(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122083
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】レバー式コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/64 20060101AFI20240902BHJP
H01R 13/639 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
H01R13/64
H01R13/639 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029415
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】弘田 勝則
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA09
5E021FA16
5E021FC09
5E021FC29
5E021FC32
5E021FC36
5E021HB02
5E021HB04
5E021HB05
5E021JA05
5E021KA06
(57)【要約】
【課題】輸送時に検知部材が不用意に待機位置から検知位置へ移動するのを防止する。
【解決手段】本開示のレバー式コネクタ10は、ハウジング20と、レバー40と、検知部材50と、を備え、レバー40の移動経路において仮係止位置と本係止位置との間に輸送位置が設定されており、レバー40は、レバーロック部48と、輸送ロック部47と、を有し、ハウジング20は、レバーロック部48に係止されることでレバー40を本係止位置に保持する本係止部27と、輸送ロック部47に係止されることでレバー40を輸送位置に保持する仮係止部と、を有し、検知部材50は、輸送位置ではレバーロック部48に係止することで待機位置に保持され、本係止位置では本係止部27によってレバーロック部48との係止が解除されることで待機位置から検知位置への移動が許容される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側コネクタに嵌合可能なレバー式コネクタであって、
ハウジングと、
前記ハウジングに対して仮係止位置と本係止位置とに移動可能に取り付けられたレバーと、
前記レバーに対して待機位置と検知位置とに移動可能に取り付けられた検知部材と、を備え、
前記レバーが前記仮係止位置から前記本係止位置に移動することで前記レバー式コネクタと前記相手側コネクタとが嵌合完了状態に至るようになっており、
前記レバーの移動経路において前記仮係止位置と前記本係止位置との間に輸送位置が設定されており、
前記レバーは、レバーロック部と、輸送ロック部と、を有し、
前記ハウジングは、前記レバーロック部に係止されることで前記レバーを前記本係止位置に保持する本係止部と、前記輸送ロック部に係止されることで前記レバーを前記輸送位置に保持する仮係止部と、を有し、
前記検知部材は、前記輸送位置では前記レバーロック部に係止することで前記待機位置に保持され、前記本係止位置では前記本係止部によって前記レバーロック部との係止が解除されることで前記待機位置から前記検知位置への移動が許容される、レバー式コネクタ。
【請求項2】
前記レバーは、前記仮係止位置と前記本係止位置との間で回動可能とされており、
前記レバーの外周縁には、開き抑制リブが前記レバーの回動方向にのびて設けられ、
前記ハウジングは、前記ハウジングの外面に対向するガイド壁を備え、
前記ガイド壁と前記ハウジングの外面との間に収容溝が形成され、前記開き抑制リブが前記収容溝に収容されることで前記レバーの開き変形が抑制されており、
前記輸送ロック部は、前記開き抑制リブに隣り合う領域に設けられている、請求項1に記載のレバー式コネクタ。
【請求項3】
前記開き抑制リブは、前記ガイド壁に近接する第1リブと、前記ガイド壁との間隔が前記第1リブよりも大きくなるように配された第2リブと、を有し、
前記輸送位置では前記第1リブが前記収容溝に収容され、前記仮係止位置に近づくにつれて前記第1リブが前記収容溝から外れるようになっており、前記輸送ロック部は、前記開き抑制リブに隣り合う領域のうち、前記レバーの回動方向において前記第2リブに対応する領域に設けられている、請求項2に記載のレバー式コネクタ。
【請求項4】
前記開き抑制リブは、前記第1リブと前記第2リブとを連結し前記レバーの回動方向に対して斜め方向にのびる第3リブをさらに有する、請求項3に記載のレバー式コネクタ。
【請求項5】
前記レバーは、前記ハウジングの外面に対向する内面と、前記内面と反対側に配された外面と、を有し、
前記第2リブは、前記内面に面一をなすように前記内面に接続され、前記第1リブは、段差を介して前記外面に接続されており、
前記ガイド壁は、前記第1リブが前記収容溝に収容された状態では前記段差に沿って配される、請求項3または請求項4に記載のレバー式コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レバー式コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特開2010-160942号公報(下記特許文献1)に記載のレバー式コネクタが知られている。このレバー式コネクタは、雌側ハウジングと、雌側ハウジングに対して回動中心軸を中心として回動可能に装着されるレバーと、レバーの正規嵌合位置への回動によって雌側ハウジングに正規嵌合される雄側ハウジングと、検知部材と、を備えている。雌側ハウジングは、ロック突部を有している。レバーは、回動中心軸から離れた端部に、ロックアームを有している。ロックアームは、ロック突部に係止することにより、両ハウジングを正規嵌合状態 に保持する。
【0003】
検知部材は、レバーに対して待機位置と検知位置との間を移動可能に設けられている。検知部材は、両ハウジングの嵌合途中においてはロックアームに係止され、待機位置に留め置かれる。一方、検知部材は、両ハウジングの正規嵌合時に(レバーが正規嵌合位置にあるときに)、ロックアームに係止されたロック突部に押圧され、検知位置に移動可能となる。
【0004】
ところで、レバーは、正規嵌合位置において、ロックアームが雌側ハウジングのロック突部に係止し、雌側ハウジングからの突出量が小さく抑えられた退避姿勢をとる。このため、レバーが正規嵌合位置で雌側ハウジングにロックされていると、レバーが雌側ハウジングから突出した姿勢とならず、レバーが他のコネクタや異物等と干渉することを回避し易くなる。例えば、雌端子金具を収容する前のレバー式コネクタがコネクタ工程からハーネス工程に輸送される際には、他のコネクタや異物等との干渉を回避すべくレバーが正規嵌合位置にあることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、レバーが正規嵌合位置にあると、検知部材はロック突部に押圧されて待機位置から検知位置に移動可能な状態になっている。このため、例えば、上記した輸送時に他のコネクタや異物等が検知部材に当たり、検知部材が検知位置へ不用意に移動してしまう懸念がある。仮に、検知部材が検知位置に移動してしまうと、ハーネス工程での受け入れ時に検知部材を待機位置に戻す作業を行わねばならず、作業工数が増加する。
【0007】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、輸送時に検知部材が不用意に待機位置から検知位置へ移動するのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のレバー式コネクタは、相手側コネクタに嵌合可能なレバー式コネクタであって、ハウジングと、前記ハウジングに対して仮係止位置と本係止位置とに移動可能に取り付けられたレバーと、前記レバーに対して待機位置と検知位置とに移動可能に取り付けられた検知部材と、を備え、前記レバーが前記仮係止位置から前記本係止位置に移動することで前記レバー式コネクタと前記相手側コネクタとが嵌合完了状態に至るようになっており、前記レバーの移動経路において前記仮係止位置と前記本係止位置との間に輸送位置が設定されており、前記レバーは、レバーロック部と、輸送ロック部と、を有し、前記ハウジングは、前記レバーロック部に係止されることで前記レバーを前記本係止位置に保持する本係止部と、前記輸送ロック部に係止されることで前記レバーを前記輸送位置に保持する仮係止部と、を有し、前記検知部材は、前記輸送位置では前記レバーロック部に係止することで前記待機位置に保持され、前記本係止位置では前記本係止部によって前記レバーロック部との係止が解除されることで前記待機位置から前記検知位置への移動が許容される、レバー式コネクタである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、輸送時に検知部材が不用意に待機位置から検知位置へ移動するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、レバー式コネクタと相手側コネクタの嵌合前の状態を側方から見た側面図である。
【
図2】
図2は、レバー式コネクタと相手側コネクタの嵌合完了状態で、検知部材が待機位置にある状態を側方から見た側面図である。
【
図3】
図3は、レバー式コネクタと相手側コネクタの嵌合完了状態で、検知部材が検知位置にある状態を側方から見た側面図である。
【
図4】
図4は、レバーが輸送位置にあるレバー式コネクタを側方から見た側面図である。
【
図5A】
図5Aは、相手側コネクタを斜め前方から見た斜視図である。
【
図6】
図6は、レバーが輸送位置にあるレバー式コネクタを斜め前方から見た斜視図である。
【
図7】
図7は、輸送ロック部が左側仮係止部に係止した状態を前方から見た断面図である。
【
図8】
図8は、輸送ロック部が右側仮係止部に係止した状態を前方から見た断面図である。
【
図9】
図9は、輸送ロック部が右側仮係止部に乗り上げた状態を前方から見た断面図である。
【
図10】
図10は、レバーが仮係止位置にあるレバー式コネクタを前方から見た正面図である。
【
図11】
図11は、仮係止ロック部が左側仮係止部と右側仮係止部とに係止した状態を前方から見た断面図である。
【
図12】
図12は、ハウジングを斜め後方から見た斜視図である。
【
図17】
図17は、レバーが輸送位置にあるときに検知部材がレバーロック部に係止することで待機位置に保持されている状態を側方から見た断面図である。
【
図18】
図18は、レバーが本係止位置にあるときに検知部材が本係止部に乗り上げて弾性変形しレバーロック部との係止が解除された状態を側方から見た断面図である。
【
図19】
図19は、レバーが本係止位置にあるときに検知部材が検知位置に押し込まれて本係止部とレバーロック部とを乗り越えて弾性復帰した状態を側方から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
[1]本開示のレバー式コネクタは、相手側コネクタに嵌合可能なレバー式コネクタであって、ハウジングと、前記ハウジングに対して仮係止位置と本係止位置とに移動可能に取り付けられたレバーと、前記レバーに対して待機位置と検知位置とに移動可能に取り付けられた検知部材と、を備え、前記レバーが前記仮係止位置から前記本係止位置に移動することで前記レバー式コネクタと前記相手側コネクタとが嵌合完了状態に至るようになっており、前記レバーの移動経路において前記仮係止位置と前記本係止位置との間に輸送位置が設定されており、前記レバーは、レバーロック部と、輸送ロック部と、を有し、前記ハウジングは、前記レバーロック部に係止されることで前記レバーを前記本係止位置に保持する本係止部と、前記輸送ロック部に係止されることで前記レバーを前記輸送位置に保持する仮係止部と、を有し、前記検知部材は、前記輸送位置では前記レバーロック部に係止することで前記待機位置に保持され、前記本係止位置では前記本係止部によって前記レバーロック部との係止が解除されることで前記待機位置から前記検知位置への移動が許容される、レバー式コネクタである。
【0012】
例えば、レバー式コネクタをコネクタ工程からハーネス工程に輸送する際には、レバーを輸送位置に移動させる。レバーは、輸送位置において、輸送ロック部がハウジングの仮係止部に係止することでハウジングに保持される。レバーが輸送位置でハウジングに保持されていると、仮係止位置にあるレバーよりもハウジングから突出する量を抑えることができるため、レバーが他のコネクタや異物等と干渉することを回避し易くなる。ここで、検知部材は、輸送位置ではレバーロック部によって待機位置に保持されているから、輸送時に検知部材が不用意に待機位置から検知位置へ移動するのを防止できる。
【0013】
[2]上記[1]において、前記レバーは、前記仮係止位置と前記本係止位置との間で回動可能とされており、前記レバーの外周縁には、開き抑制リブが前記レバーの回動方向にのびて設けられ、前記ハウジングは、前記ハウジングの外面に対向するガイド壁を備え、前記ガイド壁と前記ハウジングの外面との間に収容溝が形成され、前記開き抑制リブが前記収容溝に収容されることで前記レバーの開き変形が抑制されており、前記輸送ロック部は、前記開き抑制リブに隣り合う領域に設けられていることが好ましい。
【0014】
レバーを回動する際に開き抑制リブが収容溝に収容されることでレバーの開き変形が抑制され、レバーがハウジングから外れることが抑制される。これにより、輸送ロック部と仮係止部との係止が維持される。
【0015】
[3]上記[2]において、前記開き抑制リブは、前記ガイド壁に近接する第1リブと、前記ガイド壁との間隔が前記第1リブよりも大きくなるように配された第2リブと、を有し、前記輸送位置では前記第1リブが前記収容溝に収容され、前記仮係止位置に近づくにつれて前記第1リブが前記収容溝から外れるようになっており、前記輸送ロック部は、前記開き抑制リブに隣り合う領域のうち、前記レバーの回動方向において前記第2リブに対応する領域に設けられていることが好ましい。
【0016】
輸送位置では第1リブがガイド壁に当接するから、輸送ロック部と仮係止部との係止が維持され、レバーが誤って本係止位置に移動してしまうことを抑制できる。仮係止位置に近づくにつれて第1リブが収容溝から外れて第2リブがガイド壁に近づく方向に変位するから、レバーの開き変形を許容し、これによって輸送ロック部と仮係止部との係止を解除できる。
【0017】
[4]上記[3]において、前記開き抑制リブは、前記第1リブと前記第2リブとを連結し前記レバーの回動方向に対して斜め方向にのびる第3リブをさらに有することが好ましい。
【0018】
第1リブと第2リブが第3リブによって連結されているから、第1リブと第2リブが収容溝に収容された状態から第2リブのみが収容溝に収容された状態へと緩やかに移行することができる。
【0019】
[5]上記[3]または[4]において、前記レバーは、前記ハウジングの外面に対向する内面と、前記内面と反対側に配された外面と、を有し、前記第2リブは、前記内面に面一をなすように前記内面に接続され、前記第1リブは、段差を介して前記外面に接続されており、前記ガイド壁は、前記第1リブが前記収容溝に収容された状態では前記段差に沿って配されることが好ましい。
【0020】
第2リブがレバーの内面に面一をなすように接続されているから、第2リブがレバーの内面に段差を介して接続されている場合と比べてレバーの厚さ寸法(内面から外面までの寸法)を小さくできる。また、ガイド壁が段差に沿って配されるから、レバーに段差が設けられていない場合と比べてガイド壁がハウジングの外面から突出する量を抑制することができる。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のレバー式コネクタの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。また、本明細書における「平行」や「垂直」や「直交」は、厳密に平行や垂直や直交の場合のみでなく、本実施形態における作用ならびに効果を奏する範囲内で概ね平行や垂直や直交の場合も含まれる。
【0022】
各図面では、互いに垂直な3方向を示し、当該3方向をそれぞれ前後方向X、左右方向Y及び上下方向Zとして示している。すなわち、前後方向Xと左右方向Yとは互いに垂直であり、左右方向Yと上下方向Zとは互いに垂直であり、上下方向Zと前後方向Xとは互いに垂直である。前後方向Xは各コネクタの嵌合方向を基準とし、各コネクタの嵌合面側を前側とし、左右方向Yと上下方向Zについては嵌合面側から見た場合の上下左右方向を基準とする。
【0023】
また、本明細書の説明で使用される「筒状」は、周方向全周にわたって連続して周壁が形成されたものだけではなく、複数の部品を組み合わせて筒状をなすものや、C字状のように周方向の一部に切り欠きなどを有するものも含む。また、「筒状」の形状には、円形、楕円形、及び、尖ったまたは丸い角を有する多角形が含まれる。
【0024】
また、本明細書における「環」は、外縁形状が円形の円環、外縁形状が楕円形や長円形の環、外縁形状が多角形の多角形環、外縁形状が角丸多角形の環を含み、外縁形状が直線又は曲線で結ばれる任意の閉じた形状からなるものを言う。「環」は、外縁形状と内縁形状とが同じ形状であるものや、外縁形状と内縁形状とが異なる形状であるものを含む。「環」は、中心軸方向に沿って延びる所定の長さを有するものを含み、その長さの大小は問わない。また、本明細書における「環状」は、全体として環と見做せればよく、C字状のように一部に切り欠きやスリット等を有するものを含む。
【0025】
また、本明細書における「対向」とは、面同士又は部材同士が互いに正面の位置にあることを指し、互いが完全に正面の位置にある場合だけでなく、互いが部分的に正面の位置にある場合を含む。また、本明細書における「対向」とは、2つの部分の間に、2つの部分とは別の部材が介在している場合と、2つの部分の間に何も介在していない場合の両方を含む。
【0026】
<実施形態>
(相手側コネクタ1とレバー式コネクタ10の構成)
レバー式コネクタ10は、相手側コネクタ1に嵌合可能なコネクタである。
図5Aに示すように、相手側コネクタ1は、雄端子5を保持する相手側ハウジング2を備える。相手側ハウジング2は前方に開口する筒状をなしている。
【0027】
相手側ハウジング2の上下面には、それぞれカムピン3が1つずつ設けられている。
図5Bに示すように、カムピン3は円柱状をなして上下方向に突出している。カムピン3の近傍には台座4が設けられている。台座4はカムピン3から後方にのびる形態とされている。台座4の前端部にはテーパ面4Aが形成されている。また、台座4におけるカムピン3の後方にはスリット4Bが形成されている。相手側ハウジング2の材料としては、樹脂材料を挙げることができる。
【0028】
レバー式コネクタ10は、
図1に示すように、ハウジング20と、ハウジング20に取り付けられたレバー40と、レバー40に取り付けられた検知部材50と、を備えている。ハウジング20、レバー40、および検知部材50の材料としては、樹脂材料を挙げることができる。
【0029】
(ハウジング20の構成)
ハウジング20は、
図6に示すように、雄端子5と接続される雌端子(図示せず)が内部に収容、保持されるハウジング本体部21と、ハウジング本体部21の周囲に形成された角筒状のフード部22と、を備えている。フード部22は、
図1に示すように、左右方向に長い長方形の外形を有し、前方に開口している。コネクタ10と相手側コネクタ1を嵌合させると、ハウジング本体部21は相手側ハウジング2の内周側に嵌合し、フード部22は相手側ハウジング2の外周側に嵌合する。
【0030】
図10に示すように、フード部22の外面は、上面22Aと、下面22Bと、一対の側面22Cと、によって構成されている。フード部22の上面22Aと下面22Bには、開き防止部23が上下方向に突出してそれぞれ形成されている。開き防止部23は、前方から見て左右方向に長い長方形の外形を有している。開き防止部23の前面には、相手側コネクタ1のカムピン3及び台座4を進入させる開口23Aが設けられている。
【0031】
図12に示すように、開き防止部23の後面には、ガイド壁23Bが後方に突出して形成されている。ガイド壁23Bは、開き防止部23においてフード部22の外面から最も離れた突出端部に位置している。上側のガイド壁23Bとフード部22の上面22Aとは上下方向に対向して配置され、下側のガイド壁23Bとフード部22の下面22Bとは上下方向に対向して配置されている。上側のガイド壁23Bとフード部22の上面22Aとの間、及び下側のガイド壁23Bとフード部22の下面22Bとの間には、収容溝24がそれぞれ形成されている。
【0032】
フード部22の上面22A及び下面22Bにおける開き防止部23の後方には、カムピン3及び台座4を進入させる切り欠き25がそれぞれ形成されている。フード部22の切り欠き25は開き防止部23の開口23Aと連通している。フード部22の上面22A及び下面22Bにおける切り欠き25の後方には、レバー40を回動可能に支持する回動軸26がそれぞれ上下方向に突出して形成されている。
【0033】
フード部22の両側面22Cには、本係止部27がそれぞれ左右方向に突出して形成されている。レバー40は、ハウジング20に対して左右対称な姿勢で選択的に取り付け可能とされている。したがって、レバー40が左向きの姿勢で取り付けられた際には左側の本係止部27が使用され、レバー40が右向きの姿勢で取り付けられた際には右側の本係止部27が使用される。本実施形態では、レバー40が右向きの姿勢で取り付けられた場合を例示している。
【0034】
また、
図11に示すように、フード部22の切り欠き25は、左側仮係止部28Aと右側仮係止部28Bとの間に形成されている。左側仮係止部28Aと右側仮係止部28Bは左右方向に対向している。
【0035】
フード部22の上面22A及び下面22Bにおける回動軸26を中心とする円弧状領域には、逃がし凹部29がそれぞれ形成されている。上側の逃がし凹部29は、フード部22の上面22Aよりも下方に凹んで形成され、下側の逃がし凹部29は、フード部22の下面22Bよりも上方に凹んで形成されている。逃がし凹部29は、レバー40がハウジング20に取り付けられて回動した際に、後述する仮係止ロック部46と輸送ロック部47がフード部22の上下面22A,22Bに干渉することを回避するために、仮係止ロック部46と輸送ロック部47を収容する空間を有している。
【0036】
逃がし凹部29は、切り欠き25の位置で左右に分断されている。逃がし凹部29のうち、嵌合面から見て左側の逃がし凹部29を左側の逃がし凹部29といい、嵌合面から見た右側の逃がし凹部29を右側の逃がし凹部29という場合がある。
【0037】
(レバー40の構成)
レバー40は、
図13に示すように、カム溝43が形成された板状のカム板41と、操作部42と、を備えている。カム板41は一対設けられ、一対のカム板41の端部が操作部42によって連結されることで、レバー40は全体として門形とされている(
図15参照)。
【0038】
図16に示すように、カム板41の中心付近には、回動軸26が挿通される回動孔44が板厚方向に貫通して形成されている。カム溝43は、カム板41の外縁において開口する入口43Aと、回動孔44の付近に位置する終端43Bと、の間に形成されている。カム溝43は、入口43Aから終端43Bに向かうほど回動孔44に近づくように形成されている。
【0039】
レバー40は、
図1に示す仮係止位置と
図2に示す本係止位置とに移動可能とされている。本実施形態のレバー40は、回動軸26を回動中心として仮係止位置と本係止位置との間を回動可能な回動式レバーである。
図10に示すように、レバー40が仮係止位置にあるときには、カム溝43の入口43Aが開き防止部23の開口23Aを通じて前方に臨むように配される。したがって、相手側コネクタ1をレバー式コネクタ10に手動で浅く嵌合させた際に、カムピン3が開口23Aを通ってカム溝43の入口43Aに進入可能となっている。
【0040】
カムピン3が入口43Aからカム溝43の内部に進入し、回動軸26を中心としてレバー40を回転させると、カムピン3とカム溝43の内壁との係合によるカム作用によってカムピン3が終端43Bに向けてカム溝43を移動する。これによって、相手側コネクタ1とレバー式コネクタ10の嵌合動作が進行する。
【0041】
また、レバー40を嵌合動作時とは逆方向に回転させると、カムピン3とカム溝43の内壁との係合によるカム作用によってカムピン3が入口43Aに向けてカム溝43を移動する。これによって、相手側コネクタ1とレバー式コネクタ10の離脱動作が進行する。
【0042】
図14に示すように、カム板41の外周縁には、レバー40の回動方向にのびるリブ状の開き抑制リブ45が設けられている。開き抑制リブ45は、カム板41の内面41A(フード部22の上下面22A,22Bと対向する面)と面一をなすように内面41Aに接続された第1リブ45Aと、第1リブ45Aよりもカム板41の内面41Aから離れた第2リブ45Bと、第1リブ45Aと第2リブ45Bを連結する第3リブ45Cと、を有している。
【0043】
第1リブ45Aは、レバー40がハウジング20に取り付けられた状態では、ガイド壁23Bに近接している。第2リブ45Bは、ガイド壁23Bとの間隔が第1リブ45Aよりも大きくなるように配されている。第2リブ45Bは、カム板41の板厚方向の中央に位置している。第3リブ45Cは、レバー40の回動方向に対して斜め方向にのびている。第1リブ45Aは、カム板41の外面41B(内面41Aと反対側に配された面)に対して段差41Cを介して接続されている。
【0044】
図6に示すように、ガイド壁23Bは、第1リブ45Aが収容溝24に収容された状態では、段差41Cに沿って配される。このため、カム板41の外面41Bとガイド壁23Bの外面とは、ほぼ平坦に並んで配される。このようにすれば、レバー40に段差41Cが設けられていない場合と比べてガイド壁23Bがフード部22の上下面22A,22Bから突出する量を抑制することができる。
【0045】
図13に示すように、カム板41の内面において入口43Aの両側には、仮係止ロック部46が内方に突出して設けられている。また、カム板41の内面において仮係止ロック部46からレバー40の回動方向において開き抑制リブ45側にずれた箇所には、輸送ロック部47が内方に突出して設けられている。
【0046】
仮係止ロック部46は、
図16に示すように、入口43Aの図示左側に位置する左側ロック部46Aと、入口43Aの図示右側に位置する右側ロック部46Bと、を備えている。左側ロック部46Aは右側ロック部46Bよりもカムピン3の進入方向に長めに形成されている。左側ロック部46Aの入口43A側(回動孔44と反対側)と右側ロック部46Bの入口43A側(回動孔44と反対側)とには、それぞれテーパ面46Cが形成されている。
【0047】
輸送ロック部47は、
図16に示すように、開き抑制リブ45に隣り合う領域のうち、レバー40の回動方向において第2リブ45Bに対応する領域に設けられている。輸送ロック部47は、レバー40の回動方向において仮係止ロック部46側に位置した第1仮係止面47Aと、第1仮係止面47Aとは反対側に位置した第2仮係止面47Bと、第1仮係止面47Aと第2仮係止面47Bの間に位置した天井面47Cと、を備えている。第2仮係止面47Bは第1仮係止面47Aよりも緩やかな傾斜角度で形成されている。このため、第2仮係止面47Bは、右側仮係止部28Bに乗り上げやすくなっている。
【0048】
図13に示すように、操作部42には、レバーロック部48と、レバーロック部48を取り囲む保護壁49と、が設けられている。レバーロック部48は、一対のロック片48Aと、一対のロック片48Aの端部同士を連結する解除操作片48Bと、一対のロック片48Aの中央付近を連結する本係止片48Cと、を備えている。
【0049】
図15に示すように、操作部42の中央部には、検知部材50が取り付けられる取付孔42Aが貫通して形成されている。この取付孔42Aの内部にレバーロック部48が位置しており、取付孔42Aの内壁を構成する部分が保護壁49となっている。保護壁49のうち本係止片48Cと対向する部分は、検知部材50が検知位置で当接可能な当接部49Aとされている。
【0050】
(検知部材50の構成)
検知部材50は、レバー40の操作部42の取付孔42Aに取り付けられた状態で、
図2に示す待機位置と
図3に示す検知位置とに移動可能とされている。検知部材50は、相手側コネクタ1とレバー式コネクタ10の嵌合が完了したことを検知する部材であって、レバー40が仮係止位置から本係止位置に至った後、待機位置から検知位置に押し込まれることが許容される(
図3参照)。したがって、検知部材50は、レバー40が仮係止位置から本係止位置に回動する途中(例えば、輸送位置等)では待機位置に保持され、検知位置への移動が阻止される。
【0051】
図17は、レバー40が輸送位置にあるときに、検知部材50が待機位置に保持されている様子を示している。輸送位置とは、
図4に示すレバー40の位置であって、仮係止位置と本係止位置の間に位置している。本実施形態の輸送位置は、仮係止位置よりも本係止位置に近い位置とされている。輸送位置は、レバー式コネクタ10をコネクタ工程からハーネス工程に輸送する際に、レバー40が保持される位置である。輸送位置では、レバー40のハウジング20からの突出量を小さく抑えることができるため、レバー式コネクタ10が他のコネクタや異物等と干渉することを回避できる。
【0052】
検知部材50は、
図17に示すように、基端部51Aから先端部51Bに向けてのびる検知アーム51と、検知アーム51の内面に突出して設けられた検知突部52と、検知アーム51の外面に突出して設けられた検知解除部53と、検知アーム51の基端部51Aに設けられた前止まり部54と、を備えている。検知突部52は、検知アーム51の中心部よりもやや先端部51B側に設けられている。検知解除部53の先端は検知アーム51の先端部51Bと揃う位置に設けられ、検知解除部53の基端は検知突部52よりもやや基端部51A側に設けられている。
【0053】
図17に示す待機位置では、検知突部52がレバーロック部48の本係止片48Cに後方から係止することで検知部材50の前方への押し込みが阻止されている。輸送位置では本係止片48Cが本係止部27の後方に退避しているため、検知部材52が待機位置に保持されている。
【0054】
レバー40が輸送位置から本係止位置に回動すると、本係止片48Cが本係止部27に乗り上げることで弾性変形し、これに伴って検知アーム51も弾性変形する。レバー40が本係止位置に至ると、
図18に示すように、本係止片48Cが本係止部27を乗り越えて弾性復帰し、本係止片48Cが本係止部27に前方から係止することでレバー40が本係止位置に保持される。
【0055】
一方、検知部材50の検知アーム51は、検知突部52が本係止部27に乗り上げることで本係止片48Cとの係止が解除され、本係止部27に乗り上げた状態となる。ここから検知部材50が検知位置に向けて前方に押し込まれると、検知突部52が本係止部27から本係止片48Cへと乗り移る。
図19に示すように、検知部材50が検知位置に至ると、検知アーム51が弾性復帰することで検知突部52が本係止片48Cに前方から係止するとともに、前止まり部54が当接部49Aに当接することで検知部材50が検知位置にて前止まりされる。
【0056】
(仮係止位置におけるレバー40の保持構造)
レバー40は、輸送位置でハウジング本体部21に後方から雌端子が挿入された後、仮係止位置に一旦戻される。レバー40は、仮係止位置から本係止位置に向かう方向(
図1における時計回り方向であって、以下「正転方向」という)と、その反対方向(
図1における反時計回り方向であって、以下「逆転方向」という)と、の双方に回動しないように仮係止位置に保持する仮係止ロック部46を有している。
【0057】
図11に示すように、仮係止ロック部46の左側ロック部46Aは左側仮係止部28Aに対して右方から係止し、仮係止ロック部46の右側ロック部46Bは右側仮係止部28Bに対して左方から係止している。左側ロック部46Aと左側仮係止部28Aの係止によってレバー40が仮係止位置から正転方向に回動することが抑制される。また、右側ロック部46Bと右側仮係止部28Bの係止によってレバー40が仮係止位置から逆転方向に回動することが抑制される。
【0058】
相手側コネクタ1とレバー式コネクタ10を手動で浅く嵌合させると、相手側コネクタ1の台座4がレバー式コネクタ10の開口23Aに進入する。そのまま嵌合動作を続けると、台座4のテーパ面4Aが仮係止ロック部46のテーパ面46Cに摺接しながら、仮係止ロック部46が台座4に乗り上げる。これにより、左側ロック部46Aと左側仮係止部28Aの係止が解除され、右側ロック部46Bと右側仮係止部28Bの係止が解除される。
【0059】
仮係止位置では、開き抑制リブ45の第2リブ45Bの一部は収容溝24に入り込んでいるものの、第2リブ45Bとガイド壁23Bの間には、クリアランス30が確保されているため、レバー40の開き変形は許容され、カム板41が係止解除方向に変位することが許容される。これにより、レバー40は仮係止位置から本係止位置に回動することが許容される。各ロック部46A,46Bは、台座4の上を正転方向に移動し、左側仮係止部28Aへと乗り移る。左側仮係止部28Aを通過した後、レバー40が復帰変形すると、各ロック部46A,46Bは左側の逃がし凹部29に収容される。
【0060】
(輸送位置におけるレバー40の保持構造)
レバー40は、相手側コネクタ1との嵌合前の輸送状態でレバー40を輸送位置に保持する輸送ロック部47を有している。輸送位置は、雌端子をハウジング本体部21に挿入する際にレバー40が邪魔にならないように、本係止位置の近くに設定されている。輸送ロック部47は、
図6に示すように、切り欠き25の内部に収容されている。輸送ロック部47は、切り欠き25の幅寸法内で移動可能とされている。具体的には輸送ロック部47は、
図7に示す左側係止位置と
図8に示す右側係止位置との間を移動可能とされている。
【0061】
図7に示す左側係止位置では、輸送ロック部47の第1仮係止面47Aは、左側仮係止部28Aに右方から係止している。一方、
図8に示す右側係止位置では、輸送ロック部47の第2仮係止面47Bは、右側仮係止部28Bに左方から係止している。これにより、レバー40は輸送位置において左側係止位置と右側係止位置との間で回動可能に保持される。
【0062】
輸送ロック部47が左側係止位置にある状態では、開き抑制リブ45の第1リブ45Aが収容溝24に収容されているため、レバー40の開きが抑制される。一方、輸送ロック部47が右側係止位置にある状態では、第1リブ45Aが収容溝24から逆転方向に外れた状態となるため、レバー40をそのまま逆転方向に回動させると、輸送ロック部47の第2仮係止面47Bが右側仮係止部28Bに摺接しつつ乗り上げる。これに伴って、レバー40が開き変形することになる。
【0063】
図9に示すように、輸送ロック部47が右側仮係止部28Bに乗り上げた状態では、第1リブ45Aと第3リブ45Cが収容溝24の外部に位置する。一方、第2リブ45Bは収容溝24の内部に位置してガイド壁23Bに近接しているため、開き変形したレバー40がさらに開き変形することは抑制される。
【0064】
さらにレバー40を逆転方向に回動させると、輸送ロック部47は、右側仮係止部28Bを越えたところで、フード部22の逃がし凹部29に嵌まり込み、レバー40が復帰変形する。レバー40が復帰変形してから仮係止位置に至った後においても、輸送ロック部47は逃がし凹部29に収容されている。
【0065】
(各工程におけるレバー40の動作説明)
レバー式コネクタ10の組み立ては、コネクタ工程において、ハウジング20とレバー40が組み付けられた後、ハーネス工程に輸送されてから、電線の端末に接続された雌端子をハウジング20に対して後方から挿入する手順で行われる。ハウジング20とレバー40が組み付けられたサブアッシーをハーネス工程に輸送する輸送工程では、他のコネクタや異物等との干渉を回避するため、レバー40が輸送位置に保持される。輸送位置では、
図17に示すように、検知部材50がレバーロック部48によって待機位置に保持されているため、誤って検知位置に押し込まれることはない。
【0066】
したがって、ハーネス工程において、検知位置に押し込まれた検知部材50を待機位置に戻す作業をなくすことができるため、作業工数を削減できる。また、ハウジング20の本係止部27は、レバー式コネクタ10と相手側コネクタ1の嵌合完了時までレバーロック部48と接触しないため、嵌合作業に至るまでの輸送工程において本係止部27およびレバーロック部48にダレ・破損などが発生することを防ぐことができる。
【0067】
レバー式コネクタ10がハーネス工程から納入先に出荷された後、相手側コネクタ1との嵌合作業が行われる。この嵌合作業に先立って、レバー40は輸送位置から仮係止位置に戻される。レバー40が仮係止位置に近づくにつれて第1リブ45Aが収容溝24から外れて輸送ロック部47と右側仮係止部28Bとの係止が解除されるとともに、輸送ロック部47が右側仮係止部28Bを乗り越えて逃がし凹部29に収容される。
【0068】
レバー40が仮係止位置に至ると、
図11に示すように、仮係止ロック部46が切り欠き25に収容され、各仮係止部28A,28Bに係止した状態となるため、レバー40が仮係止位置に保持される。仮係止位置では、
図1に示すように、開き抑制リブ45の第2リブ45Bが開き防止部23の収容溝24に進入しているため、レバー40の過度な開き変形を抑制しつつも、わずかな開き変形を許容した状態となっている。
【0069】
レバー式コネクタ10と相手側コネクタ1の嵌合作業は、まず、手動で相手側コネクタ1をレバー式コネクタ10に浅く嵌合させて仮嵌合させた後、レバー40を仮係止位置から本係止位置に回動させることで行われる。仮嵌合状態では、相手側コネクタのカムピン3は、カム溝43の入口43Aから少し内部に進入したところに位置している。
【0070】
仮嵌合状態からレバー40を正転方向に回動させると、カムピン3がカム溝43の内壁に係合することで相手側コネクタ1がレバー式コネクタ10側に引き込まれ、カムピン3はカム溝43の終端43Bに向けて移動していく。レバー40が本係止位置に至ると、カムピン3がカム溝43の終端43Bに至るとともに、相手側コネクタ1がレバー式コネクタ10に対して完全に嵌合した嵌合完了状態に至る。
【0071】
相手側コネクタ1をレバー式コネクタ10に浅く嵌合させる際には、台座4がフード部22の開口23Aを通って切り欠き25に進入する。このとき、台座4のテーパ面4Aが仮係止ロック部46のテーパ面46Cに摺接しながら、仮係止ロック部46が台座4に乗り上げた状態となり、レバー40が開き変形する。これにより、仮係止ロック部46と各仮係止部28A,28Bとの係止が解除され、レバー40の回動が許容される。
【0072】
レバー40が輸送位置に近づくと、輸送ロック部47が右側仮係止部28Bに近づく。このとき、レバー40は仮係止ロック部46と台座4によって開き変形した状態となっているから、輸送ロック部47が右側仮係止部28Bに対して摺動しながら乗り上げることはなく、円滑に右側仮係止部28Bの上に進入する(
図9参照)。この時点では、開き抑制リブ45の第2リブ45Bのみが収容溝24に収容されているが、ここからレバー40を正転方向に回動させると、第3リブ45Cと第1リブ45Aが収容溝24に収容されることでレバー40は開いた状態から閉じた状態へと緩やかに移行する。
【0073】
相手側コネクタ1との嵌合前であれば、切り欠き25に輸送ロック部47が収容されることになるが、相手側コネクタ1との嵌合途中では、切り欠き25に台座4が収容されているため、輸送ロック部47は、右側仮係止部28Bの上から台座4の上へと乗り移ることになる。ここで、輸送ロック部47は第2リブ45Bに対応して設けられているから、レバー40が開いた状態から閉じた状態に移行しても、第2リブ45Bがガイド壁23Bに近づくように変位できるため、台座4の上を通過できることになる。
【0074】
このようにして、レバー40が輸送位置にある間、輸送ロック部47は、切り欠き25に収容された台座4の上を正転方向に進行していく。レバー40が輸送位置を通過すると、輸送ロック部47は、台座4の上から左側仮係止部28Aの上へと乗り移り、左側仮係止部28Aを通り過ぎたところで、左側の逃がし凹部29に収容されるとともに、第2リブ45Bが本来の位置に復帰変位する。
【0075】
レバー40が本係止位置に近づくと、レバーロック部48の本係止片48Cがハウジング20の本係止部27に乗り上げながらロック片48Aが弾性変形していく。レバー40が本係止位置に至ると、
図18に示すように、本係止片48Cが本係止部27を乗り越えるとともにロック片48Aが弾性復帰する。これにより、本係止片48Cと本係止部27が係止した状態となって、レバー40が本係止位置に保持される。
【0076】
一方、検知部材50の検知突部52は、検知アーム51が弾性変形することで本係止部27の上に乗り上げた状態となり、本係止片48Cとの係止が解除される。これにより、検知部材50は待機位置から検知位置への押し込みが許容される。検知部材50を待機位置から検知位置に押し込んでいくと、検知突部52が本係止部27の上から本係止片48Cの上へと乗り移り、本係止片48Cを通り過ぎたところで、検知アーム51が弾性復帰する。
図19に示すように、検知突部52が本係止片48Cに係止することで検知部材50が検知位置に保持される。
【0077】
検知位置では、検知アーム51が本係止片48Cの撓み空間に位置しているため、本係止片48Cの解除方向への変位ができず、レバーロック部48と本係止部27が検知部材50によって二重係止された状態となっている。
【0078】
また、検知部材50の検知解除部53を解除方向に変位させることにより、検知突部52と本係止片48Cの係止を解除することができ、検知部材50を検知位置から待機位置に移動させることができる。その後、レバーロック部48の解除操作片48Bを解除方向に変位させることにより、本係止片48Cと本係止部27の係止を解除することができ、レバー40を本係止位置から仮係止位置に回動させることができる。これにより、レバー式コネクタ10と相手側コネクタ1を離脱させることができる。
【0079】
(本実施形態の作用効果)
(1)本開示のレバー式コネクタ10は、相手側コネクタ1に嵌合可能なレバー式コネクタ10であって、ハウジング20と、ハウジング20に対して仮係止位置と本係止位置とに移動可能に取り付けられたレバー40と、レバー40に対して待機位置と検知位置とに移動可能に取り付けられた検知部材50と、を備え、レバー40が仮係止位置から本係止位置に移動することでレバー式コネクタ10と相手側コネクタ1とが嵌合完了状態に至るようになっており、レバー40の移動経路において仮係止位置と本係止位置との間に輸送位置が設定されており、レバー40は、レバーロック部48と、輸送ロック部47と、を有し、ハウジング20は、レバーロック部48に係止されることでレバー40を本係止位置に保持する本係止部27と、輸送ロック部47に係止されることでレバー40を輸送位置に保持する左側仮係止部28A及び右側仮係止部28Bと、を有し、検知部材50は、輸送位置ではレバーロック部48に係止することで待機位置に保持され、本係止位置では本係止部27によってレバーロック部48との係止が解除されることで待機位置から検知位置への移動が許容される、レバー式コネクタ10である。
【0080】
例えば、レバー式コネクタ10をコネクタ工程からハーネス工程に輸送する際には、レバー40を輸送位置に移動させる。レバー40は、輸送位置において、輸送ロック部47がハウジング20の左側仮係止部28A及び右側仮係止部28Bに係止することでハウジング20に保持される。レバー40が輸送位置でハウジング20に保持されていると、仮係止位置にあるレバー40よりもハウジング20から突出する量を抑えることができるため、レバー40が他のコネクタや異物等と干渉することを回避し易くなる。ここで、検知部材50は、輸送位置ではレバーロック部48によって待機位置に保持されているから、輸送時に検知部材50が不用意に待機位置から検知位置へ移動するのを防止できる。
【0081】
(2)レバー40は、仮係止位置と本係止位置との間で回動可能とされており、一対のカム板41の外周縁には、一対の開き抑制リブ45がレバー40の回動方向にのびて設けられ、ハウジング20は、フード部22の上下面22A,22Bに対向する一対のガイド壁23Bと、を備え、一対のガイド壁23Bとフード部22の上下面22A,22Bとの間に一対の収容溝24が形成され、一対の開き抑制リブ45が一対の収容溝24に収容されることでレバー40の開き変形が抑制されており、輸送ロック部47は、開き抑制リブ45に隣り合う領域に設けられていることが好ましい。
【0082】
レバー40を回動する際に開き抑制リブ45が収容溝24に収容されることでレバー40の開き変形が抑制され、レバー40がハウジング20から外れることが抑制される。これにより、輸送ロック部47と左側仮係止部28A及び右側仮係止部28Bとの係止が維持される。
【0083】
(3)開き抑制リブ45は、ガイド壁23Bに近接する第1リブ45Aと、ガイド壁23Bとの間隔が第1リブ45Aよりも大きくなるように配された第2リブ45Bと、を有し、輸送位置では第1リブ45Aが収容溝24に収容され、仮係止位置に近づくにつれて第1リブ45Aが収容溝24から外れるようになっており、輸送ロック部47は、開き抑制リブ45に隣り合う領域のうち、レバー40の回動方向において第2リブ45Bに対応する領域に設けられていることが好ましい。
【0084】
輸送位置では第1リブ45Aがガイド壁23Bに当接するから、輸送ロック部47と左側仮係止部28A及び右側仮係止部28Bとの係止が維持され、レバー40が誤って本係止位置に移動してしまうことを抑制できる。仮係止位置に近づくにつれて第1リブ45Aが収容溝24から外れて第2リブ45Bがガイド壁23Bに近づく方向に変位するから、レバー40の開き変形を許容し、これによって輸送ロック部47と左側仮係止部28A及び右側仮係止部28Bとの係止を解除できる。
【0085】
(4)開き抑制リブ45は、第1リブ45Aと第2リブ45Bとを連結しレバー40の回動方向に対して斜め方向にのびる第3リブ45Cをさらに有することが好ましい。
【0086】
第1リブ45Aと第2リブ45Bが第3リブ45Cによって連結されているから、第1リブ45Aと第2リブ45Bが収容溝24に収容された状態から第2リブ45Bのみが収容溝24に収容された状態へと緩やかに移行することができる。
【0087】
(5)レバー40のカム板41は、フード部22の上下面22A,22Bに対向する内面41Aと、内面41Aと反対側に配された外面41Bと、を有し、第2リブ45Bは、内面41Aに面一をなすように内面41Aに接続され、第1リブ45Aは、段差41Cを介して外面41Bに接続されており、ガイド壁23Bは、第1リブ45Aが収容溝24に収容された状態では段差41Cに沿って配されることが好ましい。
【0088】
第2リブ45Bがレバー40の内面に面一をなすように接続されているから、第2リブ45Bがレバー40の内面に段差を介して接続されている場合と比べてレバー40の厚さ寸法(内面から外面までの寸法)を小さくできる。また、ガイド壁23Bが段差に沿って配されるから、レバー40に段差が設けられていない場合と比べてガイド壁23Bがハウジング20の外面から突出する量を抑制することができる。
【0089】
(他の実施形態)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0090】
・上記実施形態では、本係止位置の近くに輸送位置を設定していたが、仮係止位置と本係止位置との間に位置すれば輸送位置の設定位置は任意であり、例えば仮係止位置と本係止位置の真ん中に輸送位置を設定してもよい。
【0091】
・上記実施形態では、輸送ロック部47が開き抑制リブ45の第2リブ45Bに隣り合う領域に設けられているが、輸送ロック部が開き抑制リブに隣り合う領域から外れた領域に設けられていてもよい。例えば、開き抑制リブ45の第2リブ45Bをなくしてもよい。
【0092】
・上記実施形態では、開き抑制リブ45の第3リブ45Cがレバー40の回動方向に対して斜め方向にのびているが、第3リブ45Cがレバー40の回動方向に対して直交する方向にのびているものでもよい。
【0093】
・上記実施形態では、開き抑制部の第2リブがレバーの内面に面一をなすように内面に接続されているが、第2リブが段差を介してレバーの内面に接続されているものでもよい。
【符号の説明】
【0094】
1:相手側コネクタ
2:相手側ハウジング
3:カムピン
4:台座
4A:テーパ面
4B:スリット
5:雄端子
10:レバー式コネクタ
20:ハウジング
21:ハウジング本体部
22:フード部
22A:上面
22B:下面
22C:側面
23:開き防止部
23A:開口
23B:ガイド壁
24:収容溝
25:切り欠き
26:回動軸
27:本係止部
28A:左側仮係止部(仮係止部)
28B:右側仮係止部(仮係止部)
29:逃がし凹部
30:クリアランス
40:レバー
41:カム板
41A:内面
41B:外面
41C:段差
42:操作部
42A:取付孔
43:カム溝
43A:入口
43B:終端
44:回動孔
45:開き抑制リブ
45A:第1リブ
45B:第2リブ
45C:第3リブ
46:仮係止ロック部
46A:左側ロック部
46B:右側ロック部
46C:テーパ面
47:輸送ロック部
47A:第1仮係止面
47B:第2仮係止面
47C:天井面
48:レバーロック部
48A:ロック片
48B:解除操作片
48C:本係止片
49:保護壁
49A:当接部
50:検知部材
51:検知アーム
51A:基端部
51B:先端部
52:検知突部
53:検知解除部
54:前止まり部