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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121995
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】ベーンドディフューザ
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/46 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
F04D29/46 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029281
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】田中 隆太
(72)【発明者】
【氏名】沼倉 龍介
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AA22
3H130AA24
3H130AB27
3H130AB42
3H130AC30
3H130BA62A
3H130BA66A
3H130BA72A
3H130BA76A
3H130CA08
3H130DA02Z
3H130DF00Z
3H130EA03A
3H130EB01A
(57)【要約】
【課題】圧縮機の広い作動範囲が得られるベーンドディフューザを提供する。
【解決手段】ベーンドディフューザ13は、遠心圧縮機1のディフューザ流路17内で周方向に配列される複数のベーン20を備えるベーンドディフューザである。各ベーン20は、当該ベーン20の厚み方向に重ねられた複数のベーン部品21,22,23を有し、複数のベーン部品21,22,23には、ディフューザ壁19からディフューザ流路17内に出没する動作が可能である可動ベーン部品が含まれている。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機のディフューザ流路内で周方向に配列される複数のベーンを備えるベーンドディフューザであって、
各前記ベーンは、当該ベーンの厚み方向に重ねられた複数のベーン部品を有し、複数の前記ベーン部品には、ディフューザ壁からディフューザ流路内に出没する動作が可能である可動ベーン部品が含まれている、ベーンドディフューザ。
【請求項2】
前記ベーン部品には、前記ディフューザ流路内に固定された固定ベーン部品が含まれている、請求項1に記載のベーンドディフューザ。
【請求項3】
前記可動ベーン部品を前記ディフューザ流路内に出没動作させる部品駆動部を備え、
前記部品駆動部は、
前記ベーンの背面側に順に前記ディフューザ流路内の前記可動ベーン部品を加えて前記ベーンの厚みを増加させ、
前記ベーンの背面側から順に前記ディフューザ流路内の前記可動ベーン部品を減じて前記ベーンの厚みを減少させる、請求項1に記載のベーンドディフューザ。
【請求項4】
前記可動ベーン部品を前記ディフューザ流路内に出没動作させる部品駆動部を備え、
前記部品駆動部は、
前記ベーンの腹面側に順に前記ディフューザ流路内の前記可動ベーン部品を加えて前記ベーンの厚みを増加させ、
前記ベーンの腹面側から順に前記ディフューザ流路内の前記可動ベーン部品を減じて前記ベーンの厚みを減少させる、請求項1に記載のベーンドディフューザ。
【請求項5】
前記可動ベーン部品を前記ディフューザ流路内に出没動作させる部品駆動部を備え、
前記部品駆動部は、
前記ディフューザ流路にガスを送るインペラの動力源のロータの回転数に基づいて前記可動ベーン部品の出没を制御する、請求項1に記載のベーンドディフューザ。
【請求項6】
前記可動ベーン部品を前記ディフューザ流路内に出没動作させる部品駆動部を備え、
前記部品駆動部は、
前記圧縮機からのガスを使用する下流側のシステムに関する情報に基づいて前記可動ベーン部品の出没を制御する、請求項1に記載のベーンドディフューザ。
【請求項7】
前記可動ベーン部品を前記ディフューザ流路内に出没動作させる部品駆動部を備え、
前記部品駆動部は、
前記圧縮機における流量と圧力比との情報に基づいて前記可動ベーン部品の出没を制御する、請求項1に記載のベーンドディフューザ。
【請求項8】
前記可動ベーン部品を前記ディフューザ流路内に出没動作させる部品駆動部を備え、
前記部品駆動部は、
複数の前記可動ベーン部品の各々に1つずつ設けられ当該可動ベーン部品の出没方向に対して傾斜する傾斜面と、各前記可動ベーン部品の各傾斜面に順に干渉するように動作するカムと、を有し、
前記傾斜面が前記カムに押されることで前記可動ベーン部品が前記ディフューザ流路内に押出される、請求項1に記載のベーンドディフューザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーンドディフューザに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、下記特許文献1に記載のベーンドディフューザが知られている。特許文献1では、ディフューザ壁からディフューザ流路内に出没可能なベーンをベーンドディフューザに設けることで、低回転域から高回転域まで広い領域で圧縮機の性能向上を図ることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-184795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の圧縮機においては、更に作動範囲を拡大することが望まれている。本発明は、圧縮機の広い作動範囲が得られるベーンドディフューザを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の要旨は次の通りである。
【0006】
〔1〕圧縮機のディフューザ流路内で周方向に配列される複数のベーンを備えるベーンドディフューザであって、各前記ベーンは、当該ベーンの厚み方向に重ねられた複数のベーン部品を有し、複数の前記ベーン部品には、ディフューザ壁からディフューザ流路内に出没する動作が可能である可動ベーン部品が含まれている、ベーンドディフューザ。
【0007】
〔2〕前記ベーン部品には、前記ディフューザ流路内に固定された固定ベーン部品が含まれている、〔1〕に記載のベーンドディフューザ。
【0008】
〔3〕前記可動ベーン部品を前記ディフューザ流路内に出没動作させる部品駆動部を備え、前記部品駆動部は、前記ベーンの背面側に順に前記ディフューザ流路内の前記可動ベーン部品を加えて前記ベーンの厚みを増加させ、前記ベーンの背面側から順に前記ディフューザ流路内の前記可動ベーン部品を減じて前記ベーンの厚みを減少させる、〔1〕又は〔2〕に記載のベーンドディフューザ。
【0009】
〔4〕前記可動ベーン部品を前記ディフューザ流路内に出没動作させる部品駆動部を備え、前記部品駆動部は、前記ベーンの腹面側に順に前記ディフューザ流路内の前記可動ベーン部品を加えて前記ベーンの厚みを増加させ、前記ベーンの腹面側から順に前記ディフューザ流路内の前記可動ベーン部品を減じて前記ベーンの厚みを減少させる、〔1〕又は〔2〕の何れかに記載のベーンドディフューザ。
【0010】
〔5〕前記可動ベーン部品を前記ディフューザ流路内に出没動作させる部品駆動部を備え、前記部品駆動部は、前記ディフューザ流路にガスを送るインペラの動力源のロータの回転数に基づいて前記可動ベーン部品の出没を制御する、〔1〕~〔4〕の何れかに記載のベーンドディフューザ。
【0011】
〔6〕前記可動ベーン部品を前記ディフューザ流路内に出没動作させる部品駆動部を備え、前記部品駆動部は、前記圧縮機からのガスを使用する下流側のシステムに関する情報に基づいて前記可動ベーン部品の出没を制御する、〔1〕~〔5〕の何れかに記載のベーンドディフューザ。
【0012】
〔7〕前記可動ベーン部品を前記ディフューザ流路内に出没動作させる部品駆動部を備え、前記部品駆動部は、前記圧縮機における流量と圧力比との情報に基づいて前記可動ベーン部品の出没を制御する、〔1〕~〔6〕の何れかに記載のベーンドディフューザ。
【0013】
〔8〕前記可動ベーン部品を前記ディフューザ流路内に出没動作させる部品駆動部を備え、前記部品駆動部は、複数の前記可動ベーン部品の各々に1つずつ設けられ当該可動ベーン部品の出没方向に対して傾斜する傾斜面と、各前記可動ベーン部品の各傾斜面に順に干渉するように動作するカムと、を有し、前記傾斜面が前記カムに押されることで前記可動ベーン部品が前記ディフューザ流路内に押出される、〔1〕~〔7〕の何れかに記載のベーンドディフューザ。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、圧縮機の広い作動範囲が得られるベーンドディフューザを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態のベーンドディフューザを備える遠心圧縮機の断面図である。
図2】軸方向から見たベーンドディフューザの一部を拡大して示す図である。
図3】(a)~(d)は、ベーン部品駆動機構の動作を模式的に示す断面図である。
図4】(a)~(d)は、図3に続いて、ベーン部品駆動機構の動作を模式的に示す断面図である。
図5】(a)は、ベーンドディフューザの一部を拡大して示す図であり、(b)は、変形例に係るベーンドディフューザの一部を拡大して示す図である。
図6】遠心圧縮機と、この下流側の所定のシステムとを示す図である。
図7】遠心圧縮機の作動状態を示すPQマップの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るベーンドディフューザの実施形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本実施形態のベーンドディフューザ13を備える遠心圧縮機1の断面図である。図2は軸方向から見たベーンドディフューザ13の一部を拡大して示す図である。以下の説明において、断りなく「軸方向」、「径方向」、「周方向」というときには、それぞれ、遠心圧縮機1のインペラ5の回転軸線方向、回転径方向、回転周方向を意味するものとする。
【0018】
遠心圧縮機1は、ハウジング3と、ハウジング3に収納された遠心圧縮機インペラ5(以下「インペラ5」という)と、を備えている。ハウジング3は、インペラ5の周囲において周方向に延びるスクロール7を有している。また、ハウジング3は、インペラ5とスクロール7との間に設けられたベーンドディフューザ13を有している。ベーンドディフューザ13は複数のベーン20を有しており、複数のベーン20は図2に示されるように周方向に配列されている。
【0019】
ハウジング3には、吸入口9及び吐出口11が設けられている。インペラ5は、例えばモータ等の動力源15から駆動力を受けて、回転軸線H周りに回転する。インペラ5が回転すると、インペラ5は、吸入口9を通じて外部の空気を吸入する。この空気が、インペラ5によって径方向に吐き出される。インペラ5から吐き出された空気は、ベーンドディフューザ13及びスクロール7を通過して圧縮され吐出口11から吐出される。なお、遠心圧縮機1は過給機のコンプレッサであってもよい。この場合、当該過給機のタービンが動力源15である。
【0020】
ベーンドディフューザ13について更に詳細に説明する。ベーンドディフューザ13は、インペラ5からスクロール7までの間のガスの流路であるディフューザ流路17と、ディフューザ流路17内に複数配置された前述のベーン20と、を備えている。ベーン20は、動力源15側のディフューザ壁19からディフューザ流路17内に突出している。ベーン20は、軸方向から見て(図2のように見て)厚み方向に3つに分割されており、すなわち厚み方向に重ねられた3つのベーン部品21,22,23(可動ベーン部品)でベーン20が構成されている。ベーン部品21~23は、ベーン20の翼厚み方向に隙間なく重ねられており、ベーン部品21がベーン20の腹面側に位置し、ベーン部品23がベーン20の背面側に位置し、ベーン部品22はベーン部品21とベーン部品23との間に挟まれて位置する。
【0021】
ベーン部品21,22,23のそれぞれの径方向内側の縁部21e,22e,23eの位置を比較すると、縁部21eは最も径方向内側に位置し、縁部23eは最も径方向外側に位置し、縁部22eはその間に位置する。従って、ベーン20の背面側には、ベーン部品21~23同士の継ぎ目が現れる。
【0022】
ベーン部品21~23は、それぞれ別々に、軸方向(図2の紙面直交方向)に移動可能であり、ディフューザ壁19からディフューザ流路17内に出没する動作が可能である。この構成により、3つのベーン部品21~23のうちディフューザ流路17内に突出している枚数によって、ベーン20の厚みを変更することが可能である。
【0023】
このようなベーン部品21~23の動作を可能にするために、ベーンドディフューザ13は、ベーン部品駆動部27を備えている。ベーン部品駆動部27は、ディフューザ流路17から見てディフューザ壁19の奥のスペースに設けられたベーン部品駆動機構29と、ベーン部品駆動機構29の動作を制御するベーン制御部31と、を備えている。
【0024】
図3(a)は、ベーン部品駆動機構29近傍を示す模式的な断面図であり、図3(b)は、これを軸方向から見た模式的な平面図である。ベーン部品駆動機構29は、軸方向に延びる回動軸周りに回動可能な楕円形のカム33を備えている。ベーン部品21のうち、ディフューザ流路17から見てディフューザ壁19の奥側には、三角形状の部位が存在している。そして、この三角形状の部位には、ベーン部品21の出没方向(軸方向)に対して傾斜する傾斜面21aが形成されている。同様に、ベーン部品22には傾斜面22aが形成され、ベーン部品23には傾斜面23aが形成されている。また、各ベーン部品21~23は、それぞれ、バネ35によってディフューザ壁19の奥側に向けて付勢されている。なお、図3(a)等においては、ベーン部品23を付勢するバネ35のみが見えているが、ベーン部品21,22も同様のバネによって付勢されている。
【0025】
上記のカム33が回動すると、図3(c),(d)に示されるように、カム33は傾斜面21aに干渉し、傾斜面21aはディフューザ壁19と平行な方向にカム33から押される。このようにカム33から傾斜面21aに付与される力により、ベーン部品21は軸方向に押されディフューザ流路17側に押出される。そしてベーン部品21は、ディフューザ壁19からディフューザ流路17内に突出した状態となる。
【0026】
更にカム33が回動すると、図4(a),(b)に示されるように、カム33は傾斜面22aにも干渉する。これにより、ベーン部品21と同様にしてベーン部品22もディフューザ流路17側に押出され突出する。そして、2つのベーン部品21,22がディフューザ壁19からディフューザ流路17内に突出した状態となる。
【0027】
更にカム33が回動すると、図4(c),(d)に示されるように、カム33は傾斜面23aにも干渉する。これにより、ベーン部品23もディフューザ流路17側に押出され突出する。そして、3つのベーン部品21~23がディフューザ壁19からディフューザ流路17内に突出した状態となる。また、この状態からカム33が逆向きに回動すれば、カム33と傾斜面23aとの干渉は解消され、ベーン部品23はバネ35の付勢力によってディフューザ壁19内に埋没した状態に戻る。同様にして、更にカム33が逆向きの回動をすることで、ベーン部品22とベーン部品21とが順にディフューザ壁19内に埋没した状態に戻る。
【0028】
上述のようなベーン部品駆動機構29によれば、ディフューザ流路17内においては、ベーン20の腹面側のベーン部品21側から順に突出し、ベーン20の背面側のベーン部品23側から順に埋没する。換言すれば、ディフューザ流路17内では、ベーン部品21,22,23がベーン20の背面側に順に加えられてベーン20の厚みが増加し、また逆に、ベーン20の背面側から順にベーン部品23,22,21が減らされてベーン20の厚みが減少する。
【0029】
上述のようなベーン部品駆動機構29によって、ベーン20を下記の4つの状態(状態S0~状態S3)に切替えることができる。
〔状態S0〕ディフューザ流路17内にベーン部品21~23の何れも突出していない状態
〔状態S1〕ディフューザ流路17内にベーン部品21が突出している状態
〔状態S2〕ディフューザ流路17内にベーン部品21とベーン部品22とが突出している状態
〔状態S3〕ディフューザ流路17内にベーン部品21,22,23がすべて突出している状態
このように、ベーン制御部31は、カム33の回動位相を変更することにより、各ベーン部品21~23の出没状態を変更し、ベーン20の状態を変更することができる。
【0030】
状態S0は、ディフューザ流路17内にベーン20が存在しない状態である。状態S1は、ベーン部品21の1枚分の厚みのベーン20がディフューザ流路17内に存在する状態である。状態S2は、ベーン部品21とベーン部品22とを合わせた厚みのベーン20がディフューザ流路17内に存在する状態である。状態S3は、ベーン部品21とベーン部品22とベーン部品23とを合わせた厚みのベーン20がディフューザ流路17内に存在する状態である。
【0031】
上記のように、ベーン20の厚みが可変であるので、図5(a)に示されるようにディフューザ流路17のスロート幅を変更することができる。状態S1におけるディフューザ流路17のスロート幅は図中のT1で示され、状態S2におけるディフューザ流路17のスロート幅は図中のT2で示され、状態S3におけるディフューザ流路17のスロート幅は図中のT3で、で示される。
【0032】
続いて、この遠心圧縮機1における、ベーン20の状態(状態S0~状態S3)の制御について説明する。ベーン20を状態S0~状態S3のいずれの状態とするかは、遠心圧縮機1の回転数R、流量Q、及び圧力比Pに基づいて決定される。ベーン制御部31は、遠心圧縮機1の回転数R、流量Q、及び圧力比Pを取得し、取得されたこれらの値に基づく演算を行なうことでベーン20の状態を決定し、カム33を駆動させてベーン20の状態を切替える。
【0033】
上記の回転数Rは、インペラ5の回転数が実測されて取得されてもよい。この場合、所定の計測装置で実測された回転数Rがベーン制御部31に送信される。または、動力源15(図1)がモータである場合には、当該モータのロータ15a(図1)の回転数に基づいて上記回転数Rが取得されてもよい。またこの場合、モータ制御部16からモータに付与される回転数指令値に基づいて上記回転数Rが取得されてもよい。この場合、モータ制御部16はベーン制御部31に上記回転数指令値の情報を送信する。当該モータとインペラ5との間に介在するギアのギア比等が既知であれば、ベーン制御部31は、ロータ15aの回転数に基づいてインペラ5の回転数Rが取得可能である。
【0034】
例えば図6に示されるように、遠心圧縮機1による圧縮ガスが下流側の所定のシステム41に導入され使用されるとき、上記の流量Q及び圧力比Pは、当該システム41へのガス導入弁41vの開度に基づいて取得されてもよい。この場合の具体的な手法として、回転数Rごとに、ガス導入弁41vの開度と、流量Q及び圧力比Pと、の相関関係が事前の試験等により予め求められベーン制御部31に記憶される。そして、ベーン制御部31は、システム41からガス導入弁41vの開度の情報を取得し、事前に記憶した上記の相関関係に照らして、流量Q及び圧力比Pを取得することができる。すなわち、回転数Rと、ガス導入弁41vの開度と、が判明すれば、上記の相関関係に基づいて流量Q及び圧力比Pが判明する。あるいは、流量Qと、圧力比Pと、は実測されて取得されてもよい。この場合、それぞれ所定の計測装置で実測された流量Qと、圧力比Pと、がベーン制御部31に送信される。
【0035】
ベーン制御部31は、上記のように取得された回転数R、流量Q、及び圧力比Pに基づいて、遠心圧縮機1の作動状態が図7に例示されるPQマップ上のどの領域にあるかに基づき、実現すべきベーン20の状態を決定する。
【0036】
例えば、遠心圧縮機1の作動状態が図7のPQマップ上の領域Aにある場合には、ベーン20の状態は状態S0又は状態S1と決定される。同様に、遠心圧縮機1の作動状態が領域Bにある場合には、ベーン20の状態は状態S2と決定され、遠心圧縮機1の作動状態が領域Cにある場合には、ベーン20の状態は状態S3と決定される。ベーン制御部31は、上記の決定に基づき、カム33を駆動させて当該ベーン20の状態を実現させる。
【0037】
上述したベーンドディフューザ13による作用効果について説明する。ベーンドディフューザ13では、ベーン20の状態を前述のように可変にすることで、ディフューザ流路17のスロート幅を遠心圧縮機1の流量Q、及び圧力比Pに対応する適切な幅に設定することができる。またこのとき、ベーン20の枚数は変化しないので、回避すべきインペラ5の共振回転数にも変化はなく、インペラ5の回転数に関して特別な処理は必要ない。
【0038】
具体的には、流量が比較的大きい領域Aでは、状態S1として比較的広いスロート幅T1が設定される、或いは、状態S0としてディフューザ流路17にベーン20が存在しないように設定される。これにより、遠心圧縮機1のチョークの発生が抑制される。流量が比較的小さい領域Cでは、状態S3として比較的狭いスロート幅T3が設定され、遠心圧縮機1のサージの発生が抑制される。そして、流量が中程度である領域Bでは、状態S2として中程度のスロート幅T3が設定される。このように、ベーン20のスロート幅を流量Q、及び圧力比Pに対応させて可変にすることで遠心圧縮機1のチョークの発生やサージの発生が抑制されるので、当該遠心圧縮機1の作動領域を拡大することができる。
【0039】
また、ベーンドディフューザ13では、ベーン部品21,22,23がベーン20の背面側に順に加えられてベーン20の厚みが増加し、また逆に、ベーン20の背面側から順にベーン部品23,22,21が減らされてベーン20の厚みが減少する。この場合、状態S1~状態S3の何れの状態においてもベーン20のリーディングエッジの位置は変動せず、当該リーディングエッジは常にベーン部品21の縁部21e(図2)に対応する。ここで一般的に、ベーン20から回転中のインペラ5に付与される励振力は、ベーン20のリーディングエッジの径方向位置に依存し、リーディングエッジの位置が径方向内側であるほど強い(すなわち、インペラ5に近いほど強い)。よって、遠心圧縮機1の設計においては、状態S1~S3の何れにおいても比較的強い励振力が発生する前提で、インペラ5及びベーン部品21~23の強度等を設計すればよく、遠心圧縮機1の設計がシンプル化される。
【0040】
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して変形例を構成することも可能である。各実施形態等の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0041】
例えば、ベーン20を構成するベーン部品21~23の、必ずしもすべてが、ディフューザ壁19からディフューザ流路17内に出没可能である必要はない。例えば、ベーン部品21(固定ベーン部品)はディフューザ流路17内に固定され、ベーン部品22,23(可動ベーン部品)のみがディフューザ流路17内に出没可能であってもよい。
【0042】
また、上述の実施形態では、ベーンドディフューザ13のハブ側のディフューザ壁19からベーン部品21~23が出没するが、シュラウド側のディフューザ壁からベーン部品21~23が出没するようにしてもよい。この場合、ディフューザ流路17から見てシュラウド側のディフューザ壁の奥側にベーン部品駆動機構29が設けられればよい。
【0043】
また、ベーン部品21~23の出没順について、上述の実施形態では、ベーン20の背面側に順にディフューザ流路17内のベーン部品21,22,23を加えてベーン20の厚みを増加させ、ベーン20の背面側から順にディフューザ流路17内のベーン部品23,22,21を減じてベーン20の厚みを減少させるようにしているが、この出没順を逆にしてもよい。すなわち、ベーン20の腹面側に順にディフューザ流路17内のベーン部品23,22,21を加えてベーン20の厚みを増加させ、ベーン20の腹面側から順にディフューザ流路17内のベーン部品21,22,23を減じてベーン20の厚みを減少させるようにしてもよい。
【0044】
この場合、ベーン20は下記の4つの状態(状態S0’~状態S3’)に切替えられる。
〔状態S0’〕ディフューザ流路17内にベーン部品21~23の何れも突出していない状態
〔状態S1’〕ディフューザ流路17内にベーン部品23が突出している状態
〔状態S2’〕ディフューザ流路17内にベーン部品23とベーン部品22とが突出している状態
〔状態S3’〕ディフューザ流路17内にベーン部品23,22,21がすべて突出している状態
【0045】
また、図5(b)に示されるように、状態S1’におけるディフューザ流路17のスロート幅は図中のT1’で、状態S2’におけるディフューザ流路17のスロート幅は図中のT2’で、状態S3’におけるディフューザ流路17のスロート幅は図中のT3’で、示される。
【0046】
また、この場合、遠心圧縮機1の作動状態が図7のPQマップ上の領域Aにある場合には、ベーン20の状態は状態S0又は状態S1’と決定される。同様に、遠心圧縮機1の作動状態が領域Bにある場合には、ベーン20の状態は状態S2’と決定され、遠心圧縮機1の作動状態が領域Cにある場合には、ベーン20の状態は状態S3’と決定される。
【0047】
このようなベーン部品21~23の出没順によれば、状態S1’では、ベーン部品23の縁部23e(図2)がベーン20のリーディングエッジになる。すなわち、流量が比較的大きい領域Aに対応するときに、ベーン20のリーディングエッジはインペラ5から最も離れることになる。従って、比較的大流量の領域Aにおいて、ベーン20から回転中のインペラ5に付与される励振力を低減することができる。なお、この場合、状態S2’では、ベーン部品22の縁部22e(図2)がベーン20のリーディングエッジになり、状態S3’では、ベーン部品21の縁部21e(図2)がベーン20のリーディングエッジになる。
【0048】
本発明の要旨は次の通りである。
【0049】
〔1〕圧縮機のディフューザ流路内で周方向に配列される複数のベーンを備えるベーンドディフューザであって、各前記ベーンは、当該ベーンの厚み方向に重ねられた複数のベーン部品を有し、複数の前記ベーン部品には、ディフューザ壁からディフューザ流路内に出没する動作が可能である可動ベーン部品が含まれている、ベーンドディフューザ。
【0050】
〔2〕前記ベーン部品には、前記ディフューザ流路内に固定された固定ベーン部品が含まれている、〔1〕に記載のベーンドディフューザ。
【0051】
〔3〕前記可動ベーン部品を前記ディフューザ流路内に出没動作させる部品駆動部を備え、前記部品駆動部は、前記ベーンの背面側に順に前記ディフューザ流路内の前記可動ベーン部品を加えて前記ベーンの厚みを増加させ、前記ベーンの背面側から順に前記ディフューザ流路内の前記可動ベーン部品を減じて前記ベーンの厚みを減少させる、〔1〕又は〔2〕に記載のベーンドディフューザ。
【0052】
〔4〕前記可動ベーン部品を前記ディフューザ流路内に出没動作させる部品駆動部を備え、前記部品駆動部は、前記ベーンの腹面側に順に前記ディフューザ流路内の前記可動ベーン部品を加えて前記ベーンの厚みを増加させ、前記ベーンの腹面側から順に前記ディフューザ流路内の前記可動ベーン部品を減じて前記ベーンの厚みを減少させる、〔1〕又は〔2〕の何れかに記載のベーンドディフューザ。
【0053】
〔5〕前記可動ベーン部品を前記ディフューザ流路内に出没動作させる部品駆動部を備え、前記部品駆動部は、前記ディフューザ流路にガスを送るインペラの動力源のロータの回転数に基づいて前記可動ベーン部品の出没を制御する、〔1〕~〔4〕の何れかに記載のベーンドディフューザ。
【0054】
〔6〕前記可動ベーン部品を前記ディフューザ流路内に出没動作させる部品駆動部を備え、前記部品駆動部は、前記圧縮機からのガスを使用する下流側のシステムに関する情報に基づいて前記可動ベーン部品の出没を制御する、〔1〕~〔5〕の何れかに記載のベーンドディフューザ。
【0055】
〔7〕前記可動ベーン部品を前記ディフューザ流路内に出没動作させる部品駆動部を備え、前記部品駆動部は、前記圧縮機における流量と圧力比との情報に基づいて前記可動ベーン部品の出没を制御する、〔1〕~〔6〕の何れかに記載のベーンドディフューザ。
【0056】
〔8〕前記可動ベーン部品を前記ディフューザ流路内に出没動作させる部品駆動部を備え、前記部品駆動部は、複数の前記可動ベーン部品の各々に1つずつ設けられ当該可動ベーン部品の出没方向に対して傾斜する傾斜面と、各前記可動ベーン部品の各傾斜面に順に干渉するように動作するカムと、を有し、前記傾斜面が前記カムに押されることで前記可動ベーン部品が前記ディフューザ流路内に押出される、〔1〕~〔7〕の何れかに記載のベーンドディフューザ。
【符号の説明】
【0057】
1 遠心圧縮機(圧縮機)
13 ベーンドディフューザ
15 動力源
15a ロータ
17 ディフューザ流路
19 ディフューザ壁
20 ベーン
21 ベーン部品(可動ベーン部品、固定ベーン部品)
22 ベーン部品(可動ベーン部品)
23 ベーン部品(可動ベーン部品)
21a,22a,23a 傾斜面
27 ベーン部品駆動部(部品駆動部)
33 カム
41 システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7