IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 愛三工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-浮体構造物の揺動抑制装置 図1
  • 特開-浮体構造物の揺動抑制装置 図2
  • 特開-浮体構造物の揺動抑制装置 図3
  • 特開-浮体構造物の揺動抑制装置 図4
  • 特開-浮体構造物の揺動抑制装置 図5
  • 特開-浮体構造物の揺動抑制装置 図6
  • 特開-浮体構造物の揺動抑制装置 図7
  • 特開-浮体構造物の揺動抑制装置 図8
  • 特開-浮体構造物の揺動抑制装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122022
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】浮体構造物の揺動抑制装置
(51)【国際特許分類】
   B63B 39/08 20060101AFI20240902BHJP
   B63B 35/44 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B63B39/08
B63B35/44 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029321
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 康輝
(57)【要約】
【課題】船体を含む浮体構造物において、水上における波浪に伴う浮体構造物の揺れを、揺れの中心として水平面上で互いに直交する2軸における各軸回りの揺れの成分に分解し、各軸回りの揺れに対する復元偶力を発生することにより、浮体構造物の全方向の揺れを抑制する。
【解決手段】海面Wの波浪による浮体構造物たる水槽10の揺れを検出するものであり、水槽10の揺れの中心として水平面上で互いに直交する2軸X、Yにおける軸回りの揺れを、水槽10の2軸X、Yにおける各軸回りの水平面に対する変位量として検出する2軸X、Y上の傾斜センサ21~24と、傾斜センサ21~24により検出された各変位量をゼロとするように2軸X、Yにおける各軸回りに復元偶力を発生する噴射装置31~34と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上の波浪による浮体構造物の揺れを検出するものであり、前記浮体構造物の揺れの中心として水平面上で互いに直交する2軸における軸回りの揺れを、前記浮体構造物の前記2軸における各軸回りの水平面に対する変位量として検出する前記2軸上の傾斜センサと、
該傾斜センサにより検出された各変位量をゼロとするように前記2軸における各軸回りに復元偶力を発生する偶力発生手段と、
を備える浮体構造物の揺動抑制装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記偶力発生手段は、前記2軸の各軸を挟んで等距離で対向する各位置で、水面に対して垂直方向の上方又は下方に向けて流体を噴射する噴射装置を含んで構成され、該噴射装置による流体の噴射に伴い前記浮体構造物が受ける反力を復元偶力とする
浮体構造物の揺動抑制装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記偶力発生手段は、前記2軸の各軸を挟んで等距離で対向する各位置で、前記各軸に直交する方向の磁界を発生させる磁石と、前記磁界の方向に直交し、且つ前記各軸に平行な方向の電流を流すことによりローレンツ力を受ける導体と、を含んで構成されるローレンツ力発生装置であり、このローレンツ力を復元偶力とする
浮体構造物の揺動抑制装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかにおいて、
前記浮体構造物は、
浮体として水面に浮かべられた容器状の水槽と、
該水槽内に基底として層を成して収容された水分を含む砕屑物と、
を備える人工干潟である
浮体構造物の揺動抑制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、浮体構造物の揺動抑制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、船体の両舷側に張り出した一対の支持棒の先端にジェットノズルを設け、船体の揺れを抑制するようにジェットノズルから海中に空気、水などを噴射する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3-15298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の発明は、船体のローリングを抑制するもので、船体のピッチングを抑制することはできない。
【0005】
本明細書が開示する技術の課題は、船体を含む浮体構造物において、水上における波浪に伴う浮体構造物の揺れを、揺れの中心として水平面上で互いに直交する2軸における各軸回りの揺れの成分に分解し、各軸回りの揺れに対する復元偶力を発生することにより、浮体構造物の全方向の揺れを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本明細書に開示の浮体構造物の揺動抑制装置は、次の手段をとる。
【0007】
第1の手段は、水上の波浪による浮体構造物の揺れを検出するものであり、前記浮体構造物の揺れの中心として水平面上で互いに直交する2軸における軸回りの揺れを、前記浮体構造物の前記2軸における各軸回りの水平面に対する変位量として検出する前記2軸上の傾斜センサと、該傾斜センサにより検出された各変位量をゼロとするように前記2軸における各軸回りに復元偶力を発生する偶力発生手段と、を備える。
【0008】
上記第1の手段によれば、浮体構造物の揺れを、浮体構造物の揺れの中心として水平面上で互いに直交する2軸における各軸回りの変位量として傾斜センサにより検出し、その各揺れに対する復元偶力を偶力発生手段により発生する。そのため、浮体構造物の全方向の揺れを抑制することができる。
【0009】
第2の手段は、上述した第1の手段において、前記偶力発生手段は、前記2軸の各軸を挟んで等距離で対向する各位置で、水面に対して垂直方向の上方又は下方に向けて流体を噴射する噴射装置を含んで構成され、該噴射装置による流体の噴射に伴い前記浮体構造物が受ける反力を復元偶力とする。
【0010】
上記第2の手段によれば、噴射装置の噴射により浮体構造物の揺れに対する復元偶力を発生する。そのため、浮体構造物の浮力を調整して復元偶力を発生するものに比べて、短周期の揺れに対しても応答よく復元偶力を発生して浮体構造物の揺れを抑制することができる。また、浮体構造物の浮力を調整して復元偶力を発生するために、バラストタンク内のバラスト液をポンプ等により移動させる構成や、浮体構造物上の重錘の位置を移動させる構成に比べて、装置の小型化、軽量化を図ることができる。
【0011】
第3の手段は、上述した第1の手段において、前記偶力発生手段は、前記2軸の各軸を挟んで等距離で対向する各位置で、前記各軸に直交する方向の磁界を発生させる磁石と、前記磁界の方向に直交し、且つ前記各軸に平行な方向の電流を流すことによりローレンツ力を受ける導体と、を含んで構成されるローレンツ力発生装置であり、このローレンツ力を復元偶力とする。
【0012】
上記第3の手段によれば、浮体構造物の揺れに対する復元偶力をローレンツ力により発生する。そのため、上記第2の手段と同様の作用、効果を得ることができる。
【0013】
第4の手段は、上述した第1~第3の手段のいずれかにおいて、前記浮体構造物は、浮体として水面に浮かべられた容器状の水槽と、該水槽内に基底として層を成して収容された水分を含む砕屑物と、を備える人工干潟である。
【0014】
第4の手段によれば、人工干潟を構成する水槽の揺れを抑制できるため、水槽内の水相のスロッシュ(波打ち)による人工干潟の水分の漏洩や、基底である砕屑物の形状の乱れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態の平面概念図であり、浮体構造物に設置された傾斜センサの検出状態の一例を示す。
図2図1と同様の平面概念図であり、浮体構造物に設置された噴射装置の作動状態の一例を示す。
図3図1と同様の平面概念図であり、浮体構造物に設置された傾斜センサの別の検出状態を示す。
図4図1と同様の平面概念図であり、浮体構造物に設置された噴射装置の別の作動状態を示す。
図5】第1実施形態における浮体構造物の側断面概要図である。
図6】第1実施形態の作動状態を示す。
図7】第1実施形態における人工干潟の側断面概要図である。
図8】第2実施形態における浮体構造物の側断面概要図である。
図9】第2実施形態の作動状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態の概要>
図1~4は第1実施形態の概要を機能的に示す。図1、3のように、水上に浮かべられた浮体構造物10の揺れの中心として水平面上で互いに直交する2軸X、Yの上には、傾斜センサ21~24が設けられている。上記2軸のうちのX軸上には、Y軸を挟んで等距離で対向する位置に傾斜センサ21、23が設けられている。また、上記2軸のうちのY軸上には、X軸を挟んで等距離で対向する位置に傾斜センサ22、24が設けられている。各傾斜センサ21~24は、各設置位置における浮体構造物10の水平面に対する変位量を検出する。図1は、傾斜センサ21が変位量:4を、傾斜センサ23が変位量:-4を検出し、傾斜センサ22、24が共に変位量:0を検出した状態を検出例として示している。また、図3は、傾斜センサ21が変位量:3を、傾斜センサ23が変位量:-3を検出し、傾斜センサ22が変位量:1を、傾斜センサ24が変位量:-1を検出した状態を別の検出例として示している。
【0017】
図2、4のように、水上に浮かべられた浮体構造物10の揺れの中心として水平面上で互いに直交する2軸X、Yの上には、偶力発生手段30を成す噴射装置31~34が設けられている。上記2軸のうちのX軸上には、Y軸を挟んで等距離で対向する位置に噴射装置31、33が設けられている。また、上記2軸のうちのY軸上には、X軸を挟んで等距離で対向する位置に噴射装置32、34が設けられている。従って、各噴射装置31~34は、各傾斜センサ21~24にそれぞれ対応する位置に設けられている。各噴射装置31~34は、水平面に対して垂直方向の上方又は下方に向けて水、空気等の流体を噴射する。噴射装置31~34が垂直方向の上方又は下方に流体を噴射すると、浮体構造物10は、各噴射装置31~34の設置位置に噴射に伴う反力を受ける。その反力により浮体構造物10は、その揺れを抑制する復元偶力を発生する。
【0018】
図2は、各傾斜センサ21~24が図1のように検出した変位量を受けて、噴射装置31、33が各傾斜センサ21、23の設置位置における浮体構造物10の変位量に対抗するように流体を噴射した状態を示す。噴射装置31は、図2にJ1で示すように紙面手前方向に向けて変位量:4に対抗する勢いで流体を噴射する。また、噴射装置33は、図2にJ2で示すように紙面奥方向に向けて変位量:-4に対抗する勢いで流体を噴射する。噴射装置31、33の流体の噴射に伴い浮体構造物10が受ける反力は、Y軸回りの浮体構造物10の変位量を打ち消す復元偶力を発生する。一方、図1で示すように傾斜センサ22、24が検出する変位量は共にゼロのため、図2のように噴射装置32、34は、流体を噴射せず、浮体構造物10にはX軸回りに復元偶力は発生されない。
【0019】
図4は、各傾斜センサ21~24が図3のように検出した変位量を受けて、噴射装置31~34が各傾斜センサ21~24の設置位置における浮体構造物10の変位量に対抗するように流体を噴射した状態を示す。噴射装置31は、図4にJ5で示すように紙面手前方向に向けて変位量:3に対抗する勢いで流体を噴射する。また、噴射装置33は、図4にJ6で示すように紙面奥方向に向けて変位量:-3に対抗する勢いで流体を噴射する。噴射装置32は、図4にJ7で示すように紙面手前方向に向けて変位量:1に対抗する勢いで流体を噴射する。また、噴射装置34は、図4にJ8で示すように紙面奥方向に向けて変位量:-1に対抗する勢いで流体を噴射する。
【0020】
これら噴射装置31~34の流体の噴射に伴い浮体構造物10が受ける反力は、Y軸から時計回りに角度θだけ移動したY1軸回りの浮体構造物10の変位量に対抗する復元偶力を発生する。即ち、各噴射装置31~34が噴射する流体は、図4のように水平面上のX軸の位置から時計回りに角度θだけ移動したX1軸上の位置で、J3で示すように紙面手前方向に向けて流体を噴射し、且つJ4で示すように紙面奥方向に向けて流体を噴射したのと同等となる。水平面上のY軸の位置から時計回りに角度θだけ移動したY1軸上の位置では、流体を噴射しないのと同等となる。
【0021】
第1実施形態によれば、浮体構造物10のあらゆる方向の揺れを水平面上の揺れの中心としての2軸の各軸回りの揺れとして検出し、その揺れに対抗する勢いで流体を噴射して浮体構造物10に反力を発生する。そのため、2軸上の傾斜センサ21~24及び噴射装置31~34により浮体構造物10に対するあらゆる方向の揺れに対して復元偶力を発生して揺れを抑制することができる。
【0022】
<第1実施形態の構成>
図5は、上記第1実施形態の具体例を示す。浮体構造物10は円形容器状の水槽であり、円形の外周面には傾斜センサ21~24が設けられている。各傾斜センサ21~24は、図1と同様に揺れの中心として水平面上で互いに直交する2軸X、Y上に設けられている。図5では各傾斜センサ21~24のうち傾斜センサ21、23のみが示されている。上記2軸X、Y上には、各傾斜センサ21~24に対応して噴射装置31~34を成すエアタンク31A~34Aが設けられている。各エアタンク31A~34Aは、水槽10の外周堤部内に設けられている。各エアタンク31A~34Aは、垂直方向の上方及び下方に向けて流体としての空気を噴射する噴射通路31D~34Dを備える。各噴射通路31D~34Dの途中には、それぞれ開閉弁31B~34B、31C~34Cが設けられている。各エアタンク31A~34Aは、エアホース39Bを介してエアポンプ39Aが接続されている。
【0023】
各エアタンク31A~34Aは、エアポンプ39Aにより供給された空気を貯え、復元偶力を発生するために開閉弁31B~34B、又は開閉弁31C~34Cが開放されると、上方又は下方の噴射通路31D~34Dから空気を噴射する。エアタンク31A~34A、開閉弁31B~34B、31C~34C、噴射通路31D~34D、エアポンプ39A、エアホース39Bは、偶力発生手段30を成している。図5では噴射装置31~34のうち噴射装置31、33のみが示されている。また、図5では、開閉弁31B~34B、31C~34C、噴射通路31D~34Dのうち、開閉弁31B、33B、31C、33C、噴射通路31D、33Dのみが示されている。
【0024】
<第1実施形態の作用、効果>
図6は、水槽10が海面Wの波浪により揺れた状態を示す。図6の状態は、水槽10には波浪によりY軸回りにM1で示すモーメントが働いて、傾斜センサ21が上方へ変位し、傾斜センサ23が下方へ変位して、水槽10がY軸を揺れの中心として傾斜している。傾斜センサ21、23は、その変位量を検出して、図示しない制御回路は、エアポンプ39Aを作動させると共に、開閉弁31B、33Cを開放して上側の噴射通路31D、下側の噴射通路33Dから傾斜センサ21、23が検出した変位量に応じた量の空気をJ9、J10のように噴射する。その結果、水槽10には、Y軸回りにM2で示すモーメントを生じる復元偶力が発生し、水槽10の揺れは抑制される。
【0025】
このように復元偶力は、噴射装置31~34からの空気の噴射により発生されるため、海面Wの波浪による水槽10の揺れに対して応答良く復元偶力を発生させて揺れを抑制することができる。しかも、復元偶力は、エアタンク31A~34Aからの空気の噴射によって発生されるため、偶力発生手段30は、浮力の調整により偶力を発生するものに比べて小型、軽量に構成することができる。
【0026】
<人工干潟の構成>
図7は上記水槽10の具体例を示す。この場合、水槽10は人工干潟とされており、水槽10である容器内には、基底としての砕屑物11が水12と共に収容されている。砕屑物11は、礫岩11A、砂11B、湿泥11Cを含み、それらが層を成している。層構成は、下層から上層に向けて礫岩11A、砂11B、湿泥11Cの順とされている。水12は最上層とされている。水槽10の外周堤部上の対向位置には給水ポンプ13A及び排水ポンプ14Aが設けられている。給水ポンプ13Aの吸込口には、給水管13Cの一端が連通され、給水管13Cの他端はフィルタ13Eを介して海水中に浸水されている。給水管13Cの途中で、給水ポンプ13Aの吸込口の近傍には、遮断弁13Bが設けられている。また、給水ポンプ13Aの吐出口には、給水管13Dの一端が連通され、給水管13Dの他端は礫岩11Aの層の中に埋設されている。そのため、遮断弁13Bが開放された状態で給水ポンプ13Aが作動されると、図7に矢印で示すように、フィルタ13Eを通して吸い込まれた海水が、その中の塵等を濾過されて礫岩11Aの層内に供給される。
【0027】
排水ポンプ14Aの吸込口には、排水管14Cの一端が連通され、排水管14Cの他端は水槽10内の水12の層内に浸水されている。また、排水ポンプ14Aの吐出口には、排水管14Dの一端が連通され、排水管14Dの他端は遮断弁14Bを介して水槽10の容器外に開放されている。そのため、遮断弁14Bが開放された状態で排水ポンプ14Aが作動されると、図7に矢印で示すように、水槽10内の水12が水槽10の容器外に放出される。
【0028】
給水ポンプ13A及び排水ポンプ14Aを遮断弁13B、14Bと共に適宜作動させることにより、水槽10内の海水を循環させて水槽10内で育成する水棲生物の生育環境を良好に維持することができる。なお、遮断弁13B、14Bは、給水ポンプ13A及び排水ポンプ14Aを作動停止したとき、遮断弁13B、14Bを遮断状態として、給水管13C、13D、及び排水管14C、14D内で海水が上記各矢印の方向とは逆方向に逆流しないようにしている。
【0029】
人工干潟としての水槽10が海面Wの波浪により揺れ、揺れが大きい場合、水槽10内の水12が水槽10から溢れる恐れがある。また、揺れの程度によっては、基底である砕屑物11の形状が乱れる恐れがある。上記第1実施形態のように水槽10に傾斜センサ21~24及び偶力発生手段30を備えた揺動抑制装置を設けることにより、それらの恐れを抑制することができる。
【0030】
<第2実施形態>
図8は第2実施形態を示す。第2実施形態が第1実施形態に対して特徴とする点は、復元偶力を発生する偶力発生手段30としてローレンツ力発生装置35~38を用いた点である。その他の構成は、第2実施形態においても第1実施形態と同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。
【0031】
図8のように、第2実施形態では、揺れの中心として水平面上で互いに直交する2軸X、Y上には、各傾斜センサ21~24に対応してローレンツ力発生装置35~38がそれぞれ設けられている。各ローレンツ力発生装置35~38は、X軸又はY軸上で、直交するY軸又はX軸を挟んで等距離で対向する位置に設けられ、Y軸又はX軸に直交する方向の磁界を発生する電磁石35A~38Aを備える。また、電磁石35A~38Aの磁界の方向に直交し、且つY軸又はX軸に平行な方向の電流を流すことにより、ローレンツ力を受ける導体35B~38Bを備える。電磁石35A~38Aは、導線39Dを介して常時電源39Cに接続されて常時磁界を発生させている。一方、導体35B~38Bは、傾斜センサ21~24によって検出される水槽10のX軸回り、及びY軸回りの変位量に応じて方向及び大きさを変えて電流が通流される。導体35B~38Bに通流される電流の制御は、図示しない制御回路により行われる。図8では、各傾斜センサ21~24のうちX軸上に配置された傾斜センサ21、23のみ、また、ローレンツ力発生装置35~38のうちX軸上に配置されたローレンツ力発生装置35、37のみが示されている。なお、電磁石35A~38Aは、磁界を発生する磁石であればよく、永久磁石により構成することもできる。
【0032】
図9は、水槽10が海面Wの波浪により揺れた状態を示す。図9の状態は、水槽10には波浪によりY軸回りにM1で示すモーメントが働いて、傾斜センサ21が上方へ変位し、傾斜センサ23が下方へ変位して、水槽10が傾斜している。傾斜センサ21、23は、その変位量を検出して、図示しない制御回路は、導体35B、37BにY軸に平行で図9にて紙面奥方向に向かう電流を通流させる。その結果、水槽10のローレンツ力発生装置35の設置位置にはF1で示す垂直方向下方のローレンツ力が発生し、水槽10のローレンツ力発生装置37の設置位置にはF2で示す垂直方向上方のローレンツ力が発生する。そのため、水槽10にはY軸回りにM2で示すモーメントを生じる復元偶力が発生し、水槽10の揺れは抑制される。
【0033】
このように復元偶力は、ローレンツ力発生装置35~38の導体35B~38Bが受けるローレンツ力により発生されるため、海面Wの波浪による水槽10の揺れに対して応答良く復元偶力を発生させて揺れを抑制することができる。しかも、復元偶力は、電磁石35A~38Aと導体35B~38Bとを組み合わせたローレンツ力発生装置35~38によって発生されるため、偶力発生手段30は、浮力の調整により偶力を発生するものに比べて小型、軽量に構成することができる。
【0034】
<その他の実施形態>
以上、本明細書に開示の技術を特定の実施形態について説明したが、その他各種の形態で実施可能なものである。例えば、上記各実施形態では、傾斜センサをX、Y両軸上に1組(2個)ずつ、合計4個設けたが、各軸に1個ずつとしてもよい。また、上記各実施形態では、偶力発生手段として噴射装置及びローレンツ力発生装置の例を示したが、その他の偶力発生手段を用いてもよい。また、上記各実施形態では、浮体構造物として人工干潟の例を示したが、その他の浮体構造物に適用してもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 水槽(浮体構造物)
11 砕屑物
11A 礫岩
11B 砂
11C 湿泥
12 水
13A 給水ポンプ
13B 遮断弁
13C、13D 給水管
13E フィルタ
14A 排水ポンプ
14B 遮断弁
14C、14D 排水管
21~24 傾斜センサ
30 偶力発生手段
31~34 噴射装置
31A、33A エアタンク
31B、31C、33B、33C 開閉弁
31D、33D 噴射通路
39A エアポンプ
39B エアホース
35~38 ローレンツ力発生装置
35A~38A 電磁石(磁石)
35B~38B 導体
39C 電源
39D 導線
W 海面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9