(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122052
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】振動発生装置
(51)【国際特許分類】
B62J 45/00 20200101AFI20240902BHJP
B62J 1/12 20060101ALI20240902BHJP
B62K 21/12 20060101ALI20240902BHJP
B62M 7/02 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B62J45/00
B62J1/12 Z
B62K21/12
B62M7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029368
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 貴宏
【テーマコード(参考)】
3D013
【Fターム(参考)】
3D013CF01
(57)【要約】
【課題】乗員に対して、内燃機関を搭載した車両に乗車しているような感覚を体感させることができる振動発生装置を提供する。
【解決手段】振動発生装置1は、電動二輪車(車両100)に設けられる。振動発生装置1は、記憶部40と、アクチュエータ10と、検知部50と、制御部30とを備えている。記憶部40は、内燃機関の振動に関する情報を記憶する。アクチュエータ10は振動を発生させる。検知部50は、電動二輪車の状態を検知する。制御部30は、検知部50の検知結果の変化に応じて、内燃機関の振動に関する情報に基づく振動を変化させるアクチュエータ10の駆動制御を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動二輪車に設けられる振動発生装置であって、
内燃機関の振動に関する情報を記憶する記憶部と、
振動を発生させるアクチュエータと、
前記電動二輪車の状態を検知する検知部と、
前記検知部の検知結果の変化に応じて前記情報に基づく振動を変化させる前記アクチュエータの駆動制御を実行する制御部と、
を備えている、振動発生装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記情報を複数記憶しており、
前記制御部は、複数の前記情報の少なくとも1つを選択するとともに、選択した前記情報に基づいて前記アクチュエータの振動を制御する、請求項1に記載の振動発生装置。
【請求項3】
前記アクチュエータは、前記電動二輪車に搭載されたバッテリから駆動電力を供給されており、
前記制御部は、前記バッテリの蓄電残量が所定量以下になった場合には、前記アクチュエータの駆動制御を中止する、請求項1又は請求項2に記載の振動発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両は、環境に対する配慮から、内燃機関から電動モータへの動力源の転換が進められている。この車両の電動化の潮流は、自動二輪車においても例外ではない(例えば、特許文献1参照)。電動モータは、内燃機関と比較して、静音性や低振動性といった点でも有利である。このため、電動モータを動力とする車両は、内燃機関と比較して乗り心地がよい、という評価が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動二輪車は、数多の種類の車両の中でも特に趣味性、嗜好性が高い。電動モータは、このような趣味性、嗜好性の観点では、内燃機関には遥か遠く及ばない、との評価がある。このように評価するユーザにとって、電動モータを動力源とした二輪車は、味気ないものに感じられるかも知れない。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、電動二輪車の乗員に対して、内燃機関を搭載した車両に乗車しているような感覚を体感させることができる振動発生装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る振動発生装置は、電動二輪車に設けられる。振動発生装置は、記憶部と、アクチュエータと、検知部と、制御部とを備える。記憶部は、内燃機関の振動に関する情報を記憶する。アクチュエータは振動を発生させる。検知部は、電動二輪車の状態を検知する。制御部は、検知部の検知結果の変化に応じて内燃機関の振動に関する情報に基づく振動を変化させるアクチュエータの駆動制御を実行する。
【0007】
この振動発生装置は、アクチュエータから振動を発生させる。アクチュエータによる振動は、記憶部に記憶された内燃機関の振動に関する情報に基づき、制御部によって制御された振動である。このため、振動発生装置は、電動二輪車において、内燃機関が発するような心地よい振動を乗員に体感させることができる。また、アクチュエータによる振動は、制御部に駆動制御されることにより、例えば電動モータの回転数の変化等、電動二輪車の状態の変化に応じて変化する。このように、振動発生装置は、内燃機関の振動を模した振動を、電動二輪車の状態の変化に応じて変化させつつ発生させることができる。
【0008】
したがって、本発明の振動発生装置は、電動二輪車の乗員に対して、内燃機関を搭載した車両に乗車しているような感覚を体感させることができる。
【0009】
本発明の振動発生装置において、記憶部は、内燃機関の振動に関する情報を複数記憶し得る。制御部は、複数の振動に関する情報の少なくとも1つを選択するとともに、選択した情報に基づいてアクチュエータの振動を制御する。この場合、振動発生装置は、複数の異なる種類の内燃機関の振動の感覚を乗員に体感させることができる。
【0010】
本発明の振動発生装置において、アクチュエータは、電動二輪車に搭載されたバッテリから駆動電力を供給され得る。制御部は、電動二輪車のバッテリの蓄電残量が所定量以下になった場合には、アクチュエータの駆動制御を中止し得る。この場合、振動発生装置は、アクチュエータを駆動するための電源を別途用意する必要がない。また、振動発生装置は、制御部によるアクチュエータの駆動制御の中止以降は電力消費量を節減できる。その結果、振動発生装置は、アクチュエータの電源を電動二輪車のバッテリとしながらも、電動二輪車の航続距離に及ぼす影響を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1に係る車両の構成を模式的に示す図である。
【
図2】実施形態1に係る振動発生装置の構成を模式的に示す図である。
【
図3】実施形態1に係る振動発生装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の振動発生装置及び電動二輪車を具体化した実施形態1について、図面を参照しつつ説明する。実施形態1の振動発生装置1は、
図1に示す車両100に搭載されている。車両100は、動力源として電動モータ101を備える電動二輪車である。なお、以下の説明では、車両100に正規の状態で乗車した乗員から見た方向を車両100の前後方向、左右方向、及び上下方向とそれぞれ定義する。各図に示す3次元の直交座標系において、X軸の正方向は「前方」、X軸の負方向は「後方」、Y軸の正方向は「左方」、Y軸の負方向は「右方」、Z軸の正方向は「上方」、Z軸の負方向は「下方」である。
【0013】
車両100は、バッテリ102と、車体103と、前輪104と、後輪105と、ハンドル106と、シート107と、ECU(Electronic Control Unit)108とを備えている。バッテリ102は、電動モータ101、ECU108等の車両100の電気機器に対して電力を供給する。車体103は、電動モータ101及びバッテリ102を搭載する。前輪104は、車両100における操舵輪である。前輪104は車体103の前側下部に配置されている。前輪104は、フロントフォーク104Aを介して車体103に支持されている。また、前輪104は、車体103に対し、図示しない操舵軸回りに所定の角度範囲で回転自在である。この操舵軸は、フロントフォーク104Aと車体103との間に設定される軸である。後輪105は、車両100における駆動輪である。後輪105は、車体103の後側下部に配置され、電動モータ101の動力によって回転する。後輪105は、図示しない懸架装置を介して車体103に支持されている。
【0014】
ハンドル106は、車両100の乗員が操舵操作を行うための操作部である。ハンドル106はフロントフォーク104Aの上端部に固定されている。ハンドル106は、左右方向に延びる中空の棒状をなしている。
図2に示すように、ハンドル106は、乗員が把持する一対の把持部106Aを有している。一対の把持部106Aは、ハンドル106の左右両端部に設けられている。一対の把持部106Aのうち、右側の把持部106Aは、アクセル操作を行うための操作部としても機能し、ハンドル106の延伸方向に沿った図示しない軸周りに、所定の角度範囲で回転自在に設けられている。シート107は、車両100の乗員が着座する着座部である。シート107は、車体103の上部中央に配置されている。ECU108は、車両100における制御ユニットである。ECU108は、車両100に搭載された各種の電気機器を制御する。ECU108は、乗員によるアクセル操作に応じて電動モータ101の回転数を制御する機能等、車両100の各部に配置された図示しない車両状態取得手段が取得した車両100の状態に基づいて、各部を制御する。
【0015】
図1及び
図2に示すように、振動発生装置1は、アクチュエータ10と、制御ユニット20とを備えている。アクチュエータ10は振動を発生させる。アクチュエータ10は、例えば、偏心モータ、リニアモータ、ピエゾ素子等の振動発生手段によって構成され得る。アクチュエータ10は、制御ユニット20における後述する制御部30に制御されることによって振動を発生させる。
【0016】
本実施形態の場合、アクチュエータ10は、車両100におけるハンドル106に設けられる第1アクチュエータ11と、シート107に設けられる第2アクチュエータ12と、の複数のアクチュエータを有している。第1アクチュエータ11は、把持部106Aの位置するハンドル106の両端部の内部にそれぞれ配置されている。第2アクチュエータ12は、シート107の座面の下方において、前後方向に3つ並んで配置されている。
【0017】
図3に示すように、制御ユニット20は、制御部30、記憶部40、検知部50、及び通信部60を備えている。
図1及び
図2に示すように、制御ユニット20は、車両100のECU108に電気的に接続されている。制御ユニット20は、ECU108を介して、車両100のバッテリ102から電力の供給を受ける。
【0018】
制御部30は、演算機能や情報処理機能を有する。制御部30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等を備えて構成される。制御部30は、後述する検知部50の検知結果、及び後述する記憶部40に記憶された情報に基づいて、アクチュエータ10の振動を制御する。本実施形態の場合、制御部30は、車両100のバッテリ102の蓄電残量に応じて、アクチュエータ10の駆動制御を中止する制御も行う。
【0019】
記憶部40は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有して構成される。記憶部40は、内燃機関の振動に関する情報(以下、振動情報とも表記する)を含む各種情報を記憶する。記憶部40は、例えば、振動発生装置1における各機能の制御を実行するためのシステムプログラム等が予め格納されている。また、記憶部40は、例えば、振動発生装置1における各種設定を記憶できる。本実施形態において、記憶部40は、複数種類の振動情報を記憶することができる。
【0020】
内燃機関の振動に関する情報とは、例えば、内燃機関を搭載する実際の自動二輪車において計測するなどして取得した振動に関する情報、実際の内燃機関において発生する振動を模して合成した振動に関する情報等である。内燃機関が発する振動は、主に、一次慣性力による振動(一次振動)、二次慣性力による振動(二次振動)、偶力による振動(偶力振動)等が合成された振動である。これらの振動は、ピストン(シリンダ)数、シリンダ配列等の違いや、2ストロークと4ストロークの1動作周期当たりのストローク数の違い、排気量の違い等、内燃機関の種類によって異なっている。振動情報は、例えば、これらの各種振動の位相、回転数に応じた振幅の大きさ等の組み合わせを実際の内燃機関の振動の特徴に合わせて合成して構成することができる。
【0021】
検知部50は車両100の状態を検知する。本実施形態の場合、検知部50は、車両100の状態として、車両100における電動モータ101の回転数を検知する。具体的には、検知部50は、電動モータ101の駆動制御の際にECU108において把握される電動モータ101の回転数に関する情報をECU108から逐次取得する。また、本実施形態の場合、検知部50は、車両100の状態として、車両100における図示しない始動スイッチのオンオフを検知する。
【0022】
通信部60は、制御ユニット20と外部との間で通信を行うための通信インタフェースである。本実施形態の場合、通信部60は、車両100のECU108との間で有線通信を行う。通信部60は、ECU108との間の有線接続によって、車両100のバッテリ102から電力供給も受ける。また、通信部60は、後述する操作部70との間でも通信を行う。
【0023】
操作部70は、振動情報の選択、振動発生装置1の起動、停止、振動情報の追加や書換等の各種操作を行うための操作端末である。本実施形態の場合、操作部70は、液晶等の表示画面、タッチパネル等を有するスマートフォンを採用している。操作部70の操作者は、タッチパネルを操作して各種操作を行う。操作部70には、振動発生装置1を操作するためのアプリケーションプログラムがインストールされる。操作部70に入力された各種操作情報は、通信部60を介して制御部30に送信される。操作部70は、通信部60との間で、Wi-Fi(登録商標)、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)等の通信規格に準拠した無線通信を行う。
【0024】
次に、上記構成の振動発生装置1の動作について説明する。
振動発生装置1を使用する際、使用者は、最初に、操作部70を操作して振動発生装置1を起動させる。振動発生装置1が起動すると、制御ユニット20では、振動発生装置1のシステムプログラムが実行される。振動発生装置1の起動後、使用者は、操作部70を用いて、複数の振動情報から所望の振動情報を選択する。
【0025】
この時、操作部70には、各振動情報に紐づけられた表示が画面上に表示される。例えば、振動情報を選択する際、操作部70の表示画面上には、「4ストローク直列4気筒」、「4ストロークV型2気筒(45°バンク角)」、「4ストローク並列2気筒(270°クランク角)」、「2ストロークV型3気筒(90°バンク角)」、「2ストローク並列3気筒」等の内燃機関の形式や車種名、メーカ名等が表示され得る。また、振動情報を選択する際には、例えば、最初に、複数種類のメーカ名や排気量の中からいずれかを選択し、次に、選択したメーカ名や排気量に属する複数種類の車種や内燃機関の形式のいずれかを選択する等、段階的に選択するようにしてもよい。使用者は、複数表示される振動情報から所望のものをタップして選択する。選択操作の内容は、通信部60を介して制御ユニット20に送信される。制御部30は、選択操作の内容に応じた振動情報を記憶部40から選択する。
【0026】
振動情報に紐づけられる表示画面上の表示としては、内燃機関の形式を示す表示に限らず、例えば、当該内燃機関を搭載する実車の名称や画像等であってもよく、振動データを実際にサンプリングした実車、合成する際にモデルにした実車等に関する表示であってもよい。
【0027】
その後、車両100を始動する。車両100の始動に際しては、シート107に跨り、ハンドル106の把持部106Aを左手で把持する。そして、車両100の始動スイッチを入れると、車両100は、ECU108が起動したアイドリング状態になる。制御ユニット20は、ECU108と電気的に接続されていることから、ECU108を介して、車両100の状態を検知できるようになる。車両100の状態は、制御ユニット20における検知部50によって検知される。
【0028】
本実施形態の場合、検知部50は、車両100の状態として、電動モータ101の回転数を検知する。振動発生装置1において、電動モータ101の回転数は、電動モータ101の駆動制御に際してECU108が把握する回転数に関する情報を利用している。検知部50は、ECU108から送信される情報を車両100の状態に関する情報として逐次取得する。制御部30は、検知部50の検知結果と振動情報とに基づき、アクチュエータ10の振動させる制御を実行する。これによって、ハンドル106の把持部106Aを把持し、シート107に跨った車両100の乗員は、アクチュエータ10によって再現された内燃機関の振動を体感することができる。
【0029】
電動二輪車である車両100がアイドリング状態にある場合、電動モータ101の回転数は、例えば0rpm(revolution per minute)である。これに対し、アイドリング状態の内燃機関の回転数は、例えば1000rpm前後である。本実施形態の振動情報は、内燃機関の回転数に応じた振動に関する情報である。制御部30は、検知部50において検知した電動モータ101の回転数を内燃機関の回転数に対応させ、当該回転数時の内燃機関の振動を発するように、アクチュエータ10の振動を制御する。したがって、車両100がアイドリング状態である場合には、制御部30は、回転数1000rpm前後において内燃機関が発する振動と同様の振動を発するように、アクチュエータ10の振動を制御する。
【0030】
また、アイドリング状態にある電動モータ101の回転数は0rpmで一定である。このため、車両100がアイドリング状態にある場合、制御部30は、振動の周波数、振幅が略一定になるように、アクチュエータ10を制御する。これに対し、車両100を走行させた際、電動モータ101の回転数は、アクセル操作量、走行速度等に応じて変動する。検知部50は、変動する電動モータ101の回転数を逐次検知している。これによって、制御部30は、逐次検知する電動モータ101の回転数に応じて、アクチュエータ10において発生させる振動を逐次変化させる駆動制御を実行する。
【0031】
一般的な内燃機関は、回転数が高くなるにつれて振動の周波数が大きくなるとともに振幅が大きくなる。振動情報は、電動モータ101の回転数を内燃機関の回転数に対応させた情報を含む。制御部30は、電動モータ101の回転数に応じて、アクチュエータ10において発生させる振動の周波数、振幅等を変化させる駆動制御を実行する。制御部30は、車両100における電動モータ101の回転数が相対的に低い場合には、相対的に低い振動周波数、且つ相対的に小さい振幅の振動を発生するように、アクチュエータ10の制御を実行する。これに対し、車両100における電動モータ101の回転数が相対的に高い場合、制御部30は、相対的に高い振動周波数、且つ相対的に大きい振幅の振動を発生するように、アクチュエータ10の制御を実行する。
【0032】
上述のように、本実施形態の場合、アクチュエータ10は複数設けられている。制御部30は、複数のアクチュエータ10をそれぞれ個別に駆動制御することにより、立体感のある内燃機関の振動を再現できる。例えば、振動発生装置1は、車両100における前部のハンドル106に配置されている第1アクチュエータ11と、ハンドル106よりも後方のシート107に配置されている第2アクチュエータ12とを、位相、振幅の大きさ等を異ならせて振動させる制御を実行することにより、振動源からの距離に応じた振動の伝達時間、振幅の大きさ等の差異を再現できる。また、振動発生装置1は、例えば、ハンドル106の左右両端部に配置されている一対の第1アクチュエータ11のそれぞれについて、振動の位相をずらすことによって、偶力振動を再現することができる。
【0033】
本実施形態において、アクチュエータ10は、車両100のバッテリ102から駆動電力の供給を受けている。バッテリ102は、車両100の走行距離、走行時間等に応じて、蓄電残量が減少する。制御部30は、バッテリ102の蓄電量が所定量以下(例えば、バッテリ容量の50パーセント以下)になった場合、アクチュエータ10の駆動制御を中止する。これによって、振動発生装置1は、アクチュエータ10において振動を発生させるために電力を消費することがなくなる。これ以降、車両100は、バッテリ102の電力消費量が節減される。車両100は、電力消費量が節減された分、より長い距離を走行することが可能になる。なお、本実施形態の場合、制御部30は、アクチュエータ10の駆動制御を中止したのち、振動発生装置1のシステムプログラムの実行も中止する。振動発生装置1は、アクチュエータ10を含むがバッテリ102から電力供給を受けている。このため、これ以降、振動発生装置1は、バッテリ102の電力を消費することがなくなり、バッテリ102の電力消費を一層節減できる。
【0034】
以上のように、実施形態1に係る振動発生装置1は、電動二輪車である車両100に設けられる。振動発生装置1は、記憶部40と、アクチュエータ10と、検知部50と、制御部30とを備えている。記憶部40は、内燃機関の振動に関する情報である振動情報を記憶する。アクチュエータ10は振動を発生させる。検知部50は、車両100の状態として電動モータ101の回転数を検知する。制御部30は、検知部50の検知結果の変化に応じて振動情報に基づく振動を変化させるアクチュエータ10の駆動制御を実行する。
【0035】
振動発生装置1は、アクチュエータ10から振動を発生させる。アクチュエータ10による振動は、内燃機関の振動に関する情報である振動情報に基づいて、制御部30によって制御された振動である。このため、振動発生装置1は、電動二輪車である車両100において、内燃機関が発するような心地よい振動を乗員に体感させることができる。また、アクチュエータ10による振動は、制御部30に駆動制御されることにより、車両100の状態としての電動モータ101の回転数の変化に応じて変化する。このように、振動発生装置1は、内燃機関の振動を模した振動を、電動モータ101の回転数の変化に応じて変化させつつ発生させることができる。したがって、振動発生装置1は、車両100の乗員に対して、内燃機関を搭載した車両に乗車しているような感覚を体感させることができる。
【0036】
また、振動発生装置1において、記憶部40は、振動情報を複数記憶しており、制御部30は、複数の振動情報の少なくとも1つを選択するとともに、選択した振動情報に基づいてアクチュエータ10の振動を制御する。このため、振動発生装置1は、複数の異なる種類の内燃機関の振動の感覚を乗員に体感させることができる。また、振動発生装置1において、制御部30は、スマートフォンである操作部70の操作に応じた振動情報を選択する。このため、振動発生装置1は、所望の振動情報を使用者に選択させることができ、所望の振動情報に基づく振動を使用者に体感させることができる。
【0037】
また、振動発生装置1において、アクチュエータ10は、車両100におけるバッテリ102から駆動電力を供給されている。また、制御部30は、車両100におけるバッテリ102の蓄電残量が所定量以下になった場合には、アクチュエータ10の駆動制御を中止する。このような構成により、振動発生装置1は、アクチュエータ10を駆動するための電源を別途用意する必要がない。また、振動発生装置1は、制御部30によるアクチュエータ10の駆動制御の中止以降は電力消費量を節減できる。その結果、振動発生装置1は、アクチュエータ10の電源を車両100のバッテリ102としながらも、車両100の航続距離に及ぼす影響を抑えることができる。
【0038】
振動発生装置1において、アクチュエータ10による振動は、内燃機関の振動に関する情報である振動情報に基づいて制御部30によって制御された振動である。このため、振動発生装置1は、振動情報を取得することができれば、如何様な形式の内燃機関の振動も再現できる。例えば、2ストローク内燃機関は、排出ガス規制等の事情により、現在では入手が困難である。また、競技用車両に搭載される内燃機関は、基本的には入手不能である。振動発生装置1は、実車にて体感することが困難な希少な内燃機関から取得した振動情報を用いることで、その振動の感覚を乗員に体感させることができる。
【0039】
また、本実施形態に係る電動二輪車としての車両100は、振動発生装置1を搭載したことにより、振動発生装置1の効果と同様の効果を奏する。
【0040】
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施形態1に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0041】
(1)上記実施形態において、アクチュエータは、車両のハンドル及びシートに設けられたが、これは必須ではない。本発明に係るアクチュエータは、例えば、ハンドル及びシートのいずれか一方のみに設けられていてもよい。アクチュエータは、例えば、車体、フットレスト等、上記実施形態において例示したハンドルやシート以外の位置に設けられていてもよい。アクチュエータは、例えば、電動二輪車におけるハンドル、シート、車体、フットレスト等のいずれか一箇所にのみ設けられていてもよい。アクチュエータが複数設けられることは必須ではない。
【0042】
(2)上記実施形態において、検知部は、電動二輪車の状態として、電動モータの回転数、及び車両における始動スイッチのオンオフを検知したが、これは必須ではない。本発明に係る検知部は、電動二輪車の状態として、例えば、アクセルの操作量、速度、加速度、車両のバッテリから電動モータへの電力供給量等を検知してもよい。検知部による電動二輪車の状態の検知形態としては、車両側のECU等から車両の状態に関する情報を取得する形態に限らず、例えば、センサ等の検知手段を有して電動二輪車の状態を直接的に検知する形態であってもよい。
【0043】
(3)上記実施形態において、制御部は、電動二輪車の状態としての電動モータの回転数の変化のみに基づいてアクチュエータの振動を変化させたが、これは必須ではない。制御部は、例えば、複数種類の電動二輪車の状態の変化に基づいてアクチュエータの振動を変化させてもよい。制御部は、例えば、ECU等の電動二輪車における制御ユニット内にその機能が備えられている形態であってもよい。振動発生装置は、電動二輪車に備えられていてもよい。
【0044】
(4)上記実施形態において、複数の振動情報の選択操作を行うための操作部は、外部機器であるスマートフォンであったが、これは必須ではない。操作部が外部機器である場合、操作部は、例えば、タブレット端末、電動二輪車におけるメータパネル等、種々の形態を採用できる。また、操作部は、振動発生装置専用の操作端末等として振動発生装置に備えられていてもよい。
【0045】
(5)上記実施形態において、制御部は、車両のバッテリの蓄電残量が所定量以下になった場合にアクチュエータの駆動制御を中止する制御を実行したが、これは必須ではない。制御部がアクチュエータの駆動制御を中止する制御を実行する場合、その条件は、上記実施形態において例示した蓄電残量がバッテリ容量の50パーセント以下になった場合に限らず、例えば、40パーセント以下、30パーセント以下等、所望の条件を任意に設定できる。
【0046】
(6)本発明に係る振動発生装置は、振動とともに、内燃機関の音を模した音を発生させてもよい。すなわち、振動発生装置は、スピーカ、イヤホン等に音を発生させる音響部を更に備え、記憶部が内燃機関の音に関する情報を記憶し、制御部が検知部の検知結果に応じて内燃機関の音に関する情報に基づく音を発生させるように音響部を制御することができる。この場合、振動発生装置は、乗員に対し、内燃機関を搭載した車両に乗車しているような感覚を聴覚的にも体感させることができる。
【符号の説明】
【0047】
1…振動発生装置、10…アクチュエータ(11…第1アクチュエータ、12…第2アクチュエータ)、30…制御部、40…記憶部、50…検知部、100…車両(電動二輪車)、102…車両のバッテリ