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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121989
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】キャップ及び包装容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 43/08 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
B65D43/08 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029269
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深川 大
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA02
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB07
3E084AB09
3E084BA01
3E084CA01
3E084CC07
3E084DA01
3E084DC03
3E084GA01
3E084GB01
(57)【要約】
【課題】紙インサート素材がインサートされ、外観不良が発生しにくく気密性にも優れたキャップ及び包装容器を提供する。
【解決手段】容器本体に取り付けられた状態において、接続部の外周面が容器本体の口部の内周面に密着し、第1保持部の厚みをA、第2保持部の厚みをA’、第1保持部の外面から第2保持部の内面までの垂直距離をB、容器本体に取り付けられた状態における接続部の内周面から容器本体の口部の内周面までの最短距離をC、接続部の内周面から接続部の外周面までの最短距離をDとしたとき、下記条件(1)~(3)を同時に満足する、キャップ。
0.12≦A/B≦0.80 ・・・(1)
0.12≦A’/B≦0.80 ・・・(2)
0.25≦C/D<1 ・・・(3)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口部に取り付けられるキャップであって、
紙層を含む紙インサート素材と、
熱可塑性樹脂を含有する樹脂材料からなり、前記紙インサート素材の外周縁の全周に沿う所定範囲の部分を挟み込んで保持する樹脂成形体と、を備え、
前記樹脂成形体は、
前記紙インサート素材の一方面における前記所定範囲の部分に接する環状の第1保持部と、
前記第1保持部の外周縁に接続される筒状のスカート部と、
前記第1保持部の内面に前記スカート部の内周面から離間して設けられ、内周面が前記紙インサート素材の外周縁の端面に接する筒状の接続部と、
前記接続部に接続され、前記紙インサート素材の他方面における前記所定範囲の部分に接する円環状の第2保持部と、を有し、
前記容器本体に取り付けられた状態において、前記接続部の外周面が前記容器本体の前記口部の内周面に密着し、
前記第1保持部の厚みをA、前記第2保持部の厚みをA’、前記第1保持部の外面から前記第2保持部の内面までの垂直距離をB、前記容器本体に取り付けられた状態における前記接続部の内周面から前記容器本体の前記口部の内周面までの最短距離をC、前記接続部の内周面から前記接続部の外周面までの最短距離をDとしたとき、下記条件(1)~(3)を同時に満足する、キャップ。
0.12≦A/B≦0.80 ・・・(1)
0.12≦A’/B≦0.80 ・・・(2)
0.25≦C/D<1 ・・・(3)
【請求項2】
下記条件(4)を満足する、請求項1に記載のキャップ。
0.8≦A/A’≦1.2・・・(4)
【請求項3】
前記接続部には、前記第2保持部側から前記第1保持部側に向かう溝よりなる第1除肉部が形成されており、
前記第1除肉部の前記第1保持部に対して垂直方向における深さをE、前記第1除肉部の最小幅をFとしたとき、下記条件(5)~(6)を同時に満足する、請求項1に記載のキャップ。
0<E/B≦0.9 ・・・(5)
0.1<F/D≦0.9 ・・・(6)
【請求項4】
前記第1除肉部の幅が、前記第2保持部側から前記第1保持部側に向かうにつれて狭まる、請求項3に記載のキャップ。
【請求項5】
前記第1保持部の外面のうち、平面視において前記接続部と重なる領域に、前記第1保持部を除肉した第2除肉部が設けられる、請求項1に記載のキャップ。
【請求項6】
前記第1保持部の外面かつ外周縁近傍に、内側に前記容器本体の底部を収容可能なリブを更に備える、請求項1に記載のキャップ。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載のキャップと前記容器本体とを備えた、包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙インサート素材をインサートして形成されるキャップ及びこれを用いた包装容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では環境負荷の軽減や資源保護の観点から、包装容器等に使用する樹脂量の低減が要望されている。例えば、特許文献1には、樹脂製のキャップを備えた包装容器が記載されており、このキャップのような樹脂成形体の一部を、紙を主体とした紙インサート素材に置き換えて構成する方法が検討されている(特許文献2及び特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-309330号公報
【特許文献2】特開平10-147357号公報
【特許文献3】特開平9-301394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
紙インサート素材を用いたキャップとしては、天面部の外周縁近傍で紙インサート素材を挟み込む構成のものが知られている。しかし、挟み込み部周辺の樹脂の収縮によってヒケや紙インサート素材の変形などが発生し、外観上の問題が生じる場合があった。また、容器本体に装着した際の気密性についても改良の余地があった。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、紙インサート素材がインサートされ、外観不良が発生しにくく、容器本体に装着した際の気密性にも優れたキャップ及び包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の一局面は、容器本体の口部に取り付けられるキャップであって、紙層を含む紙インサート素材と、熱可塑性樹脂を含有する樹脂材料からなり、紙インサート素材の外周縁の全周に沿う所定範囲の部分を挟み込んで保持する樹脂成形体と、を備え、樹脂成形体は、紙インサート素材の一方面における所定範囲の部分に接する環状の第1保持部と、第1保持部の外周縁に接続される筒状のスカート部と、第1保持部の内面にスカート部の内周面から離間して設けられ、内周面が紙インサート素材の外周縁の端面に接する筒状の接続部と、接続部に接続され、紙インサート素材の他方面における所定範囲の部分に接する円環状の第2保持部と、を有し、容器本体に取り付けられた状態において、接続部の外周面が容器本体の口部の内周面に密着し、第1保持部の厚みをA、第2保持部の厚みをA’、第1保持部の外面から第2保持部の内面までの垂直距離をB、容器本体に取り付けられた状態における接続部の内周面から容器本体の口部の内周面までの最短距離をC、接続部の内周面から接続部の外周面までの最短距離をDとしたとき、下記条件(1)~(3)を同時に満足する、キャップ。である。
0.12≦A/B≦0.80 ・・・(1)
0.12≦A’/B≦0.80 ・・・(2)
0.25≦C/D<1 ・・・(3)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、紙インサート素材がインサートされ、外観不良が発生しにくく気密性にも優れたキャップ及び包装容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る包装容器の概略構成を示す図
図2】紙インサート素材の断面図
図3】包装容器の部分断面図
図4】包装容器の部分断面図
図5】変形例に係る包装容器の部分断面図
図6】従来技術に係るキャップの部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、実施形態に係る包装容器の概略構成を示す図であり、より具体的には、図1(a)は実施形態に係る包装容器の概略平面図であり、図1(b)は図1(a)のI-I’断面図である。図2は、紙インサート素材の断面図であり、図3は、包装容器の部分断面図である。包装容器100は、キャップ1と容器本体2とを備え、化粧品などの内容物を収容する。
【0010】
(キャップ)
キャップ1は、樹脂成形体20と、樹脂成形体20にインサートされた紙インサート素材10とを備え、容器本体2の口部5に取り付けられる。
【0011】
(紙インサート素材)
図2に示すように、紙インサート素材10は、例えば、最外層から順に、熱可塑性樹脂層11、印刷層12、紙層13、印刷層12、バリア層14、及び熱可塑性樹脂層11を備える積層体により構成される。紙インサート素材10の外周縁の全周に沿う所定範囲の部分は、樹脂成形体20によって挟み込まれて保持される。このように、キャップ1は、樹脂材料の一部を紙層13を含む紙インサート素材10で代用する構成のため、樹脂使用量を低減することができる。
【0012】
紙層13は、紙インサート素材10に剛性を付与する構造層である。紙層13には、例えば、板紙を用いることができる。紙層13の厚みは、240μm以上1000μm以下であることが好ましい。厚みが240μm以上の場合は、紙インサート素材10の剛度を十分に確保できるため、樹脂成形体20の成形の際に周壁部を構成する樹脂の収縮によって紙インサート素材10にシワや変形が生じるのを抑制することができる。また、紙層13の厚みが240μmよりも薄い場合は紙厚にバラつきが発生し、バリや紙インサート素材10のシワ変形が生じる恐れがある。一方、紙層13の厚みが1000μmを超えると、紙についている癖・変形により紙インサート素材10を金型内に挿入するためのフィーダーへの吸着不良を起こす場合がある。
【0013】
印刷層12は、紙層13の両面に設けられる。印刷層12は、各種表示を行うために印刷により施される層であり、印刷には一般的なインキを用いることができる。印刷層12上には必要に応じてOPニス層(オーバープリンントニス層)を設けてもよい。なお、印刷層12は省略してもよく、また、熱可塑性樹脂層11と積層順が逆であってもよい。
【0014】
バリア層14は、内層側の印刷層12上(或いはOPニス層)に設けられる。バリア層14は、酸素や水蒸気等を遮断して、内容物の保存性を向上させる機能層であり、例えば、アルミニウム箔、無機蒸着膜、有機系バリア樹脂などで構成することができる。無機蒸着膜としては、アルミ、アルミナ、シリカなどを用いることができる。有機系バリア樹脂としては、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール(PVA)、バリア性ナイロン(MXD-NY)などを用いることができる。なお、バリア層14は省略してもよい。
【0015】
熱可塑性樹脂層11は、紙インサート素材10と樹脂成形体20との溶着性を向上させるために設けられる層であり、紙インサート素材10の最外層及び最内層に設けられる。熱可塑性樹脂層11は、溶着性を考慮すると樹脂成形体20と同じ材料で構成されることが好ましいが、熱溶着が可能であれば樹脂成形体20と異なっていてもよく、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリスチレン(PS)などで構成することができる。熱可塑性樹脂層11の形成方法は、フィルム貼り、押出加工、コーティングなどを用いることができる。なお、熱可塑性樹脂層11は省略してもよい。
【0016】
(樹脂成形体)
樹脂成形体20は、第1保持部23a、第2保持部23b、接続部24、及びスカート部25を備えており、これらは射出成形により一体で成形される。図3において、第1保持部23a、第2保持部23b、接続部24、及びスカート部25の境界の一例を長破線で示す。
【0017】
第1保持部23aは、紙インサート素材10の一方面のうち、紙インサート素材10の外周縁から所定範囲の部分に接する環状の部材である。第1保持部23aの内面(紙インサート素材10と接する面)の、第1保持部23aの外周縁と離間した位置には後述する接続部24が形成される。このとき、第1保持部23aの紙インサート素材10と接する部分は、接続部24が形成される位置よりも内側(第1保持部23aの内周縁側)の領域に限定される。また、第1保持部23aの外周縁には、後述するスカート部25が接続される。
【0018】
第2保持部23bは、紙インサート素材10の他方面のうち、紙インサート素材10の外周縁から所定範囲の部分に接する環状の部材である。第2保持部23bの外周縁は、後述する接続部24を介して第1保持部23aに接続されている。
【0019】
接続部24は、第1保持部23aの内面に、後述するスカート部25の内周面から離間して設けられる筒状の部材であり、第1保持部23a及び第2保持部23bを接続する。また、接続部24の内周面は、紙インサート素材10の外周縁の端面に接する。このように、紙インサート素材10の端面が樹脂成形体20により覆われる構成のため、紙層13の端面が保護され、気密性が向上する。なお、接続部24の高さ(第1保持部23aと第2保持部23bとの最短距離)は、紙インサート素材10の厚みと略等しくすることができるが、溶着性向上の観点ではインサート成型前の紙インサート素材10の厚みよりも0.05mm以上0.50mm以下の範囲で小さいことが好ましい。
【0020】
スカート部25は、第1保持部23aの外周縁に接続される筒状の部材である。スカート部25の内周面には雌ネジ6aが形成されており、容器本体2に形成された雄ネジ6bと螺合させることで容器本体2の口部5にキャップ1を取り付けることができる。
【0021】
樹脂成形体20は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリスチレン(PS)などの熱可塑性樹脂、及びこれらの材料に顔料、無機フィラー、紙粉、有機物繊維などを混合した混合物で構成される。樹脂成形体20として用いられる樹脂は、メルトマスフローレート(MFR)が1以上であることが好ましい。MFRが1未満の場合、樹脂成形体20を射出成形で形成する際に樹脂が流れにくく、特に第1保持部23a及び第2保持部23bにショートショットが発生する恐れがある。また、樹脂成形体20として用いられる樹脂は、融点が300℃以下であることが好ましい。融点が300℃を超えると、紙インサート素材10と樹脂成形体20とを溶着する際に、樹脂が熱くなり過ぎて紙ヤケを引き起こす場合がある。これらの条件を満たせば、樹脂成形体20として用いられる樹脂の剛性や結晶・非結晶は問わない。
【0022】
(容器本体)
容器本体2は、底部3及び底部3の端縁に接続される側壁4を備える。側壁4の底部3と反対側は開口しており、当該開口から所定範囲の部分が、キャップ1を取り付けるための口部5である。また、側壁4の口部5側の外周面には、キャップ1のスカート部25に形成された雌ネジ6aと螺合する雄ネジ6bが形成されている。
【0023】
図1及び図3に示すように、キャップ1が容器本体2に取り付けられた状態において、キャップ1の内側に突出する接続部24が容器本体2の口部5の開口に嵌合し、キャップ1の接続部24の外周面と容器本体2の側壁4の内周面とが密着する。このとき、接続部24の外径を、口部5の開口の内径より大きくしておくことで、キャップ1を容器本体2に取り付けた際に接続部24と側壁4とが競り合って、より密着性を高めることができ、包装容器100の密封性も向上する。
【0024】
図3に示すように、第1保持部23aの厚みをA、第2保持部23bの厚みをA’、第1保持部23aの外面から第2保持部23bの内面までの垂直距離をB、容器本体2に取り付けられた状態における接続部24の内周面から容器本体2の口部5(側壁4の接続部24と接する箇所)の内周面までの最短距離をC、接続部24の内周面から接続部24の外周面までの最短距離をDとしたとき、下記条件(1)~(3)を同時に満足する。距離Dは、キャップ1を容器本体2に取り付けていない状態における距離である。
0.12≦A/B≦0.80 ・・・(1)
0.12≦A’/B≦0.80 ・・・(2)
0.25≦C/D<1 ・・・(3)
【0025】
A/Bが0.12未満の場合、紙インサート素材10に対して第1保持部23aが薄くなりすぎるため、第1保持部23aの破損やショートショットが発生し、外観や気密性が損なわれる恐れがある。一方、A/Bが0.80を超える場合、第1保持部23aが厚くなり過ぎるため、ヒケの発生や、樹脂収縮の影響で紙インサート素材10に変形が生じ、外観が損なわれる恐れがある。
【0026】
A’/Bが0.12未満の場合、紙インサート素材10に対して第2保持部23bが薄くなりすぎるため、第2保持部23bの破損やショートショットが発生し、外観や気密性が損なわれる恐れがある。一方、A’/Bが0.80を超える場合、第2保持部23bが厚くなり過ぎるため、ヒケの発生や、樹脂収縮の影響で紙インサート素材10に変形が生じ、外観が損なわれる恐れがある。
【0027】
C/Dが0.25未満の場合、口部5の内周面に対して接続部24の競り量が大きくなり過ぎて口部5が変形してしまい、外観や気密性が損なわれる恐れがある。また、キャップ1が容器本体2に取り付けられない恐れがある。一方、C/Dが1を超える場合、接続部24と側壁4との競りが効かず、密封性が損なわれる恐れがある。
【0028】
さらに、包装容器100は、下記条件(4)を満足することが好ましい。
0.8≦A/A’≦1.2・・・(4)
【0029】
A/A’が上記条件を満たさない場合、第1保持部23aと第2保持部23bとの厚みの差に起因して樹脂収縮の差も大きくなり、紙インサート素材10が厚みの大きい側に湾曲してしまう恐れがある。
【0030】
包装容器100には、リブ27がさらに形成されてもよい(図4)。リブ27は、第1保持部23aの外面かつ外周縁近傍に設けられ、内側に容器本体2の底部3を収容可能な部材である。リブ27は、連続する環状に形成されていてもよいし、断続的に形成されていてもよい。これにより、包装容器100の積み重ねが容易になる。
【0031】
なお、本実施形態におけるキャップ1は容器本体2と螺合して取り付けられるスクリュー式のキャップを想定して説明したが、容器本体2に嵌合により着脱自在に取り付けられる構成としても良い。また、例えばキャップ1を容器本体2の口部5に取り付けられる取付部と、口部5の開口を開閉可能となるように取付部にヒンジを介して取り付けられたヒンジキャップに適用してもよい。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係るキャップ1は、前述の条件(1)~(3)を同時に満足する。そのため、気密性に優れ、外観不良も発生しにくいキャップをインサート成形によって作製することができる。
【0033】
また、前述の条件(4)を満足するため、第1保持部23aと第2保持部23bの樹脂収縮の差の影響で紙インサート素材10が変形してしまうのを抑制できる。
【0034】
さらに、本実施形態に係るキャップ1は、図3に示すように、第1保持部23aと第2保持部23bとを接続する接続部24が、第1保持部23aの内面の、第1保持部23aの外周縁から離間した箇所に設けられ、スカート部25が第1保持部23aの該周縁に設けられる。そのため、樹脂成形体20の上面をフラットに形成することができ、図6のような樹脂成形体220の上面に段差がある場合と比べて、輸送時や陳列時に包装容器100を積み重ねやすくなる。なお、図6のような第1保持部223aとスカート部225との間で段差ができる構成において、樹脂成形体220の上面をフラットにしようとすると、例えば点線で囲んだ空間xに樹脂を充填することが考えられる。しかし、この場合は使用する樹脂量が増えるため好ましくない。
【0035】
また、本実施形態に係るキャップ1は、キャップ1の接続部24の外周面と容器本体2の側壁4の内周面との密着によって(かつ、条件(3)を満足することによって)、パッキン等の別部材を用いることなく包装容器100の密封性を確保することができる。なお、パッキンを用いる場合には、例えば図6に点線で囲んだ空間yに樹脂を充填して、当該箇所にパッキンをセットすることが考えられるが、本使用する樹脂量が増えるため好ましくない。空間yに樹脂を充填せずにリング状のパッキンをセットすることも考えられるが、第2保持部223bにより生じる段差や雌ネジがあるために、パッキンのセット自体が困難である。パッキンをセットできたとしても、パッキンを支持するためのリブ等の構造物を設けることが困難であり、パッキンを安定して保持することができない可能性がある。
【0036】
また、密封性を確保する別の方法として、図6に示す点線で囲んだ領域zに樹脂を充填して円環状のインナーリングを形成する方法が考えられる。しかし、キャップ1が大口径になるとインナーリングの真円度を担保しにくく、さらに、インナーリングに樹脂が回りにくくなるという問題があるため好ましくない。
【0037】
本実施形態においては、図6に示す構成のものと比較して、樹脂使用量や形成不良のリスクを低減して、密封性が高く、積み重ねもしやすい包装容器100とすることができる。
【0038】
<変形例>
変形例について説明する。図5は、変形例に係る包装容器の部分断面図である。本変形例に係る包装容器おいては、図5(a)に示すように、樹脂成形体20に第1除肉部26aが形成される。
【0039】
第1除肉部26aは、接続部24を第2保持部23b側から第1保持部23a側に向かって溝状に除肉することで形成される。このとき、第1除肉部26aの半径方向における幅は一定でもよいが、図5に示すように第2保持部23b側から第1保持部23a側に向かうにつれて狭まる形状であってもよい。第1徐肉部26aをこのように形成することで、成形時にキャップ1を金型から抜き取りやすくすることができる。
【0040】
また、図5(b)に示すように、第1除肉部26aに加えて除肉部26bを設けてもよい。第2除肉部26bは、第1保持部23aの外面のうち、平面視において接続部24と重なる領域の少なくとも一部を除肉して形成される。第1除肉部26a及び第2除肉部26bを形成することで、樹脂の収縮によって生じる応力を緩和して、樹脂成形体20の変形を抑制することができる。なお、第1除肉部26aを省略して第2除肉部26bのみ形成してもよい。
【0041】
変形例に係る包装容器は、第1除肉部26aの第1保持部23aに対して垂直方向における深さをE、第1除肉部26aの最小幅をFとしたとき、下記条件(5)~(6)を同時に満足することが好ましい。
0<E/B≦0.9 ・・・(5)
0.1≦F/D≦0.9 ・・・(6)
【0042】
E/Bが0.9を超える場合、第1保持部23a側の第1除肉部26a周辺の樹脂の流動性が悪くなり、ショートショットが発生する恐れがある。
【0043】
F/Dが0.1未満の場合、第1除肉部26aの溝幅が狭すぎるため、金型の加工が困難であり、また、鋼材の強度も弱く、量産性が悪くなる。一方、F/Dが0.9を超える場合、接続部24を構成する樹脂が薄くなり、ショートショットや離型不良が発生する恐れがある。
【実施例0044】
(実施例1)
紙インサート素材10を用いて、図5(a)に示す第1除肉部26aを形成したキャップ1を作製した。このとき、樹脂成形体20の構成材料としてPEを使用し、キャップ1の外径(第1保持部23aの外径)を60mm、高さ(スカート部25の長さ)を8mmとした。また、A/B(A’/B)=0.35、C/D=0.5、E/B=0.38、F/D=0.6とした。
【0045】
(実施例2)
A/B(A’/B)=0.44、C/D=0.97、E/B=0.68、F/D=0.41としたことを除き、実施例1と同様にキャップ1を作製した。
【0046】
(実施例3)
A/B(A’/B)=0.40、C/D=0.9、E/B=0.76、F/D=0.18としたことを除き、実施例1と同様にキャップ1を作製した。
【0047】
(実施例4)
A/B(A’/B)=0.51、C/D=0.98、E/B=0.49、F/D=0.35としたことを除き、実施例1と同様にキャップ1を作製した
【0048】
(実施例5)
A/B(A’/B)=0.33、C/D=0.95、E/B=0.67、F/D=0.20としたことを除き、実施例1と同様にキャップ1を作製した
【0049】
(比較例1)
A/B(A’/B)=0.11、C/D=0.93、E/B=0.89、F/D=0.47としたことを除き、実施例1と同様にキャップ1を作製したことを除き、実施例1と同様にキャップ1を作製した。
【0050】
(比較例2)
A/B(A’/B)=0.81、C/D=0.94、E/B=0.69、F/D=0.31としたことを除き、実施例1と同様にキャップ1を作製したことを除き、実施例1と同様にキャップ1を作製した。
【0051】
(比較例3)
A/B(A’/B)=0.23、C/D=0.24、E/B=0.77、F/D=0.19としたことを除き、実施例1と同様にキャップ1を作製したことを除き、実施例1と同様にキャップ1を作製した。
【0052】
(比較例4)
A/B(A’/B)=0.43、C/D=1、E/B=0.89、F/D=0.3としたことを除き、実施例1と同様にキャップ1を作製したことを除き、実施例1と同様にキャップ1を作製した。
【0053】
(比較例5)
A/B(A’/B)=0.38、C/D=0.77、E/B=0.85、F/D=0.05としたことを除き、実施例1と同様にキャップ1を作製したことを除き、実施例1と同様にキャップ1を作製した。
【0054】
(比較例6)
A/B(A’/B)=0.44、C/D=0.93、E/B=0.78、F/D=0.91としたことを除き、実施例1と同様にキャップ1を作製したことを除き、実施例1と同様にキャップ1を作製した。
【0055】
(比較例7)
A/B(A’/B)=0.45、C/D=0.94、E/B=0.91、F/D=0.23としたことを除き、実施例1と同様にキャップ1を作製したことを除き、実施例1と同様にキャップ1を作製した。
【0056】
実施例1~5及び比較例1~7のキャップ1の生産性評価を行った。問題無く生産できたものを「○」、生産に問題が生じた場合を「×」と評価した。
【0057】
作製した実施例1~5及び比較例1~7の外観評価を行った。作製したキャップ1のそれぞれの外観を目視にて確認し、外観不良が無かった場合を「○」、外観不良があった場合を「×」と評価した。
【0058】
外観評価で不良「×」と判定されたキャップ1を除き、容器本体2に取り付けて包装容器100を作製し、密封性評価を行った。このとき、容器本体2には、界面活性剤を0.1%の割合で混合した着色水が、容器本体2の収容部の容積に対して8割程度収容されており、包装容器100を倒立させて24時間放置した後、液漏れの有無を確認した。液漏れが無かった場合を「○」、液漏れがあった場合を「×」と評価した。
【0059】
キャップ1及び包装容器100の評価結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
実施例1~5のキャップ1はいずれも、0.12≦A/B≦0.80、0.12≦A’/B≦0.80、0.25≦C/D<1、0<E/B≦0.9、0.1≦F/D≦0.9の条件を全て満たすため、いずれの評価においても良好な結果が得られた。
【0062】
比較例1のキャップ1は、A/B(A’/B)が0.12未満であったため、紙厚に対して第1保持部23aが薄くなりすぎてショートショットが発生し、外観に問題があった。
【0063】
比較例2のキャップ1は、A/B(A’/B)が0.80を超えたため、第1保持部23aの厚くなり過ぎてヒケや紙インサート素材10の変形が生じ、外観に問題があった。
【0064】
比較例3のキャップ1は、C/Dが0.25未満であったため、接続部24と側壁4との競りが強過ぎて口部5が変形してしまい、外観に問題があった。
【0065】
比較例4のキャップ1は、C/Dが1を超えたため、接続部24と側壁4との競りが効かずに液漏れが発生し、密封性に問題があった。
【0066】
比較例5のキャップ1は、F/Dが0.1未満であったため、第1除肉部26a部分の金型の加工が困難であり、また、鋼材の強度も弱かった。そのため、量産性及び金型の耐久性が悪く、生産性に問題があった。
【0067】
比較例6のキャップ1は、F/Dが0.9を超えたため、接続部24を構成する樹脂が薄くなって離型不良が発生し、外観に問題があった。
【0068】
比較例7のキャップ1は、E/Bが0.9を超えたため、第1保持部23a側の第1除肉部26a周辺の樹脂の流動性が悪くなってショートショットが発生し、外観に問題があった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係るキャップ及び包装容器は、密封性を要するキャップ及びとして包装容器として利用できる。
【符号の説明】
【0070】
1 :キャップ
2 :容器本体
3 :底部
3a :第1保持部
3b :第2保持部
5 :口部
10 :紙インサート素材
13 :紙層
20 :樹脂成形体
23a :第1保持部
23b :第2保持部
24 :接続部
25 :スカート部
26a :第1除肉部
26b :第2除肉部
27 :リブ
100 :包装容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6