(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121993
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20240902BHJP
B25D 11/12 20060101ALI20240902BHJP
B25F 5/02 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B25F5/00 Z
B25D11/12
B25F5/00 G
B25F5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029276
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】小林 隆介
【テーマコード(参考)】
2D058
3C064
【Fターム(参考)】
2D058AA14
2D058CA05
2D058CB06
2D058CB12
3C064AA04
3C064AA05
3C064AA06
3C064AB01
3C064AB02
3C064AC03
3C064BA02
3C064BA18
3C064BB27
3C064BB73
3C064CA03
3C064CA08
3C064CA26
3C064CB03
3C064CB05
3C064CB06
3C064CB08
3C064CB11
3C064CB14
3C064CB17
3C064CB19
3C064CB63
3C064CB74
(57)【要約】
【課題】シャフトの支持状態を良好に維持する。
【解決手段】ハンマドリルのクランク機構70では、クランクシャフト72が、下側(軸方向一方側)へ開放された圧入孔72Aを有し、ピン78が圧入孔72A内に圧入されている。また、ピン78のピン本体78Aが、インナケース42の支持孔43Dの径方向内側に配置されている。このため、ピン78からクランクシャフト72の下端部に径方向外側への力が作用する。これにより、ピン78によって、支持孔43Dの内周面を径方向内側から押付ける押付力がクランクシャフト72の下端部に付与される。その結果、クランク機構70において、ピン78を省略した構成と比べて、クランクシャフト72に対する支持力(固定力)を高くすることができる。したがって、インナケース42のクランクシャフト72への支持状態を良好に維持することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
支持孔を有するケースと、
前記支持孔に支持されると共に、軸方向一方側へ開放された圧入孔を有するシャフトと、
前記シャフトに回転可能に支持され、前記モータの駆動力を受けて回転するクランク部と、
前記クランク部の回転によって往復動し、先端工具を動作させる往復動機構と、
前記圧入孔に圧入され、前記支持孔の径方向内側に配置されるピンと、
を備えた作業機。
【請求項2】
前記モータの回転軸は、前記シャフトと平行に延在されると共に、モータ軸受によって径方向外側から回転可能に支持され、
前記ケースには、前記モータ軸受を保持する軸受保持部が設けられており、
前記シャフトの軸方向視において、前記支持孔の一部が前記軸受保持部と重なっている請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記シャフトは、前記支持孔から前記シャフトの軸方向他方側へ突出しており、
前記軸受保持部は、前記支持孔よりも前記軸方向一方側に配置され、
前記ピンが、前記軸方向一方側から前記圧入孔に圧入される請求項2に記載の作業機。
【請求項4】
前記ピンは、
前記圧入孔に圧入される圧入部と、
前記圧入部の一端部に設けられ、径方向外側へ張り出された環状のフランジ部と、
を含んで構成され、
前記フランジ部は、前記支持孔の前記軸方向一方側で且つ前記軸受保持部の径方向外側に配置されており、
前記フランジ部には、前記軸受保持部を配置するための切欠部が形成されている請求項3に記載の作業機。
【請求項5】
前記フランジ部の少なくとも一部が、前記支持孔よりも径方向外側へ突出している請求項4に記載の作業機。
【請求項6】
前記クランク部は、
前記シャフトに回転可能に支持された回転体と、
前記回転体に設けられ、前記シャフトの軸線に対して偏心した位置に配置され、前記往復動機構に連結される偏心シャフトと、
を含んで構成されている請求項1に記載の作業機。
【請求項7】
前記シャフトの軸方向他方側部分が、前記支持孔から前記シャフトの軸方向他方側へ突出しており、
前記回転体は、前記シャフトの軸方向他方側部分に取り付けられ、
前記ピンは、前記軸方向一方側から前記圧入孔に圧入される請求項6に記載の作業機。
【請求項8】
前記ケースの機械的強度が、前記シャフトの機械的強度よりも低い請求項7に記載の作業機。
【請求項9】
前記ケースはアルミニウム合金またはマグネシウム合金製であり、
前記シャフトは、鉄鋼製である請求項8に記載の作業機。
【請求項10】
回転軸を有するモータと、
前記回転軸を回転可能に支持するモータ軸受と、
前記モータ軸受を支持する軸受保持部と、前記回転軸と平行に延在し且つ前記回転軸の軸方向視において一部が前記軸受保持部と重なる支持孔と、を有するケースと、
前記支持孔に支持されたシャフトと、
前記シャフトに回転可能に支持され、前記モータの駆動力を受けて回転するクランク部と、
前記クランク部の回転によって往復動し、先端工具を動作させる往復動機構と、
前記シャフトの前記支持孔からの脱落を規制する規制部材と、
を備えた作業機。
【請求項11】
前記シャフトは、軸方向一方側へ開放された圧入孔を有し、
前記規制部材は、前記圧入孔に圧入されるピンであり、
前記ピンが前記支持孔の径方向内側に配置される請求項10に記載の作業機。
【請求項12】
前記シャフトの一端部及び他端側部分が前記支持孔から突出され、
前記クランク部は、
前記シャフトの他端側部分に回転可能に支持された回転体と、
前記回転体に設けられ、前記シャフトの軸線に対して偏心した位置に配置され、前記往復動機構に連結される偏心シャフトと、
を含んで構成され、
前記規制部材は、前記シャフトの一端部に係合された止め輪である請求項10に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の作業機では、モータの駆動力が、伝達機構によって先端工具に伝達され、先端工具により被加工材に対して孔あけ加工などを施す。伝達機構は、クランク機構及び打撃力付与機構を有しており、クランク機構によって打撃力付与機構を前後方向に往復移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、クランク機構では、クランク機構を収容するケースにシャフトを圧入し、シャフトによってクランクギヤ(クランク部)を回転可能に支持するものがある。このクランク機構では、モータからの回転力がクランクギヤに入力されると共に、打撃力付与機構からの打撃力がクランク部に入力される。よって、仮に、シャフトの圧入状態(支持状態)が解除されると、クランク機構が良好に作動しなくなる可能性がある。したがって、作業機では、シャフトの支持状態を良好に維持できる構造にすることが望ましい。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、シャフトの支持状態を良好に維持することができる作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、モータと、支持孔を有するケースと、前記支持孔に支持されると共に、軸方向一方側へ開放された圧入孔を有するシャフトと、前記シャフトに回転可能に支持され、前記モータの駆動力を受けて回転するクランク部と、前記クランク部の回転によって往復動し、先端工具を動作させる往復動機構と、前記圧入孔に圧入され、前記支持孔の径方向内側に配置されるピンと、を備えた作業機である。
【0007】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記モータの回転軸は、前記シャフトと平行に延在されると共に、モータ軸受によって径方向外側から回転可能に支持され、前記ケースには、前記モータ軸受を保持する軸受保持部が設けられており、前記シャフトの軸方向視において、前記支持孔の一部が前記軸受保持部と重なっている作業機である。
【0008】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記シャフトは、前記支持孔から前記シャフトの軸方向他方側へ突出しており、前記軸受保持部は、前記支持孔よりも前記軸方向一方側に配置され、前記ピンが、前記軸方向一方側から前記圧入孔に圧入される作業機である。
【0009】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記ピンは、前記圧入孔に圧入される圧入部と、前記圧入部の一端部に設けられ、径方向外側へ張り出された環状のフランジ部と、を含んで構成され、前記フランジ部は、前記支持孔の前記軸方向一方側で且つ前記軸受保持部の径方向外側に配置されており、前記フランジ部には、前記軸受保持部を配置するための切欠部が形成されている作業機である。
【0010】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記フランジ部の少なくとも一部が、前記支持孔よりも径方向外側へ突出している作業機である。
【0011】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記クランク部は、前記シャフトに回転可能に支持された回転体と、前記回転体に設けられ、前記シャフトの軸線に対して偏心した位置に配置され、前記往復動機構に連結される偏心シャフトと、を含んで構成されている作業機である。
【0012】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記シャフトの軸方向他方側部分が、前記支持孔から前記シャフトの軸方向他方側へ突出しており、前記回転体は、前記シャフトの軸方向他方側部分に取り付けられ、前記ピンは、前記軸方向一方側から前記圧入孔に圧入される作業機である。
【0013】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記ケースの機械的強度が、前記シャフトの機械的強度よりも低い作業機である。
【0014】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記ケースはアルミニウム合金またはマグネシウム合金製であり、前記シャフトは、鉄鋼製である作業機である。
【0015】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、回転軸を有するモータと、前記回転軸を回転可能に支持するモータ軸受と、前記モータ軸受を支持する軸受保持部と、前記回転軸と平行に延在し且つ前記回転軸の軸方向視において一部が前記軸受保持部と重なる支持孔と、を有するケースと、前記支持孔に支持されたシャフトと、前記シャフトに回転可能に支持され、前記モータの駆動力を受けて回転するクランク部と、前記クランク部の回転によって往復動し、先端工具を動作させる往復動機構と、前記シャフトの前記支持孔からの脱落を規制する規制部材と、を備えた作業機である。
【0016】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記シャフトは、軸方向一方側へ開放された圧入孔を有し、前記規制部材は、前記圧入孔に圧入されるピンであり、前記ピンが前記支持孔の径方向内側に配置される作業機である。
【0017】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記シャフトの一端部及び他端側部分が前記支持孔から突出され、前記クランク部は、前記シャフトの他端側部分に回転可能に支持された回転体と、前記回転体に設けられ、前記シャフトの軸線に対して偏心した位置に配置され、前記往復動機構に連結される偏心シャフトと、を含んで構成され、前記規制部材は、前記シャフトの一端部に係合された止め輪である作業機である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の1又はそれ以上の実施形態によれば、シャフトの支持状態を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係るハンマドリルを示す右側から見た縦断面図である。
【
図2】
図1に示されるハンマドリルにおけるクランク機構の周辺を拡大して示す断面図である。
【
図3】
図2に示されるインナケースにおけるギヤケース部の下側から見た下面図である。
【
図4】(A)は、
図2に示されるクランクシャフトのインナケースへの支持構造の変形例を示す
図3に対応する下面図であり、(B)は、(A)のクランクシャフトの支持状態を示す右側から見た断面図((A)の4B-4B線断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて、本実施形態に係る作業機としてのハンマドリル10について説明する。ハンマドリル10は、加工物に孔あけ加工等を施す電動工具として構成されている。なお、図面に適宜示される矢印UP、矢印FR、矢印RHは、ハンマドリル10の上側、前側、右側を示している。以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、ハンマドリル10の上下方向、前後方向、左右方向を示すものとする。さらに、図面では、便宜上、ハッチングを適宜省略している。
【0021】
図1に示されるように、ハンマドリル10は、ハウジング12と、ハウジング12内に収容されたモータ34と、モータ34の駆動力を先端工具Tへ伝達する動力伝達機構40と、を含んで構成されている。また、ハンマドリル10は、モード切替機構部66を有しており、モード切替機構部66の切替レバー67が操作されることで、動力伝達機構40における先端工具Tへの伝達経路が切替えられて、ハンマドリル10が、先端工具Tに打撃力を付与するハンマモード、又は、先端工具Tに回転力及び打撃力を付与するハンマドリルモードに切替わるように構成されている。以下、ハンマドリル10の各構成について説明する。
【0022】
(ハウジング12について)
ハウジング12は、中空状に形成されて、ハンマドリル10の外郭を構成している。ハウジング12は、本体ハウジング14と、本体ハウジング14の後側に配置されたハンドル16と、を有している。本体ハウジング14は、前後方向に延在されており、本体ハウジング14の後端部が下側へ突出している。本体ハウジング14は、複数のハウジング部材によって構成されている。
【0023】
ハンドル16は、上下方向に延在されており、ハンドル16の上端部及び下端部が、防振機構18によって本体ハウジング14に連結されて、ハンドル16が本体ハウジング14に対して前後方向に相対移動可能に構成されている。ハンドル16の上下方向中間部は、作業者が把持する把持部16Aとされており、把持部16Aの上部には、トリガ20が設けられている。トリガ20は、上下方向に延在された略長尺ブロック状に形成されて、把持部16Aから前側へ操作可能に露出している。トリガ20の下端部は、左右方向を軸方向としてハンドル16に回転可能に連結されており、トリガ20が後側へ引き操作可能に構成されている。ハンドル16内には、トリガ20の後側において、スイッチ22が設けられている。作業者によってトリガ20が引き操作されることで、スイッチ22がオンする。スイッチ22は、本体ハウジング14の下端部に設けられたコントローラ30に電気的に接続され、トリガ20の操作状態に応じた出力信号をコントローラ30に出力する。
【0024】
ハンドル16の下端部には、電源コード32が設けられており、電源コード32は、ハンドル16から下側へ延出して、商用電源に接続可能に構成されている。電源コード32は、コントローラ30に電気的に接続されており、電源コード32を介して商用電源からコントローラ30に電力が供給される。
【0025】
(モータ34について)
モータ34は、3相のブラシレスモータとして構成されて、本体ハウジング14の下部に収容されると共に、コントローラ30の前側に配置されている。モータ34は、上下方向を軸方向とする回転軸34Aと、回転軸34Aに固定された略円筒状のロータ34Bと、ロータ34Bの径方向外側に配置された略円筒状のステータ34Cと、を含んで構成されている。回転軸34Aの下端部は、モータ軸受35に回転可能に支持されており、回転軸34Aの上端側部分は、モータ軸受36に回転可能に支持されている。モータ軸受36は、後述するインナケース42によって保持されている。回転軸34Aの上端部には、ピニオンギヤ34A1が形成されている。モータ34は、コントローラ30に電気的に接続されており、コントローラ30によって駆動する。
【0026】
(動力伝達機構40について)
動力伝達機構40は、回転機構47と、往復動機構としての打撃機構53と、クランク機構70と、を含んで構成されている。動力伝達機構40は、ケースとしてのインナケース42に収容されており、インナケース42は本体ハウジング14の上部に収容されている。動力伝達機構40では、回転機構47及びクランク機構70が、動力伝達機構40の下部を構成し、打撃機構53が、動力伝達機構40の上部を構成しており、回転機構47及びクランク機構70が前後方向に並んで配置されている。以下、先に、インナケース42の構成について説明し、次いで、動力伝達機構40の各構成について説明する。
【0027】
(インナケース42について)
インナケース42は、アルミニウム合金製とされている。インナケース42の後部は、ギヤケース部43として構成されており、ギヤケース部43は、上側へ開放された略凹状に形成されている。インナケース42の前部は、筒状ケース部44として構成されており、筒状ケース部44は、前後方向を軸方向とする略円筒状に形成され、ギヤケース部43の上部から前側へ延出している。インナケース42には、ケースカバー45が組付けられて、ケースカバー45によって、ギヤケース部43の上側開口部が閉塞されている。
【0028】
図1~
図3に示されるように、ギヤケース部43の底部の前後方向中間部には、略左右方向中央部において、軸受保持部43Aが設けられており、軸受保持部43Aは、下側へ開放された略有底円筒状に形成されている。前述したモータ軸受36が、軸受保持部43Aに嵌入されて、インナケース42に保持されている。軸受保持部43Aにおける上壁の略中央部には、挿通孔43Bが貫通形成されている。そして、回転軸34Aが、挿通孔43Bを挿通して、回転軸34Aのピニオンギヤ34A1がギヤケース部43の下端部内に配置されている。
【0029】
ギヤケース部43の底部には、軸受保持部43Aの後側において、後述するクランクシャフト72を支持するための支持筒部43Cが設けられている。支持筒部43Cは、上下方向を軸方向とする略円筒状に形成されている。支持筒部43Cの内部は、支持孔43Dとされており、支持孔43Dによって、ギヤケース部43の内部と外部とを連通している。支持筒部43Cは、軸受保持部43Aの下面よりも上側に位置している。詳しくは、支持筒部43Cの下面が、軸受保持部43Aの内周側の上面と略面一となる位置に配置されている(
図2参照)。支持筒部43Cの上端部は、ギヤケース部43の底壁よりも上側へ突出している。また、上下方向から見て、支持孔43Dの前端部が、軸受保持部43Aの後端部に重なっている(
図3参照)。換言すると、上下方向から見て、支持孔43Dの前端部が、軸受保持部43Aの後端部に食い込むように、支持筒部43C及び軸受保持部43Aが前後方向に並んでいる。
【0030】
(回転機構47について)
図1に示されるように、回転機構47は、ギヤケース部43の下部における前部内に収容されている。回転機構47は、回転伝達軸48及び伝達ギヤ50を有している。回転伝達軸48は、上下方向を軸方向とする略円柱状に形成され、モータ34のピニオンギヤ34A1の前側に配置されており、回転伝達軸48の下部が軸受49を介してギヤケース部43の底壁に回転可能に支持されている。回転伝達軸48の上端部には、ベベルギヤ48Aが形成されている。
【0031】
伝達ギヤ50は、上下方向を板厚方向とする略円板状に形成されて、回転伝達軸48の上端側部分に一体回転可能に連結されている。伝達ギヤ50は、スリップクラッチ51を有しており、スリップクラッチ51によって伝達ギヤ50と回転伝達軸48とが連結されている。伝達ギヤ50の外周部にはギヤ部が形成されており、当該ギヤ部が、モータ34のピニオンギヤ34A1に噛合されている。また、スリップクラッチ51に所定値以上の回転トルクが作用したときには、スリップクラッチ51による回転伝達軸48と伝達ギヤ50との連結状態が解除されるようになっている。
【0032】
(打撃機構53について)
打撃機構53は、シリンダ54と、リテーナスリーブ55と、リングギヤ56と、クラッチ58と、ピストン60と、打撃子63と、中間子64と、を含んで構成されている。
【0033】
シリンダ54及びリテーナスリーブ55は、前後方向を軸方向とする略円筒状に形成されると共に、同軸上に配置されている。また、シリンダ54の前端部がリテーナスリーブ55の後端部内に嵌入されて、シリンダ54及びリテーナスリーブ55が一体回転可能に連結されている。シリンダ54及びリテーナスリーブ55は、インナケース42のギヤケース部43の上部、及び筒状ケース部44に収容されている。リテーナスリーブ55の前端部は、インナケース42よりも前側へ突出している。シリンダ54及びリテーナスリーブ55は、軸受を介してインナケース42及び本体ハウジング14に回転可能に支持されている。そして、先端工具Tが、リテーナスリーブ55の前端部に取付けられて、本体ハウジング14の前端部から前側へ突出している。
【0034】
リングギヤ56は、前後方向を軸方向とする略円筒状に形成され、シリンダ54の後端側部分に外挿されて、シリンダ54に回転可能に支持されている。リングギヤ56の後端部には、ベベルギヤ56Aが形成されており、ベベルギヤ56Aは、回転機構47における回転伝達軸48のベベルギヤ48Aに噛合されている。
【0035】
クラッチ58は、前後方向を軸方向とする略円筒状に形成され、リングギヤ56の後側において、シリンダ54に外挿されている。クラッチ58は、シリンダ54に一体回転可能に且つ前後方向に相対移動可能に連結されている。クラッチ58の前端部は、リングギヤ56の後端部の径方向内側に配置されて、リングギヤ56と周方向に係合している。これにより、モータ34の駆動力が回転機構47、リングギヤ56、及びクラッチ58によってシリンダ54に伝達され、シリンダ54及びリテーナスリーブ55が回転して、先端工具Tに回転力を付与する構成になっている。一方、モード切替機構部66によってクラッチ58が後側へ移動することで、クラッチ58とリングギヤ56との係合状態が解除されて、回転機構47からシリンダ54への駆動力の伝達が遮断される構成になっている。
【0036】
ここで、モード切替機構部66は、本体ハウジング14から上側に操作可能に露出された切替レバー67を有しており、切替レバー67は、ケースカバー45に回転可能に支持されている。また、モード切替機構部66は、切替レバー67とクラッチ58とを連結する切替アーム68を有している。そして、切替レバー67が回転することで、リングギヤ56及びクラッチ58が係合状態又は非係合状態に切替わり、ハンマドリル10のモードが切替わる構成になっている。
【0037】
ピストン60は、後側へ開放された略有底円筒状に形成されて、シリンダ54の後部内に前後方向に相対移動可能に挿入されている。また、ピストン60には、上下方向を軸方向とするピストン連結軸61が設けられている。ピストン連結軸61には、前後方向に延在されたピストンロッド62の前端部が回転可能に連結されており、ピストンロッド62の後端部が、後述するクランク機構70の偏心シャフト74Bに回転可能に連結されている。そして、モータ34の駆動力が、クランク機構70及びピストンロッド62によってピストン60に伝達されて、ピストン60が前後方向に往復移動する構成になっている。
【0038】
打撃子63は、前後方向を軸方向とする略円柱状に形成され、シリンダ54に前後方向に相対移動可能に挿入されている。打撃子63は、ピストン60の前側に離間して配置されており、シリンダ54内におけるピストン60と打撃子63との間の空間が、空気室54Aとして構成されている。
【0039】
中間子64は、前後方向を軸方向とする略円柱状に形成されて、リテーナスリーブ55内に前後方向に相対移動可能に挿入されている。中間子64は、打撃子63の前側に隣接して配置されている。これにより、ピストン60が前側へ移動して空気室54A内の圧力が上昇することで、打撃子63及び中間子64が前側へ移動して、前後方向に沿った打撃力が先端工具Tに付与される構成になっている。
【0040】
(クランク機構70について)
図1~
図3に示されるように、クランク機構70は、ギヤケース部43の後部内に収容されている。クランク機構70は、シャフトとしてのクランクシャフト72と、クランク部としてのクランクギヤ74と、規制部材としてのピン78と、を含んで構成されている。
【0041】
クランクシャフト72は、鉄鋼製であり、下側へ開放された略有底円筒状に形成されている。すなわち、クランクシャフト72の内部には、下側(軸方向一方側)へ開放された凹状の圧入孔72Aが形成されている。また、インナケース42の機械的強度(引張強さ等)が、クランクシャフト72の機械的強度よりも低くなっている。クランクシャフト72の外径は、ギヤケース部43の支持孔43Dの内径よりも若干大きく設定されている。そして、クランクシャフト72が、ギヤケース部43の支持孔43D内に上側から圧入されて、インナケース42に支持されている。クランクシャフト72の圧入状態では、クランクシャフト72の下面が支持筒部43Cの下面と略面一となる位置に配置されており、クランクシャフト72の上部が、支持孔43D(支持筒部43C)から上側へ突出して、ギヤケース部43内に配置されている。
【0042】
クランクギヤ74は、回転体としてのギヤ本体74A及び偏心シャフト74Bを有している。ギヤ本体74Aは、上下方向を軸方向とする略円筒状に形成されている。そして、ギヤ本体74Aがクランクシャフト72の上部に上側から外挿されると共に、クランクシャフト72の上部に設けられたニードルベアリング76によって回転可能に支持されている。ギヤ本体74Aの下端部の外周部には、ギヤ部74Cが形成されており、ギヤ部74Cが、モータ34のピニオンギヤ34A1に噛合されている。
【0043】
偏心シャフト74Bは、上下方向を軸方向とする略円柱状に形成されて、ギヤ本体74Aの上面から上側へ突出している。偏心シャフト74Bは、クランクシャフト72の中心軸線に対して偏心した位置に配置されており、前述したピストンロッド62の後端部が、偏心シャフト74Bに回転可能に連結されている。
【0044】
ピン78は、鉄鋼製であり、全体として上下方向に延在されている。すなわち、インナケース42の機械的強度(引張強さ等)が、ピン78の機械的強度よりも低くなっている。なお、ピン78の機械的強度は、偏心シャフト74Bと同等である。ピン78は、圧入部としてのピン本体78Aと、ピン本体78Aの外周部に設けられたフランジ部78Bと、を含んで構成されている。ピン本体78Aは、上下方向を軸方向とする略円筒状に形成されており、ピン本体78Aの外径が、クランクシャフト72の圧入孔72Aの内径よりも若干大きく設定されている。そして、ピン本体78Aが、クランクシャフト72の圧入孔72Aに下側から圧入されている。これにより、ピン78によって、クランクシャフト72の下端部を径方向外側へ押し広げる力が作用するようになっている。また、ピン本体78Aは、支持孔43Dの径方向外側に位置している。すなわち、上下方向において、ピン本体78Aが支持孔43Dと重なる位置に配置されている。これにより、ピン78によって、支持孔43Dの内周面を径方向内側から押付ける押付力がクランクシャフト72の下端部に付与されるようになっている。ピン本体78Aにおける圧入孔72Aに圧入される部分の軸長は、支持孔43Dの長さよりも短く設定されると共に、クランクシャフト72の軸長の1/2以下に設定されている。
【0045】
フランジ部78Bは、ピン本体78Aの下端部に設けられると共に、ピン本体78Aの径方向外側へ突出され、ピン本体78Aの周方向に沿って延在されている。フランジ部78Bは、クランクシャフト72の下側に隣接して配置されると共に、軸受保持部43Aの径方向外側に位置している。フランジ部78Bの前部には、軸受保持部43Aとの干渉を回避するための切欠部78Cが形成されている。切欠部78Cは、下側から見て、軸受保持部43Aの外形に対応して、前側へ開放された略円弧状に形成されており、軸受保持部43Aの後端部が、切欠部78Cの内部に配置されている。フランジ部78Bの外径は、支持孔43Dの内径よりも大きく設定されており、下側から見て、フランジ部78Bの外周部が、支持孔43Dの径方向外側に位置している。すなわち、フランジ部78Bの外周部が、支持筒部43Cの下側に隣接して配置されている。
【0046】
(作用効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0047】
ハンマドリル10のハンマドリルモードでは、モード切替機構部66によって、リングギヤ56とクラッチ58とが係合する。これにより、作業者によるトリガ20の引き操作でモータ34が駆動すると、クランク機構70及び回転機構47が作動して、打撃力及び回転力が打撃機構53から先端工具Tに付与される。
【0048】
一方、ハンマドリル10のハンマモードでは、モード切替機構部66によってクラッチ58が後側に変位して、リングギヤ56とクラッチ58との係合状態が解除される。これにより、作業者によるトリガ20の引き操作でモータ34が駆動すると、クランク機構70が作動して、打撃力のみが打撃機構53から先端工具Tに付与される。
【0049】
また、クランク機構70では、クランクシャフト72の下端部がインナケース42の支持孔43Dに圧入されて、インナケース42に支持されており、クランクギヤ74がクランクシャフト72の上部に回転可能に支持されている。そして、モータ34からの回転力がクランクギヤ74に伝達されて、クランクギヤ74が回転することで、クランクギヤ74の偏心シャフト74Bに連結された打撃機構53のピストン60が前後方向に往復移動して、先端工具Tに打撃力が付与される。このため、クランク機構70の作動時には、モータ34からの回転力や打撃機構53からの打撃力がクランクシャフト72の上部に入力される。これにより、クランク機構70の作動時には、クランクシャフト72を上方側へ引っ張るような力が作用する。よって、当該引張力によってインナケース42のクランクシャフト72への支持状態が仮に解除された場合には、クランク機構70が正常に作動しなくなる可能性がある。なお、クランクシャフト72への支持状態の解除とは、クランクシャフト72の緩みや抜け等の状態をいう。
【0050】
ここで、クランク機構70では、クランクシャフト72が、下側(軸方向一方側)へ開放された圧入孔72Aを有しており、ピン78が圧入孔72A内に圧入されている。このため、ピン78からクランクシャフト72の下端部に径方向外側への力が作用する。また、ピン78のピン本体78Aが、インナケース42の支持孔43Dの径方向内側に配置されている。すなわち、上下方向におけるピン本体78Aの位置が、上下方向における支持孔43Dの位置と重なっている。これにより、ピン78によって、支持孔43Dの内周面を径方向内側から押付ける押付力がクランクシャフト72の下端部に付与される。その結果、クランク機構70において、ピン78を省略した構成と比べて、クランクシャフト72に対する支持力(固定力)を高くすることができる。したがって、インナケース42のクランクシャフト72への支持状態を良好に維持することができる。
【0051】
また、モータ34の回転軸34Aがモータ軸受36によって回転可能に支持されており、インナケース42には、モータ軸受36を保持する有底筒状の軸受保持部43Aが設けられている。さらに、平面視で支持孔43Dの前端部が軸受保持部43Aの後端部と重なっている。これにより、平面視で軸受保持部43A及び支持孔43Dが重ならない構成と比べて、回転軸34Aとクランクシャフト72との間の軸間距離を短くすることができる。したがって、クランク機構70及びインナケース42の体格を小型化できると共に、ひいてはハンマドリル10の体格を小型化できる。
【0052】
また、クランクシャフト72の上部は、支持孔43D(支持筒部43C)から上側へ突出しており、軸受保持部43Aは、支持孔43Dよりも下側に配置されている。そして、ピン78が、下側からクランクシャフト72の圧入孔72Aに圧入される。これにより、回転軸34Aとクランクシャフト72との間の軸間距離を短く設定しても、クランクシャフト72を上側から支持孔43Dに圧入することで、クランクシャフト72をインナケース42に設けることができると共に、クランクシャフト72の上部によってクランクギヤ74を回転可能に支持することができる。
【0053】
また、ピン78は、クランクシャフト72の圧入孔72Aに圧入されるピン本体78Aと、ピン本体78Aの一端部に設けられたフランジ部78Bと、を含んで構成されている。フランジ部78Bは、支持孔43Dの下側に隣接して配置されると共に、軸受保持部43Aの径方向外側に配置されており、フランジ部78Bには、軸受保持部43Aの一部(後端部)を配置するための切欠部78Cが形成されている。これにより、仮にピン78がクランクシャフト72に対して相対回転しようとすると、切欠部78Cと軸受保持部43Aの外周部とが係合して、ピン78のクランクシャフト72に対する相対回転が規制される。したがって、ピン78の圧入状態を良好に維持することができる。
【0054】
また、フランジ部78Bの外径は、支持孔43Dの内径よりも大きく設定されており、下側から見て、フランジ部78Bの外周部が、支持孔43Dの径方向外側に位置している。すなわち、フランジ部78Bの外周部が、支持筒部43Cの下側に隣接している。これにより、仮に、クランクシャフト72の支持孔43Dへの圧入状態が解除され、クランクシャフト72に作用する上側への引張力によってクランクシャフト72が上側へ変位しようとすると、フランジ部78Bが支持筒部43Cに係合する。その結果、仮にクランクシャフト72の支持孔43Dへの圧入状態が解除された場合でも、ピン78が抜け止部材として機能して、クランクシャフト72の支持孔43Dからの脱落を抑制できる。
【0055】
また、インナケース42の機械的強度が、クランクシャフト72の機械的強度よりも低い。具体的には、インナケース42はアルミニウム合金製であり、クランクシャフト72は、鉄鋼製である。これにより、例えば、インナケース42の軽量化を図りつつ、クランクシャフト72の支持状態を良好に維持することができる。
【0056】
また、ピン本体78Aにおける圧入孔72Aに圧入される部分の軸長が、支持孔43Dの上下方向(軸方向)長さよりも短く、より具体的にはクランクシャフト72の軸長の1/2以下に設定されている。これにより、例えば、ピン本体78Aが圧入孔72Aの軸長の略全体に亘って圧入される構成と比べて、ピン78の圧入後におけるクランクシャフト72の断面形状を楔形状にすることができる。したがって、所謂楔効果によって、仮にクランクシャフト72の支持孔43Dへの圧入状態が解除された場合におけるクランクシャフト72の支持孔43Dからの抜けを効果的に抑制できる。
【0057】
なお、本実施の形態では、クランクシャフト72に圧入されるピン78が、クランクシャフト72の抜け止部材として機能するように構成されているが、クランクシャフト72に対する抜け止め構造としては、これに限らない。例えば、
図4(A)及び(B)に示されるように、規制部材としての止め輪80をクランクシャフト72に設けて、止め輪80がクランクシャフト72の抜け止部材として機能するように構成してもよい。
【0058】
この場合には、クランクシャフト72の下端部72Bをインナケース42の支持筒部43Cよりも下側へ突出させるようにクランクシャフト72の軸長を変更する。また、下端部72Bとインナケース42の軸受保持部43Aとの干渉を回避するために、下側から見て、下端部72BをD字形状にする。さらに、下端部72Bの外周部に周方向に沿った係止溝72Cを形成する。また、止め輪80は、上下方向を板厚方向とし、且つ平面視で略C字形状に形成されている。すなわち、止め輪80は、所謂Cリングとして構成されている。そして、止め輪80を、係止溝72Cに挿入し、係止溝72Cに係合させると共に、支持筒部43Cの下側に隣接配置することで、止め輪80をクランクシャフト72の抜け止部材として機能させることができる。
【0059】
また、本実施形態では、インナケース42がアルミニウム合金によって構成されているが、インナケース42をマグネシウム合金によって構成してもよい。この場合でも、インナケース42の軽量化を図ることができると共に、ハンマドリル10全体の軽量化を図ることができる。
【0060】
また、本実施形態では、作業機の一例としてハンマドリルの例を説明したが、作業機は、クランク部の回転によって往復動し先端工具としてのブレードを動作させる往復動機構としての連結部を有する、ヘッジトリマやレシプロソーなどの切断工具であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 ハンマドリル(作業機)
34 モータ
34A 回転軸
36 モータ軸受
42 インナケース(ケース)
43A 軸受保持部
43D 支持孔
53 打撃機構(往復動機構)
72 クランクシャフト(シャフト)
72A 圧入孔
74 クランクギヤ(クランク部)
74A ギヤ本体(回転体)
74B 偏心シャフト
78 ピン(規制部材)
78A ピン本体(圧入部)
78B フランジ部
78C 切欠部
80 止め輪(規制部材)
T 先端工具