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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122066
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】リアクター
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/24 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
B01J19/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029387
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】515358023
【氏名又は名称】マックエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小谷 功
(72)【発明者】
【氏名】小谷 研太朗
【テーマコード(参考)】
4G075
【Fターム(参考)】
4G075AA13
4G075AA65
4G075BA10
4G075BD01
4G075BD13
4G075BD22
4G075BD30
4G075DA02
4G075DA12
4G075EB21
4G075FB02
4G075FB12
4G075FB13
4G075FC17
(57)【要約】
【課題】
本発明は、スラグ流を利用したリアクターにおいて、スラグ流を利用した反応のスケールアップを可能にしたリアクターを提供することを目的とする。
【解決手段】
互いに交じり合わない複数の液体を含む混合液の分岐部と、前記混合液の集束部と、前記分岐部と前記集束部とを連結する複数の流路とを有しており、前記複数の流路中に発生させたスラグ流を利用して反応を生じさせるリアクターであり、前記分岐部は、前記混合液を分岐させる第1流路を備えており、前記集束部は、前記混合液を集束させる第2流路を備えており、第1流路で分岐した前記混合液は、前記複数の流路を通過し、第2流路で集束し、再び混合されるリアクターである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交じり合わない複数の液体を含む混合液の分岐部と、前記混合液の集束部と、前記分岐部と前記集束部とを連結する複数の流路とを有しており、前記複数の流路中に発生させたスラグ流を利用して反応を生じさせるリアクターであり、
前記分岐部は、前記混合液を分岐させる第1流路を備えており、
前記集束部は、前記混合液を集束させる第2流路を備えており、
第1流路で分岐した前記混合液は、前記複数の流路を通過し、第2流路で集束し、再び混合されるリアクター。
【請求項2】
前記複数の流路の断面積は、前記分岐部に前記混合液を流入させる流路の断面積、又は前記集束部から前記混合液を排出する流路の断面積に比して、小さく構成された請求項1に記載のリアクター。
【請求項3】
前記複数の流路は、前記分岐部、及び前記集束部と着脱可能に構成されている請求項1又は2に記載のリアクター。
【請求項4】
前記複数の流路は、可撓性を有するチューブである請求項1又は2に記載のリアクター。
【請求項5】
前記第1流路は、
流入口と、
当該流入口に接続され、放射状に分岐する分岐流路と、
分岐流路に接続される複数の排出口とを備える請求項1又は2に記載のリアクター。
【請求項6】
前記第2流路は、
複数の流入口と、
当該複数の流入口に接続され、放射状に分岐する形状であり、流れを1つに集束させる集束流路と、
集束流路に接続される排出口とを備える請求項1又は2に記載のリアクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の流路中に発生させたスラグ流を利用して反応を生じさせるリアクターに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のように、一方の流路と他方の流路とから互いに混じり合わない2種類の液体を供給し、一方の流路と他方の流路とをT字状の合流部で合流させて、合流部の排出口に接続される流路においてスラグ流を発生させる装置が知られている。
【0003】
スラグ流では、互いに交じり合わない一方の液体と、他方の液体との間に界面が形成される。特許文献1においては、一方の液体、及び他方の液体の内部に循環流が形成され、前記循環流によって、前記界面における一方の液体と他方の液体とが連続的に更新されるとされている。これにより、一方の液体に含まれる対象成分が、他方の液体へ移行しやすくなるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-32346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スラグ流を利用すれば、一方の液体と他方の液体とが接触する効率が上昇するため、所望の化学反応を効率的に生じさせることができる。
【0006】
スラグ流を発生させる流路の内径が小さいと、当該流路内を流れるスラグ流の流量が制限され、単位時間あたりにリアクターを通過させることが可能な液量が低下し、化学反応のラージスケール化の妨げになる。
【0007】
そこで、化学反応のスケールアップを目的として、前記流路の内径を大きくすることが想定される。しかしながら、本発明者が検証したところ、スラグ流を発生させる流路の内径を大きくした場合、化学反応の効率が低下することが判明した。
【0008】
本発明は、スラグ流を利用したリアクターにおいて、スラグ流を利用した反応のスケールアップを可能にしたリアクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
互いに交じり合わない複数の液体を含む混合液の分岐部と、前記混合液の集束部と、前記分岐部と前記集束部とを連結する複数の流路とを有しており、前記複数の流路中に発生させたスラグ流を利用して反応を生じさせるリアクターであり、前記分岐部は、前記混合液を分岐させる第1流路を備えており、前記集束部は、前記混合液を集束させる第2流路を備えており、第1流路で分岐した前記混合液は、前記複数の流路を通過し、第2流路で集束し、再び混合されるリアクターにより、上記の課題を解決する。
【0010】
前記リアクターにおいて、スラグ流を発生させる流路が複数に分けられており、互いに混じり合わない混合液の流量は、複数の流路の断面積の合計値に影響を受ける。前記流路を複数本とすることにより前記流路の断面積の合計値を大きくすることが可能になる。これにより、流路中の前記混合液の流量を比較的に大きくし、化学反応の規模を増大させることができる。
【0011】
前記リアクターにおいて、前記複数の流路の断面積は、前記分岐部に前記混合液を流入させる流路の断面積、又は前記集束部から前記混合液を排出する流路の断面積に比して、小さく構成されたものとすることが好ましい。これにより、複数の流路を流れるスラグ流の液滴を小さくし、スラグ流を利用した反応の効率を上昇させることができる。
【0012】
前記リアクターにおいて、前記複数の流路は、前記分岐部、及び前記集束部と着脱可能に構成されたものとすることが好ましい。これにより、例えば、前記複数の流路を交換することにより、スラグ流を利用した反応時間の長短を変更することができる。
【0013】
前記リアクターにおいて、前記複数の流路は、可撓性を有するチューブとすることが好ましい。これにより、例えば、可撓性を有するチューブを巻回してかさばらないようにまとめるといった使用法が可能になる。
【0014】
前記リアクターにおいて、前記第1流路は、流入口と、当該流入口に接続され、放射状に分岐する分岐流路と、分岐流路に接続される複数の排出口とを備える構成とすることが好ましい。この構成によれば、効率的に、前記混合液をスラグ流として、複数の流路に分岐させて、流通させることができる。
【0015】
前記第2流路は、複数の流入口と、当該複数の流入口に接続され、放射状に分岐する形状であり、流れを1つに集束させる集束流路と、集束流路に接続される排出口とを備える構成とすることが好ましい。この構成によれば、複数の流路中を流れた前記混合液のスラグ流を、効率的に収束させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スラグ流を利用したリアクターにおいて、スラグ流を利用した反応のスケールアップを可能にしたリアクターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】リアクターの一実施形態を示す斜視図である。
図2図1のリアクターの平面図である。
図3図2のAA´部における断面図である。
図4】分岐部の分解状態を示す斜視図である。
図5】集束部の分解状態を示す斜視図である。
図6】分岐部の断面図である。
図7】集束部の断面図である。
図8】実施例1の方法で使用した装置の構成図である。
図9】比較例1の方法で使用した装置の構成図である。
図10】安息香酸の抽出率と流量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のリアクターの一実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の限られた例に過ぎず、本発明の技術的範囲は例示した実施形態に限定されるものではない。
【0019】
図1ないし6に、本発明のリアクターの一実施形態を示す。本実施形態のリアクター1は、図1に示したように、互いに交じり合わない複数の液体を含む混合液の分岐部11と、前記混合液の集束部12と、前記分岐部11と前記集束部12とを連結する複数の流路13とを有しており、前記複数の流路中に発生させたスラグ流を利用して反応を生じさせる。前記分岐部11は、前記混合液を分岐させる第1流路を備えており、前記集束部12は、前記混合液を集束させる第2流路を備える。
【0020】
前記第1流路は、図3に示したように、流入口103と、当該流入口103に接続され、放射状に分岐する分岐流路101と、分岐流路101に接続される複数の排出口104とを備える。より具体的には、図4に示したように、分岐流路101は、流入口103が接続される点を中心として、複数の直線状の流路が半径方向外側に放射する形状である。放射状の流路の端部は、排出口104と連通する。なお、上記の接続とは連通することを意味する。
【0021】
前記第2流路は、図3に示したように、複数の流入口105と、当該複数の流入口105に接続され、放射状に分岐する形状であり、流れを1つに集束させる集束流路102と、集束流路102に接続される排出口106とを備える。より具体的には、図5に示したように、集束流路102は、排出口106が接続される点を中心として、複数の直線状の流路が半径方向外側に放射する形状である。放射状の流路の端部は、流入口105と連通する。
【0022】
図3及び4に示したように、分岐部11は、第1部材111と第2部材112とを含み、第1部材111と第2部材112とが接する部分に、分岐流路101を有する形状である。第1部材111には、前記流入口103が設けられる。第2部材112には、前記分岐流路に接続される複数の排出口104が設けられる。図3及び図4の例では、分岐流路101は、第1部材111に設けられるが、第2部材112に設けてもよいし、第1部材111及び第2部材112とを接面させた際に、分岐流路101が形成されるように、第1部材111及び第2部材112の双方に設けてもよい。
【0023】
前記流入口103は、第1部材111を貫通する貫通孔から構成される。図3に示したように、流入口103の上流部には、分岐部11に前記混合液を流入させる第3流路14が接続される。第3流路14は、下流側の端部には、外周面に雄螺子部を設けたフェルール141が固定される。第1部材111の前記流入口103の上流部は、内周面に雌螺子部が設けられた固定用の貫通孔113とされている。当該貫通孔113の雌螺子部にフェルール141の雄螺子部を螺合させることにより、分岐部11と第3流路14とを固定する。これにより、第3流路14と流入口103とが連通する。
【0024】
前記排出口104は、第2部材112を貫通する貫通孔から構成される。図3に示したように、排出口104の下流部には、分岐部11から排出された前記混合液を流入させる流路13が接続される。流路13には、上流側の端部に、外周面に雄螺子部を設けたフェルール131が固定される。第2部材112の前記排出口104の下流部は、内周面に雌螺子部が設けられた固定用の貫通孔114とされている。当該貫通孔114の雌螺子部にフェルール131の雄螺子部を螺合させることにより、分岐部11と流路13とを固定する。これにより、流路13と排出口104とが連通する。
【0025】
第1部材111と第2部材112とが接面する部分には、合成ゴムなどの弾性素材で構成されるパッキン115が配されており、パッキン115の内側に、分岐流路101、流入口103、及び排出口104を配することにより、分岐流路101、流入口103、及び排出口104からの液漏れを防止する。図3の例では、第2部材112に、パッキン115を収める凹溝116が設けられている。凹溝116にパッキン115を収納することにより、パッキン115の位置が定まる。凹溝は、第1部材に設けてもよい。
【0026】
第1部材111、及び第2部材は、図4に示したように、略方形の板状であり、切欠部117を備える。第1部材111の切欠部117と、第2部材112の切欠部117とを合わせることにより、第1部材111と第2部材112とを組むときの位置を適切に合わせることができる。第1部材111、及び第2部材112の一方には、位置合わせ用の突起部118が設けられており、第1部材111、及び第2部材112の他方には、前記突起部118を受け入れる貫通孔119又は凹穴が設けられる。突起部118を貫通孔119又は凹穴に挿し込むことにより、第1部材111と第2部材112とを組むときの位置を適切に合わせることができる。第1部材111、及び第2部材112には、螺子孔が設けられている。螺子(図示略)を螺子孔91に螺合させることにより、第1部材111と第2部材112とは固定される。
【0027】
図3及び5に示したように、集束部12は、第1部材121と第2部材122とを含み、第1部材121と第2部材122とが接する部分に、集束流路102を有する形状である。第2部材122には、前記複数の流入口105が設けられる。第1部材121には、前記集束流路102に接続される排出口106が設けられる。図3及び図5の例では、集束流路102は、第1部材121に設けられるが、第2部材122に設けてもよいし、第1部材121及び第2部材122を接面させた際に、集束流路102が形成されるように、第1部材121及び第2部材122の双方に設けてもよい。
【0028】
前記流入口105は、第2部材122を貫通する貫通孔から構成される。図3に示したように、流入口105の上流部には、集束部12に前記混合液を流入させる複数の流路13が接続される。複数の流路13には、下流側の端部に、外周面に雄螺子部を設けたフェルール131が固定される。第2部材122の前記流入口105の上流部は、内周面に雌螺子部が設けられた固定用の貫通孔124とされている。当該貫通孔124の雌螺子部にフェルール131の雄螺子部を螺合させることにより、集束部12と流路13とを固定する。これにより、複数の流路13と、流入口105とが連通する。
【0029】
前記排出口106は、第1部材121を貫通する貫通孔から構成される。図3に示したように、排出口106の下流部には、集束部12から排出された前記混合液を流入させる第4流路15が接続される。第4流路15には、上流側の端部に、外周面に雄螺子部を設けたフェルール151が固定される。第1部材121の前記排出口106の下流部は、内周面に雌螺子部が設けられた固定用の貫通孔123とされている。貫通孔123の雌螺子部にフェルール151の雄螺子部を螺合させることにより、集束部12と第4流路15とを固定する。これにより、排出口106と第4流路15とが連通する。
【0030】
第1部材121と第2部材122とが接面する部分には、合成ゴムなどの弾性素材で構成されるパッキン125が配されており、パッキン125の内側に、集束流路102、流入口105、及び排出口106を配することにより、集束流路102、流入口105、及び排出口106からの液漏れを防止する。図3の例では、第2部材122に、パッキン125を収める凹溝126が設けられている。凹溝126にパッキン125を収納することにより、パッキン125の位置が定まる。凹溝は、第1部材に設けてもよい。
【0031】
第1部材121、及び第2部材122は、略方形の板状であり、切欠部127を備える。第1部材121の切欠部127と、第2部材122の切欠部127とを合わせることにより、第1部材121と第2部材122とを組むときの位置を適切に合わせることができる。第1部材121、及び第2部材122の一方には、位置合わせ用の突起部128が設けられており、第1部材111、及び第2部材112の他方には、前記突起部128を受け入れる貫通孔129又は凹穴が設けられる。突起部128を貫通孔129に挿し込むことにより、第1部材121と第2部材122とを組むときの位置を適切に合わせることができる。第1部材121、及び第2部材122には、螺子孔が設けられている。螺子(図示略)を螺子孔91に螺合させることにより、第1部材111と第2部材112とは固定される。
【0032】
本実施形態のリアクター1では、分岐部11と集束部12とを接続する複数の流路13の数は6本である。流路の数は、所望の流量に応じて、変更することができる。流路の数は、例えば、3~20本とすることができる。また、分岐部11と集束部12とを接続する複数の流路の内径は、所望の流量に応じて、変更することができる。流路の内径は、例えば、0.2~4mmにすることができる。また、分岐部11と集束部12とを接続する複数の流路の長さは、所望の反応時間に応じて適宜設定することができるが、例えば、20cmから30mにすることができる。
【0033】
分岐部11と集束部12とを接続する複数の流路13を構成する素材は、特に限定されないが、可撓性を有する素材で構成することが好ましい。前記流路13を可撓性を有する素材で構成することにより、例えば、前記流路13を巻回したり、束ねたりして、嵩張らないようにまとめておくことができる。前記素材は、流路内を通過する液体が視認できるものとすることが好ましい。視認可能な素材とすることにより、流路内にスラグ流が形成されているか否かを確認することができる。また、流路内を通過する液体に、任意の波長を有する光を照射して、光化学反応を生じさせることができるようにしてもよい。複数の流路を構成する素材としては、耐食性等の必要な特性を考慮して選択すればよく、例えば、PFA、PTFE、ピークなどの合成樹脂素材や、ステンレス鋼、若しくはハステロイなどの金属素材が挙げられる。
【0034】
分岐部11と集束部12とを接続する複数の流路13に、可撓性が必要ない場合は、ステンレス鋼、ハステロイなど、流路13内を通過させる物質により侵されにくい金属素材で構成してもよい。
【0035】
分岐部11と集束部12とを接続する複数の流路13は、分岐部11又は集束部12に対して着脱可能に構成されている。所望の化学反応に応じて、流路長の異なる流路を使用することにより、スラグ流を利用した化学反応の時間の長短を変更することができる。また、流路の内径を異なるものに変更することにより、化学反応の規模も同様に変更することができる。
【0036】
互いに交じり合わない複数の液体を含む混合液は、特に限定されないが、水と油のように、極性が異なり、混合しても互いに溶け合わない複数の液体を含む液体が挙げられる。例えば、極性の大きい液体と、極性の小さい液体とを混合してスラグ流を形成する。特定の物質が、極性の大きい液体及び極性の小さい液体のうち、一方に対して溶解度が高く、他方に対して溶解度が低い場合、溶解度の相違を利用して、前記特定の物質を抽出することが可能である。
【0037】
分岐部、又は集束部を構成する素材は、特に限定されず、耐食性等の必要な特性を考慮して選択すればよく、例えば、ステンレス鋼、若しくはハステロイ等の金属素材、又はPFA、若しくはピーク等の合成樹脂素材で構成することができる。
【0038】
リアクターの用途は、スラグ流を利用する反応であれば、特に限定されない。例えば、互いに混じりあわない液体への溶解度の相違を利用した抽出、若しくは精製、互いに混じりあわない液体と乳化剤とを利用した乳化反応などが挙げられる。
【実施例0039】
以下、本発明の実施例を挙げて具体的に説明する。本発明の技術的範囲は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0040】
[実施例1]
図7に示した装置5を使用して、疎水性の液体に含まれるナフタレンと安息香酸を、親水性の液体である炭酸ナトリウム水溶液と混合することにより、安息香酸のプロトンを解離させて水溶化し、安息香酸を親水性の液体である水に移行させた。そして、安息香酸の抽出率を、以下の方法により評価した。
【0041】
図8の装置5は、上述の分岐部11と、複数の流路13と、集束部12とを備える。複数の流路13の数は、6本である。個々の流路は、内径が1.0mmであり、PTFEで構成される。当該流路の形状は円形である。個々の流路13の長さは0.95mとした。
【0042】
図8の装置5は、混合部53として、Y字状の流路を内蔵するマイクロリアクターを備える。第1ポンプ61を介して第1貯留部71より第1液が混合部53に供給される。第2ポンプ62を介して第2貯留部72より第2液が混合部53に供給される。また、図8の装置5は、分離槽54と、第3貯留部73と、第4貯留部74とを備える。分離槽54と第3貯留部73との間を接続する流路には第1排圧弁63が設けられる。分離槽54と第4貯留部74との間を接続する流路には、第2排圧弁64が設けられる。
【0043】
第1貯留部71には、第1液として、溶媒としてシクロペンチルメチルエーテルと、5質量%のナフタレンと、5質量%の安息香酸と含む組成液が貯留される。
【0044】
第2貯留部72には、第2液として、2.5質量%のNaCOを含む水が貯留される。
【0045】
上記第1液及び上記第2液を、混合部53で混合し、混合液は第3流路14を経て分岐部11に流入する。分岐部11で分岐された混合液は、複数の流路中でスラグ流を形成した。なお、目視により確認したところ、全ての流路中においてスラグ流が形成されていた。スラグ流は、集束部12で集束し、第4流路15を介して分離槽54に流入する。分離槽54では、スラグ流を親水性の液体と疎水性の液体に分離させる。分離槽54で分離した疎水性の液体と、親水性の液体とは、それぞれ、第3貯留部73、及び第4貯留部74に排出される。第3貯留部73には、親水性の液体が排出される。第4貯留部74には、疎水性の液体が排出される。なお、分離槽54では、比重の相違により、親水性の液体が下層になり、疎水性の液体が上層に位置する。
【0046】
第4貯留部74に排出された疎水性の液体に含まれる安息香酸の質量をガスクロマトグラフィーにより分析した。次式により、安息香酸の抽出率を求めた。Cは、安息香酸の抽出率(%)であり、Aは第4貯留部74に排出された疎水性の液体における安息香酸の濃度(質量%)であり、Bは第1貯留部71に貯留された第1液における安息香酸の濃度(質量%)である。なお、ナフタレンは内標として用いた。
(式)
100-(A÷B)×100=C
【0047】
安息香酸の抽出率を、図1のグラフにまとめた。安息香酸の抽出率は、第1液及び第2液の流量ごとに求めた。図1において、例えば、横軸の流量が5ml/分の場合は、第1ポンプにおける第1液の流量が5mlであり、かつ第2ポンプにおける第2液の流量が5mlであることを示す。例えば、横軸の流量が10ml/分の場合は、第1ポンプにおける第1液の流量が10mlであり、かつ第2ポンプにおける第2液の流量が10mlであることを示す。
【0048】
[比較例1]
図8に示した装置5bを使用して、疎水性の液体に含まれるナフタレンと安息香酸を、親水性の液体である炭酸ナトリウム水溶液と混合することにより、安息香酸のプロトンを解離させて水溶化し、安息香酸を親水性の液体である水に移行させた。疎水性の液体に含まれるナフタレンの濃度がどの程度高まるか、以下の方法により評価した。
【0049】
図9の装置の混合部53と分離槽54とは、内径が2.17mmであり、PTFE製の符号8で示す流路1本で接続される。当該流路の形状は円形である。その他の構成は、図8の装置と同様である。第1貯留部71、第2貯留部72に貯留される液の組成も実施例1と同様である。上記と同様にして、安息香酸の抽出率を求め、結果を図10のグラフにまとめた。
【0050】
図10のグラフから明らかなように、流量が0.5~20ml/分において、流路を複数本にし、分岐部と、集束部との間を前記複数本の流路で接続した実施例1に係るリアクターを用いた場合においては、1本の流路で混合部と分離槽とを接続した比較例1に係る装置に比して、安息香酸の抽出率が高くなることが確認された。
【0051】
比較例1の装置では、分岐部と集束部とを接続する流路が、律速となり、流量を増大させることができなかった。実施例1のリアクターを用いた場合、流量を増大させて安息香酸の抽出率を高い値に維持することができた。
【0052】
図8の装置においては、流路13ひとつひとつの断面積は、第3流路14、又は第4流路15の断面積に比して小さく構成される。これにより、複数の流路13において形成されるスラグ流の液滴は、第3流路14、又は第4流路15におけるスラグ流の液滴に比して小さくなる。これにより、親水性の液体と疎水性の液体の接触面積が増大し、抽出の効率が上昇したと推測される。流路13は、複数であるため、ひとつひとつの流路の断面積を小さくしても、流路13を流れるスラグ流の体積を稼ぐことができる。
【符号の説明】
【0053】
11 分岐部
12 収束部
13 流路
103 流入口
101 分岐流路
104 排出口
105 流入口
102 収束流路
106 排出口

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10