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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122053
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】物理量計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/5776 20120101AFI20240902BHJP
   G01C 19/5783 20120101ALI20240902BHJP
【FI】
G01C19/5776
G01C19/5783
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029369
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 裕文
【テーマコード(参考)】
2F105
【Fターム(参考)】
2F105BB01
2F105BB09
2F105BB17
2F105CC01
2F105CD02
2F105CD06
(57)【要約】
【課題】優れた検出精度を有する物理量計測装置を提供すること。
【解決手段】物理量計測装置は、ケースと、前記ケースに収容され、物理量を計測する物理量センサーと、前記ケースに収容されている温度センサーと、前記ケースに収容されている温度制御素子と、前記ケースに収容され、前記温度センサーの検出結果に基づいて前記温度制御素子の駆動を制御する制御回路と、前記ケースに配置され、前記物理量センサーと電気的に接続されている外部接続端子と、を有する。また、前記ケースに収容され、前記物理量センサー、前記温度センサー、前記温度制御素子および前記制御回路が搭載されている基板を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケースに収容され、物理量を計測する物理量センサーと、
前記ケースに収容されている温度センサーと、
前記ケースに収容されている温度制御素子と、
前記ケースに収容され、前記温度センサーの検出結果に基づいて前記温度制御素子の駆動を制御する制御回路と、
前記ケースに配置され、前記物理量センサーと電気的に接続されている外部接続端子と、を有することを特徴とする物理量計測装置。
【請求項2】
前記ケースに収容され、前記物理量センサー、前記温度センサー、前記温度制御素子および前記制御回路が搭載されている基板を有する請求項1に記載の物理量計測装置。
【請求項3】
前記外部接続端子は、前記ケースを貫通し前記ケース外に臨む導電性のピンを有する請求項2に記載の物理量計測装置。
【請求項4】
前記基板は、前記ピンによってケースに支持されている請求項3に記載の物理量計測装置。
【請求項5】
前記ピンと前記ケースとの間に圧縮した状態で配置されている絶縁性の第1弾性部材を有する請求項3に記載の物理量計測装置。
【請求項6】
前記ピンは、前記基板に挿通されている請求項3に記載の物理量計測装置。
【請求項7】
前記ピンと前記基板との間に圧縮した状態で配置されている導電性の第2弾性部材を有し、前記第2弾性部材を介して前記ピンと前記基板とが電気的に接続されている請求項6に記載の物理量計測装置。
【請求項8】
前記ケースと前記基板との間に圧縮した状態で配置されている導電性の第3弾性部材を有し、前記第3弾性部材を介して前記基板と前記外部接続端子とが電気的に接続されている請求項2に記載の物理量計測装置。
【請求項9】
前記第3弾性部材は、枠状である請求項8に記載の物理量計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されたセンサーモジュールは、基板と、基板に実装されたX軸角速度センサーデバイス、Y軸角速度センサーデバイス、Z軸角速度センサーデバイス、加速度センサーデバイス、温度センサー、マイクロコントローラーおよびコネクタ部と、を有する。このようなセンサーモジュールでは、温度センサーが計測する温度に基づいて、各センサーデバイスの検出結果を温度補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-163955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のセンサーモジュールは、所定の温度において急激に変化する温度特性を有するセンサーデバイスを備えていることが考えられ、このような場合、センサーモジュールの検出精度が劣化するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の物理量計測装置は、ケースと、
前記ケースに収容され、物理量を計測する物理量センサーと、
前記ケースに収容されている温度センサーと、
前記ケースに収容されている温度制御素子と、
前記ケースに収容され、前記温度センサーの検出結果に基づいて前記温度制御素子の駆動を制御する制御回路と、
前記ケースに配置され、前記物理量センサーと電気的に接続されている外部接続端子と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る物理量計測装置の部分断面上面図である。
図2図1中のD-D線断面図である。
図3】ベースの上面図である。
図4】角速度センサーの断面図である。
図5】角速度検出素子の平面図である。
図6】角速度検出素子の駆動振動モードを示す模式図である。
図7】角速度検出素子の検出振動モードを示す模式図である。
図8】角速度センサーの温度特性の一例を示すグラフである。
図9】物理量計測装置の変形例を示す断面図である。
図10】物理量計測装置の変形例を示す断面図である。
図11】物理量計測装置の製造方法を説明するための断面図である。
図12】物理量計測装置の製造方法を説明するための断面図である。
図13】物理量計測装置の製造方法を説明するための断面図である。
図14】物理量計測装置の製造方法を説明するための断面図である。
図15】物理量計測装置の製造方法を説明するための断面図である。
図16】物理量計測装置の信号送受の構成例を示すブロック図である。
図17】デジタルインターフェースバスでの信号波形例を示す図である。
図18】第2実施形態に係る物理量計測装置の断面図である。
図19】物理量計測装置の部分断面上面図である。
図20】第3実施形態に係る物理量計測装置の断面図である。
図21】第4実施形態に係る物理量計測装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の物理量計測装置を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0008】
なお、説明の便宜上、図1ないし図3図9ないし図15図18ないし図21には互いに直交する3軸をX軸、Y軸およびZ軸として図示している。また、以下では、X軸に沿う方向を「X軸方向」とも言い、Y軸に沿う方向を「Y軸方向」とも言い、Z軸に沿う方向を「Z軸方向」とも言う。また、Z軸が鉛直方向に沿っており、Z軸の矢印側を「上」、反対側を「下」とも言う。
【0009】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る物理量計測装置の部分断面上面図である。図2は、図1中のD-D線断面図である。図3は、ベースの上面図である。図4は、角速度センサーの断面図である。図5は、角速度検出素子の平面図である。図6は、角速度検出素子の駆動振動モードを示す模式図である。図7は、角速度検出素子の検出振動モードを示す模式図である。図8は、角速度センサーの温度特性の一例を示すグラフである。図9および図10は、それぞれ、物理量計測装置の変形例を示す断面図である。図11ないし図15は、それぞれ、物理量計測装置の製造方法を説明するための断面図である。図16は、物理量計測装置の信号送受の構成例を示すブロック図である。図17は、デジタルインターフェースバスでの信号波形例を示す図である。
【0010】
図1に示すように、物理量計測装置1は、基板2と、基板2に実装された物理量センサー3、温度センサー4、温度制御素子5および制御回路6と、基板2を収容するケース7と、ケース7外に露出する外部接続端子8と、を有する。また、物理量センサー3は、軸まわりの角速度ωxを検出するX軸角速度センサー3xと、Y軸まわりの角速度ωyを検出するY軸角速度センサー3yと、Z軸まわりの角速度ωzを検出するZ軸角速度センサー3zと、を有する。以下、これら各部について順に説明する。
【0011】
[ケース7]
図1および図2に示すように、ケース7は、板状のベース71と、ベース71に被せられた凹状のリッド72と、を有する。リッド72は、ネジBによってベース71にネジ止めされている。また、ベース71とリッド72との間にシールリング73が配置されており、これにより、ケース7の内部に気密な収容空間Sが形成されている。そして、この収容空間Sに物理量センサー3、温度センサー4、温度制御素子5および制御回路6が実装された基板2が収容されている。
【0012】
また、ベース71およびリッド72は、それぞれ、各種金属材料(各種合金材料を含む)で構成されている。そのため、高い機械的強度を有するケース7となる。また、ケース7をグランドに接続することにより、外乱を遮断するシールドとして機能させることもできる。ただし、ベース71およびリッド72の構成材料は、特に限定されず、例えば、各種樹脂材料、各種セラミック材料、各種ガラス材料で構成されていてもよい。また、両者の材料が互いに異なっていてもよい。
【0013】
また、図3に示すように、ベース71は、上面および下面を貫通する6つの貫通孔711を有する。また、図2に示すように、各貫通孔711には絶縁性の第1弾性部材91が配置されている。第1弾性部材91は、ベース71と後述するピン81とを絶縁する。各第1弾性部材91は、貫通孔711よりも外径が大きい筒部911と、筒部911の上端部から周方向に突出するフランジ912と、を有する。そして、フランジ912がベース71の上面に当接するまで筒部911が貫通孔711に圧入されている。筒部911を貫通孔711に圧入することにより、第1弾性部材91をベース71に容易に固定することができる。また、フランジ912がストッパーとして機能し、貫通孔711への挿入深さを簡単にコントロールすることができる。そのため、物理量計測装置1の製造が容易となる。このような第1弾性部材91は、例えば、各種ゴム材料、各種エラストマー等で形成することができる。特に、本実施形態の第1弾性部材91は、シリコーンゴムで形成されている。
【0014】
[基板2]
図1に示すように、基板2は、平面視形状が略正方形である。基板2は、例えば、セラミック基板であり、アルミナ、チタニア等の各種セラミック材料で構成されている。これにより、高い耐食性と優れた機械的強度とを有する基板2となる。また、吸湿し難く耐熱性にも優れるため、物理量計測装置1の製造時に加わる熱によるダメージを受け難い。なお、基板2は、所定の配線パターンが形成された複数のセラミックシート(グリーンシート)を積層し、この積層体を焼結することにより製造される。ただし、基板2は、特に限定されない。
【0015】
そして、基板2の上面にZ軸角速度センサー3z、温度センサー4および温度制御素子5が実装され、下面に制御回路6が実装され、側面にX軸角速度センサー3xおよびY軸角速度センサー3yが実装されている。なお、基板2には、図示しない配線パターンが形成されており、この配線パターンを介して制御回路6が温度センサー4および温度制御素子5に電気的に接続され、物理量センサー3が後述するピン81と電気的に接続される。ただし、X軸、Y軸、Z軸角速度センサー3x、3y、3z、温度センサー4、温度制御素子5および制御回路6の基板2上での配置は、特に限定されない。
【0016】
このような基板2を有することにより、物理量センサー3、温度センサー4、温度制御素子5および制御回路6をまとめてケース7内に収容することができる。そのため、物理量計測装置1の製造が容易となる。
【0017】
また、図1に示すように、基板2には、上面と下面とを貫通する6つの貫通孔21が形成されている。Z軸方向からの平面視で、6つの貫通孔21は、ベース71に形成された6つの貫通孔711と重なっている。また、図2に示すように、各貫通孔21には、導電性の第2弾性部材92が圧入されている。
【0018】
各第2弾性部材92は、貫通孔21よりも若干外径が大きい筒部921と、筒部921の下端部から周方向に突出するフランジ922と、を有する。そして、フランジ922が基板2の下面に当接するまで筒部921が貫通孔21に圧入されている。このように、筒部921を貫通孔21に圧入することにより、第2弾性部材92を基板2に容易に固定することができる。また、フランジ922がストッパーとして機能し、貫通孔21への挿入深さを簡単にコントロールすることができる。そのため、物理量計測装置1の製造が容易となる。なお、貫通孔21に圧入された状態では、第2弾性部材92は、前記図示しない配線パターンと接触している。
【0019】
このような第2弾性部材92は、例えば、金属フィラー、CB(カーボンブラック)等の導電性粒子を含有した各種ゴム材料、各種エラストマー等で形成することができる。特に、本実施形態の第2弾性部材92は、導電性のシリコーンゴムで形成されている。
【0020】
[物理量センサー3]
前述したように、物理量センサー3は、X軸まわりの角速度ωxを検出するX軸角速度センサー3xと、Y軸まわりの角速度ωyを検出するY軸角速度センサー3yと、Z軸まわりの角速度ωzを検出するZ軸角速度センサー3zと、を有する。X軸、Y軸、Z軸角速度センサー3x、3y、3zは、実装向きが異なること以外は、互いに同様の構成である。そのため、以下では、これらを総称して角速度センサー30として、その構成を説明する。また、以下では、説明の便宜上、互いに直交する3軸をA軸、B軸およびC軸とする。
【0021】
図4に示すように、角速度センサー30は、パッケージ31と、パッケージ31に収容された回路素子32、支持基板33および角速度検出素子34を有する。パッケージ31は、凹状のベース311と、ベース311の開口を塞ぐリッド312と、を有する。支持基板33は、TAB(Tape Automated Bonding)実装用の基板であり、ベース311に固定された枠状の基板331と、基板331に配置された6本のリード332と、を有する。そして、これら6本のリード332の先端部に角速度検出素子34が支持されている。
【0022】
角速度検出素子34は、水晶基板から形成された水晶振動素子である。図5に示すように、角速度検出素子34は、中央部に位置する基部340と、基部340からB軸方向両側に延出する一対の検出振動腕341、342と、基部340からA軸方向両側へ延出する一対の支持腕343、344と、一方の支持腕343の先端部からB軸方向両側に延出する一対の駆動振動腕345、346と、他方の支持腕344の先端部からB軸方向両側に延出する一対の駆動振動腕347、348と、を有する。このような角速度検出素子34は、基部340においてリード332に支持されている。
【0023】
また、角速度検出素子34は、電極として、検出振動腕341の両主面に配置された第1検出信号電極E1と、検出振動腕341の両側面に配置された第1検出接地電極E2と、検出振動腕342の両主面に配置された第2検出信号電極E3と、検出振動腕342の両側面に配置された第2検出接地電極E4と、駆動振動腕345、346の両主面および駆動振動腕347、348の両側面に配置された駆動信号電極E5と、駆動振動腕345、346の両側面および駆動振動腕347、348の両主面に配置された駆動接地電極E6と、を有する。
【0024】
このような角速度検出素子34は、次のようにしてC軸まわりの角速度ωcを検出する。駆動信号電極E5と駆動接地電極E6との間に駆動信号を印加すると、図6に示すように、駆動振動腕345、346と駆動振動腕347、348とがA-B平面に沿って逆相で屈曲振動する(以下、この状態を「駆動振動モード」とも言う)。この状態では、駆動振動腕345、346、347、348の振動がキャンセルされ、検出振動腕341、342は、実質的に振動しない。駆動振動モードで駆動している状態で角速度検出素子34に角速度ωcが加わると、図7に示すように、駆動振動腕345、346、347、348にコリオリの力が働いてB軸方向の屈曲振動が励振され、この屈曲振動に呼応するように検出振動腕341、342がA軸方向に屈曲振動する(以下、この状態を「検出振動モード」とも言う)。
【0025】
このような検出振動モードによって検出振動腕341に発生した電荷を第1検出信号電極E1から第1出力信号として取り出し、検出振動腕342に発生した電荷を第2検出信号電極E3から第2出力信号として取り出し、これら第1、第2出力信号に基づいて角速度ωcが求められる。
【0026】
以上のような角速度センサー30のC軸つまり検出軸をX軸に沿って実装したものがX軸角速度センサー3xであり、Y軸に沿って実装したものがY軸角速度センサー3yであり、Z軸に沿って実装したものがZ軸角速度センサー3zである。なお、本実施形態では、X軸、Y軸、Z軸角速度センサー3x、3y、3zの駆動周波数が互いに異なっている。これにより、漏れ振動が他の角速度センサーに干渉し難くなり、角速度ωx、ωy、ωzの検出精度が向上する。
【0027】
図4に示すように、回路素子32は、ベース311の内底面に固定されている。回路素子32は、主に、駆動信号を印加してX軸、Y軸、Z軸角速度センサー3x、3y、3zを駆動し、X軸、Y軸、Z軸角速度センサー3x、3y、3zからの第1、第2出力信号に基づいて角速度ωx、ωy、ωzの検出処理を行う検出回路321と、検出回路321で検出した角速度データを出力するインターフェース回路322と、を有する。
【0028】
以上、物理量センサー3について説明したが、物理量センサー3としては、少なくとも1つの物理量を検出することができれば、特に限定されない。例えば、X軸、Y軸、Z軸角速度センサー3x、3y、3zから1つまたは2つを省略してもよい。また、検出する物理量は、角速度でなくてもよく、例えば、加速度であってもよい。この場合、X軸方向の加速度を検出するX軸加速度センサー、Y軸方向の加速度を検出するY軸加速度センサーおよびZ軸方向の加速度を検出するZ軸加速度センサーの少なくとも1つを備えた構成とすることができる。また、物理量センサー3は、角速度センサーと加速度センサーとを含む複合センサーであってもよい。
【0029】
[温度センサー4]
図1に示すように、温度センサー4は、基板2の上面に実装され、ケース7の収容空間Sの温度を測定する。
【0030】
[温度制御素子5]
図1に示すように、温度制御素子5は、基板2の上面に実装されている。温度制御素子5は、トランジスター等の発熱素子である。前述したように、収容空間Sが気密空間であるため、温度制御素子5による加熱効率を高めることができる。そのため、物理量計測装置1の消費電力の低減を図ることができる。
【0031】
[制御回路6]
図1に示すように、制御回路6は、基板2の下面に実装されている。制御回路6は、温度センサー4の検出結果つまり温度センサー4が測定した温度に基づいて、収容空間Sの温度が所定の温度となるように温度制御素子5の駆動を制御する。これにより、ゼロ点出力の変動が抑制され、角速度の検出特性が向上する。特に、前述したように、収容空間Sが気密空間であるため、温度制御素子5によって収容空間Sを効率的に温めることができる。そのため、消費電力を削減することもできる。
【0032】
ここで、図8に、駆動振動モードで駆動する角速度センサー30の温度特性(温度とゼロ点出力との関係)の一例を示す。この例では、約40℃においてゼロ点出力が急激に変化する。そこで、40℃周辺を避け、ゼロ点出力が比較的の安定している温度範囲tw(60℃~80℃)内に収容空間Sの温度が収まるように、例えば、温度センサー4の検出温度が70℃となるように温度制御素子5の駆動を制御する。これにより、ゼロ点出力が安定し、角速度ωx、ωy、ωzの検出特性が向上する。
【0033】
なお、設定温度を温度範囲twより高くすると、大容量で高価な温度制御素子5が必要となり、消費電力の増大と共に物理量計測装置1のコストが増大するおそれがある。一方で、設定温度を温度範囲twより低くすると、加熱機能と共に冷却機能を有する高価な温度制御素子5を使用する必要があり、物理量計測装置1のコストが増大するおそれがある。
【0034】
[外部接続端子8]
図1および図2に示すように、外部接続端子8は、ベース71を貫通して配置された円柱状の6つのピン81を有する。ただし、ピン81の形状は、特に限定されない。このように、ベース71を貫通するピン81を有することにより、簡単な構成で外部接続端子8をケース7の内外に臨ませることができる。また、各ピン81は、ベース71と基板2との間に位置し、これらを連結している。つまり、基板2は、6つのピン81を介してベース71に支持されている。このように、ピン81自身が基板2を支持することにより、部品点数の削減を図ることができ、物理量計測装置1の構成が簡単なものとなる。
【0035】
図2に示すように、各ピン81は、基部811と、基部811の上端および下端から突出し、基部811よりも外径が小さい上端部812および下端部813と、を有する。これら6つのピン81は、ベース71に形成された貫通孔711および基板2に形成された貫通孔21に対応して配置されている。そして、各ピン81の上端部812が対応する貫通孔21に圧入され、各ピン81の下端部813が対応する貫通孔711に圧入されている。
【0036】
具体的には、上端部812は、貫通孔21に配置された第2弾性部材92の筒部921の内径よりも大きい外径を有する。そして、上端部812は、基部811がフランジ922を介して基板2の下面に当接するまで筒部921に圧入されている。同様に、下端部813は、貫通孔711に配置された第1弾性部材91の筒部911の内径よりも大きい外径を有する。そして、下端部813は、基部811がフランジ912を介してベース71の上面に当接するまで筒部911に圧入されている。これにより、簡単な構成で、基板2を支持することができる。図示しないが、各ピン81は、第2弾性部材92を介して基板2上の図示しない配線パターンと電気的に接続される。このように、ピン81を基板2に挿通することにより、簡単な構成で、基板2とピン81とを電気的に接続することができる。
【0037】
また、基部811は、基板2の下面に実装された制御回路6の厚さよりも長く、基板2とベース71との間に制御回路6を配置するためのギャップGを形成するスペーサーとして機能する。これにより、制御回路6とベース71との接触を効果的に抑制することができる。
【0038】
また、各ピン81は、その下面においてケース7の外部に露出しており、当該部分において上位機器、特に、後述するマイクロコントローラー100と電気的に接続される。なお、図示の構成では、各ピン81の下面は、第1弾性部材91の下面とともにベース71の下面と面一になっている。これにより、物理量計測装置1の低背化を図ることができる。ただし、物理量計測装置1の構成は、特に限定されず、例えば、図9に示すように、各ピン81がベース71の下面から突出していてもよいし、図10に示すように、第1弾性部材91がベース71の下面から突出していてもよい。
【0039】
[リッド72]
ここで、リッド72の説明に戻る。図1および図2に示すように、リッド72は、基板2を下方つまりベース71側へ押圧する押圧部721を有する。リッド72をベース71にネジ止めすると、押圧部721が基板2の上面に押し当てられ、これにより、基板2が下方に付勢される。そのため、第1弾性部材91のフランジ912がピン81とベース71との間で圧縮されると共に、第2弾性部材92のフランジ922がピン81と基板2との間で圧縮され、基板2がベース71に対して強固に保持される。このように、ピン81とベース71との間で第1弾性部材91を圧縮させることにより、これらの隙間をより確実に封止することができる。そのため、収容空間Sの気密性が高まり、温度制御素子5による加熱効率が高まる。また、ピン81と基板2との間で第2弾性部材92を圧縮させることにより、これらをより確実に電気的に接続することができる。
【0040】
以上、物理量計測装置1について説明した。次に、物理量計測装置1の製造方法について簡単に説明する。まず、図11に示すように、ベース71の貫通孔711に第1弾性部材91を圧入すると共に、基板2の貫通孔21に第2弾性部材92を圧入する。次に、図12に示すように、ピン81の下端部813を第1弾性部材91の筒部911に圧入すると共に、ピン81の上端部812を第2弾性部材92の筒部921に圧入する。次に、図13に示すように、基板2を覆うようにリッド72を被せる。次に、図14に示すように、ネジBを用いてリッド72をベース71にネジ止めする。以上により、図15に示すように、物理量計測装置1が完成する。
【0041】
以上のような物理量計測装置1は、図16に示すように、デジタルインターフェースバスBSを介してマイクロコントローラー100と接続される。マイクロコントローラー100は、X軸、Y軸、Z軸角速度センサー3x、3y、3zに対してマスターとなるコントローラーである。このようなマイクロコントローラー100は、集積回路装置であり、例えば、MPU、CPUなどのプロセッサーにより実現することができる。また、マイクロコントローラー100をゲートアレイなどの自動配置配線によるASICにより実現することもできる。
【0042】
マイクロコントローラー100には、デジタルインターフェースバスBSを介してX軸角速度センサー3xからのX軸角速度データ、Y軸角速度センサー3yからのY軸角速度データおよびZ軸角速度センサー3zからのZ軸角速度データがそれぞれ入力される。なお、デジタルインターフェースバスBSは、X軸、Y軸、Z軸角速度センサー3x、3y、3zの通信規格に準拠したバスである。このようなデジタルインターフェースバスBSは、チップセレクト信号XCS、クロック信号SCLK、データ入力信号SDIおよびデータ出力信号SDOの4つの信号線で構成される。
【0043】
なお、物理量計測装置1の駆動には、これら4つの信号線に加えて、制御回路6用の電源配線およびグランド配線を含めた6つの信号線が必要となる。そのため、本実施形態では、外部接続端子8が6本のピン81を有する。ただし、ピン81の数は、特に限定されず、必要な配線数に応じて適宜設定することができる。
【0044】
このような構成では、図17に示すように、まず、負論理のチップセレクト信号XCSがLレベルになる。これにより、チップセレクト信号XCSの信号線が共通接続されているX軸角速度センサー3x、Y軸角速度センサー3yおよびZ軸角速度センサー3zの全てがチップセレクトされる。データ入力信号SDIの最初の1ビットのR/Wは、リード/ライトを指示するビットである。R/W=1の場合にはリードが指示され、R/W=0の場合にはライトが指示される。R/Wの次の2ビットのA[1:0]は、アドレスを指定するものである。共通アドレスを指定する場合にはA[1:0]=00となる。X軸角速度センサー3x、Y軸角速度センサー3y、Z軸角速度センサー3zの個別アドレスを指定する場合には、それぞれ、A[1:0]=01、10、11となる。A[1:0]の次の4ビットのC[4:0]は、コマンド内容およびレジスターアドレスを指示するものである。
【0045】
図17では、F1に示すようにR/W=1、つまり、リードが指示されており、マイクロコントローラー100がリードコマンドを発行している。また、F2に示すようにA[1:0]=00となっており、共通アドレスが指定されている。また、F3によってコマンド内容やレジスターアドレスが指示されている。これにより、期間T1では、X軸角速度センサー3xがX軸角速度データを出力し、次の期間T2では、Y軸角速度センサー3yがY軸角速度データを出力し、次の期間T3では、Z軸角速度センサー3zがZ軸角速度データを出力する。このようにデジタルインターフェースバスBSでは、X軸角速度センサー3x、Y軸角速度センサー3y、Z軸角速度センサー3zからの角速度データの連続読み出しが可能になっている。これは、X軸、Y軸、Z軸角速度センサー3x、3y、3zが、自身の送信順番と、センサーの接続個数と、送信データのビット数と、を記憶することで実現される。
【0046】
以上、物理量計測装置1について説明した。このような物理量計測装置1は、前述したように、ケース7と、ケース7に収容され、物理量を計測する物理量センサー3と、ケース7に収容されている温度センサー4と、ケース7に収容されている温度制御素子5と、ケース7に収容され、温度センサー4の検出結果に基づいて温度制御素子5の駆動を制御する制御回路6と、ケース7に配置され、物理量センサー3と電気的に接続されている外部接続端子8と、を有する。このような構成によれば、温度制御素子5によってケース7内の温度を所定温度に維持することにより、物理量センサー3のゼロ点出力が安定し、物理量の検出特性が向上する。そのため、優れた検出精度を有する物理量計測装置1となる。
【0047】
また、前述したように、物理量計測装置1は、ケース7に収容され、物理量センサー3、温度センサー4、温度制御素子5および制御回路6が搭載されている基板2を有する。これにより、基板2を介して各部を電気的に接続することができる。また、物理量センサー3、温度センサー4、温度制御素子5および制御回路6をまとめてケース7内に収容することができる。そのため、物理量計測装置1の製造が容易となる。
【0048】
また、前述したように、外部接続端子8は、ケース7を貫通しケース7外に臨む導電性のピン81を有する。これにより、簡単な構成で、外部接続端子8をケース7の内外に臨ませることができる。
【0049】
また、前述したように、基板2は、ピン81によってケース7に支持されている。これにより、物理量計測装置1の構成が簡単なものとなる。
【0050】
また、前述したように、物理量計測装置1は、ピン81とケース7との間に圧縮した状態で配置されている絶縁性の第1弾性部材91を有する。これにより、ピン81とケース7とを簡単に絶縁することができる。また、ピン81とケース7との隙間を効果的に封止することができ、ケース7の気密性を高めることができる。
【0051】
また、前述したように、ピン81は、基板2に挿通されている。これにより、簡単な構成で、基板2とピン81とを電気的に接続することができる。
【0052】
また、前述したように、ピン81と基板2との間に圧縮した状態で配置されている導電性の第2弾性部材92を有し、第2弾性部材92を介してピン81と基板2とが電気的に接続されている。これにより、ピン81と基板2とを簡単に固定することができる。
【0053】
<第2実施形態>
図18は、第2実施形態に係る物理量計測装置の断面図である。図19は、物理量計測装置の部分断面上面図である。
【0054】
本実施形態の物理量計測装置1は、ベース71と基板2との接続方法が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の各図において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0055】
図18に示すように、本実施形態の物理量計測装置1は、各ピン81が上下に分割されており、その間に導電性の第3弾性部材93が挟まれた構成となっている。つまり、各ピン81は、基部811Aと、基部811Aの下端から突出する下端部813と、を有するベース側ピン81Aと、基部811Bと、基部811Bの上端から突出する上端部812と、を有する基板側ピン81Bと、に分割されている。そして、6つのベース側ピン81Aで外部接続端子8が構成されている。なお、基部811Aの上面および基部811Bの下面は、それぞれ、平坦面で構成されている。そして、ベース側ピン81Aの下端部813が第1弾性部材91を介してベース71の貫通孔711に圧入されており、基板側ピン81Bの上端部812が第2弾性部材92を介して基板2の貫通孔21に圧入されている。
【0056】
また、ベース側ピン81Aと基板側ピン81Bとの間には枠状の第3弾性部材93が介在している。第3弾性部材93を枠状とすることにより、図19に示すように、第3弾性部材93と制御回路6との干渉を抑制することができる。言い換えると、第3弾性部材93の内側に制御回路6を配置するスペースを形成することができる。そのため、物理量計測装置1の低背化を図ることができる。
【0057】
第3弾性部材93は、導電性を有しており、図18に示すように、第3弾性部材93を介して上下に並び合うベース側ピン81Aと基板側ピン81Bとを電気的に接続する。第3弾性部材93は、その厚さ方向には導電性を有するが、面内方向には十分な絶縁性を発揮するため、上下に並び合わないベース側ピン81Aと基板側ピン81Bとについては、その導通を阻止することができる。このような第3弾性部材93によれば、簡単な構成で、基板2と外部接続端子8とを電気的に接続することができる。
【0058】
第3弾性部材93は、例えば、金属フィラー、CB(カーボンブラック)等の導電性粒子を含有した各種ゴム材料、各種エラストマー等で形成することができる。特に、本実施形態の第3弾性部材93は、導電性のシリコーンゴムで形成されている。
【0059】
以上のように、本実施形態の物理量計測装置1は、ケース7と基板2との間に圧縮した状態で配置されている導電性の第3弾性部材93を有し、第3弾性部材93を介して基板2と外部接続端子8とが電気的に接続されている。これにより、簡単な構成で、基板2と外部接続端子8とを電気的に接続することができる。
【0060】
また、前述したように、第3弾性部材93は、枠状である。これにより、第3弾性部材93と制御回路6との干渉を抑制することができる。言い換えると、第3弾性部材93の内側に部品を配置するスペースを形成することができる。そのため、物理量計測装置1の小型化、特に低背化を図ることができる。
【0061】
このような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0062】
<第3実施形態>
図20は、第3実施形態に係る物理量計測装置の断面図である。
【0063】
本実施形態の物理量計測装置1は、ケース7の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の図において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0064】
図20に示すように、本実施形態の物理量計測装置1では、ベース71が凹状をなしており、リッド72が板状をなしている。
【0065】
このような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0066】
<第4実施形態>
図21は、第4実施形態に係る物理量計測装置の断面図である。
【0067】
本実施形態の物理量計測装置1は、少なくとも1つのピン81の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の図において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0068】
図21に示すように、本実施形態の物理量計測装置1では、対応する貫通孔21、711同士がZ軸方向に重なっておらず、X-Y面内方向にずれている。そして、それに対応するように、ピン81の上端部812と下端部813とがX-Y面内方向にずれている。これにより、貫通孔21、711が重なり合わなくても、これらの間をピン81で接続することができる。そのため、貫通孔21、711の配置自由度が増し、物理量計測装置1の設計が容易となる。
【0069】
このような第4実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0070】
以上、本発明の物理量計測装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、本発明に任意の目的の工程が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…物理量計測装置、100…マイクロコントローラー、2…基板、21…貫通孔、3…物理量センサー、3x…X軸角速度センサー、3y…Y軸角速度センサー、3z…Z軸角速度センサー、30…角速度センサー、31…パッケージ、311…ベース、312…リッド、32…回路素子、321…検出回路、322…インターフェース回路、33…支持基板、331…基板、332…リード、34…角速度検出素子、340…基部、341…検出振動腕、342…検出振動腕、343…支持腕、344…支持腕、345…駆動振動腕、346…駆動振動腕、347…駆動振動腕、348…駆動振動腕、4…温度センサー、5…温度制御素子、6…制御回路、7…ケース、71…ベース、711…貫通孔、72…リッド、721…押圧部、73…シールリング、8…外部接続端子、81…ピン、81A…ベース側ピン、81B…基板側ピン、811…基部、811A…基部、811B…基部、812…上端部、813…下端部、91…第1弾性部材、92…第2弾性部材、93…第3弾性部材、911…筒部、912…フランジ、921…筒部、922…フランジ、B…ネジ、BS…デジタルインターフェースバス、E1…第1検出信号電極、E2…第1検出接地電極、E3…第2検出信号電極、E4…第2検出接地電極、E5…駆動信号電極、E6…駆動接地電極、G…ギャップ、S…収容空間、SCLK…クロック信号、SDI…データ入力信号、SDO…データ出力信号、T1…期間、T2…期間、T3…期間、XCS…チップセレクト信号、tw…温度範囲、ωc…角速度、ωx…角速度、ωy…角速度、ωz…角速度
図1
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