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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122061
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240902BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029380
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】徳永 翔平
(72)【発明者】
【氏名】秋山 浩慶
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA24
5H770BA01
5H770DA03
5H770DA41
5H770HA02Y
5H770JA11W
5H770LA08W
5H770PA13
5H770PA15
5H770PA22
5H770PA43
5H770QA22
(57)【要約】
【課題】電力変換装置のコンデンサにおいて、熱伝導シートや放熱グリース等の放熱機構を省略して組み立てを容易にすると共に、コンデンサの冷却性能を向上させる。
【解決手段】電力変換装置は、コンデンサケース1に収納されたコンデンサと、コンデンサを冷却する金属製冷却器9と、を備える。金属製冷却器9は、基部9aと、基部9aからコンデンサケース1側に延設された第一延設部9bと、基部9aからコンデンサケース1側に延設された第二延設部9cと、を備える。第一延設部9bと第二延設部9cをコンデンサケース1に熱溶着接合する。基部9aと第一延設部9bと第二延設部9cとコンデンサケース1に囲まれた空間を冷媒が流れる流路10とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサケースに収納されたコンデンサと、前記コンデンサを冷却する金属製冷却器と、を備えた電力変換装置であって、
前記金属製冷却器は、基部と、前記基部から前記コンデンサケース側に延設された第一延設部と、前記基部から前記コンデンサケース側に延設された第二延設部と、を備え、
前記第一延設部と前記第二延設部を前記コンデンサケースに熱溶着接合し、
前記基部と前記第一延設部と前記第二延設部と前記コンデンサケースに囲まれた空間を冷媒が流れる流路とすることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記コンデンサケースの前記流路と接する面に突起を設けたことを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記コンデンサケースの2つ以上の面それぞれに前記金属製冷却器を配置したことを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記金属製冷却器の材質は、アルミニウムまたはマグネシウムであることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に設けられたコンデンサの冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置(インバータユニット)において、DCリンク電圧を平滑する役目を担うコンデンサは、常時電流が流れるため発熱部品となる。
【0003】
図5(a)、図5(b)に従来のコンデンサの構成を示す。図5(a)、図5(b)に示すように、コンデンサCは直方体形状のコンデンサケース1に収納される。
【0004】
コンデンサCの内部構成は、発熱源であるコンデンサ素子や内部導体を樹脂製のコンデンサケース1に収容し、コンデンサケース1内の空間に樹脂を注入してモールドする構成のものが多い。樹脂は絶縁材なので、この構成によってコンデンサCの絶縁性が保たれる。
【0005】
コンデンサCの冷却を行うために、既存構成では、コンデンサCの上面及び底面に配置した熱伝導シート2を介しインバータユニットの筐体3と接させることにより冷却を実現していた。
【0006】
なお、インバータ製造メーカでは、コンデンサなどの部品を他社から購入してインバータユニットの組み立て作業を行うことが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-197838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、実際の発熱部はモールドされたコンデンサ内部(コンデンサ素子や内部導体)であり、発生した熱を樹脂モールド→コンデンサケース1→熱伝導シート2→インバータユニットの筐体3を介して放熱している。介在する樹脂モールド等には熱抵抗があるため十分な冷却性能が得られない虞がある。
【0009】
また、コンデンサCは、インバータユニット内でも大型部品であるため(後述する図1の電気回路内に示す電気部品の中で最も体積が大きいことが多い)、インバータユニットを小型化しようと思った際にコンデンサCの発熱がネックとなっていた。逆に大型部品であるコンデンサCの冷却を効果的にできると、コンデンサCの小型化が可能となるため、インバータユニットを小型化しやすくなる。
【0010】
一方、インバータユニットにおけるコンデンサ冷却の先行技術として、特許文献1が開示されている。特許文献1では、図6に示すように、液冷の冷却器4とコンデンサモジュール5を放熱グリース6(または熱伝導シート)を介して接合させることで冷却する技術である。ただし、特許文献1では、放熱グリース6(または熱伝導シート)を必要としているため、インバータユニットの組立工数がかかる問題がある。
【0011】
以上示したようなことから、電力変換装置のコンデンサにおいて、熱伝導シートや放熱グリース等の放熱機構を省略して組み立てを容易にすると共に、コンデンサの冷却性能を向上させることが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、コンデンサケースに収納されたコンデンサと、前記コンデンサを冷却する金属製冷却器と、を備えた電力変換装置であって、前記金属製冷却器は、基部と、前記基部から前記コンデンサケース側に延設された第一延設部と、前記基部から前記コンデンサケース側に延設された第二延設部と、を備え、前記第一延設部と前記第二延設部を前記コンデンサケースに熱溶着接合し、前記基部と前記第一延設部と前記第二延設部と前記コンデンサケースに囲まれた空間を冷媒が流れる流路とすることを特徴とする。
【0013】
また、その一態様として、前記コンデンサケースの前記流路と接する面に突起を設けたことを特徴とする。
【0014】
また、その一態様として、前記コンデンサケースの2つ以上の面それぞれに前記金属製冷却器を配置したことを特徴とする。
【0015】
また、その一態様として、前記金属製冷却器の材質は、アルミニウムまたはマグネシウムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電力変換装置のコンデンサにおいて、熱伝導シートや放熱グリース等の放熱機構を省略して組み立てを容易にすると共に、コンデンサの冷却性能を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一般的な電力変換装置(インバータユニット)の電気回路図。
図2】実施形態1におけるコンデンサの冷却構造を示す図。
図3】実施形態2におけるコンデンサの冷却構造を示す図。
図4】実施形態3におけるコンデンサの冷却構造を示す図。
図5】従来のコンデンサの構成の一例を示す図。
図6】従来のコンデンサの構成の他例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本願発明における電力変換装置の実施形態1~3を図1図4に基づいて詳述する。
【0019】
[実施形態1]
図1に、一般的な電力変換装置(インバータユニット)の電気回路図を示す。図1に示すように、P端子とN端子との間にコンデンサ(例えばフィルムコンデンサ)Cが接続される。また、P端子とN端子との間にスイッチング素子Su,Sx、スイッチング素子Sv,Sy、スイッチング素子Sw,Szが直列接続される。スイッチング素子は例えばIGBTであり、スイッチング素子Su~Szで逆変換器(IGBTパッケージ)7を構成している。
【0020】
逆変換器7の交流側(スイッチング素子Su,Sxの接続点、スイッチング素子Sv,Syの接続点、スイッチング素子Sw,Szの接続点)にはモータMが接続される。また、逆変換器7とモータMとの間には電流センサ8が設けられている。
【0021】
コンデンサCはDCリンク電圧を平滑する役目を担う。また、コンデンサCに対して並列に放電抵抗Rが接続される。放電抵抗Rは、インバータユニットの入力電源オフ時にコンデンサCの電荷を放電させるために設けている。これにより感電事故を防止している。
【0022】
図2に本実施形態1におけるコンデンサの冷却構造を示す。本実施形態1では、液冷の冷却器を用いる。
【0023】
図2に示すように、本実施形態1では、樹脂製のコンデンサケース1と金属製冷却器9を一体成型(熱溶着接合)している。また、本実施形態1では、既存のコンデンサ構成(図5)にあった熱伝導シート2を廃止し、コンデンサケース1が直接、流路10に接するように配置している。
【0024】
次に、金属製冷却器9について説明する。金属製冷却器9は、基部9aと、基部9aからコンデンサケース1側に延設された第一延設部9bと、基部9aからコンデンサケース1側に延設された第二延設部9cと、を備える。
【0025】
この第一延設部9bと第二延設部9cの接合部9dをコンデンサケース1に熱溶着接合する。そして、基部9aと第一延設部9bと第二延設部9cとコンデンサケース1に囲まれた空間を冷媒(冷却水)が流れる流路10とする。この金属製冷却器9はインバータユニットの筐体に取り付ける。
【0026】
金属製冷却器9は、例えばアルミニウム製とする。アルミニウムは熱伝導率が高く軽量であるため冷却器の材質として適している。ただし、マグネシウムなどの他の材質の金属を用いてもよい。
【0027】
コンデンサケース1(樹脂製)と第一延設部、第二延設部(金属製)が接する部分は、熱溶着接合技術により接合することで、Oリング等を用いることなく水密性(密閉性)を確保する。
【0028】
以下、コンデンサの冷却方法について説明する。
【0029】
図2に示したコンデンサの冷却構造にすることで、コンデンサ内部(コンデンサ素子や内部導体)で発生した熱は、コンデンサケース1から流路10に直接放熱させることができる。
【0030】
そのため、従来構成(図5)より冷却経路が短くなり、かつ、コンデンサケース1が流路10に直接接するため冷却能力は極めて高くなり、効率よく冷媒(冷却水)とインバータユニットの筐体へ熱を排出することができる。この効果は、コンデンサケース1を熱伝導の良い樹脂、例えば熱伝導性フィラーを混合したPPS(Poly Phenylene Sulfide)、SPS(Syndiotactic Polystyrene)、PBT(Polybutylene Terephthalate)、ポリカーボネート等を使用することでより冷却性能を向上させることが可能である。
【0031】
コンデンサを本実施形態1の構成とすることにより、コンデンサと金属製冷却器9が一体化されるため、従来(特許文献1等)必要としていた放熱グリースや熱伝導シート等の放熱機構を外部に追加する必要がない。このため、放熱機構分のコストを低減できる。
【0032】
また、コンデンサケース1を流路10により直接冷却できるため、コンデンサCの冷却能力が向上する。
【0033】
さらに、特許文献1等で用いられている放熱グリースや熱伝導シート等の放熱機構の熱抵抗は零ではない。熱抵抗が大きいほどコンデンサCの冷却効果は低下する。本実施形態1では放熱グリースや熱伝導シート等の放熱機構を用いないため、コンデンサケース1に熱伝導性のよい樹脂を使うことによる冷却効果の向上が期待できる。
【0034】
また、インバータユニットの組立時に、放熱グリースや熱伝導シートの貼付工程、Oリングの取付工程、ボルト締結等の作業工程を削減することができるため、インバータユニットの組み立てが容易となる。
【0035】
また、従来、インバータ製造メーカがコンデンサなどの部品を部品メーカから購入してインバータユニットの組立作業を行っていた場合、部品メーカがコンデンサと金属製冷却器9を一体化した部品を製作し、インバータ製造メーカがこの一体化した部品を部品メーカから購入することにより、インバータ製造メーカはインバータ組立工数を低減できる。
【0036】
[実施形態2]
本実施形態2は、実施形態1の構成に対して、図3に示すように、コンデンサケース1の底面(流路10と接する面)に突起11を設けた構成である。その他の構成は実施形態1と同様であるため、説明は省略する。
【0037】
この突起11の形状は、コンデンサケース1と同材質の樹脂を用いて、コンデンサケース1と一体成形する。
【0038】
突起11をコンデンサケース1の底面に設けることで、冷却面積(コンデンサケース1および突起11が冷却水に接する面積)を増加させることができ、冷却能力を向上させることが可能となる。突起11の形状に関しては、例えば、丸ピン形状、ダイヤ形状であるが、形状はその限りではない。
【0039】
以上示したように、本実施形態2によれば、実施形態1よりも冷却面積が向上するため、冷却能力の向上を図ることが可能となる。
【0040】
[実施形態3]
本実施形態3は、実施形態1及び実施形態2の構成に対して、コンデンサケース1の一面だけでなく、2つ以上の面それぞれに金属製冷却器9を配置した構成である。本実施形態3ではコンデンサケース1の相対する2つの面(上面および底面)それぞれに金属製冷却器9を配置している。
【0041】
図4(a)は実施形態1に本実施形態3を適用した構成、図4(b)は実施形態2に本実施形態3を適用した構成を示している。
【0042】
以上示したように、本実施形態3によれば、コンデンサケース1の底面だけでなく上面も冷却することが可能となる。これにより、コンデンサCを均等に冷却することが可能となる。また、コンデンサCの下部、上部の両方を冷却するため、冷却能力が向上する。
【0043】
なお、本発明はインバータに限らず、発熱するコンデンサを備える電力変換装置全般に適用できる技術である。
【0044】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【符号の説明】
【0045】
C…コンデンサ
1…コンデンサケース
9…金属製冷却器
9a…基部
9b…第一延設部
9c…第二延設部
9d…接合部
10…流路
11…突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6