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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122058
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】車両の地点指定方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/36 20060101AFI20240902BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20240902BHJP
   B60K 35/00 20240101ALI20240902BHJP
   G08G 1/0962 20060101ALI20240902BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20240902BHJP
   G06F 3/0481 20220101ALI20240902BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20240902BHJP
   B60R 1/24 20220101ALI20240902BHJP
   G06T 19/00 20110101ALI20240902BHJP
【FI】
G01C21/36
B60K35/00 A
B60K35/00 Z
G08G1/0962
G06F3/01 510
G06F3/0481
B60R11/02 Z
B60R1/24
G06T19/00 600
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029376
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】荻巣 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 博司
【テーマコード(参考)】
2F129
3D020
3D344
5B050
5E555
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129CC14
2F129CC15
2F129EE29
2F129EE65
2F129EE78
2F129EE79
2F129GG17
2F129HH12
2F129HH14
3D020BA20
3D020BC01
3D344AA26
3D344AA30
3D344AB01
3D344AC25
3D344AD01
3D344AD13
5B050CA07
5B050DA04
5B050EA07
5B050EA12
5B050EA13
5B050EA19
5B050EA27
5B050FA05
5E555AA04
5E555AA26
5E555BA23
5E555BA24
5E555BA83
5E555BA85
5E555BA87
5E555BB23
5E555BB24
5E555BC18
5E555CA12
5E555CA42
5E555CB12
5E555CB36
5E555CB65
5E555CC22
5E555DA09
5E555DB18
5E555DB53
5E555DC09
5E555DC19
5E555DC60
5E555EA14
5E555EA22
5E555FA00
5H181AA01
5H181CC04
5H181FF24
5H181FF27
5H181FF33
5H181FF38
5H181FF39
(57)【要約】
【課題】AR-HUDを利用して、運転者以外の同乗者等が目印となる地点を運転者に容易にかつ正しく伝えられるようにする。
【解決手段】車両は、AR-HUDを備え、ウインドシールドを通して見える表示エリア13に虚像を表示できる。前方カメラによって取得される車両前方の光景の画像がタッチパネルを備えたディスプレイ4にリアルタイムに表示され、指示者となる同乗者は、画面上で所望の地点を手指で指定する。指定された地点に対応して、現実の光景に重なるゴールマークがAR-HUDを介して表示される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラを介して車両前方の画像を取得し、
この画像を運転者以外の指示者が視認できるモニタに表示し、
指示者がこのモニタの画面上で指定した地点を特定し、
運転者の視点位置を検出し、
車両のAR-HUDを介して、ウインドシールドを通して運転者が見る前方の現実の光景に重ねて、上記の指定地点を示すマークを表示する、
車両の地点指定方法。
【請求項2】
指示者が上記モニタの画面上で指定した地点をグローバル座標上で特定し、
このグローバル座標を運転者の視点位置を考慮してAR-HUDの座標系に変換して表示する、
請求項1に記載の車両の地点指定方法。
【請求項3】
上記AR-HUDの表示エリアに対応したフレームを上記モニタの画像に重ねて表示する、
請求項1に記載の車両の地点指定方法。
【請求項4】
運転者の視点位置に合わせて上記モニタ上における上記フレームの位置を修正する、
請求項3に記載の車両の地点指定方法。
【請求項5】
上記モニタの画面上で指定した指定地点が上記AR-HUDの表示エリア内であるか否かを判定し、
表示エリア外である場合は、上記マークと異なる第2のマークを、上記表示エリアの外縁付近でかつ上記指定地点に対応する位置に近い位置に表示する、
請求項1に記載の車両の地点指定方法。
【請求項6】
上記第2のマークは、上記指定地点に対応する位置の方向に向いた矢印形状をなす、
請求項5に記載の車両の地点指定方法。
【請求項7】
上記モニタの画面上で指定した指定地点が上記AR-HUDの表示エリア内であるか否かを判定し、
表示エリア外である場合は、上記画像の中で上記指定地点を含む一部を切り出してサムネイル画像を生成し、
このサムネイル画像を上記表示エリアの外縁付近でかつ上記指定地点に対応する位置に近い位置に表示する、
請求項1に記載の車両の地点指定方法。
【請求項8】
車両前方の路面に対応した面を示す格子画像を生成し、
上記モニタに表示される画像にこの格子画像を重ねて表示する、
請求項1に記載の車両の地点指定方法。
【請求項9】
上記モニタとして、車両に設置されたディスプレイを用いる、
請求項1に記載の車両の地点指定方法。
【請求項10】
上記モニタとして、指示者が保有する携帯デバイスを用いる、
請求項1に記載の車両の地点指定方法。
【請求項11】
車両前方の画像を取得するカメラと、
運転者以外の指示者が視認できるように上記画像を表示するとともに、ポインタ機能を有する表示部と、
運転者の視点位置を直接もしくは間接に検出する視点検出部と、
ウインドシールドを通して見える現実情報に、仮想情報を重ねて表示するAR-HUDと、
このAR-HUDを制御する制御部と、
を備え、
上記制御部は、
指示者が上記表示部の画面上で指定した地点を特定し、
上記AR-HUDを介して、ウインドシールドを通して運転者が見る前方の現実の光景に重ねて、上記の指定地点を示すマークを表示する、
車両の地点指定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の運転者以外の指示者が指定した地点を運転者に視認させるようにした車両の地点指定方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の運転中に必要な種々の情報を運転席前方のウインドシールドに投影して表示するHUD(ヘッドアップディスプレイ)が普及しつつある。またHUDをより進化させた技術としてAR-HUD(拡張現実ヘッドアップディスプレイ)が知られている。このAR-HUDでは、ウインドシールドを通して見える現実情報に、虚像からなる仮想情報を重ねて表示することができ、ウインドシールドのガラス面上に情報が表示される一般的なHUDに比較して運転者の視点ないし焦点の移動が少なくなる。
【0003】
特許文献1には、AR-HUDを介してカーナビゲーションシステムの案内情報を表示する技術が開示されている。例えば、左折すべき交差点の現実の光景に重ねて左に折れ曲がった矢印を表示することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-173399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、車両が目的とする地点あるいは目印となる地点に近付いたときに、同乗者(あるいは音声通信を介して道案内する者等)がこれらの地点を運転中の運転者に指示することがある。多くの場合は、「右側に見える青色のビルの隣り」といったように口頭で指示がなされ、運転者は目視でこのような指示された地点を探すことになる。そのため、指示された地点を探すのに手間取って行き過ごしてしまったり、指示者の意図した地点と異なる地点を運転者が認識したりすることがしばしば起こり得る。
【0006】
同乗者によるカーナビゲーションシステムの目的地設定は、ある程度遠い地点(換言すれば時間的に余裕がある地点)の指定には適当であるが、ある程度近いところでの同乗者等による道案内や地点の指示には不向きである。しかも、カーナビゲーションシステムの目的地設定では、運転者がカーナビゲーションシステムの経路案内を見る必要があり、指示者の意図した地点が直接的に運転者に伝わらない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る車両の地点指定方法は、
カメラを介して車両前方の画像を取得し、
この画像を運転者以外の指示者が視認できるモニタに表示し、
指示者がこのモニタの画面上で指定した地点を特定し、
運転者の視点位置を検出し、
車両のAR-HUDを介して、ウインドシールドを通して運転者が見る前方の現実の光景に重ねて、上記の指定地点を示すマークを表示する。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、指示者にとっては、運転者が見ている前方の光景に対応した画像をモニタで見ながら地点の指定を行うことができるので、意図した地点の指定を直感的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施例の地点指定装置の構成説明図。
図2】車両内の運転者の視点から見える光景の説明図。
図3】ディスプレイ上での同乗者による指さし指示の説明図。
図4】ウインドシールドを通して運転者が見る指定地点の表示の説明図。
図5】コントローラが実行する地点指定の処理の流れを示したフローチャート。
図6】拡大表示を行う処理の要部を示したフローチャート。
図7】グローバル座標系の説明図。
図8】拡大表示を行う際の第1の指さし指示の説明図。
図9】拡大画像上での第2の指さし指示の説明図。
図10】拡大した画像をAR-HUDによりサムネイル表示した説明図。
図11】AR-HUDの表示エリア外を指定している指さし指示の例を示す説明図。
図12】表示エリア外である場合のAR-HUDの表示例を示す説明図。
図13】表示エリア外である場合のサムネイル表示の例を示す説明図。
図14】路面に対応した面を示す格子画像をディスプレイに表示した例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施例の車両の地点指定装置の構成を示した説明図である。一実施例の車両は一般的な自動車であり、運転席に対してAR-HUD(拡張現実ヘッドアップディスプレイ)1を備えている。このAR-HUD1は、ウインドシールドを通して見える現実情報に、仮想情報を重ねて表示するものである。本発明においては、その形式はどのようなものであってもよいが、例えばウインドシールドの下部にプロジェクタを備え、ウインドシールドの表面で反射して運転者の目に届く光により運転者前方の適当な距離(例えば数メートル)離れた仮想の焦点面に仮想情報の虚像が生成される。仮想情報としては、本発明に係る後述する指定地点のマークのほか、車速情報やカーナビゲーションシステムの経路案内情報等他の適当な情報が含まれ得る。
【0012】
地点指定装置は、AR-HUD1のほかに、車両前方の画像を取得するカメラ(前方カメラと呼ぶ)2と、AR-HUD1の虚像位置を適切なものとするために運転者の視点位置を検出するカメラ(視点検出用カメラと呼ぶ)3と、表示部となるモニタ例えば車両のダッシュボード中央に設置されたディスプレイ4と、ディスプレイ4やAR-HUD1を制御するコントローラ5と、を備えて構成される。
【0013】
前方カメラ2は、地点指定装置専用のカメラを備えていても良いが、いわゆるADAS(先進運転支援システム)に含まれる前方を指向したカメラを利用することが可能である。前方カメラ2は、複数のカメラを含む構成であってもよい。この前方カメラ2が取得した車両前方の画像は、コントローラ5を介して、実質的にリアルタイムにディスプレイ4上に表示される。従って、ディスプレイ4上に表示される画像は、適当なフレームレートの動画である。
【0014】
ディスプレイ4は、地点指定装置専用のディスプレイであっても良いが、カーナビゲーションシステムの情報表示やオーディオシステムの情報表示等を兼ねたいわゆるセンターインフォメーションディスプレイ(CID)を利用することが可能である。一実施例のディスプレイ4はCIDであり、地点指定モードへのモード切換ないしモード選択によって地点指定装置用のディスプレイとして利用される。地点指定モードにおいて、上述のように、前方カメラ2によって取得される車両前方の光景がディスプレイ4に表示される。ディスプレイ4は、地点指定のための入力装置を兼ねており、表示される車両前方の画像の中で指定された地点の位置を特定するための適当なポインタ機能を有する。一実施例のディスプレイ4は、ポインタ機能として、接触ないし非接触のタッチパネルを表示面に備えており、手指により表示画面上(つまりタッチパネル上)の所望の地点を指し示すことで、その地点が特定される。ダッシュボード中央にディスプレイ4が配置されているため、運転者以外の指示者例えば助手席の同乗者がディスプレイ4の表示内容を視認することができ、かつ同乗者が手指によりディスプレイ4上で地点の指定を行うことができる。なお、以下では、指示者(例えば同乗者)による表示画面上での地点指定操作を「指さし指示」と呼ぶことがある。
【0015】
視点検出用カメラ3は、例えばウインドシールド上縁付近に運転者頭部に向かって配置される。この視点検出用カメラ3が取得した画像をコントローラ5が処理することで、運転者の視点位置(つまり瞳の位置)が検出される。なお、運転者の視点位置の検出は、カメラによらずに行うようにしてもよく、例えば運転者の着座位置や運転者の身長等から間接的に視点位置の検出を行うものであってもよい。コントローラ5は、このように検出された視点位置に応じてAR-HUD1による虚像つまりオブジェクトの生成位置を修正し、ウインドシールドを通して運転者が見る現実の光景とAR-HUD1のオブジェクトとが正しく重なり合うようにする。
【0016】
コントローラ5は、種々の制御を行う車載のコンピュータシステムの一部の機能として構成されており、地点指定モードにおいては、前方カメラ2が取得した車両前方の画像をディスプレイ4に表示し、このディスプレイ4の画像上で同乗者による地点指定がなされたときは、この指定された地点を特定し、AR-HUD1を介して指定地点を示すマーク(例えば後述するゴールマーク)を表示する。
【0017】
図2は、車両内の運転者の視点から見える光景の説明図である。図の下側部分にはステアリングホイール11や前述のディスプレイ4を備えたダッシュボード12の一部が見えており、図の上側部分は、ウインドシールドを通して見える車両前方の光景を示している。図示例では、道路の両側にビルが並ぶ市街地を走行中であり、路面や両側に並ぶビル等が見えている。この車両は、前述したようにAR-HUD1を備えており、ウインドシールドを通して見える範囲の一部に、長方形をなすAR-HUD1の表示エリア13が存在する。図では、四隅にそれぞれ位置する4つのL字形記号13aを表示することによって表示エリア13が示されているが、このL字形記号13aの表示は、無くてもよい。表示エリア13は、基本的に、運転者の正面となる位置に配置される。この表示エリア13には、運転中に必要な種々の仮想情報が表示される。例えば、図示するように、走行中の道路の制限速度情報14や実速度情報15等が表示される。
【0018】
ディスプレイ4は、前述したようにダッシュボード12の中央部つまり運転席と助手席との間に配置されている。このディスプレイ4には、前述したように、前方カメラ2を介して取得した車両前方の光景が動画として表示される。
【0019】
図3および図4は、実施例の地点指定装置の基本的な動作を説明するための説明図であり、図3はディスプレイ4上での同乗者による指さし指示の説明図、図4はこれに対応したAR-HUD1による指定地点の表示の説明図である。例えば、走行中に同乗者が道案内をするために、特定の地点(例えば目的となる特定のビルや曲がり角等)を指示する必要がある場合、同乗者は、ディスプレイ4に表示されている画像を見ながら、自身が意図する地点を指さし指示する。図示例では、走行中の道路の右側のある地点が指定されている。なお、図3においては、指さし指示を行っている同乗者の手16が模式的に示されている。
【0020】
このような同乗者による指さし指示がなされると、図4に示すように、AR-HUD1を介して、現実の光景に重畳して指定された地点(指定地点と呼ぶ)を示すマーク例えば「G」の文字を付した吹き出し状のゴールマーク18が表示される。なお、図示例では、指定地点までの残り距離(符号19参照)も併せて表示される。
【0021】
例えば、ディスプレイ4の画像上で指定された指定地点は、後述するように、コントローラ5によって、指定がなされた時点の車両位置を原点とするグローバル座標上で特定される。そして、この指定地点のグローバル座標を運転者の視点位置を考慮してAR-HUD1の座標系に変換することで、AR-HUD1の表示エリア13内でのゴールマーク18の表示位置が定められる。従って、運転者にとっては、現実の光景の中に指定地点を示すゴールマーク18が存在するように見える。その後のゴールマーク18の表示位置は、車両の移動(走行)に基づいて演算され、かつ所定のフレームレートに従って逐次更新される。そのため、走行中、現実の指定地点に重なってゴールマーク18が表示され続ける。
【0022】
なお、地点指定が完了したことを同乗者が確認できるようにディスプレイ4の画像上に同様のゴールマーク18を表示するようにしてもよい。
【0023】
図8図10は、実施例の地点指定装置の付加的な機能を説明するための説明図であり、図8図9はディスプレイ4の表示および操作を示し、図10はAR-HUD1による表示を示している。同乗者がディスプレイ4に表示されている画像上で所望の地点の指定を行う際に、指定しようとしている地点が車両から比較的に遠い場合、ディスプレイ4上では目印となるビル等が小さく見えるので、意図する地点を正しく指定することが難しくなりやすい。そのため、好ましい実施例では、付加的な機能として、地点指定のために、前方カメラ2が取得した画像の一部を切り出して拡大した拡大画像をディスプレイ4に表示する機能を備えている。
【0024】
図8は、前述した図3と同様に、ディスプレイ4上で同乗者が指さし指示を行っている様子を示している。このとき、ディスプレイ4には、前方カメラ2が取得した画像が実質的にリアルタイムで動画として表示されている。このようにディスプレイ4で指さし指示された地点は、前述と同様に特定される。ここでは、仮の指定地点として特定され、この地点が車両から所定の距離よりも遠いかどうかが判定される。所定の距離よりも近ければ、この仮の指定地点が最終的な指定地点として決定される。そして、この指定地点に対応して、AR-HUD1によるゴールマーク18の表示が行われる。
【0025】
一方、仮の指定地点として特定した地点が所定の距離よりも遠い場合は、図9に示すように、前方カメラ2が取得した画像の中で仮に指定された地点を含む一部を切り出して拡大した拡大画像21がディスプレイ4に表示される。好ましい一実施例では、拡大画像21は、前方カメラ2による動画の表示を継続しているディスプレイ4の画面の一部(特に指さし指示した画面上の点の近傍)に重ねて表示される。そして、このように拡大表示された拡大画像21の上で、同乗者が再度指さし指示を行うことで、この指定地点が最終的な指定地点として決定される。好ましい一実施例では、拡大画像21は、動画ではなく静止画として表示される。
【0026】
このように、同乗者が指定しようとしている地点が遠い場合に拡大表示を行うことで、手指による地点の指定をより正しくかつ容易に行うことができる。しかも拡大画像21を静止画とすることで、地点の指定がより容易となる。
【0027】
好ましい一実施例では、最初に指さし指示を行って拡大画像21が表示された後、所定時間経過後にこの拡大画像21の表示を終了する。走行に伴い、静止画である拡大画像21と現実の光景とのずれが大きくなるので、長時間の表示は好ましくない。換言すれば、時間が経過すると同乗者が意図する地点に車両が近付くので、拡大表示があまり意味のないものとなる。同様の理由により、上記の所定時間は、車速が高いほど短く設定することが望ましい。
【0028】
なお、拡大画像21を用いて指さし指示が完了した段階で拡大画像21の表示を終了するようにしてもよい。
【0029】
上記のように拡大画像21を用いて比較的遠い地点を指定した場合、AR-HUD1によるゴールマーク18の表示は、前述した図4と同様に行うことができる。
【0030】
あるいは、図10に示すように、地点指定が行われた拡大画像21と同様のサムネイル画像22をAR-HUD1の表示エリア13の一部(特に指定地点と重なる部分)に表示し、このサムネイル画像22の中にゴールマーク18を表示するようにしてもよい。この場合のサムネイル画像22は、拡大画像21と同様に静止画である。
【0031】
なお、指定地点にある程度近付いた段階で、サムネイル画像22の表示を終了し、通常の図4のようなゴールマーク18の表示に切り換えるようにしてもよい。
【0032】
次に、図11および図12は、AR-HUD1の表示エリア13が運転者の視界の一部に限られていることを考慮した一実施例の制御に関する説明図である。この実施例においては、図11に示すように、AR-HUD1の表示エリア13に対応した長方形のフレーム31が、ディスプレイ4の動画に重ねて表示される。ディスプレイ4におけるこのフレーム31の表示位置は、検出される運転者の視点位置に合わせて修正される。
【0033】
同乗者は、フレーム31の内側であっても外側であっても前述したように手指により所望の地点の指さし指示を行うことができる。指さし指示された地点は、コントローラ5によって特定され、かつこの指定地点がAR-HUD1の表示エリア13の内側であるか外側であるか(換言すればフレーム31の内側であるか外側であるか)が判定される。表示エリア13の内側である場合は、図4に示したように、表示エリア13内に、現実の光景における指定地点と重畳するようにゴールマーク18が表示される。
【0034】
一方、指定地点がAR-HUD1の表示エリア13の外側である場合には、表示エリア13よりも外側に指定地点があることを運転者に対し示すために、図12に示すように、通常のゴールマーク18とは異なる第2のマークとして、矢印マーク32が表示される。この矢印マーク32は、表示エリア13の外縁付近でかつ指定地点に対応する位置に近い位置に表示され、指定地点に対応する位置の方向に向いた矢印形状をなしている。図12の例では、表示エリア13の右上の隅に、右斜め上方を指向した矢印マーク32が表示されている。これにより、運転者は、視界の中で表示エリア13の右斜め上方の方向に指定地点があることを直感的に認識することができる。
【0035】
図13は、指定地点が表示エリア13の外側である場合の表示の変形例を示している。この例では、指定地点が表示エリア13の外側である場合は、前方カメラ2が取得する画像の中で指定地点を含む一部を切り出してサムネイル画像35を生成し、このサムネイル画像35を図12の矢印マーク32に代えて表示する。つまり、表示エリア13の外縁付近でかつ指定地点に対応する位置に近い位置に、サムネイル画像35が表示される。なお、好ましい一実施例においては、サムネイル画像35は静止画である。このようにサムネイル画像35をAR-HUD1により表示することで、表示エリア13の外側であっても、どこが指定されたのかを運転者が知ることができる。
【0036】
次に、図14は、ディスプレイ4における表示の変形例を示す。前述したように、ディスプレイ4には前方カメラ2が取得した画像が表示され、この画像の中で同乗者が地点の指さし指示を行うのであるが、路面を前方カメラ2が俯瞰して見ていることから、同乗者が所望の地点に対し路面よりも高い位置を指さし指示すると、意図した地点よりも遠い地点が指定されたものと誤って特定されることがある。つまり、高さに関連して地点の前後方向のばらつきが生じ得る。図14に示す実施例では、車両前方の路面に対応した面を示す格子画像(L1,L2で示す)を生成し、ディスプレイ4に表示される画像にこの格子画像L1,L2を重ねて表示する。格子画像L1,L2は、例えば、路面の勾配や傾斜の情報を含む地図データから生成する、あるいは、取得した画像の解析に基づく面データから生成する、などが可能である。
【0037】
このように格子画像L1,L2をディスプレイ4の画像に重ねて表示することで、路面の高さ位置を基準として同乗者が地点の指示をしやすくなり、高さに関連した地点指定の間違いが生じにくくなる。
【0038】
なお、図14では、作図の簡略化のために、格子画像L1,L2が水平面に沿ったように単純に示されているが、当然のことながら、路面が傾斜面であれば、傾斜面を示すように格子が表示される。
【0039】
次に、図5は、コントローラ5が実行する地点指定制御の処理の流れを示したフローチャートである。ここには、図3および図4を用いて説明した基本的な制御と図14を用いて説明した格子画像L1,L2の表示の処理とが含まれている。なお、下記の座標系におけるx軸、y軸、z軸の方向は、例えば、x軸が車両の左右方向、y軸が車両の前後方向、z軸が車両の高さ方向、である。
【0040】
ステップ1~4の処理は、格子画像L1,L2の表示のための付加的な処理であり、最初のステップ1において、前述したように地図情報等を用いて表示すべき格子座標(X,Y,Z)を定義する。これは、ある時点(t=0)の車両中心を原点とするグローバル座標上で格子点について行う。ステップ2で、時間tにおける車両の移動距離(x(t),y(t))を検出し、ステップ3で、前方カメラ2のカメラ視点(x,y,z)からの格子の相対座標(X-x-x(t),Y-y-y(t),Z-z)を算出する。高さ方向の座標Zは移動距離による変化はない。そして、ステップ4において、これらの座標をディスプレイ4の座標系に変換した上で、ディスプレイ4に格子画像L1,L2として表示する。
【0041】
このように格子画像L1,L2が車両前方の画像に重ねて表示されているディスプレイ4において、ステップ5では、同乗者による指さし指示(つまり手指による地点の指定)がなされたかを繰り返し判定する。指さし指示がなされていなければ、時間tを更新(ステップ6)した上でステップ2に戻る。なお、ステップ6における「f」は、動画における1秒当たりのフレーム数に相当する一定値である。従って、ディスプレイ4の格子画像L1,L2は、前方カメラ2が取得した動画とともに、「1/f」秒毎に更新される。
【0042】
ステップ5で指さし指示があったと判定したら、ステップ5からステップ7へ進み、指さし指示された地点のカメラ視点からの相対座標(X,Yを算出する。ここで、指さし指示された時点をt=Tとする。次にステップ8において、時間Tまでの車両の移動距離(x(T),y(T))を検出し、ステップ9において、指さし指示された指定地点の座標をグローバル座標(X,Y,Z)に変換する。
【0043】
ステップ10では、さらに、時間tにおける車両の移動距離(x(t),y(t))を検出する。
【0044】
ステップ11~14は、AR-HUD1による表示に関する処理であり、ステップ11において、視点検出用カメラ3により運転者の視点位置を検出する。次に、ステップ12において、この視点位置の検出に基づき、グローバル座標の原点(車両中心)から運転者の視点位置までの相対距離(x(t),y(t),z(t))を算出する。さらに、ステップ13において、運転者の視点位置からの指定地点の相対座標を、(X-x(t)-x(t),Y-y(t)-y(t),Z-z(t))として算出する。そして、ステップ14において、これらの座標をAR-HUD1の座標系に変換した上で、AR-HUD1を介して例えばゴールマーク18の表示を行う。
【0045】
ステップ15では、目的地つまり指定地点に到着したかどうかを判定する。指定地点に到着したら、一連の処理が終了する。ステップ15の判定がNOであれば、時間tを「t+1/f」と更新(ステップ16)した上でステップ10に戻る。「f」は、動画における1秒当たりのフレーム数に相当する一定値である。従って、AR-HUD1により表示されるゴールマーク18の位置は、「1/f」秒毎に更新され、常に現実の光景と対応するように保たれる。
【0046】
図7は、指さし指示された指定地点(X,Y,Z)を走行中の道路51の上に示した説明図であり、車両を側方から見た図に相当する。この図7に示すように、運転者52は道路51の路面を俯瞰して見ており、ウインドシールドを通して見える前方の現実の光景に、車両のAR-HUD1を介してゴールマーク18等の仮想情報が重ねて表示される。図7において、符号53を付した面は、AR-HUD1によって虚像が生成される仮想の焦点面を示しており、この焦点面53は、ウインドシールドの外側つまりウインドシールドよりも車両前方に位置する。前述したように、図示例のグローバル座標系は、例えば、t=0の時点の車両中心P0を原点とし、時間t後には車両中心がPtで示す位置まで移動する。
【0047】
前述したように、指さし指示された座標(X,Yを取得し、指さし指示した時点(t=T)の車両の移動距離(x(T),y(T))を求めることで、指定地点のグローバル座標(X,Y,Z)を求めることができる。そして、車両中心から運転者52の視点位置52aまでの距離(x(t),y(t),z(t))を用いることで、運転者52の視点位置52aからの指定地点の相対座標を、(X-x(t)-x(t),Y-y(t)-y(t),Z-z(t))として求めることができる。このような位置にAR-HUD1による表示を行うことで、現実環境における指定地点に重畳してゴールマーク18が表示される。
【0048】
次に、図6は、図8図10を用いて説明した付加的な機能に対応した要部のフローチャートを示している。これは、図5のフローチャートのステップ5~7に相当し、他の部分は図5と変わりがないので、省略してある。
【0049】
ステップ5では、前述したように、車両前方の画像が表示されているディスプレイ4の画面上で、同乗者による指さし指示(つまり手指による地点の指定)がなされたかを繰り返し判定する。指さし指示がなされていなければ、前述したようにステップ6に進む。
【0050】
一方、ステップ5で指さし指示があったと判定したら、ステップ5からステップ21へ進み、指さし指示された地点のカメラ視点からの相対座標(X,Yを仮に取得する。
【0051】
そして、この実施例では、仮に取得した座標に基づき、ステップ22において、指さし指示された地点が車両から所定の距離(Th)よりも遠いかどうかを判定する。つまり、「Y>Th」であるか否かを判定する。ここでNOであれば、前述したステップ7に進み、仮に取得した座標を最終的な指さし指示された地点の座標((X,Y)であるとする。なお、初回の指さし指示した時点tを(t=T)とする。
【0052】
ステップ22の判定がYESであれば、ステップ23に進み、前述したように、ディスプレイ4に拡大画像21を表示する(図9参照)。そして、ステップ24において、拡大画像21に基づく2回目の指さし指示があったかどうかを判定する。指さし指示が検知されたら、ステップ25に進み、指さし指示された地点の相対座標(X,Yを仮に取得した上で、ステップ7に進む。これにより、2回目の指さし指示による地点が最終的な指さし指示された地点((X,Y)として決定される。なお、2回目の指さし指示した時点tを(t=T)とする。ステップ24においてNOの場合は、拡大画像21上での2回目の指さし指示がなされるまで、時間tを更新(ステップ26)しながら待機する。
【0053】
以上、この発明の一実施例を詳細に説明したが、この発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、上記実施例では、地点指定を行うモニタとして車両に固定されたディスプレイ4を例に挙げたが、車両に同乗している指示者もしくは車両の外部にいる指示者が保有するスマートフォン等の携帯デバイスを地点指定のためのモニタとして利用することもできる。例えば、指示者が車両の外部にいる場合に、音声通話での道案内と併せて、指示者が車両前方の画像をモニタ上で見ながら目印となる地点を指定できるので、非常に便利となる。
【符号の説明】
【0054】
1…AR-HUD
2…前方カメラ
3…視点検出用カメラ
4…ディスプレイ
5…コントローラ
13…表示エリア
18…ゴールマーク
21…拡大画像
22…サムネイル画像
31…フレーム
32…矢印マーク
35…サムネイル画像
L1,L2…格子画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図14