のHDDに同じファイルを書き込んだりといった構成をとることができる。
【0037】
(フラッシュメモリ)
現在、NAND型フラッシュメモリとNOR型フラッシュメモリの2種が一般に使われている。読み出し書き出し速度は一長一短あるが、NAND型の方が高集積化には有利であり、データストレージ用途に使われる。ハードディスクドライブと比較し、可動部がないため小型で、稼動時の振動や音が発生しない。但し容量単価はハードディスクドライブを置き換えるようなところまで下がってはいない。ハードディスクドライブよりも高価だが、装置が小型化でき、衝撃などにも強くなるという利点がある。スマートフォンや携帯情報端末では、搭載されるデータストレージ目的の記憶容量は通常64GB~256GB程度であるため、小型軽量化目的もあってフラッシュメモリが使われる。PCなどではOSやアプリケーションソフトを記憶するアクセス頻度の高いドライブにはフラッシュメモリからなるソリッドステートドライブ(SSD)が使用されるようになりつつある。
【0038】
≪メインメモリ≫
【0039】
CPUが直接アクセスしてメインメモリ上の各種プログラムを実行する。メインメモリは揮発性のメモリでDRAMが用いられる。メインメモリ上のプログラムはプログラムの起動命令を受けて不揮発性メモリからメインメモリ上に展開される。その後もプログラム内で各種実行命令や、実行手順に従ってCPUがプログラムを実行する。
【0040】
≪オペレーティングシステム(OS)≫
【0041】
オペレーティングシステムは計算機上の資源をアプリケーションに利用させるための管理をしたり、各種デバイスドライバを管理したり、ハードウェアである計算機自身を管理するために用いられる。小型の計算機ではオペレーティングシステムとしてファームウェアを用いることもある。
【0042】
≪UEFI≫
【0043】
以前使用されていたBIOSを発展させた後継として同様の役割をするUEFI(Unified Extensible Firmware Interface)が近年使われている。UEFIもBIOSと同様フラッシュROMに格納された状態でマザーボード上に搭載される。UEFIを収めたフラッシュROMチップは、計算機のハードウェアを立ち上げてオペレーティングシステムを稼働させるための手順をCPUに実行させるもので、最も典型的には計算機の起動命令を受けるとCPUが最初に読取りに行くハードウェアである。ここには、ディスク(不揮発性メモリ)に格納されているオペレーティングシステムのアドレスが記載されており、CPUに展開されたUEFIによってオペレーティングシステムが順次メインメモリに展開されて稼働状態となる。なお、UEFIは、バスに接続されている各種デバイスの有無をチェックするチェック機能をも有している。チェックの結果はメインメモリ上に保存され、適宜オペレーティングシステムによって利用可能な状態となる。なお、外部装置などをチェックするようにUEFIを構成してもよい。
【0044】
図に示すように、本発明は基本的に汎用計算機プログラム、各種デバイスで構成することが可能である。計算機の動作は基本的に不揮発性メモリに記録されているプログラムをメインメモリにロードして、メインメモリとCPUと各種デバイスとで処理を実行していく形態をとる。デバイスとの通信はバス線と繋がったインターフェイスを介して行われる。インターフェイスには、ディスプレイインターフェイス、USB、LAN端子、PCI Expressインターフェイス、通信バッファ等が考えられる。
【0045】
以下に記載する放射光導光型温度計を構成する各機能ブロックは、いずれもハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェア及びソフトウェアのいずれによっても実現され得る。具体的には、コンピュータを利用するものであれば、CPUやメインメモリ、GPU、画像メモリ、グラフィックボード、バス、あるいは二次記憶装置(ハードディスクやフラッシュメモリなどの不揮発性メモリ、CDやDVDなどの記憶媒体とそれらの媒体の読取ドライブなど)、情報入力に利用される操作ボタン等の入力デバイス、マウス、タッチパネル、専らタッチパネルをタッチする目的で利用する電子ペン、ジョイスティック又はジョイスティック類似のポインタ位置入力装置その他の外部周辺装置などのハードウェア構成部、またその外部周辺装置用のインターフェイス、LAN端子などの通信用インターフェイス、GPS受信インターフェイス、GPS用演算装置、ジャイロセンサ、加速度センサ、回転検知センサ、これらセンサの信号の処理装置、カメラ、画像ファイル処理回路、スピーカ、マイク、音声ファイル処理回路、通信用インターフェイス、バーコードリーダー、電子カードリーダー、POS端末、顔認証装置、暗号化装置、指紋認証装置、掌紋認証装置、網膜認証装置などの生体認証装置や、それらハードウェアを制御するためのドライバプログラムやその他アプリケーションプログラムなどが挙げられる。特にスマートフォン、タブレット端末、携帯電話、スマートウォッチ、パーソナルコンピュータ、データセンターのサーバ装置、有線・無線ネットワーク及びインターフェイスなどを利用する。
【0046】
メインメモリ上に展開したプログラムに従ったCPUの演算処理によって、入力デバイスやその他インターフェイスなどから入力されメモリやハードウェア上に保持されているデータなどが加工、蓄積されたり、前記各ハードウェアやソフトウェアを制御するための命令が生成されたりする。ここで、上記プログラムは、モジュール化された複数のプログラムとして実現されてもよいし、二以上のプログラムを組み合わせて一のプログラムとして実現されても良い。
【0047】
また、本発明は、その一部をソフトウェアとして構成することも可能である。さらに、そのようなソフトウェアが記録された記憶媒体も当然に本発明の技術的な範囲に含まれる(本実施形態に限らず、本明細書の全体を通じて同様である。)。
【0048】
<本願発明において使う用語について>
【0049】
「識別情報」とは、何らかを識別するために用いられる記号、文字、符号などである。ただし、識別情報そのものが識別される情報そのものである場合があってもよい。例えば、例えば、文字列記録Aを識別する情報である識別情報が、文字列記録A自身である場合があってよい。従って識別情報は単なる記号、文字、符号である場合とその記号、文字、符号などで識別される名称や座標などである場合が同時に成立してもよい。
【0050】
「関連付け」とは、二以上の情報が直接的に関連付けられている場合の他、二以上の情報が他の一以上の情報を介して間接的に関連付けられている場合も含む意味で本願明細書においては用いられる。間接的な関連付けは、必ずしも一の装置(筐体が一の筐体である装置)内での関連付けに限定されず、複数の装置にわたって関連付けられている場合も含まれる。
【0051】
「基づいて」とは、対象そのものに拠る場合と、対象に何らかの処理をした後のものに拠る場合の両方を含む。例えば、「取得した放射輝度に基づいた温度」とは、測定により「取得した放射輝度」を所定の数式に入れて求められる「温度」である。測定により「取得した放射輝度」そのものを所定の数式に入れてもよいし、測定により「取得した放射輝度」をいくつか平均した平均値求めるなどの処理を経たうえで、所定の式に入れてもよい。
【0052】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0053】
<実施形態1 概要>主に請求項1
実施形態1の本発明の放射光導光型温度計の多重反射機構(D)は、第一導光体(A)中の放射光が第一導光体(A)を介し測温対象物表面との間での多重反射によって実効放射率が高められて第二導光体(B)に導かれるように構成される。
【0054】
<実施形態1 機能的構成>
図1aに実施形態1の放射光導光型温度計の概略断面構造図を示す。実施形態1の放射光導光型温度計(0100)は、第一導光体(A)(0101)と、第二導光体(B)(0102)と、温度測定部(C)(0103)と、多重反射機構(D)(0104)と、を有する。図1a中の矢印を伴った実線は、測温対象物から放射された放射光の軌跡の一例である。
【0055】
なお、上記概略構造は本発明を実施するための一例であって、本発明が克服すべき課題及びその効果と矛盾しない範囲において適宜その構造を省略したり、新たな構造を付加したりしてよい。以下の実施形態1以降の説明でも同様である。
【0056】
<実施形態1 構成の説明>
<実施形態1 第一導光体(A)(0101)>
「第一導光体(A)」(0101)は、測温対象物からの放射光を導くように構成される。
【0057】
「第一導光体(A)(0101)」は、石英ガラスなど赤外線から近赤外線及び可視光といった測温対象物から放射される放射光に対して透過率が90%以上、好ましくは95%以上の材料から構成される。測温対象物の温度領域によって適宜ゲルマニウムやシリコンなどの素材をも選択することもできる。第一導光体(A)は柱状、より好ましくは円柱状の形状で構成される。前記円柱の側面に円柱内部から向かう放射光のうち、円柱を構成する物質と空気との屈折率から定まる全反射条件の入射角を満たさない光が、円柱外へ漏れ出てしまう。漏れ出た光が再度第一導光体(A)の円柱内へ入射するように、第一導光体(A)側面付近に高反射率のミラーを配することが望ましい。図1に示すように、第一導光体(A)が収納されるような、内面がミラーとなった円筒型のスリーブ(0106)を備えるとよい。又は後記実施形態のように、第一導光体(A)側面に、第一導光体(A)の中心部の屈折率より低い屈折率である領域を形成し、いわゆるコアクラッド構造としたり、第一導光体(A)側面表面に金属膜を形成しミラーとしたりしてもよい。
【0058】
<実施形態1 第二導光体(B)(0102)>
「第二導光体(B)」(0102)は、第一導光体(A)より端面積が小さく、第一導光体(A)からの放射光を導くように構成される。
【0059】
「第二導光体(B)(0102)」は、第一導光体(A)より端面積が小さく構成される。そして第二導光体(B)は、第一導光体(A)からの放射光を、測温対象物の温度を測定する後記温度測定部(C)へ導く。第二導光体(B)の例は、石英ガラスなどを用いて形成される光ファイバである。光ファイバの種類としては材料として石英ガラスファイバ、多成分ガラスファイバ、プラスティックファイバなどがあり、構造として単芯と多芯がある。本発明の温度計が使われることが多いと考えられる常温よりも高温の環境では耐熱性に優れる石英ガラスファイバが好ましく、入射時のロスを考慮すると単芯ファイバが好ましい。第一導光体(A)と第二導光体(B)間には空隙(空気層)があってもよい。前記空隙は囲われて、塵芥が容易には侵入しない構造となっていることが好ましい。前記空隙を空気層ではなく、真空層としてもよい。または、第一導光体(A)と、第二導光体(B)の少なくとも第一導光体(A)から放射光を受け取る部分とは、一体に形成されていてもよい。
【0060】
図1cに図1aの第一導光体(A)、多重反射機構(D)、第二導光体(B)、スリーブとは別形状の例を示す。なお図1cには温度測定部は図示していない。スリーブはステンレス製であり、その内面に高反射率材によるミラーの形成はしていない(高反射率材によるミラーを形成してもよい)。スリーブ内では点線で図示される第一導光体(A)の遠端側にピンホール板である多重反射機構(D)(点線)が設置され、第二導光体(B)へ放射光が受け渡される。スリーブはちょうど多重反射機構(D)の付近で、装置取付け用の穴等を設けた鍔状の部分を有している。
【0061】
別の構成例としては、第二導光体(B)(0102)が空気層、または空気層とレンズであってもよい(空気層の代わりに真空層でもよい)。図1dに、第二導光体(B)(0102)を空気層とレンズとした構成例を示す。第一導光体(A)から放射光を受け渡される多重反射機構(D)のピンホール部の空気層を第二導光体(B)の端面とみなすことができる。多重反射機構(D)(0105)を挟んで測温対象物に対し遠い側に、順に放射光を集光し受光素子へと導くレンズと、放射光を受光して光電変換して電気信号を得る受光素子と、受光素子からの電気信号を受けて温度へ変換する演算ボードを有する。この図1dの例では、多重反射機構(D)の後ろの受光素子までの空気層とレンズが第二導光体(B)である。ちなみに、受光素子と演算ボードが後記温度測定部(C)である。
【0062】
<実施形態1 温度測定部(C)(0103)>
「温度測定部(C)」(0103)は、第二導光体(B)に導かれた放射光に基づいて測温対象物の温度を測定するように構成される。
【0063】
「温度測定部(C)(0103)」は、第二導光体(B)(例:光ファイバ)によって導かれた放射光を受けて、その放射光の輝度を測定して温度を得る。そのためには、第二導光体(B)によって導かれた放射光の放射輝度を測定する放射輝度測定手段と、放射輝度と温度との較正曲線を保持する較正曲線保持手段と、測定した放射輝度と前記保持された較正曲線とに基づいて温度を取得する温度取得手段とを温度測定部(C)が有するように構成することで達成できる。少なくとも放射輝度測定手段と温度取得手段は一体となっていてもよいし、放射輝度計と計算機(例:PC)との組で構成されていてもよい。放射光の輝度の測定を行い放射輝度の値を取得する部分と、較正曲線を保持する部分と、温度を取得する部分は計算機を用いて処理が行われる。
【0064】
放射輝度は特定波長(例:1300nm)の放射光の分光放射輝度のみを測定してもよいし、650から1500nm位の赤色から近赤外領域の所定の領域の波長ごとの輝度(分光放射輝度)を測定してもよい。所定の領域は上記範囲には限定されず適宜選択できる。または異なる2つの波長での分光放射輝度を測定し、その輝度比と別温度計で測定した温度結果をもとに作成した較正曲線から、温度を求めるように構成してもよい。
【0065】
<実施形態1 温度測定部(C):温度測定方法>
本発明の温度計での温度測定の例を以下に示す。
(1)事前準備:本発明の温度計を用い、測温対象物の温度を複数段階に変えて、都度特定波長(例:1300nm)の放射輝度を測定する。放射輝度測定時に測温対象物の温度を、別に用意した校正済みの温度計(熱電対や他の既知の方式の温度計)を用いて測定する。測定した放射輝度と測定した測温対象物の温度から、放射輝度から温度へ変換するための較正曲線を取得し、本発明の温度計内(温度測定部(C)内の較正曲線保持手段など)に保持しておく。較正曲線を得る別方法として、黒体を近似的に再現した黒体炉を用い、校正済みの標準温度計(例:白金測温抵抗体)による温度測定結果と、本発明の温度計で測定した放射輝度から構成曲線を取得してもよい。
(2)実測定:事前測定した測温対象物と同種の物質について、事前準備の時と同じ特定波長の放射輝度を測定し、保持している較正曲線に基づいて温度を取得する。
(3)測定温度の出力:取得した温度粗示す情報である測定温度情報を、温度測定部(C)から出力し、LCDパネルなどのディスプレイに表示させたり、LAN端子経由でLAN回線を介して、サーバ装置へデータを送信したりするなど、温度計の外部へ測定温度情報を出力することもできる。
【0066】
<実施形態1 多重反射機構(D)(0104)>
「多重反射機構(D)」(0104)は、第一導光体(A)中の放射光が第一導光体(A)を介し測温対象物表面との間での多重反射によって実効放射率を高めて第二導光体(B)に導くように構成される。
【0067】
例としては、第一導光体(A)の少なくとも端面以上の面積を持ち、第二導光体(B)へ放射光を導くために、第二導光体(B)端面に面した部分に小孔(ピンホール)を有するピンホール板である(図1b参照)。ピンホール板の少なくとも第一導光体(A)端面に面した面は、放射光を反射する機能を有する。そのためピンホール板は金等の高反射率材料で形成するか、少なくともその表面に金、銀、アルミニウムなどの高反射率材料の膜を形成することが望ましい。別例としては、図1aに示すスリーブと多重反射機構(D)(ピンホール板)が一体に形成されていてもよい。またスリーブの内面には、金、銀、アルミニウムなどの放射光の波長域に対して反射率の高い材料膜からなるミラーを形成しておくことが好ましく、スリーブ内面と第一導光体側面との間は極力隙間を生じないような大小関係で製造されていることが望ましい。スリーブ内面で第一導光体側面を支持することによって、特に第一導光体保持用の部品が不要となり、スリーブ内面ミラーの反射面積を減らさずに済む。また、スリーブは測温対象物側の第一導光体(A)の先端近傍まで覆わず、第一導光体(A)の側面が出ているように構成することにより、その側面からの放射光の入射が期待できる。さらに高周波電力などが印加されているような場所にはスリーブを有さない第一導光体(A)のみ部分を設置することでその影響を受けずに測温対象物の温度測定ができる。
【0068】
第一導光体(A)の端面のうち、第二導光体(B)の端面より大きい部分から出射した放射光は、そのほとんどが第二導光体(B)へ入射せずに無駄となっていた。前記ピンホール板を設置することにより、第一導光体(A)の端面のうち、ピンホール板の板部に面した部分から出射した放射光は図1aの矢印付き実線で示すように、ピンホール板(多重反射機構(D))表面で反射され再び第一導光体(A)へ入射し、少なくとも一部は測温対象物表面に向けて出射する。第一導光体(A)から出射し測温対象物表面で反射した放射光の少なくとも一部が再び第一導光体(A)へ入射し、第二導光体(B)側の端面の方向へ進行する。といった多重反射が起こり、ピンホール板を設置していない状態よりも第二導光体(B)へ入射する放射光が増える。そのため測温対象物からの放射率が見かけ上高められように看做せる状態となる(すなわち実効放射率が高められた)。放射率よりも実効放射率の方が大きくなることは次のように説明できる。
【0069】
<実施形態1 多重反射機構(D):「実効放射率>放射率」の説明>
多重反射していない状態での測温対象物からの放射輝度Lは、下記の式1で表される。
=ελbλ(T) 式1
ここでελは測温対象物の放射率、Lbλ(T)は黒体分光放射輝度である。
一方、ピンホール板(多重反射機構(D))を設置して多重反射させた場合の放射輝度Lは下記の式2で表される。
=(ελ+ελργ(1-ελ)+ελ ργ(1-ελ+…)Lbλ(T)
=ελbλ(T)/(1-ργ(1-ελ))=εeffbλ(T) 式2
ここでεeffは実効放射率、ρはピンホール板(多重反射機構(D))で反射され測温対象物表面へ戻る率(反射率のような意)、γは測温対象物表面の粗さを表したパラメータ(0~1)。γが1に近いほど鏡面的反射特性を示し、0に近いほど拡散的反射特性を示す。ελ、ρ、γ共に0から1の値をとる。そのため等比級数の公式を使用することができ、式2の前半から後半への式変形を行った。多重反射時の放射輝度Lの式2では、第1項は式1と同じであり、第2項以降が1回反射、2回反射と反射回数が増えていった時の各放射輝度を表している。第2項目以降が加わるため、多重反射による実効放射率εeffは、測温対象物の放射率ελよりも大きくなる。
【0070】
<実施形態1 多重反射機構(D):多重反射機構(D)の変形例>
多重反射機構(D)は、第一導光体(A)の測温対象物に面した端面と、第二導光体(B)に面した端面の少なくとも一部は覆わず、その他の面(側面など)の少なくとも一部を覆うように構成してもよい(例:図6cから図6fなど)。例えば測温対象物から放射された放射光のうち、第一導光体(A)内部から第一導光体(A)側面外部へ出射しようとする放射光を反射して第一導光体(A)内部へ戻すためのものである。具体例としては図6cのように第一導光体(A)の側面と測温対象物に対して遠い側の端面とのごく近傍に高反射率のミラーを設置したり(遠端側端面部ではピンホールを有する)、図6dのように第一導光体(A)の表面上に、側面と前記遠端側端面(遠端側端面ではピンホールを有する)に分離した高反射率のミラー機能を有した膜(例えば金、銀、アルミニウムなどからなる金属膜)を形成したり、図6eのように側面と前記遠端側端面(遠端側端面ではピンホールを有する)とを一体となった前記高反射率のミラー機能を有した膜を形成したり、図6fのように第一導光体(A)の側面と遠端側端面(ピンホール部を除く)の表面層に屈折率が中心部よりも小さいクラッド層を形成したりすることである。これらの高反射率のミラーや、屈折率差を利用して所定の角度以下の入射光を反射させる低屈折率層を備えることなどが有効である。
【0071】
<実施形態1 多重反射機構(D):多重反射機構(D)を設ける目的>
<実施形態1 多重反射機構(D):測温下限の拡大>
多重反射機構(D)を用いて、放射率を多重反射により高めて実効放射率とする目的は、前記説明中に上がった較正曲線の改善のためである。図4aに較正曲線の例を示す。横軸が温度測定部(C)へ導かれ測定された放射輝度であり、縦軸が測定した放射輝度に対する別温度計で測定した温度(真の温度と看做せる)である。温度測定部(C)で測定された放射輝度の大小によって、較正曲線から求められる温度が変化する。温度測定部(C)の放射輝度を測定する測定器は放射光を感知する感度の下限が存在する。放射輝度が測れなくなる感度の下限に、較正曲線で対応する温度が、測定できる温度の下限となる。
【0072】
図4a横軸に記載の放射輝度測定下限と記載されている放射輝度の位置を、図1aの例での測定器の感度下限とする。2つの較正曲線の上側は、多重反射機構(D)を有せず多重反射を利用しない構成での較正曲線であり、下側は多重反射機構(D)を有し多重反射を利用する構成での較正曲線である。多重反射を利用しない場合は例えば660℃が温度の測定下限(図4a中のA点)となるが、多重反射を利用する場合は実効放射率が高まるため、同じ温度であっても放射輝度測定値が大きくなる(図4a中のB点)。そのため660℃の時の放射輝度は多重反射利用時の方が高くなる。したがって多重反射を利用すると、測定器の下限となる放射輝度から求められる温度は、多重反射を利用しない場合の660℃よりも低く例えば630℃となって(図4a中のC点)、測定可能温度下限を下げる(測定可能温度範囲を下に拡大する)ことができる。
【0073】
<実施形態1 多重反射機構(D):誤差の低減>
プランクの法則によれば、分光放射輝度は波長λと温度Tの関数として以下の式のようにあらわされる。
L(λ、T)=(2hc)/(λ)/(exp(hc/(kλT))-1) 式3
式3で、hはプランク定数、cは真空中の光速度、kはボルツマン定数である。この式に基づいて特定波長(例:1300nm)で放射輝度を測定し温度測定を行う時を例として、測温対象物の放射率の値が上下に振れた場合に温度の値の誤差がどの様になるかを、図4bに示す。図4bは、測定温度500℃の時に,測温対象物の放射率が±0.1変化した場合の温度差ΔT=測定温度-真温度を表している。元々の測温対象物の放射率が0.9(太実線)、0.6(実線)、0.3(一点鎖線)の3通りのグラフを記載している。横軸は-0.1から+0.1までの放射率の変化を示し、縦軸は温度差ΔTを示す。各放射率のグラフは右肩上がりの傾向を示す。元々の放射率が0.9のグラフの方が、0.3のグラフよりも傾きが寝ており、放射率が多少変化(±0.1の範囲)しても、得られる温度の変化が小さいことがわかる。測温対象物の表面状態によって放射率はばらつくため、もともとの放射率が高い方が測定温度の誤差が小さくなる。本発明の多重反射機構(D)によって高められた実効放射率を用いて温度を測定することにより、測定温度の誤差を小さくすることができるという効果も有する。
【0074】
<実施形態1 放射光導光型温度計(0100)>
「放射光導光型温度計」(0100)は、第一導光体(A)(0101)と、第二導光体(B)(0102)と、温度測定部(C)(0103)と、多重反射機構(D)(0104)とから構成される。
【0075】
<実施形態1 放射光導光型温度計:例を用いた本システムの説明>
<実施形態1 放射光導光型温度計:本システムの構成例>
本発明の放射光導光型温度計のシステムの一例を、図1を用いて説明する。測温対象物(0107)の表面に向けて、石英ガラスからなる第一導光体(A)(0101)の端面を近接させる。測温対象物表面に接触させてもよいが、第一導光体(A)(0101)の表面に測温対象物の一部が付着すると、次の測定時の放射光受光の障害となりうるため、近接にとどめることが望ましい。第一導光体(A)(0101)は、内面を金メッキされた円筒形のスリーブ(0106)に収められたプローブとして形成されている。スリーブ(0106)は第一導光体(A)(0101)の側面途中までを覆う。これはその側面からも集光を期待できるためである。スリーブ(0106)内面と第一導光体(A)(0101)は、第一導光体(A)(0101)のメンテナンス時などに着脱がかろうじて行えるが、ほぼ隙間がないように構成される。スリーブ(0106)の、測温対象物から遠い側には第一導光体(A)(0101)端面の略中央に第二導光体(B)(0102)と略同一径の小孔が設けられたピンホール板(多重反射機構(D)(0104))が設置されている。多重反射機構(D)(0104)の小孔と中心を合わせるように第二導光体(B)(0102)が配置される。第二導光体(B)(0102)の、第一導光体側と逆端面側に温度測定部(C)(0103)が配されている。温度測定部(C)(0103)は放射輝度測定手段と較正曲線保持手段と温度取得手段から構成され、較正曲線保持手段と温度取得手段は計算機を利用して構成されている。例えば温度測定部(C)(0103)は、高温となる測温対象物からの輻射熱によって加熱されないように、十分に離して遮蔽物の陰に設置する。
【0076】
<実施形態1 放射光導光型温度計:本システムの動作>
(1)事前準備:測温しようとする対象物と同じ物質かつ、同様の表面の試料(すなわち同様の放射率の試料)を用いて較正曲線を取得する。そのために、本発明の温度計を用い複数の温度を変えた試料の特定波長(例:1300nm)の放射輝度を測定する。次に放射輝度測定時に試料の温度を別に用意した校正済みの温度計(熱電対や他の既知の方式の温度計)を用いて測定する。測定した放射輝度と試料の測定温度とから、放射輝度-温度較正曲線を取得し、本発明の温度計内に保持しておく。較正曲線を得る別方法として、黒体を近似的に再現した黒体炉を用い、校正済みの標準温度計(例:白金測温抵抗体)による温度測定結果と、本発明の温度計で測定した放射輝度から構成曲線を取得してもよい。
【0077】
(2)温度測定:測温対象物の表面に第一導光体(A)(0101)端面を近接させる。測温対象物からの放射光が第一導光体(A)(0101)へ入射し、第一導光体(A)(0101)の側面またはその外のスリーブ(0106)内面の反射層で反射され、遠端側端面へ進行する。遠端側端面で多重反射機構(D)(0104)(ピンホール板)の小孔に達せなかった放射光は多重反射機構(D)(0104)で反射され、再度測温対象物表面まで戻る。測温対象物表面で反射された放射光が再び第一導光体(A)(0101)へ入射し、遠端側へ進行し多重反射機構(D)(0104)の小孔を潜り抜け、第二導光体(B)(0102)へ入射する。光ファイバなどで構成される第二導光体(B)(0102)によって導かれた放射光は、温度測定部(C)(0103)に達し、放射光に基づいて温度が測定される。温度測定部(C)(0103)が放射輝度測定手段と較正曲線保持手段と温度取得手段から構成される場合は、温度測定部(C)(0103)に達した放射光は放射輝度測定手段によって放射輝度が測定される。較正曲線保持手段に保持された較正曲線と、測定された放射輝度に基づいて、温度が取得される。取得された温度は、サーバ等へLAN回線などを経由して送信され、データとして時系列に保持されたり、測温対象物の識別情報と関連付けて保持され測温対象物の製品履歴情報の一つとして利用に供されたりすることができる。
【0078】
測温対象物へ向ける第一導光体(A)を石英ガラスで形成した場合、石英ガラスの軟化点は約1700℃であるが、最高使用温度は約1000℃(常用温度は約900℃)であるため、本発明の温度計は、高温域側は1000℃くらいまで、低温域側は放射輝度測定器の感度下限で温度域(例えば150℃)までとなる。測定できる放射輝度は下がる懸念があるが測温対象物と距離をとって、第一導光体(A)の温度を1000℃以下に保てるようであれば、3000℃などの領域まで使用することもできる。または第一導光体(A)の水または他の物質を冷却媒体として使用した冷却手段によって冷却すれば測温対象物へ近接させることができる。
【0079】
<実施形態1 処理の流れ>
図2は、実施形態1の計算機である放射光導光型温度計の動作方法のフローチャートである。この図で示すように実施形態1の放射光導光型温度計では、放射光導光型温度計設置ステップ(S0201)と、較正曲線取得ステップ(S0202)と、温度測定ステップ(c)(S0203)と、を有する。
【0080】
ここで計算機である放射光導光型温度計の動作方法は、
放射光導光型温度計設置ステップ(S0201)は、測温対象物の温度を測定するために放射光導光型温度計を設置し、
較正曲線取得ステップ(S0202)は、実温度測定前にあらかじめ測温対象物と同様の放射率の試料を用いて測定した放射輝度と別の温度計を用いて測定した温度から取得した較正曲線を保持する処理を行い、
温度測定ステップ(c)(S0203)は、第一導光体(A)と第二導光体(B)にて導いた測温対象物からの放射光に基づいて、測温対象物の温度を測定する処理を行う。
このような一連の処理を計算機である放射光導光型温度計に実行させる動作方法である。
【0081】
<実施形態1 ハードウェアの説明>
【0082】
<実施形態1 ハードウェア構成>
本実施形態に1おける放射光導光型温度計の計算機部分のハードウェア構成について、図3を用いて説明する。
【0083】
図3は、本実施形態1における放射光導光型温度計の計算機部分のハードウェア構成を示す図である。この図にあるように、本実施形態における放射光導光型温度計の計算機部分は、各種演算処理を行う「CPU(中央演算装置)」と、「チップセット」と、「メインメモリ」と、各種プログラムやデータ(情報)を保持する「不揮発性メモリ」や、「I/Oコントローラ」、「USB、SATA、LAN端子、etc」、「BIOS(UEFI)」、「PCI Expressスロット」、「リアルタイムクロック」と拡張基板として「グラフィックカード」を備えている。そして、それらが「システムバス」などのデータ通信経路によって相互に接続され、情報の送受信や処理を行う。
【0084】
不揮発性メモリに蓄積されている各種プログラム、データ(情報)は、本システムの起動によって、メインメモリに展開され、実行命令を受け付けることでCPUによって順次プログラムがデータを利用した演算をするように構成されている。
【0085】
本システムの起動により、「メインメモリ」には、「不揮発性メモリ」に蓄積されている各種プログラム、データ(情報)が読み出されて展開され格納されると同時に、そのプログラムの作業領域でもあるワーク領域を提供する。実行命令を受け付けることで「CPU」によって順次プログラムがデータを利用した演算をおこなう。なお、この「メインメモリ」や「不揮発性メモリ」にはそれぞれ複数のアドレスが割り当てられており、「CPU」で実行されるプログラムは、そのアドレスを特定しアクセスすることで相互にデータのやりとりを行い、処理を行うことが可能になっている。
本実施形態において「メインメモリ」に格納されているプログラムは、較正曲線保持プログラムと、温度測定プログラム(c)である。また、「メインメモリ」と「不揮発性メモリ」には、較正曲線と、温度などが格納されている。
【0086】
「CPU」は、「メインメモリ」に格納されている較正曲線保持プログラムを実行して、実温度測定前にあらかじめ測温対象物と同様の放射率の試料を用いて測定した放射輝度と別の温度計を用いて測定した温度から取得した較正曲線を保持する。そして、「メインメモリ」に格納された温度測定プログラム(c)を実行して、第一導光体(A)と第二導光体(B)にて導いた測温対象物からの放射光に基づいて、測温対象物の温度を測定する。測定した結果をグラフィックカード経由でディスプレイに表示したり、「USB、SATA、LAN端子、etc」からLAN回線やインターネット回線を介してサーバ装置またはPCへ出力したりする。
【0087】
<実施形態1の効果>
本実施形態1の放射光導光型温度計は第一導光体(A)中の放射光を、第一導光体(A)を介し測温対象物表面との間で多重反射させることによって実効放射率を高めて第二導光体(B)に導くことにより、温度測定範囲を広げること(測定温度下限を下げる)ができる。
【0088】
<実施形態2 概要>主に請求項2
実施形態2の本発明の放射光導光型温度計の多重反射機構(D)は、第一導光体(A)中の放射光が第一導光体(A)を介し測温対象物表面との間での多重反射によって実効放射率が高められて第二導光体(B)に導かれるように構成される。
【0089】
<実施形態2 機能的構成>
図5a、bに実施形態2の放射光導光型温度計の第一導光体(A)と多重反射機構(D)の概略断面構造図を示す。実施形態2の放射光導光型温度計は、実施形態1の構成に対し多重反射機構(D)として、ミラー手段(E)(0505)を有する。
【0090】
<実施形態2 構成の説明>
<実施形態2 ミラー手段(E)(0505)>
「ミラー手段(E)」(0505)は、第一導光体(A)から第二導光体(B)への放射光受渡領域に設けられた放射光を反射する多重反射機構(D)である。
【0091】
ミラー手段(E)の放射光を反射する反射層は、反射対象の光線を80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上反射(ミラーに入射する光の量または強さに対し、出射する光の量または強さの割合)するように構成される。
【0092】
図5aに示すように、第一導光体(A)(0501)の測温対象物に向けられた端面とは逆の遠端側端面に面して多重反射機構(D)が設置されている。多重反射機構(D)は第一導光体(A)中の放射光が第一導光体(A)を介し測温対象物表面との間での多重反射によって実効放射率を高めるように構成される。かつ実効放射率を高められた放射光を、第二導光体(B)に導けるように、多重反射機構(D)には第二導光体(B)へ放射光を通すような窓(例:小孔)を設けている。物理的な穴以外に、例えばミラー手段(E)が円形の石英板表面に金属膜からなる反射層を設けた構成である時、第二導光体(B)へ放射光を通すための領域のみ反射膜を部分的に除去しておく構成でもよい。
【0093】
ミラー手段(E)は、図5bに示すように反射膜として、放射光に対する反射率の高い金またはアルミニウムなどの膜を第一導光体(A)の測温対象物から遠い端面表面に備えるように構成してもよい。前記金等からなる反射膜表面に保護のために誘電体多層膜など、その上に設けることもできる。ただし、金属膜は第一導光体に直接接するように形成することが望ましく、金属膜と第一導光体の密着性改善を目的に第一導光体の表面に下地膜を形成後に金属膜を形成することは反射率を下げる可能性があり好ましくはない。前記反射膜は、第二導光体(B)端面に面する付近には、測温対象物からの放射光を透過する窓を設ける。放射光が赤外領域の光線であれば、可視光は通さずに赤外領域の光線のみを通すような物質によって窓部を形成してもよいし、局所的に放射光反射用の金属膜を形成しないことで窓部を形成してもよい。
【0094】
ミラー手段(E)(0505)である多重反射機構(D)(0504)の一例を図5cに示す。円板状の形状の中央付近に、第一導光体(A)から第二導光体(B)へ放射光を通すための小孔(ピンホール)があけられている。図5cにて斜線で示される円板上面は、第一導光体(A)の端面側に向けられる面であり、放射光を反射するために金やアルミニウムなどの高反射率の膜で形成されるミラー手段(E)が設けられている面である。円板上面を第二導光体(B)端面へ向けた場合には多重反射機構(D)の母材によって、第一導光体(A)内を導かれた放射光の少なくとも一部を反射することとなり反射率としてミラー手段(E)よりも劣る場合があり好ましくない。
【0095】
本実施形態2において、多重反射機構(D)をミラー手段(E)とすることにより、単なる板であるよりも、ミラー手段(E)へ入射した放射光を測温対象物表面の方へ効率よく戻すことができ、測温対象物表面とミラー手段(E)である多重反射機構(D)との間の多重反射による実効放射率をより一層向上させることができる。
【0096】
<実施形態3 概要>主に請求項3
実施形態3の本発明の放射光導光型温度計の多重反射機構(D)は、第一導光体(A)の側面に設けられた放射光を反射するミラー手段(E)であるように構成される。
【0097】
<実施形態3 機能的構成>
図6aからfに、実施形態1または2を基礎とする実施形態3の放射光導光型温度計の第一導光体の概略断面構造図を示す。実施形態3の放射光導光型温度計は、実施形態1または2の構成に対し多重反射機構(D)として、第一導光体(A)(0601)の側面に設けられた放射光を反射するミラー手段(E)(0605)を有する。
【0098】
<実施形態3 構成の説明>
<実施形態3 ミラー手段(E)(0605)>
「ミラー手段(E)」(0605)は、第一導光体(A)の側面に設けられた放射光を反射する多重反射機構(D)である。
【0099】
ミラー手段(E)の放射光を反射する反射層は、反射対象の光線を80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上反射(ミラーに入射する光の量または強さに対し、出射する光の量または強さの割合)するように構成される。
【0100】
図6aに示すように、端面を測温対象物へ向けた第一導光体(A)(0601)の側面にミラー手段(E)が多重反射機構(D)として設置されている。多重反射機構(D)としてのミラー手段(E)は第一導光体(A)中の放射光が、その側面に設けられたミラー手段(E)で反射され再び第一導光体(A)内へ戻ることによって、第一導光体(A)を介し測温対象物表面との間での多重反射による実効放射率を高めるように構成される。
【0101】
図6bに示すように、ミラー手段(E)は、反射膜として、放射光に対する反射率の高い金またはアルミニウムなどを第一導光体(A)の測温対象物から遠い端面表面に備えるように構成してもよい。前記金等からなる反射膜表面に保護のために誘電体多層膜など、その上に設けることもできる。前記反射膜は、第二導光体(B)端面に面する付近には、測温対象物からの放射光を透過する窓を設ける。放射光が赤外領域の光線であれば、可視光は通さずに赤外領域の光線のみを通すような物質によって窓部を形成してもよいし、局所的に放射光反射用の金属膜を形成しないことで窓部を形成してもよい。
【0102】
第一導光体(A)を製造する際に、高純度の石英ガラスを硝子として高純度なSiO2をホストガラスとし,中央部(コア)には屈折率を上げるGeO2やP2O3を,側面部(クラッド)にはFなどの屈折率を下げる材料(ドーパント)を添加して,中央部(コア)は屈折率が高く、側面などの外周部(クラッド)は屈折率が低いといった分布を形成する。屈折率が高い領域と低い領域が接しているときに、屈折率が高い領域から前記領域間の境目へ入射した光は、境目の面の法線に対する角度として定義される入射角よりも低屈折率側での屈折角が大きくなるため、入射角がある程度以上(コアとクラッド部の屈折率比で定まる)大きくなるとクラッド層へ進まず全反射されるようになる現象を利用する。
【0103】
より一層実効放射率を高めるには、測温対象物から遠い方の第一導光体(A)の端面側に、ピンホール板または膜形状したミラー手段(E)をも備えるように構成することである(図6cからf)。
【0104】
本実施形態3において、多重反射機構(D)を第一導光体側面に設けたミラー手段(E)とすることにより、側面部でも多重反射を起こすことによってより一層実効放射率を高めることができる。
【0105】
<実施形態4 概要>主に請求項4
実施形態4の本発明の放射光導光型温度計の多重反射機構(D)であるミラー手段(E)は、金属面であるように構成される。
【0106】
<実施形態4 機能的構成>
実施形態1から3のいずれか一を基礎とする実施形態4の放射光導光型温度計の概略構造図を示す。実施形態4の放射光導光型温度計は、実施形態1から3のいずれか一の構成に対し多重反射機構(D)として、金属面からなるミラー手段(E)を有する。
【0107】
<実施形態4 構成の説明>
<実施形態4 ミラー手段(E)>
「ミラー手段(E)」は、金属面からなる。
【0108】
さきの実施形態で説明したように、例えば図5aから図6fに示すミラー手段(E)である多重反射機構(D)が、金属面である。金属面であるとは、多重反射機構(D)がミラー手段(E)である金属面と同材料で形成されていてもよいし、少なくとも第一導光体(A)に向いた面に設けられた、放射光を反射させるためのミラー手段(E)が金属面である構成であってもよい。後者は、何らかの母材(ガラスや金属やセラミックなどの、不透明であってもよい、測定対象温度範囲より広い温度領域に対し耐熱性を有する材料)の、第一導光体に面した面のみに放射光を反射するための金属面を貼り付けて(またはメッキ、蒸着、塗布等の手段によって)形成される。
【0109】
ミラー手段(E)の放射光を反射する金属面は、反射対象の光線を80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上反射(ミラーに入射する光の量または強さに対し、出射する光の量または強さの割合)するように構成される。
【0110】
金属面を構成する金属は、測定する温度範囲に応じて選択できるが、銀、金、銅、アルミニウムなどを使用できる。
【0111】
図6bに示すように、ミラー手段(E)は、反射膜として、放射光に対する反射率の高い金属面を第一導光体(A)の測温対象物から遠い端面表面に向けて備えるように構成してもよい。金属面を表面に持つミラー手段(E)の前記金属面保護のために誘電体多層膜などを、金属面の上に設けることもできる。前記金属膜の、第二導光体(B)端面が位置する付近には、測温対象物からの放射光を透過する窓を設ける。放射光が赤外領域の光線であれば、可視光は通さずに赤外領域の光線のみを通すような物質によって窓部を形成してもよいし、局所的に放射光反射用の金属膜を形成しないことで窓部を形成してもよい。
【0112】
本実施形態4において、ミラー手段(E)を金属面とすることにより、ミラー手段(E)での反射率を高めることができ、さらに多重反射した際に、より一層実効放射率を高めることができる。
【0113】
<実施形態5 概要>主に請求項5
実施形態5の本発明の放射光導光型温度計のミラー手段(E)は、第一導光体(A)の側面に設けられた放射光を反射するように構成される。
【0114】
<実施形態5 機能的構成>
実施形態1から4のいずれか一を基礎とする実施形態5の放射光導光型温度計の第一導光体(A)とミラー手段(E)の概略断面構造図を図6bに示す。実施形態5の放射光導光型温度計の第一導光体(A)は、実施形態1から4のいずれか一の構成に対し、ミラー手段(E)が、第一導光体(A)の中心部分屈折率Aと非中心部屈折率Bとの関係がA>Bとなるように構成される。
【0115】
<実施形態5 構成の説明>
<実施形態5 ミラー手段(E)>
「ミラー手段(E)」は、第一導光体(A)の中心部分屈折率Aと非中心部屈折率Bとの関係がA>Bとなるように構成される。
【0116】
図6bに示すように、ミラー手段(E)は、放射光を透過する第一導光体(A)の中央部の屈折率Aに対し周辺部の屈折率Bの方が低い、すなわちA>Bの関係となるような低屈折率領域として形成される。
【0117】
上記のように低屈折率層を形成するには以下のような例がある。第一導光体(A)を製造する際に、高純度の石英ガラスを硝子として高純度なSiO2をホストガラスとし、中央部(コア)には屈折率を上げるGeO2やP2O3を,側面部(クラッド)にはFなどの屈折率を下げる材料(ドーパント)を添加して,中央部(コア)は屈折率が高く、側面などの外周部(クラッド)は屈折率が低いといった分布を形成する。屈折率が高い領域と低い領域が接しているときに、屈折率が高い領域から前記領域間の境目へ入射した光は、境目の面の法線に対する角度として定義される入射角よりも低屈折率側での屈折角が大きくなるため、入射角がある程度以上(コアとクラッド部の屈折率比で定まる)大きくなるとクラッド層へ進まず全反射されるようになる現象を利用する。
【0118】
より一層実効放射率を高めるには、測温対象物から遠い方の第一導光体(A)の端面側にもクラッド層を設け、第2導光体に相当する部分のみクラッド層を形成しない、または形成後に除去してピンホール状の窓を有したミラー手段(E)となるように構成することである(図6cからf)。
【0119】
本実施形態5において、ミラー手段(E)を第一導光体の母材料を用いて屈折率の違う層を作ることで構成することにより、測温対象物に近接する第一導光体の側面に配するミラー手段(E)の耐久性を向上できる。例えば第一導光体を石英ガラス、ミラー手段(E)に金を用いて形成した場合、石英ガラスに比べ金薄膜は傷つきやすく、ミラー手段(E)が容易に欠損する可能性がある。このようなミラー手段(E)の欠損可能性を低減できる。
【0120】
<実施形態6 概要>主に請求項6
実施形態6の本発明の放射光導光型温度計のミラー手段は、第一導光体(A)の側面に設けられた放射光を反射するミラー手段(E)であるように構成される。
【0121】
<実施形態6 機能的構成>
図7aに実施形態1から5のいずれか一を基礎とする実施形態6の放射光導光型温度計の概略構造図を示す。実施形態7の放射光導光型温度計のミラー手段(E)は、実施形態1の構成に加えさらに、第一導光体(A)(0701)と第二導光体(B)(0702)とは密着しており、第一導光体(A)(0701)の中心部分屈折率Aと、第二導光体(B)(0702)の中心部分屈折率Cとの関係がA≦Cとなるように構成される。
【0122】
<実施形態6 構成の説明>
<実施形態6 ミラー手段(E)(0705)>
「ミラー手段(E)」(0705)は、第一導光体(A)(0701)と第二導光体(B)(0702)とは密着しており、第一導光体(A)(0701)の中心部分屈折率Aと、第二導光体(B)(0702)の中心部分屈折率Cとの関係がA≦Cとなるように構成される。
【0123】
図7aに一例を示すように第一導光体(A)(0701)と第二導光体(B)(0702)とは密着している。第二導光体(B)(0702)が接していない部分の第一導光体(A)(0701)の端面を多重反射機構(D)(0704)であるミラー手段(E)(0705)が覆っている。前記ミラー手段(E)(0705)と第一導光体(A)(0701)、およびミラー手段(E)(0705)と第二導光体(B)(0702)とは密着している。前記ミラー手段(E)(0705)は、第二導光体(B)(0702)の部分をくりぬいたピンホール状となっている。
【0124】
別の例を図7cに示す。図7cは、第一導光体(A)(0701)と第二導光体(B)(0702)とミラー手段(E)(0705)の関係を説明するために、前記3者のみ記載した図である。第一導光体(A)(0701)の端面に接してピンホールを有した板状のミラー手段(E)(0705)が位置し、前記ピンホールよりも径の大きな第二導光体(B)(0702)がミラー手段(E)(0705)に接して配されている。第一導光体(A)(0701)と第二導光体(B)(0702)との間にミラー手段(E)が挟まっている構成であり、先の例とは異なり第一導光遺体(A)(0701)と第二導光体(B)(0702)とが密着せず間に空気層を有する。後者の例でも第一導光体(A)の中心部分屈折率Aと、第二導光体(B)の中心部分屈折率Cとの関係はA≦Cである。
【0125】
ミラー手段(E)(0705)である多重反射機構(D)(0704)の一例を図7bに示す。円板状の形状の中央付近に第一導光体(A)から第二導光体(B)へ放射光を通すための小孔(ピンホール)があけられている。図7bにて斜線で示される円板上面は、第一導光体(A)の端面側に向けられる面であり、放射光を反射するために金属面などで形成されるミラー手段(E)が設けられている面である。円板上面を第二導光体(B)端面へ向けた場合には多重反射機構(D)の母材によって、第一導光体(A)内を導かれた放射光の少なくとも一部を反射することとなり反射率としてミラー手段(E)よりも劣る場合があり好ましくない。
【0126】
第一導光体(A)の中心部分屈折率Aと、第二導光体(B)の中心部分屈折率Cとの関係をA≦Cとすることによって、第一導光体(A)から第二導光体(B)へ向かう放射光が境界部で反射してしまい、第二導光体(B)へ入射できる放射光が減ることを防止できる。
【0127】
<5.効果>
以上の構成を有する放射光導光型温度計によって、測温対象物から放射される光が大気中での乱反射などによる減衰を低減し、第一導光体内を介し測温対象物表面との間での多重反射によって実効放射率が高められて第二導光体に導かれるように構成された多重反射機構を有することで前記問題を解決する放射光導光型温度計を提供する。この放射光導光型温度計は、実効放射率が高められ、実効的な放射輝度を上げることができ、測定可能な温度下限を上げることができる。
【符号の説明】
【0128】
放射光導光型温度計・・・0100
第一導光体(A)・・・0101
第二導光体(B)・・・0102
温度測定部(C)・・・0103
多重反射機構(D)・・・0104
図1a
図1b
図1c
図1d
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図6f
図7a
図7b
図7c
図8
図9