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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121991
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   B27B 5/36 20060101AFI20240902BHJP
   B27B 5/20 20060101ALI20240902BHJP
   B23D 45/04 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B27B5/36
B27B5/20 A
B23D45/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029274
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 健
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 祐一
【テーマコード(参考)】
3C040
【Fターム(参考)】
3C040AA02
3C040CC02
(57)【要約】
【課題】作業性を向上する。
【解決手段】卓上丸鋸10では、支持柱42が、前後方向を軸方向としてベース20に回動可能に連結され、ヘッド部32を支持している。支持柱42には、係合機構部70が相対移動不能に設けられている。ベース20には、セットピン62が移動可能に設けられており、セットピン62の係合機構部70への係合によって、ヘッド部32の位置が決まる。ここで、操作ノブ90がベース20の前端部に設けられている。操作ノブ90が操作されることで、セットピン62が前側へ移動し、セットピン62の係合機構部70への係合状態が解除されて、ヘッド部32のベース20に対する相対回動が許可される。これにより、ヘッド部32の位置を決めするときに、卓上丸鋸10の前側に位置する作業者が、卓上丸鋸10の後側へ回り込む必要がなくなる。したがって、ヘッド部32を傾斜させるときの作業性を向上することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に対して直交する面に沿って配置された載置面を有するベースと、
前記ベースの上側に設けられ、モータを含んで構成された切断部と、
前記切断部に支持され、前記モータによって駆動する切断刃と、
前後方向を軸として前記切断部を前記ベースに回動可能に連結すると共に、前記切断部を前記ベースに対して相対回動させて前記切断部の位置を直角位置、傾斜位置、及び補助位置の何れかの位置に切替える傾斜機構と、
を備え、
前記直角位置では、前記載置面に対する前記切断刃の角度が90度になり、前記傾斜位置では、前記角度が45度となり、前記補助位置では、前記角度が45度より大きく90度より小さい角度になり、
前記傾斜機構は、
係合機構部と、
移動可能に設けられ、前記係合機構部に係合することで前記切断部の位置を前記直角位置又は前記補助位置で位置決めする位置決め部材と、
前記ベースの前部に設けられ、操作されることで前記位置決め部材を移動させて前記位置決め部材の前記係合機構部への係合状態を解除する操作部と、
を含んで構成されている作業機。
【請求項2】
前記傾斜機構は、前記切断部を支持し且つ前後方向を軸として前記ベースに回動可能に連結された支持部材を有し、
前記位置決め部材は、前後方向に移動可能に前記ベースに支持されており、前記操作部によって前後方向の何れか一方側へ移動することで、前記支持部材に設けられた前記係合機構部との係合状態が解除される請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記位置決め部材は、前記操作部によって前方向へ移動することで前記係合機構部との係合状態が解除されるように構成され、
前記係合機構部は、
前記載置面の後側に位置し、前記補助位置において前記位置決め部材と係合する補助位置用係合部と、
前記補助位置用係合部よりも前側に配置され、前記傾斜位置において前記位置決め部材と係合する傾斜位置用係合部と、
を含んで構成されている請求項2に記載の作業機。
【請求項4】
前記係合機構部は、前記支持部材とは別部材である係合部材を有しており、
複数の前記補助位置用係合部が、前記係合部材に形成されている請求項3に記載の作業機。
【請求項5】
前記係合部材は、前記直角位置において前記位置決め部材と係合する直角位置用係合部を有している請求項4に記載の作業機。
【請求項6】
前記係合機構部は、前記直角位置において前記位置決め部材と係合する直角位置用係合部を有しており、前記直角位置用係合部は、前記支持部材に設けられており、前記係合部材よりも前側に配置されている請求項4に記載の作業機。
【請求項7】
前記位置決め部材は、前後方向を軸方向とする第1シャフト部と、前記第1シャフト部の前側に配置され且つ前記第1シャフト部よりも大径の第2シャフト部と、を有しており、
前記補助位置では、前記第1シャフト部が前記補助位置用係合部に係合し、
前記傾斜位置では、前記第2シャフト部が前記傾斜位置用係合部に係合する請求項3に記載の作業機。
【請求項8】
前記第1シャフト部が前記傾斜位置用係合部に係合することで、前記切断部が前記傾斜位置よりも前記載置面側へ傾倒する傾倒位置に配置され、
前記傾倒位置では、前記載置面に対する前記切断刃の角度が45度よりも小さくなる請求項7に記載の作業機。
【請求項9】
前記位置決め部材及び前記操作部は連結機構部によって連結されており、
前記連結機構部は、
前記操作部に連結され、前後方向に移動可能に構成された第1連結部材と、
前記位置決め部材に連結され、前記第1連結部材の後側に隣接配置され、前後方向に移動可能に構成された第2連結部材と、
前記第1連結部材を後側へ付勢する第1付勢部材と、
前記第2連結部材を前側へ付勢する第2付勢部材と、
を含んで構成されており、
前記第1付勢部材の付勢力が前記第2付勢部材の付勢力よりも高い請求項3に記載の作業機。
【請求項10】
前記操作部は、前記ベースに回動可能に連結されると共に、前記第1連結部材を押圧可能に構成された押圧部を有しており、
前記操作部が回動操作されることで、前記押圧部が前記第1連結部材を前側へ押圧して、前記第1連結部材が前側へ移動する請求項9に記載の作業機。
【請求項11】
前記第2シャフト部は、前記第1シャフト部を前後方向に相対移動可能に支持しており、
前記第1シャフト部が、第1シャフト用付勢部材によって後側へ付勢され、
前記第2シャフト部が、第2シャフト用付勢部材によって後側へ付勢されている請求項7に記載の作業機。
【請求項12】
前記第2シャフト部は、前記第1シャフト部の前側に配置され且つ前記第1シャフト部に当接可能に構成された当接部を有しており、
前記第1シャフト部が、連結部材によって前記操作部と連結されており、前記第1シャフト用付勢部材が前記連結部材及び前記第1シャフト部を後側へ付勢している請求項11に記載の作業機。
【請求項13】
前記操作部は、前後方向に相対移動可能に且つ前後方向を軸方向として回動可能に前記ベースに支持されると共に、操作保持部を有しており、
前記操作部が非操作位置から前側へ移動され且つ回動されることで、前記操作保持部が前記ベースに係合して、前記操作部が操作位置に保持される請求項12に記載の作業機。
【請求項14】
前記傾斜機構は、前記支持部材を前記ベースに固定するための固定機構を有しており、
前記固定機構は、
前記ベースの前部に操作可能に設けられた固定操作部と、
前記固定操作部が操作されることで作動して、前記支持部材を前記ベースに固定する固定部材と、
を含んで構成されている請求項2に記載の作業機。
【請求項15】
前記操作部及び前記固定操作部が左右方向に並んでいる請求項14に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の卓上切断機(作業機)では、ホルダが前後方向を軸方向としてベースに回動可能に連結されており、切断工具部がホルダに揺動可能に連結される。これにより、ホルダを傾斜させることで、切断工具部の姿勢を変更して、加工材に対する切断を行うことができる。例えば、切断工具部を30度や33.9度等の傾斜位置に傾斜させる場合には、卓上切断機の後端部に設けられたストッパピンを操作し、切断工具部の傾斜位置への傾斜後に、ベースに設けられた孔部にストッパピンを挿入させる。これにより、卓上切断機が所望の傾斜位置に位置決めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-254401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記卓上切断機では、以下に示す点において改善の余地がある。すなわち、通常、卓上切断機を操作する作業者は、卓上切断機の前側に位置している。これにより、切断工具部を傾斜させるときには、作業者が卓上切断機の後側へ回って作業する必要があるため、作業性が低下する可能性がある。よって、上記卓上切断機では、作業性を向上するという点において改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、作業性を向上することができる作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、上下方向に対して直交する面に沿って配置された載置面を有するベースと、前記ベースの上側に設けられ、モータを含んで構成された切断部と、前記切断部に支持され、前記モータによって駆動する切断刃と、前後方向を軸として前記切断部を前記ベースに回動可能に連結すると共に、前記切断部を前記ベースに対して相対回動させて前記切断部の位置を直角位置、傾斜位置、及び補助位置の何れかの位置に切替える傾斜機構と、を備え、前記直角位置では、前記載置面に対する前記切断刃の角度が90度になり、前記傾斜位置では、前記角度が45度となり、前記補助位置では、前記角度が45度より大きく90度より小さい角度になり、前記傾斜機構は、係合機構部と、移動可能に設けられ、前記係合機構部に係合することで前記切断部の位置を前記直角位置又は前記補助位置で位置決めする位置決め部材と、前記ベースの前部に設けられ、操作されることで前記位置決め部材を移動させて前記位置決め部材の前記係合機構部への係合状態を解除する操作部と、を含んで構成されている作業機である。
【0007】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記傾斜機構は、前記切断部を支持し且つ前後方向を軸として前記ベースに回動可能に連結された支持部材を有し、前記位置決め部材は、前後方向に移動可能に前記ベースに支持されており、前記操作部によって前後方向の何れか一方側へ移動することで、前記支持部材に設けられた前記係合機構部との係合状態が解除される作業機である。
【0008】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記位置決め部材は、前記操作部によって前方向へ移動することで前記係合機構部との係合状態が解除されるように構成され、前記係合機構部は、前記載置面の後側に位置し、前記補助位置において前記位置決め部材と係合する補助位置用係合部と、前記補助位置用係合部よりも前側に配置され、前記傾斜位置において前記位置決め部材と係合する傾斜位置用係合部と、を含んで構成されている作業機である。
【0009】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記係合機構部は、前記支持部材とは別部材である係合部材を有しており、複数の前記補助位置用係合部が、前記係合部材に形成されている作業機である。
【0010】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記係合部材は、前記直角位置において前記位置決め部材と係合する直角位置用係合部を有している作業機である。
【0011】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記係合機構部は、前記直角位置において前記位置決め部材と係合する直角位置用係合部を有しており、前記直角位置用係合部は、前記支持部材に設けられており、前記係合部材よりも前側に配置されている作業機である。
【0012】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記位置決め部材は、前後方向を軸方向とする第1シャフト部と、前記第1シャフト部の前側に配置され且つ前記第1シャフト部よりも大径の第2シャフト部と、を有しており、前記補助位置では、前記第1シャフト部が前記補助位置用係合部に係合し、前記傾斜位置では、前記第2シャフト部が前記傾斜位置用係合部に係合する作業機である。
【0013】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記第1シャフト部が前記傾斜位置用係合部に係合することで、前記切断部が前記傾斜位置よりも前記載置面側へ傾倒する傾倒位置に配置され、前記傾倒位置では、前記載置面に対する前記切断刃の角度が45度よりも小さくなる作業機である。
【0014】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記位置決め部材及び前記操作部は連結機構部によって連結されており、前記連結機構部は、前記操作部に連結され、前後方向に移動可能に構成された第1連結部材と、前記位置決め部材に連結され、前記第1連結部材の後側に隣接配置され、前後方向に移動可能に構成された第2連結部材と、前記第1連結部材を後側へ付勢する第1付勢部材と、前記第2連結部材を前側へ付勢する第2付勢部材と、を含んで構成されており、前記第1付勢部材の付勢力が前記第2付勢部材の付勢力よりも高い作業機である。
【0015】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記操作部は、前記ベースに回動可能に連結されると共に、前記第1連結部材を押圧可能に構成された押圧部を有しており、前記操作部が回動操作されることで、前記押圧部が前記第1連結部材を前側へ押圧して、前記第1連結部材が前側へ移動する作業機である。
【0016】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記第2シャフト部は、前記第1シャフト部を前後方向に相対移動可能に支持しており、前記第1シャフト部が、第1シャフト用付勢部材によって後側へ付勢され、前記第2シャフト部が、第2シャフト用付勢部材によって後側へ付勢されている作業機である。
【0017】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記第2シャフト部は、前記第1シャフト部の後側に配置され且つ前記第1シャフト部に当接可能に構成された当接部を有しており、前記第1シャフト部が、連結部材によって前記操作部と連結されており、前記第1シャフト用付勢部材が前記連結部材及び前記第1シャフト部を後側へ付勢している作業機である。
【0018】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記操作部は、前後方向に相対移動可能に且つ前後方向を軸方向として回動可能に前記ベースに支持されると共に、操作保持部を有しており、前記操作部が非操作位置から前側へ移動され且つ回動されることで、前記操作保持部が前記ベースに係合して、前記操作部が操作位置に保持される作業機である。
【0019】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記傾斜機構は、前記支持部材を前記ベースに固定するための固定機構を有しており、前記固定機構は、前記ベースの前部に操作可能に設けられた固定操作部と、前記固定操作部が操作されることで作動して、前記支持部材を前記ベースに固定する固定部材と、を含んで構成されている作業機である。
【0020】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記操作部及び前記固定操作部が左右方向に並んでいる作業機である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の1又はそれ以上の実施形態によれば、作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態に係る卓上丸鋸を示す左側から見た側面図である。
図2図1に示される卓上丸鋸の前側から見た正面図である。
図3図1に示される支持柱の下端部を示す後側から見た後面図である。
図4図3に示されるクランプ機構及び位置決め機構の後端部を示す左斜め前方から見た斜視図である。
図5図4に示されるクランプ機構及び位置決め機構の前端部を示す左斜め前方から見た斜視図である。
図6】(A)は、図4に示される初期位置に配置されたセットピンの係合機構部に対する前後位置を示す右側から見た側面図であり、(B)は、セットピンが第1セット位置に移動した状態を示す側面図であり、(C)は、セットピンが第2セット位置に移動した状態を示す側面図である。
図7】(A)は、図5に示される非操作位置の操作ノブと第1連結部材との連結状態を示す断面図(図5の7A-7A線断面図)であり、(B)は、操作ノブが第1操作位置に回動したときの操作ノブと第1連結部材との連結状態を示す断面図であり、(C)は、操作ノブが第2操作位置に回動したときの操作ノブと第1連結部材との連結状態を示す断面図である。
図8】第2実施形態に係る卓上丸鋸における支持柱の下端部を示す後側から見た後面図である。
図9図8に示される位置決め機構の後端部の右側から見た断面図(図8の9-9線断面図)である。
図10】(A)は、図9に示されるセットピンの後端部を拡大して示す断面図(図9のA部拡大図)であり、(B)は、セットピンが初期位置に配置された状態の断面図であり、(C)は、セットピンが第1セット位置に配置された状態の断面図であり、(D)は、セットピンが第2セット位置に配置された状態の断面図であり、(E)は、セットピンが第3セット位置に配置された状態の断面図である。
図11】(A)は、第2実施形態の卓上丸鋸における操作ノブ及びターンテーブルの前端部を示す右斜め前方から見た斜視図であり、(B)は、(A)の操作ノブ及びターンテーブルの前端部を示す前側から見た正面図である。
図12】(A)は、図11(A)に示される操作ノブ及びターンテーブルの前端部の右側から見た側面図であり、(B)は、操作ノブが第1操作位置に引出された状態を示す側面図であり、(C)は、操作ノブが第2操作位置に引出された状態を示す側面図であり、(D)は、操作ノブが第3操作位置に引出された状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、図1図7を用いて、第1実施形態に係る作業機としての卓上丸鋸10について説明する。なお、図面に適宜示される矢印UP、矢印FR、矢印LHは、それぞれ卓上丸鋸10の上側、前側、左側を示している。以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、卓上丸鋸10の上下方向、前後方向、左右方向を示すものとする。
【0024】
図1及び図2に示されるように、卓上丸鋸10は、加工材に切断加工を施す装置として構成されている。卓上丸鋸10は、ベース20と、丸鋸本体30と、を含んで構成されている。
【0025】
(ベース20について)
ベース20は、卓上丸鋸10の下端部を構成し、加工材を載置する台として構成されている。ベース20は、ベース本体22及びターンテーブル24を有している。ベース本体22は、上下方向を厚み方向とする略平盤状に形成されており、ベース本体22の左右方向中央部には、上側へ開放された凹部22Aが形成されている。
【0026】
ターンテーブル24は、前後方向に延在されている。ターンテーブル24の前後方向中間部が、ベース本体22の凹部22A内に収容され、上下方向を軸方向としてベース本体22に回動可能に支持されている。ターンテーブル24の上面は、載置面24Aとして構成されており、載置面24Aは、上下方向に対して直交する面に沿って配置されると共に、ベース本体22の上面と面一に配置されている。
【0027】
(丸鋸本体30について)
丸鋸本体30は、切断部としてのヘッド部32と、傾斜機構40と、を含んで構成されており、傾斜機構40によってヘッド部32がベース20に連結されている。以下、先に、ヘッド部32について説明し、次いで、傾斜機構40について説明する。
【0028】
(ヘッド部32について)
ヘッド部32は、ベース20の上側に設けられると共に、左右方向を軸方向として傾斜機構40に揺動可能に支持されている。ヘッド部32の上端部には、左側へ突出したモータ収容部32Aが設けられており、モータ収容部32A内には、モータ34が収容されている。ヘッド部32の前端部には、ハンドル部32Bが形成されており、ハンドル部32Bには、トリガ36が操作可能に設けられている。また、ハンドル部32B内には、図示しないスイッチが設けられており、トリガ36が操作されたときには、スイッチがオンされる構成になっている。スイッチ及びモータ34は、図示しないコントローラに電気的に接続されている。これにより、トリガの引き操作時には、コントローラによってモータ34が駆動する。
【0029】
ヘッド部32には、切断刃としての鋸刃38が設けられている。鋸刃38は、左右方向を板厚方向とする略円板状に形成されている。鋸刃38の中央部は、ヘッド部32に設けられた伝達機構(図示省略)に固定されており、伝達機構は、モータ34の駆動力を鋸刃38に伝達して、鋸刃38を自身の軸線回りに回動させる機構部として構成されている。
【0030】
(傾斜機構40について)
傾斜機構40は、支持部材としての支持柱42と、固定機構としてのクランプ機構50(図3図5参照)と、位置決め機構60(図3図5参照)と、を含んで構成されている。
【0031】
(支持柱42について)
支持柱42は、上下方向に延在されており、支持柱42の下端部が、ターンテーブル24の後端部に連結されている。支持柱42は、上側へ向かうに従い右側へ傾斜しており、支持柱42の上端部が、支持柱42の下端部に対して右側にずれた位置に配置されている。支持柱42の上端部には、スライド機構44が設けられており、スライド機構44は、支持柱42の上端部から前側へ延出している。スライド機構44には、ヒンジベース46が前後方向にスライド可能に連結されており、ヘッド部32の後端部が、ヒンジベース46に左右方向を軸方向として揺動可能に連結されている。以上により、支持柱42が、ヘッド部32を支持する部材として構成されている。
【0032】
支持柱42の下端部は、ターンテーブル24の後側に配置され、前後方向を軸方向とする連結軸48(図3及び図4参照)によってターンテーブル24に回動可能に連結されている。これにより、支持柱42をターンテーブル24に対して相対回動させることで、ヘッド部32及び支持柱42の位置が切替わるようになっている。
【0033】
本実施の形態では、ヘッド部32(支持柱42)が、直角位置(図3において実線にて示される支持柱42を参照)、傾斜位置(図3の支持柱42-3の位置)、及び補助位置(図3の支持柱42-1及び支持柱42-2の位置)の何れかの位置に配置されるようになっている。ヘッド部32の直角位置では、載置面24Aに対する鋸刃38の角度が90度になり、ヘッド部32の傾斜位置では、載置面24Aに対する鋸刃38の角度が45度になるように設定されている。また、ヘッド部32の補助位置では、載置面24Aに対する鋸刃38の角度が45度より大きく90度より小さい角度になるように設定されている。本実施の形態では、2箇所の補助位置が設定されており、第1の補助位置(図3の支持柱42-1の位置)では、上記角度が、67.5度になり、第2の補助位置(図3の支持柱42-2の位置)では、上記角度が、56.1度になるように設定されている。また、本実施の形態では、ヘッド部32が傾斜位置よりもベース20側へ傾倒した傾倒位置(図3の支持柱42-4の位置)まで傾斜できるように構成されており、傾倒位置では、上記角度が、42度に設定されている。以下、ヘッド部32(支持柱42)を直角位置に配置した状態で説明する。
【0034】
(クランプ機構50について)
図3図5に示されるように、クランプ機構50は、後述する位置決め機構60のベベルプレート72に形成されたクランプ溝52と、クランプボルト53(広義には、固定部材として把握される要素である)と、固定操作部としてのクランプレバー54と、を含んで構成されている。クランプ機構50は、主として、ターンテーブル24の左部内に配置されている。
【0035】
ベベルプレート72は、前後方向を板厚方向とすると共に、後側から見て上側へ開放された略C字形板状に形成されて、支持柱42の下端部に固定されている。ベベルプレート72は、連結軸48の径方向外側に配置されると共に、連結軸48の周方向(ヘッド部32の回動方向)に沿って延在されている。クランプ溝52は、ベベルプレート72の左部において、ベベルプレート72の長手方向に沿った長孔状に形成されている。
【0036】
クランプボルト53は、前後方向を軸方向として配置され、ワッシャ55を介してクランプ溝52内を挿通している。クランプボルト53の前部は、ターンテーブル24にネジ結合されており、クランプボルト53の後端部の頭部が、ワッシャ55の後側に隣接配置されている。これにより、クランプボルト53が回動することで、ワッシャ55がクランプ溝52の周縁部を締め付けて、支持柱42がターンテーブル24に固定されるようになっている。
【0037】
クランプボルト53の前側には、前後方向に延在された連結シャフト56が設けられている。連結シャフト56は、ターンテーブル24に回動可能に支持されており、連結シャフト56の後端部が、クランプボルト53の前端部に一体回動可能に連結されている。連結シャフト56の前端部は、ターンテーブル24における前端部の左部から前側へ突出している(図1及び図2参照)。
【0038】
連結シャフト56の前端部には、クランプレバー54(図1図2、及び図5参照)の一端部が固定されており、クランプレバー54が、その一端部から連結シャフト56の径方向外側(左側)へ延出している。これにより、クランプレバー54の回動操作によって連結シャフト56及びクランプボルト53を回動させることで、支持柱42をターンテーブル24に固定する固定状態又は固定状態を解除する固定解除状態に切替わるようになっている。
【0039】
(位置決め機構60について)
位置決め機構60は、位置決め部材としてのセットピン62と、係合機構部70と、連結機構部80と、操作部としての操作ノブ90と、を含んで構成されている。位置決め機構60は、ベベルプレート72を除いて、クランプ機構50の右側に位置している。
【0040】
セットピン62は、前後方向を軸方向とする略円柱状に形成されている。セットピン62は、前後方向に移動可能にターンテーブル24の後端部に支持されており、セットピン62の後部が、支持柱42の下端部内で且つベベルプレート72の前側に位置している。セットピン62は、後述する連結機構部80によって操作ノブ90に連結されており、操作ノブ90が操作されることで、前方側へ移動するようになっている。具体的には、操作ノブ90の非操作位置では、セットピン62が、初期位置(図6(A)に示される位置)に配置されており、操作ノブ90への操作によって、セットピン62が、初期位置より前側に位置する第1セット位置(図6(B)に示される位置)、又は第1セット位置より前側へ位置する第2セット位置(図6(C)に示される位置)に移動するように構成されている。
【0041】
セットピン62の後端部(先端部)は、第1シャフト部62Aとして構成され、セットピン62の前後方向中間部は、第2シャフト部62Bとして構成されており、第2シャフト部62Bの直径が第1シャフト部62Aの直径よりも大きく設定されている。すなわち、セットピン62の後端部は、段付きシャフト状に形成されている。第1シャフト部62Aの後部の直径は、後側へ向かうに従い小さくなるように設定されている。つまり、第1シャフト部62Aの後部の外周面が、後側へ向かうに従い径方向内側へ傾斜するテーパ面とされている。
【0042】
係合機構部70は、前述した係合部材としてのベベルプレート72と、一対の傾斜位置用係合部としての傾斜位置決めストッパ74と、を有している。ベベルプレート72の右部には、円形状の直角位置用係合部としての直角位置決め孔72Aが貫通形成されており、直角位置決め孔72Aは、ヘッド部32の直角位置を決めるための孔部として構成されている。また、ベベルプレート72には、円形状の補助位置用係合部としての一対の第1補助位置決め孔72Bと、円形状の補助位置用係合部としての一対の第2補助位置決め孔72Cと、が形成されている。第1補助位置決め孔72Bは、ヘッド部32の第1の補助位置を決めるための孔部として構成されており、直角位置決め孔72Aに対してヘッド部32(支持柱42)の回動方向両側に22.5度離間した位置にそれぞれ配置されている。第2補助位置決め孔72Cは、ヘッド部32の第2の補助位置を決めるための孔部として構成されており、直角位置決め孔72Aに対してヘッド部32(支持柱42)の回動方向両側に33.9度離間した位置にそれぞれ配置されている。直角位置決め孔72A、第1補助位置決め孔72B、及び第2補助位置決め孔72Cの直径は、同じに設定されている。
【0043】
ヘッド部32の直角位置では、初期位置におけるセットピン62の第1シャフト部62Aが直角位置決め孔72A内に前側から挿入されて、第1シャフト部62A及び直角位置決め孔72Aがヘッド部32の回動方向に係合している。これにより、支持柱42の直角位置が決まるようになっている。一方、セットピン62を初期位置から第1セット位置へ移動させることで、第1シャフト部62Aが直角位置決め孔72Aから抜け出て、セットピン62とベベルプレート72との係合状態が解除される設定になっている(図6(B)参照)。これにより、ヘッド部32(支持柱42)のターンテーブル24に対する相対回動が許可される。
【0044】
そして、ヘッド部32を第1又は第2の補助位置に回動させて、セットピン62が第1セット位置から初期位置へ移動することで、第1シャフト部62Aが第1補助位置決め孔72B又は第2補助位置決め孔72C内に挿入されて、第1シャフト部62Aと、第1補助位置決め孔72B又は第2補助位置決め孔72Cと、がヘッド部32の回動方向に係合するようになっている。これにより、支持柱42の第1又は第2の補助位置が決まるようになっている。
【0045】
ベベルプレート72の内周部には、複数の固定孔72D(図3参照)が形成されており、固定孔72D内に挿入された固定ボルトBLによって、ベベルプレート72が支持柱42に固定されている。固定孔72Dは、ベベルプレート72の長手方向に沿った長孔状に形成されており、ヘッド部32の回動方向におけるベベルプレート72の位置を調整可能に構成されている。具体的には、ベベルプレート72の左部の外周部に調整溝72E(図3参照)が形成されており、調整溝72Eは、ベベルプレート72の径方向外側へ開放され且つベベルプレート72の長手方向に沿った溝状に形成されている。調整溝72Eの一端部には、支持柱42に螺合された調整ネジSC(図3参照)の先端部が当接しており、支持柱42の他端部は、支持柱42の外部に操作可能に露出されている。そして、調整ネジSCを回動させて、調整ネジSCの先端部を支持柱42内側へ移動させることで、ベベルプレート72が回動方向一方側へ変位するようになっている。これにより、ヘッド部32の直角位置を、微調整可能に構成されている。
【0046】
傾斜位置決めストッパ74は、略円柱状に形成されている。傾斜位置決めストッパ74は、セットピン62に対して、ヘッド部32の回動方向両側に離間した位置に配置されると共に、ベベルプレート72の前側に位置している。具体的には、傾斜位置決めストッパ74は、ヘッド部32の回動方向に接する方向を軸方向として配置されており、傾斜位置決めストッパ74におけるセットピン62とは反対側の端部が、支持柱42に固定されている。
【0047】
ここで、セットピン62の第1セット位置では、前後方向において、第2シャフト部62Bが、傾斜位置決めストッパ74と重なる位置に配置される設定になっている(図6(B)参照)。また、ヘッド部32の傾斜位置では、傾斜位置決めストッパ74におけるセットピン62側の端面74Aが、第1セット位置におけるセットピン62の第2シャフト部62Bの外周部に当接して、セットピン62と傾斜位置決めストッパ74とがヘッド部32の回動方向に係合する設定になっている。これにより、ヘッド部32の傾斜位置が決まるようになっている。
【0048】
さらに、セットピン62の第2セット位置では、第2シャフト部62Bの全体が、傾斜位置決めストッパ74よりも前側に移動し、前後方向において、第1シャフト部62Aが傾斜位置決めストッパ74と重なる位置に配置される設定になっている(図6(C)参照)。これにより、セットピン62を第2セット位置にすることで、ヘッド部32の傾斜位置から傾倒位置への回動が許可され、ヘッド部32の傾倒位置において傾斜位置決めストッパ74の端面74Aが第1シャフト部62Aの外周部に当接して、セットピン62と傾斜位置決めストッパ74とが、ヘッド部32の回動方向に係合する設定になっている。これにより、ヘッド部32の傾倒位置が決まるようになっている。
【0049】
図4及び図5に示されるように、連結機構部80は、第1連結部材82と、第2連結部材84と、第1付勢部材としての第1付勢バネ86と、第2付勢部材としての第2付勢バネ88と、を含んで構成されている。第2連結部材84は、左右方向を板厚方向とし且つ前後方向に延在された略長尺板状に形成されて、ターンテーブル24に前後方向に移動可能に連結されている。第2連結部材84の後端部は、セットピン62の前端部に固定されており、第2連結部材84の前端部は、右側へ屈曲している。第1連結部材82は、左右方向を板厚方向とし且つ前後方向に延在された略長尺板状に形成されて、ターンテーブル24に前後方向に移動可能に連結されている。第1連結部材82の後端部は、右側へ屈曲されて、第2連結部材84の前端部の前側に隣接配置されている。
【0050】
第1付勢バネ86及び第2付勢バネ88は、それぞれ圧縮コイルスプリングとして構成されている。第1付勢バネ86は第1連結部材82の後端部の前側に隣接配置され、第1付勢バネ86の前端部がターンテーブル24に係止されて、第1付勢バネ86が第1連結部材82を後側へ付勢している。第2付勢バネ88は第2連結部材84の前端部の後側に隣接配置され、第2付勢バネ88の後端部がターンテーブル24に係止されて、第2付勢バネ88が第2連結部材84を前側へ付勢している。第1付勢バネ86の付勢力は、第2付勢バネ88の付勢力よりも大きく設定されている。これにより、第1連結部材82、第2連結部材84、及びセットピン62が後側へ付勢されている。そして、第1連結部材82が第1付勢バネ86の付勢力に抗して前側へ移動すると、第2付勢バネ88の付勢力によってセットピン62及び第2連結部材84が第1セット位置又は第2セット位置に移動する構成になっている。
【0051】
図5に示されるように、第1連結部材82の前端部には、下側に一段下がった段差部82Aが形成されている。段差部82Aの前端部には、後述する操作ノブ90からの操作力が伝達される操作力伝達部82Bが形成されている。操作力伝達部82Bは、上下方向に延在されており、操作力伝達部82Bの下端部が、段差部82Aの前端部に接続されている。
【0052】
図2図5、及び図7に示されるように、操作ノブ90は、ターンテーブル24の前端部に設けられると共に、クランプレバー54に対して右側に位置している。操作ノブ90は、ノブ本体90Aを有しており、ノブ本体90Aは、全体として左右方向を厚み方向とする略円板状に形成されている。そして、ノブ本体90Aの中央部が、ターンテーブル24の前端部に設けられた操作軸92によって左右方向を軸方向として回動可能に支持されている。ノブ本体90Aは、左右に2分割された一対の分割ノブ部材90A1によって構成されている。一対の分割ノブ部材90A1は、押圧部としての第1押圧軸90B及び第2押圧軸90Cによって連結されている。第1押圧軸90Bは、左右方向を軸方向とする略円柱状に形成されて、操作軸92の下側に位置している。第2押圧軸90Cは、左右方向を軸方向とする略円柱状に形成されて、操作軸92の上側に位置している。すなわち、第1押圧軸90B及び第2押圧軸90Cは、操作軸92に対して偏心した位置に配置されている。第2押圧軸90Cと操作軸92との軸間距離が、第1押圧軸90Bと操作軸92との軸間距離よりも長く設定されている。そして、右側の分割ノブ部材90A1が、ターンテーブル24の前端部から操作可能に露出している。
【0053】
前述した第1連結部材82の段差部82A及び操作力伝達部82Bは、一対の分割ノブ部材90A1の間に配置されている。具体的には、操作力伝達部82Bが、第1押圧軸90B、操作軸92、及び第2押圧軸90Cの前側に離間して配置され、段差部82Aが、第1押圧軸90Bの下側に離間して配置されている(図7(A)参照)。
【0054】
そして、左側から見て、操作ノブ90が非操作位置(図7(A)に示される位置)から反時計回りに45度回動した第1操作位置(図7(B)に示される位置)では、第1押圧軸90Bが操作力伝達部82Bに当接し操作力伝達部82Bを前側へ押出して、第1連結部材82、第2連結部材84、及びセットピン62が第1セット位置に移動する設定になっている。
【0055】
また、左側から見て、操作ノブ90が非操作位置から時計回りに90度回動した第2操作位置(図7(C)に示される位置)では、第2押圧軸90Cが操作力伝達部82Bに当接し操作力伝達部82Bを前側へ押出して、第1連結部材82、第2連結部材84、及びセットピン62が第2セット位置に移動する設定になっている。
【0056】
なお、操作軸92には、リターンスプリング94(図5参照)が装着されている。リターンスプリング94は、トーションスプリングとして構成されており、リターンスプリング94の一端部がノブ本体90Aに係止され、リターンスプリング94の他端部がターンテーブル24に係止されている。そして、操作ノブ90の第1操作位置又は第2操作位置への操作後に操作ノブ90への操作力を解除すると、リターンスプリング94の付勢力によって操作ノブ90が非操作位置に復帰するように構成されている。
【0057】
左側の分割ノブ部材90A1(図5参照)には、ノブストッパ90Dが設けられている。ノブストッパ90Dは、左右方向を軸方向とする略円柱状に形成されて、分割ノブ部材90A1の前端部から左側へ突出している。そして、操作ノブ90の第1操作位置及び第2操作位置では、ノブストッパ90Dが、図示しない位置でターンテーブル24に当接して、操作ノブ90が第1操作位置及び第2操作位置からさらに回動することを阻止する構成になっている。また、右側の分割ノブ部材90A1には、右側へ突出するノブ部90Eが一体に形成されており、作業者がノブ部90Eを把持して操作ノブ90に対する回動操作を行うようになっている。
【0058】
(作用効果)
次に、直角位置に配置されたヘッド部32の位置を、第1(第2)の補助位置、傾斜位置、及び傾倒位置に変更させる手順について説明しつつ、本実施の形態の作用及び効果について説明する。
【0059】
ヘッド部32の位置を直角位置から第1の補助位置に変更する場合には、クランプ機構50による支持柱42に対する固定状態を解除する。すなわち、クランプ機構50のクランプレバー54を回動操作して、クランプボルト53によるベベルプレート72への締付力を解除する。これにより、クランプ機構50による支持柱42への固定状態が解除される。
【0060】
また、ヘッド部32の直角位置では、初期位置におけるセットピン62の第1シャフト部62Aがベベルプレート72の直角位置決め孔72Aに挿入されて、第1シャフト部62Aと直角位置決め孔72Aとがヘッド部32の回動方向に係合している(図6(A)参照)。このため、第1シャフト部62Aと直角位置決め孔72Aとの係合状態を解除して、ヘッド部32及び支持柱42をターンテーブル24に対して相対回動可能な状態にする。
【0061】
具体的には、操作ノブ90を非操作位置から第1操作位置へ回動させる。これにより、操作ノブ90の第1押圧軸90Bが第1連結部材82の操作力伝達部82Bを第1付勢バネ86の付勢力に抗して前側へ押出して、第1連結部材82が前側へ移動する。第1連結部材82の前側への移動に伴い、第2連結部材84及びセットピン62が、第2付勢バネ88の付勢力によって、初期位置から前側へ移動して第1セット位置に配置される(図6(B)参照)。すなわち、第1シャフト部62Aがベベルプレート72の直角位置決め孔72Aから抜け出て、第1シャフト部62Aと直角位置決め孔72Aとの係合状態が解除される。その結果、ヘッド部32のターンテーブル24に対する相対回動が許可される。
【0062】
この状態で、ヘッド部32を直角位置から回動方向一方側又は他方側へ回動させると共に、作業者による操作ノブ90への操作力を解除する。これにより、第1付勢バネ86の付勢力によって、第1連結部材82、第2連結部材84、及びセットピン62が、第1セット位置から後側へ移動して、第1シャフト部62Aの後端がベベルプレート72の前面に当接する(以下、この位置を初期待機位置(図示省略)という)。そして、この状態でヘッド部32をさらに回動させ、ヘッド部32が第1の補助位置に到達すると、ベベルプレート72の第1補助位置決め孔72Bとセットピン62とが前後方向に対向配置される。これにより、第1付勢バネ86の付勢力によって、第1連結部材82、第2連結部材84、及びセットピン62が、初期待機位置から後側へ移動する。すなわち、第1シャフト部62Aが第1補助位置決め孔72Bに挿入されて、第1シャフト部62Aと第1補助位置決め孔72Bとがヘッド部32の回動方向に係合する。よって、ヘッド部32が第1補助位置に位置決めされる。
【0063】
この状態からヘッド部32の位置を第2の補助位置にする場合には、上述と同様に、操作ノブ90を非操作位置から第1操作位置へ回動させて、セットピン62を第1セット位置に配置し、ヘッド部32をターンテーブル24に対して相対回動可能な状態にする。そして、ヘッド部32を第2の補助位置側へ回動させると共に、作業者による操作ノブ90への操作力を解除する。これにより、上述と同様に、第1付勢バネ86の付勢力によって、セットピン62が、初期待機位置に配置される。そして、ヘッド部32が第2の補助位置に到達すると、ベベルプレート72の第2補助位置決め孔72Cとセットピン62とが前後方向に対向配置される。これにより、第1付勢バネ86の付勢力によって、第1連結部材82、第2連結部材84、及びセットピン62が、初期待機位置から後側へ移動する。すなわち、第1シャフト部62Aが第2補助位置決め孔72Cに挿入されて、第1シャフト部62Aと第2補助位置決め孔72Cとがヘッド部32の回動方向に係合する。よって、ヘッド部32が第2の補助位置に位置決めされる。ヘッド部32の第1又は第2の補助位置への位置決め後は、クランプ機構50によって支持柱42をターンテーブル24に固定する。
【0064】
次に、ヘッド部32の位置を直角位置から傾斜位置に変更する場合について説明する。この場合には、上述と同様に、クランプ機構50による支持柱42に対する固定状態を解除する。また、上述と同様に、操作ノブ90を非操作位置から第1操作位置へ回動させ、セットピン62を第1セット位置に配置させると共に、支持柱42(ヘッド部32)をベース20に対して相対回動可能な状態にする。セットピン62の第1セット位置では、前後方向において、セットピン62の第2シャフト部62Bが傾斜位置決めストッパ74と重なる位置に配置される(図6(B)参照)。
【0065】
この状態で、ヘッド部32を直角位置から回動方向一方側又は他方側へ回動させる。ヘッド部32が傾斜位置に到達すると、傾斜位置決めストッパ74の端面74Aがセットピン62の第2シャフト部62Bの外周面に当接して、ヘッド部32の相対回動が阻止される。これにより、ヘッド部32が傾斜位置に位置決めされる。ヘッド部32の傾斜位置への位置決め後に、作業者による操作ノブ90への操作力を解除することで、セットピン62が、後側へ移動し、ベベルプレート72に当接して、初期待機位置に配置される。また、ヘッド部32の傾斜位置への位置決め後に、クランプ機構50を作動させて、支持柱42をターンテーブル24に固定する。
【0066】
次に、ヘッド部32の位置を直角位置から傾倒位置に変更する場合について説明する。この場合には、上述と同様に、クランプ機構50による支持柱42に対する固定状態を解除する。また、ヘッド部32の位置を傾倒位置にするときには、操作ノブ90を非操作位置から第2操作位置へ回動させて、ヘッド部32をターンテーブル24に対して相対回動可能な状態にする。すなわち、操作ノブ90の第2押圧軸90Cが第1連結部材82の操作力伝達部82Bを第1付勢バネ86の付勢力に抗して前側へ押出して、第1連結部材82が前側へ移動する。これにより、第2連結部材84及びセットピン62が、第2付勢バネ88の付勢力によって、初期位置から前側へ移動して第2セット位置に配置される(図6(C)参照)。よって、上述と同様に、第1シャフト部62Aがベベルプレート72の直角位置決め孔72Aから抜け出て、第1シャフト部62Aと直角位置決め孔72Aとの係合状態が解除される。また、セットピン62の第2セット位置では、セットピン62の第2シャフト部62Bが、傾斜位置決めストッパ74よりも前側に位置すると共に、第1シャフト部62Aが前後方向において傾斜位置決めストッパ74と重なる位置に配置される。
【0067】
この状態で、ヘッド部32を直角位置から回動方向一方側又は他方側へ回動させる。ヘッド部32が傾倒位置に到達すると、傾斜位置決めストッパ74の端面が、セットピン62の第1シャフト部62Aの外周面に当接して、ヘッド部32の相対回動が阻止される。これにより、ヘッド部32が傾倒位置に位置決めされる。ヘッド部32の傾倒位置への位置決め後に、作業者による操作ノブ90への操作力を解除することで、セットピン62が後側へ移動して、第2シャフト部62Bが傾斜位置決めストッパ74に当接する。また、ヘッド部32の傾倒位置への位置決め後に、クランプ機構50を作動させて、支持柱42をターンテーブル24に固定する。なお、上述のように、セットピン62の第2セット位置では、セットピン62の第2シャフト部62Bが傾斜位置決めストッパ74よりも前側に位置しているため、ヘッド部32の回動時には第2シャフト部62Bは傾斜位置決めストッパ74に干渉しない。
【0068】
以上説明したように、本実施形態の卓上丸鋸10では、支持柱42が、前後方向を軸方向としてベース20に回動可能に連結され、ヘッド部32を支持している。支持柱42には、係合機構部70が相対移動不能に設けられている。ベース20には、セットピン62が移動可能に設けられており、セットピン62の係合機構部70への係合によって、ヘッド部32の位置が直角位置、傾斜位置、第1の補助位置、及び第2の補助位置の何れかの位置に決まる。
【0069】
ここで、操作ノブ90がベース20におけるターンテーブル24の前端部に設けられている。そして、操作ノブ90が操作されることで、セットピン62が前側へ移動し、セットピン62の係合機構部70への係合状態が解除されて、ヘッド部32のベース20に対する相対回動が許可される。これにより、ヘッド部32の位置を直角位置、傾斜位置、第1の補助位置、及び第2の補助位置の何れかの位置に位置決めするときに、卓上丸鋸10の前側に位置する作業者が、卓上丸鋸10の後側へ回り込む必要がなくなる。したがって、ヘッド部32をベース20に対して傾斜させるときの作業性を向上することができる。
【0070】
また、係合機構部70は、支持柱42に固定されたベベルプレート72と、支持柱42に設けられた一対の傾斜位置決めストッパ74と、を含んで構成されており、ベベルプレート72には、第1補助位置決め孔72B及び第2補助位置決め孔72Cが形成されている。そして、ヘッド部32の第1(第2)の補助位置では、第1補助位置決め孔72B(第2補助位置決め孔72C)がセットピン62と係合して、ヘッド部32の位置が決まる。また、ヘッド部32の傾斜位置では、傾斜位置決めストッパ74とセットピン62とが係合して、ヘッド部32の位置が決まる。すなわち、ヘッド部32を第1(第2)の補助位置又は傾斜位置に位置決めするためのベベルプレート72及び傾斜位置決めストッパ74が、別部材で構成されている。したがって、例えば、ベベルプレート72及び傾斜位置決めストッパ74の位置をそれぞれ適宜調整することで、第1(第2)の補助位置及び傾斜位置を精度よく設定することができる。
【0071】
また、セットピン62の後端部は、段付きシャフト状に形成されている。詳しくは、セットピン62の後端部は、第1シャフト部62A及び第2シャフト部62Bによって構成されており、第2シャフト部62Bの直径が第1シャフト部62Aの直径よりも大きく設定されている。そして、ヘッド部32の第1(第2)の補助位置では、第1シャフト部62Aが第1補助位置決め孔72B(第2補助位置決め孔72C)内に挿入されて、第1シャフト部62Aと第1補助位置決め孔72B(第2補助位置決め孔72C)とが係合する。また、ヘッド部32の傾斜位置では、傾斜位置決めストッパ74が第2シャフト部62Bの外周部に当接して、傾斜位置決めストッパ74と第2シャフト部62Bとが係合する。これにより、例えば、第2シャフト部62Bによってセットピン62の強度を確保しつつ、第1シャフト部62Aと係合する第1補助位置決め孔72B(第2補助位置決め孔72C)を有するベベルプレート72の小型化を図ることができる。
【0072】
また、ベベルプレート72は、直角位置決め孔72Aを有しており、ヘッド部32の直角位置では、セットピン62の第1シャフト部62Aが直角位置決め孔72Aに挿入されて、第1シャフト部62Aと直角位置決め孔72Aとが係合する。これにより、ヘッド部32の直角位置及び第1(第2)の補助位置に対する位置決め部を、ベベルプレート72にまとめて設けることができる。したがって、卓上丸鋸10のコストダウンに寄与することができる。
【0073】
また、セットピン62が、初期位置から第2セット位置へ移動可能に構成されており、セットピン62の第2セット位置では、第2シャフト部62Bの全体が傾斜位置決めストッパ74よりも前側に位置し、第1シャフト部62Aが、前後方向において傾斜位置決めストッパ74と重なる位置に配置される。このため、セットピン62を第2セット位置に配置した状態でヘッド部32を回動させることで、傾斜位置よりもベース20側に傾倒する傾倒位置にヘッド部32を位置させることができる。これにより、載置面24Aに対する鋸刃38の傾斜角度を45度よりも小さい角度に設定することができる。したがって、作業者に対する利便性を向上することができる。
【0074】
また、セットピン62は分割不能な単一部材で構成され、第1シャフト部62A及び第2シャフト部62Bが一体に形成されている。これにより、セットピン62のコストダウンを図ることができると共に、ひいては卓上丸鋸10のコストダウンを図ることができる。
【0075】
また、連結機構部80によって、セットピン62が操作ノブ90に連結されている。連結機構部80では、操作ノブ90に連結される第1連結部材82と、セットピン62に固定された第2連結部材84と、を有しており、第1連結部材82が第2連結部材84の前側に隣接配置されている。また、第1連結部材82は、第1付勢バネ86によって後側へ付勢され、第2連結部材84は、第2付勢バネ88によって前側へ付勢されており、第1付勢バネ86の付勢力が第2付勢バネ88の付勢力よりも大きく設定されている。これにより、操作ノブ90の非操作時では、連結機構部80によってセットピン62を後側へ付勢して、セットピン62における第1シャフト部62Aのベベルプレート72への係合状態を良好に維持することができる。
【0076】
また、連結機構部80を上記のように構成することで、操作ノブ90の操作性を向上できる。すなわち、セットピン62の第1シャフト部62Aが、直角位置決め孔72Aや第1補助位置決め孔72Bに挿入されているときには、ヘッド部32の回動方向において、第1シャフト部62Aがベベルプレート72に係合されている。このため、操作ノブ90の操作時には、例えば、第1シャフト部62Aがベベルプレート72(位置決め孔部の内周部)をこじりながら前側へ移動する可能性がある。特に、傾斜した位置の場合にはヘッド部32の重さが補助位置決め孔(72B、72C)に作用するため、第1シャフト部62Aが補助位置決め孔(72B、72C)に食い付いてしまう可能性がある。これにより、連結機構部80において、仮に、第1連結部材82及び第2連結部材84が分割不能な単一部材で構成された場合には、上記こじりによる負荷に抗して操作ノブ90を回動操作する必要があるため、操作ノブ90の操作性が低下する可能性がある。これに対して、本実施形態では、第1連結部材82と第2連結部材84とが分離しているため、操作ノブ90を操作するときには、上記こじりによる負荷が操作ノブ90には作用しない。これにより、操作ノブ90を回動操作するときの操作性を向上することができる。また、操作ノブ90による第1連結部材82の前側への移動後には、第2付勢バネ88の付勢力によってセットピン62を前側へ移動させて、セットピン62とベベルプレート72との係合状態を自動的に解除することができる。
【0077】
また、操作ノブ90は、ターンテーブル24に設けられた操作軸92によって回動可能に支持されており、操作ノブ90には、第1押圧軸90B及び第2押圧軸90Cが設けられている。第1押圧軸90B及び第2押圧軸90Cは、操作軸92に対して偏心した位置に配置されている。そして、操作ノブ90が第1操作位置又は第2操作位置に回動されると、第1押圧軸90B又は第2押圧軸90Cが第1連結部材82と係合して、第1連結部材82を前方側へ移動させる。これにより、操作ノブ90を回動操作することで、セットピン62を前側へ移動させることができる。すなわち、操作ノブ90の操作アクションを1つにして、セットピン62を移動させることができる。
【0078】
また、クランプ機構50のクランプレバー54が、ターンテーブル24の前端部に設けられており、クランプレバー54及び操作ノブ90が左右方向に並んで配置されている。これにより、支持柱42の固定解除作業及びヘッド部32の位置決め作業を、卓上丸鋸10の前側に位置する作業者によって行うことができる。したがって、傾斜機構40への操作時における作業性を効果的に向上することができる。
【0079】
(第2実施形態)
以下、図8図12を用いて、第2実施形態の作業機としての卓上丸鋸100について説明する。卓上丸鋸100は、以下に示す点を除いて、第1実施形態の卓上丸鋸10と同様に構成されている。なお、図8図12では、第1実施形態の卓上丸鋸10と同様に構成された部分については、同一の符号を付している。
【0080】
すなわち、図8に示されるように、第2実施形態の卓上丸鋸100では、傾斜機構40におけるクランプ機構50がクランププレート51を有している。そして、クランプ溝52がクランププレート51に形成され、クランププレート51が支持柱42に固定されている。このため、第2実施形態では、ベベルプレート72においてクランプ溝52が省略されており、ベベルプレート72が第1実施形態よりも小型化されている。
【0081】
第2実施形態では、ベベルプレート72において、第1実施形態の直角位置決め孔72Aが省略されており、直角位置決め孔72Aの代わりに直角位置用係合部としての直角位置決めストッパ76が支持柱42に設けられている。直角位置決めストッパ76は、六角ボルトとして構成されており、支持柱42の外周部に螺合されている。直角位置決めストッパ76の先端部(軸方向一端部)は、支持柱42の下端部内に位置すると共に、ベベルプレート72の外周部の前側に位置している。直角位置決めストッパ76は、後側から見て、左側へ向かうに従い下側へ傾斜する方向を軸方向として配置されている。また、第2実施形態では、傾斜位置決めストッパ74が、直角位置決めストッパ76よりも前側に位置するように設定されている(図9参照)。
【0082】
さらに、図9にも示されるように、第2実施形態では、セットピン62が、2部材によって構成されている。具体的には、セットピン62が、外ピン64及び内ピン66によって構成されている。外ピン64は、前後方向を軸方向とする略円筒状に形成され、ターンテーブル24の後端部に前後方向に相対移動可能に且つ自身の軸線回りに回動可能に支持されている。外ピン64の内部は、段付き孔状に形成されており、外ピン64の前部の内径が後部の内径よりも小さく設定されている。外ピン64の前端部には、左右方向を軸方向とする当接部としての外側ストッパピン65が設けられている。また、外ピン64の前端側部分には、上下一対のスリット64Aが形成されている。スリット64Aは、前後方向に延在されると共に、上下方向に貫通しており、スリット64Aの前端部が前側へ開放されている。
【0083】
内ピン66は、前後方向を軸方向とする略段付き円柱状に形成されている。内ピン66は、外ピン64の内部に挿入され、前後方向に移動可能に外ピン64に支持されている。内ピン66の前端部には、上下方向に貫通したスリット66Aが形成されており、スリット66Aの前端部は前側へ開放されている。内ピン66の前端部には、スリット66A内において、左右方向を軸方向とする内側ストッパピン67が設けられている。内ピン66の前端部は、外ピン64の外側ストッパピン65よりも後側に位置している。
【0084】
ここで、セットピン62の初期位置では、内ピン66の後端部が外ピン64の後端部よりも後側へ突出している(図10(B)に示される位置を参照)。これにより、内ピン66が本発明の第1シャフト部に対応し、外ピン64が本発明の第2シャフト部に対応する。また、セットピン62の初期位置では、外ピン64の後端部が、前後方向において、直角位置決めストッパ76と重なる位置に配置されている。また、セットピン62の初期位置では、外ピン64が図示しない位置で支持柱42に当接して、外ピン64の後側への移動が制限されている。
【0085】
一方、ヘッド部32の直角位置では、内ピン66の後端がベベルプレート72の前面に当接して、セットピン62が初期待機位置に配置される設定になっている。すなわち、第2実施形態におけるセットピン62の初期待機位置では、内ピン66のみが初期位置から前側に位置する設定になっている(図10(A)参照)。そして、ヘッド部32の直角位置では、初期待機位置の外ピン64の後端部が、直角位置決めストッパ76の軸方向一方側に位置して、直角位置決めストッパ76によって外ピン64におけるヘッド部32の回動方向一方側(図8の矢印B方向側)への回動が阻止される構成になっている。すなわち、ヘッド部32の直角位置では、外ピン64と直角位置決めストッパ76とがヘッド部32の回動方向一方側に係合して、ヘッド部32が直角位置に位置決めされる設定になっている。
【0086】
また、ヘッド部32の第1(第2)の補助位置では、後述する連結機構部110によって、初期待機位置の内ピン66が初期位置に移動し、内ピン66の後端部が、第1補助位置決め孔72B(第2補助位置決め孔72C)内に挿入されて、セットピン62とベベルプレート72とが係合するようになっている。
【0087】
また、第2実施形態では、後述する操作ノブ90の操作によって、セットピン62が、初期位置から第1セット位置、第2セット位置、及び第3セット位置の3段の位置に移動するようになっている。具体的には、セットピン62の第1セット位置では、内ピン66のみが初期位置から前側へ移動して、内ピン66の後端部が、外ピン64の内部に収容される設定になっている(図10(C)参照)。
【0088】
セットピン62の第2セット位置では、第1セット位置の状態から内ピン66及び外ピン64が前側へ移動する設定になっている(図10(D)参照)。詳しくは、後述する連結機構部110によって、内ピン66が前側へ移動し、内ピン66の前端部が外ピン64の外側ストッパピン65に当接して、内ピン66及び外ピン64が前側へ移動するようになっている。そして、セットピン62の第2セット位置では、外ピン64の後端部が、直角位置決めストッパ76よりも前側に配置される設定になっている。これにより、外ピン64と直角位置決めストッパ76とのヘッド部32の回動方向一方側の係合が解除されて、ヘッド部32の回動方向両側への回動が許可されるようになっている。また、セットピン62の第2セット位置では、外ピン64の後端部が、前後方向において傾斜位置決めストッパ74と重なる位置に配置される設定になっている。よって、傾斜位置決めストッパ74の端面74Aが外ピン64の外周部に当接することで、ヘッド部32が傾斜位置に位置決めされる構成になっている。
【0089】
セットピン62の第3セット位置では、第2セット位置の状態から内ピン66及び外ピン64が前側へさらに移動する設定になっている(図10(E)参照)。具体的には、セットピン62の第3セット位置では、外ピン64の後端部が、傾斜位置決めストッパ74よりも前側に位置する。これにより、外ピン64と傾斜位置決めストッパ74との係合状態が解除されて、ヘッド部32の傾倒位置側への回動が許可されるようになっている。また、ヘッド部32の傾倒位置では、第3セット位置の外ピン64が図示しない位置で支持柱42に当接して、ヘッド部32が傾倒位置に位置決めされる構成になっている。
【0090】
図9に示されるように、第2実施形態では、第1実施形態の連結機構部80の代わりに、連結機構部110がターンテーブル24に設けられており、連結機構部110によって、セットピン62と操作ノブ90とが連結されている。連結機構部110は、連結部材112と、第2シャフト用付勢部材としてのリヤバネ114と、第1シャフト用付勢部材としてのフロントバネ116と、を含んで構成されている。
【0091】
連結部材112は、左右方向を板厚方向とし且つ前後方向に延在された略長尺板状に形成され、前後方向に移動可能にターンテーブル24に連結されている。連結部材112の後端部は、セットピン62の前端部の下側に位置している。連結部材112の後端部には、上側へ突出する連結片112Aが形成されており、連結片112Aが、外ピン64のスリット64A及び内ピン66のスリット66A内に挿入されると共に、内側ストッパピン67とスリット66Aの後面との間に配置されている。これにより、連結部材112と内ピン66とが前後方向に係合して、前後方向に一体移動可能に構成されている。なお、前述のように、ヘッド部32の直角位置では、内ピン66が初期位置よりも前側の初期待機位置に位置するため、連結部材112と内ピン66とは、若干の隙間を有する状態で係合している。
【0092】
リヤバネ114及びフロントバネ116は、圧縮コイルスプリングとして構成されている。リヤバネ114は、外側ストッパピン65の前側に隣接配置され、リヤバネ114の前端部がターンテーブル24に係止されて、リヤバネ114が外ピン64を後側へ付勢している。これにより、外ピン64が初期位置に保持される。フロントバネ116では、フロントバネ116の前端部がターンテーブル24に係止され、フロントバネ116の後端部が連結部材112に係止されて、フロントバネ116が連結部材112を後側へ付勢している。これにより、フロントバネ116の付勢力が内ピン66に伝達されて、内ピン66が後側に付勢されている。
【0093】
図11及び図12に示されるように、第2実施形態の操作ノブ90は、前後方向を軸方向とする略円柱状に形成されており、操作ノブ90の後端部が、連結部材112の前端部に固定されている。操作ノブ90は、前後方向に相対移動可能に且つ自身の軸線回りに回動可能に、ターンテーブル24の前端部に支持されており、操作ノブ90の前部がターンテーブル24から操作可能に露出している。具体的には、ターンテーブル24の前端部には、上側へ開放された凹状の収容部24Bが形成されており、操作ノブ90の前部が操作可能に収容部24B内に収容されている。
【0094】
そして、操作ノブ90が非操作位置(図11(A)及び(B)、図12(A)に示される位置)から前側の第1操作位置(図12(B)に示される位置)へ移動することで、セットピン62が初期位置から第1セット位置に切替わるようになっている。また、操作ノブ90が第1操作位置から前側の第2操作位置(図12(C)に示される位置)へ移動することで、セットピン62が第2セット位置に切替わるようになっている。また、操作ノブ90が第2操作位置から前側の第3操作位置(図12(D)に示される位置)へ移動することで、セットピン62が第3セット位置に切替わるようになっている。
【0095】
また、操作ノブ90の前部の外周部には、上側へ突出した円柱状の操作保持部としての保持ピン91が設けられている。また、ターンテーブル24における収容部24Bの周縁部には、操作ノブ90の径方向外側において、第1段差部24C、第2段差部24D、及び第3段差部24Eが形成されている。第1段差部24Cは、第1操作位置に配置された操作ノブ90の保持ピン91に対応する位置に配置され、第1操作位置の操作ノブ90を回動させることで、保持ピン91が第1段差部24Cの前側に隣接配置されるようになっている。これにより、連結機構部110のフロントバネ116の付勢力によって、保持ピン91が第1段差部24Cに係合して、操作ノブ90が第1操作位置に保持されるようになっている。なお、図12(B)では、便宜上、操作ノブ90を回動させた状態で図示している。
【0096】
また、第2段差部24Dは、第2操作位置に配置された操作ノブ90の保持ピン91に対応する位置に配置され、第2操作位置の操作ノブ90を回動させることで、保持ピン91が第2段差部24Dの前側に隣接配置されるようになっている。これにより、連結機構部110のフロントバネ116の付勢力によって、保持ピン91が第2段差部24Dに係合して、操作ノブ90が第2操作位置に保持されるようになっている。なお、図12(C)では、便宜上、操作ノブ90を回動させた状態で図示している。
【0097】
また、第3段差部24Eは、第3操作位置に配置された操作ノブ90の保持ピン91に対応する位置に配置され、第3操作位置の操作ノブ90を回動させることで、保持ピン91が第3段差部24Eの前側に隣接配置されるようになっている。これにより、連結機構部110のフロントバネ116の付勢力によって、保持ピン91が第3段差部24Eに係合して、操作ノブ90が第3操作位置に保持されるようになっている。なお、図12(D)では、便宜上、操作ノブ90を回動させた状態で図示している。
【0098】
そして、第2実施形態の卓上丸鋸100においても、操作ノブ90がベース20におけるターンテーブル24の前端部に設けられている。そして、操作ノブ90を操作することで、セットピン62が前側へ移動し、セットピン62の係合機構部70への係合状態が解除されて、ヘッド部32のベース20に対する相対回動が許可される。これにより、ヘッド部32の位置を直角位置、傾斜位置、及び補助位置の何れかの位置に位置決めするときに、卓上丸鋸100の前側に位置する作業者が、卓上丸鋸100の後側へ回り込む必要がなくなる。したがって、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、ヘッド部32をベース20に対して傾斜させるときの作業性を向上することができる。
【0099】
また、第2実施形態では、直角位置決めストッパ76が支持柱42に設けられており、セットピン62の外ピン64が直角位置決めストッパ76に当接し、外ピン64と直角位置決めストッパ76とがヘッド部32の回動方向一方側に係合して、ヘッド部32が直角位置に位置決めされる。すなわち、ヘッド部32の回動方向他方側への回動は許可されている。したがって、ヘッド部32を直角位置から回動方向他方側へ回動させるときには、操作ノブ90の操作を不要にできる。したがって、ヘッド部32の位置決めを行うときの作業性を一層向上することができる。
【0100】
また、直角位置決めストッパ76をベベルプレート72とは別部材に構成することで、ヘッド部32の直角位置、第1(第2)の補助位置、及び傾斜位置に対する位置決め部を、それぞれ別部材として構成できる。これにより、例えば、係合機構部70において、直角位置決めストッパ76、ベベルプレート72、及び傾斜位置決めストッパ74のそれぞれの位置を適宜調整することで、ヘッド部32の直角位置、第1(第2)の補助位置、及び傾斜位置の位置を精度よく設定することができる。
【0101】
また、第2実施形態では、セットピン62が、外ピン64及び内ピン66によって構成されており、内ピン66が外ピン64に相対移動可能に支持されている。さらに、内ピン66がフロントバネ116によって後側へ付勢され、外ピン64がリヤバネ114によって後側に付勢されている。これにより、内ピン66を外ピン64に対して相対移動させて、セットピン62をベベルプレート72に係合させる係合状態又はベベルプレート72との係合状態が解除された係合解除状態に切替えることができる。これにより、例えば、上述のように、ヘッド部32の直角位置から回動方向他方側への回動時に、ヘッド部32が第1(第2)の補助位置に到達すると、フロントバネ116の付勢力によって、初期待機位置の内ピン66を初期位置へ移動させて、内ピン66を第1補助位置決め孔72Bに自動的に挿入させることができる。したがって、ヘッド部32の位置決めを行うときの作業性をより一層向上することができる。
【0102】
また、外ピン64が、外側ストッパピン65を有しており、内ピン66の前側への相対移動時に、内ピン66が外側ストッパピン65に当接する。このため、連結部材112によって内ピン66を前側へ移動させることで、内ピン66が外ピン64に対して相対移動可能な状態から内ピン66と外ピン64とが一体移動可能となる状態に変化させることができる。
【0103】
また、第2実施形態では、操作ノブ90が第1操作位置、第2操作位置、及び第3操作位置の何れかの操作位置に操作されたときに、操作ノブ90を回動させることで、操作ノブ90の保持ピン91が、ターンテーブル24の第1段差部24C、第2段差部24D、及び第3段差部24Eに係合して、操作ノブ90が所定の操作位置に保持される。これにより、セットピン62の係合機構部70への非係合状態を維持した状態で、ヘッド部32をベース20に対して相対回動させることができる。したがって、ヘッド部32をベース20に対して傾斜させるときの作業性を効果的に向上することができる。
【符号の説明】
【0104】
10 卓上丸鋸(作業機)
20 ベース
24A 載置面
32 ヘッド部(切断部)
34 モータ
38 鋸刃(切断刃)
40 傾斜機構
42 支持柱(支持部材)
50 クランプ機構(固定機構)
54 クランプレバー(固定操作部)
62 セットピン(位置決め部材)
62A 第1シャフト部
62B 第2シャフト部
64 外ピン(第2シャフト部)
65 外側ストッパピン(当接部)
66 内ピン(第1シャフト部)
70 係合機構部
72 ベベルプレート(係合部材)
72A 直角位置決め孔(直角位置用係合部)
72B 第1補助位置決め孔(補助位置用係合部)
72C 第2補助位置決め孔(補助位置用係合部)
74 傾斜位置決めストッパ(傾斜位置用係合部)
76 直角位置決めストッパ(直角位置用係合部)
80 連結機構部
82 第1連結部材
84 第2連結部材
86 第1付勢バネ(第1付勢部材)
88 第2付勢バネ(第2付勢部材)
90 操作ノブ(操作部)
90B 第1押圧軸(押圧部)
90C 第2押圧軸(押圧部)
91 保持ピン(操作保持部)
100 卓上丸鋸(作業機)
112 連結部材
114 リヤバネ(第2シャフト用付勢部材)
116 フロントバネ(第1シャフト用付勢部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12