(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122071
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】使い捨てメイクアップシートおよびメイクアップ支援システム
(51)【国際特許分類】
B32B 7/023 20190101AFI20240902BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20240902BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20240902BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240902BHJP
B41M 1/30 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B32B7/023
B32B7/022
A61K8/02
B32B27/40
B41M1/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029394
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】松本 千紗代
(72)【発明者】
【氏名】涌野 あい
(72)【発明者】
【氏名】小谷 純子
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 愛美
(72)【発明者】
【氏名】初田 千秋
(72)【発明者】
【氏名】神田 信之
(72)【発明者】
【氏名】木村 歩実
【テーマコード(参考)】
2H113
4C083
4F100
【Fターム(参考)】
2H113AA05
2H113AA06
2H113BA00
2H113BA05
2H113BA09
2H113BB02
2H113BB07
2H113BB08
2H113BB22
2H113CA31
2H113DA03
2H113DA47
2H113DA50
2H113DA52
2H113DA53
2H113DA56
2H113DA57
2H113DA62
2H113DA64
2H113EA07
2H113EA19
2H113FA04
2H113FA06
2H113FA23
2H113FA43
4C083DD12
4F100AK07A
4F100AK25C
4F100AK51
4F100AK51A
4F100AL09A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA23A
4F100DG10B
4F100EC182
4F100GB66
4F100GB71
4F100HB31C
4F100JB06
4F100JB14C
4F100JB16A
4F100JK16A
4F100JN06A
4F100YY00A
(57)【要約】 (修正有)
【課題】メイクアップを施すのに好適な使い捨てメイクアップシートを提供する。
【解決手段】表面層を有する使い捨てメイクアップシートであって、上記表面層の一方の面の動摩擦係数が、0.475以上2.000以下であり、上記表面層の一方の面に、法線方向に対して-45度で可視光線を入射したときの、+45度の反射強度に対する+40度の反射強度の比が、0.700以上1.060以下であり、上記動摩擦係数をa、上記+45度の反射強度に対する+40度の反射強度の比をbとしたとき、b≦0.434×a+0.795を満たす、使い捨てメイクアップシートとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層を有する使い捨てメイクアップシートであって、
前記表面層の一方の面の動摩擦係数が、0.475以上2.000以下であり、
前記表面層の一方の面に、法線方向に対して-45度で可視光線を入射したときの、+45度の反射強度に対する+40度の反射強度の比が、0.700以上1.060以下であり、
前記動摩擦係数をa、前記+45度の反射強度に対する+40度の反射強度の比をbとしたとき、下記式(1)を満たす、使い捨てメイクアップシート。
b≦0.434×a+0.795 (1)
【請求項2】
前記表面層の厚さが100nm以上1000μm以下である、請求項1に記載の使い捨てメイクアップシート。
【請求項3】
前記表面層がポリウレタンを含有する、請求項1または請求項2に記載の使い捨てメイクアップシート。
【請求項4】
前記表面層の他方の面に基材層を有する、請求項1または請求項2に記載の使い捨てメイクアップシート。
【請求項5】
前記表面層と前記基材層との間に印刷層を有する、請求項4に記載の使い捨てメイクアップシート。
【請求項6】
前記基材層が紙基材である、請求項4に記載の使い捨てメイクアップシート。
【請求項7】
メイクアップの対象となる人体の所定部位の画像を入力する画像入力部と、
基材層の一方の面に前記画像を印刷する印刷装置と、
前記基材層の前記画像が印刷された面に、表面層を配置して、使い捨てメイクアップシートを得る配置部と、
前記使い捨てメイクアップシートの前記表面層の表面に、メイクアップを施すメイクアップ施術と、
を備える、メイクアップ支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、使い捨てメイクアップシートおよびメイクアップ支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、仕上用化粧品を店頭で試す際は、顔に直にメイクアップを施す、手や腕等に化粧品を塗る、あるいは、紙に化粧品を塗ることが行われている。
【0003】
顔、手、腕等に化粧品を塗る場合、手間がかかることから、多くの化粧品を試すことが困難である。また、この場合、化粧用具の使いまわしや化粧品販売員との接触による衛生面での問題がある。一方、紙に化粧品を塗布する場合、多くの化粧品を試すことが可能であり、衛生面での問題も少ない。
【0004】
例えば、キャンソン社のミタント紙を、メイクアップを施す紙として用いることが知られている。
【0005】
また、メイクアップを施すための紙ではないが、特許文献1には、指先感触の異なる複数の肌見本素材を備える店頭カウンセリングシートが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、印刷像の上からメイクアップを施す際の強い応力に耐えることができる印刷用シートを提供することを目的として、基材シートと、基材シート上に設けられた無機固体層とからなり、無機固体層の表面が所定の鉛筆硬度を有し、無機固体層の表面が所定の粗面となっている印刷用シートが開示されている。
【0007】
しかし、紙に化粧品を塗る場合は、人の肌に化粧品を塗る場合とは化粧品の伸びや定着感が異なり、メイクアップを施す実感が得られなかった。
【0008】
また、化粧品の評価に人工皮膚を用いることが知られている。人工皮膚は、メイクアップを施すことも、メイクを除去することも可能である。しかし、人工皮膚は、高価であり、反復使用するには洗浄の手間がかかるため、化粧品販売の店舗において多くの顧客が使用する場合には適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実用新案登録第3113876号公報
【特許文献2】国際公開第2017/073605号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、メイクアップを施すのに好適な使い捨てメイクアップシートを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一実施形態は、表面層を有する使い捨てメイクアップシートであって、上記表面層の一方の面の動摩擦係数が、0.475以上2.000以下であり、上記表面層の一方の面に、法線方向に対して-45度で可視光線を入射したときの、+45度の反射強度に対する+40度の反射強度の比が、0.700以上1.060以下であり、上記動摩擦係数をa、上記+45度の反射強度に対する+40度の反射強度の比をbとしたとき、下記式(1)を満たす、使い捨てメイクアップシートを提供する。
b≦0.434×a+0.795 (1)
【0012】
本開示の他の実施形態は、メイクアップの対象となる人体の所定部位の画像を入力する画像入力部と、基材層の一方の面に上記画像を印刷する印刷装置と、上記基材層の上記画像が印刷された面に表面層を配置して、使い捨てメイクアップシートを得る配置部と、上記使い捨てメイクアップシートの上記表面層の表面に、メイクアップを施すメイクアップ施術と、を備える、メイクアップ支援システムを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本開示においては、メイクアップを施すのに好適な使い捨てメイクアップシートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示における使い捨てメイクアップシートを例示する概略断面図である。
【
図2】本開示における使い捨てメイクアップシートを例示する概略断面図である。
【
図3】本開示における使い捨てメイクアップシートを例示する概略断面図である。
【
図4】本開示における使い捨てメイクアップシートを例示する概略断面図である。
【
図5】本開示における使い捨てメイクアップシートを例示する概略断面図である。
【
図6】本開示における使い捨てメイクアップシートを例示する概略断面図である。
【
図7】本開示におけるメイクアップ支援システムを例示するブロック図である。
【
図8】実施例2の使い捨てメイクアップシートについて、横軸に受光角度、縦軸に規格化後の反射光の強度B
SSを示したグラフである。
【
図9】実施例および比較例の使い捨てメイクアップシートについて、+45度の反射強度に対する+40度の反射強度の比と、動摩擦係数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
下記に、図面等を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。ただし、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表わされる場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定しない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0016】
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。また、本明細書において、ある部材の面に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0017】
また、本明細書において、「シート」には、「フィルム」と呼ばれる部材も含まれる。また、「フィルム」には、「シート」と呼ばれる部材も含まれる。
【0018】
また、本明細書において、「平均値」とは、特に断りの無い限り、算術平均値をいう。
【0019】
以下、本開示における使い捨てメイクアップシートおよびメイクアップ支援システムについて、詳細に説明する。
【0020】
A.使い捨てメイクアップシート
本開示における使い捨てメイクアップシートは、表面層を有する使い捨てメイクアップシートであって、上記表面層の一方の面の動摩擦係数が、0.475以上2.000以下であり、上記表面層の一方の面に、法線方向に対して-45度で可視光線を入射したときの、+45度の反射強度に対する+40度の反射強度の比が、0.700以上1.060以下であり、上記動摩擦係数をa、上記+45度の反射強度に対する+40度の反射強度の比をbとしたとき、下記式(1)を満たす。
b≦0.434×a+0.795 (1)
【0021】
図1は、本開示における使い捨てメイクアップシートを例示する概略断面図である。使い捨てメイクアップシート10は、少なくとも表面層1を有する。表面層1の一方の面S1は、所定の物性を有する。
【0022】
ここで、メイクアップを施す際、スポンジ、パフ、ブラシ等の化粧用具、あるいは、指もしくは手のひらを用いて、化粧品を肌に塗布するのが一般的である。そこで、本開示の発明者らは、後述するように、指を模した接触子を用いて、使い捨てメイクアップシートの表面層の動摩擦係数を測定し、使い捨てメイクアップシートの表面層に対する指滑り性を評価することを検討した。動摩擦係数が小さいと滑り易く、動摩擦係数が大きいと滑り難くなる。指滑り性は、化粧品の塗りやすさ、伸び、密着性、ぼかしやすさ、重ねづけのしやすさ、化粧ノリ等、化粧品の官能評価にもつながる要因であると考えられる。動摩擦係数が小さく、指滑り性が良ければ、化粧品の塗りやすさ、伸び、密着性、ぼかしやすさ、重ねづけのしやすさ、化粧ノリ等が良くなると考えられる。一方、動摩擦係数が小さすぎると、指が滑りすぎるため、化粧品がなじみにくくなり、化粧品の密着性、化粧ノリが悪くなると考えられる。本開示においては、表面層の一方の面の動摩擦係数が上記範囲内であることにより、使い捨てメイクアップシートの表面層に対して指滑り性が適度に良い。これにより、化粧品の塗りやすさ、伸び、密着性、ぼかしやすさ、重ねづけのしやすさ、化粧ノリ等が良くなると推量される。
【0023】
また、本開示の発明者らは、後述するように、変角光度計を用いて、使い捨てメイクアップシートの表面層の反射光分布を測定し、使い捨てメイクアップシートの表面層の表面粗さを評価し、それにより、使い捨てメイクアップシートの表面層の質感を評価することを検討した。入射角が、使い捨てメイクアップシートの表面層の法線方向に対して-45度である場合、表面層の表面が滑らかであれば、正反射角である+45度の反射強度が強くなり、表面層の表面が粗ければ、正反射角である+45度の反射強度が弱くなる。ここで、表面層の表面が滑らかであると、化粧品がはじかれやすく、化粧品中の粉体成分が定着しにくくなるため、化粧品の密着性、化粧ノリが悪くなる傾向があると考えられる。一方、表面層の表面が粗いと、化粧品が染み込みやすくなったり詰まりやすくなったりするため、化粧品の塗りやすさ、伸び、ぼかしやすさ、重ねづけのしやすさ等が悪くなると考えられる。本開示においては、表面層の一方の面に、法線方向に対して-45度で可視光線を入射したときの、+45度の反射強度に対する+40度の反射強度の比が、所定の範囲内であることにより、表面層の表面粗さが適度な範囲となる。よって、化粧品の塗りやすさ、伸び、密着性、ぼかしやすさ、重ねづけのしやすさ、化粧ノリ等が良くなると推量される。さらに、本開示においては、上記の+45度の反射強度に対する+40度の反射強度の比が、所定の範囲内であることにより、表面層の質感を、人の皮膚の質感に近づけることができると考えられる。
【0024】
このように本開示においては、表面層の一方の面の動摩擦係数が所定の範囲内であり、表面層の一方の面に、法線方向に対して-45度で可視光線を入射したときの、+45度の反射強度に対する+40度の反射強度の比が、所定の範囲内であり、上記式(1)を満たすことにより、化粧品の塗りやすさ、伸び、密着性、ぼかしやすさ、重ねづけのしやすさ、化粧ノリ等が良くなると考えられる。したがって、使い捨てメイクアップシートにメイクアップを施すことにより、メイクをきれいに仕上げることができる。さらには、使い捨てメイクアップシートにメイクアップを施すことにより、実際に人の肌にメイクアップを施す場合を再現できる。
【0025】
よって、例えば、化粧品販売の店舗において、化粧品販売員は、使い捨てメイクアップシートにメイクアップを施すことにより、顧客にカウンセリングを行うことができる。そのため、顧客は、店舗でメイクを落とす必要がなく、化粧品を気軽に試すことができる。例えば、顧客は、テクスチャまたは色等が異なる複数の化粧品を試したり、複数のメイク方法を試したりすることができる。同様に、化粧品販売員は、店舗で顧客のメイクを落とす必要がないため、化粧品を推奨しやすく、メイク方法を提案しやすくなる。また、後述するように、使い捨てメイクアップシートに顧客の顔の画像が予め印刷されている場合、顧客は、自分の顔の画像でメイクアップをシミュレーションできる。また、化粧品販売員が顧客にメイクアップを施す場合、顧客は鏡を介してメイク方法を教えてもらうことになるが、化粧品販売員が使い捨てメイクアップシートにメイクアップを施す場合、顧客は直にメイク技術を見ることができる。さらに、顧客は、メイクアップが施された使い捨てメイクアップシートを持ち帰ることができるので、自宅で化粧品販売員のメイク方法を容易に再現できる。また、顧客は、メイクアップが施された使い捨てメイクアップシートに基づいて、メイク方法を練習でき、化粧品販売員のメイク技術を手軽に習得できる。
【0026】
また、顧客または化粧品販売員がメイク方法を練習する際、顧客または化粧品販売員は、使い捨てメイクアップシートにメイクアップを施すことにより、メイクを落とすことなく、数多く試行できる。
【0027】
また、例えば、化粧品販売の店舗において、化粧品販売員は、使い捨てメイクアップシートにメイクアップを施すことにより、上述のように顧客にカウンセリングを行うだけでなく、化粧品のデモンストレーションを行うこともできる。化粧品のデモンストレーションとしては、例えば、使い捨てメイクアップシートにメイクアップを施す実演販売や、メイクアップが施された使い捨てメイクアップシートの配布等が挙げられる。よって、使い捨てメイクアップシートは、販売促進に利用することもできる。
【0028】
最近、ARやVR等を用いて、仮想的にメイクアップを施すメイクアップシミュレーションが注目されている。しかし、このようなメイクアップシミュレーションでは、化粧品の質感や色味を正確に確認することが困難である場合がある。これに対し、本開示によれば、使い捨てメイクアップシートにメイクアップを施すことにより、実際に化粧品の質感や色味を確認できる。
【0029】
以下、本開示における使い捨てメイクアップシートの各構成について説明する。
【0030】
1.表面層
本開示における使い捨てメイクアップシートは、表面層を最外層として有する。すなわち、使い捨てメイクアップシートの最表面が、所定の物性を有する。
【0031】
[1]表面層の物性
[a]動摩擦係数
本開示において、表面層の一方の面の動摩擦係数は、0.475以上2.000以下である。上述したように、上記動摩擦係数が上記範囲内であることにより、表面層に対する指滑り性を適度に良くすることができる。これにより、化粧品の塗りやすさ、伸び、密着性、ぼかしやすさ、重ねづけのしやすさ、化粧ノリ等が良くなると推量される。
【0032】
ここで、動摩擦係数は、トリニティーラボ社製の静動摩擦測定機TL201Ttを用い、トリニティーラボ社製の指紋パターン付きのポリウレタン製の触覚接触子 指モデルを用いて測定する。測定条件は、温度:23℃から25℃、湿度:45%RHから59%RH、垂直荷重:50g、摺動速度:20mm/sec、移動距離:30mm、測定モード:シングルとする。動摩擦係数の測定は、場所を変えて3回行い、平均値を採用する。
【0033】
上記動摩擦係数を制御する方法としては、例えば、表面層の表面粗さを調整する方法、表面層と触覚接触子との相互作用、つまり表面層の表面自由エネルギーを調整する方法、表面層の表面の軟らかさ、つまり表面層の変形しやすさを調整する方法が挙げられる。表面層の表面粗さを調整する方法、表面層と触覚接触子との相互作用を調整する方法、表面層の表面の軟らかさを調整する方法としては、例えば、表面層の組成を調整する方法、表面層の形成条件を調整する方法が挙げられる。表面層の組成を調整する方法としては、例えば、粒子の種類または含有量を調整する方法、樹脂の種類または含有量を調整する方法が挙げられる。表面層の形成条件を調整する方法としては、例えば、塗布方法を調整する方法、乾燥方法を調整する方法が挙げられる。
【0034】
例えば、表面層の表面粗さを制御して上記動摩擦係数を調整する方法としては、表面層の表面が平滑であると、表面層の表面と触覚接触子とが密着しやすくなるため、上記動摩擦係数が大きくなる傾向がある。一方、表面層の表面粗さが大きいと、表面層の表面と触覚接触子との接触面積が小さくなるため、上記動摩擦係数が小さくなる傾向がある。表面層の表面粗さが適度な範囲内であると、上記動摩擦係数を所定の範囲内に調整しやすくなる。
【0035】
触覚接触子との相互作用を制御して上記動摩擦係数を調整する方法としては、触覚接触子との親和性が高いと、接触子との相互作用が大きくなり、上記動摩擦係数も大きくなる傾向がある。一方、触覚接触子との親和性が低いと、接触子との相互作用が小さくなり、上記動摩擦係数も小さくなる傾向がある。
【0036】
[b]反射強度
本開示において、表面層の一方の面に、法線方向に対して-45度で可視光線を入射したときの、+45度の反射強度に対する+40度の反射強度の比は、0.700以上1.060以下であり、0.900以上1.040以下であってもよい。上述したように、上記の+45度の反射強度に対する+40度の反射強度の比が上記範囲内であることにより、表面層の表面粗さを適度な範囲内にすることができる。これにより、化粧品の塗りやすさ、伸び、密着性、ぼかしやすさ、重ねづけのしやすさ、化粧ノリ等が良くなると推量される。また、上記の+45度の反射強度に対する+40度の反射強度の比が上記範囲内であることにより、表面層の質感を、人の皮膚の質感に近づけることができると考えられる。
【0037】
なお、「可視光線」とは、本明細書では、波長380nm以上780nm以下の光を意味する。また、「-45度」、「+45度」および「+40度」は、表面層の一方の面の法線方向に対する角度をいう。
【0038】
ここで、表面層の一方の面に、法線方向に対して-45度で可視光線を入射したときの、+45度の反射強度および+40度の反射強度はそれぞれ、変角光度計を用いて測定する。変角光度計は、例えば、村上色彩技術研究所社製の変角光度計GP-200を用いることができる。変角光度計は、ゴニオフォトメーターとも称する。詳細については、実施例の項に記載する。
【0039】
なお、「法線方向に対して-45度」とは、入射角が45度であり、かつ、受光角度が-45度であることをいう。また、「法線方に対して+45度」とは、受光角度が45度であることをいう。
【0040】
上記の+45度の反射強度に対する+40度の反射強度の比を制御する方法としては、例えば、表面層の表面粗さを調整する方法、反射率の高い材料を添加する方法、互いに屈折率の異なる複数の材料を含有させる方法、表面層を着色する方法が挙げられる。中でも、表面層の表面粗さを調整する方法が好ましい。この方法であれば、人の肌の質感を再現しやすいためである。
【0041】
例えば、表面層の表面粗さを制御して上記反射強度比を調整する方法としては、表面層の表面が平滑であると、正反射角である+45度の反射強度が強くなり、上記の+45度の反射強度に対する+40度の反射強度の比は小さくなる傾向がある。一方、表面層の表面粗さが大きいと、正反射角である+45度の反射強度が弱くなり、上記の+45度の反射強度に対する+40度の反射強度の比は大きくなる傾向がある。表面層の表面粗さが適度な範囲内であると、上記の+45度の反射強度に対する+40度の反射強度の比を所定の範囲内に調整しやすくなる。
【0042】
反射率の高い材料を添加する方法の場合、反射率の高い材料としては、金属粉等が挙げられる。
【0043】
互いに屈折率の異なる複数の材料を含有させる方法の場合、表面層が樹脂を含有する場合は、樹脂に対して屈折率の異なる材料を添加する。樹脂に対して屈折率の異なる材料は、樹脂より屈折率が高い高屈折率材料であってもよく、樹脂より屈折率が低い低屈折率材料であってもよい。樹脂に対して屈折率の異なる材料としては、高屈折率粒子、低屈折率粒子が挙げられる。高屈折率粒子および低屈折率粒子は、無機粒子であってもよく、有機粒子であってもよい。高屈折率粒子および低屈折率粒子としては、特に限定されず、シリカ粒子等が挙げられる。
【0044】
[c]式(1)
本開示においては、上記動摩擦係数をa、上記+45度の反射強度に対する+40度の反射強度の比をbとしたとき、下記式(1)を満たす。
b≦0.434×a+0.795 (1)
上記動摩擦係数が上記範囲内であり、上記+45度の反射強度に対する+40度の反射強度の比が上記範囲内であり、上記式(1)を満たすことにより、化粧品の塗りやすさ、伸び、密着性、ぼかしやすさ、重ねづけのしやすさ、化粧ノリ等が良くなると考えられる。
【0045】
中でも、下記式(2)を満たすことが好ましい。
b≦0.559×a+0.693 (2)
【0046】
[d]接触角
表面層の一方の面において、1秒後の水に対する接触角は、60°以上90°以下であり、かつ、下記式を満たすことが好ましい。
1秒後の水に対する接触角-7°<31秒後の水に対する接触角≦1秒後の水に対する接触角
1秒後の水に対する接触角と31秒後の水に対する接触角との差が大きすぎると、使い捨てメイクアップシートにメイクアップを施した際、化粧品が表面層に染み込みやすくなる可能性がある。一方、1秒後の水に対する接触角が大きすぎると、使い捨てメイクアップシートにメイクアップを施した際、化粧品が表面層ではじかれやすくなる可能性がある。
【0047】
ここで、水に対する接触角は、θ/2法により測定する。具体的には、表面層の一方の面に、純水1.5μLの液滴を滴下し、滴下1秒後および31秒後の接触角を測定する。測定装置は、例えば、協和界面科学社製のポータブル接触角計PCA-1を用いることができる。
【0048】
上記水に対する接触角を制御する方法としては、例えば、表面層の組成を調整する方法、表面層の表面粗さを調整する方法が挙げられる。
【0049】
[e]表面性状のアスペクト比Str
表面層の一方の面において、表面性状のアスペクト比Strは、0.400以上が好ましく、0.500以上がより好ましい。一方、表面性状のアスペクト比Strの上限は特に限定されない。
【0050】
ここで、表面性状のアスペクト比Strは、表面性状の等方性、異方性を表す。Strは、表面の方向性の強さを数値で表し、0~1で示される。Strが0に近い場合は、表面が方向性を持つことを示し、一般にStr<0.3で異方性表面である。一方、Strが1に近い場合は、表面が方向性を持たず、ランダムであることを示し、一般にStr>0.5で等方性表面である。
【0051】
表面層の一方の面における表面性状のアスペクト比Strが上記範囲であると、表面層の一方の面は、方向性を持たないランダムな面であるといえる。人の肌は、方向性を持たないランダムな面である。そのため、上記Strが上記範囲であれば、表面層の一方の面における表面性状が、人の肌の表面性状に近いといえる。
【0052】
ここで、Strは、ISO 25178に準拠して測定する。表面性状測定装置としては、キーエンス社製の形状解析レーザ顕微鏡「制御部 VK-X150」および「測定部 VK-X160」を用いる。測定条件は、対物レンズ20倍とする。解析条件は、面の傾きを補正して水平にするために、基準面設定を行う。
【0053】
[2]表面層の材料
本開示における表面層の材料としては、上記の表面層の物性を満たすものであれば特に限定されず、例えば、樹脂が挙げられる。樹脂としては、上記の表面層の物性を満たすものであれば特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂が挙げられる。具体的には、ポリウレタン、アクリル樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、シリコーン樹脂が挙げられる。中でも、ポリウレタンが好ましい。ポリウレタンとしては、特に限定されず、例えば、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリテトラメチレングリコール系ポリウレタンが挙げられる。
【0054】
表面層は、必要に応じて、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、有機粒子や無機粒子等の粒子、着色剤、分散剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、レベリング剤が挙げられる。有機粒子としては、ポリウレタン、シリコーン樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリスチレン等の樹脂粒子が挙げられる。無機粒子としては、酸化シリコン、酸化チタン、酸化アルミニウム等が挙げられる。着色剤としては、各色顔料、染料が挙げられる。
【0055】
表面層は、予めフィルム状に製膜された樹脂フィルムを用いてもよく、樹脂組成物を塗布することにより形成されるコーティング膜であってもよい。
【0056】
また、表面層は、塗工紙の塗工層であってもよい。この場合、塗工紙の塗工層が表面層となり、塗工紙の紙が後述の紙基材層となる。この場合、塗工層の材料は、上記の表面層の物性を満たすものであれば特に限定されず、一般的な塗工層の材料の中から適宜選択できる。塗工層は、例えば、顔料とバインダとを含有する。バインダは、特に限定されず、樹脂が挙げられる。バインダは、ポリウレタンであることが好ましい。
【0057】
中でも、表面層は、ポリウレタンを含有することがより好ましい。
【0058】
なお、表面層がポリウレタンを含有することは、FT-IRのATR法により分析できる。具体的には、ポリウレタンの含有は、スペクトルにおける、3450cm-1から3000cm-1のNH伸縮振動のピーク、1735cm-1から1691cm-1のカルボニル伸縮振動のピーク、および1530cm-1付近のNH変角振動のピークから確認できる。
【0059】
また、後述するように、使い捨てメイクアップシートが印刷層を有しており、印刷層の画像が写真である場合、表面層は樹脂フィルムまたはコーティング膜であることが好ましい。化粧品販売の店頭において、基材層の一方の面に顧客の顔の写真を印刷して印刷層を形成する場合、表面層が樹脂フィルムであれば、印刷層形成後に、印刷面に接着層を介して樹脂フィルムをラミネートすることにより、使い捨てメイクアップシートを容易に作製できる。この際、接着層付き樹脂フィルムを用い、印刷面に接着層付き樹脂フィルムをラミネートしてもよく、印刷面または樹脂フィルムに接着剤を塗布した後、印刷面に樹脂フィルムをラミネートしてもよい。また、表面層がコーティング膜であり、後述するように、被コーティング基材上に表面層としてコーティング膜が形成されている場合、印刷層形成後に、印刷面に接着層を介して表面層としてコーティング膜が形成された被コーティング基材をラミネートすることにより、使い捨てメイクアップシートを容易に作製できる。この場合、表面層としてコーティング膜が形成された被コーティング基材を用い、上記樹脂フィルムと同様にしてラミネートできる。また、表面層がコーティング膜であれば、剥離フィルムに樹脂組成物を塗布し、半硬化して半硬化膜を形成した後、剥離フィルムおよび半硬化膜を印刷面に押し当てた状態で、半硬化膜を硬化して、印刷面にコーティング膜を転写することにより、使い捨てメイクアップシートを容易に作製できる。
【0060】
一方、後述するように、使い捨てメイクアップシートが印刷層を有しており、印刷層の画像が絵である場合、表面層はコーティング膜であることが好ましい。基材層の一方の面に顔の絵を印刷して印刷層を形成する場合、印刷層形成後に、印刷面に樹脂組成物を塗布してコーティング膜を形成することにより、使い捨てメイクアップシートを効率的に大量生産できる。
【0061】
[3]表面層の厚さおよび形成方法
本開示における表面層の厚さは、例えば、100nm以上1000μm以下であり、100nm以上100μm以下であってもよい。表面層の厚さが上記範囲内であれば、使い捨てメイクアップシート全体の厚さを薄くできる。そのため、取り扱い性が良く、保管が容易であり、携行に便利である。
【0062】
ここで、表面層の厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)又は走査透過型電子顕微鏡(STEM)により観察される、使い捨てメイクアップシートの厚さ方向の断面から測定した値であり、無作為に選んだ10箇所の厚さの平均値とする。断面作製は、市販の回転式ミクロトームを使用できる。仕上げは、市販のダイヤモンドナイフで実施する。ミクロトームは必要に応じて凍結機能を使用してもよい。使い捨てメイクアップシートが有する他の層の厚さの測定方法についても同様とする。
【0063】
表面層の形成方法としては、表面層の種類に応じて適宜選択される。表面層が樹脂フィルムである場合、樹脂組成物を製膜する方法が挙げられる。製膜方法としては、一般的な方法を適用できる。また、樹脂フィルムとして市販品を用いてもよい。また、表面層が樹脂フィルムである場合であって、後述するように、使い捨てメイクアップシートが基材層を有する場合、接着層付き樹脂フィルムを用い、基材層の一方の面に接着層付き樹脂フィルムをラミネートする方法、基材層または樹脂フィルムに接着剤を塗布した後、基材層の一方の面に接着剤を介して樹脂フィルムをラミネートする方法が挙げられる。また、表面層がコーティング膜である場合、後述の基材層の一方の面または被コーティング基材上に樹脂組成物を塗布し、必要に応じて硬化する方法、剥離フィルムに樹脂組成物を塗布し、半硬化して半硬化膜を形成した後、剥離フィルムおよび半硬化膜を基材層の一方の面に押し当てた状態で、半硬化膜を硬化して、基材層にコーティング膜を転写する方法が挙げられる。また、表面層としてコーティング膜が形成された被コーティング基材を用い、上記樹脂フィルムと同様にしてラミネートしてもよい。また、表面層が塗工紙の塗工層である場合、塗工紙を構成する塗工層が表面層となり、塗工紙を構成する紙が紙基材層となる。
【0064】
2.他の層
本開示における使い捨てメイクアップシートは、表面層のみを有していてもよく、表面層以外の他の層を有していてもよい。使い捨てメイクアップシートが表面層のみを有する場合、上述したように、表面層には樹脂フィルムが用いられる。一方、使い捨てメイクアップシートが表面層以外の他の層を有する場合、表面層は、樹脂フィルムを用いてもよく、コーティング膜であってもよく、塗工紙を構成する塗工層であってもよい。
【0065】
[1]基材層
本開示における使い捨てメイクアップシートは、例えば
図2~
図4に示すように、表面層1の他方の面S2に基材層2を有することが好ましい。基材層によって表面層が支持されることにより、使い捨てメイクアップシートの取扱い性を良くすることができる。
図2において、表面層1は樹脂フィルムであり、接着層3を介して基材層2と表面層1とが積層されている。
図3において、表面層1はコーティング膜であり、被コーティング基材4上に表面層1としてコーティング膜が形成されており、接着層3を介して基材層2と被コーティング4および表面層1とが積層されている。
図4において、表面層1はコーティング膜であり、基材層2上にコーティング膜である表面層1とアンカーコート層5と易接着層6とが転写されている。
【0066】
基材層としては、上記表面層を支持できるものであれば特に限定されない。中でも、基材層は、後述の印刷層を形成可能である、つまり印刷可能であることが好ましい。
【0067】
基材層としては、例えば、紙基材、樹脂基材、繊維基材が挙げられる。紙基材としては、特に限定されず、例えば、コート紙、上質紙、マット紙、クラフト紙、ケント紙、アート紙、合成紙が挙げられる。樹脂基材を構成する樹脂としては、特に限定されず、例えば、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。ビニル系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルが挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンが挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。繊維基材としては、例えば、織布、不織布が挙げられる。繊維基材を構成する繊維としては、例えば、ガラス繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、カーボン繊維が挙げられる。
【0068】
基材層は、単層であってもよく、上記の各基材が積層された積層体であってもよい。
【0069】
中でも、基材層は紙基材であることが好ましい。紙基材であれば、容易に印刷可能である。また、紙基材は、可撓性を有しており、適度の腰の強さも有しており、好ましい。
【0070】
基材層は、表面層が配置される面に表面処理が施されていてもよい。表面層との密着性を高めることができる。表面処理としては、特に限定されず、例えば、コロナ処理、プラズマ処理が挙げられる。
【0071】
また、基材層は、印刷層を形成する面に、印刷用のコーティングが施されていてもよい。
【0072】
基材層の厚さは、印刷可能な厚さであることが好ましく、例えば、5μm以上2mm以下である。
【0073】
[2]印刷層
本開示における使い捨てメイクアップシートは、例えば
図5に示すように、表面層1と基材層2との間に印刷層7を有することが好ましい。基材層の一方の面に、顔等のメイクアップの対象となる画像を印刷して印刷層を形成する。印刷層の基材層とは反対側の面には表面層が配置されているため、使い捨てメイクアップシートの表面層の面にメイクアップを施す際、化粧品が印刷層に接触するのを抑制できる。そのため、印刷層に含有されるインクが滲んだり、トナーが剥がれ落ちたりするのを抑制し、メイクアップへの影響を抑制できる。
【0074】
また、本開示における使い捨てメイクアップシートは、表面層を最外層として有するが、後述するように、印刷層の画像が線画である場合、印刷層が表面層に一方の面に配置されている、つまり印刷層が最外層であってもよい。
【0075】
印刷層は、メイクアップの対象となる画像を形成する層である。メイクアップの対象となる画像は、人体の所定部位の画像である。人体の所定部位は、通常、顔である。また、人体の所定部位は、顔全体であってもよく、顔の一部であってもよい。顔の一部としては、例えば、目、眉、唇、頬が挙げられる。
【0076】
画像は、写真であってもよく絵であってもよい。絵は、例えば、線だけで描いた絵、つまり線画でもよい。
【0077】
また、画像が写真である場合、画像は、素顔の状態の画像であってもよく、ベースのメイクアップのみを施した状態の画像であってもよい。
【0078】
また、印刷層は、メイクアップの対象となる画像の他に、文字、数字、記号、図形、絵柄、模様等を形成する層であってもよい。
【0079】
印刷層は、基材層の全面に配置されていてもよく、基材層の一部に配置されていてもよい。
【0080】
印刷層は、通常、着色剤とバインダとを含有する。着色剤としては、染料、顔料が挙げられる。印刷層の形成方法は、特に限定されず、一般的な印刷方法を適用できる。
【0081】
[3]被コーティング基材
上記表面層がコーティング膜である場合、例えば
図6に示すように、被コーティング基材4上にコーティング膜である表面層1が配置されている、すなわち、コーティング膜である表面層1の他方の面S2に被コーティング基材4が配置されていてもよい。この場合、被コーティング基材上に樹脂組成物を塗布することにより、コーティング膜が形成される。
【0082】
被コーティング基材としては、表面層としてコーティング膜を形成可能であれば特に限定されず、樹脂基材が挙げられる。樹脂基材については、上記基材層に用いられる樹脂基材と同様である。
【0083】
[4]紙基材層
上記表面層が塗工紙を構成する塗工層である場合、紙基材層上に塗工層が配置される。
【0084】
紙基材層については、上記基材層に用いられる紙基材と同様である。
【0085】
[5]接着層
上記表面層が樹脂フィルムである場合、例えば
図2に示すように、表面層1と基材層2との間に接着層3が配置されていてもよい。接着層により表面層と基材層とを接着できる。また、上記表面層がコーティング膜であり、上記被コーティング基材上にコーティング膜である表面層が配置されている場合、例えば
図3に示すように、基材層2と被コーティング基材4との間に接着層3が配置されていてもよい。接着層により、表面層としてコーティング膜が形成された被コーティング基材と基材層とを接着できる。
【0086】
接着層に用いられる接着剤は、特に限定されないが、感圧型接着剤が好ましい。感圧型接着剤としては、特に限定されず、例えば、アクリル系、ゴム系、シリコーン系、ウレタン系が挙げられる。中でも、アクリル系感圧型接着剤が好ましい。
【0087】
接着層の厚さは、表面層と基材層とを接着できる厚さ、または表面層としてコーティング膜が形成された被コーティング基材と基材層とを接着できる厚さであれば特に限定されず、例えば、50nm以上500μm以下である。
【0088】
[6]易接着層およびアンカーコート層
上記表面層がコーティング膜であり、コーティング膜を転写して使い捨てメイクアップシートを作製する場合、コーティング膜である表面層と基材層との間に易接着層が配置されていてもよい。さらに、コーティング膜である表面層と易接着層との間に、アンカーコート層が配置されていてもよい。コーティング膜である表面層と、アンカーコート層と、易接着層と、基材層とが順に配置されていてもよい。例えば
図4において、基材層2、易接着層6、アンカーコート層5、およびコーティング膜である表面層1が順に配置されている。コーティング膜を転写する際には、例えば、剥離フィルムと、コーティング膜である表面層と、アンカーコート層と、易接着層とをこの順に有する転写フィルムを用いることができる。
【0089】
[7]第2の接着層
本開示における使い捨てメイクアップシートは、表面層の他方の面に第2の接着層を有していてもよい。本開示における使い捨てメイクアップシートが基材層を有する場合、第2の接着層は、基材層の表面層とは反対側の面に配置される。つまり、表面層、基材層、第2の接着層の順に配置される。第2の接着層は、使い捨てメイクアップシートと被着体とを接着する層である。例えば、被着体が、人肌に近い弾力性を有し、エラストマーを含有する被着体である場合、発泡体である場合、あるいは顔の模型である場合、被着体に使い捨てメイクアップシートを配置して、使い捨てメイクアップシートの表面層の面にメイクアップを施すことにより、実際に顔にメイクアップを施す場合を模すことができる。
【0090】
第2の接着層に用いられる接着剤は、特に限定されないが、感圧型接着剤が好ましい。感圧型接着剤としては、特に限定されず、例えば、アクリル系、ゴム系、シリコーン系、ウレタン系が挙げられる。中でも、アクリル系感圧型接着剤が好ましい。
【0091】
第2の接着層の厚さは、使い捨てメイクアップシートと被着体とを接着できる厚さであれば特に限定されず、例えば、50nm以上500μm以下である。
【0092】
[8]剥離層
本開示における使い捨てメイクアップシートが上記第2の接着層を有する場合、本開示における使い捨てメイクアップシートは、上記第2の接着層の上記表面層とは反対側の面に剥離層を有していてもよい。剥離層は、第2の接着層を保護する層であり、使い捨てメイクアップシートを被着体に貼付する際に剥離される。剥離層としては、従来公知のものを使用できる。
【0093】
B.メイクアップ支援システム
本開示におけるメイクアップ支援システムは、メイクアップの対象となる人体の所定部位の画像を入力する画像入力部と、基材層の一方の面に上記画像を印刷する印刷装置と、上記基材層の上記画像が印刷された面に表面層を配置して、使い捨てメイクアップシートを得る配置部と、上記使い捨てメイクアップシートの上記表面層の表面に、メイクアップを施すメイクアップ施術と、を備える。
【0094】
本開示におけるメイクアップ支援システムは、化粧品販売の店舗において、顧客が化粧品を試すため、あるいは、化粧品販売員が顧客に化粧品を推奨するまたはメイク方法を提案するため等に用いられる。
【0095】
図7は、本開示におけるメイクアップ支援システムを例示するブロック図である。
図7に示すように、メイクアップ支援システム20は、カメラ21と、画像入力部22と、印刷装置23と、配置部24と、メイクアップ施術25と、を備える。画像入力部22は、スマートフォン、タブレット型端末、パーソナルコンピュータ等の端末装置である。画像入力部22と、印刷装置23とは、インターネット等のネットワーク26に接続されている。
【0096】
1.カメラ
本開示におけるメイクアップ支援システムは、画像を撮像するカメラを有していてもよく、有さなくてもよい。例えば、顧客が自分の画像を持って来店した場合、この画像を用いてもよい。
【0097】
カメラは、メイクアップの対象となる人体の所定部位の画像を得るために用いられる。カメラは、例えば、いわゆるデジタルカメラである。カメラにより撮像される画像は、カラー画像である。
【0098】
カメラにより画像を撮影する場所は、特に限定されず、化粧品販売の店舗、自宅、屋外等、任意の場所でよい。
【0099】
カメラにより撮像された画像は、画像入力部に送信される。
【0100】
画像入力部である端末装置がカメラを搭載しており、カメラおよび画像入力部として機能していてもよい。
【0101】
2.画像入力部
画像入力部では、メイクアップの対象となる人体の所定部位の画像を入力する。
【0102】
本開示におけるメイクアップ支援システムでは、顧客の情報として、顧客の画像が利用される。顧客の画像は、メイクアップの対象となる人体の所定部位のデジタル写真である。人体の所定部位は、上記「A.使い捨てメイクアップシート」の項に記載した内容と同様である。所定部位は、顧客が自身で予め決めている場合が多いが、化粧品販売員との相談によって変更されてもよい。なお、所定部位のデジタル写真は、所定部位のみのデジタル写真であってもよく、所定部位を含むデジタル写真であってもよい。例えば、所定部位が顔である場合、顔のデジタル写真は、顔を含む上半身のデジタル写真であってもよい。
【0103】
画像入力部は、スマートフォン、タブレット型端末、パーソナルコンピュータ等の端末装置である。画像入力部である端末装置は、例えば、化粧品販売の店舗で使用される。化粧品販売の店舗で顧客の画像を撮影し、画像入力部である端末装置に画像を入力してもよい。また、顧客が自宅等で別の端末装置を用いて自分の画像を撮影し、その画像をインターネット等のネットワークを経由して、画像入力部である端末装置に送信してもよい。
【0104】
画像入力部22である端末装置は、
図7に示すように、入力部31と、出力部32と、通信部33と、処理部34とを備える。端末装置は、例えば、CPUおよびメモリを主構成とするコンピュータシステムにて構成されている。CPUがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが端末装置として機能する。プログラムは、端末装置のメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、あるいはメモリカード等の記録媒体に記録されて、提供されてもよい。
【0105】
入力部31は、人による操作を受け付ける機能を有している。出力部32は、例えば、液晶表示装置や有機EL表示装置のような薄型の表示装置である。入力部31は、例えば、出力部32の表示面に設置されるタッチパッドである。つまり、出力部32と入力部31とはタッチパネルを構成する。なお、入力部31は、タッチパネルに限らず、例えばキーボードやポインティングデバイス、メカニカルなスイッチ等であってもよい。
【0106】
通信部33は、ネットワーク26に接続されることで、画像入力部である端末装置22と印刷装置23との間の通信を可能にする。
【0107】
処理部34は、出力部32に表示させる画面を作成し、出力部32を制御することにより、作成した画面を出力部32に表示させる機能を持つ。つまり、端末装置は、専用のアプリケーションソフトをインストールし、このアプリケーションソフトを起動することにより、出力部32を制御するための処理部34としての機能を実現する。
【0108】
処理部34は、写真選択画面を表示するように構成されていてもよい。処理部34は、入力部31により、複数の画像から入力する画像を選択することを可能にする。これによって、顧客は、複数の画像から最も気に入った画像を選択できる。処理部34は、入力部31により選択された画像を、通信部33を通じて印刷装置23に送信する。
【0109】
また、処理部34は、画像の色相、彩度、明度を調整する色調補正画面を表示するように構成されていてもよい。処理部34は、入力部31により、画像の色相、彩度、明度を調整することを可能にする。処理部34は、入力部31により色相、彩度、明度が調整された画像を、通信部33を通じて印刷装置23に送信する。
【0110】
3.印刷装置
印刷装置は、画像入力部から受け取った画像を、基材層の一方の面に印刷する。
【0111】
印刷装置は、ネットワーク26に接続されることで、画像処理部22との間の通信を可能にする。
【0112】
印刷装置の印刷方式としては、カラー印刷が可能であれば特に限定されず、例えば、インクジェット方式、レーザ方式、昇華転写方式が挙げられる。
【0113】
基材層は、上記「A.使い捨てメイクアップシート」の項に記載した内容と同様である。
【0114】
4.配置部
配置部は、印刷装置により基材層の画像が印刷された面に、表面層を配置する。これにより、使い捨てメイクアップシートが得られる。
【0115】
表面層および接着層は、上記「A.使い捨てメイクアップシート」の項に記載した内容と同様である。
【0116】
配置部としては、基材層の画像が印刷された面に、表面層を配置する手段であれば特に限定されず、例えば、ラミネート装置、塗布装置、転写装置が挙げられる。
【0117】
[1]ラミネート装置
ラミネート装置は、印刷装置により基材層の画像が印刷された面に、接着層を介して表面層をラミネートする。
【0118】
ラミネート装置は、印刷装置により基材層の画像が印刷された面に、接着層を介して表面層をラミネートするように構成されていれば、特に限定されない。ラミネート装置では、表面層として樹脂フィルムを用いてもよく、表面層としてコーティング膜が形成された被コーティング基材を用いてもよい。
【0119】
表面層として樹脂フィルムを用いる場合、ラミネート装置においては、接着層付き樹脂フィルムを用い、基材層の画像が印刷された面に接着層付き樹脂フィルムをラミネートしてもよく、基材層の画像が印刷された面または樹脂フィルムに接着剤を塗布した後、基材層の画像が印刷された面に接着剤を介して樹脂フィルムをラミネートしてもよい。
【0120】
また、表面層としてコーティング膜が形成された被コーティング基材を用いる場合、ラミネート装置においては、コーティング膜と被コーティング基材と接着層とを順に有する接着層付き積層フィルムを用い、基材層の画像が印刷された面に接着層付き積層フィルムをラミネートしてもよく、基材層の画像が印刷された面または、コーティング膜と被コーティング基材とを有する積層フィルムの被コーティング基材側の面に接着剤を塗布した後、基材層の画像が印刷された面に接着剤を介して積層フィルムをラミネートしてもよい。
【0121】
上記の接着層付き樹脂フィルムを用いる場合、樹脂フィルムと接着層と剥離層とが積層された接着層付き樹脂フィルムを用いることが好ましい。さらに、接着層には感圧型接着剤を用いることが好ましい。この場合、ラミネート装置において、上記の接着層付き樹脂フィルムから剥離層を剥離しながら、上記の接着層付き樹脂フィルムの接着層の面を、基材層の画像が印刷された面に圧着することにより、基材層と樹脂フィルムとを貼り合わせることができる。よって、ラミネート装置の構成を簡素化できる。
【0122】
中でも、ラミネート装置は、樹脂フィルムと接着層と剥離層とが積層されており、接着層が感圧型接着剤を含有する接着層付き樹脂フィルムを用い、上記の接着層付き樹脂フィルムから剥離層を剥離し、基材層の画像が印刷された面と、上記の接着層付き樹脂フィルムの接着層の面とを貼り合わせるように構成されていることが好ましい。
【0123】
また、上記の接着層付き積層フィルムを用いる場合、コーティング膜と被コーティング基材と接着層と剥離層とが積層された接着層付き積層フィルムを用いることが好ましい。さらに、接着層には感圧型接着剤を用いることが好ましい。この場合、ラミネート装置において、上記の接着層付き積層フィルムから剥離層を剥離しながら、上記の接着層付き積層フィルムの接着層の面を、基材層の画像が印刷された面に圧着することにより、基材層と積層フィルムとを貼り合わせることができる。よって、ラミネート装置の構成を簡素化できる。
【0124】
[2]塗布装置
塗布装置は、印刷装置により基材層の画像が印刷された面に、樹脂組成物を塗布して、表面層を形成する。樹脂組成物の塗布方法としては、特に限定されず、例えば、スプレー法、インクジェット法、スクリーン印刷法が挙げられる。
【0125】
塗布装置では、樹脂組成物を塗布した後、乾燥させてもよい。また、塗布装置では、樹脂組成物を塗布した後、硬化させてもよい。硬化方法としては、例えば、加熱、紫外線照射が挙げられる。
【0126】
[3]転写装置
転写装置は、剥離フィルムに樹脂組成物を塗布し、半硬化して半硬化膜を形成した後、剥離フィルムおよび半硬化膜を、印刷装置により基材層の画像が印刷された面に押し当てた状態で、半硬化膜を硬化して、基材層の画像が印刷された面に表面層を転写する。
【0127】
樹脂組成物の塗布方法は、特に限定されず、上記の塗布装置における樹脂組成物の塗布方法と同様である。
【0128】
樹脂組成物を半硬化する方法としては、例えば、乾燥、加熱、紫外線照射が挙げられる。
【0129】
半硬化膜を硬化する方法としては、例えば、加熱、紫外線照射が挙げられる。
【0130】
5.メイクアップ施術
本開示におけるメイクアップ支援システムにおいては、得られた使い捨てメイクアップシートの表面層の表面に、メイクアップを施す。使い捨てメイクアップシートは、顧客がメイクアップを施すというよりは、化粧品販売員が顧客の要望を聞きながらメイクアップを施すことを想定している。
【0131】
メイクアップの内容は、ベースメイク、ポイントメイクが挙げられる。ベースメイクに用いられる化粧品としては、例えば、ファンデーション、化粧下地、コンシーラ、フェイスパウダー、ハイライターが挙げられる。また、ポイントメイクに用いられる化粧品としては、例えば、チーク、口紅、リップグロス、アイシャドウ、アイライナー、アイブロー、マスカラが挙げられる。
【0132】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【実施例0133】
以下、実施例および比較例を示し、本開示をさらに説明する。
【0134】
[実施例1]
使い捨てメイクアップシートとして、ニトムズ社製「パーミロール」を用いた。「パーミロール」は、樹脂フィルムと接着層とを有し、樹脂フィルムはポリウレタンフィルム、接着層に含まれる粘着剤はアクリル系ゲルであった。
【0135】
[実施例2]
使い捨てメイクアップシートとして、ダイオーペーパープロダクツ社製「NTスフール」を用いた。「NTスフール」は、紙基材層と表面層とを有し、表面層の材料はポリテトラメチレングリコール系ポリウレタン、厚さは150μmであった。
【0136】
[実施例3]
使い捨てメイクアップシートとして、大倉工業社製「シルクロン NES85SW」を用いた。「シルクロン NES85SW」は、熱可塑性ポリウレタンエラストマーフィルムであり、厚さは8μmであった。
【0137】
[実施例4]
使い捨てメイクアップシートとして、大倉工業社製「シルクロン NES85L」を用いた。「シルクロン NES85L」は、熱可塑性ポリウレタンエラストマーフィルムであり、厚さは20μmであった。
【0138】
[実施例5]
使い捨てメイクアップシートとして、ユポ・コーポレーション社製「ニューユポ FGS」を用いた。「ニューユポ FGS」は、紙基材層と表面層とを有し、表面層の材料はポリプロピレンおよび無機充填剤、厚さは95μmであった。
【0139】
[実施例6]
使い捨てメイクアップシートとして、ユポ・コーポレーション社製「ニューユポ FGS」を用いた。「ニューユポ FGS」は、紙基材層と表面層とを有し、表面層の材料はポリプロピレンおよび無機充填剤、厚さは110μmであった。
【0140】
[実施例7]
使い捨てメイクアップシートとして、ユポ・コーポレーション社製「ユポトレース TPRA」を用いた。「ユポトレース TPRA」は、紙基材層と表面層とを有し、表面層の材料はポリプロピレンおよび無機充填剤、厚さは90μmであった。
【0141】
[実施例8]
使い捨てメイクアップシートとして、コルデノンス社製「プライク-FS アイボリー」を用いた。「プライク-FS アイボリー」は、紙基材層と表面層とを有し、表面層の材料はポリウレタンおよびシリカ、厚さは103μmであった。
【0142】
[実施例9]
オフセットインライン用ニスとして、DICグラフィックス社製「HYDLITH UV ピーチフィール REV01」を用いた。紙基材上に、上記オフセットインライン用ニスをオフセット印刷で塗布し、UV硬化させて、使い捨てメイクアップシートを作製した。
【0143】
[比較例1]
使い捨てメイクアップシートとして、厚さ110μmのユポ・コーポレーション社製「ユポタック原紙 SGS」を用いた。
【0144】
[比較例2]
使い捨てメイクアップシートとして、厚さ110μmのユポ・コーポレーション社製「スーパーユポダブル FRBW」を用いた。
【0145】
[比較例3]
使い捨てメイクアップシートとして、厚さ160μmのユポ・コーポレーション社製「ユポ電飾用紙 BCR」を用いた。
【0146】
[比較例4]
厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、ウレタン-アクリル共重合体とフィラーとを含有する樹脂組成物をミヤバーで塗布し、厚さ4μmの表面層を形成した。
【0147】
[比較例5]
厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、ウレタン-アクリル共重合体を含有する樹脂組成物をミヤバーで塗布し、厚さ4μmの表面層を形成した。
【0148】
[比較例6]
使い捨てメイクアップシートとして、大倉工業社製「シルクロン SNY97-CLB」を用いた。「シルクロン SNY97-CLB」は、熱可塑性ポリウレタンエラストマーフィルムであり、厚さは40μmであった。
【0149】
[比較例7]
使い捨てメイクアップシートとして、厚さ110μmのユポ・コーポレーション社製「ハイティアーユポ WSF」を用いた。
【0150】
[比較例8]
使い捨てメイクアップシートとして、ケント紙である、富士共和製紙社製「バガスケント CoC」を用いた。
【0151】
[比較例9]
使い捨てメイクアップシートとして、特殊東海製紙社製「キャサリン 白」を用いた。
【0152】
[比較例10]
使い捨てメイクアップシートとして、特殊東海製紙社製「ベイビーフェイス」を用いた。
【0153】
[比較例11]
使い捨てメイクアップシートとして、日本製紙クレシア社製「ジェントル Nフェイス」を用いた。
【0154】
[比較例12]
使い捨てメイクアップシートとして、日本製紙社製「グラディアCoC」を用いた。
【0155】
[比較例13]
使い捨てメイクアップシートとして、北越コーポレーション社製「エスティムNS」を用いた。
【0156】
[比較例14]
使い捨てメイクアップシートとして、特殊東海製紙社製「エアラス スーパーホワイト」を用いた。
【0157】
[比較例15]
使い捨てメイクアップシートとして、特殊東海製紙社製「ミセスBスムース-F スーパーホワイト」を用いた。
【0158】
[参考例]
ビューラックス社「バイオスキンプレート P001-001 #BSC」を用いた。バイオスキンプレートにおいて、材料はウレタンエラストマー、大きさは195mm×130mm、厚さは5mmであった。なお、バイオスキンプレートは、シートではないため、参考例とした。
【0159】
[評価]
[1]動摩擦係数
動摩擦係数は、トリニティーラボ社製の静動摩擦測定機TL201Ttを用い、トリニティーラボ社製の指紋パターン付きのポリウレタン製の触覚接触子 指モデルを用いて測定した。測定条件は、温度:23℃から25℃、湿度:45%RHから59%RH、垂直荷重:50g、摺動速度:20mm/sec、移動距離:30mm、測定モード:シングルとした。動摩擦係数の測定は、場所を変えて3回行い、平均値を採用した。
【0160】
[2]反射強度
使い捨てメイクアップシートの一方の面に、法線方向に対して-45度で可視光線を入射したときの、+45度の反射強度および+40度の反射強度はそれぞれ、変角光度計を用いて測定した。変角光度計は、村上色彩技術研究所社製の変角光度計GP-200を用いた。測定条件を下記に示す。
<測定条件>
・光源:12V、50Wのハロゲンランプ
・虹彩絞り:直径10.5mm
・開口絞り:直径9.1mm
・入射角:45°
【0161】
具体的には、下記手順に測定を行った。
[i]感度チェック
屈折率1.518の標準板黒ガラスBK-7を取り付けた。減光フィルターとして、1.0%、10.0%、50.0%の3枚を使用した。感度を950に設定した。出力信号のモニターである表示器が123となるように、高圧調整ツマミを調整した。
【0162】
[ii]標準板の測定
屈折率1.518の標準板黒ガラスBK-7を取り付けた。以下、標準板黒ガラスとする。入射角45°で標準板黒ガラスを測定すると、受光角度45°付近の正反射光のみが検出されることから、標準板黒ガラスの表面から30.0°~60.0°の角度で出射する反射光の強度を、0.1°ごとにそれぞれ測定した。標準板黒ガラスの反射光の強度測定は、試料片測定前と測定後に行った。
【0163】
[iii]試料片の準備
使い捨てメイクアップシートを5cm×6cmの矩形状に切断して試験片とした。試験片を、6cm×7cmの黒色板の上に両面テープで固定し、さらに周囲を黒テープで固定した。使い捨てメイクアップシートが透明である場合は、試験片の下地として白ケント紙を介して黒色板の上に両面テープで固定し、さらに周囲を黒テープで固定した。
【0164】
[iv]試料の測定
試験片を固定した黒色板を、試料台に固定した。光源からの光を試験片に入射させ、試験片の表面によって反射された光を検出器によって検出し、反射された光の強度を測定した。以下、反射された光を反射光とも称する。出力信号のモニターである表示器が20~180程度となるように、光源側に取り付ける減光フィルターを選定した。減光フィルターとしては、1.0%、10.0%、50.0%を単独または組み合わせて使用した。検出器の角度を変化させることにより、試験片の表面から-90.0°~90.0°の受光角度で出射する反射光の強度を、0.1°ごとにそれぞれ測定した。
【0165】
[v]解析:受光角度
まず、標準板黒ガラスの反射光の最大強度をAMAXとした。AMAXにおける受光角度を45.0°とし、試料片の受光角度の補正を行った。例えば、AMAXにおける受光角度が、46.0°であった場合、試料片測定角度を1.0°ずつずらす。具体的には、試料片測定角度46.0°を45.0°、試料片測定角度47.0°を46.0°というように補正する。
【0166】
[vi]解析:減光フィルター
標準板黒ガラスと試料片の反射光の強度のそれぞれについて、減光フィルターの補正を行った。例えば、10.0%と50.0%の減光フィルターを組み合わせて使用した場合は、反射光の強度を0.100で除し、さらに0.500を除した値をフィルター補正後の反射光の強度とした。減光フィルターの補正を行ったAMAXをAMAX-Sとした。受光角度の補正と減光フィルターの補正を行った試料片の反射光の強度をBSとした。
【0167】
[vii]解析:規格化
全受光角度におけるB
Sを、A
MAX-Sで除して、規格化後の反射光の強度B
SSを得た。
図8に、例として、実施例2について、横軸に受光角度、縦軸に規格化後の反射光の強度B
SSを示したグラフを示す。受光角度45°のB
SSをB
45-SSとし、受光角度40°のB
SSをB
40-SSとした。
【0168】
[viii]解析:正反射と拡散のバランス
B40-SSをB45-SSで除して、45°の反射強度に対する40°の反射強度の比を得た。
【0169】
図9に、+45度の反射強度に対する+40度の反射強度の比と、動摩擦係数との関係を示すグラフを示す。
【0170】
[3]接触角
協和界面科学社製のポータブル接触角計PCA-1を用い、θ/2法により、使い捨てメイクアップシートの一方の面に、純水1.5μLの液滴を滴下し、滴下1秒後および31秒後の接触角を測定した。
【0171】
[4]Str
表面性状測定装置として、キーエンス社製の形状解析レーザ顕微鏡「制御部 VK-X150」および「測定部 VK-X160」を用い、ISO 25178に準拠して、Strを測定した。測定条件は、対物レンズ20倍とした。解析条件は、面の傾きを補正して水平にするために、基準面設定を行った。
【0172】
[5]官能評価
パネラー4名が、実施例および比較例の使い捨てメイクアップシートに各化粧品を塗布した場合と、パネラー自身の顔に各化粧品を塗布した場合とを比較し、以下の官能評価を行った。化粧品は、ファンデーション、チーク、アイシャドウ、リップとした。各化粧品は、パネラーが普段使用している化粧品を用いた。また、スポンジ、ブラシ、指等の化粧品を塗布する方法も、パネラーが普段使用している方法を用いた。つまり、パネラー毎に、異なる化粧品を用い、異なる塗布方法を用いた。
【0173】
ファンデーションおよびチークについては、ポイントメイクの重ねやすさ、発色性、凹凸カバー性、塗りやすさ、密着性、除去性をそれぞれ、5段階で官能評価した。アイシャドウおよびリップについては、発色性、重ねやすさ、塗りやすさ、密着性、除去性をそれぞれ、5段階で評価した。アイシャドウおよびリップについて、発色性には色およびラメが含まれ、重ねやすさにはグラデーションおよびぼかしが含まれる。なお、除去性とは、指でこすったときの落ちやすさをいう。人の肌では、化粧品を塗りすぎたり色を変えたりしたいときに、メイクの微修正のために、指等でこすってメイクを取る場合がある。この場合を想定して、除去性の項目を設けた。評価基準を下記に示す。そして、化粧品毎に官能評価の平均値を求め、さらに各化粧品の官能評価の平均値の平均を求めた。各化粧品の結果を表2~5に示す。また、全化粧品の平均値を表1に示す。
・1:人の肌とは全く違う。
・2:人の肌とやや違う。
・3:人の肌にやや近い。
・4:人の肌に近い。
・5:人の肌に非常に近い。
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
表1および
図9より、動摩擦係数が所定の範囲内であり、反射強度の比が所定の範囲内であり、上記式(1)を満たす場合は、官能評価の平均値が高く、使い捨てメイクアップシートにメイクアップを施すことにより、人の肌にメイクアップを施す場合を再現できることが示唆された。
【0180】
本開示は、以下の[1]~[7]を提供する。
[1]表面層を有する使い捨てメイクアップシートであって、
上記表面層の一方の面の動摩擦係数が、0.475以上2.000以下であり、
上記表面層の一方の面に、法線方向に対して-45度で可視光線を入射したときの、+45度の反射強度に対する+40度の反射強度の比が、0.700以上1.060以下であり、
上記動摩擦係数をa、上記+45度の反射強度に対する+40度の反射強度の比をbとしたとき、下記式(1)を満たす、使い捨てメイクアップシート。
b≦0.434×a+0.795 (1)
[2]上記表面層の厚さが100nm以上1000μm以下である、[1]に記載の使い捨てメイクアップシート。
[3]上記表面層がポリウレタンを含有する、[1]または[2]に記載の使い捨てメイクアップシート。
[4]上記表面層の他方の面に基材層を有する、[1]から[3]までのいずれかに記載の使い捨てメイクアップシート。
[5]上記表面層と上記基材層との間に印刷層を有する、[4]に記載の使い捨てメイクアップシート。
[6]上記基材層が紙基材である、[4]または[5]に記載の使い捨てメイクアップシート。
[7]メイクアップの対象となる人体の所定部位の画像を入力する画像入力部と、
基材層の一方の面に上記画像を印刷する印刷装置と、
上記基材層の上記画像が印刷された面に、表面層を配置して、使い捨てメイクアップシートを得る配置部と、
上記使い捨てメイクアップシートの上記表面層の表面に、メイクアップを施すメイクアップ施術と、
を備える、メイクアップ支援システム。