(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012200
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】レタス植物
(51)【国際特許分類】
A01H 6/14 20180101AFI20240118BHJP
A01H 5/10 20180101ALI20240118BHJP
A01H 5/12 20180101ALI20240118BHJP
【FI】
A01H6/14
A01H5/10
A01H5/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130171
(22)【出願日】2023-08-09
(62)【分割の表示】P 2022114255の分割
【原出願日】2022-07-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 譲渡による公開: 譲渡日:令和4年5月18日 譲渡場所:有限会社小山種苗(長野県小諸市荒町2丁目1-17) 譲渡による公開: 譲渡日:令和4年5月13日 譲渡場所:JA松本ハイランド朝日支所(長野県東筑摩郡朝日村大字小野沢250) 譲渡による公開: 譲渡日:令和4年5月27日 譲渡場所:JA洗馬(長野県塩尻市大字洗馬2720-3) 譲渡による公開: 譲渡日:令和4年5月19日 譲渡場所:平林修一(長野県塩尻市宗賀779) 譲渡による公開: 譲渡日:令和4年5月16日 譲渡場所:JA長野八ヶ岳川上支所(長野県南佐久郡川上村御所平930) 譲渡による公開: 譲渡日:令和4年5月16日 譲渡場所:高見沢覚(長野県南佐久郡川上村御所平676) 譲渡による公開: 譲渡日:令和4年5月16日 譲渡場所:伊藤淳気(長野県南佐久郡川上村居倉118) 譲渡による公開: 譲渡日:令和4年5月16日 譲渡場所:JA川上そ菜販売(長野県南佐久郡川上村大字秋山12-58) 譲渡による公開: 譲渡日:令和4年5月16日 譲渡場所:中嶋定利(長野県南佐久郡川上村大深山423-2) 譲渡による公開: 譲渡日:令和4年5月12日 譲渡場所:JA川上物産(長野県南佐久郡川上村大字樋澤1196-1) 譲渡による公開: 譲渡日:令和4年5月16日 譲渡場所:中島寛(長野県南佐久郡川上村御所平818-1) 譲渡による公開: 譲渡日:令和4年5月16日 譲渡場所:川上耕志(長野県南佐久郡川上村梓山617-1) 譲渡による公開: 譲渡日:令和4年5月12日 譲渡場所:JA長野八ヶ岳南牧支所(長野県南佐久郡南牧村海ノ口1100-1) 譲渡による公開: 譲渡日:令和4年5月16日 譲渡場所:JA佐久浅間あさま東部営農センター伍賀事務所(長野県北佐久郡御代田町大字草越1207-23) 譲渡による公開: 譲渡日:令和4年5月16日 譲渡場所:JA佐久浅間あさま西部営農センター北大井事務所(長野県小諸市大字柏木546-8) 譲渡による公開: 譲渡日:令和4年5月19日 譲渡場所:株式会社野菜くらぶ(群馬県利根郡昭和村赤城原845-1) 譲渡による公開: 譲渡日:令和4年6月28日 譲渡場所:稲葉正一(茨城県結城市江川新宿2046-4-1)
(71)【出願人】
【識別番号】390028130
【氏名又は名称】タキイ種苗株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡田 有平
(72)【発明者】
【氏名】近藤 英郎
(72)【発明者】
【氏名】石田 了
【テーマコード(参考)】
2B030
【Fターム(参考)】
2B030AA02
2B030AB03
2B030AD05
2B030CA01
2B030CB02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】新たなレタス品種を提供する。
【解決手段】本発明のレタス植物の種子は、受託番号FERM P-22453または受託番号FERM P-22454で特定されるレタス植物またはその後代系統で寄託されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受託番号FERM P-22453または受託番号FERM P-22454で寄託されている、レタス植物の種子。
【請求項2】
受託番号FERM P-22453または受託番号FERM P-22454で寄託されている種子から生育された、レタス植物。
【請求項3】
請求項2記載のレタス植物の後代系統を含み、
前記後代系統は、下記(1)、(2)および/または(3)の形質を有する、レタス植物:
(1)根腐病菌レース1に対する抵抗性が「強」である;
(2)根腐病菌レース2抵抗性が「強」である;
(3)べと病レースBl:27EU抵抗性が「有」である。
【請求項4】
請求項3記載のレタス植物の後代系統を含み、
前記レタス植物は、受託番号FERM P-22453で寄託されている種子から生育されたレタス植物であり、
前記後代系統は、下記(4)~(6)および(7)の形質、または下記(8)~(10)および(11)の形質を有する、レタス植物:
(4)抽だい始期が「晩」である;
(5)株の幅が「やや中」である;
(6)球の大きさが「やや大」である;
(7)球のしまりが「固い」である;
(8)葉の周縁部の波打ちが「中」である;
(9)葉の周縁部の切れ込みの深さが「浅」である;
(10)葉の周縁部の切込みの粗密が「やや中」である;
(11)葉の凹凸が「やや中」である。
【請求項5】
請求項3記載のレタス植物の後代系統を含み、
前記レタス植物は、受託番号FERM P-22454で寄託されている種子から生育されたレタス植物であり、
前記後代系統は、下記(4)~(6)および(7)の形質、または下記(8)~(10)および(11)の形質を有する、レタス植物:
(4)抽だい始期が「晩」である;
(5)株の幅が「やや中」である;
(6)球の大きさが「大」である;
(7)球のしまりが「中」である;
(8)葉の周縁部の波打ちが「やや強」である;
(9)葉の周縁部の切れ込みの深さが「浅」である;
(10)葉の周縁部の切込みの粗密が「やや中」である;
(11)葉の凹凸が「やや強」である。
【請求項6】
請求項2~5のいずれか一項に記載のレタス植物の雑種第1代系統を含む、レタス植物またはその部分。
【請求項7】
請求項2~5のいずれか一項に記載のレタス植物の部分。
【請求項8】
請求項2~5のいずれか一項に記載のレタス植物を自殖させる自殖工程を含む、レタス植物の製造方法。
【請求項9】
請求項2~5のいずれか一項に記載のレタス植物と、他のレタス植物とを交雑する交雑工程を含む、レタス植物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レタス植物に関する。
【背景技術】
【0002】
レタス植物は、冷涼な気候を好む植物である。近年、連作および異常気象による高温や多湿が原因と考えられる根腐病やべと病等の病害並びに生育不良が発生し、生産者は安定生産が可能な品種を求めている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】M. FUJINAGA, ”Studies on physiological races and phylogenetic analysis of lettuce root rot pathogen, Fusarium oxysporum f. sp. Lactucae”, Journal of General Plant Pathology volume 71, page457 (2005)
【非特許文献2】T. SHIMIZU et.al., “Development Trend of Diseases on Lettuce (Lactuca sativa)of Organic Cultivation in Highlands of Nagano Prefecture and Their Control”, Annual report of the Kanto-Tosan Plant Protection Society 64:2017.12 p.41-46
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、新たなレタス植物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明のレタス植物の種子は、受託番号FERM P-22453または受託番号FERM P-22454で特定されるレタス植物またはその後代系統で寄託されている。
【0006】
本発明のレタス植物は、受託番号FERM P-22453または受託番号FERM P-22454で特定されるレタス植物を含む。
【0007】
本発明のレタス植物の製造方法は、前記本発明のレタス植物を自殖させる自殖工程を含む。
【0008】
本発明のレタス植物の製造方法は、前記本発明のレタス植物と、他のレタス植物とを交雑する交雑工程を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新たなレタス植物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、レタス植物の株の葉上部の重なり、葉の姿勢、および葉の裂片の数の例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、レタス植物の葉の形の例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、レタス植物の葉の先端部の形、葉の縦断面、および葉の凹凸の大小の例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、レタス植物の葉の周縁の切れ込みの型、葉の周縁の切れ込みの深さ、および葉脈の型の例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、レタス植物の球の大きさおよび球の縦断面の形の例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、レタス植物の腋芽の発生および帯化の発生の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<レタス植物>
本発明のレタス植物は、受託番号FERM P-22453または受託番号FERM P-22454で特定される(寄託されている)レタス植物(以下、まとめて「寄託系統」ともいう。)またはその後代系統を含む。本発明のレタス植物は、受託番号FERM P-22453または受託番号FERM P-22454で特定されるレタス植物またはその後代系統を含むことが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。
【0012】
本発明において、「レタス植物」は、キク科(Asteraceae)アキノノゲシ属(Lactuca)レタス種(L. sativa L.)に分類され、学名をLactuca sativa、和名をチシャ(萵苣・苣、乳草、チサ)とされる植物である。前記レタス植物は、例えば、近縁種または野生種との交雑種でもよい。
【0013】
本発明において、「栽培用レタス植物」、「栽培用レタス品種」、または「栽培用レタス」は、ヒトが栽培し、栽培学的に優れたレタス植物またはその品種、育種系統または栽培品種である。「栽培用レタス植物」、「栽培用レタス品種」、または「栽培用レタス」は、それらの交雑種、または他のレタス種との交雑種であってもよい。
【0014】
本発明において、「植物」は、植物全体を示す植物個体を意味する。
【0015】
本発明において、「植物の部分」は、植物個体の部分を意味する。前記「植物の部分」は、例えば、植物細胞、植物プロトプラスト、植物体を再生可能な植物細胞培養物または組織培養物、植物カルス、植物塊(plant clumps)、植物または植物の部分から単離した植物細胞、葉、花粉、胚、子葉、胚軸、根、根の先端(根端)、葯、雌しべ、花、子房(ovary)、胚珠、種子、果実、茎、苗等があげられる。前記植物個体の部分は、例えば、器官、組織、細胞または栄養繁殖体等があげられ、いずれでもよい。前記器官は、例えば、花弁、花冠、花、葉、種子、果実、茎、根等があげられる。前記組織は、例えば、前記器官の部分である。具体例として、前記植物個体の部分は、小胞子(microspore)、花、花芽、雌しべ、葯、花粉、子房(ovary)、胚、胚珠、胚軸、胚嚢、卵細胞、挿し木、根、根端、幹、茎、葉、葉柄、葉髄、子葉、細胞、分裂組織細胞(meristematic cell)、プロトプラスト、種子等があげられる。前記花粉は、成熟した花粉でも、未成熟の花粉でもよい。前記植物個体の部分は、例えば、植物のいずれの成長段階由来のものでもよく、例えば、発根前、発根後、苗、挿し木、成熟個体等に由来するものがあげられる。前記植物個体の部分は、例えば、一種類の器官、組織および/または細胞でもよいし、二種類以上の器官、組織および/または細胞でもよい。
【0016】
本発明において、「根腐病(レタス根腐病)」は、糸状菌により引き起こされる病害である。前記根腐病の病原菌は、例えば、フザリウム・オキシスポーラム・フォルマ・スペシャリス・ラクツケ(Fusarium oxysporum f. sp. Lactucae)等があげられる。前記「レース」は、病原性が異なる菌系統、より具体的には、抵抗性遺伝子または抵抗性遺伝子座が異なる品種に対して、異なる病原性を示す系統を意味する。
【0017】
本発明において、「べと病(レタスべと病)」は、糸状菌により引き起こされる病害である。前記べと病の病原菌は、例えば、ブレミア・ラクツケ(Bremia
lactucae)等があげられる。前記「レース」は、病原性が異なる菌系統、より具体的には、抵抗性遺伝子または抵抗性遺伝子座が異なる品種に対して、異なる病原性を示す系統を意味する。
【0018】
本発明において、「抵抗性」は、例えば、「耐病性」ともいう。前記抵抗性は、例えば、病原菌の感染による病害の発生および進行に対する阻害能または抑制能を意味し、具体的に、例えば、病害の未発生、発生した病害の進行の停止、および、発生した病害の進行の抑制(「阻害」ともいう。)等のいずれの意味でもよい。
【0019】
本発明において、前記「根腐病抵抗性」は、後述の形質番号59および60の測定方法に準じて、評価できる。前記「べと病抵抗性」は、後述の形質番号52の測定方法に準じて、評価できる。
【0020】
<寄託系統>
本発明のレタス植物は、一例として、受託番号FERM P-22453または受託番号FERM P-22454で特定されるレタス植物またはその後代系統があげられる。以下、受託番号FERM P-22453または受託番号FERM P-22454をそれぞれ、レタス品種Takii32およびTakii33ともいう。各品種の寄託に関する情報を、以下に示す。
【0021】
(Takii32)
寄託の種類:国内寄託
寄託機関名:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター
あて名:日本国 〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室
受託番号:FERM P-22453
識別のための表示:Takii32
受領日:2022年5月23日
【0022】
(Takii33)
寄託の種類:国内寄託
寄託機関名:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター
あて名:日本国 〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室
受託番号:FERM P-22454
識別のための表示:Takii33
受領日:2022年5月23日
【0023】
前記寄託系統は、例えば、下記表1に記載されている形態学的および生理学的特徴を示す。下記表1において、前記形態学的および生理学的特徴は、2022年における日本における試作に基づいている。下記表1において、前記形態学的および生理学的特徴は、農林水産省(Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries of Japan、MAFF)により発行されている、レタス種の審査基準(2021年6月発行、http://www.hinshu2.maff.go.jp/info/sinsakijun/kijun/1361.pdf)に基づき評価している。また、下記表1において、前記形態学的および生理学的特徴は、後述の基準に基づき評価している。なお、前記形態学的および生理学的特徴は、
図1~6を参照できる。また、前記形態学的および生理学的特徴の評価においては、UPOVにおけるDUS試験ガイドラインを参照してもよい。前記DUS試験ガイドラインとしては、例えば、2017年4月5日発行のガイドライン(https://www.upov.int/edocs/tgdocs/en/tg013.pdf)を参照できる。
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
(形質番号1)
前記「種子の色」は、目視観察により評価できる。前記「種子の色」は、階級1(白、標準品種:オリンピア)、階級2(黄)、階級3(茶、標準品種:シスコVレタス)、および階級4(黒、ロジック)を基準として評価できる。
【0028】
(形質番号2)
前記「子葉の大きさ」は、完全展開時の子葉基部から先端までの長さ×最大幅(cm)を意味し、測定することにより評価できる。前記「子葉の大きさ」は、階級3(小、標準品種:Romance)、階級5(中、標準品種:オリンピア)および階級7(大)を基準として評価できる。
【0029】
(形質番号3)
前記「子葉の形」は、完全展開時期の子葉の形を意味し、目視観察により評価できる。前記「子葉の形」は、階級1(広楕円形、標準品種:カルマー)、階級2(楕円形、標準品種:オリンピア)、および階級3(狭楕円形、標準品種:ブラックシーデッドシムソン)を基準として評価できる。
【0030】
(形質番号4)
前記「株の幅」は、株の最大直径(cm)を意味し、測定により評価できる。前記「株の幅」は、階級1(極小)、階級3(小、標準品種:岡山サラダ菜)、階級5(中、標準品種:オリンピア)、階級7(大)、および階級9(極大)を基準として評価できる
【0031】
(形質番号5)
前記「株の葉上部の重なり」は、株の葉上部の重なり程度(結球程度)を意味し、目視観察により評価できる。前記「株の葉上部の重なり」は、階級1(無又は弱、標準品種:プライズヘッド)、階級2(中、標準品種:コスタリカ4号)、および階級3(強、標準品種:オリンピア、バンガード75)を基準として評価できる。
【0032】
(形質番号7)
前記「葉の姿勢」は、葉の姿勢を意味し、目視観察により評価できる。前記「葉の姿勢」は、階級1(立、標準品種:コスタリカ4号)、階級3(斜上、標準品種:オリンピア、シスコ)、および階級5(水平)を基準として評価できる。
【0033】
(形質番号8)
前記「葉の裂片の数」は、葉の裂片の数を意味し、目視観察により評価できる。前記「葉の裂片の数」は、階級1(無又は極小、標準品種:オリンピア)、階級3(少)、階級5(中)、階級7(多)、および階級9(極多)を基準として評価できる。
【0034】
(形質番号9)
前記「葉の形」は、葉の裂片の数が無又は極少の品種の葉の形(葉の裂片の数が無又は極少の品種に限る)を意味し、目視観察により評価できる。階級1(三角形)、階級2(披針形)、
階級3(扁円形、標準品種オリンピア)、階級4(狭扁円形)、階級5(円形、標準品種:
ホワイトボストン)、階級6(広楕円形)、階級7(楕円形、標準品種コスタリカ4号)、階級8(狭楕円形、標準品種:赤かきちしゃ)、階級9(線形)、階級10(広倒角卵形)、階級11(倒卵形、標準品種:プライズヘッド)および階級12(倒披針形)を基準として評価できる。
【0035】
(形質番号10)
前記「葉の先端部の形」は、葉の裂片の数が無又は極少の品種の葉の先端部の形(葉の裂片の数が無又は極少の品種に限る。)を意味し、目視観察により評価できる。階級1(鋭形、標準品種:セルタス)、階級2(鈍形)、階級3(円形)および階級4(倒心臓形)を基準として評価できる。
【0036】
(形質番号11)
前記「葉の縦断面」は、葉の裂片の数が無又は極少の品種の葉の縦断面の形(葉の裂片の数が無又は極少の品種に限る。)を意味し、目視観察により評価できる。階級1(内曲)、階級3(平)、階級5(外曲)を基準として評価できる。
【0037】
(形質番号13)
前記「葉のアントシアニン着色」は、葉のアントシアニンの着色の強弱を意味し、目視観察により評価できる。前記「葉のアントシアニン着色」は、階級1(無又は極弱)、階級3(弱)、階級5(中、標準品種:プライズヘッド)、階級7(強)および階級9(極強)を基準として評価できる。
【0038】
(形質番号16)
前記「葉の色」は、葉の色を意味し、目視観察により評価できる。前記「葉の色」は、階級1(緑)、階級2(黄緑)および階級(灰緑、標準品種:セルタス)を基準として評価できる。
【0039】
(形質番号17)
前記「葉の緑色の濃淡」は、葉の緑色の濃淡を意味し、目視観察により評価できる。前記「葉の緑色の濃淡」は、階級1(極淡)、階級3(淡)、階級5(中)、階級7(濃)、および階級9(極濃)を基準として評価できる。
【0040】
(形質番号18)
前記「葉の光沢」は、葉の表面の光沢を意味し、目視観察により評価できる。前記「葉の光沢」は、階級1(無又は弱)、階級3(弱、標準品種:岡山サラダ菜)、階級5(中、標準品種:オリンピア)、階級7(強、標準品種:にしなべに)、および階級9(極強)を基準として評価できる。
【0041】
(形質番号19)
前記「葉の長さ」は、葉の長さを意味し、葉を軽く進展して測定することにより評価できる。前記「葉の長さ」は、階級3(短。標準品種:岡山サラダ菜)、階級5(中、標準品種:プライズヘッド)、および階級7(長、標準品種:セルタス)を基準として評価できる。
【0042】
(形質番号20)
前記「葉の幅」は、葉の最大幅を意味し、葉を軽く進展して測定することにより評価できる。前記「葉の幅」は、階級3(狭、標準品種:セルタス)、階級5(中、標準品種:プライズヘッド)、および階級7(広、標準品種:バンガード)を基準として評価できる。
【0043】
(形質番号21)
前記「葉の厚さ」は、葉の厚さを意味し、目視観察により評価できる。前記「葉の厚さ」は、階級1(極薄)、階級2(薄、標準品種:プライズヘッド)、階級3(中、標準品種:オリンピア)、階級4(厚)、および階級5(極厚、フリルアイス)を基準として評価できる。
【0044】
(形質番号22)
前記「葉の凸凹」は葉表面の凹凸(縮み)の強さを意味し、目視観察により評価できる。前記「葉の凸凹」は、階級1(無又は弱、標準品種:シスコ)、階級3(弱、標準品種:オリンピア)、階級5(中、標準品種:アーリーインパルス)、階級7(強、標準品種:にしなべに)、および階級9(極強、標準品種:ブラックシーデッドシムソン)を基準として評価できる。
【0045】
(形質番号23)
前記「葉の凸凹の大きさ」は、葉表面の凹凸(縮み)の大きさを意味し、目視観察により評価できる。前記「葉の凸凹の大きさ」は、階級3(小、標準品種:ブラックシーデッドシムソン)、階級5(中、標準品種:アーリーインパルス)および階級7(大、標準品種:岡山サラダ菜)を基準として評価できる。
【0046】
(形質番号24)
前記「葉の周縁部の波打ち」は、葉の周縁部の波打ちの強弱を意味し、目視観察により評価できる。前記「葉の周縁部の波打ち」は、階級1(無又は極弱)、階級3(弱)、階級5(中、標準品種:みかどグレイト 3204)、階級7(強、標準品種:カルマー、グランドラピッド)および階級9(極強)として評価できる。
【0047】
(形質番号25)
前記「葉の周縁部の切れ込みの型」は、葉の周縁部の切れ込みの型を意味し、目視観察により評価できる。前記「葉の周縁部の切れ込みの型」は、階級1(円鋸歯状)、階級2(規則的な歯状)、階級3(不規則な歯状)、階級4(二重歯状)、および階級5(三重歯状)を基準として評価できる。
【0048】
(形質番号26)
前記「葉の周縁部の切れ込みの深さ」は、葉の周縁の切れ込みの深さを意味し、目視観察により評価できる。前記「葉の周縁部の切れ込みの深さ」は、階級1(無又は極浅)、階級3(浅)、階級5(中、標準品種:オリンピア)、階級7(深)、および階級9(極深)を基準として評価できる。
【0049】
(形質番号27)
前記「葉の周縁部の二次切れ込みの深さ」は、葉の周縁の切れ込みの型が不規則な歯状、二重歯状、三重歯状の品種の葉の周縁の二次切れ込みの深さ(葉の周縁の切れ込みの型が不規則な歯状、二重歯状、三重歯状の品種に限る。)を意味し、目視観察により評価できる。
前記「葉の周縁部の二次切れ込みの深さ」は、階級3(浅)、階級5(中)、および階級7(深)を基準として評価できる。
【0050】
(形質番号28)
前記「葉の周縁部の切れ込みの粗密」は、葉の周縁部の切れ込みの粗密を意味し、目視観察により評価できる。する。前記「葉の周縁部の切れ込みの粗密」は、階級1(極粗)、階級3(粗)、階級5(中)、標準品種:カルマー)、階級7(密)、階級9(極密)を基準として評価できる。
【0051】
(形質番号29)
前記「葉脈の型」は、葉脈の型を意味し、目視観察により評価できる。前記「葉脈の型」は、階級1(非扇状、標準品種:コスタリカ 4 号)、階級2(やや扇状、標準品種:アーリーインパルス)、および階級3(扇状、標準品種:オリンピア、シスコ)を基準として評価できる。
【0052】
(形質番号30)
前記「球の大きさ」は、球の大きさであり、株の葉上部の重なりが中又は強の品種の球の大きさ(球径×球高)(株の葉上部の重なりが中又は強の品種に限る。)を意味し、測定および目視観察により評価できる。階級1(極小)、階級3(小)、階級5(中、標準品種:オリンピア)、階級7(大)、および階級9(極大)を基準として評価できる。
【0053】
(形質番号31)
前記「球の縦断面の形」は、球の縦断面の形であり、株の葉上部の重なりが中又は強の品種の球の縦断面の形(株の葉上部の重なりが中又は強の品種に限る。)を意味し、目視観察により評価できる。階級1(狭楕円形)、階級2(広楕円形)、階級3(円形、標準品種:エクセルヘッドグラス)、階級4(扁円形、標準品種:シスコ)を基準として評価できる。
【0054】
(形質番号32)
前記「球のしまり」は、株の葉上部の重なりが中又は強の品種の球のしまり(株の葉上部の重なりが中又は強の品種に限る。)を意味し、目視観察により評価できる。階級1(極緩い)、階級2(かなり緩い)、階級3(緩い)、階級4(やや緩い)、階級5(中、標準品種:シスコ)、階級6(やや固い)、階級7(固い、標準品種:ファイン)、階級8(かなり固い、標準品種:オリンピア)、および階級9(極固い)を基準として評価できる。
【0055】
(形質番号33)
前記「芯の大きさ」は、芯の最大直径を意味し、測定により評価できる。階級1(極細)、階級2(細)、階級3(中、標準品種:オリンピア)、階級4(太)、および階級5(極太)を基準として評価できる。
【0056】
(形質番号39)
前記「収穫期」は、株の葉上部の重なりが中又は強の品種の収穫の早晩(は種日からの日数)(株の葉上部の重なりが中又は強の品種に限る。)を意味し、測定、目視観察により評価できる。階級1(極早)、階級3(早)、階級5(中、標準品種:オリンピア)、階級7(晩、標準品種:カルマー)および階級9(極晩)を基準として評価できる。
【0057】
(形質番号40)
前記「抽だい始期」は、長日条件下における抽だい開始の早晩(供試株の50%が抽だいした時期、は種日からの日数)を意味し、測定、目視観察により評価できる。前記「抽だい始期」は、階級1(極早、標準品種:グリーンリーフ)、階級3(早、標準品種:プライズヘッド)、階級5(中、標準品種:ゲット、ファルコン)、階級7(晩、標準品種:オリンピア)、および階級9(極晩)を基準として評価できる。
【0058】
(形質番号41)
前記「帯化の発生」は、長日条件下における花茎の帯化の発生程度を意味し、目視観察により評価できる。前記「帯化の発生」は、階級1(無又は弱)、階級3(弱)、階級5(中)、階級(強)、および階級9(極強)を基準として評価できる。
【0059】
(形質番号42)
前記「雄性不稔性の有無」は、雄性不稔性の有無を意味し、目視観察により評価できる。前記「雄性不稔性の有無」は、階級1(無)および階級9(有)を基準として評価できる。
【0060】
(形質番号52)
前記「べと病レースBl:27EU抵抗性」は、べと病レースBl:27EUに対する抵抗性の有無を意味する。前記「べと病レースBl:27EU抵抗性」は、階級1(無、標準品種:Colorado)、階級9(有、標準品種:Balesta, Bedford)を基準として評価できる。なお、べと病レースBI:27EUは、Naktuinbouw(Sotaweg 22, 2371 GD, Roelofarendsveen, The Netherlands; https://www.naktuinbouw.com/)から入手可能である。
【0061】
前記べと病抵抗性は、下記試験方法により確認できる。
(べと病抵抗性の試験方法)
・接種源の維持管理
べと病の病原菌レースは、既知の抵抗性遺伝子を全く持たないか、抵抗性遺伝子の不明な品種で維持する。例えば、Cobham Green、Lobjoits Green Cos、Hilde(DM12)、Olof等である。代替手法として、特定の分離菌株を選択するために、それぞれ抵抗性を有する品種または育成系統を使用する。これらの品種の種子は純度と品質が重要であるため、必要があれば、種子生産者に直接良質な種子の生産を依頼する。
・試験の実施
温度設定:15~18℃
照明:植物がよく生育できるように適切な照明を与える。供試する幼苗は子葉が完全に展開した個体を用い、軟白させてはならない。
接種濃度:最適な胞子濃度は1×105個/ml であるが、少なくとも3×104個/ml は確保する。なお、接種源として幼苗を用いる場合、幼苗への接種は第1本葉が出現する前に行う。
標準品種:検査対象の抵抗性遺伝子を有する標準品種は、チェック用に毎回試験に加える。これらの標準品種はフランスのGEVES(25 rue Georges Morel, CS 90024, 49071 Beaucouze cedex〈Beaucouzeの語末のeはeにアキュート・アクセントを付した文字である〉; https://www.geves.fr/geves/ )かオランダのNaktuinbouwから入手できる。
供試個体数:20個体以上
病徴の判定基準:病徴の判定は次の時期に行う。
第1回目 罹病性の標準品種の胞子形成が最大になったとき(接種後7日程度)
第2回目 第1回目の3~4日後(接種後10日程度)
第3回目 接種後14日
(抵抗性は第1回目の判定時期に葉の壊死が見られることがある。)
なお、詳細は、UPOV テストガイドライン(LETTUCE; TG/13/11 Rev.)を参照することができる。
【0062】
(形質番号59)
前記「根腐病菌レース1抵抗性」は、根腐病菌レース1抵抗性に対する抵抗性の強弱を意味する。前記「根腐病菌レース1抵抗性」は、階級3(弱、標準品種:パトリオット、晩抽レッドファイヤー、ウォルドマンズグリーン)、階級5(中、標準品種:サリナス 88)、および階級7(強、標準品種:コスタリカ4号)を基準として評価できる。
【0063】
前記根腐病菌レース1抵抗性は、下記試験方法により確認できる。
(根腐病菌レース1抵抗性の試験方法)
・接種源の維持管理
病原菌:レタス根腐病菌レース1(Fusarium oxysporum f. sp. lactucae (Fol) Race1)を供試する。
病原性の確認:試験の前に感受性品種を用いて病原性の確認を行う。
・試験の実施
温度:概ね20~28℃の範囲で管理する。
照明:自然光、又は最低15000lx、明期14時間の照明とする。
接種準備:栄養培地(PSA培地等)で培養した供試菌株をふすま培地に接種後、混和しておよそ25℃、10~14日程度培養する。培地全体に十分に菌が増殖したものを接種源とする。
接種方法:滅菌土(又は市販の培養土)に体積比で20:1になるように接種源を加えてよく混合する。これを病土としてポット等に充填し、催芽した種子をは種する。
試験期間:接種(は種)後20~30日目程度に発病程度を観察する。
供試個体数:1品種当たり30個体以上を供試する。
・病徴の判定基準
地上部の発病株率、発病程度を調査し、発病指数を求め判定する。
【0064】
(形質番号60)
前記「根腐病菌レース2抵抗性」は、根腐病菌レース2抵抗性に対する抵抗性の強弱を意味する。前記「根腐病菌レース1抵抗性」は、階級3(弱、標準品種:パトリオット、サリナス 88、コスタリカ 4号)、階級5(中)、および階級7(強、標準品種:ウォルドマンズグリーン、晩抽レッドファイヤー)を基準として評価できる。
【0065】
前記根腐病菌レース2抵抗性は、下記試験方法により確認できる。
(根腐病菌レース2抵抗性の試験方法)
・接種源の維持管理
病原菌:レタス根腐病菌レース2(Fusarium oxysporum f. sp. lactucae Race2)を供試する。
病原性の確認:試験の前に感受性品種を用いて病原性の確認を行う。
・試験の実施
温度:概ね20~28℃の範囲で管理する。
照明:自然光、又は最低15000lx、明期14時間の照明とする。
接種準備:栄養培地(PSA培地等)で培養した供試菌株をふすま培地に接種後、混和しておよそ25℃、10~14日程度培養する。培地全体に十分に菌が増殖したものを接種源とする。
接種方法:滅菌土(又は市販の培養土)に体積比で20:1になるように接種源を加えてよく混合する。これを病土としてポット等に充填し、催芽した種子をは種する。
試験期間:接種(は種)後20~30日目程度に発病程度を観察する。
供試個体数:1品種当たり20個体以上を供試する。
・病徴の判定基準
地上部の発病株率、発病程度を調査し、発病指数を求め判定する。
【0066】
本発明において、「寄託系統の本質的にすべての生理学的および形態学的特徴」を有する植物は、同一環境で生育した場合に、対象の植物が由来する寄託系統(対応する寄託系統)の主要な形質を有する植物であることを意味する。前記主要な形質は、下記(1)~(11)の形質、すなわち、前記表1における形質番号59、60、52、40、4、30、32、24、26、28、および22である。前記主要な形質は、好ましくは、前記表1において、形質番号59、60および52の形質、すなわち、下記(1)~(3)の形質があげられる。また、前記主要な形質は、好ましくは、前記表1において、形質番号40、4、30および32の形質、すなわち、下記(4)~(7)の形質があげられる。また、前記主要な形質は、好ましくは、前記表1において、形質番号24、26、28および22の形質、すなわち、下記(8)~(11)の形質があげられる。前記「寄託系統の本質的にすべての生理学的および形態学的特徴」を有する植物は、例えば、11個以下、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、または1個の形質を除き、寄託系統と同じ形質を有する植物であってもよい、すなわち、11個以下、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、または1個の形質が、寄託系統と異なる形質であってもよい。前記「寄託系統と異なる形質」は、前記寄託系統の主要な形質でもよいし、寄託系統の主要な形質以外の形質でもよいが、寄託系統の主要な形質以外の形質が好ましい。前記「寄託系統と異なる形質」は、例えば、後述の形質の導入および/または遺伝子の導入により実施できる。前記「寄託系統の本質的にすべての生理学的および形態学的特徴」を有する植物において、前記形質番号59、60、52、40、4、30、32、24、26、28、および22の全ての形質は、前記寄託系統と同じでもよい。
(1)根腐病菌レース1抵抗性が「強」である;
(2)根腐病菌レース2抵抗性が「強」である;
(3)べと病レースBl:27EU抵抗性が「有」である;
(4)抽だい始期が「晩」である;
(5)株の幅が「やや中」である;
(6)球の大きさが「やや大」または「大」である;
(7)球のしまりが「固い」または「中」である;
(8)葉の周縁部の波打ちが「中」または「やや強」である;
(9)葉の周縁部の切れ込みの深さが「浅」である;
(10)葉の周縁部の切込みの粗密が「やや中」である;
(11)葉の凹凸が「中」または「やや強」である。
【0067】
前記寄託系統のうちTakii32は、例えば、下記表3Aに記載されている14のSSR(simple sequence repeat、単純反復配列)マーカーに関してレタス基準品種“サウザー”(品種登録番号10884)と同じまたは異なる多型を有する。下記表3Aにおいて、[Z]はサウザーの遺伝子型を示し、その遺伝子型よりも塩基数の大きい遺伝子型を[Z+(増加塩基数)]で示し、その遺伝子よりも塩基数の小さい遺伝子型を[Z-(減少塩基数)]で示している。例えば、SSRマーカーSML15、SML26、SML22、SML42、SML45、SML60、SML3、LS_WGS_10、TK_39、LS_WGS_15およびTK_11におけるTakii32の遺伝子型は、「Z」であり、基準品種のサウザーと同じ遺伝子型であることを示す。そして、TK_37およびTK_20におけるTakii32の遺伝子型は、「Z+15」であり、サウザーに比べ15塩基多い遺伝子型であることを示す。TK_42におけるTakii32の遺伝子型は、「Z-12」であり、サウザーに比べ12塩基少ない遺伝子型であることを示す。前記SSRマーカーを用いた解析は、例えば、下記参考文献1および下記表2を参照できる。
参考文献1:レタスDNA品種識別マニュアル(農林水産省ホームページ、平成28年3月10日発行、https://www.maff.go.jp/j/kanbo/tizai/brand/b_syokubut/attach/pdf/index-23.pdf)
【0068】
【0069】
【0070】
前記寄託系統のうちTakii33は、例えば、下記表3Bに記載されている14のSSRマーカーに関してレタス基準品種“サウザー”(品種登録番号10884)と同じまたは異なる多型を有する。下記表3Bにおいて、[S]はサウザーの遺伝子型を示し、その遺伝子型よりも塩基数の大きい遺伝子型を[S+(増加塩基数)]で示し、その遺伝子よりも塩基数の小さい遺伝子型を[S-(減少塩基数)]で示している。例えば、SSRマーカーSML22、SML42、SML45、SML60、SML3、LS_WGS_10、LS_WGS_15およびTK_11におけるTakii33の遺伝子型は、「Z」であり、基準品種のサウザーと同じ遺伝子型であることを示す。そして、SML_15、SML_26、TK_39、TK_37およびTK_20におけるTakii33の遺伝子型は、「Z+10」または「Z+15」であり、サウザーに比べ10もしくは15塩基多い遺伝子型であることを示す。TK_42におけるTakii33の遺伝子型は、「Z-12」であり、サウザーに比べ12塩基少ない遺伝子型であることを示す。前記SSRマーカーを用いた解析は、例えば、上記参考文献1および上記表2を参照できる。
【0071】
【0072】
<後代系統>
本発明のレタス植物は、寄託系統の後代系統であってもよい。前記後代系統は、後代系統の植物個体でもよいし、後代系統の植物個体の部分または後代系統の種子でもよい。
【0073】
本発明において、「後代系統」または「後代レタス植物」(以下、あわせて「後代系統」という)は、寄託系統のレタス植物またはその後代系統から得られる植物である。本発明において、前記後代系統は、前記寄託系統と、別の寄託系統もしくは他のレタス植物との交雑、または前記寄託系統と野生のレタス植物との交雑から得られた植物でもよい。また、前記後代系統は、前記寄託系統もしくはその後代系統を自殖および/または他家受粉することにより直接または間接的に取得するか、取得しうるか、または由来してもよいし、自殖および/または他家受粉などの伝統的な育種方法を使用して、寄託系統から得られた親系統に由来してもよい。前記後代系統は、例えば、自殖後代系統、第1世代ハイブリッドF1(雑種第1代系統、F1ハイブリッド)等があげられる。前記後代系統の取得において、前記寄託系統は、雌親として用いてもよいし、雄親として用いてもよいし、両親として用いてもよい。
【0074】
本発明において、「交雑」は、2つの親系統の交雑を意味する。前記交雑は、「他家受粉」でもよいし、「自家受粉」でもよい。前記他家受粉は、異なる植物に由来する2つの配偶子が結合することによる受精を意味する。前記自家受粉は、花粉が、同じ植物の葯から柱頭に移動することを意味する。前記自家受粉は、例えば、自殖ということもできる。前記交雑は、伝統的な育種法の1つである戻し交雑を含んでもよい。
【0075】
前記「戻し交雑」は、伝統的な育種技術の1つであり、ブリーダーがハイブリッドの後代系統を繰り返し親系統の1つに戻し交雑し、植物または品種に形質を導入する方法である。前記導入する形質を含む植物は、例えば、ドナー植物ということできる。また、前記形質が導入される植物は、例えば、反復親(recurrent parent)ということができる。前記戻し交雑では、ドナー植物と反復親とを交雑することにより実施でき、これにより、第1世代ハイブリッドF1(雑種第1代系統、F1ハイブリッド)が取得できる。つぎに、前記形質を有する後代系統を、反復親と交雑する。そして、数世代の戻し交雑および/または自殖することで、前記反復親に、ドナー植物の形質を導入できる。
【0076】
本発明において、前記後代系統は、前記寄託系統由来の細胞培養物もしくは組織培養物、プロトプラストまたは植物個体の部分から再生してもよいし、前記寄託系統の自殖によって取得してもよいし、前記寄託系統の植物個体から種子を生産することによって取得してもよい。
【0077】
本発明において、前記「再生」は、細胞培養物、組織培養物またはプロトプラストからの植物の発生または栄養繁殖を意味する。
【0078】
前記「組織培養物」または「細胞培養物」は、同じまたは異なるタイプの単離された細胞を含む組成物であってもよいし、植物の部分に組織化される細胞の集合体であってもよい。レタス植物のさまざまな組織の組織培養物および前記組織培養物からの植物の再生方法は、よく知られており、例えば、下記参考文献2~4を参照できる。
参考文献2:Pink D. A. and Carter P. J., “Propagation of lettuce (Lactuca sativa) breeding material by tissue culture”, Ann. Appl. Biol., 1987, vol. 110, pages 611-616
参考文献3:Ampomah-Dwamena C., Conner A. J. and Fautrier A. G., “Genotypic response of lettuce cotyledons to regeneration in vitro”, Sci. Hort., 1997, vol. 71, pages 137-145
参考文献4:水谷高幸、田中孝幸、“レタスおよび近縁野生種 Lactuca serriola の花茎の節培養”、園芸学研究、2008、第7巻1号、頁17-21
【0079】
前記後代系統は、所望の形質を有してもよい。前記後代系統は、例えば、同一の栽培条件で栽培した場合に、「寄託系統の本質的にすべての生理学的および形態学的特徴」を有してもよい。具体的には、前記後代系統は、対応する寄託系統(由来する寄託系統)と共通する形質を有してもよい。具体例として、前記後代系統は、例えば、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上の形質が、寄託系統の形質と一致する。前記後代系統は、寄託系統の主要な形質を有する植物であってもよい。前記主要な形質は、前記表1Cにおいて、形質番号59、60および52の形質、すなわち、上記(1)~(3)の形質があげられる。また、前記主要な形質は、前記表1A~Cにおいて、形質番号40、4、30および32の形質、すなわち、上記(4)~(7)の形質があげられる。また、前記主要な形質は、前記表1Bにおいて、形質番号24、26、28および22の形質、すなわち、上記(8)~(11)の形質があげられる。前記後代系統は、例えば、11個以下、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、または1個の形質を除き、寄託系統と同じ形質を有する植物であってもよい、すなわち、11個以下、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下または1個の形質が、寄託系統と異なる形質であってもよい。前記「寄託系統と異なる形質」は、前記寄託系統の主要な形質でもよいし、寄託系統の主要な形質以外の形質でもよいが、寄託系統の主要な形質以外の形質が好ましい。前記「寄託系統と異なる形質」は、例えば、後述の形質の導入および/または遺伝子の導入により実施できる。前記後代系統において、前記形質番号1~5、7~11、16~33、39~42、52、59、60の全ての形質は、寄託系統と同じでもよい。前記寄託系統と異なる形質は、例えば、べと病レースBI:27EU以外のレースに対する抵抗性(Bl16~26、28~37、Bl5~11US)、細菌性腐敗病耐病性、コルキールート耐病性、レタスモザイクウィルス耐病性、アブラムシ耐虫性、ハモグリバエ耐虫性、切断面の耐褐変能等があげられる。各形質は、例えば、各形質と関連する遺伝子座を有する公知の植物と交雑することにより、導入できる。
【0080】
前記後代系統は、前記寄託系統に由来する、少なくとも1セットの染色体を含む細胞を含んでもよい。前記後代系統は、例えば、そのアリル(対立遺伝子)の少なくとも6.25%、12.5%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%が、前記寄託系統由来でもよい。すなわち、前記後代系統は、前記寄託系統と、少なくとも約6.25%、12.5%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の遺伝的相補性(genetic complement)を有してもよい。
【0081】
前記「アリル(対立遺伝子)」は、1または複数の遺伝子のいずれかであり、そのすべてがレタス植物の特性または形質に関連している。二倍体の細胞または生物では、所定の遺伝子の一対のアリルが、一対の相同染色体上の対応する遺伝子座を占める。
【0082】
前記遺伝的相補性は、例えば、分子マーカーまたは塩基配列を解読し、Takii32またはTakii33の分子マーカーまたは塩基配列と比較し、一致率を計算することにより算出できる。前記分子マーカーは、例えば、SNP(一塩基多型)マーカー、増幅断片長多型(AFLP)マーカー、制限酵素断片長多型(RFLP)マーカー、マイクロサテライトマーカー、sequence-characterized amplified region (SCAR)マーカー、cleaved amplified polymorphic sequence (CAPS)マーカー等があげられる。前記分子マーカーを用いたゲノムの解析方法は、よく知られており、広く公開されている(例えば、下記参考文献5および6)。前記塩基配列の解読は、例えば、前記後代系統から染色体を抽出し、前記染色体に対してシークエンスを行なうことにより実施できる。前記寄託系統由来のアリルの割合および遺伝的相補性の割合は、例えば、交雑回数により推定してもよい。この場合、前記割合は、寄託系統からの交雑回数から推定できる。具体例として、前記寄託系統からの交雑回数がn回の場合、前記割合は、例えば、(1/2)n×100%と推定できる。
参考文献5:Sinchan Adhikari et.al, “Application of molecular markers in plant genome analysis: a review”, The Nucleus, 2017, Volume 60, Issue 3, pp. 283-297
参考文献6:Elcio P. Guimaraes et.al., “MARKER-ASSISTED SELECTION Current status and future perspectives in crops, livestock, forestry and fish”, 2007, Springer, 29-49
【0083】
前記寄託系統由来のアリルおよび遺伝的相補性の割合は、例えば、複数の後代系統の割合の平均値であることが好ましい。前記複数は、例えば、統計学的な検討が可能な個体数であり、具体例として、200個体以上であり、好ましくは、200~1000個体である。
【0084】
前記後代系統は、前記寄託系統に由来するSSRの多型を有してもよい。前記寄託系統のSSRの多型は、前記表3A、表3Bに示されるものである。例えば、前記後代系統は、前記寄託系統と、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10つ、11つ、12つ、13つ、または14つのSSRの多型が一致してもよい。本発明において、対象のレタス品種が、例えば1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10つ、11つ、12つ、13つ、または14つのSSRの多型が、前記寄託系統のSSRの多型と一致する場合、前記対象のレタス植物は、前記寄託系統の後代系統であると判定(判別、推定、鑑定、または鑑別)できる。
【0085】
前記後代系統は、例えば、変異または導入遺伝子を有してもよい。この場合、前記後代系統は、例えば、1以上の形質が修飾されている。前記後代系統は、例えば、前記寄託系統またはその後代系統に対して、変異の導入または導入遺伝子の導入により、作製できる。前記変異は、人為的に導入されてもよいし、自然に導入されてもよい。前記変異は、例えば、化学物質誘導性の変異でもよいし、放射線誘導性の変異でもよい。また、前記変異は、例えば、分子生物学的手法またはゲノム編集技術により導入されてもよい(例えば、下記参考文献7)。前記導入遺伝子は、例えば、アグロバクテリウム属(Agrobacterium tumefaciens)を用いる方法等があげられる。
参考文献7:Yanfei Mao et.al., “Gene editing in plants: progress and challenges”, National Science Review, 2019, vol. 6, pp. 421-437
【0086】
前記1以上の形質は、例えば、べと病レースBI:27EU以外のレースに対する抵抗性(Bl16~26、28~37、Bl5~11US)、細菌性腐敗病耐病性、コルキールート耐病性、レタスモザイクウィルス耐病性、アブラムシ耐虫性、ハモグリバエ耐虫性、切断面の耐褐変能等があげられる。
【0087】
前記導入遺伝子(transgene)は、例えば、遺伝子工学的手法または伝統的な育種方法により、植物のゲノム内に導入された所望の遺伝子を意味する。前記導入遺伝子は、例えば、同一種に由来してもよいし、異なる種に由来してもよい。また、前記導入遺伝子は、由来の種と同一の塩基配列を含む遺伝子でもよいし、異なる塩基配列を含む遺伝子でもよい。後者の場合、異なる塩基配列は、例えば、前記同一の塩基配列に対して、コドン最適化、プロモーター等の転写制御因子の付加等を実施することにより調製できる。前記導入遺伝子は、翻訳領域と非翻訳領域とを含んでもよい。
【0088】
<半数体および倍加半数体植物>
本発明のレタス植物は、前記寄託系統から取得された、取得可能な、または誘導された半数体植物および/または倍加半数体植物であってもよい。前記寄託系統の半数体植物および/または倍加半数体植物は、前記寄託系統の親系統を生産する方法において使用してもよい。一実施形態において、本発明は、半数体植物および/または倍加半数体植物の植物、半数体植物および/または倍加半数体植物の植物部分、または半数体植物および/または倍加半数体植物の種子を提供してもよい。
【0089】
前記倍加半数体植物は、半数体植物または細胞において染色体を倍加することにより製造できる(例えば、下記参考文献8)。具体例として、半数体である花粉または胚珠を、所定の条件下で培養することで染色体が1nの小植物体(plantlets)を形成させる。つぎに、前記小植物体に対して、例えば、コルヒチン等の化学物質で処理することにより、染色体を倍加させる。これにより、前記小植物体の細胞は、染色体が2nになる(倍加半数体)。そして、前記処理後の小植物体を生育することで、前記倍加半数体植物およびその後代系統を取得することができる。
参考文献8: Jim M. Dunwell, “Haploids in flowering plants: origins and exploitation”, Plant Biotechnology Journal, 2010, volume 8, pp. 377-424
【0090】
<レタス植物の製造方法>
本発明のレタス植物の製造方法は、前述のように、第1のレタス植物と、第2のレタス植物とを交雑する交雑工程を含み、前記第1のレタス植物は、前記本発明のレタス植物である。本発明の製造方法は、前記交雑工程における親の少なくとも一方に、前記本発明のレタス植物を用いることが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。
【0091】
また、本発明のレタス植物の製造方法は、前記本発明のレタス植物を自殖(自家受粉)させる自殖工程を含む。本発明の製造方法は、前記本発明のレタス植物を自殖させることが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。
【0092】
本発明の製造方法によれば、前記寄託系統の後代系統を製造できる。本発明の製造方法は、本発明のレタス植物の説明を援用できる。
【0093】
本発明において、前記第1のレタス植物(第1の親系統)と前記第2のレタス植物(第2の親系統)との交雑は、例えば、同一個体間の交雑(正自家受粉)でもよいし、同一クローン個体間または近交系で維持されている系統の個体間の交雑(準自家受粉)でもよいし、異なる個体間の交雑(他家受粉)でもよい。前記正自家受粉の場合、前記第1の親系統および前記第2の親系統は、例えば、いずれか一方が同一個体における雌器官であり、他方が、同一個体における花粉である。
【0094】
本発明において、前記第1の親系統は、前記本発明のレタス植物であり、例えば、前述の受託番号FERM P-22453または受託番号FERM P-22454で寄託されたレタス植物またはその後代系統である。
【0095】
前記第2の親系統は、特に制限されず、任意のレタス植物を使用できる。前記第2の親系統は、例えば、前記第1の親系統と、分類学上、同じ種のレタス植物でもよいし、異なる種のレタス植物でもよい。前記第2の親系統は、例えば、前記寄託系統または後代系統でもよいし、その他のレタス植物でもよい。
【0096】
本発明の製造方法は、例えば、前記交雑工程の後、さらに、前記交雑工程で得られた後代系統を育成する育成工程を含んでもよい。前記育成工程における育成条件は、例えば、レタス植物における一般的な育成条件があげられる。
【0097】
本発明のレタス植物は、例えば、前記本発明の製造方法により得ることができる。
【0098】
<レタス植物の種子の生産方法>
本発明は、レタス種子の製造方法を提供する。本発明のレタス種子の製造方法は、前記寄託系統のレタス植物を、自殖または別のレタス植物と交雑させる工程と、その結果得られる種子を任意で採種(収集または収穫)する工程とを含む。本発明の種子の製造方法は、レタス植物の種子を生育させることにより、植物、植物部分または種子を提供してもよい。
【0099】
本発明の種子の生産方法は、前記寄託系統に由来する種子の生産方法であってもよい。この場合、本発明の種子の生産方法は、(a)前記寄託系統の植物を別のレタス植物と交雑して種子を生産する工程を含んでもよい。本発明の種子の生産方法は、さらに、(b)前記(a)工程の種子からレタス植物を栽培して、前記寄託系統に由来するレタス植物を生産する工程と、(c)前記(b)工程のレタス植物を、自殖または別のレタス植物と交雑し、前記寄託系統に由来する追加のレタス植物を作出する工程とを含んでもよい。さらに、本発明の種子の生産方法は、(d)任意に、前記(b)工程および前記(c)工程を1回以上繰り返し、前記寄託系統に由来するさらなるレタス植物を生産してもよい。この場合、前記(b)工程における前記(a)工程の種子から栽培したレタス植物としては、前記(c)工程で得られた追加のレタス植物を用いることができる。前記「1回以上」は、例えば、1回~10回、3回~7回、3回~5回である。本発明の種子の生産方法は、さらに、種子を収集または収穫する工程を含んでもよい。本発明の種子の生産方法は、上記の方法によって生産された種子、および種子を生育させることによって得られる植物または植物個体の部分を提供してもよい。
【0100】
<雑種レタス植物の生産方法>
本発明は、ハイブリッド(雑種)レタス植物を生産する方法を提供する。本発明の雑種植物の生産方法では、本発明のレタス植物を別のレタス植物と交雑させる工程を含む。本発明の雑種植物の生産方法では、交雑により得られた種子を収集または収穫する工程を含んでもよい。また、本発明の雑種植物の生産方法は、上記の方法により生産された種子および雑種植物または雑種植物個体の部分を提供してもよい。
【0101】
<新たな形質の導入方法>
本発明は、前記寄託系統に少なくとも1つの新しい特性または形質(以下、あわせて、「形質」という)を導入する方法を提供する。本発明の形質の導入方法は、例えば、新たな形質が導入されたレタス植物の生産方法ということもできる。本発明の形質の導入方法は、例えば、(a)前記寄託系統の植物を、後代系統を作出するために、少なくとも1つの新しい形質を含むレタス植物と交配させる工程と、(b)少なくとも1つの新しい形質を含む後代系統を選択する工程とを含む。本発明の形質の導入方法は、例えば、(c)前記後代系統を、前記寄託系統と交雑し、戻し交雑後代の種子を生産する工程と、(d)少なくとも1つの新しい形質と、前記寄託系統の本質的にすべての生理学的および形態学的特徴を含む戻し交雑後代を選択する工程とを含む。前記(b)および(d)工程において、新たな形質を有する後代系統の選抜は、例えば、前記形質を検出することにより実施してもよいし、前記形質と関連(連鎖)する遺伝子または分子マーカーを検出することにより実施してもよい。前記新たな形質は、べと病レースBI:27EU以外のレースに対する抵抗性(Bl16~26、28~37、Bl5~11US)、細菌性腐敗病耐病性、コルキールート耐病性、レタスモザイクウィルス耐病性、アブラムシ耐虫性、ハモグリバエ耐虫性、切断面の耐褐変能等があげられる。
【0102】
本発明の形質の導入方法は、(e)任意に、前記(c)工程および(d)工程を1回以上繰り返して、少なくとも1つの新しい形質を含むレタス植物を生産してもよい。この場合、本発明の形質の導入方法は、前記(c)工程における前記後代系統としては、前記(d)工程で選択された戻し交雑後代を用いることができる。前記(e)工程で取得された、または取得可能なレタス植物は、前記寄託系統の本質的にすべての生理学的および形態学的特徴のすべてを有してもよい。前記「本質的にすべての生理学的および形態学的特徴」は、前記後代系統の説明において、「後代系統」を「前記(e)工程で取得された、または取得可能なレタス植物」に読み替えて、その説明を援用できる。前記「1回以上」は、例えば、1回~10回、3回~7回、3回~5回である。本発明の形質の導入方法は、種子を収集または収穫する工程を含んでもよい。本発明の形質の導入方法は、上記の方法により生産された種子、および種子を生育させることによって得られる植物または植物個体の部分を提供してもよい。
【0103】
<導入遺伝子の導入方法>
本発明は、少なくとも1つの新しい特性または形質を含む、寄託系統に由来する植物を生産する方法を提供する。本発明の導入遺伝子の導入方法は、例えば、新たな形質が導入されたレタス植物の生産方法ということもできる。
【0104】
本発明の導入遺伝子の導入方法は、例えば、少なくとも1つの新しい形質を付与する突然変異または導入遺伝子を寄託系統の植物に導入する工程を含む。前記変異または導入遺伝子の導入は、例えば、前記後代系統における変異または導入遺伝子の導入と同様にして実施できる。前記導入工程により取得された、または取得可能なレタス植物は、前記寄託系統の本質的にすべての生理学的および形態学的特徴のすべてを有してもよい。前記「本質的にすべての生理学的および形態学的特徴」は、前記後代系統の説明において、「後代系統」を「前記導入工程により取得された、または取得可能なレタス植物」に読み替えて、その説明を援用できる。本発明の導入遺伝子の導入方法は、種子を収集または収穫する工程を含んでもよい。本発明の導入遺伝子の導入方法は、上記の方法により生産された種子、および種子を生育させることによって得られる植物または植物個体の部分を提供してもよい。前記新たな形質は、例えば、べと病レースBI:27EU以外のレースに対する抵抗性(Bl16~26、28~37、Bl5~11US)、細菌性腐敗病耐病性、コルキールート耐病性、レタスモザイクウィルス耐病性、アブラムシ耐虫性、ハモグリバエ耐虫性、切断面の耐褐変能等があげられる。
【0105】
<レタス植物の再生体および再生方法>
本発明は、寄託系統の細胞培養物、組織培養物、またはプロトプラストから再生されたレタス植物(以下、「再生体」という)を提供する。本発明は、再生可能な細胞の細胞培養物もしくは組織培養物、または寄託系統のレタス植物に由来するプロトプラストを提供してもよい。前記細胞、組織またはプロトプラストは、葉、花粉、胚、子葉、胚軸、分裂組織細胞、根、根端、葯、花、種子または幹を含む組織に由来してもよい。
【0106】
本発明は、寄託系統のレタス植物の増殖または繁殖の方法を提供する。前記寄託系統のレタス植物の繁殖は、前記寄託系統のレタス植物の栄養繁殖であってもよい。この場合、本発明のレタス植物の再生方法は、例えば、(a)寄託系統の植物から増殖することができる組織を収集する工程と、(b)前記組織を培養して増殖したシュート(shoot)を取得する工程と、(c)前記増殖したシュートを発根させ、発根した小植物(plantlet)を取得する工程とを含む。本発明のレタス植物の再生方法は、さらに、(d)任意に、発根した小植物から植物を生育させる工程を含んでもよい。前記栄養繁殖の方法は、例えば、下記参考文献9および10を参照できる。本発明の再生方法は、例えば、上記の方法により再生(生産)された小植物、植物または植物個体の部分を提供してもよい。前記植物は、前記寄託系統の本質的にすべての生理学的および形態学的特徴のすべてを有してもよい。前記「本質的にすべての生理学的および形態学的特徴」は、前記後代系統の説明において、「後代系統」を「再生された植物」に読み替えて、その説明を援用できる。
参考文献9:Habtamu Gudisa Megersa, “Propagation Methods of Selected Horticultural Crops by Specialized Organs: Review”, Journal of Horticulture, 2017, Volume 4, Issue 2, 1000198
参考文献10:Nitish Kumar et.al., “In vitro Plant Propagation: A Review”, Journal of Forest Science, 2011, Vol. 21, No. 2, pp. 61-72
【0107】
<レタス植物の収穫物および加工品>
本発明は、寄託系統または後代系統の収穫物および/または加工品を提供する。前記収穫物は、植物全体または植物個体の部分であり、好ましくは、葉(例えば、葉柄および葉身)、葉および根、または種子を含む。
【0108】
前記加工品は、前記寄託系統または後代系統を処理した任意の製品が含まれる。前記処理は、特に制限されず、例えば、カット、スライス、粉砕(ground)、ピューレ、乾燥、缶詰、瓶詰め、洗浄、包装、冷凍および/または加熱処理等があげられる。前記寄託系統または後代系統において、前記加工品に用いられる植物または植物個体の部分は、例えば、葉である。前記加工品は、例えば、前記寄託系統または後代系統を洗浄し、包装したものでもよい。前記加工品は、例えば、任意のサイズまたは形状の容器に収納されてもよい。前記容器の具体例としては、バッグ、箱、カートン(carton)等があげられる。
【0109】
本発明は、1つまたは複数のレタス植物を含む容器を提供してもよい。前記容器は、植物全体または植物個体の部分を含む。
【0110】
本発明は、レタス植物を食品として製造する方法(食品の製造方法)を提供してもよい。本発明の食品の製造方法は、例えば、前記寄託系統または後代系統の植物全体または植物個体の部分、好ましくは、前記寄託系統または後代系統の葉を収集または収穫する工程を含む。また、本発明の食品の製造方法は、前記寄託系統または後代系統のレタス植物が成熟するまで栽培する工程を含む。
【0111】
<遺伝子型の決定方法>
本発明は、寄託系統または後代系統の遺伝子型を決定または検出する方法を提供する。本発明の遺伝子型の決定方法は、例えば、(a)寄託系統または後代系統から核酸サンプルを入手する工程と、(b)核酸サンプル中のゲノムを検出する工程とを含む。前記(a)工程において、前記寄託系統または後代系統からの核酸の調製方法は、組織から核酸を調製する一般的な核酸の調製方法を用いて実施できる。前記(b)工程では、例えば、前記核酸サンプル中のゲノムにおける多型および/またはアリルを検出する。前記多型および/またはアリルの検出は、例えば、SNP(一塩基多型)ジェノタイピング、増幅断片長多型検出(AFLP)、ゲノムDNAの制限酵素断片長多型識別(RFLP)、ゲノムDNAのsequence-characterized amplified region detection (SCAR)、ゲノムDNAのcleaved amplified polymorphic sequence detection (CAPS)、ゲノムDNAのrandom amplified polymorphic detection (RAPD)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、DNAシーケンス、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(allele specific oligonucleotide 、ASO)プローブ、またはDNAマイクロアレイ等を用いて実施できる。前記多型および/またはアリルの検出は、例えば、前記ゲノムの塩基配列をシークエンスすることにより実施してもよいし、前述のように、寄託系統のSNPを参照して実施してもよい。前記(b)工程では、前記ゲノムDNAにおける1つの多型および/またはアリルを検出してもよいし、2つ以上の多型および/またはアリルを検出してもよい。本発明の遺伝子型の決定方法は、多型および/またはアリル(対立遺伝子)の検出結果をコンピュータ可読媒体に保存する工程を含んでもよい。本発明は、そのような方法によって生成されたコンピュータ可読媒体を提供してもよい。
【0112】
本発明の遺伝子型の決定方法は、例えば、前記寄託系統または前記後代系統に代えて、任意のレタス植物(対象レタス植物)に対して実施してもよい。この場合、本発明の遺伝子型の決定方法は、例えば、さらに、前記(b)工程の結果に基づき、前記対象レタス植物が、前記後代系統であるかを判定する工程を含んでもよい。前記判定は、例えば、判別、推定、鑑定、または鑑別ということもできる。前記判定は、例えば、前記(b)工程の結果と、前記寄託系統の遺伝子型との一致率に基づき判断できる。
【実施例0113】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例に記載された態様に限定されるものではない。
【0114】
(1)寄託系統の育種
2017年春に草勢旺盛で高温期結球性がすぐれ、べと病と根腐病複合耐病の晩抽育成系と耐暑性と耐雨性がすぐれる根腐病耐病選抜系を交雑し、F1世代を得た。同年秋に前記F1世代を自殖し、得られたF2世代について、草勢、玉肥大、晩抽性、根腐病レース1、2耐病性を併せ持つ個体を選抜し、採種した。以後同様に、選抜と採種を繰り返し、2022年にF7世代となったところで目標の形質が固定したと判断し、育成を終了とした。
【0115】
F6世代を高冷地試験圃場(長野県川上村)において、2021年に6月~7月播種の2作型で320株ずつ栽培し、系統内の特性のばらつきがないことを確認し、育種したレタス品種が均一性および安定性を有していることを確認した。そして、F6世代を自殖し、得られたF7世代の種子を、受託番号FERM P-22453、受託番号FERM P-22454にて寄託した。
【0116】
(2)寄託系統の形質
得られた寄託系統の植物個体の特性および形質について、農林水産省品種登録の審査基準にしたがって評価した。この結果を表4に示す。
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
(3)寄託系統およびその後代系統の識別
寄託植物および下記の市販のレタス品種について、前記表3Aおよび表3Bに記載のSSRマーカー解析を行うとともに、べと病レースBI:27EUを用いて、MAFFが発行しているレタス種の審査基準にしたがって接種試験を行い、当該レースに対するべと病抵抗性評価を行った。この結果を、下記表5に示す。ここで、表内多型数はそのマーカーによって得られた多型の数を示す。そして、Zは、基準品種サウザーの遺伝子型を示し、それに対する塩基数の増加数(+)または減少数(-)でそれぞれの品種の多型を示している。また、Rは、べと病レースBI:27EUに対して抵抗性が有ることを示し、Sは、抵抗性が無いことを示している。下記表5に示すように、表記載の複数のマーカーと、べと病レースBI:27EUに対する抵抗性の有無を組み合わせることにより、寄託系統およびその後代系統を他のレタス品種と識別できることが分かった。
(タキイ種苗社育成)
サウザー、晩抽レッドファイヤー、ダンシング、サマーサージ、ランサー、タフオラ0566、タフオラ0567、ロマリア、オアシス、アリスト、サマーガイ
(長野県野菜花き試験場育成)
シナノグリーン、シナノスター
(サカタのタネ社育成)
ブルラッシュ
【0121】
【0122】
以上、実施形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。