(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122082
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 11/74 20180101AFI20240902BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20240902BHJP
【FI】
F24F11/74
F24F11/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029414
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金山 浩士
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260BA07
3L260CB22
3L260FA07
(57)【要約】
【課題】ダクトにかかる静圧を正確に推測する。
【解決手段】実施形態の空気調和機は、ダクトに対して調和空気を送り出す送風機と、送風機の回転を制御する制御装置と、を有する。制御装置は、ダクトから吹き出させる風量ごとの、ダクトにかかる静圧と、送風機の回転数との対応関係を示す静圧-回転数情報を記憶する記憶手段と、風量を第1の風量とする場合の静圧-回転数情報に示された第1の回転数で送風機を回転させたときの送風機の消費電力を検出する電力検出手段と、検出された消費電力に基づき、第1の回転数で送風機を回転させたときにダクトから吹き出す第2の風量を算出する風量算出手段と、算出された第2の風量に基づき、ダクトから吹き出す風量を第1の風量とする送風機の回転数である第2の回転数を算出する回転数算出手段と、算出された第2の回転数に基づいて静圧を推定する静圧推定手段と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調空間に向けて調和空気を吹き出すダクトに対して前記調和空気を送り出す送風機と、
前記送風機の回転を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、
前記ダクトから吹き出す前記調和空気の風量ごとに、前記ダクトにかかる静圧と、前記送風機の回転数との対応関係を示す静圧-回転数情報を記憶する記憶手段と、
前記ダクトから吹き出させる風量を第1の風量とする場合の前記静圧-回転数情報に示された第1の回転数で前記送風機を回転させたときの前記送風機の消費電力を検出する電力検出手段と、
検出された前記消費電力を用いて前記第1の回転数で前記送風機を回転させたときに前記ダクトから吹き出す第2の風量を推定する風量推定手段と、
推定された前記第2の風量を用いて前記ダクトから吹き出させる風量を前記第1の風量とする前記送風機の回転数である第2の回転数を推定する回転数推定手段と、
推定された前記第2の回転数を用いて前記静圧を推定する静圧推定手段と、
を有することを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記記憶手段は、前記消費電力と風量との関係を示す第1の関係情報を記憶し、
前記風量推定手段は、前記第1の関係情報および前記検出された消費電力を用いて、前記第2の風量を推定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記記憶手段は、前記ダクトから吹き出させる風量が前記第1の風量となっている状態における、風量と前記送風機の回転数の関係を示す第2の関係情報を記憶し、
前記回転数推定手段は、前記第2の関係情報および前記第2の風量を用いて、前記第2の回転数を推定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記静圧推定手段は、風量を第1の風量とする場合の前記静圧-回転数情報と算出した前記第2の回転数を用いて、前記静圧を推定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項5】
推定された前記静圧に基づいて、空調運転時における前記送風機の回転数を決定する回転数決定手段を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記回転数決定手段は、前記空調運転時に要求された風量に対応する前記静圧-回転数情報に基づき、推定された前記静圧に対応する回転数に決定する、
ことを特徴とする請求項5に記載の空気調和機。
【請求項7】
前記電力検出手段は、検出された前記消費電力が所定の条件を満たさない場合、前記第1の回転数とは異なる回転数を新たな第1の回転数として前記送風機を回転させたときの前記送風機の消費電力を検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送風機により送り出される調和空気をダクトを介して居室などの空調空間へ吹き出すダクト型空気調和機が知られている。ダクト型空気調和機では、所定の風量(例えば、強風(2000m3/h)/中風(1500m3/h)/弱風(1000m3/h))を切り替えることで、空調空間へ吹き出す風量を調整できるようにしている。ダクトから空調空間へと吹き出す風量は、ダクトにかかる静圧(機外静圧とも呼ばれ、以後の説明では単に「静圧」と称する)の影響を大きく受ける。ダクトにかかる静圧は、ダクトの長さや空調空間へのダクトの接続状態(例えば、グリルを介するか否か)等の、ダクト型空気調和機の設置状態によって異なる。したがって、特定の条件下で決めた回転数で送風機を駆動させたとしても、ダクト型空気調和機の設置状態によって静圧が異なるため、ダクトから吹き出す風量が強風/中風/弱風といった所定の風量にならない場合がある。
【0003】
そのためダクト型空気調和機では、予め試験などを行ない、所定の条件下で得られる風量と送風機の回転数からその条件下においてダクトにかかる静圧の推定値を求め、制御部に記憶させている。そしてダクト型空気調和機が設置された際には、送風機の回転数と風量を測定することでダクトにかかる静圧を推定し、前述した所定の風量となるよう送風機の回転数を決定する空気調和装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来技術では、ダクトにかかる静圧を推定する際に、要求される風量が送風機の回転数を変化させることにより得られる、という前提のもとに静圧を推定している。しかし、静圧が高くなるような設置状態では、送風機の回転数を最大回転数としても要求される風量が得られない場合がある。このような場合では、静圧を正確に推測することができない。
【0006】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、ダクトにかかる静圧を正確に推測する空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の空気調和機は、空調空間に向けて調和空気を吹き出すダクトに対して調和空気を送り出す送風機と、送風機の回転数を制御する制御装置と、を有する。制御装置は、調和空気をダクトから吹き出させる風量ごとの、ダクトにかかる静圧と、送風機の回転数との対応関係を示す静圧-回転数情報を記憶する記憶手段と、ダクトから吹き出す風量を第1の風量とする場合の静圧-回転数情報に示された第1の回転数で送風機を回転させたときの送風機の消費電力を検出する電力検出手段と、検出された消費電力を用いて第1の回転数で送風機を回転させたときにダクトから吹き出す第2の風量を推定する風量推定手段と、推定された第2の風量を用いてダクトから吹き出す風量を第1の風量とする送風機の回転数である第2の回転数を推定する回転数推定手段と、推定された第2の回転数を用いて静圧を推定する静圧推定手段と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、ダクトにかかる静圧を正確に推測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態にかかる空気調和機の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、静圧-回転数情報の概要を説明する説明図である。
【
図3】
図3は、風量算出用情報の概要を説明する説明図である。
【
図4】
図4は、回転数算出用情報の概要を説明する説明図である。
【
図5】
図5は、実施形態にかかる空気調和機の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、実施形態にかかる空気調和機を説明する。実施形態において同一の機能を有する構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、以下の実施形態で説明する空気調和機は、一例を示すに過ぎず、実施形態を限定するものではない。また、以下の各実施形態は、矛盾しない範囲内で適宜組みあわせてもよい。
【0011】
図1は、実施形態にかかる空気調和システム1の概略構成を示す図である。
図1に示すように、空気調和システム1は、空気調和機3とダクト7が居室などの空調空間2の天井裏に配置され、天井に設けられた吸込口8と空気調和機3の図示しない吸込部とがダクト7aで接続されるとともに、吹出口9と空気調和機3の吹出部4bとがダクト7bで接続されている。空気調和システム1は、吸込口8からダクト7aを介して取り込まれて室内空気を空気調和機3によって加熱もしくは冷却した空気(以下、「調和空気」と称する)とし、ダクト7bを介して吹出口9から空調空間2に吹き出すものである。空気調和機3は、ダクト7に対して調和空気を送り出す送風機4と、送風機4を制御する制御装置5とを有する。
【0012】
送風機4は、複数の回転翼4aと、回転数可変のモータ(図示しない)と、モータが消費する消費電力を検知する電力検知センサ(図示しない)とを有する。送風機4は、制御装置5の制御のもと、所定の回転数でモータを駆動することにより回転翼4aを回転しダクト7内の調和空気を送り出す。具体的には、送風機4の駆動により、室内空気が吸込口8からダクト7aを介して空気調和機3に取り込まれ、空気調和機3からダクト7bに吹き出された調和空気が吹出口9から空調空間2へと吹き出される。また、送風機4は、モータ駆動時における電力検知センサの検出値(電力値)を制御装置5へ出力する。
【0013】
制御装置5は、空調制御部10、気流制御部20および記憶部30を有する。制御装置5は、空調空間2内の温度を検知する温度センサ(図示しない)等のセンサ情報と、空気調和システム1の使用者が操作するリモコン6における設定温度、風量等の指示情報とに基づき、送風機4を含めた空気調和機3の制御を行う。
【0014】
制御装置5は、ハードウェアとして、たとえば、プロセッサおよび記憶装置によって実現される。制御装置5のプロセッサの一例としては、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などがある。このプロセッサは、例えば、記憶装置に記憶されたプログラムを順次実行することで、空気調和機3を制御する。
【0015】
制御装置5の記憶装置の一例としては、RAM(RAM Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)などがある。この記憶装置は、制御装置5における記憶部30としての機能を提供する。
【0016】
空調制御部10は、センサ情報による空調空間2内の温度と、使用者によるリモコン6の操作で設定された暖房・冷房などの運転モードや設定温度に基づき、空調空間2内の温度が設定温度に近づくように空気調和機3を制御する。
【0017】
気流制御部20は、リモコン6における風量の指示(例えば強風(強)、中風(中)、弱風(弱))に基づいて送風機4の回転数を制御する。気流制御部20は、電力検出部21、風量推定部22、回転数推定部23、静圧推定部24および回転数決定部25を有する。
【0018】
電力検出部21は、送風機4の駆動時において電力検出部21が検出した電力値に基づき、送風機4が消費する電力(以下、「消費電力」と称する)を検出する。例えば、電力検出部21は、送風機4のモータを所定の第1の回転数で駆動した際に、電圧・電流の検出センサが検出した電圧値および電流値に基づく電力値の平均値を消費電力としている。
【0019】
風量推定部22は、送風機4を第1の回転数で駆動した際に電力検出部21が検出した消費電力を用いて、送風機4が第1の回転数であるときに吹出口9から吹き出す風量(第2の風量)を推定する。具体的には、風量推定部22は、記憶部30に格納された後述する風量推定用情報32を参照し、風量推定用情報32に示された消費電力および風量の関係に、第1の回転数で送風機4を駆動した際に電力検出部21が検出した消費電力の値から、送風機4が送り出す第2の風量を推定する。なお、風量推定用情報32は、第1の関係情報の一例である。
【0020】
回転数推定部23は、風量推定部22により推定された第2の風量を用いて、吹出口9から吹き出す風量(送風機4が送り出す風量)を所定の第1の風量(基準風量)とするために必要な送風機4の回転数(第2の回転数)を推定する。具体的には、回転数推定部23は、記憶部30に格納された後述する回転数推定用情報33を参照し、回転数推定用情報33に示された、送風機4の回転数と風量との関係に、風量推定部22により推定された第2の風量の値から、基準風量とするために必要な送風機4の回転数(第2の回転数)を推定する。なお、回転数推定用情報33は、第2の関係情報の一例である。
【0021】
静圧推定部24は、回転数推定部23が推定した第2の回転数を用いて、ダクト7にかかる静圧を推定する処理部である。具体的には、静圧推定部24は、記憶部30に格納された後述する静圧-回転数情報31を参照し、静圧-回転数情報31に示された、送風機4が送り出す風量(ダクト7から吹き出させる風量)ごとの、ダクト7(正確には、吹出口9に接続するダクト7b)にかかる静圧と送風機4の回転数との関係に、回転数推定部23が推定した第2の回転数の値から、ダクト7にかかる静圧を推定する。
【0022】
回転数決定部25は、記憶部30に格納された静圧-回転数情報31を参照し、静圧推定部24により推定された静圧を用いて、空調運転時における送風機4の回転数を決定する処理部である。具体的には、回転数決定部25は、静圧-回転数情報31に示された風量ごとの静圧-回転数の関係に、空調運転時においてリモコン6等の指示により要求される風量(例えば強風(強)、中風(中)、弱風(弱))および静圧推定部24により推定された静圧の値から、以下に説明する手順で要求される風量に対応する送風機4の回転数を決定する。
【0023】
記憶部30は、静圧-回転数情報31、風量推定用情報32および回転数推定用情報33を記憶する。ここで、静圧-回転数情報31、風量推定用情報32および回転数推定用情報33について、
図2~
図4を参照して説明する。
図2は、静圧-回転数情報31の概要を説明する説明図である。
図3は、風量推定用情報32の概要を説明する説明図である。
図4は、回転数推定用情報33の概要を説明する説明図である。
【0024】
図2に示すように、静圧-回転数情報31は、静圧-回転数情報31a、31H、31M、31Lなどの送風機4が送り出す風量(単位:m
3h)ごとの、ダクト7にかかる静圧(単位:Pa)と、送風機4の回転数(単位:rpm)の関係性を示す情報である。
【0025】
ここで、静圧-回転数情報31aは、送風機4が送り出す風量を基準風量(例:2700m3h)とする場合の、静圧-回転数の関係をテーブル形式で記述したデータである。ここで、基準風量は、定格風量よりも少ない風量であり、例えば、静圧が高い設置状態であっても、送風機4の回転数を変化させれば基準風量の送風が可能なものである。
【0026】
静圧推定部24は、この静圧-回転数情報31aを用いることで、回転数推定部23が推定した第2の回転数に対応する静圧がダクト7にかかる静圧であると推定する。例えば、回転数推定部23が推定した第2の回転数が900[rpm]である場合、静圧推定部24は、静圧-回転数情報31aを参照することで、静圧を70[Pa]と推定する。
【0027】
静圧-回転数情報31Hは、送風機4が送り出す風量を強風(例えば、3000m3h)とする場合の、静圧-回転数の関係をテーブル形式で記述したものある。静圧-回転数情報31Mは、送風機4が送り出す風量を中風(例えば、強風の85%風量=2550m3h)とする場合の、静圧-回転数の関係をテーブル形式で記述したものである。静圧-回転数情報31Lは、送風機4が送り出す風量を弱風(例えば、強風の70%風量=2100m3h)とする場合の、静圧-回転数の関係をテーブル形式で記述したデータである。上記のように、中風時および弱風時の送風機4の回転数は、強風時の風量を基に定められる。前述したように、静圧が高い場合はファン回転数を最大としても静圧が低い場合と比べて風量が少なくなるが、強風時の風量を基にして中風時および弱風時の送風機4の回転数を定めること、静圧が高い場合でも(強/中/弱)の風量を実現できる。
【0028】
回転数決定部25は、これら静圧-回転数情報31H、31M、31Lを用いることで、空調運転時において(強/中/弱)の風量を実現するための回転数を決定する。例えば、回転数決定部25は、空調運転時の要求風量が強であり、推定した静圧が70[Pa]である場合、静圧-回転数情報31Hを参照し、静圧70[Pa]に対応する回転数1120[rpm]と決定する。
【0029】
図3に示すように、風量推定用情報32は、送風機4の回転数を第1の回転数とした場合の、送風機4の消費電力(P)と吹出口9から吹き出す風量(Q)の関係を示すグラフG1に対応した情報である。具体的には、グラフG1は、横軸をQ(風量[m
3h]、縦軸をモータの消費電力であるP[モータ電力値[W]]とした場合、PとQが比例する一次関数のグラフとなる。
【0030】
すなわち、グラフG1は、次の算出式のとおりに1次関数の式(1)で示すことができる。
Qp=αP+β…(1)
【0031】
ここで、式(1)におけるα(傾き)、β(切片)は、送風機4に固有の値であり、予め試験などを行って定められた定数である。風量推定部22は、電力検出部21が検出した消費電力(P)を式(1)に代入することで、吹出口9から吹き出す風量である第2の風量を算出する。
【0032】
図4に示すように、回転数推定用情報33は、吹出口9から吹き出す風量(Q)と送風機4の回転数(N)の関係を示すグラフG2に対応した情報である。具体的には、グラフG2は、縦軸を風量(Q)[m
3h]、横軸を送風機4の回転数(N)とした場合、QとNが比例する一次関数のグラフとなる。
【0033】
このグラフG2を用い、送風機4の駆動により送り出され、吹出口9から吹き出される風量を基準風量(Qf)とする場合の送風機4の回転数(Nf)は、次の式(2)で算出することができる。
Nf=(Qf/Qp)×Nt…(2)
【0034】
回転数推定部23は、上記の式(2)に、送風機4を所定の回転数で駆動した場合の回転数(Nt)と、風量推定部22により算出された風量(第2の風量:Qp)と、基準風量(Qf)とを代入することで、基準風量とする場合の送風機4の回転数(Nf)を算出する。
【0035】
なお、本実施形態では、上述したように風量推定用情報32や回転数推定用情報33は一次関数を表す、式(1)や式(2)で記憶部30に記憶され、これを用いて第2の風量や基準風量とする場合の送風機4の回転数をそれぞれ算出して推定することを説明した。これらに代えて、モータ電力値と風量とを対応付けたテーブルを予め記憶して風量推定用情報32とし、ファン回転数と風量とを対応付けたテーブルを予め記憶して回転数推定用情報33として、各テーブルを参照して第2の風量や基準風量とする場合の送風機4の回転数をそれぞれ推定してもよい。このように、式(1)、式(2)に代えてテーブルを風量推定用情報32や回転数推定用情報33として予め備えていてもよい。なお、テーブルで示された値の間のデータは、線形補間などで補ってもよい。
【0036】
図5は、実施形態にかかる空気調和機の制御例を示すフローチャートである。
図5において、S1~S7までの各処理は、空気調和機3の設置時に行われる処理である。
【0037】
制御装置5が
図5に示す処理を開始すると、空調制御部10は、送風機4を第1の回転数である所定の回転数(Nt)で起動させる(S1)。ここで、所定の回転数(Nt)は、任意の値でよく、一例として、送風機4が送り出す風量を基準風量(2700m
3h)とする場合の静圧-回転数情報31aにおける最も低い静圧に対応する回転数(
図2であれば、800rpm)を選べばよい。
【0038】
次に、気流制御部20の電力検出部21は、S1による送風機4の起動後、所定時間が経過したか否かを判定する(S2)。この起動後の所定時間については、送風機4の回転数が安定すると想定される時間(例えば1分間)が事前に設定されている。所定時間が経過していない場合(S2:No)、電力検出部21は、ステップS2に処理を戻して所定時間が経過するのを待つ。
【0039】
所定時間が経過した場合(S2:Yes)、電力検出部21は検出した電力値に基づき、送風機4の消費電力(P)を検出する(S3)。
【0040】
ここで、電力検出部21は、検出した送風機4の消費電力(P)が所定の条件を満たす(所定消費電力量以上)か否かを判定する(S3a)。電力検出部21は、消費電力(P)が所定の条件を満たさない場合(S3a:No)、S1に処理を戻してもよい。所定条件として例えば、消費電力(P)が想定される電力値(閾値)を下回るような場合がある。実際の静圧が、第1の回転数である所定の回転数(Nt)に対応する静圧よりも大きな静圧である場合は、所定の回転数(Nt)での風量が基準風量より少なくなっていると考えられ、この場合は消費電力(P)の値も小さくなる。このように消費電力(P)が小さくなるすなわち静圧が高くて風量が基準風量より大きく低下すれば、この後説明する処理を行って推定した静圧値が正確な値でない恐れがある。そこで、静圧の推定値の精度が担保できる風量の低下に応じた電力値(P)の閾値を予め定めておき、S2の処理で検出した消費電力(P)がこの閾値を下回る(所定の条件を満たさない)場合は、次に説明するようにS1へ処理を戻して回転数(Nt)を変更する。
【0041】
消費電力(P)が所定の条件を満たさない場合(S3a:No)、気流制御部20は、当初設定した回転数(Nt)とは別の回転数(Nt’>Nt)を新たな回転数(Nt)とする(S3b)。例えば、気流制御部20は、送風機4が送り出す風量を基準風量とする場合の静圧-回転数情報31aをもとに、当初設定した回転数(Nt)に対応する静圧よりも大きな静圧に対応する回転数(Nt’)を新たな回転数として選ぶ。
【0042】
ついで(S3a:Yes)、気流制御部20の風量推定部22は、送風機4を所定の回転数(Nt)で駆動した際に電力検出部21が検出した消費電力(P)をもとに、吹出口9から吹き出す第2の風量である現在の風量(Qp)を算出する(S4)。
【0043】
ついで、気流制御部20の回転数推定部23は、算出した現在の風量(Qp)に基づき、吹出口9から吹き出す風量(送風機4が送り出す風量)が第1の風量である基準風量(Qf)となる、第2の回転数である送風機4の回転数(Nf)を算出する(S5)。
【0044】
ついで、気流制御部20の静圧推定部24は、静圧-回転数情報31aを用いて、送風機4が送り出す風量を基準風量(Qf)とする場合の送風機4の回転数(Nf)に基づいてダクト7にかかる静圧を推定する(S6)。
【0045】
ついで、気流制御部20の回転数決定部25は、静圧推定部24が推定した静圧を用いて静圧-回転数情報31を参照することで、空調運転時の風量(強/中/弱)の各回転数を決定し(S7)、処理を終了する。
【0046】
例えば、
図2の例において、静圧推定部24が推定した静圧が70[Pa]である場合、回転数決定部25は、強風時に1120[rpm]、中風時に950[rpm]、弱風時に780[rpm]のように各回転数を決定する。
【0047】
以上のように、空気調和システム1は、調和空気を流通させ、空調空間2に向けて調和空気を吹き出すダクト7に対して調和空気を送り出す送風機4と、送風機4の回転を制御する制御装置5とを有する。制御装置5は、記憶部30と、電力検出部21と、風量推定部22と、回転数推定部23と、静圧推定部24とを有する。記憶部30は、ダクト7から吹き出す調和空気の風量ごとに、ダクト7にかかる静圧と、送風機4の回転数との対応関係を示す静圧-回転数情報31を記憶する。電力検出部21は、ダクト7から吹き出す風量を第1の風量(基準風量)とする場合の静圧-回転数情報31に示された第1の回転数で送風機4を回転させたときの送風機4の電力を検出する。風量推定部22は、検出された電力に基づき、第1の回転数で送風機4を回転させたときにダクト7から吹き出す第2の風量を推定する。回転数推定部23は、推定された第2の風量に基づき、ダクト7から吹き出す風量を第1の風量とする送風機4の回転数である第2の回転数を推定する。静圧推定部24は、算出された第2の回転数に基づいてダクト7にかかる静圧を推定する。
【0048】
これにより、空気調和システム1では、静圧の値に関わらず第1の風量を実現できる第1の回転数で送風機4を駆動して静圧を推定するので、ダクト7にかかる静圧が高くなるような設置状態、例えば、送風機4の回転数を変化させて最大回転数としても定格風量が得られない設置状態であっても、静圧を正確に推定することができる。
【0049】
風量推定部22は、送風機4の回転数を所定の第1の回転数とした場合の、送風機4の消費電力(P)および送風機4が送り出す風量(Q)の関係性を示す風量推定用情報32および検出された電力を用いて、第2の風量を推定する。これにより、空気調和システム1は、第2の風量を正確に求めることができる。
【0050】
また、回転数推定部23は、送風機4の回転数と送風機4が送り出す風量との関係性を示す回転数推定用情報33および第2の風量を用いて、第2の回転数を推定する。これにより、空気調和システム1は、第2の回転数を正確に求めることができる。
【0051】
静圧推定部24は、風量を第1の風量(基準風量)とする場合の静圧-回転数情報31a推定した第2の回転数を用いて、ダクト7にかかる静圧を推定する。これにより、空気調和システム1は、設置状態に関わらず正確に静圧を推定できる。
【0052】
また、空気調和システム1は、推定された静圧に基づいて、空調運転時における送風機4の回転数を決定する回転数決定部25を有する。回転数決定部25は、空調運転時に要求された風量(例えば強/中/弱)に対応する静圧-回転数情報31H、31M、31Lに基づき、推定された静圧に対応する回転数を風量毎に決定する。これにより、空気調和システム1は、空調運転時に使用者に要求された風量が吹出口9より空調空間2に吹き出すようにすることができる。
【0053】
また、空気調和システム1は、検出された消費電力が所定の条件を満たさない場合、第1の回転数とは異なる回転数を新たな第1の回転数として送風機4を回転させたときの送風機4の消費電力を検出する。これにより、空気調和システム1は、送風機4の消費電力が所定の条件を満たすような、より適正な条件下において、静圧を推定することができる。
【符号の説明】
【0054】
1…空気調和機
2…空調空間
3…空気調和機
4…送風機
4a…回転翼
4b…吹出部
5…制御装置
6…リモコン
7…ダクト
8…吸込口
9…吹出口
10…空調制御部
20…気流制御部
21…電力検出部
22…風量推定部
23…回転数推定部
24…静圧推定部
25…回転数決定部
30…記憶部
31、31a、31H、31M、31L…静圧-回転数情報
32…風量推定用情報
33…回転数推定用情報
G1、G2…グラフ