(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122025
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】柱部材、柱接合構造、高さ調整方法、柱梁接合部材、柱梁接合構造、梁位置調整方法及び、架構構造物
(51)【国際特許分類】
E04B 1/21 20060101AFI20240902BHJP
E04B 1/30 20060101ALI20240902BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
E04B1/21 C
E04B1/30 K
E04B1/58 503B
E04B1/58 508P
E04B1/58 503H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029325
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100171619
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 顕雄
(72)【発明者】
【氏名】吉田 公宏
(72)【発明者】
【氏名】今中 康貴
(72)【発明者】
【氏名】三倉 寛明
(72)【発明者】
【氏名】西尾 悠吾
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AB01
2E125AB13
2E125AC01
2E125AC15
2E125AC16
2E125AG13
2E125BB19
2E125BD01
2E125BE08
2E125CA78
2E125EA02
(57)【要約】
【課題】構造物の施工の効率化を図る。
【解決手段】柱部材10は、軸方向の一端13又は一端付近から他端14に向かうに従い縮径するテーパ状の外周面12を有する柱本体部11と、柱本体部11の一端側の端面13に開口するとともに、柱本体部11内を軸方向に延び、端面13から柱本体部11の他端側に向かうに従い縮径するテーパ状の内周面16を有する凹部15と、を備える。外周面12の軸方向に対する傾斜角θ1と、内周面16の軸方向に対する傾斜角θ2とが互いに等しい角度で形成されており、凹部15の端面13の開口径D3が、柱本体部11の他端側14の外径D2よりも大きく形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の一端又は一端付近から他端に向かうに従い縮径するテーパ状の外周面を有する柱本体部と、
前記柱本体部の一端側の端面に開口するとともに、前記柱本体部内を軸方向に延び、前記端面から前記柱本体部の他端側に向かうに従い縮径するテーパ状の内周面を有する凹部と、を備え、
前記外周面の軸方向に対する傾斜角と、前記内周面の軸方向に対する傾斜角とが互いに等しい角度で形成されており、
前記凹部の前記端面の開口径が、前記柱本体部の他端側の外径よりも大きく形成されている
ことを特徴とする柱部材。
【請求項2】
請求項1に記載の柱部材を鉛直方向に接合する柱接合構造であって、
鉛直方向下方に配される柱部材を下側柱部材、該下側柱部材に対して鉛直方向上方に配される柱部材を上側柱部材とし、
上側柱部材及び下側柱部材の前記柱本体部の一端を鉛直方向下方、他端を鉛直方向上方とする順方向接合の場合には、上側柱部材の前記凹部を、下側柱部材の上端側に上方から嵌め込み、上側柱部材の前記凹部の内周面を下側柱部材の前記柱本体部の外周面と接触させることにより、上側柱部材と下側柱部材とを接合し、
上側柱部材及び下側柱部材の前記柱本体部の一端を鉛直方向上方、他端を鉛直方向下方とする逆方向接合の場合には、上側柱部材の下端側を、下側柱部材の前記凹部に上方から嵌め込み、下側柱部材の前記凹部の内周面を上側柱部材の前記柱本体部の外周面と接触させることにより、上側柱部材と下側柱部材とを接合する
ことを特徴とする柱接合構造。
【請求項3】
請求項2に記載の柱接合構造の高さ調整方法であって、
前記順方向接合の場合には、
上側柱部材の前記凹部の内周面と、下側柱部材の前記柱本体部の外周面との間に、前記柱本体部の径方向に所定の厚みを有する間詰材を設けることにより、上側柱部材と下側柱部材とを接合した総高さを、前記間詰材を設けない場合の総高さよりも高くし、
前記逆方向接合の場合には、
下側柱部材の前記凹部の内周面と、上側柱部材の前記柱本体部の外周面との間に、前記柱本体部の径方向に所定の厚みを有する間詰材を設けることにより、上側柱部材と下側柱部材とを接合した総高さを、前記間詰材を設けない場合の総高さよりも高くする
ことを特徴とする柱接合構造の高さ調整方法。
【請求項4】
請求項2に記載の柱接合構造の高さ調整方法であって、
前記順方向接合の場合には、
下側柱部材の前記柱本体部の上面と上側柱部材の前記凹部の底面との間に、該底面を下方から支持して、上側柱部材の前記凹部の内周面と下側柱部材の前記柱本体部の外周面との間に所定の隙間を形成する支持部材を設け、且つ、該隙間に間詰材を設けることにより、上側柱部材と下側柱部材とを接合した総高さを、前記支持部材を設けない場合の総高さよりも高くし、
前記逆方向接合の場合には、
下側柱部材の前記凹部の底面と上側柱部材の前記柱本体部の下面との間に、該下面を下方から支持して、下側柱部材の前記凹部の内周面と上側柱部材の前記柱本体部の外周面との間に所定の隙間を形成する支持部材を設け、且つ、該隙間に間詰材を設けることにより、上側柱部材と下側柱部材とを接合した総高さを、前記支持部材を設けない場合の総高さよりも高くする
ことを特徴とする柱接合構造の高さ調整方法。
【請求項5】
請求項1に記載の柱部材と梁材とを接合する柱梁接合部材であって、
軸方向の一端から他端に向かうに従い縮径するテーパ状の内周面を有する仕口本体部と、
前記仕口本体部の外周面から径方向に延びるとともに、前記梁材の端部が固定されるブラケットと、を備え、
前記仕口本体部の内周面の軸方向に対する傾斜角が、前記柱本体部の外周面の軸方向に対する傾斜角と等しい角度で形成されており、
前記仕口本体部の内径が、前記柱本体部の一端側の外径よりも小さく、且つ、前記柱本体部の他端側の外径よりも大きく形成されている
ことを特徴とする柱梁接合部材。
【請求項6】
請求項1に記載の柱部材に、請求項5に記載の柱梁接合部材を設置して梁材を接合する柱梁接合構造であって、
前記柱本体部及び前記仕口本体部の一端を鉛直方向下方、前記柱本体部及び前記仕口本体部の他端を鉛直方向上方とし、
前記仕口本体部を前記柱本体部に上方から嵌め込み、前記仕口本体部の内周面を前記柱本体部の外周面と接触させることにより、前記柱梁接合部材を前記柱部材の所定位置に設置するとともに、前記ブラケットに前記梁材の端部を固定する
ことを特徴とする柱梁接合構造。
【請求項7】
請求項6に記載の柱梁接合構造の梁位置調整方法であって、
前記仕口本体部の内周面と、前記柱本体部の外周面との間に、前記柱本体部の径方向に所定の厚みを有する間詰材を設けることにより、前記柱梁接合部材の前記柱部材に対する設置位置を、前記間詰材を設けない場合の設置位置よりも高くする
ことを特徴とする柱梁接合構造の梁位置調整方法。
【請求項8】
請求項6に記載の柱梁接合構造の梁位置調整方法であって、
前記仕口本体部の内径を拡径又は縮径することにより、前記柱梁接合部材の前記柱部材に対する設置位置を調整する
ことを特徴とする柱梁接合構造の梁位置調整方法。
【請求項9】
請求項6に記載の柱梁接合構造を有する
ことを特徴とする架構構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、柱部材、柱接合構造、高さ調整方法、柱梁接合部材、柱梁接合構造、梁位置調整方法及び、架構構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物の施工の効率化を図る技術が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、上方に向かって縮径する円錐台形状の絞り部を有する鋼管コンクリート柱と、上方に向かって拡径する逆円錐台形状の内面を有するスラブ接合部材とを備え、スラブ接合部材を絞り部に上方から嵌め込むことにより、架構構造物を構築する技術が開示されている。
【0004】
例えば、特許文献2には、下側の鉄骨柱の上端にテーパ状の凸部を有するオス型挿込金具を取り付けるとともに、上側の鉄骨柱の下端にテーパ状の凹部を有するメス型受金具を取り付け、メス型受金具をオス型挿込金具に嵌合させることにより、鉄骨柱を鉛直方向に接合する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-295369号公報
【特許文献2】特開2010-281055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の技術では、複数本の鋼管コンクリート柱を鉛直方向に容易に接合する点については考慮されていない。このため、鋼管コンクリート柱を鉛直方向に接合するには、溶接又は添接板によるボルト接合等が必要となる。すなわち、施工の効率化に改善の余地があるといえる。
【0007】
また、特許文献1記載の技術では、構造物を一旦構築した後に構造変更を行う場合、或は、構造物を解体撤去する場合には、鋼管コンクリート柱の取り外しに大掛かりな作業が必要となる。このため、供用の一部又は全部が長期に亘って使用不可となり、利用者に大きな影響を与えるといった課題もある。
【0008】
また、特許文献1記載の技術では、絞り部が鋼管コンクリート柱の一部分にのみ設けられており、鋼管コンクリート柱に対するスラブ接合部材の設置位置が一義的に決まってしまう。このため、梁位置を適宜に調整又は変更するには、絞り部の位置を変更した新たな鋼管コンクリート柱を準備しなければならず、梁位置の調整又は変更に柔軟に対応できない課題もある。
【0009】
特許文献2記載の技術では、柱梁接合部材を鉄骨柱に容易に設置する点については考慮されていない。このため、柱梁接合部材を鉄骨柱に設置するには、溶接やボルト接合等が必要となり、工期が長引くといった課題がある。また、構造物を一旦構築した後に構造変更を行う場合、或は、構造物を解体撤去する場合には、柱梁接合部材の取り外しに大掛かりな作業が必要となり、利用者に影響を与えるといった課題もある。
【0010】
また、特許文献2記載の技術では、メス型受金具及びオス型挿込金具の長さが、鉄骨柱の長さに対して非常に短く形成されている。このため、メス型受金具とオス型挿込金具との嵌合部分に部材等を追加して、構造物の高さを調整又は変更しようとすると、これらの嵌合強度を十分に確保できなくなる可能性がある。すなわち、構造物の高さを調整又は変更するには、鉄骨柱の長さを変更しなければならず、構造物の高さを調整又は変更に柔軟に対応できない課題もある。
【0011】
本開示の技術は、上記事情に鑑みてなされたものであり、簡素な構成で、構造物の施工の効率化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の柱部材(10)は、
軸方向の一端(13)又は一端付近から他端(14)に向かうに従い縮径するテーパ状の外周面(12)を有する柱本体部(11)と、
前記柱本体部(11)の一端側の端面(13)に開口するとともに、前記柱本体部(11)内を軸方向に延び、前記端面(13)から前記柱本体部(11)の他端側に向かうに従い縮径するテーパ状の内周面(16)を有する凹部(15)と、を備え、
前記外周面(12)の軸方向に対する傾斜角(θ1)と、前記内周面(16)の軸方向に対する傾斜角(θ2)とが互いに等しい角度で形成されており、
前記凹部(15)の前記端面(13)の開口径(D3)が、前記柱本体部(11)の他端側(14)の外径(D2)よりも大きく形成されている
ことを特徴とする。
【0013】
本開示の柱接合構造は、前記柱部材(10)を鉛直方向に接合する柱接合構造であって、
鉛直方向下方に配される柱部材を下側柱部材(10A)、該下側柱部材(10A)に対して鉛直方向上方に配される柱部材を上側柱部材(10B)とし、
上側柱部材(10B)及び下側柱部材(10A)の前記柱本体部(11)の一端(13)を鉛直方向下方、他端(14)を鉛直方向上方とする順方向接合の場合には、上側柱部材(10B)の前記凹部(15)を、下側柱部材(10A)の上端側に上方から嵌め込み、上側柱部材(10B)の前記凹部(15)の内周面(16)を下側柱部材(10A)の前記柱本体部(11)の外周面(12)と接触させることにより、上側柱部材(10B)と下側柱部材(10A)とを接合し、
上側柱部材(10B)及び下側柱部材(10A)の前記柱本体部(11)の一端(13)を鉛直方向上方、他端(14)を鉛直方向下方とする逆方向接合の場合には、上側柱部材(10B)の下端側を、下側柱部材(10A)の前記凹部(15)に上方から嵌め込み、下側柱部材(10A)の前記凹部(15)の内周面(16)を上側柱部材(10B)の前記柱本体部(11)の外周面(12)と接触させることにより、上側柱部材(10B)と下側柱部材(10A)とを接合する
ことを特徴とする。
【0014】
本開示の高さ調整方法は、前記柱接合構造の高さ調整方法であって、
前記順方向接合の場合には、
上側柱部材(10B)の前記凹部(15)の内周面(16)と、下側柱部材(10A)の前記柱本体部(11)の外周面(12)との間に、前記柱本体部(11)の径方向に所定の厚みを有する間詰材(20,21)を設けることにより、上側柱部材(10B)と下側柱部材(10A)とを接合した総高さ(HS’)を、前記間詰材(20,21)を設けない場合の総高さ(HS)よりも高くし、
前記逆方向接合の場合には、
下側柱部材(10A)の前記凹部(15)の内周面(16)と、上側柱部材(10B)の前記柱本体部(11)の外周面(12)との間に、前記柱本体部(11)の径方向に所定の厚みを有する間詰材(20,21)を設けることにより、上側柱部材(10B)と下側柱部材(10A)とを接合した総高さ(HS’)を、前記間詰材(20,21)を設けない場合の総高さ(HS)よりも高くする
ことを特徴とする。
【0015】
本開示の他の態様の高さ調整方法は、前記柱接合構造の高さ調整方法であって、
前記順方向接合の場合には、
下側柱部材(10A)の前記柱本体部(11)の上面(14)と上側柱部材(10B)の前記凹部(15)の底面(18)との間に、該底面(18)を下方から支持して、上側柱部材(10B)の前記凹部(15)の内周面(16)と下側柱部材(10A)の前記柱本体部(11)の外周面(12)との間に所定の隙間を形成する支持部材(28)を設け、且つ、該隙間に間詰材(22,23)を設けることにより、上側柱部材(10B)と下側柱部材(10A)とを接合した総高さ(HS”)を、前記支持部材(28)を設けない場合の総高さ(HS)よりも高くし、
前記逆方向接合の場合には、
下側柱部材(10A)の前記凹部(15)の底面(18)と上側柱部材(10B)の前記柱本体部(11)の下面(14)との間に、該下面(14)を下方から支持して、下側柱部材(10A)の前記凹部(15)の内周面(16)と上側柱部材(10B)の前記柱本体部(11)の外周面(12)との間に所定の隙間を形成する支持部材(28)を設け、且つ、該隙間に間詰材(22,23)を設けることにより、上側柱部材(10B)と下側柱部材(10A)とを接合した総高さ(HS”)を、前記支持部材(28)を設けない場合の総高さ(HS)よりも高くする
ことを特徴とする。
【0016】
本開示の柱梁接合部材は、前記柱部材(10)と梁材(40)とを接合する柱梁接合部材(30)であって、
軸方向の一端から他端に向かうに従い縮径するテーパ状の内周面(33)を有する仕口本体部(31)と、
前記仕口本体部(31)の外周面(32)から径方向に延びるとともに、前記梁材(40)の端部が固定されるブラケット(36)と、を備え、
前記仕口本体部(31)の内周面(33)の軸方向に対する傾斜角(θ3)が、前記柱本体部(11)の外周面(12)の軸方向に対する傾斜角(θ1)と等しい角度で形成されており、
前記仕口本体部(31)の内径(D5)が、前記柱本体部(11)の一端側の外径(D1)よりも小さく、且つ、前記柱本体部(11)の他端側の外径(D2)よりも大きく形成されている
ことを特徴とする。
【0017】
本開示の柱梁接合構造は、前記柱部材(10)に、前記柱梁接合部材(30)を設置して梁材(40)を接合する柱梁接合構造であって、
前記柱本体部(11)及び前記仕口本体部(31)の一端を鉛直方向下方、前記柱本体部(11)及び前記仕口本体部(31)の他端を鉛直方向上方とし、
前記仕口本体部(31)を前記柱本体部(11)に上方から嵌め込み、前記仕口本体部(31)の内周面(33)を前記柱本体部(11)の外周面(12)と接触させることにより、前記柱梁接合部材(30)を前記柱部材(10)の所定位置に設置するとともに、前記ブラケット(36)に前記梁材(40)の端部を固定する
ことを特徴とする。
【0018】
本開示の梁位置調整方法は、前記柱梁接合構造の梁位置調整方法であって、
前記仕口本体部(31)の内周面(33)と、前記柱本体部(11)の外周面(12)との間に、前記柱本体部(11)の径方向に所定の厚みを有する間詰材(60)を設けることにより、前記柱梁接合部材(30)の前記柱部材(10)に対する設置位置を、前記間詰材(60)を設けない場合の設置位置よりも高くする
ことを特徴とする。
【0019】
本開示の他の態様の梁位置調整方法は、前記柱梁接合構造の梁位置調整方法であって、
前記仕口本体部(31)の内径を拡径又は縮径することにより、前記柱梁接合部材(30)の前記柱部材(10)に対する設置位置を調整する
ことを特徴とする。
【0020】
本開示の架構構造物(100)は、前記柱梁接合構造を有する
ことを特徴とする。
【0021】
上記説明においては、本開示の理解を助けるために、実施形態に対応する構成要件に対して、実施形態で用いた符号を括弧書きで添えているが、各構成要件は、前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0022】
本開示の技術によれば、簡素な構成で、構造物の施工の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態に係る柱部材を示す模式的な斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る柱部材を示す模式的な縦断面図である。
【
図3】複数本の柱部材を鉛直方向に接合する接合手順を説明する模式図である。
【
図4】柱接合構造の第一の高さ調整方法を説明する模式図である。
【
図5】柱接合構造の第二の高さ調整方法を説明する模式図である。
【
図6】(A)は、本実施形態に係る柱梁接合部材を示す模式的な斜視図である。(B)は、本実施形態に係る柱梁接合部材を示す模式的な縦断面図である。
【
図7】本実施形態に係る他の柱梁接合部材を示す模式的な斜視図である。
【
図8】柱梁接合部材を柱部材に設置する設置手順を説明する模式図である。
【
図9】柱梁接合構造の第一の梁位置調整方法を説明する模式図である。
【
図10】柱梁接合構造の第二の梁位置調整方法を説明する模式図である。
【
図11】変形例の柱梁接合部材を示す模式的な斜視図である。
【
図12】本実施形態に係る柱部材及び、柱梁接合部材を用いた架構構造物の構築方法を説明する模式図である。
【
図13】本実施形態に係る柱部材及び、柱梁接合部材を用いた架構構造物の構築方法を説明する模式図である。
【
図14】本実施形態に係る柱部材及び、柱梁接合部材を用いた架構構造物の構築方法を説明する模式図である。
【
図15】本実施形態に係る柱部材及び、柱梁接合部材を用いて構築された構造物の構造変更方法を説明する模式図である。
【
図16】本実施形態に係る柱部材及び、柱梁接合部材を用いて構築された構造物の構造変更方法を説明する模式図である。
【
図17】本実施形態に係る柱部材及び、柱梁接合部材を用いて構築された構造物の構造変更方法を説明する模式図である。
【
図18】本実施形態に係る柱部材及び、柱梁接合部材を用いて構築された構造物の構造変更方法を説明する模式図である。
【
図19】変形例の柱部材を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に基づいて、本実施形態に係る柱部材、柱接合構造、高さ調整方法、柱梁接合部材、柱梁接合構造、梁位置調整方法及び、架構構造物について説明する。
【0025】
[柱部材]
図1は、本実施形態に係る柱部材10を示す模式的な斜視図である。
図2は、本実施形態に係る柱部材10を示す模式的な縦断面図である。
図1に示すように、柱部材10は、上方に向かうに従い縮径する略円錐台形状の柱本体部11を有する。柱部材10は、例えば、RC(鉄筋コンクリート)柱である。なお、柱部材10は、RC柱に限定されず、鋼管コンクリート柱、SRC(鉄筋鉄骨コンクリート)柱、木質柱、鋼柱等であってもよい。また、柱本体部11の形状は、円錐台形状に限定されず、例えば角錐台形状であってもよい。
【0026】
柱本体部11は、テーパ状の外周面12、円形状の下面13及び、円形状の上面14を有する。以下では、柱本体部11の外周面12を「外側テーパ面」と称する。外側テーパ面12は、好ましくは、柱本体部11の下端から上端の略全長に亘って設けられている。柱部材10の軸方向の全長(高さ)L1は、特に限定されず、構造物の種類や用途、階高等に応じた適宜の長さとすることができる。構造物が、例えば、ビル等の建築物の場合、柱部材10は、複数本で一階分の階高を形成してもよく、或は、一本で複数階分の階高を形成してもよい。
【0027】
図2に示すように、柱本体部11の下面13の外径D1は、上面14の外径D2よりも大きく形成されている(D1>D2)。柱本体部11には、下面13から柱本体部11内を軸方向に延びる略円錐台形状の凹部15が設けられている。凹部15の軸心は、柱本体部11の軸心O1と一致する。凹部15は、テーパ状の内周面16と、下面13に開口する円形状の開口部17と、開口部17と軸心方向に対向する円形状の頂面18(凹部15の底面)とを有する。以下では、凹部15の内周面16を「内側テーパ面」と称する。なお、柱本体部11の形状が角錐台形状の場合、凹部15の形状も角錐台形状の有底穴とすればよい。
【0028】
開口部17の内径D3は、上面14の外径D2よりも大きく形成されており、凹部15内に他の柱部材10の上端側を容易に差し込めるようになっている(D3>D2)。外側テーパ面12の軸心O1に対する傾斜角θ1は、内側テーパ面16の軸心O1に対する傾斜角θ2と略等しい角度で形成されている。また、頂面18の内径D4は、上面14の外径D2よりも小さく形成されており、凹部15の頂面18に近い所定位置Pの内径D5は、上面14の外径D2と略等しい径で形成されている(D2≒D5>D4)。すなわち、凹部15内に他の柱部材10の上端側が所定位置Pまで差し込まれると、内側テーパ面16と他の柱部材10の外側テーパ面12とが確実に面接触するようになっている。
【0029】
以下では、凹部15の軸方向の長さ(深さ)、すなわち、開口部17から頂面18までの長さL2を「穴長さ」と称する。また、凹部15の開口部17から所定位置Pまでの長さL3を「差し込み長さ」と称する。差し込み長さL3をどの程度とするかは、柱本体部11の全長L1と凹部15の穴長さL2との関係、或は、構築する構造物が必要とする柱部材10の接合強度等に応じて適宜に設定すればよい。
図2に示す例では、差し込み長さL3は、柱本体部11の全長L1の約1/3で設定されている。
【0030】
[柱部材の接合手順]
図3(A)~(C)は、複数本の柱部材10を鉛直方向に接合する接合手順を説明する模式図である。なお、
図3(A)~(C)において、下方の柱部材を「柱部材10A」、「柱部材10A」に接合される上方の柱部材を「柱部材10B」と称する。
図3(A)~(C)では、柱部材10Aは、柱部材10Bが接合されるよりも前に、不図示の基礎、或は、他の柱部材に接合されているものとする。
図3(A)~(C)は、本開示の順方向接合の一例である。
【0031】
柱部材10Bを柱部材10Aに接合する場合、
図3(A)に示すように、柱部材10Bをクレーン等の重機を用いて柱部材10Aの直上に持ち上げ、それらの柱本体部11の軸心を互いに略一致させる。軸心が略一致したならば、
図3(B)に示すように、柱部材10Bを柱部材10Aに向けて降下させる。柱部材10Bが降下すると、柱部材10Bの凹部15内に柱部材10Aの柱本体部11の上端側が差し込まれる。
【0032】
図3(C)に示すように、柱部材10Bの凹部15の所定位置Pが、柱部材10Aの柱本体部11の上面14に到達するまで、柱部材10Bを降下させると、柱部材10Bの内側テーパ面16が、その自重によって柱部材10Aの外側テーパ面12に押し付けられて面接触する。これらテーパ面12,16が面接触すると、柱部材10A,10Bの接合作業が完了する。
【0033】
すなわち、柱部材10Bの凹部15を柱部材10Aの上端側に嵌め込むのみで、これら柱部材10A,10Bを容易に接合できるように構成されている。これにより、溶接やボルト締結等が不要となり、溶接作業時に発生する煙や火花等に対する養生等も不要となり、作業工数を大幅に削減することが可能になる。また、作業工数の削減により工期を確実に短縮することも可能になる。
【0034】
なお、構造物を構築した後に、構造物を解体する場合、或は、構造物の構造変更等を行う場合において、柱部材10を撤去する際は、
図3(A)~(C)に示す接合手順とは逆の作業手順となる。すなわち、上側の柱部材10Bにジャッキを用いて鉛直方向上向きの補助力を付与し、クレーン等の重機を用いて上側の柱部材10Bを下側の柱部材10Aから引き抜くのみで、撤去作業も容易に行うことができる。
【0035】
ここで、構造物の工期を短縮するには、柱部材10を予め工場等で製造し、施工現場に輸送することにより逐次建て込むことが望ましい。柱部材10を工場で製造する場合、製造設備の制約等から、多様な寸法の柱部材10を製造することは難しい。しかしながら、現場で必要とされる柱部材10の寸法は、構築する構造物の階高等に応じて様々であり、多様な寸法に柔軟に対応できることが望まれる。また、構造物を一旦構築した後に、用途変更等に伴い構造変更を行う場合も、多様な寸法に柔軟に対応できることが望まれる。
【0036】
本実施形態の柱部材10は、以下に説明する方法により、互いに接合される柱部材10の総高さ(
図3(C)に示す例では、柱部材10Aの全長L1と、柱部材10Bの全長L1との総和から差し込み長さL3を減じた値(HS=L1+L1-L3))を調整できるように構成されている。なお、以下では、
図3(C)に示す2本の柱部材10A,10Bを接合した総高さHSを「基準総高さ」と称する。
【0037】
[第一の高さ調整方法]
図4(A)~(C)は、柱接合構造の第一の高さ調整方法を説明する模式図である。
図4(A)~(C)に示す高さ調整方法では、少なくとも2個以上の間詰材20,21を用いる。なお、間詰材20,21を軸方向に長く形成する場合、間詰材20,21の個数は1個であってもよい。
【0038】
図4(A),(B)に示すように、第1間詰材20及び、第2間詰材21は、縦断面台形状の円環状に形成されており、テーパ状の内周面と、テーパ状の外周面とをそれぞれ有する。これら間詰材20,21の内周面及び外周面の軸心に対する傾斜角は、前述の柱本体部11の外側テーパ面12の傾斜角θ1及び内側テーパ面16の傾斜角θ2と略等しい角度で形成されている。また、第1間詰材20及び、第2間詰材21の径方向の厚みは、互いに等しい厚みで形成されている。
【0039】
図4(C)に示すように、第1間詰材20及び、第2間詰材21の外径は、少なくとも凹部15の開口部17の内径よりも小さい径で形成されている。第1間詰材20の内径は、好ましくは、柱本体部11の上端側の外径と略等しい径で形成されている。すなわち、第1間詰材20は、柱部材10Aの外側テーパ面12の上端側に嵌め込まれる。第2間詰材21の内径は、第1間詰材20の内径よりも大きく形成されている。すなわち、第2間詰材21は、柱部材10Aの外側テーパ面12のうち、第1間詰材20よりも下側の部分に嵌め込まれる。
【0040】
なお、第1間詰材20及び、第2間詰材21を嵌め込む位置は、図示例に限定されず、柱部材10Aの柱本体部11が柱部材10Bの凹部15内に差し込まれる部分であれば、適宜の位置とすることができる。
【0041】
柱部材10Aに柱部材10Bを接合する際は、まず、柱部材10Aの外側テーパ面12に第2間詰材21、第1間詰材20を順に嵌め込む。なお、これら間詰材20,21を柱部材10Bの凹部15内に仮止めできる場合、各間詰材20,21は柱部材10Bの凹部15に予め取り付けておいてもよい。各間詰材20,21を嵌め込んだならば、柱部材10Bを柱部材10Aに向けて降下させる。
【0042】
柱部材10Bの凹部15内に柱部材10Aの柱本体部11が差し込まれると、柱部材10Bの内側テーパ面16は、各間詰材20,21を介して柱部材10Aの外側テーパ面12に支持される。これにより、差し込み長さL3’が間詰材20,21を用いない場合の差し込み長さL3(
図3参照)よりも短くなることで、各柱部材10A,10Bの総高さHS’は基準総高さHS(
図3参照)よりも高くなる(HS’>HS)。
【0043】
すなわち、各間詰材20,21の径方向の厚みを適宜の厚みとすることで、各柱部材10A,10Bの総高さHS’を任意に調整することができる。これにより、構造物を構築する際の階高調整、或は、構築した構造物の用途変更に伴う構造変更等に柔軟に対応することが可能になる。
【0044】
各間詰材20,21の材料は、特に限定されず、柱部材10Bから柱部材10Aに軸力を伝達可能な材料であればよい。このような材料としては、例えば鋼材等が挙げられる。また、各間詰材20,21の形状は、円環状に限定されず、例えば、板状の分割体であってもよい。この場合は、各分割体を周方向に好ましくは等ピッチで少なくとも3個以上、好ましくは4個以上配置し、各分割体を柱部材10Aの外側テーパ面12又は、柱部材10Bの凹部15に仮止めすればよい。
【0045】
[第二の高さ調整方法]
図5(A)~(D)は、柱接合構造の第二の高さ調整方法を説明する模式図である。
図5(A)~(D)に示す高さ調整方法では、少なくとも1個以上の支持部材28と、少なくとも1個以上の間詰材22,23(図示例では、2個)を用いる。
【0046】
図5(A)に示すように、支持部材28は円柱状に形成されている。なお、支持部材28は、角柱状であってもよい。支持部材28は、柱部材10Aと柱部材10Bとの間に配置され、柱部材10Bを下方から支持する。支持部材28は、柱部材10Bから柱部材10Aに軸力を伝達可能なものであれば、鋼材、RC構造体等を適宜に採用することができる。また、支持部材28は、超高強度繊維補強コンクリート(例えば、株式会社大林組のスリムクリート(登録商標)等)により形成してもよい。
【0047】
図5(D)に示すように、支持部材28は、好ましくは、軸心が柱部材10Aの軸心と一致するように、柱部材10Aの上面14に載置される。支持部材28の上端は、柱部材10Bの凹部15の頂面18に当接する。第二の高さ調整方法において、支持部材28の長さL5は、少なくとも、凹部15の穴長さL2と、当初の差し込み長さL3(何れも
図3参照)との差分よりも長く形成される(L5>L2-L3)。すなわち、差し込み長さL3”は、支持部材28を用いない場合の当初の差し込み長さL3(
図3参照)よりも短くなる(L3”<L3)。これにより、支持部材28の長さL5から当初の差分(L2-L3)を差し引いた分だけ、各柱部材10A,10Bの総高さHS”を基準総高さHS(
図3参照)よりも高くすることができる(HS”=L1+L1-L3”=HS+(L5-L2+L3)>HS)。
【0048】
柱部材10Aと柱部材10Bとの間に支持部材28を設けると、柱部材10Aの外側テーパ面12と柱部材10Bの内側テーパ面16との間には隙間が形成される。第二の高さ調整方法において、第1及び第2間詰材22,23の形状は、
図4に示す第一の高さ調整方法に用いるものと略同じ形状となるが、その機能は異なる。具体的には、第二の高さ調整方法において、第1及び第2間詰材22,23は、柱部材10Aに接合される柱部材10Bのがたつきを防止するように機能する。
【0049】
なお、第1間詰材22及び、第2間詰材23を嵌め込む位置は、
図5(D)の例示に限定されず、柱部材10Aの柱本体部11が柱部材10Bの凹部15内に差し込まれる部分であれば、適宜の位置とすることができる。
【0050】
第二の高さ調整方法において、第1及び第2間詰材22,23の材料は特に限定されず、柱部材10Bのがたつきを防止できる材料であればよい。このような材料としては、例えば鋼材、硬質ゴム等が挙げられる。
【0051】
柱部材10Aに柱部材10Bを接合する際は、まず、柱部材10Aの外側テーパ面12に第2間詰材23、第1間詰材22を順に嵌め込む。また、支持部材28を柱部材10Aの上面14に載置する。これら間詰材22,23の嵌め込みと、支持部材28の載置は、順不同である。各間詰材22,23を嵌め込み、支持部材28を載置したならば、柱部材10Bを柱部材10Aに向けて降下させる。
【0052】
柱部材10Bの凹部15内に柱部材10Aの柱本体部11が差し込まれると、柱部材10Bは、支持部材28を介して柱部材10Aに支持される。これにより、差し込み長さL3”が支持部材28を用いない場合の差し込み長さL3(
図3参照)よりも短くなることで、各柱部材10A,10Bの総高さHS”は基準総高さHS(
図3参照)よりも高くなる(HS”>HS)。
【0053】
すなわち、支持部材28の軸方向の長さL5を適宜の長さとすることで、各柱部材10A,10Bの総高さHS”を任意に調整することができる。これにより、構造物を構築する際の階高調整、或は、構築した構造物の用途変更に伴う構造変更等に柔軟に対応することが可能になる。
【0054】
第一の高さ調整方法、又は、第二の高さ調整方法の何れを採用するかは、構造物の具体的な階高、構造物の構造変更を行う部分等に応じて適宜に選択すればよい。また、第一の高さ調整方法及び、第二の高さ調整方法は、併用することも可能である。例えば、3本の柱部材10を接合する場合、2カ所の接合部に対して、一方の接合部に第一の高さ調整方法を採用し、他方の接合部に第二の高さ調整方法を採用することも可能である。
【0055】
[柱梁接合部材]
図6(A)は、本実施形態に係る柱梁接合部材30を示す模式的な斜視図である。
図6(B)は、本実施形態に係る柱梁接合部材30を示す模式的な縦断面図である。柱梁接合部材30は、例えば、鋼製の仕口材であって、略円錐台形筒状の仕口本体部31と、複数枚のブラケット36とを有する。
【0056】
仕口本体部31は、テーパ状の外周面32と内周面33とを有する。なお、仕口本体部31は、外周面32がテーパ状である必要はなく、少なくとも内周面33がテーパ状であればよい。以下では、仕口本体部31の内周面33を「仕口テーパ面」と称する。なお、前述の柱部材10(
図1等参照)の形状が角錐台形状の場合、仕口本体部31の形状は角錐台形筒状とすればよい。
【0057】
図6(B)に示すように、仕口テーパ面33の軸心O2に対する傾斜角θ3は、柱部材10の外側テーパ面12の傾斜角θ1(
図2参照)と略等しい角度で形成されている。仕口本体部31の上端部の内径D5及び下端部の内径D6は、柱本体部11の上面14の外径D2(
図2参照)よりも大きく、且つ、柱本体部11の下面13の外径D1(
図2参照)よりも小さい径で形成されている(D2<D5<D6<D1)。すなわち、柱梁接合部材30を柱部材10に上面14側から差し込むと、仕口本体部31の仕口テーパ面33が、柱本体部11の外側テーパ面12に面接触することにより、柱梁接合部材30を柱部材10の所定位置に設置できるように構成されている。
【0058】
ブラケット36は、仕口本体部31の外周面32を軸方向に延びるとともに、外周面32から径方向外側に向かって延びるプレート材である。ブラケット36は、その端部を仕口本体部31の外周面32に溶接等によって固定されている。ブラケット36及び仕口本体部31には、これらの強度を確保するための複数の補強リブ37が溶接等によって取り付けられている。また、ブラケット36には、複数のボルト挿通孔38が設けられている。補強リブ37やボルト挿通孔38の個数は図示例に限定されず、ブラケット36や梁材40の具体的な寸法・強度等に応じて適宜の個数とすることができる。
【0059】
ブラケット36には、梁材40(
図6(A)参照)が接続される。梁材40は、例えば、ウェブ41及び、一対のフランジ42,43を有するH型鋼である。なお、梁材40は、H型鋼に限定されず、木質梁等を用いることもできる。梁材40の一端側には複数のボルト挿通孔44が設けられている。梁材40は、一対の連結プレート45を介してブラケット36に接合される。
【0060】
具体的には、連結プレート45には、各ボルト挿通孔38,44に対応する複数のボルト挿通孔46が設けられている。梁材40は、ブラケット36とウェブ41とを連結プレート45によって挟持した状態で、これらをボルトナット(図示せず)によって締結することにより、柱梁接合部材30に固定される。なお、ブラケット36と梁材40との固定は、ボルト締結に限定されず、溶接等を併用してもよい。
【0061】
柱梁接合部材30は、水平方向をX方向に延びる梁材40と、水平方向をX方向と直交するY方向に延びる梁材40とを柱部材10にそれぞれ接合する。
図6(A)に示す柱梁接合部材30は、X方向に延びる2本の梁材40と、Y方向に延びる2本の梁材40とを柱部材10に接合する。このため、
図6(A)に示す柱梁接合部材30には、X方向に2個のブラケット36及び、Y方向に2個のブラケット36がそれぞれ設けられている。
【0062】
図7(A)に示す柱梁接合部材30は、X方向(又は、Y方向)に延びる2本の梁材40と、Y方向(又は、X方向)に延びる1本の梁材40とを柱部材10に接合する。このため、
図7(A)に示す柱梁接合部材30には、X方向(又は、Y方向)に2個のブラケット36及び、Y方向(又は、X方向)に1個のブラケット36が設けられている。
図7(A)に示す柱梁接合部材30は、主に構造物の端辺等(例えば、外周や開口周り)の中間柱を構成する柱部材10に設置される。
【0063】
図7(B)に示す柱梁接合部材30は、X方向に延びる1本の梁材40と、Y方向に延びる1本の梁材40とを柱部材10に接合する。このため、
図7(B)に示す柱梁接合部材30には、X方向に1個のブラケット36及び、Y方向に1個のブラケット36が設けられている。
図7(B)に示す柱梁接合部材30は、主に構造物の角部等を構成する柱部材10に設置される。
【0064】
[柱梁接合部材の設置手順]
図8(A)~(C)は、柱梁接合部材30を柱部材10に設置する設置手順を説明する模式図である。なお、
図8(A)~(C)では、柱部材10は、柱梁接合部材30を設置するよりも前に、不図示の基礎、又は、他の柱部材に接合されているものとする。
【0065】
柱梁接合部材30を柱部材10に設置する場合、
図8(A)に示すように、柱梁接合部材30をクレーン等の重機を用いて柱部材10の直上に持ち上げ、これら柱梁接合部材30と柱部材10の軸心を互いに略一致させる。軸心が略一致したならば、
図8(B)に示すように、柱梁接合部材30を柱部材10に向けて降下させる。柱梁接合部材30が降下すると、仕口本体部31の内部に柱本体部11の上端側が差し込まれる。
【0066】
図8(C)に示すように、仕口本体部31の仕口テーパ面33が柱本体部11の外側テーパ面12に接する位置まで、柱梁接合部材30を降下させると、仕口本体部31の仕口テーパ面33が、柱梁接合部材30の自重によって柱本体部11の外側テーパ面12に押し付けられて面接触することにより、柱梁接合部材30の設置作業が完了する。
【0067】
すなわち、柱梁接合部材30を柱部材10に嵌め込むのみで、柱梁接合部材30を柱部材10に容易に設置できるように構成されている。これにより、溶接やボルト締結等が不要となり、溶接作業時に発生する煙や火花等に対する養生等も不要となり、作業工数を大幅に削減することが可能になる。また、作業工数の削減により工期を確実に短縮することも可能になる。また、仕口本体部31は、円錐台形筒状に形成されているため、柱梁接合部材30を柱部材10に設置した際のブラケット36の向き、すなわち、梁材40を架け渡す方向を自由に調整又は変更することも可能である。
【0068】
なお、構造物を構築した後に、構造物を解体する場合、或は、構造物の構造変更等を行う場合において、柱梁接合部材30を柱部材10から撤去する際は、
図8(A)~(C)に示す設置作業とは逆の作業手順となる。すなわち、ジャッキ等によって柱梁接合部材30と柱部材10との嵌合を緩め、柱梁接合部材30をクレーン等の重機を用いて柱部材10から上方に引き抜くのみで、撤去作業も容易に行うことができる。
【0069】
ここで、構造物の工期を短縮するには、柱部材10と同様、柱梁接合部材30を予め工場等で製造し、施工現場に輸送することにより柱部材10に逐次設置することが望ましい。工場設備の制約等から、多様な寸法の柱梁接合部材30を製造することは難しいが、現場で要求される梁位置は、構造物の階高等に応じて様々であり、多様な寸法に柔軟に対応できることが望まれる。また、用途変更等に伴い構造変更を行う場合も、多様な寸法に柔軟に対応できることが望まれる。
【0070】
本実施形態の柱梁接合部材30は、以下に説明する方法により、柱梁接合部材30の柱部材10に対する設置位置、すなわち梁位置を調整できるように構成されている。なお、以下では、
図8(C)に示す柱梁接合部材30の位置BPを「基準梁位置」と称する。
【0071】
[第一の梁位置調整方法]
図9(A),(B)は、柱梁接合構造の第一の梁位置調整方法を説明する模式図である。
図9(A),(B)に示す梁位置調整方法では、例えば鋼製の間詰材60を用いる。
図9(A)に示すように、間詰材60は、略円錐台形筒状に形成されており、テーパ状の内周面と、テーパ状の外周面とを有する。間詰材60の内周面及び外周面の軸心に対する傾斜角は、柱部材10の外側テーパ面12の傾斜角θ1(
図2参照)及び、仕口本体部31の仕口テーパ面33の傾斜角θ3(
図6参照)と略等しい角度で形成されている。
【0072】
図9(B)に示すように、間詰材60の外径は、仕口本体部31の内径と略等しい径で形成されている。また、間詰材60の内径は、少なくとも、柱本体部11の基準梁位置BPに対応する部分の外径よりも小径に形成されている。なお、柱部材10Aに柱部材10Bが接合される場合、間詰材60の内径は、好ましくは、柱本体部11の凹部15内に差し込まれる部分Eの外径よりも大径に形成される。すなわち、間詰材60は、柱部材10Aの基準梁位置BPよりも上方であって、柱部材10Bよりも下方の部分に柱梁接合部材30を設置するように機能する。
【0073】
柱梁接合部材30を基準梁位置BPよりもどの程度高い位置にするかは、間詰材60の径方向の厚みを調整することにより設定すればよい。間詰材60の厚みを増すほど、柱梁接合部材30の設置位置を高くすることができる。
【0074】
柱梁接合部材30を柱部材10Aに設置する際は、まず、柱部材10Aの外側テーパ面12に間詰材60を嵌め込む。なお、間詰材60を仕口本体部31の仕口テーパ面33に仮止めできる場合、間詰材60は仕口テーパ面33に予め取り付けておいてもよい。間詰材60を嵌め込んだならば、柱梁接合部材30を柱部材10Aに向けて降下させる。
【0075】
柱梁接合部材30の降下に伴い、仕口本体部31の仕口テーパ面33が間詰材60の外周面に面接触すると、柱梁接合部材30は、間詰材60を介して柱部材10の外側テーパ面12に設置される。これにより、梁位置BP’は基準梁位置BPよりも高くなる(BP’>BP)。すなわち、間詰材60の径方向の厚みを適宜の厚みとすることで、柱梁接合部材30の梁位置BP’を任意に調整することが可能になる。
【0076】
なお、間詰材60の形状は、円錐台形筒状に限定されず、例えば、板状の分割体であってもよい。この場合は、各分割体を周方向に好ましくは等ピッチで少なくとも3個以上、好ましくは4個以上配置し、各分割体を柱部材10Aの外側テーパ面12又は、柱梁接合部材30の仕口テーパ面33に仮止めすればよい。
【0077】
[第二の梁位置調整方法]
図10は、柱梁接合構造の第二の梁位置調整方法を説明する模式図である。
図10に示す梁位置調整方法では、柱梁接合部材30の仕口本体部31の内径を拡大又は縮小することにより、柱梁接合部材30の柱部材10に対する設置位置を変更する。なお、以下では、仕口本体部31の内径を拡大する場合を説明する。
【0078】
図10に示す仕口本体部31Bの内径は、
図9中破線で示す柱梁接合部材30の仕口本体部31の内径よりも大きい径で形成される。このように、仕口本体部31Bの内径を拡大すれば、柱梁接合部材30Bを柱部材10Aに接合される上側の柱部材10Bの下端側に設置することできる。すなわち、梁位置BP”を基準梁位置BPよりも高く調整することができる(BP”>BP)。また、図面による例示は省略するが、柱梁接合部材30Bを柱部材10Aに設置すれば、梁位置を基準梁位置BPよりも低く調整することができる。
【0079】
仕口本体部31Bの内径をどの程度とするかは、仕口本体部31の内径よりも大きく、且つ、柱部材10の外側テーパ面12の下端部の外径よりも小さい範囲にて、柱梁接合部材30Bを設置したい場所に応じて適宜に調整すればよい。
【0080】
なお、柱梁接合部材30Bを柱部材10Aの基準梁位置BPよりも上方の部分に設置したい場合、仕口本体部31Bの内径を縮小すればよい。また、
図10に示す調整方法は、
図9に示す調整方法と併用することも可能である。
【0081】
[変形例]
図11は、変形例の柱梁接合部材30Cを説明する模式図である。変形例の柱梁接合部材30Cは、仕口本体部31を周方向に等ピッチでn個(nは整数)に分割したものである。
図11に示す例では、仕口本体部31は、周方向に90°ピッチで4分割されている。以下では、これら分割された4個を単に分割体31
_1,31
_2,31
_3,31
_4と称する。
【0082】
図11に示すように、分割体31
_1~31
_4は、ブラケット36が設けられた分割体31
_1,31
_2と、ブラケット36が設けられていない分割体31
_3,31
_4とを有する。
【0083】
4本の梁材40が固定される柱梁接合部材30(
図6(A)参照)を構成する場合は、ブラケット36が設けられた分割体31
_1又は31
_2を計4個用い、これらを周方向に接合すればよい。3本の梁材40が固定される柱梁接合部材30(
図7(A)参照)を構成する場合は、ブラケット36が設けられた分割体31
_1又は31
_2を計3個、ブラケット36が設けられていない分割体31
_3又は31
_4を1個用い、これらを周方向に接合すればよい。2本の梁材40が固定される柱梁接合部材30(
図7(B)参照)を構成する場合は、ブラケット36が設けられた分割体31
_1又は31
_2を計2個、ブラケット36が設けられていない分割体31
_3又は31
_4を2個用い、これらを周方向に接合すればよい。各分割体31
_1~31
_4の接合は、溶接又は添接板によるボルト締結の何れであってもよい。
【0084】
各分割体31_1~31_4は、予め接合して柱梁接合部材30Cを構成した後に、柱部材10に嵌め込んで設置してもよい。或は、各分割体31_1~31_4を柱部材10の外側テーパ面12の所望位置に仮止めした状態で互いに接合することにより、柱梁接合部材30を差し込むことなく設置することも可能である。
【0085】
変形例の柱梁接合部材30Cによれば、柱部材10に差し込むことなく設置できるので、例えば、複数本の柱部材10を鉛直方向に接合した後であっても、柱梁接合部材30Cを下側の柱部材10に容易に設置することができる。すなわち、施工順序の自由度を上げることができる。また、構造物を一旦構築した後に、構造変更を行う場合、対象となる階層よりも上方の柱部材10や柱梁接合部材30、梁材40等を撤去することなく作業を行うことができる。すなわち、構造変更に要する工程数や工期を大幅に削減することが可能になる。
【0086】
[構造物の構築方法]
次に、
図12~14に基づいて、本実施形態に係る柱部材10及び、柱梁接合部材30を用いた架構構造物100の構築方法について説明する。
図12~14において、符号200は、架構構造物100の基礎を示している。以下の説明において、基礎200は既に構築されているものとする。
【0087】
図12は、架構構造物100の1階部分の柱部材10の接合工程を示している。架構構造物100の基礎200には、柱部材10の凹部15に差し込まれる円錐台形状の凸部210が設けられている。凸部210は、基礎200に柱部材10の下端側を埋設することにより形成されてもよい。
【0088】
図12に示す工程では、基礎200に下側の柱部材10Aを建て込んだ後、下側の柱部材10Aに上側の柱部材10Bを接合する。柱部材10Aの基礎200への建て込みは、基礎200の凸部210が柱部材10Aの凹部15内に差し込まれるよう、クレーン等を用いて柱部材10Aを凸部210に向けて降下させることにより行われる。また、柱部材10Bの柱部材10Aへの接合は、柱部材10Aの上端側が柱部材10Bの凹部15内に差し込まれるよう、クレーン等を用いて柱部材10Bを柱部材10Aに向けて降下させることにより行われる。
【0089】
すなわち、溶接等を行うことなく各柱部材10A,10Bを降下させるのみで接合作業を完了することができる。これにより、溶接に伴う養生作業や溶接作業そのものが不要となり、工期を大幅に短縮することが可能になる。
【0090】
なお、架構構造物100の1階部分を構成する柱部材10の本数は、図示例の2本に限定されず、1本でもよく、或いは、3本以上であってもよい。また、必要に応じて、
図4及び
図5に基づいて説明した高さ調整方法を適用してもよい。柱部材10の本数や高さ調整方法は、架構構造物100の1階部分の具体的な設計値(階高)に基づいて決定すればよい。
【0091】
図13は、架構構造物100の2階部分の床を支持する梁材40及び、柱梁接合部材30の設置工程を示している。柱梁接合部材30は、仕口本体部31内に柱部材10Bが差し込まれるよう、クレーン等を用いて柱梁接合部材30を柱部材10Bに向けて降下させることにより行われる。
【0092】
すなわち、溶接等を行うことなく柱梁接合部材30を降下させるのみで設置作業を完了することができる。これにより、溶接に伴う養生作業や溶接作業そのものが不要となり、工期を大幅に短縮することが可能になる。柱梁接合部材30の柱部材10Bに対する設置位置は、図示例に限定されず、必要に応じて、
図9及び
図10に基づいて説明した梁位置調整方法を適用してもよい。梁位置の調整が必要か否かは、架構構造物100の具体的な設計値に基づいて決定すればよい。
【0093】
柱梁接合部材30を設置したならば、梁材40をX方向及びY方向に架け渡し、梁材40の端部を柱梁接合部材30にボルト締結で固定することにより、梁材40の設置を完了する。
【0094】
以降、柱部材10の接合工程と、柱梁接合部材30の設置工程と、梁材40の設置工程とを繰り返すことにより、
図14に示すような所望高さの架構構造物100を構築することができる。最上階の柱梁接合部材30は、柱部材10の上端側が屋上に突出しないよう、
図9及び
図10に基づいて説明した何れかの梁位置調整方法により、仕口本体部31を柱部材10の上端側に設置するようにすればよい。
【0095】
構築した架構構造物100を解体撤去する場合は、
図12~14に示す構築方法と逆の手順となる。すなわち、梁材40を取り外し、柱梁接合部材30を柱部材10から引き抜いた後に、柱部材10を引き抜くことにより、構造物100を解体することができる。この場合も、柱梁接合部材30及び柱部材10は、互いに溶接等によって接合されておらず、嵌め込まれているのみのため、解体作業を容易に行うことができる。また、解体は、階層毎に行えるため、下方の階層の利用者等に与える影響を最小限に抑えることができる。特に、構造物100が人工地盤の場合には、下方の空間を利用する鉄道や道路に対する規制等を最小限に抑えることができ、解体撤去に必要な工期や費用を大幅に抑えることが可能になる。
【0096】
[構造変更]
次に、
図15~18に基づいて、本実施形態に係る柱部材10及び、柱梁接合部材30を用いて構築された構造物300の構造変更方法について説明する。
図15~18において、構造物300は、例えば人工地盤である。なお、構造物300は、ビル等の建築物であってもよい。以下では、計画変更に伴い、構造物300の一部の階高を変更する場合を説明する。
【0097】
図15は、構造物300の構造変更を行う部分に設置されている梁材40及び柱梁接合部材30の撤去工程を示している。図中において、撤去される梁材40及び柱梁接合部材30は、破線で示してある。撤去作業は、梁材40を柱梁接合部材30から取り外した後、ジャッキやクレーン等の重機を用いて柱梁接合部材30を柱部材10から上方に引き抜くことにより行われる。すなわち、大掛かりな解体作業を伴うことなく、柱梁接合部材30を柱部材10から引き抜くのみで、柱梁接合部材30を容易に撤去することができる。これにより、撤去作業に要する時間を大幅に短縮することができる。また、下方空間Sの利用者(例えば、道路や鉄道など)に与える影響を最小限に抑えることが可能になる。
【0098】
図16は、構造変更に伴う新たな柱部材10Nの接合工程を示している。新たな柱部材10Nは、クレーン等を用いて既設の柱部材10に向けて降下させることにより接合される。この場合も、溶接等の作業が不要なため、工期を大幅に短縮しつつ、下方空間Sの利用者に与える影響を確実に抑えることができる。
【0099】
図17は、既設の人工地盤G1と、新たな人工地盤G2との境界に位置する新たな柱部材10N
_1に柱梁接合部材30を設置する工程を示している。境界に位置する既設の柱部材10
_1には、新たな柱部材10N
_1が接合される。このため、既設の柱部材10
_1には、梁材40を人工地盤G1と同じ高さに架け渡すための柱梁接合部材30を設置することができない。そこで、本例では、
図10で説明した調整方法を用い、新たな柱部材10N
_1に、柱梁接合部材30よりも仕口本体部31が拡径された新たな柱梁接合部材30Nを設置する。これにより、大掛かりな改造を行うことなく、柱梁接合部材30Nを容易に設置することができる。新たな柱梁接合部材30Nを設置したならば、梁材40を架け渡してボルト締結により固定する。梁材40は、
図15に示す工程で撤去した梁材40を再利用してもよく、或は、新たな梁材40を用いてもよい。梁材40を再利用すれば、コストを抑えることができる。
【0100】
図18は、新たな人工地盤G2を構成する梁材40及び、柱梁接合部材30の設置工程を示している。柱梁接合部材30及び、梁材40は、
図15に示す工程で撤去したものを再利用してもよく、新たな柱梁接合部材30及び、梁材40を用いてもよい。梁材40及び、柱梁接合部材30を再利用すれば、コストを抑えることができる。
【0101】
柱梁接合部材30は、クレーン等を用いて新たな柱部材10Nに向けて降下させることにより設置される。この場合も、溶接等の作業が不要なため、下方空間Sの利用者に与える影響を確実に抑えることができる。柱梁接合部材30を設置したならば、梁材40を架け渡して固定することにより、構造物300の構造変更を完了する。
【0102】
本実施形態に係る構造変更方法によれば、
図15に示す撤去の開始から、
図18に示す構造変更が完了するまでの間、大掛かりな解体作業や溶接作業等が不要である。すなわち、撤去開始から構造変更が完了するまでの間、下方空間Sの利用者に与える影響を最小限に抑えることができ、工期も大幅に短縮することができる。また、柱部材10N及び柱梁接合部材30Nの追加のみで、構造物300を容易に拡張できるため、構造変更に柔軟に対応しつつ、工費を確実に抑えることができる。また、簡素な構成で、構造物300の上方空間の有効活用を実現することも可能になる。
【0103】
[その他]
なお、本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0104】
例えば、外側テーパ面12は、柱本体部11の軸方向の全長亘って設けられる必要はなく、
図19に示すように、外側テーパ面12を柱本体部11の下端付近から上端に亘って設けられることも可能である。この場合も、柱本体部11の上端側を他の柱部材10の凹部15内に差し込めるため、柱部材10を鉛直方向に容易に接合することができる。また、外側テーパ面12を設けた柱本体部11の下端付近から上端までの範囲にて、柱梁接合部材30の設置位置を適宜に調整することができる。
【0105】
また、上記実施形態において、複数本の柱部材10は、上方の柱部材10Bの凹部15を下方の柱部材10Aの上端側に嵌め込むことにより接合(順方向接合)するものとして説明したが、それらの上下を反転させて接合してもよい(逆方向接合)。具体的には、各柱部材10A,10Bの上面14を鉛直方向下方、下面13を鉛直方向上方とし、下方の柱部材10Aの凹部15に、上方の柱部材10Bの下端側を差し込むことにより接合すればよい。この場合も、下方の柱部材10Aの凹部15の内周面16と、上方の柱部材10Bの外周面12との間に間詰材20,21を設ければ、各柱部材10A,10Bの総高さを適宜に調整することができる。また、下方の柱部材10Aの凹部15の底面(頂面)18と、上方の柱部材10Bの下面(上面)14との間に支持部材28を設け、隙間に間詰材22,23を設ければ、各柱部材10A,10Bの総高さを適宜に調整することができる。
【符号の説明】
【0106】
10…柱部材,11…柱本体部,12…外側テーパ面,13…下面,14…上面,15…凹部,16…内側テーパ面,17…開口部,18…頂面(底面),20…第1間詰材,21…第2間詰材,22…第1間詰材,23…第2間詰材,28…支持部材,30…柱梁接合部材,31…仕口本体部,32…外周面,33…仕口テーパ面,36…ブラケット,37…補強リブ,38…ボルト挿通孔,40…梁材,41…ウェブ,42,43…フランジ,44…ボルト挿通孔,45…連結プレート,46…ボルト挿通孔,60…間詰材,100,300…構造物,200…基礎,210…凸部